(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】鋼コンクリート複合構造物及び鋼コンクリート複合構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/05 20060101AFI20230105BHJP
【FI】
E02D29/05 F
(21)【出願番号】P 2022098091
(22)【出願日】2022-06-17
【審査請求日】2022-06-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000162216
【氏名又は名称】共和コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】水上 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 智
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-204643(JP,A)
【文献】特開2007-297836(JP,A)
【文献】特開2003-293016(JP,A)
【文献】特開2018-012985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底版、及び、前記底版から上方に延びる一対の側壁を備えるコンクリート部材と、
前記一対の側壁の上端同士を接続する頂版と、
を備え、
前記頂版は、中空部を有する角型鋼管を備え、
前記コンクリート部材は、前記側壁の内部に配置され、上端が前記側壁から露出した側壁鉄筋を更に備え、
前記側壁鉄筋の上端は、前記角型鋼管の内部に配置され、
前記側壁鉄筋の上端には、支圧板が接合される、
ことを特徴とする鋼コンクリート複合構造物。
【請求項2】
前記角型鋼管は、前記角型鋼管の軸方向に直交する方向に複数設けられ、
前記複数の角型鋼管は、互いに接合されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の鋼コンクリート複合構造物。
【請求項3】
前記頂版は、前記角型鋼管の内部に複数配置され、前記角型鋼管を、前記角型鋼管の軸方向において複数の区間に区切る仕切板を更に備え、
前記複数の区間のうち、前記角型鋼管の軸方向の端部を除く一部には、前記角型鋼管を、前記角型鋼管の軸方向に直交する方向に貫通する貫通部材が配置され、
前記複数の区間の一部と、前記角型鋼管の軸方向の端部に位置する前記区間には、コンクリートが充填されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の鋼コンクリート複合構造物。
【請求項4】
前記角型鋼管の軸方向の端部に位置する前記区間の上面には、空気孔が設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の鋼コンクリート複合構造物。
【請求項5】
前記支圧板は、前記側壁鉄筋の上端に螺合部材により固定される、
ことを特徴とする請求項
1に記載の鋼コンクリート複合構造物。
【請求項6】
前記角型鋼管の下面には、前記側壁鉄筋が配置される鉄筋貫通孔が設けられ、
前記鉄筋貫通孔の開口面積は、前記支圧板の面積よりも小さい、
ことを特徴とする請求項
5に記載の鋼コンクリート複合構造物。
【請求項7】
前記コンクリート部材は、前記側壁の内部に配置され、上端が前記側壁から露出した側壁鉄筋を更に備え、
前記頂版は、前記角型鋼管内に配置されるとともに前記角型鋼管の軸方向に延び、一方の端部が前記側壁鉄筋の上端と接合される角型鋼管鉄筋を更に備える、
ことを特徴とする請求項
6に記載の鋼コンクリート複合構造物。
【請求項8】
前記角型鋼管の内部において、前記角型鋼管の軸方向の端部に位置する仕切板を端部仕切板とし、
前記角型鋼管鉄筋の他方の端部は、前記端部仕切板の近傍に位置する、
ことを特徴とする請求項
7に記載の鋼コンクリート複合構造物。
【請求項9】
前記角型鋼管鉄筋と前記側壁鉄筋とを接合する機械式継ぎ手を更に備える、
ことを特徴とする請求項
8に記載の鋼コンクリート複合構造物。
【請求項10】
底版、及び、前記底版から上方に延びる一対の側壁を備えるコンクリート部材と、
前記一対の側壁の上端同士を接続する頂版と、
を備え、
前記頂版は、中空部を有する角型鋼管を備え、
前記コンクリート部材は、前記側壁の内部に配置され、上端が前記側壁から露出した側壁鉄筋を更に備え、
前記頂版は、前記角型鋼管内に配置されるとともに前記角型鋼管の軸方向に延び、一方の端部が前記側壁鉄筋の上端と接合される角型鋼管鉄筋を更に備える、
ことを特徴とする鋼コンクリート複合構造物。
【請求項11】
前記角型鋼管の内部において、前記角型鋼管の軸方向の端部に位置する仕切板を端部仕切板とし、
前記角型鋼管鉄筋の他方の端部は、前記端部仕切板の近傍に位置する、
ことを特徴とする請求項9に記載の鋼コンクリート複合構造物。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか1項に記載の鋼コンクリート複合構造物の施工方法であって、
複数の前記コンクリート部材を設置するコンクリート部材設置工程と、
前記コンクリート部材の上に前記角型鋼管を複数設置する角型鋼管設置工程と、
前記複数の角型鋼管を連結する角型鋼管連結工程と、
前記コンクリート部材の備える側壁鉄筋と前記角型鋼管の備える角型鋼管鉄筋とを連結する鉄筋連結工程と、
前記コンクリート部材と前記角型鋼管との接続部にコンクリートを充填するコンクリート充填工程と、
前記角型鋼管の内部に上端が配置された側壁鉄筋に、支圧板を設ける支圧板設置工程と、
を備える、
ことを特徴とする鋼コンクリート複合構造物の施工方法。
【請求項13】
前記角型鋼管連結工程は、前記角型鋼管設置工程の後に行われる、
ことを特徴とする請求項
12に記載の鋼コンクリート複合構造物の施工方法。
【請求項14】
前記側壁の上端と前記角型鋼管の端部との接続部を隅角部とし、
前記コンクリート充填工程において、前記隅角部と、前記角型鋼管の端部とに、コンクリートを同時に打設する、
ことを特徴とする請求項
12に記載の鋼コンクリート複合構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼コンクリート複合構造物及び鋼コンクリート複合構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル等を建設する際に、鋼コンクリート複合構造物が用いられることがある。
特許文献1では、頂版部材から鉄筋を斜めに突出させ、側壁部材から突出させた鉄筋を、頂版部材から斜め方向に突出させた鉄筋に沿う方向に配設するものとした構造が開示されている。
特許文献2では、側壁の上部にサンドイッチ型複合頂版の鋼殻を配置し、側壁の上部から突出する鉄筋が鋼殻の中に配置された状態でコンクリートを打設することで形成される構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-127200号公報
【文献】特許第6371571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構造をはじめとする従来のボックスカルバート等の鋼コンクリート複合構造物の頂版は、現場打ちコンクリートあるいはプレキャストコンクリートが主である。頂版がプレキャストコンクリートであると、重量が重く、輸送効率が悪い課題がある。また、重量が重い場合は、現地施工用において大きな重機を用意する必要がある為、施工性が低下する課題がある。
特許文献2に記載の構造には、頂版の基礎として鋼製の部材(鋼殻)を使用している。鋼殻はプレキャストコンクリート製の頂版よりも軽量である。しかしながら、施工後の鋼殻の内部にコンクリートが一様に打設される。結果として、構造全体の重量が重くなる。これにより、当該構造を施工する現場の地盤への影響や、構造物の耐震性への影響が課題となる。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、軽量な頂版を備えた鋼コンクリート複合構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る鋼コンクリート複合構造物は、底版、及び、前記底版から上方に延びる一対の側壁を備えるコンクリート部材と、前記一対の側壁の上端同士を接続する頂版と、を備え、前記頂版は、中空部を有する角型鋼管を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、頂版は、中空部を有する角型鋼管を備えている。つまり、側壁の上に角型鋼管を配置することで、頂版を形成することができる。これにより、頂版を、プレキャストコンクリート製の頂版や、鋼殻の内部にコンクリートが一様に打設された頂版と比較して軽量とすることができる。したがって、大きな重機を用いることなく、頂版を形成することができる。よって、施工性を向上することができる。また、完成後の鋼コンクリート複合構造物の重量を軽くすることができる。したがって、施工現場の地盤への影響や、構造物の耐震性への影響を小さくすることができる。
【0008】
また、前記角型鋼管は、前記角型鋼管の軸方向に直交する方向に複数設けられ、前記複数の角型鋼管は、互いに接合されていることを特徴としてもよい。
【0009】
この発明によれば、角型鋼管は、角型鋼管の軸方向に直交する方向に複数設けられ、複数の角型鋼管は、互いに接合されている。ここで、頂版がプレキャストコンクリートである場合、頂版の上を走行する車両の輪荷重等に対応するため、0.5m程度の土かぶりが必要となる。これに対し、頂版が角型鋼管であると、角型鋼管が輪荷重等を直接受けることができる。よって、頂版を上述のような構造とすることで、土かぶりを不要とすることができる。したがって、施工性を向上することができる。また、施工後の鋼コンクリート複合構造物の高さを低くすることができる。さらに、死荷重が軽減できコンクリート部材の薄肉化も可能となる。
【0010】
また、前記頂版は、前記角型鋼管の内部に複数配置され、前記角型鋼管を、前記角型鋼管の軸方向において複数の区間に区切る仕切板を更に備え、前記複数の区間のうち、前記角型鋼管の軸方向の端部を除く一部には、前記角型鋼管を、前記角型鋼管の軸方向に直交する方向に貫通する貫通部材が配置され、前記複数の区間の一部と、前記角型鋼管の軸方向の端部に位置する前記区間には、コンクリートが充填されていることを特徴としてもよい。
【0011】
この発明によれば、仕切板によって仕切られた複数の区間のうち、角型鋼管の軸方向の端部を除く一部には、角型鋼管を、角型鋼管の軸方向に直交する方向に貫通する貫通部材が配置される。これにより、貫通部材によって、互いに隣り合う角型鋼管同士だけでなく、前記直交方向に並ぶ3つ以上の角型鋼管を接合することができる。よって、互いに隣り合う角型鋼管を1つずつ個別に接合する場合と比較して、より多くの数の角型鋼管を一度に接合することができる。よって、施工性を向上することができる。
角型鋼管の複数の区間の一部と、角型鋼管の軸方向の端部に位置する区間には、コンクリートが充填されている。これにより、角型鋼管の内部全体にコンクリートが充填されている場合と比較して、コンクリートの充填量を必要最小限とすることができる。
【0012】
また、前記角型鋼管の軸方向の端部に位置する前記区間の上面には、空気孔が設けられていることを特徴としてもよい。
【0013】
この発明によれば、角型鋼管の軸方向の端部に位置する区間の上面には、空気孔が設けられている。これにより、角型鋼管の軸方向の端部に位置する区間にコンクリートを充填する時、角型鋼管の内部に空気が残ることを防ぐことができる。したがって、角型鋼管の内部をコンクリートで満たすことができる。よって、角型鋼管はコンクリートにより十分な強度を確保することができる。
【0014】
また、前記コンクリート部材は、前記側壁の内部に配置され、上端が前記側壁から露出した側壁鉄筋を更に備え、前記側壁鉄筋の上端は、前記角型鋼管の内部に配置され、前記側壁鉄筋の上端には、支圧板が接合されることを特徴としてもよい。
【0015】
この発明によれば、コンクリート部材の側壁から露出した側壁鉄筋の上端が、角型鋼管の内部に配置される。これにより、コンクリート部材と角型鋼管との位置がずれないように固定することができる。側壁鉄筋の上端には、支圧板が接合される。これにより、角型鋼管の内部に配置された側壁鉄筋が、角型鋼管から抜けることを防ぐことができる。また、角型鋼管の内部に側壁鉄筋が配置された区間にコンクリートが充填された時、コンクリートと側壁鉄筋とを確実に固定することができる。
【0016】
また、前記支圧板は、前記側壁鉄筋の上端に螺合部材により固定されることを特徴としてもよい。
【0017】
この発明によれば、支圧板は、側壁鉄筋の上端に螺合部材により固定される。これにより、支圧板を、側壁鉄筋を角型鋼管の内部に配置した後に取り付けることができる。よって、角型鋼管の内部に側壁鉄筋を配置する作業を容易に行うことができる。したがって、より施工性を向上することができる。
【0018】
また、前記角型鋼管の下面には、前記側壁鉄筋が配置される鉄筋貫通孔が設けられ、前記鉄筋貫通孔の開口面積は、前記支圧板の面積よりも小さいことを特徴としてもよい。
【0019】
この発明によれば、角型鋼管の下面には、側壁鉄筋が配置される鉄筋貫通孔が設けられる。これにより、鉄筋貫通孔を介して、角型鋼管の内部に側壁鉄筋を配置することができる。よって、角型鋼管の内部に側壁鉄筋を配置するために、側壁鉄筋を折り曲げて角型鋼管の端部から側壁鉄筋の端部を挿入するといったことを不要とすることができる。
【0020】
ここで、角型鋼管を安定してコンクリート部材に配置するためには、コンクリート部材の側壁の上端と、角型鋼管の下面とが接するように配置することが好ましい。側壁鉄筋の上端が側壁の上端から露出している場合に、角型鋼管の下面に鉄筋貫通孔が設けられていないと、側壁鉄筋が上方に延びるための領域を、側壁の上端に設ける必要がある。このため、側壁の上端と角型鋼管の下面との接触領域を確保しにくくなる。
【0021】
角型鋼管の下面に鉄筋貫通孔を設けずに、側壁の上端と角型鋼管の下面との接触領域を確保するためには、例えば、側壁の側面から側壁鉄筋を露出させ、側壁鉄筋を適宜折り曲げることで、側壁鉄筋の端部を角型鋼管の端部から挿入することが必要となる。これにより、側壁鉄筋の曲げ点が増加する。よって、施工性に問題が生じる。
【0022】
角型鋼管の下面に鉄筋貫通孔が設けられることで、側壁の上端から露出して上方に延びる側壁鉄筋を、折り曲げることなく角型鋼管の内部に配置することができる。よって、角型鋼管を、角型鋼管の下面がコンクリート部材の側壁の上端に接するように配置することを容易にすることができる。よって、より容易に角型鋼管を安定してコンクリート部材に配置することができる。
鉄筋貫通孔の開口面積は、支圧板の面積よりも小さい。これにより、側壁鉄筋に固定された支圧板が鉄筋貫通孔から抜けることを防ぐことができる。また、鉄筋貫通孔の開口面積を小さくすることで、角型鋼管の断面欠損を最小限にすることができる。よって、角型鋼管の強度への影響を最小限にすることができる。
【0023】
また、前記コンクリート部材は、前記側壁の内部に配置され、上端が前記側壁から露出した側壁鉄筋を更に備え、前記頂版は、前記角型鋼管内に配置されるとともに前記角型鋼管の軸方向に延び、一方の端部が前記側壁鉄筋の上端と接合される角型鋼管鉄筋を更に備えることを特徴としてもよい。
【0024】
この発明によれば、頂版は、角型鋼管内に配置されるとともに角型鋼管の軸方向に延び、一方の端部が側壁鉄筋の上端と接合される角型鋼管鉄筋を更に備える。これにより、角型鋼管の端部を、角型鋼管の軸方向に沿った広い範囲において補強することができる。よって、より角型鋼管を安定して固定することができる。
【0025】
また、前記角型鋼管の内部において、前記角型鋼管の軸方向の端部に位置する仕切板を端部仕切板とし、前記角型鋼管鉄筋の他方の端部は、前記端部仕切板の近傍に位置することを特徴としてもよい。
【0026】
この発明によれば、角型鋼管鉄筋の他方の端部は、端部仕切板の近傍に位置する。これにより、角型鋼管の端部から、端部仕切板までの区間において、角型鋼管を確実に固定や補強することができる。
【0027】
また、前記角型鋼管鉄筋と前記側壁鉄筋とを接合する機械式継ぎ手を更に備えることを特徴としてもよい。
【0028】
この発明によれば、角型鋼管鉄筋と側壁鉄筋とを接合する機械式継ぎ手を更に備える。これにより、角型鋼管鉄筋と側壁鉄筋との固定を、施工現場にて容易に行うことができる。よって、角型鋼管鉄筋と側壁鉄筋とを溶接等により固定する場合と比較して、施工性を向上することができる。
【0029】
また、本発明に係る鋼コンクリート複合構造物の施工方法は、複数の前記コンクリート部材を設置するコンクリート部材設置工程と、前記コンクリート部材の上に前記角型鋼管を複数設置する角型鋼管設置工程と、前記複数の角型鋼管を連結する角型鋼管連結工程と、前記コンクリート部材の備える側壁鉄筋と前記角型鋼管の備える角型鋼管鉄筋とを連結する鉄筋連結工程と、前記コンクリート部材と前記角型鋼管との接続部にコンクリートを充填するコンクリート充填工程と、を備えることを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、コンクリート部材設置工程と、角型鋼管設置工程と、角型鋼管連結工程と、鉄筋連結工程と、コンクリート充填工程と、を備える。
つまり、角型鋼管をコンクリート部材に設置及び固定して接続する作業と、コンクリート部材と角型鋼管との接続部にコンクリートを充填する工程とが別に備えられている。したがって、角型鋼管を設置する時には、角型鋼管の内部にコンクリートが充填されていない。よって、角型鋼管を設置する際、より角型鋼管を軽量な状態とすることができる。これにより、施工性を向上することができる。
【0031】
また、前記角型鋼管連結工程は、前記角型鋼管設置工程の後に行われることを特徴としてもよい。
【0032】
この発明によれば、角型鋼管連結工程は、角型鋼管設置工程の後に行われる。つまり、予め角型鋼管をコンクリート部材の上に設置した後に、角型鋼管同士を連結する。これにより、角型鋼管同士の位置合わせを確実に行った後に、角型鋼管同士を連結することができる。よって、角型鋼管同士の位置合わせの精度を向上することができる。
【0033】
また、前記角型鋼管の内部に上端が配置された側壁鉄筋に、支圧板を設ける支圧板設置工程をさらに含むことを特徴としてもよい。
【0034】
この発明によれば、角型鋼管の内部に上端が配置された側壁鉄筋に、支圧板を設ける支圧板設置工程をさらに含む。つまり、側壁鉄筋の上端が角型鋼管の内部に配置された後に、支圧板を側壁鉄筋の上端に固定する。これにより、角型鋼管の内部に側壁鉄筋を配置する際、支圧板の位置及び形状等を考慮せずに作業することができる。よって、角型鋼管の内部に側壁鉄筋を配置する作業を容易に行うことができる。したがって、より施工性を向上することができる。
【0035】
また、前記側壁の上端と前記角型鋼管の端部との接続部を隅角部とし、前記コンクリート充填工程において、前記隅角部と、前記角型鋼管の端部とに、コンクリートを同時に打設することを特徴としてもよい。
【0036】
この発明によれば、コンクリート充填工程において、隅角部と、角型鋼管の端部とに、コンクリートを同時に打設する。これにより、施工後の鋼コンクリート複合構造物において、側壁と、角型鋼管である頂版との間に、物理的な境界が生じることを防ぐことができる。したがって、鋼コンクリート複合構造物をより一体的な構造とすることができる。よって、鋼コンクリート複合構造物の耐久性や強度等の性能を向上することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、軽量な頂版を備えた鋼コンクリート複合構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明に係る鋼コンクリート複合構造物の断面図である。
【
図2】
図1に示す鋼コンクリート複合構造物の平面断面図である。
【
図3】
図1に示す鋼コンクリート複合構造物の側面断面図である。
【
図5】本発明に係る鋼コンクリート複合構造物の施工方法の工程における第1状態である。
【
図6】本発明に係る鋼コンクリート複合構造物の施工方法の工程における第2状態である。
【
図7】本発明に係る鋼コンクリート複合構造物の施工方法の工程における第3状態である。
【
図8】本発明に係る鋼コンクリート複合構造物の施工方法の工程における第4状態である。
【
図9】本発明に係る鋼コンクリート複合構造物の施工方法の工程における第5状態である。
【
図10】本発明に係る鋼コンクリート複合構造物の施工方法の工程における第6状態である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る鋼コンクリート複合構造物100を説明する。鋼コンクリート複合構造物100は、例えば、トンネル等を建設する際に用いられる。鋼コンクリート複合構造物100は、いわゆるボックスカルバートである。
鋼コンクリート複合構造物100は、
図1に示すように、コンクリート部材10と、頂版20と、接続部30と、を備える。
【0040】
コンクリート部材10は、鋼コンクリート複合構造物100において下側に位置する。コンクリート部材10は、底版11と、側壁12と、を備える。
図1に示すように、コンクリート部材10は、底版11と側壁12とによって、U字状に形成される。
底版11は、コンクリート部材10のU字状の底に位置する部材である。底版11は、例えば、鋼コンクリート複合構造物100が設置される場所において水平に配置される。底版11の上は、例えば、後述する奥行方向Yに沿って、水路としてや、車両や歩行者等が通行可能である。
側壁12は、底版11から上方に延びる。側壁12は、底版11の両端に一対に設けられる。
【0041】
なお、以下の説明において、
図1、
図2及び
図3に示すように、方向を示す際は、コンクリート部材10を基準として、側壁12が伸びる方向を上下方向Zと呼称する。一対に設けられた側壁12について、一方の側壁12から他方の側壁12に向かう方向を、幅方向Xと呼称する。上下方向Z及び幅方向Xのいずれにも直交する方向を、奥行方向Yと呼称する。本実施形態に係る鋼コンクリート複合構造物100において、コンクリート部材10は、1つのみ備えてもよい。鋼コンクリート複合構造物100において、コンクリート部材10は、奥行方向Yに沿って複数備えてもよい。
【0042】
底版11と側壁12とは、例えば、コンクリートCによって個別に形成され、施工現場において接合される。底版11と側壁12とは、コンクリートCによって一体に成形されてもよい。底版11及び側壁12の内部には、コンクリートCを補強するための鉄筋(不図示)が配置されていてもよい。
【0043】
頂版20は、一対の側壁12の上端同士を接続する。頂版20の上は、例えば、幅方向X又は奥行方向Yに沿って、車両や歩行者等が通行可能である。頂版20は、角型鋼管21と、仕切板22と、貫通部材23と、を備える。
角型鋼管21は、中空部を有する管部材である。本実施形態において、角型鋼管21の軸方向に直交する断面の形状は、例えば、正方形である。前記断面の形状は、長方形状であってもよい。
【0044】
角型鋼管21は、角型鋼管21の軸方向が幅方向Xと平行になるように配置される。角型鋼管21は、例えば、1つのコンクリート部材に対して1つ設けられてもよい。本実施形態においては、角型鋼管21は、1つのコンクリート部材10に対して複数設けられる。具体的には、角型鋼管21は、1つのコンクリート部材10に対し、角型鋼管21の軸方向に直交する方向、すなわち奥行方向Yに2つ設けられる。本実施形態において、複数設けられた角型鋼管21は、
図2に示すように、互いに隙間なく配置される。複数の角型鋼管21は、互いに接合されている。本実施形態において、複数の角型鋼管21は、後述する貫通部材23によって接合される。複数の角型鋼管21は、互いに溶接されることによって接合されてもよい。
【0045】
仕切板22は、角型鋼管21の内部に複数配置される。仕切板22は、板状の部材である。仕切板22は、角型鋼管21の内部を、角型鋼管21の軸方向において複数の区間に区切る。仕切板22には、例えば、鋼板が好適に用いられる。仕切板22は、例えば、角型鋼管21の内部に溶接によって固定される。
【0046】
貫通部材23は、仕切板22によって区切られた複数の区間のうち、角型鋼管21の軸方向の端部を除く一部に配置される。以下、
図2に示すように、仕切板22によって区切られた複数の区間のうち、角型鋼管21における貫通部材23が配置された区間を、挿通部21hと呼称する。貫通部材23は、角型鋼管21の軸方向に直交する方向、すなわち奥行方向Yに貫通する。このため、挿通部21hには、予め貫通部材23を挿通するための孔が設けられている。貫通部材23は、例えば、1つのコンクリート部材10の上に配置された複数の角型鋼管21を貫通する。これに限らず、2つ以上並べられた複数のコンクリート部材10の上に配置された複数の角型鋼管21を、1つの貫通部材23によって貫通してもよい。挿通部21hに貫通部材23が配置された後、挿通部21hには、コンクリートCが充填される。このため、角型鋼管21における挿通部21hの上面には、コンクリートCを打設する孔が設けられる(不図示)。これにより、貫通部材23は、奥行方向Yに複数設けられた角型鋼管21同士を接合する。貫通部材23は、例えば、円管状の鋼管部材である。
【0047】
角型鋼管21の内部において、仕切板22によって区切られた複数の区間のうち、角型鋼管21の軸方向の端部に位置する区間には、コンクリートCが充填される。このため、角型鋼管21における軸方向の端部に位置する区間の上面には、コンクリートCを打設する孔が設けられる(不図示)。本実施形態において、仕切板22によって区切られた複数の区間のうち、角型鋼管21の軸方向の端部に位置する区間の上面には、空気孔21ahが設けられる。
空気孔21ahは、角型鋼管21の軸方向の端部に位置する区間にコンクリートCを充填する際、角型鋼管21の内部にある空気を角型鋼管21の外部に逃がすために設けられる。
角型鋼管21の下面には、鉄筋貫通孔21rhが設けられる。鉄筋貫通孔21rhの詳細については、後述する接続部30と併せて説明する。
【0048】
接続部30は、コンクリート部材10と頂版20とを接続する。接続部30は、側壁鉄筋31と、支圧板32と、角型鋼管鉄筋33と、機械式継ぎ手34と、を備える。
側壁鉄筋31は、
図3に示すように、下端が側壁12の内部に配置される。側壁鉄筋31は、上端が側壁12から露出している。側壁鉄筋31は、第1側壁鉄筋31aと、第2側壁鉄筋31bと、を備える。以下、第1側壁鉄筋31aと第2側壁鉄筋31bとを区別しない場合に、側壁鉄筋31と呼称する。
【0049】
第1側壁鉄筋31aは、上端が角型鋼管21の内部に配置される。より具体的には、側壁鉄筋31の上端は、角型鋼管21の、仕切板22によって区切られた複数の区間のうち、角型鋼管21の軸方向の端部に位置する区間に配置される。
図4に示すように、第1側壁鉄筋31aは、1つの角型鋼管21の端部に対して幅方向Xに複数設けられる。第1側壁鉄筋31aは、1つの角型鋼管21の端部に対して奥行方向Yに複数設けられてもよい。
【0050】
第2側壁鉄筋31bは、上端が角型鋼管鉄筋33の一方の端部に接続される。
図4に示すように、第2側壁鉄筋31bは、例えば、第1側壁鉄筋31aよりも幅方向Xの外側に配置される。第2側壁鉄筋31bは、1つの角型鋼管21の端部に対して幅方向Xに1つ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。第2側壁鉄筋31bは、1つの角型鋼管21の端部に対して奥行方向Yに複数設けられてもよい。
【0051】
本実施形態において、第1側壁鉄筋31a又は第2側壁鉄筋31bは、例えば、それぞれ単独で形成される。第1側壁鉄筋31aと第2側壁鉄筋31bとは、下端が一体に形成され、上端が枝分かれするように形成されてもよい。例えば、
図4に示すように、上下方向Zに沿って配置された第2側壁鉄筋31bから、第1側壁鉄筋31aが枝分かれするように形成されてもよい。この場合は、例えば、第1側壁鉄筋31aの下端と第2側壁鉄筋31bの中間部とを、ラップ長を確保した重ね継手によって固定する。
【0052】
第1側壁鉄筋31aは、
図4に示すように、鉄筋貫通孔21rhを介して角型鋼管21の内部に配置される。鉄筋貫通孔21rhは、角型鋼管21の下面に設けられる。鉄筋貫通孔21rhは、第1側壁鉄筋31aの位置に合わせて適宜設けられる。鉄筋貫通孔21rhには、第1側壁鉄筋31aが配置される。このため、鉄筋貫通孔21rhの内径は、第1側壁鉄筋31aの外径よりも大きい。
【0053】
第1側壁鉄筋31aの上端を角型鋼管21の内部に配置する時は、鉄筋貫通孔21rhの位置と、第1側壁鉄筋31aの上端の位置とを合わせながら、角型鋼管21を側壁12の上部に配置する。これにより、第1側壁鉄筋31aの上端は、鉄筋貫通孔21rhを貫通して、角型鋼管21の内部に配置される。
【0054】
ここで、上述のように、角型鋼管21の軸方向の端部に位置する区間には、コンクリートCが充填される。したがって、第1側壁鉄筋31aの上端は、コンクリートCの内部に位置することとなる。これにより、角型鋼管21の端部が側壁12の上部に固定される。第1側壁鉄筋31aの上端には、支圧板32が接合される。
【0055】
支圧板32は、コンクリートCの内部に位置する第1側壁鉄筋31aの位置がずれないようにするために設けられる板状の部材である。支圧板32の面積は、鉄筋貫通孔21rhの開口面積よりも大きいことが望ましい。言い換えれば、鉄筋貫通孔21rhの開口面積は、支圧板32の面積よりも小さいことが望ましい。なお、支圧板32の面積とは、支圧板32の、鉄筋貫通孔21rhに面する面の面積をいう。
支圧板32は、例えば、第1側壁鉄筋31aの上端に螺合部材Nにより固定される。螺合部材Nは、例えば、ナットである。このため、第1側壁鉄筋31aの上端には、おねじ部が備えられていることが好ましい。第1側壁鉄筋31aの上端には、例えば、ネジ節鉄筋が用いられてもよい。螺合部材Nには、例えば、ネジ節鉄筋に対応した専用のナットを用いてもよい。
【0056】
角型鋼管鉄筋33は、角型鋼管21内に配置される。角型鋼管鉄筋33は、角型鋼管21の軸方向に延びる。角型鋼管鉄筋33は、例えば、
図4に示すように、1つの角型鋼管21の端部に対して上下方向Zに複数設けられる。第1側壁鉄筋31aは、1つの角型鋼管21の端部に対して奥行方向Yに複数設けられてもよい。
【0057】
角型鋼管鉄筋33は、一方の端部が第2側壁鉄筋31bの上端と接合される。角型鋼管鉄筋33は、他方の端部が端部仕切板22eの近傍に位置する。端部仕切板22eとは、角型鋼管21の内部において、角型鋼管21の軸方向の端部に位置する仕切板22をいう。本実施形態において、端部仕切板22eの近傍とは、角型鋼管鉄筋33の他方の端部が、端部仕切板22eから角型鋼管21の軸方向において50mm~100mm程度の距離に位置していることをいうものとする。
【0058】
機械式継ぎ手34は、角型鋼管鉄筋33と側壁鉄筋31とを接合する。これにより、機械式継ぎ手34は、コンクリート部材10と頂版20とを接合する。機械式継ぎ手34は、公知のものを適宜選択して使用する。機械式継ぎ手34には、例えば、ねじ節鉄筋継ぎ手、モルタル充填継ぎ手、端部ねじ加工継ぎ手が好適に用いられる。
【0059】
(鋼コンクリート複合構造物100の施工方法)
次に、本実施形態に係る鋼コンクリート複合構造物100の施工方法を説明する。鋼コンクリート複合構造物100の施工方法は、コンクリート部材設置工程と、角型鋼管設置工程と、角型鋼管連結工程と、鉄筋連結工程と、支圧板設置工程と、コンクリート充填工程と、を備える。
【0060】
コンクリート部材設置工程は、複数のコンクリート部材10を設置する工程である。具体的には、コンクリート部材10を、奥行方向Yに沿って複数並べる。このとき、複数のコンクリート部材10同士は、隙間なく配置されることが好ましい。
【0061】
角型鋼管設置工程は、コンクリート部材10の上に角型鋼管21を複数設置する工程である。この時、角型鋼管21は、コンクリート部材10の上に隙間なく配置される。
コンクリート部材10の上に角型鋼管21が設置される前は、
図5に示すように、側壁12の上部から側壁鉄筋31が露出した状態である。この状態から、
図6に示すように、角型鋼管21の下面に設けられた鉄筋貫通孔21rhと、第1側壁鉄筋31aの上端との位置を合わせながら、角型鋼管21をコンクリート部材10の上に配置する。これにより、第1側壁鉄筋31aの上端は、角型鋼管21の内部に配置される。
なお、仕切板22は、角型鋼管設置工程の前に予め溶接等により固定されていることが好ましい。つまり、
図6に示すように、角型鋼管設置工程の際には、角型鋼管21の内部に仕切板22が固定されていることが好ましい。
【0062】
角型鋼管連結工程は、複数の角型鋼管21を連結する工程である。角型鋼管連結工程は、角型鋼管設置工程の後に行われる。具体的には、
図7に示すように、貫通部材23を、奥行方向Yに挿通させる。上述のように、挿通部21hには、予め貫通部材23を挿通するための孔が設けられている。このため、角型鋼管連結工程を行う前には、複数の角型鋼管21にそれぞれ設けられた孔の位置を合わせておく。挿通部21hに貫通部材23を挿通させた後、
図7に示すように、挿通部21hにコンクリートCを充填する。これにより、複数配置された角型鋼管21を互いに連結する。
【0063】
支圧板設置工程は、
図8に示すように、角型鋼管21の内部に上端が配置された第1側壁鉄筋31aに、支圧板32を設ける工程である。この時、支圧板32は、角型鋼管21の端部の開口から角型鋼管21の内部に移動させて、第1側壁鉄筋31aの上端に配置する。その後、支圧板32と第1側壁鉄筋31aの上端とを、螺合部材Nによって固定する。
支圧板設置工程は、例えば、角型鋼管連結工程の次に行う。支圧板設置工程は、角型鋼管設置工程の後に行われてもよい。言い換えれば、支圧板設置工程は、角型鋼管連結工程の前に行われてもよい。
【0064】
鉄筋連結工程は、コンクリート部材10の備える第2側壁鉄筋31bと、角型鋼管21の備える角型鋼管鉄筋33と、を連結する工程である。具体的には、まず、
図9に示すように、角型鋼管21の端部から、角型鋼管鉄筋33の他方の端部を挿入する。この時、角型鋼管鉄筋33の他方の端部が、端部仕切板22eの近傍に位置するようにする。すなわち、幅方向Xにおいて、角型鋼管鉄筋33の他方の端部と、端部仕切板22eとの距離が、50mm~100程度になるようにする。その後、機械式継ぎ手34によって、角型鋼管鉄筋33の一方の端部と、第2側壁鉄筋31bの上端とを連結する。
【0065】
コンクリート充填工程は、コンクリート部材10と角型鋼管21との接続部にコンクリートCを充填する工程である。
コンクリート充填工程においては、
図10に示すように、隅角部30Cと、角型鋼管21の端部とに、コンクリートCを同時に打設する。隅角部30Cとは、側壁12の上端と角型鋼管21の端部との接続部をいう。このようにコンクリートCを打設することで、側壁12と角型鋼管21との接続部に物理的な境界が生じないようにする。
上記各工程により、鋼コンクリート複合構造物100を形成する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る鋼コンクリート複合構造物100によれば、頂版20は、中空部を有する角型鋼管21を備えている。つまり、側壁12の上に角型鋼管21を配置することで、頂版20を形成することができる。これにより、頂版20を、プレキャストコンクリート製の頂版や、鋼殻の内部にコンクリートが一様に打設された頂版と比較して軽量とすることができる。したがって、大きな重機を用いることなく、頂版20を形成することができる。よって、施工性を向上することができる。また、完成後の鋼コンクリート複合構造物100の重量を軽くすることができる。したがって、施工現場の地盤への影響や、構造物の耐震性への影響を小さくすることができる。
【0067】
また、角型鋼管21は、角型鋼管21の軸方向に直交する方向に複数設けられ、複数の角型鋼管21は、互いに接合されている。ここで、頂版20がプレキャストコンクリートである場合、頂版20の上を走行する車両の輪荷重等に対応するため、0.5m程度の土かぶりが必要となる。これに対し、頂版20が角型鋼管21であると、角型鋼管21が輪荷重等を直接受けることができる。よって、頂版20を上述のような構造とすることで、土かぶりを不要とすることができる。したがって、施工性を向上することができる。また、施工後の鋼コンクリート複合構造物100の高さを低くすることができる。さらに、死荷重が軽減できコンクリート部材10の薄肉化も可能となる。
【0068】
また、仕切板22によって仕切られた複数の区間のうち、角型鋼管21の軸方向の端部を除く一部には、角型鋼管21を、角型鋼管21の軸方向に直交する方向に貫通する貫通部材23が配置される。これにより、貫通部材23によって、互いに隣り合う角型鋼管21同士だけでなく、前記直交方向に並ぶ3つ以上の角型鋼管21を接合することができる。よって、互いに隣り合う角型鋼管21を1つずつ個別に接合する場合と比較して、より多くの数の角型鋼管21を一度に接合することができる。よって、施工性を向上することができる。
角型鋼管21の複数の区間の一部と、角型鋼管21の軸方向の端部に位置する区間には、コンクリートCが充填されている。これにより、角型鋼管21の内部全体にコンクリートCが充填されている場合と比較して、コンクリートCの充填量を必要最小限とすることができる。
【0069】
また、角型鋼管21の軸方向の端部に位置する区間の上面には、空気孔21ahが設けられている。これにより、角型鋼管21の軸方向の端部に位置する区間にコンクリートCを充填する時、角型鋼管21の内部に空気が残ることを防ぐことができる。したがって、角型鋼管21の内部をコンクリートCで満たすことができる。よって、角型鋼管21はコンクリートCにより十分な強度を確保することができる。
【0070】
また、コンクリート部材10の側壁12から露出した側壁鉄筋31の上端が、角型鋼管21の内部に配置される。これにより、コンクリート部材10と角型鋼管21との位置がずれないように固定することができる。第1側壁鉄筋31aの上端には、支圧板32が接合される。これにより、角型鋼管21の内部に配置された第1側壁鉄筋31aが、角型鋼管21から抜けることを防ぐことができる。また、角型鋼管21の内部に第1側壁鉄筋31aが配置された区間にコンクリートCが充填された時、コンクリートCと第1側壁鉄筋31aとを確実に固定することができる。
【0071】
また、支圧板32は、第1側壁鉄筋31aの上端に螺合部材Nにより固定される。これにより、支圧板32を、側壁鉄筋31を角型鋼管21の内部に配置した後に取り付けることができる。よって、角型鋼管21の内部に側壁鉄筋31を配置する作業を容易に行うことができる。したがって、より施工性を向上することができる。
【0072】
また、角型鋼管21の下面には、第1側壁鉄筋31aが配置される鉄筋貫通孔21rhが設けられる。これにより、鉄筋貫通孔21rhを介して、角型鋼管21の内部に第1側壁鉄筋31aを配置することができる。よって、角型鋼管21の内部に側壁鉄筋31を配置するために、側壁鉄筋31を折り曲げて角型鋼管21の端部から第1側壁鉄筋31aの端部を挿入するといったことを不要とすることができる。
【0073】
ここで、角型鋼管21を安定してコンクリート部材10に配置するためには、コンクリート部材10の側壁12の上端と、角型鋼管21の下面とが接するように配置することが好ましい。第1側壁鉄筋31aの上端が側壁12の上端から露出している場合に、角型鋼管21の下面に鉄筋貫通孔21rhが設けられていないと、第1側壁鉄筋31aが上方に延びるための領域を、側壁12の上端に設ける必要がある。このため、側壁12の上端と角型鋼管21の下面との接触領域を確保しにくくなる。
【0074】
角型鋼管21の下面に鉄筋貫通孔21rhを設けずに、側壁12の上端と角型鋼管21の下面との接触領域を確保するためには、例えば、側壁12の側面から側壁鉄筋31を露出させ、側壁鉄筋31を適宜折り曲げることで、側壁鉄筋31の端部を角型鋼管21の端部から挿入することが必要となる。これにより、側壁鉄筋31の曲げ点が増加する。よって、施工性に問題が生じる。
【0075】
角型鋼管21の下面に鉄筋貫通孔21rhが設けられることで、側壁12の上端から露出して上方に延びる第1側壁鉄筋31aを、折り曲げることなく角型鋼管21の内部に配置することができる。よって、角型鋼管21を、角型鋼管21の下面がコンクリート部材10の側壁12の上端に接するように配置することを容易にすることができる。よって、より容易に角型鋼管21を安定してコンクリート部材10に配置することができる。
鉄筋貫通孔21rhの開口面積は、支圧板32の面積よりも小さい。これにより、第1側壁鉄筋31aに固定された支圧板32が鉄筋貫通孔21rhから抜けることを防ぐことができる。また、鉄筋貫通孔21rhの開口面積を小さくすることで、角型鋼管21の断面欠損を最小限にすることができる。よって、角型鋼管21の強度への影響を最小限にすることができる。
【0076】
また、頂版20は、角型鋼管21内に配置されるとともに角型鋼管21の軸方向に延び、一方の端部が第2側壁鉄筋31bの上端と接合される角型鋼管鉄筋33を更に備える。これにより、角型鋼管21の端部を、角型鋼管21の軸方向に沿った広い範囲において補強することができる。よって、より角型鋼管21を安定して固定することができる。
【0077】
また、角型鋼管鉄筋33の他方の端部は、端部仕切板22eの近傍に位置する。これにより、角型鋼管21の端部から、端部仕切板22eまでの区間において、角型鋼管21を確実に固定や補強することができる。
【0078】
また、角型鋼管鉄筋33と第2側壁鉄筋31bとを接合する機械式継ぎ手34を更に備える。これにより、角型鋼管鉄筋33と側壁鉄筋31との固定を、施工現場にて容易に行うことができる。よって、角型鋼管鉄筋33と第2側壁鉄筋31bとを溶接等により固定する場合と比較して、施工性を向上することができる。
【0079】
また、コンクリート部材設置工程と、角型鋼管設置工程と、角型鋼管連結工程と、鉄筋連結工程と、コンクリート充填工程と、を備える。
つまり、角型鋼管21をコンクリート部材10に設置及び固定して接続する作業と、コンクリート部材10と角型鋼管21との接続部にコンクリートCを充填する工程とが別に備えられている。したがって、角型鋼管21を設置する時には、角型鋼管21の内部にコンクリートCが充填されていない。よって、角型鋼管21を設置する際、より角型鋼管21を軽量な状態とすることができる。これにより、施工性を向上することができる。
【0080】
また、角型鋼管連結工程は、角型鋼管設置工程の後に行われる。つまり、予め角型鋼管21をコンクリート部材10の上に設置した後に、角型鋼管21同士を連結する。これにより、角型鋼管21同士の位置合わせを確実に行った後に、角型鋼管21同士を連結することができる。よって、角型鋼管21同士の位置合わせの精度を向上することができる。
【0081】
また、角型鋼管21の内部に上端が配置された第1側壁鉄筋31aに、支圧板32を設ける支圧板設置工程をさらに含む。つまり、第1側壁鉄筋31aの上端が角型鋼管21の内部に配置された後に、支圧板32を第1側壁鉄筋31aの上端に固定する。これにより、角型鋼管21の内部に第1側壁鉄筋31aを配置する際、支圧板32の位置及び形状等を考慮せずに作業することができる。よって、角型鋼管21の内部に第1側壁鉄筋31aを配置する作業を容易に行うことができる。したがって、より施工性を向上することができる。
【0082】
また、コンクリート充填工程において、隅角部30Cと、角型鋼管21の端部とに、コンクリートCを同時に打設する。これにより、施工後の鋼コンクリート複合構造物100において、側壁12と、角型鋼管21である頂版20との間に、物理的な境界が生じることを防ぐことができる。したがって、鋼コンクリート複合構造物100をより一体的な構造とすることができる。よって、鋼コンクリート複合構造物100の耐久性や強度等の性能を向上することができる。
【0083】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、角型鋼管21は、互いに隙間なく配置されるとして説明したが、これに限らない。例えば、間隔を空けて複数配置された角型鋼管21の上面に鋼板を取り付けることで、鋼板を介して複数の角型鋼管21同士を接合してもよい。
また、角型鋼管21は貫通部材23が貫通することにより接合されるとして説明したが、これに限らない。例えば、角型鋼管21の、奥行方向Yに面する面に互いに対応する凹凸の形状を設け、これらを嵌合させること、あるいはボルトなどにより接合してもよい。
また、第1側壁鉄筋31aの上端には、支圧板32に代えて機械式定着が接合されてもよい。
【0084】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 コンクリート部材
11 底版
12 側壁
20 頂版
21 角型鋼管
21ah 空気孔
21rh 鉄筋貫通孔
22 仕切板
22e 端部仕切板
23 貫通部材
30C 隅角部
31 側壁鉄筋
32 支圧板
33 角型鋼管鉄筋
100 鋼コンクリート複合構造物
C コンクリート
N 螺合部材
【要約】
【課題】軽量な頂版を備えた鋼コンクリート複合構造物を提供する。
【解決手段】本発明に係る鋼コンクリート複合構造物100は、底版11、及び、底版11から上方に延びる一対の側壁12を備えるコンクリート部材10と、一対の側壁12の上端同士を接続する頂版20と、を備え、頂版20は、中空部を有する角型鋼管21を備えていることを特徴とする。
【選択図】
図1