(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】軟性金属箔積層フィルム、それを含む物品、及び該軟性金属箔積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 18/52 20060101AFI20230105BHJP
C23C 18/32 20060101ALI20230105BHJP
C23C 18/38 20060101ALI20230105BHJP
C23C 18/42 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
C23C18/52 B
C23C18/32
C23C18/38
C23C18/42
C23C18/52 Z
(21)【出願番号】P 2021525778
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 KR2020004564
(87)【国際公開番号】W WO2020222430
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】10-2019-0050988
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504092127
【氏名又は名称】トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スン・モ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ホ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ドゥク・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・グク・イ
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特公昭46-025246(JP,B1)
【文献】特開平07-243085(JP,A)
【文献】特開2005-060772(JP,A)
【文献】特開2011-202222(JP,A)
【文献】特開2019-119901(JP,A)
【文献】国際公開第2009/075212(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/032780(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102031505(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105839104(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
C23C 18/00 - 20/08
C23C 24/00 - 30/00
C25D 5/00 - 7/12
H05K 1/09 - 1/16
H05K 3/10 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層上に配置された第1金属薄膜層と、
前記第1金属薄膜層上に配置された第2金属薄膜層と、
からなり、
前記第2金属薄膜層が、単位表面積(m
2)当たり100個以下のピンホール欠点、及び単位表面積(m
2)当たり100個以下の1μm超過2μm未満の突起を有する、軟性金属箔積層フィルム。
【請求項2】
前記第1金属薄膜層は、ニッケルを含む、請求項1に記載の軟性金属箔積層フィルム。
【請求項3】
前記第2金属薄膜層は、銅、金、銀、コバルト、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、それらの混合物、またはそれらの合金を含む、請求項1に記載の軟性金属箔積層フィルム。
【請求項4】
前記第2金属薄膜層の厚みは、6μm以下である、請求項1に記載の軟性金属箔積層フィルム。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の軟性金属箔積層フィルムを含む、物品。
【請求項6】
前記物品は、印刷回路基板またはディスプレイデバイスである、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
基材層を設ける段階と、
前記基材層上に、無電解メッキ方式により、第1金属薄膜層を形成する段階と、
前記形成された第1金属薄膜層を熱処理する段階と、
前記熱処理された第1金属薄膜層上に、電解メッキ方式により、第2金属薄膜層を形成する段階と、を含
み、
前記第1金属薄膜層の熱処理段階は、30℃~180℃の温度で20~80秒間遂行される、軟性金属箔積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟性金属箔積層フィルム、それを含む物品、及び該軟性金属箔積層フィルムの製造方法に係り、さらに詳細には、単位表面積当たり減少された個数のピンホール及び突起を有する軟性金属箔積層フィルム、それを含む物品、及び該軟性金属箔積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、技術の発達、特に、電子産業技術分野において、半導体集積回路の発展により、小型化、軽量化、高耐久性及び高画質のような要求を充足するために、高集積度を実現することができる素材の開発が促進されている。例えば、LCD用ドライバICに使用される軟性銅箔積層フィルム(FCCL:flexible copper clad laminate)の場合にも、微細パターン化(fine patterning)、薄膜化及び耐久性が要求されている。
【0003】
そのような軟性銅箔積層フィルムの製造のために、最近多用されるスパッタリング工程は、ファインピッチ(fine pitch)に対する対応が容易であり、Å(angstrom)単位の厚み調節が可能であるが、導電膜に表面問題を起こし、スパッタリング工程中、ターゲットの空間的な位置調整の困難であるという問題点がある。
【0004】
また、スパッタリング工程の特性上、高温で作業が進められるために、高分子系基材フィルムが熱によって損傷される恐れがあり、その回避が可能な条件下で作業しなければならないので、生産速度の遅いという問題点がある。
【0005】
また、該スパッタリング工程の場合、基材フィルム上に配置された接合層が要求されるが、その理由は、基材フィルムにおいて、主に使用されるポリイミドフィルムが、金属との接合力が非常に弱く、クロム及びニッケルのような有害重金属で接合層を作り、銅を蒸着させるためである。そのような接合層により、工程の個数が増加し、有害物質が使用されるので、安定性及び環境汚染の問題が発生する。
【0006】
また、スパッタリング工程に製造された軟性銅箔積層フィルムは、表面の蒸着均質度が落ちるので、ピンホールが発生する場合が多く、ピンホールにより、銅メッキ面のクラックや、応力伝達によるメッキ面の破壊、メッキ時、デラミネーション及びメッキ面の離脱現象、並びにフィルム損傷などの問題が生じる。
【0007】
また、ピンホール及び突起のような欠点は、顧客社におけるパターン作製時、ショート(short)や開放(open)というような問題が発生し、工程収率を落とす致命的な問題を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】大韓民国特許公開公報第10-2014-0072409号
【文献】大韓民国登録特許公報第10-1681663号
【文献】大韓民国登録特許公報第10-2011-0002838号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一具現例は、単位表面積当たり減少された個数のピンホール及び突起を有する軟性金属箔積層フィルムを提供する。
【0010】
本発明の他の具現例は、前記軟性金属箔積層フィルムを含む物品を提供する。
【0011】
本発明のさらに他の具現例は、前記軟性金属箔積層フィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面は、
基材層と、
前記基材層上に配置された第1金属薄膜層と、
前記第1金属薄膜層上に配置された第2金属薄膜層と、を含み、
単位表面積(m2)当たり100個以下のピンホール欠点、及び単位表面積(m2)当たり100個以下の1μm超過2μm未満の突起を有する軟性金属箔積層フィルムを提供する。
【0013】
前記第1金属薄膜層は、ニッケルを含むものである。
【0014】
前記第2金属薄膜層は、銅、金、銀、コバルト、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、それらの混合物、またはそれらの合金を含んでもよい。
【0015】
前記第2金属薄膜層の厚みは、6μm以下でもある。
【0016】
本発明の他の側面は、
前記軟性金属箔積層フィルムを含む物品を提供する。
【0017】
前記物品は、印刷回路基板またはディスプレイデバイスでもある。
【0018】
本発明のさらに他の側面は、
基材層を設ける段階と、
前記基材層上に、無電解メッキ方式により、第1金属薄膜層を形成する段階と、
前記形成された第1金属薄膜層を熱処理する段階と、
前記熱処理された第1金属薄膜層上に、電解メッキ方式により、第2金属薄膜層を形成する段階と、を含む軟性金属箔積層フィルムの製造方法を提供する。
【0019】
前記第1金属薄膜層の熱処理段階は、30~180℃の温度で20~80秒間遂行されうる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一具現例による軟性金属箔積層フィルムは、単位表面積当たり減少された個数のピンホール及び突起を有することにより、金属箔表面に微細回路パターンを形成する場合、形状不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一具現例による軟性金属箔積層フィルムの断面図である。
【
図2】実施例1~2で製造された軟性金属箔積層フィルムにおいて、銅箔表面に形成されたピンホール及び突起の個数を示したグラフである。
【
図3】比較例1~2で製造された軟性金属箔積層フィルムにおいて、銅箔表面に形成されたピンホール及び突起の個数を示したグラフである。
【
図4】実施例1で製造された軟性金属箔積層フィルムにおける銅箔表面の状態を示す写真である。
【
図5】実施例2で製造された軟性金属箔積層フィルムにおける銅箔表面の状態を示す写真である。
【
図6】比較例1で製造された軟性金属箔積層フィルムにおける銅箔表面の状態を示す写真である。
【
図7】比較例2で製造された軟性金属箔積層フィルムにおける銅箔表面の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一具現例による軟性金属箔積層フィルムについて詳細に説明する。
【0023】
本明細書において、「ピンホール」または「ピンホール欠点」とは、軟性金属箔積層フィルムにおいて、最外郭金属薄膜層(すなわち、第2金属薄膜層)に形成されたものであり、光を通過させる貫通ホールを意味する。
【0024】
また、本明細書において、「突起」または「突起欠点」とは、軟性金属箔積層フィルムにおいて、最外郭金属薄膜層(すなわち、第2金属薄膜層)に形成された突出部を意味する。
【0025】
本発明の一具現例による軟性金属箔積層フィルムは、基材層、第1金属薄膜層及び第2金属薄膜層を含む。
【0026】
前記軟性金属箔積層フィルム(具体的には、前記第2金属薄膜層)は、単位表面積(m2)当たり100個以下のピンホール欠点、及び単位表面積(m2)当たり100個以下の1μm超過2μm未満の突起を有することができる。それにより、前記第2金属箔層の表面に、微細回路パターンを形成する場合、ピンホールや突起によるエッチング異常(etching abnormality)を改善させることにより、品質安定性を大きく向上させることができる。
【0027】
前記基材層は、絶縁性樹脂を含んでもよい。
【0028】
前記第1金属薄膜層は、ニッケルを含んでもよい。
【0029】
前記第1金属薄膜層の厚みは、0.01~5μm、0.01~3μm、または0.03~2μmであり、前記範囲内において、蒸着にすぐれ、基材層との接着力が向上する効果がある。
【0030】
前記第2金属薄膜層は、銅、金、銀、コバルト、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、それらの混合物、またはそれらの合金を含んでもよい。
【0031】
前記第2金属薄膜層の厚みは、6μm以下、4μm以下、3μm以下または2μm以下でもある。
【0032】
前記軟性金属箔積層フィルムは、前記基材層と第1金属薄膜層との間に配置された接着層をさらに含んでもよい。
【0033】
図1は、本発明の一具現例による軟性金属箔積層フィルム10の断面図である。
【0034】
図1を参照すれば、本発明の一具現例による軟性金属箔積層フィルム10は、基材層11、第1金属薄膜層12及び第2金属薄膜層13をこの順に含む。
【0035】
軟性金属箔積層フィルム10は、基材層11と第1金属薄膜層12との間に配置された接着層(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0036】
また、
図1を参照すれば、基材層11、第1金属薄膜層12’及び第2金属薄膜層13’をこの順に含んでもよい。
【0037】
軟性金属箔積層フィルム10は、基材層11と第1金属薄膜層12’との間に配置された接着層(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0038】
本発明の他の具現例は、前記軟性金属箔積層フィルムを含む物品を提供する。
【0039】
前記物品は、印刷回路基板またはディスプレイデバイスでもある。
【0040】
以下、本発明の一具現例による軟性金属箔積層フィルムの製造方法について詳細に説明する。
【0041】
本発明の一具現例による軟性金属箔積層フィルムの製造方法は、基材層を設ける段階(S10)、前記基材層上に、無電解メッキ方式により、第1金属薄膜層を形成する段階(S20)、前記形成された第1金属薄膜層を熱処理する段階(S30)、及び前記熱処理された第1金属薄膜層上に、電解メッキ方式により、第2金属薄膜層を形成する段階(S40)を含む。
【0042】
前記基材層設け段階(S10)においては、例えば、ポリイミド前駆体であるポリアミノ酸を押出してフィルムを作り、前記ポリアミノ酸のイミド化のために、前記フィルムを熱処理することにより、ポリイミド樹脂を含む基材層を製造することができる。
【0043】
前記基材層は、水分及び残留ガスを除去するために乾燥させることができるが、一例として、前記乾燥は、常圧下において、ロール・ツー・ロール(roll-to-roll)熱処理を介しても行われるか、あるいは真空雰囲気において、赤外線(IR)ヒータを利用しても行われる。
【0044】
前記第1金属薄膜層形成段階(S20)において、前記第1金属薄膜層は、水溶性ニッケル塩を、3~50g/Lの濃度で含むメッキ液を使用し、無電解メッキ方式によっても形成される。
【0045】
前記メッキ液は、水溶性ニッケル塩、還元剤及び錯化剤を含んでもよい。
【0046】
前記水溶性ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、次亜リン酸ニッケル、ニッケル塩、酢酸ニッケル、リンゴ酸ニッケル、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0047】
前記水溶性ニッケル塩は、3~50g/L、3~35g/Lまたは3~15g/Lの濃度で前記メッキ液にも含まれ、前記範囲内において、ニッケルメッキ皮膜の析出速度及び流動性にすぐれ、ニッケルメッキ皮膜において、ピット発生が低下する効果がある。
【0048】
前記還元剤は、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウムのような次亜リン酸塩;水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムのような水素化ホウ素化合物;ジメチルアミンボラン(DMAB)、トリメチルアミンボラン、トリエチルアミンボランのようなアミンボラン化合物;またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0049】
前記メッキ液内において、前記還元剤の濃度は、使用する還元剤の種類によっても異なる。
【0050】
前記還元剤の濃度は、前記還元剤が次亜リン酸ナトリウムである場合には、20~50g/Lでもあり、前記還元剤がDMABである場合には、1~10g/Lまたは3~5g/Lでもあり、前記それぞれの範囲内において、メッキ液の分解または成膜に長期間を必要とする問題などを防止する効果がある。
【0051】
前記錯化剤は、ニッケル化合物の沈澱を防止し、ニッケルの析出反応を調節する役割を行う。
【0052】
前記錯化剤は、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、マロン酸、シュウ酸、アジピン酸などのジカルボン酸;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニンなどのアミノカルボン酸;エチレンジアミン四酢酸、ベルセネ(N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸;Versene、Dow Chemical)、カドロール(N,N,N’,N’テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン;Quadrol、BASF)などのエチレンジアミン誘導体;1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸などのホスホン酸;それらの可溶性塩;またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0053】
前記メッキ液内における前記錯化剤の濃度は、0.001~2mol/Lまたは0.002~1mol/Lでもあり、前記範囲内において、メッキ液の分解、及び水酸化ニッケルの沈澱などを防止する効果がある。
【0054】
また、前記メッキ液は、下記化学式1で表示される硫黄含有ベンゾチアゾール系化合物をさらに含んでもよい。
【0055】
【0056】
化学式1で、Xは、炭素数が2以上のアルキル基またはその塩であり、Xは、置換基を有していてもよい。すなわち、X中の水素は、水素以外の任意の元素、または任意の官能基によっても置換される。
【0057】
前記メッキ液内において、前記硫黄含有ベンゾチアゾール系化合物の含有量は、0.1~1g/Lでもあり、前記範囲内において、優秀な皮膜柔軟性を得る効果がある。
【0058】
また、前記メッキ液は、安定剤をさらに含んでもよい。
【0059】
前記安定剤は、酢酸鉛のようなPb化合物と、酢酸ビスマスのようなBi化合物との無機化合物;ブチンジオールのような有機化合物;またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0060】
前記メッキ液は、pHが4~5でもあり、前記範囲内において、メッキ浴の分解を防止し、安定した析出速度を得る効果がある。
【0061】
前記軟性金属箔積層フィルムの製造方法は、前記基材層を設ける段階(S10)と、前記基材層上に、無電解メッキ方式により、第1金属薄膜層を形成する段階(S20)との間に、前記基材層上に接着層を形成する段階をさらに含んでもよい。
【0062】
前記第1金属薄膜層熱処理段階(S30)は、前記第1金属薄膜層形成段階(S20)で形成された前記第1金属薄膜層内に存在する残留有機物及びガスのような不純物を除去し、前記第2金属薄膜層の電解メッキ時のブリスター(blister)または気泡の発生により、前記第2金属薄膜層の表面に、ピンホール欠点または突起欠点が発生することを防止する役割を行う。
【0063】
前記第1金属薄膜層熱処理段階(S30)は、30~180℃の温度で、20~80秒間遂行されうる。前記熱処理温度及び熱処理時間の範囲内において熱処理を実施すれば、突起やピンホールなどの表面欠点がない優秀な軟性銅箔積層フィルムを製造することができる。
【0064】
前記第2金属薄膜層形成段階(S40)において、前記電解メッキは、当該技術分野で通常的に使用される方法を介しても遂行される。例えば、前記電解メッキは、硫酸銅及び硫酸を主成分として含むメッキ液を使用して行われ、前記第1金属薄膜層に、前記第2金属薄膜層を形成することができる。
【0065】
例えば、前記電解メッキは、銅が15~40g/L、15~38g/Lまたは17~36g/Lの濃度で含まれたメッキ液を使用しても遂行される。
【0066】
また、前記電解メッキは、メッキ液の温度が、22~37℃、25~35℃または27~34℃に維持され、前記範囲内において、メッキ層形成が容易でありながらも、生産性にすぐれるという効果がある。
【0067】
さらに、前記メッキ液には、生産性及び表面均一性の改善のために、公知の添加剤、例えば、光沢剤、レベリング剤(leveler)、補正剤(carrier)、緩和剤などが添加されうる。
【0068】
また、前記電解メッキは、電流密度が0.1~20A/m2、0.1~17A/m2、または0.3~15A/m2の条件下でも遂行され、前記範囲内において、前記第2金属薄膜層形成が容易でありながらも、生産性にすぐれるという効果がある。
【0069】
以下、実施例を挙げ、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は、そのような実施例に限定されるのではない。
【0070】
[実施例]
<実施例1:軟性銅箔積層板の製造>
まず、基材層として、厚みが25μmである絶縁性ポリイミドフィルム(Kapton 100ENC、TDC)を使用した。
【0071】
その後、前述のところで製造された基材層上に、無電解メッキ方式でニッケルを蒸着し、厚みが0.1μmであるニッケル薄膜層を形成した。ここで、該無電解メッキ方式は、ポリイミドフィルムをその平滑面が水平に配向された状態で、ニッケルメッキ浴に浸漬させてから取り出す過程を反復することによってメッキがなされるようにする方式である。
【0072】
その後、前述のところで形成されたニッケル薄膜層に対し、40℃の温度で60秒間熱処理を施した。
【0073】
前述のところの熱処理直後、電解メッキ方式で、前記ニッケル薄膜層上に、厚みが2μmである銅薄膜層を形成した。また、前記電解メッキのメッキ液としては、硫酸銅水溶液に、塩素及びその他添加剤(レベリング剤、光沢剤(brightener)及び補正剤)を添加したものを使用した。
【0074】
結果として、
図1に図示された軟性銅箔積層フィルムと同様に、ポリイミドフィルムの一面上に、ニッケル薄膜層及び銅薄膜層をこの順に含み、ポリイミドフィルムの他面上に、ニッケル薄膜層及び銅薄膜層をこの順に含む軟性銅箔積層フィルムが得られた。
【0075】
<実施例2:軟性銅箔積層板の製造>
前記実施例1において、無電解メッキ方式でニッケル薄膜層を形成した後、前述のところで形成されたニッケル薄膜層に対し、40℃の温度で60秒間熱処理を施し、次に、常温(約25℃)で24時間放置した後、電解メッキ方式で、前記ニッケル薄膜層上に、銅薄膜層を形成したことを除いては、前記実施例1と同一方法で、軟性銅箔積層板を製造した。
【0076】
<比較例1:軟性銅箔積層板の製造>
まず、基材層として、厚みが25μmである絶縁性ポリイミドフィルム(Kapton 100ENC、TDC)を使用した。
【0077】
その後、前記製造された基材層上に、無電解メッキ方式でニッケルを蒸着し、厚みが0.1μmであるニッケル薄膜層を形成した。ここで、該無電解メッキ方式は、ポリイミドフィルムを、その平滑面が水平に配向された状態でニッケルメッキ浴に浸漬させてから取り出す過程を反復することにより、メッキがなされるようにする方式である。
【0078】
その後、前述のところで形成されたニッケル薄膜層に対して熱処理を行わず、直ちに電解メッキ方式で、前記ニッケル薄膜層上に、厚みが2μmである銅薄膜層を形成した。また、前記電解メッキのメッキ液としては、硫酸銅水溶液に塩素及びその他添加剤(レベリング剤、光沢剤及び補正剤)を添加したものを使用した。
【0079】
結果として、
図1に図示された軟性銅箔積層フィルムと同様に、ポリイミドフィルムの一面上に、ニッケル薄膜層及び銅薄膜層をこの順に含み、ポリイミドフィルムの他面上に、ニッケル薄膜層及び銅薄膜層をこの順に含む軟性銅箔積層フィルムが得られた。
【0080】
<比較例2:軟性銅箔積層板の製造>
前記比較例1において、無電解メッキ方式でニッケル薄膜層を形成した後、前記形成されたニッケル薄膜層に対して熱処理を行わず、常温(約25℃)で24時間放置した後、電解メッキ方式により、前記ニッケル薄膜層上に銅薄膜層を形成したことを除いては、前記比較例1と同一方法で軟性銅箔積層板を製造した。
【0081】
<評価例>
前記実施例1~2及び比較例1~2で製造された軟性銅箔積層フィルムの物性を、下記方法によって測定し、その結果を、下記表1、及び
図2ないし
図7に示した。
【0082】
<評価例1:突起測定>
前記各軟性銅箔積層フィルムを、250mmx50mmサイズに切断してサンプルを作った後、Off-line試片欠点検査機(AVS-900C、アジュハイテック社)を使用し、銅薄膜層の表面検査を実施し、突起欠点をマーキングした後、レーザ顕微鏡(VK8550、キーエンス社)を利用し、高さが1μm超過2μm未満の突起欠点数を測定した。
【0083】
<評価例2:ピンホール測定>
前記各軟性銅箔積層フィルムを156mmx300mmサイズに切断し、サンプルを作った後、ピンホール測定が可能になるように、両面において、測定面の反対側面(すなわち、
図1の12’ 及び13’に対応する部分)を全面エッチングした後、ハロゲンランプを利用するピンホール測定器(東レ尖端素材自体作製)を使用し、フィルムを透過するピンホールを肉眼で観察して欠点数を測定した。
【0084】
【0085】
*前記表1において、括弧内の数字は、換算値であり、単位表面積(m2)当たり個数である。
【0086】
前記表1、
図2及び
図3を参照すれば、実施例1~2で製造された軟性銅箔積層フィルムは、比較例1~2で製造された軟性銅箔積層フィルムに比べ、突起の個数、及びピンホールの個数がはるかに少ないということが分かった。具体的には、実施例1~2で製造された軟性銅箔積層フィルムは、単位表面積(m
2)当たり100個以下のピンホール欠点、及び単位表面積(m
2)当たり100個以下の突起を有するということが分かった。一方、比較例1~2で製造された軟性銅箔積層フィルムは、単位表面積(m
2)当たり400個以上のピンホール欠点、及び単位表面積(m
2)当たり500個以上の突起を有するということが分かった。
【0087】
<評価例3:表面写真>
前記各軟性銅箔積層フィルムを、上から下に撮影した後、表面欠点部位をペンで表示し、その結果を、
図4ないし
図7に示した。
図4は、実施例1で製造された軟性金属箔積層フィルムにおける銅箔表面の状態を示す写真であり、
図5は、実施例2で製造された軟性金属箔積層フィルムにおける銅箔表面の状態を示す写真であり、
図6は、比較例1で製造された軟性金属箔積層フィルムにおける銅箔表面の状態を示す写真であり、
図7は、比較例2で製造された軟性金属箔積層フィルムにおける銅箔表面の状態を示す写真である。
【0088】
図4及び
図5を参照すれば、実施例1~2で製造された軟性銅箔積層フィルムは、表面欠点の個数が非常に少ないということを確認することができる。
【0089】
一方、
図6及び
図7を参照すれば、比較例1~2で製造された軟性銅箔積層フィルムは、表面欠点の個数がかなり多いということを確認することができる。
【0090】
本発明は、図面及び実施例を参照して説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解するであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって定められるものである。