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特許7203989電磁波で動作する距離センサをテストする検査装置の動作のための方法および相応する検査装置
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  • 特許-電磁波で動作する距離センサをテストする検査装置の動作のための方法および相応する検査装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】電磁波で動作する距離センサをテストする検査装置の動作のための方法および相応する検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20230105BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20230105BHJP
【FI】
G01S7/40 186
G01S7/40 195
G01S13/931
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2021538239
(86)(22)【出願日】2019-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2019087125
(87)【国際公開番号】W WO2020141151
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】62/786,767
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506012213
【氏名又は名称】ディスペース ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】dSPACE GmbH
【住所又は居所原語表記】Rathenaustr.26,D-33102 Paderborn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ポール
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ベルゲン
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-031655(JP,A)
【文献】特開2014-240768(JP,A)
【文献】特開2018-031652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0012517(US,A1)
【文献】米国特許第04450447(US,A)
【文献】特開2010-048673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波で動作する距離センサ(3)をテストする検査装置(2)の動作のための方法(1)であって、すなわち、反射周波数fTXを有する、シミュレートされた、電磁的な反射信号STXを生成および放出する方法(1)であって、
電磁的な自由空間波を、受信周波数fRXおよび信号帯域幅Bを伴う受信信号SRXとして受信し、
電磁的な前記受信信号SRXから前記反射信号STXを生成し、
前記反射周波数fTXは、ドップラ周波数fぶん、前記受信周波数fRXに対してシフトされており、
前記ドップラ周波数fは、前記受信信号SRXの前記信号帯域幅Bよりも小さい、方法(1)において、
前記受信信号SRXを、第1の動作周波数fを有する第1の動作信号Sに変換し、
前記第1の動作周波数fは、前記受信信号SRXの前記受信周波数fRXよりも、変換周波数fぶん小さく、
前記第1の動作信号Sを、第2の動作周波数fを有する第2の動作信号Sに変換し、前記第1の動作周波数fと前記第2の動作周波数fとの間の差の値は、前記信号帯域幅Bと同じかそれより大きまたは、前記信号帯域幅Bと前記ドップラ周波数fとの合計と同じかそれより大き
前記第2の動作信号Sを、第3の動作周波数fを有する第3の動作信号Sに変換し、前記第3の動作周波数fは、前記ドップラ周波数fぶんシフトされた前記第1の動作周波数fに相応し、
前記第3の動作信号Sを、前記変換周波数fぶん増大し、このようにして前記反射信号STXに変換し、放出する、
ことを特徴とする方法(1)。
【請求項2】
前記受信信号SRXの前記第1の動作信号Sへの前記変換を、前記受信信号SRXを前記変換周波数fの局部発振器信号SLOと混合することによって行う、
請求項1記載の方法(1)。
【請求項3】
信号帯域幅Bを有する前記第1の動作信号Sのスペクトルは、少なくとも前記信号帯域幅Bぶん、周波数0から間隔が空けられている、
請求項1または2記載の方法(1)。
【請求項4】
前記第3の動作信号Sの前記反射信号STXへの前記変換は、前記第3の動作信号Sを前記変換周波数fの局部発振器信号SLOと混合することによって行う、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法(1)。
【請求項5】
前記受信信号SRXの混合のための前記変換周波数fの前記局部発振器信号SLOおよび前記反射信号STXの混合のための前記変換周波数fの前記局部発振器信号SLOは、唯一の局部発振器(12)によって生成される同一の局部発振器信号SLOである、
請求項4記載の方法(1)。
【請求項6】
前記第2の動作信号Sの前記第2の動作周波数fは、前記第1の動作信号Sの前記第1の動作周波数fよりも小さい、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法(1)。
【請求項7】
サンプリング周波数fsampleでの前記第1の動作信号Sの時間離散方式のサンプリングおよびその後のサンプリングされた前記第1の動作信号Sのアナログの動作信号Sへのデジタル/アナログ変換によって、前記第1の動作信号Sを前記第2の動作信号Sに変換する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法(1)。
【請求項8】
前記サンプリング周波数fsampleは、前記受信信号SRXの前記信号帯域幅Bよりも大きく、前記第1の動作信号Sをアンダーサンプリングし、したがって、fsampleは、前記第1の動作信号Sのスペクトルにおいて、最大周波数の2倍よりも小さい、
請求項7記載の方法(1)。
【請求項9】
前記サンプリング周波数fsampleは、前記第1の動作信号Sのスペクトルにおいて、前記最大周波数よりも大きい、
請求項8記載の方法(1)。
【請求項10】
前記第2の動作信号Sを、周波数fH1を有する第1の補助信号SH1と混合することによって前記第3の動作信号Sに変換する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法(1)。
【請求項11】
前記第1の補助信号SH1の前記周波数fH1は、前記第1の動作信号Sの前記周波数fと、前記第2の動作信号Sの前記周波数fと、前記ドップラ周波数fもしくは-fと、の合計周波数に相応する、
請求項10記載の方法(1)。
【請求項12】
周波数fH2を有する第2の補助信号SH2と周波数fH3を有する第3の補助信号SH3とを混合することによって前記第1の補助信号SH1を生成し、
前記周波数fH2は、前記第1の動作信号Sの前記周波数fと、前記第2の動作信号Sの前記周波数fと、の合計周波数に相応し、前記周波数fH3は、前記ドップラ周波数fに相応する、
請求項10または11記載の方法(1)。
【請求項13】
前記第2の補助信号SH2を、固定周波数を有する局部発振器(18)によって生成し、前記第3の補助信号SH3を、調整可能な周波数を有する調整可能な発振器(19)によって生成する、
請求項12記載の方法(1)。
【請求項14】
生成された前記信号のうちの少なくとも1つを、適切なバンドパスフィルタ(20)または適切なローパスフィルタによって、スペクトル全体からフィルタリングし、特に、混合過程で、バンドパスフィルタリングまたはローパスフィルタリングを行う、
請求項1から13までのいずれか1項記載の方法(1)。
【請求項15】
前記第2の補助信号SH2と前記第3の補助信号SH3とを混合した後に、極めて狭い帯域の帯域フィルタを使用して、周波数f+f+fを有する混合信号または周波数f+f-fを有する混合信号のうちの1つをフィルタリングする、
請求項12を引用する請求項14記載の方法(1)。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項記載の方法(1)に従って、電磁波で動作する距離センサ(3)をテストする検査装置(2)であって、前記検査装置(2)は、
電磁的な自由空間波を、受信周波数fRXおよび信号帯域幅Bを伴う受信信号SRXとして受信する受信要素(5)と、
反射周波数fTXを有する、シミュレートされた電磁的な反射信号STXを放出する放出要素(6)と、
を有しており、
信号エレクトロニクス(7)は、電磁的な前記受信信号SRXから前記反射信号STXを生成し、
前記信号エレクトロニクス(7)は、反射周波数fTXを有する前記反射信号STXを生成し、前記反射周波数fTXは、シミュレートされるべきドップラ周波数fぶん、前記受信信号SRXの前記受信周波数fRXに対してシフトされており、
前記ドップラ周波数fは、前記受信信号SRXの前記信号帯域幅Bよりも小さい、検査装置(2)において、
前記受信信号SRXは、第1の変換器(8)によって、第1の動作周波数fを有する第1の動作信号Sに変換され、前記第1の動作周波数fは、前記受信信号SRXの前記受信周波数fRXよりも変換周波数fぶん小さく、
前記第1の動作信号Sは、第2の変換器(9)によって、第2の動作周波数fを有する第2の動作信号Sに変換され、前記第1の動作周波数fと前記第2の動作周波数fとの間の差の値は、前記信号帯域幅Bと同じかそれより大きまたは、前記信号帯域幅Bと前記ドップラ周波数fとの合計と同じかそれより大き
前記第2の動作信号Sは、第3の変換器(10)によって、第3の動作周波数fを有する第3の動作信号Sに変換され、前記第3の動作周波数fは、前記ドップラ周波数fぶんシフトされた前記第1の動作周波数fに相応し、
前記第3の動作信号Sは、第4の変換器(11)によって、前記変換周波数fぶん増大され、このようにして、前記反射信号STXに変換され、放出される、
ことを特徴とする検査装置(2)。
【請求項17】
前記受信信号SRXの前記第1の動作信号Sへの前記変換は、混合器として形成されている第1の変換器を用いて、前記受信信号SRXを、第1の局部発振器によって生成された、前記変換周波数fの局部発振器信号SLOと混合することによって行われる、
請求項16記載の検査装置(2)。
【請求項18】
信号帯域幅Bを有する、前記第1の変換器(8)によって生成された前記第1の動作信号Sのスペクトルは、少なくとも前記信号帯域幅Bぶん、周波数0から間隔が空けられている、
請求項16または17記載の検査装置(2)。
【請求項19】
前記第3の動作信号Sの前記反射信号STXへの前記変換は、混合器として構成されている前記第4の変換器(11)によって、前記第3の動作信号S、第1の局部発振器(12)によって生成された、前記変換周波数f の局部発振器信号SLOと混合することによって行われる、
請求項16から18までのいずれか1項記載の検査装置(2)。
【請求項20】
前記第2の変換器(9)によって生成された前記第2の動作信号Sの前記第2の動作周波数fは、前記第1の動作信号Sの前記第1の動作周波数fよりも小さい、
請求項16から19までのいずれか1項記載の検査装置(2)。
【請求項21】
前記第1の動作信号Sは、前記第2の動作信号Sに変換され、これは、前記第2の変換器(9)に含まれているアナログ/デジタル変換器(13)によって、前記第1の動作信号Sを、サンプリング周波数fsampleで、時間離散方式でサンプリングし、次に、前記第2の変換器(9)に含まれているデジタル/アナログ変換器(14)によって、サンプリングされた前記第1の動作信号Sをアナログの動作信号Sにデジタル/アナログ変換することによって行われる、
請求項16から20までのいずれか1項記載の検査装置(2)。
【請求項22】
前記第2の変換器(9)に含まれている前記アナログ/デジタル変換器(13)の前記サンプリング周波数fsampleは、前記受信信号SRXの前記信号帯域幅Bよりも大きく、前記第1の動作信号Sは、アンダーサンプリングされ、したがって、fsampleは、前記第1の動作信号Sのスペクトルにおいて、最大周波数の2倍よりも小さい、
請求項21記載の検査装置(2)。
【請求項23】
前記第2の変換器(9)に含まれている前記アナログ/デジタル変換器(13)の前記サンプリング周波数fsampleは、前記第1の動作信号Sのスペクトルにおいて、前記最大周波数よりも大きい、
請求項22記載の検査装置(2)。
【請求項24】
前記第2の動作信号Sは、混合器(15)として形成されている前記第3の変換器(10)によって、補助信号発生器(16)によって生成された、周波数fH1を有する第1の補助信号SH1と混合することによって、前記第3の動作信号Sに変換される、
請求項16から23までのいずれか1項記載の検査装置(2)。
【請求項25】
前記補助信号発生器(16)によって生成された前記第1の補助信号SH1の前記周波数fH1は、前記第1の動作信号Sの前記周波数fと、前記第2の動作信号Sの前記周波数fと、前記ドップラ周波数fと、の合計周波数に相応する、
請求項24記載の検査装置(2)。
【請求項26】
波数fH2を有する第2の補助信号SH2 と周波数fH3を有する第3の補助信号SH3とを補助信号混合器(17)によって混合することによって前記第1の補助信号SH1が、前記補助信号発生器(16)によって生成され、
前記周波数fH2は、前記第1の動作信号Sの前記周波数fと、前記第2の動作信号Sの前記周波数fと、の合計周波数に相応し、前記周波数fH3は、前記ドップラ周波数fに相応する、
請求項24または25記載の検査装置(2)。
【請求項27】
前記補助信号発生器(16)は、固定周波数を有する局部発振器(18)と、調整可能な周波数を有する調整可能な発振器(19)と、を含んでおり、前記第2の補助信号SH2は、固定周波数を有する前記局部発振器(18)によって生成され、前記第3の補助信号SH3は、調整可能な周波数を有する前記調整可能な発振器(19)によって生成される、
請求項26記載の検査装置(2)。
【請求項28】
生成された前記信号のうちの少なくとも1つは、適切なバンドパスフィルタ(20)または適切なローパスフィルタによって、スペクトル全体からフィルタリングされ、特に、混合過程で、バンドパスフィルタリングまたはローパスフィルタリングが行われる、
請求項16から27までのいずれか1項記載の検査装置(2)。
【請求項29】
前記補助信号混合器(17)によって、前記第2の補助信号SH2と前記第3の補助信号SH3とを混合した後に、極めて狭い帯域のバンドパスフィルタ(20)が使用されて、周波数f+f+fを有する混合信号または周波数f+f-fを有する混合信号のうちの1つがフィルタリングされる、
請求項26または27を引用する請求項28記載の検査装置(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波で動作する距離センサをテストする検査装置の動作のための方法、すなわち、反射周波数fTXを有する、シミュレートされた、電磁的な反射信号STXを生成および放出する方法に関する。ここで、電磁的な自由空間波が受信周波数fRXおよび信号帯域幅Bを伴う受信信号SRXとして受信され、電磁的な受信信号SRXから反射信号STXが生成され、反射周波数fTXは、ドップラ周波数fぶん、受信周波数fRXに対してシフトされており、ドップラ周波数fは、受信信号SRXの信号帯域幅Bよりも小さい。さらに、本発明は、相応する検査装置、すなわち、上述の方法を実施する、電磁波で動作する距離センサをテストする検査装置にも関しており、この検査装置は、電磁的な自由空間波を、受信周波数fRXおよび信号帯域幅Bを伴う受信信号SRXとして受信する受信要素と、反射周波数fTXを有する、シミュレートされた電磁的な反射信号STXを放出する放出要素とを有しており、信号エレクトロニクスは、電磁的な受信信号SRXから反射信号STXを生成し、信号エレクトロニクスは、反射周波数fTXを有する反射信号STXを生成し、ここでこの反射周波数fTXは、シミュレートされるべきドップラ周波数fぶん、受信信号SRXの受信周波数fRXに対してシフトされており、ドップラ周波数fは、受信信号SRXの信号帯域幅Bよりも小さい。
【背景技術】
【0002】
上述した、検査装置の動作のための方法および距離センサをテストする相応の検査装置は、最近では、たとえば自動車分野において、制御機器開発および制御機器テストの分野から知られている。ここで、しばしば生じるテスト場面設定は、シミュレートされた周辺環境を用いて、大量生産された制御機器の機能性をテストすることである。このために、制御機器の周辺環境が、効率的なシミュレーション周辺環境を使用してリアルタイムで、部分的または完全に計算される。ここでこのシミュレーション周辺環境は、制御装置の入力信号である物理的な信号を生成し、シミュレーション周辺環境は、制御機器によって生成された出力信号を受容して、それらをリアルタイムシミュレーションに組み込む。このようにして、制御機器を、実質的に「リアルな」条件下で、シミュレートされた周辺環境において、安全にテストすることができる。テストがどれくらい現実に近いのかは、シミュレーション周辺環境およびそこで計算されたシミュレーションの質に関連する。したがって、制御機器を閉ループ制御回路においてテストすることができ、そのため、このようなテスト場面設定はハードウェアインザループテストとも称される。
【0003】
このようなケースでは、電磁波で動作する距離センサのテストが行われる。自動車分野においては、主に、レーダーセンサが使用される。しかし基本的に、次のような距離センサもテスト可能である。すなわち、電磁波の異なる周波数範囲において、たとえば可視光の範囲において動作する距離センサ、またはたとえばレーザー用途(たとえばLIDAR)でのように、長いコヒーレンス長の電磁波を放射する電磁ビーム源とともに動作する距離センサもテスト可能である。
【0004】
近年の車両では、車両とその支援システムに周辺環境の情報を提供するために、距離センサがより多く使用されるようになってきている。たとえば、車両周辺環境内の対象物の位置および速度が求められる。このような周辺環境情報を使用する支援システムには、たとえば、アダプティブクルーズコントロール(ACC)および衝突被害軽減ブレーキ(AEB)が含まれる。このような安全関連支援システムのテストを、細心の注意を払って実施する必要があることが理解可能であり、ここでは電磁波の伝搬挙動も可能な限り現実に近いように考慮されるべきである。これまで、これは主に、極めて多くの費用と時間とがかかる実際の走行テストによって行われてきた。これらの走行テストは、距離センサをテストする、冒頭に記載した検査装置によって置き換えられてきている。このような検査装置はテストベンチとも称され、ここでは自由空間波による動作も行われる。このようなテストベンチはOTA(over-the-air)テストベンチとも称され、ここではテストされる距離センサが実際に自由空間に、すなわちガイドされずに、電磁波を放出し、また自由空間から電磁波を、シミュレーションされた反射信号として受信する。このようなOTAテストベンチの利点は、センサの放出要素とセンサの受信要素とが関与する放出動作および受信動作を含む、テストされる距離センサに関連する一連の機能を広範にチェックできることである。
【0005】
テストされる距離センサが使用する電磁波の種類に関係なく、距離センサをテストする際に、必要な電子信号処理に極めて高い要求が課せられる。周辺環境における対象物までの距離は、多くの場合、放出された電磁波が対象物に到達し、反射されて、対象物から距離センサに戻ってくるまでの信号伝搬時間によって直接的に求められる。周辺環境内の対象物の半径方向の速度成分は、放出された電磁波と反射された電磁波との間の周波数シフト(ドップラシフト)を介して決定される。
【0006】
電磁波は光速で伝搬するので、ここでは極めて短い信号伝搬時間が分解される必要がある。たとえば、1メートルの最短距離を検出できるようにするためには、信号伝搬時間をナノ秒の範囲で分解する必要がある。最短距離の問題に関係なく、センチメートルの範囲のより長い距離が検出されるべき場合には、サブナノ秒の範囲においても伝搬時間の差を分解することができなければならない。
【0007】
本発明は、特定の半径方向速度で、テストされる距離センサから離れる、またはテストされる距離センサに近づく移動対象物のシミュレーションに関する。このような半径方向の動きの成分は、テストされる距離センサによって放出された送信信号の周波数と比較した、反射された反射信号の周波数シフトを検出することによって求められる。このような周波数シフトは、既に冒頭で述べたドップラ周波数fである。
【0008】
テストベンチもしくは検査装置では、テストされる距離センサから放出された電磁波は実際に反射されるべきではなく、むしろ放出された電磁波は、検査装置の受信要素によって受信され、後続の高速の信号エレクトロニクス、すなわち距離シミュレータおよび移動シミュレータにおいて処理される。すなわち、伝搬時間遅延および周波数変調が行われる。シミュレートされる周辺環境対象物までのシミュレートされる距離に応じて、またはテストされる距離センサに対する周辺環境対象物の半径方向の相対速度に応じて、相応に、時間遅延された、かつ/またはドップラ周波数ぶん周波数シフトされた信号が、信号エレクトロニクスによって生成され、シミュレートされた、すなわち実際のものではない反射信号が、検査装置の放出要素を介して、再び、テストされる距離センサの方向において放射される。これによって、距離センサにおいて、リアルな周辺環境の印象が作成される。この環境は、場合によっては、シミュレートされた周辺環境において、離れている距離が異なり、かつ移動速度が異なる複数の対象物も伴う。
【0009】
従来技術(「Echte Echos im Labor」:2017年12月のdSPACE Magazin 2/2017)から知られている検査装置は、本願では詳細には考察されない機械的なテストベンチ構造と、シミュレートされた反射信号を生成する信号エレクトロニクスとを特徴としている。すなわちここで重要なのは、特に、ドップラ周波数fぶんの受信信号の周波数シフトである。ここでの特別な課題は、まったく異なる周波数で信号が互いに処理される必要があることである。周波数は何桁も異なる場合がある。実際の例に基づいて、これを明らかにする。たとえば、テストされる距離センサの送信信号の(中心)周波数が77GHzであり、対象物が距離センサに対して半径方向に100m/sで移動する場合(これはいずれにせよ360km/hに相応し、自動車分野では実際には既に非現実的に高い速度である)、ドップラ周波数f、すなわちテストされる距離センサでの放出信号と受信信号との周波数差は、約51.55kHzにすぎない(第一次近似では、光速cに比べて遅い対象物の速度vおよび周波数fを有する、放出されたレーダー信号に対して、非相対的に、f=2*v/c*fが適用され、レーダービームの放出箇所で、すなわち反射後に作用が2倍になるため、係数は「2」とされている)。すなわち、周波数間の差は僅か千分の1パーミルの範囲にあり、それに応じて信号エレクトロニクスの精度に高い要求が課せられる。信号エレクトロニクスは、上述の理由で、多くの場合、複雑に構築されており、実装に相応の費用がかかる。レーダー信号自体の帯域幅が1GHzである場合、このような基準値に対しても、この比のクリチカルな度合がそれほど下がるわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、冒頭に記載した、電磁波で動作する距離センサをテストする検査装置の動作のための方法およびこれに関する検査装置を、受信信号から、比較的小さいドップラ周波数ぶん受信信号に対して周波数変調された所望の反射信号を比較的容易に生成することができるように、構成し、発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題は、本発明に相応に、冒頭に示した、電磁波で動作する距離センサをテストする検査装置の動作のための方法において、次のことによって解決される。すなわち、受信信号SRX、すなわち検査装置が自由空間波として直接的に、テストされる距離センサから得た受信信号SRXが第1の動作周波数fを有する第1の動作信号Sに変換されることによって解決され、ここでこの動作周波数fは、受信信号SRXの受信周波数fRXよりも、変換周波数fぶん小さい。これによってまずは基本的に、信号エレクトロニクスが、受信信号SRXが有している周波数よりも格段に低い周波数で内部動作することが可能になる。ここで大きな周波数跳躍fを実現することに意味がある。たとえば、受信信号SRXの周波数fRXが77GHzの場合、理想的には10GHz未満の範囲で変換が行われるべきである。
【0012】
さらに、第1の動作信号Sが、第2の動作周波数fを有する第2の動作信号Sに変換される。すなわち、第2の動作信号Sは第2の動作周波数fを有しており、ここで第1の動作周波数fと第2の動作周波数fとの間の差の値は、少なくとも信号帯域幅Bと同じ大きさであり、有利には、少なくとも、信号帯域幅Bとドップラ周波数fとの合計と同じ大きさである。このような措置の有用性は、後続のステップに関連してはじめて明らかになる。ここでは、第2の動作信号Sが、第3の動作周波数fを有する第3の動作信号Sに変換される。すなわち、第3の動作信号Sは、このような第3の動作周波数fを有している。ここで第3の動作周波数fは、ドップラ周波数fぶんシフトされた第1の動作周波数fに相応する。
【0013】
最後に、このような第3の動作信号Sが、変換周波数fぶん増大され、このようにして、反射信号STXに変換され、放出される。変換周波数fは、また、入力領域において、受信信号SRXが第1の動作信号Sに周波数的に下げられたのと同じ変換周波数fである。受信信号SRXを変換周波数fによって第1の動作信号Sに下げ、同じ変換周波数fによって第3の動作信号を上げることによって、一方では、本願において提示される方法を実現する興味深い回路技術的な可能性が開かれ、他方ではこれによって、第1の動作信号Sの第2の動作信号Sへの変換、および第2の動作信号Sの第3の動作信号Sへの変換に影響を与える境界条件が規定される。
【0014】
冒頭で、受信信号SRXが、受信周波数fRXと信号帯域幅Bとを有することを述べた。これは、信号の周波数スペクトルが中心周波数fRXを有しており、振幅≠0がそれぞれ左右に対称的に、すなわちより小さい周波数の側と、より大きい周波数の側とに向かって、詳細には信号帯域幅Bで延在していることを意味する。すなわち、周波数スペクトルは、中心周波数fRXから左にB/2ぶん、右にB/2ぶん延在している。本願で扱う他の信号も同様に理解されるべきである。
【0015】
この方法の別の構成では、受信信号SRXの第1の動作信号Sへの変換は、受信信号SRXを変換周波数fの局部発振器信号SLOと混合することによって行われる。この混合時に、受信信号SRXは、その中心周波数位置で、すなわち、局部発振器信号SLOの変換周波数fに関連して変換される。有利には、たとえば乗算方式の混合では、適切なローパスフィルタまたはバンドパスフィルタを使用して、ダウンミックスされた信号のみが得られる。
【0016】
別の有利な構成では、第3の動作信号Sの反射信号STXへの変換は、第3の動作信号Sを変換周波数fの局部発振器信号SLOと混合することによって行われる。これは、受信信号SRXを第1の動作信号Sに同時にアップミックスすることに関連して、有利である。すなわちこのようなケースにおいて、ダウンミックスの場合にも、アップミックスの場合にも、変換周波数fの局部発振器信号SLOは、唯一の局部発振器によって生成される同一の局部発振器信号SLOである。このようなソリューションは機器技術的に極めて容易であり、安価に実装可能である。
【0017】
この方法の別の有利な構成は、サンプリング周波数fsampleでの動作信号Sの時間離散方式のサンプリングおよびその後のサンプリングされた動作信号Sのアナログの動作信号Sへのデジタル/アナログ変換によって、第1の動作信号Sが第2の動作信号Sに変換されることを特徴とする。このようなステップは、信号が時間離散方式でサンプリングされると、サンプリングされた信号の周波数スペクトルにおいて、周期的に繰り返される周波数帯域が発生し、この点で、時間離散方式のサンプリングを信号の周波数シフトのために利用できるという事実を利用する。第1の動作信号Sが第1の動作周波数fを有しており、信号の周波数スペクトルがここでも信号帯域幅Bを有している場合、このような帯域は、f+/-n*fsampleの間隔で、サンプリングされた信号において繰り返される。ここでn={…;-3;-2;-1;0;1;2;3;…}である。サンプリングされた信号の負の周波数帯域が、それに応じて周期的に、すなわち負の第1の動作周波数-fからはじめて継続されるべきであることも考慮されるべきである。有利には、この場合には、動作周波数fが、第1の動作信号Sの第1の動作周波数fよりも低い第2の動作信号Sだけがさらに考察される。
【0018】
既に、第1の動作信号Sの第1の動作周波数fが受信信号の受信周波数fRXよりも小さい(場合によっては格段に小さい)ということによって、サンプリングされた動作信号Sのアナログ/デジタル変換もしくは相応するデジタル/アナログ変換に対して、相応に、より低速のアナログ/デジタル変換器もしくはデジタル/アナログ変換器を使用することができ、処理されるべきデータレートを大幅に減らすことができる。
【0019】
有利な構成では、サンプリングのために、サンプリング周波数fsampleが、受信信号SRXの信号帯域幅Bよりも大きいことが必要である。このような措置によって、サンプリングされた第1の動作信号の周期的に繰り返される帯域同士が周波数スペクトルにおいて重ならないことが保証される。これは、サンプリングされた信号の完璧な再構築を可能にするための前提条件である。別の有利な構成では、第1の動作信号Sがアンダーサンプリングされ、したがって、fsampleは、第1の動作信号Sのスペクトルにおいて、最大周波数の2倍よりも小さい。このような設計では、エイリアシングもしくは折り返しによって、サンプリングされた信号の周波数スペクトルにおいて、サンプリングされた信号の周波数よりも周波数的に小さい成分が発生し得る。しかし、多くの場合において望ましくないこのような作用を所期のように利用することができ、これはしばしばデジタルダウンコンバージョン(DDC)と称される。低周波数エイリアシング帯域もしくは折り返し帯域が、高周波数信号の低周波数の写し取りにすぎないという知識によって、サンプリングされた信号を、低周波数エイリアシング帯域もしくは低周波数折り返し帯域から完璧に再構築することができる。
【0020】
ある構成では、第2の動作信号Sおよび第3の動作信号Sは、周波数fH1を有する第1の補助信号SH1と混合することによって変換される。有利には、この場合には、第1の補助信号SH1の周波数fH1は、第1の動作信号Sの周波数fと、第2の動作信号Sの周波数fと、ドップラ周波数fもしくは負のドップラ周波数-fと、の合計周波数に相応する。ここで既に明らかなように、このような第1の補助信号SH1が第2の動作周波数fを有する第2の動作信号Sとダウンミックスされると、所望のように、周波数f+/-fを有する第3の動作信号Sが結果として生じる。ここで、このような動作信号Sが変換周波数fとアップミックスされると、結果として、所望の反射周波数fTXを有する反射信号が生じる。反射周波数fTXは、受信信号SRXの周波数fRXに相応するが、ドップラ周波数fぶん増大(半径方向に接近する対象物)または低減(半径方向に遠ざかる対象物)されている。
【0021】
提示された方法は、特に、第2の動作信号Sから第3の動作信号Sを生成する場合、主にアナログ回路技術を使用して、機器技術的に極めて容易かつ安価に実施される。この際に、シミュレートされるドップラ周波数fが信号に関して導入される。
【0022】
上述の課題は、電磁波で動作する距離センサをテストする、冒頭に提示された検査装置において、次のことによって解決される。すなわち、この検査装置によって上述の方法を実施することを可能にする相応の手段が提供されることによって解決される。ここでこれらの手段は具体的に、検査装置が動作時に上述の方法を実施するように構成されている。特にこれは、受信信号SRXが第1の変換器によって、第1の動作周波数fを有する第1の動作信号Sに変換されることを意味し、ここで動作周波数fは、受信信号SRXの受信周波数fRXよりも変換周波数fぶん小さく、第1の動作信号Sは第2の変換器によって、第2の動作周波数fを有する第2の動作信号Sに変換され、第1の動作周波数fと第2の動作周波数fとの間の差の値は、少なくとも信号帯域幅Bと同じ大きさであり、有利には、少なくとも、信号帯域幅Bとドップラ周波数fとの合計と同じ大きさであり、第2の動作信号Sは、第3の変換器によって、第3の動作周波数fを有する第3の動作信号Sに変換される。ここで第3の動作周波数fは、ドップラ周波数fぶんシフトされた第1の動作周波数fに相応し、第3の動作信号Sは、第4の変換器によって、変換周波数fぶん増大され、このようにして、反射信号STXに変換され、放出される。
【0023】
詳細には、ここで、本発明に相応する、電磁波で動作する距離センサをテストする検査装置の動作のための方法およびこれに関する検査装置を構成し、発展させるための多数の手法が存在している。このために、一方では、独立請求項に従属する特許請求項が参照され、他方では、図面と併せて実施例の以降の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来技術から知られている、電磁波で動作する距離センサをテストする検査装置の動作のための方法ならびにそのような検査装置を示す図である。
図2】さまざまな周波数スペクトルの信号に基づき、本発明の方法を示す図である。
図3】概略的な信号フローチャートに基づき、発明の方法および本発明の装置を示す図である。
図4】アナログ技術での第3の変換器をより詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、電磁波で動作する距離センサ3をテストする検査装置2の動作のための方法1ならびに相応する検査装置2を示している。方法1および検査装置2は、距離センサ3をテストするために使用される。ここで距離センサ3は、レーダー波で動作する距離センサ3である。距離センサ3は、レーダー信号を放出し、実際の使用において対象物によって反射されたレーダー信号を受信する送受信装置4を備えている。示されているテスト状況では、実際の対象物は存在しておらず、テストされる距離センサ3に関して、実際の対象物をシミュレートする方法1が実装された検査装置2のみが存在している。方法1および検査装置2は、反射周波数fTXを有する、シミュレートされた電磁的な反射信号STXを生成および放出するために用いられる。
【0026】
距離センサ3から放出された電磁波は、受信周波数fRXを有する受信信号SRXである電磁的な自由空間波として受信される。受信信号SRXは付加的に信号帯域幅Bを有している。これは、図1において、最も上の周波数スペクトルに基づいて示されている。反射信号STXは、電磁的な受信信号SRXから、ここでは詳細に示されていない様式で生成され、ここでは反射周波数fTXが、ドップラ周波数fぶん、受信周波数fRXに対してシフトされている。ここでドップラ周波数fは、受信信号SRXの信号帯域幅Bより小さい。これは、図1の第2の周波数スペクトルに基づいて、下方の部分に示されている。
【0027】
本発明では、受信信号SRXは、77GHzの中心周波数fRXおよび1GHzの帯域幅Bを有している。受信信号SRXを受信するために、検査装置2は受信要素5を有している。シミュレートされた電磁的な反射信号STXを放出するために、検査装置2は放出要素6を有している。図1に示された実施例では、受信要素5および放出要素6は別個に構成されたアンテナであるが、必ずしもそうである必要はなく、むしろ受信要素5および放出要素6は、唯一の共通アンテナとして構成されていてよい。検査装置2は、信号エレクトロニクス7を含んでおり、これは受信された受信信号SRXから反射信号STXを生成するために用いられる。これが先行技術でどのように行われるのかは、本願には詳細には示されていない。
【0028】
図2は、ドップラ周波数fによってシフトされた反射信号STXを、受信信号SRXから生成する方法1を示している。この方法はここでは、関連するさまざまな信号が周波数の観点から示されている周波数スペクトルに基づいて示されている。最も上の周波数スペクトルでは、ここでは77GHzの受信周波数fRXを有している高周波受信信号SRXが、2.1GHzの第1の動作周波数fを有する第1の動作信号Sに変換されることが見て取れる。ここで、動作周波数fは、受信信号SRXの受信周波数fRXよりも変換周波数fぶん小さい。このような第1の周波数変換は、全体的に、回路技術的に扱いやすい、より小さい値の周波数範囲において動作できるようにするために実行される。ドップラ周波数fぶんの所望の周波数オフセットは、受信信号SRXの帯域幅Bと比較して極めて小さいので、受信信号SRXを反射信号STXに直接的に変換することが不可能であることが判明している。受信信号SRXと、ドップラ周波数fを有する信号との直接的な混合または受信信号SRXの帯域幅よりも格段に小さいサンプリングレートfsampleでの受信信号SRXの時間離散方式のサンプリングも、周波数スペクトルにおけるスペクトルの相互遮蔽を生じさせてしまうだろう。その結果、反射信号STXは、唯一の周波数シフトされた受信信号SRXではなくなり、まったく異なる信号になるだろう。
【0029】
図3を、図2と並行して観察するのは合理的である。図3は、方法1の信号経過に加えて、同時に検査装置2も具象的に示している。図3には、図2のさまざまなステップを実行する手段も具象的に示されている。たとえば、図3では、受信信号SRXが、第1の変換器8によって第1の動作信号Sに変換されることが見て取れる。
【0030】
ここで、第1の動作信号Sが、第2の動作周波数fを有する第2の動作信号Sに変換され、これは図2の中央の周波数スペクトルにおいて示されている。ここで第1の動作周波数fと第2の動作周波数fとの間の差の値は、少なくとも信号帯域幅Bと同じ大きさである。これによって、周波数スペクトルにおいて重複する帯域が生じないことが保証される。このような場合には、第2の動作信号の第2の動作周波数fは、0.6GHzであるように選択されている。スペクトルの間隔は上述の要件によって、十分に大きく、第2の動作信号Sの後続の周波数シフトの場合でも、発生する可能性のある周波数帯域間の衝突はない。具象的に、第1の動作信号Sは、第2の変換器9によって再度、第2の動作信号Sに、周波数的に変換される(図3)。
【0031】
さらなるステップにおいて、第2の動作信号Sが、第3の動作周波数fを有する第3の動作信号Sに変換される。第3の動作周波数fは、ドップラ周波数fぶんシフトされた第1の動作周波数fに相応する。図示の例では、ドップラ周波数fが第1の動作周波数fに加えられている。これは、シミュレートされる対象物への接近に相応する。同様に良好に、第3の動作信号Sが、第1の動作周波数fに対して、他の方向においても、すなわち、より低い周波数に向かってシフトされていてよく、これは、遠ざかる対象物に相応するであろう。第3の動作周波数fは第1の動作周波数fに関連して選択されているので、ここで第3の動作信号Sを、変換周波数fぶん増大させることができ、すなわち、最も上に示されている周波数スペクトルにおいて、低い周波数範囲に変換するために使用された変換周波数fぶん増大させることができ、これによって、反射信号STXが生じ、最終的に放出され得る。第2の動作信号Sは、第3の変換器10によって、第3の動作信号Sに変換される。それに応じて、第3の動作信号Sは、第4の変換器11によって、変換周波数fぶん増大し、これによって、反射信号STXが生成され、放出される。
【0032】
図3による実施例では、受信信号SRXは、受信信号SRXを、変換周波数fを有する局部発振器信号SLOと混合することによって、第1の動作信号Sに変換される。したがって、第1の変換器8は混合器として形成されている。局部発振器信号SLOは、第1の局部発振器12によって生成される。
【0033】
さまざまな信号を変換する際に、信号帯域幅Bはそのつど保持されたままである。示された実施例(図2における上方の周波数スペクトル)では、第1の動作信号Sのスペクトルが、これが、信号帯域幅Bよりも大きく、周波数0から間隔が空けられているようにシフトされる。なぜなら、第1の動作信号Sのスペクトルの最小周波数は1.6GHzにあるからである。第2の動作信号Sの第2の動作周波数fは、第1の動作信号Sの第1の動作周波数fよりも小さいので、これは、本実施例に関連して役割を果たす(図2における中央の周波数スペクトル)。
【0034】
第3の動作信号の動作周波数fの適切な選択は、第3の動作信号Sを変換周波数fの同じ局部発振器信号SLOと混合することによって、第3の動作信号Sを反射信号STXに変換することを可能にする。したがって、第4の変換器11は、混合器として構成されており、これに、第1の局部発振器12によって生成された局部発振器信号SLOが供給される。これによって、回路技術的な構築が容易になる。なぜなら、入力側で受信信号をダウンミックスするのと、反射信号STXを生成するために出力側で第3の動作信号Sをアップミックスするのとに、同一の混合信号SLOを使用することができるからである。
【0035】
既に述べたように、第2の変換器9によって生成された、第2の動作信号Sの第2の動作周波数fは、第1の動作信号Sの第1の動作周波数fよりも小さい。これは、ゼロ周波数に対する十分な距離が第1の動作信号Sの生成時に残されているため、問題なく可能である。
【0036】
図3に示されているように、第1の動作信号Sおよび第2の動作信号Sは、動作信号Sをサンプリング周波数fsampleによって時間離散方式でサンプリングすることによって変換される。次に、サンプリングされた動作信号Sをデジタル/アナログ変換することによって、アナログの動作信号Sが得られる。これは、第2の変換器9に含まれているアナログ/デジタル変換器13によって、第1の動作信号Sを、サンプリング周波数fsampleで、時間離散方式でサンプリングして、第2の動作信号Sに変換することによって行われる。相応に、第2の変換器9は、サンプリングされた動作信号Sからアナログの動作信号Sを生成するデジタル/アナログ変換器14も含んでいる。一般的な説明部分で説明したように、ここでは、サンプリングされた信号の周波数スペクトルにおいて、信号の時間離散方式のサンプリングの際に、より高い周波数の側へも、より低い周波数の側へも、サンプリングされた信号の周期的に繰り返されるシーケンスが生じるという事実が利用される。
【0037】
動作信号Sが極めて狭い周波数範囲にシフトされているので、アナログ/デジタル変換器13およびデジタル/アナログ変換器14は、比較的小さいデータレートで動作することができる。これもまた、検査装置2もしくは検査装置2の信号エレクトロニクス7の比較的単純な構成に有利に作用する。第2の変換器9は、別の構成では、相応するアナログ/デジタル変換もしくはデジタル/アナログ変換を伴う、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)として構成されている。図示の実施例では、サンプリング周波数fsampleは、受信信号SRXの信号帯域幅Bよりも大きく、これは、周波数スペクトル(ここでは詳細には示されていない)において周期的に隣接する周波数帯域が重なり合うのを防ぎ、サンプリングされた信号を再び完璧に再構築することができる。図示の実施例では、第1の動作信号Sは、第2の変換器9によってアンダーサンプリングされる。サンプリング周波数fsampleは2.7GHzで実現されているため、第1の動作信号Sのスペクトルにおいて、最大周波数の2倍よりも小さく、ここでこの最大周波数は2.6GHzである。このように実現されたアンダーサンプリングによって、より低い周波数範囲において周波数帯域が生じる。これらの周波数帯域がサンプリングされた信号において、元来、より高い周波数に相応するという知識があれば、より低い周波数の周波数帯域を利用しても、サンプリングされた信号を完璧に再構築することができる(デジタルダウンコンバージョン)。
【0038】
図示の実施例では、第2の変換器9に含まれているアナログ/デジタル変換器13のサンプリング周波数fsampleは、第1の動作信号Sのスペクトルにおいて、最大周波数よりも大きく、すなわち2.6GHzよりも大きい。選択されたサンプリング周波数では、いわゆる折り返しが発生し、これは、サンプリングされた周波数帯のミラーリングへとつながる(逆位置、図2における中央の周波数スペクトルを参照)。
【0039】
ドップラ周波数fの導入は、第3の変換器10において行われる。第3の変換器10の構造ならびに第3の変換器10において実装される方法は、図4の信号フローチャートにおいて詳細に示されている。図4では、表現の詳細度合が左から右へと増大している。中央の図では、周波数fH1を有する第1の補助信号SH1と混合することによって、第2の動作信号Sが第3の動作信号Sに変換されることが見て取れる。したがって、第3の変換器10は、実質的に混合器として構成されている、もしくはそのような混合器15を中心要素として含んでいる。第1の補助信号SH1は、補助信号発生器16によって生成される。
【0040】
補助信号発生器16によって生成された第1の補助信号SH1の周波数fH1は、第1の動作信号Sの周波数fと、第2の動作信号Sの周波数fと、ドップラ周波数fもしくは負のドップラ周波数-fと、の合計周波数に相応する。その結果、受信信号SRXの周波数シフトは、ドップラ周波数fぶん増加した周波数とドップラ周波数fぶん減少した周波数との両方に対して実現可能である。図4ではまた、周波数fH2を有する第2の補助信号SH2と、周波数fH3を有する第3の補助信号SH3とを補助信号混合器17によって混合することによって第1の補助信号SH1が、補助信号発生器16によって生成されることが見て取れる。周波数fH2は、第1の動作信号Sの周波数fと、第2の動作信号Sの周波数fと、の合計周波数に相応する。第3の補助信号SH3の周波数fH3は、ドップラ周波数fに相応する。補助信号発生器16は、固定周波数を有する局部発振器18と、調整可能な周波数を有する調整可能な発振器19とを含んでいる。したがって、第2の補助信号SH2は、固定周波数を有する局部発振器18によって生成され、第3の補助信号SH3は、調整可能な周波数を有する調整可能な発振器19によって生成される。このような調整可能な周波数はドップラ周波数fであり、このドップラ周波数fぶん、受信信号SRXがシフトされるべきである。ドップラ周波数fは通常、周辺環境シミュレーションから設定され、周辺環境シミュレータによってシミュレートされる、絶えず変化する運転状況に応じて絶えず変化する。
【0041】
特に図4の表示から見て取れるように、生成された信号は、少なくとも部分的に、適切なバンドパスフィルタ20または適切なローパスフィルタによって、スペクトル全体からフィルタリングされ、特に、混合過程で、バンドパスフィルタリングまたはローパスフィルタリングが行われる。
【0042】
ここでは、補助信号混合器17によって、第2の補助信号SH2と第3の補助信号SH3とを混合した後に、極めて狭い帯域のバンドパスフィルタ20を使用して、生じている2つの混合信号のうちの1つがフィルタリングされ、ここでこれは、図3における最も下の表示から見て取れるように、周波数f+f+fを有する混合信号である。
【符号の説明】
【0043】
1 方法
2 検査装置
3 距離センサ
4 送受信装置
5 受信要素
6 放出要素
7 信号エレクトロニクス
8 第1の変換器
9 第2の変換器
10 第3の変換器
11 第4の変換器
12 第1の局部発振器
13 アナログ/デジタル変換器
14 デジタル/アナログ変換器
15 混合器
16 補助信号発生器
17 補助信号混合器
18 局部発振器
19 調整可能な発振器
20 バンドパスフィルタ
図1
図2
図3
図4