(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】セキュリティ要素及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B42D 25/324 20140101AFI20230106BHJP
B42D 25/43 20140101ALI20230106BHJP
B42D 25/328 20140101ALI20230106BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230106BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230106BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
B42D25/324
B42D25/43
B42D25/328 100
B32B3/30
B32B7/023
G02B5/18
(21)【出願番号】P 2019554359
(86)(22)【出願日】2018-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2018000149
(87)【国際公開番号】W WO2018184721
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】102017003274.2
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518041917
【氏名又は名称】ギーゼッケ・ウント・デブリエント・カレンシー・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Giesecke+Devrient Currency Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Prinzregentenstrasse 161, 81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】フーゼ、クリスチアン
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/092040(WO,A1)
【文献】特開2009-192979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0353959(US,A1)
【文献】特開2012-083477(JP,A)
【文献】特開2013-178357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/324
25/328
25/43
B32B 7/023
G02B 5/18
G09F 19/00 - 19/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背景に対しモチーフを表示する、紙幣、小切手等のようなセキュリティ文書を製作するためのセキュリティ要素であって、
- 第1のコーティング(7)を備え、前記モチーフを提供するモチーフ領域(1)と、
- 前記第1のコーティング(7)とは異なる第2のコーティング(8)を備え、前記背景を提供する背景領域(2)と、
を有する、セキュリティ要素(S)において、
- 前記背景領域(2)から前記モチーフ領域(1)を区切る輪郭領域(3)が提供されており、
- 前記輪郭領域(3)は、一方では前記輪郭領域(3)と前記モチーフ領域(1)との間に、他方では前記輪郭領域(3)と前記背景領域(2)との間に明るさ及び/又は色のコントラストが発生するように、光吸収に適した幾何学的形状を有するレリーフ構造(10)によって形成されており、
- 前記輪郭領域(3)の前記レリーフ構造(10)は、前記第1のコーティング(7)及び/又は前記第2のコーティング(8)によって少なくとも部分的に覆われることによって、前記第1のコーティング(7)及び/又は前記第2のコーティング(8)における位置合わせのばらつきを吸収する、
ことを特徴とする、セキュリティ要素。
【請求項2】
前記輪郭領域(3)は、0.1mm~1.0mmの幅を有することを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティ要素。
【請求項3】
前記輪郭領域(3)は、0.3mm~0.7mmの幅を有することを特徴とする、請求項2に記載のセキュリティ要素。
【請求項4】
前記輪郭領域(3)の前記レリーフ構造(10)はサブ波長回折格子を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項5】
前記2つのコーティング(7、8)は境界線で互いに当接し、又は境界線で重なり、
前記境界線は、前記輪郭領域(3)の前記レリーフ構造(10)の上方に位置することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項6】
前記輪郭領域(3)の前記レリーフ構造はモスアイ構造(10)を有することを特徴とする、請求項5に記載のセキュリティ要素。
【請求項7】
前記輪郭領域(3)の前記レリーフ構造(10)は、前記2つのコーティング(7、8)について、同じ若しくはほぼ同じ色の印象及び/又は明るさの印象を引き起こすことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項8】
前記コーティング(7、8)は、前記輪郭領域(3)の外側に異なる色彩効果を発生させることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項9】
前記第1のコーティング(7)及び/又は前記第2のコーティング(8)は、金属、高屈折、又は色彩効果生成層複合材であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載のセキュリティ要素を有するセキュリティ文書。
【請求項11】
背景に対しモチーフを表示する、紙幣、小切手等のようなセキュリティ文書を製作するためのセキュリティ要素(S)の製造方法であって、
- モチーフ領域(1)が第1のコーティング(7)を備え、前記モチーフを提供し、
- 背景領域(2)が前記第1のコーティング(7)とは異なる第2のコーティング(8)を備え、前記背景を提供する、
製造方法において、
- 前記背景領域(2)から前記モチーフ領域(1)を区切る輪郭領域(3)が提供されており、
- 前記輪郭領域(3)は、一方では前記輪郭領域(3)と前記モチーフ領域(1)との間に、他方では前記輪郭領域(3)と前記背景領域(2)との間に明るさ及び/又は色のコントラストが発生するように、光吸収に適した幾何学的形状を有するレリーフ構造(10)によって形成されており、
- 前記レリーフ構造(10)は、前記第1のコーティング(7)及び/又は前記第2のコーティング(8)の適用時に、前記輪郭領域(3)が
、前記第1のコーティング(7)及び/又は前記第2のコーティング(8)により少なくとも部分的に覆われることによって、前記第1のコーティング(7)及び/又は前記第2のコーティング(8)
の位置合わせのばらつきを吸収するように配列される、
ことを特徴とする、製造方法。
【請求項12】
前記セキュリティ要素(S)は、請求項1~
9のいずれか一項に記載のとおりに製造されることを特徴とする、請求項
11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のコーティングを備え、モチーフを提供するモチーフ領域と、第1のコーティングとは異なる第2のコーティングを備え、背景を提供する背景領域と、に関する。
【0002】
本発明は更に、セキュリティ要素を有するセキュリティ文書に関する。
【0003】
最後に、本発明は、モチーフ領域が第1のコーティングを備え、モチーフを提供し、背景領域が第1のコーティングとは異なる第2のコーティングを備え、背景を提供する製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
紙幣のセキュリティ特徴は、特に良好な認識性と偽造からの保護とを実現するように設計された記号、像、又はトゥルーカラー像などのモチーフを含む。特に、そのモチーフが背景に対して異なる構造化コーティングにより形成されている、この目的のためのセキュリティ要素は知られている。そのようなセキュリティ要素は、例えば、モチーフの設計には視野角依存色彩効果(viewing-angle dependent color effect)を有するコーティング、背景には視野角とは独立して機能するコーティングを使用する。構造化部の場合、コーティングの位置合わせ精度は非常に重要である。このことは、フォトリソグラフィプロセス、又はいわゆるウォッシュカラー(wash color)を用いた印刷などの適切な構造化技術に要求を突きつける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、製造性を促進すると同時に、セキュリティ要素の品質が向上するように、セキュリティ要素、セキュリティ文書、及び上述の種類の製造方法を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1、11及び12に定義される。
【0007】
本発明によれば、背景に対しモチーフを表示する、紙幣、小切手等のようなセキュリティ文書を製作するためのセキュリティ要素が提供される。モチーフは、第1のコーティングを備えるモチーフ領域によって生成される。背景は、第1のコーティングとは異なる第2のコーティングを備える、セキュリティ要素の背景領域によって提供される。異なるコーティングはモチーフと背景との間の外観差に寄与するが、外観差を生じさせる、モチーフ領域又は背景領域の、唯一の特性である必要はない。可能なオプションについては後に説明する。
【0008】
背景領域とモチーフ領域とは輪郭領域によって互いに区切られている。これはレリーフ構造によって形成され、このレリーフ構造は、例えば、レリーフ構造が少なくとも光を一部吸収することで上から見ると暗く見えるように設計された幾何学的形状を有する。このようにして、一方では輪郭領域とモチーフ領域との間に、他方では輪郭領域と背景領域との間に、明るさ及び/又は色のコントラストが達成される。レリーフ構造が第1のコーティング及び/又は第2のコーティングの縁部の下に位置するとともに、各場合において2つのコーティングが同様の好ましくは暗い外観を有することにより、レリーフ構造は、第1のコーティング及び/又は第2のコーティングの適用時の位置合わせのばらつきを吸収するように使用される。製造方法においては、同様に、セキュリティ要素のモチーフ領域は第1のコーティングを備え、モチーフを提供することを前提とする。背景領域は異なる第2のコーティングを備え、背景を提供する。更に、モチーフ領域と背景領域とを互いに区切る輪郭領域が提供され、輪郭領域はレリーフ構造によって形成されている。この輪郭領域は、レリーフ構造が少なくとも光を一部吸収する性質を持つ幾何学的形状を有する。このようにして、一方では輪郭領域とモチーフ領域との間に、他方では輪郭領域と背景領域との間に明るさ及び/又は色のコントラストが発生する。レリーフ構造は、第1のコーティング及び/又は第2のコーティングの位置合わせのばらつきを吸収するように配列される。輪郭領域は、第1のコーティング及び/又は第2のコーティングの適用前に作成され、1つ又は両方のコーティングによって被覆される。
【0009】
輪郭領域は、モチーフ領域と背景領域とを互いに区切るそのレリーフ構造により、はっきりと認識可能な輪郭を作成する。レリーフ構造を基に、第1のコーティング及び/又は第2のコーティングの実際の縁部を検出することはできない。したがって、第1のコーティング及び/又は第2のコーティングの適用におけるいかなる位置合わせのばらつきを問わず、各場合において、モチーフ領域及び背景領域の光学的に有効な部分は輪郭領域のレリーフ構造の縁部で終端する。換言すると、2つのコーティング間の境界線のばらつきは輪郭内に隠れ、輪郭は、第1のコーティング及び/又は第2のコーティングとは独立して、そのレリーフ構造の幾何学的形状により、隣接するモチーフ領域と背景領域とに対する明るさ及び/又は色のコントラストを生じさせる。
【0010】
輪郭領域の効果には輪郭領域、したがって、レリーフ構造の特定の幅が必要であり、この幅は、第1のコーティング及び/又は第2のコーティングの適用における位置合わせのばらつきを覆うように選択される。ここでは、0.1mm~1.0mmの範囲が有利であることが判明しており、約0.3mm~0.7mmの範囲が特に有利であるが、これは、コーティングの構造化に更なる労力を有することなく、位置合わせのばらつきをこれらの値の半分に、例えば、+/-0.2mmに制限できるからである。
【0011】
輪郭領域のレリーフ構造は、その幾何学的形状により、輪郭領域とモチーフ領域との間に、並びに輪郭領域と背景領域との間に明るさ又は色のコントラストを作成するように設計されている。幾何学的形状は、コントラストが、大方の場合、第1のコーティング又は第2のコーティングがレリーフ構造上に位置しているかどうかとは無関係であるように、有利に選択される。好ましい設計では、レリーフ構造は、光吸収型であるように設計されたサブ波長回折格子又はモスアイ構造を含む。
【0012】
好ましくは、第1のコーティングと第2のコーティングとは境界線で互いに当接する。この境界線は、輪郭領域のレリーフ構造の上方に位置する。このような設計はモスアイ構造が使用される場合に特に有利である。なぜなら、その場合、2つのコーティング間の間隙により、モスアイ構造がこの間隙の領域においてわずかにより明るく見えることになるからである。
【0013】
第1のコーティング及び第2のコーティングは、モチーフ領域と背景領域との間に可能な最良のコントラストが作成されるように選択される。この目的のために、色変化効果を生成する金属若しくは高屈折コーティング又は層複合材が好適である。特に、反射体/誘電体/吸収体を有する3層構成を有する色を変化するカラーシフトコーティングが使用され得る。
【0014】
セキュリティ要素は、モチーフが高コントラストの輪郭によって背景から区切られていることから、モチーフを認識することがより簡単であるという更なる利点を有する。
【0015】
更に、同様に、一方では輪郭領域とモチーフ領域との間に、他方では輪郭領域と背景領域との間に明るさ及び/又は色のコントラストが存在するように、後にコーティングされるが輪郭領域のコーティングとは異なるレリーフ構造をモチーフ領域及び/又は背景領域に提供することが可能である。輪郭領域とモチーフ領域との間並びに輪郭領域と背景領域との間のコントラストは、例えば、レリーフ構造のプロファイルの幾何学的形状を適切に選択することによって強化することができる。モチーフ領域及び背景領域のレリーフ構造は、例えば、金属又は高屈折材料でコーティングされる。先行技術から、例えば、マイクロミラーを有するレリーフ構造が知られている(独国特許出願公開第102010049617 A1号明細書を参照)。これらのマイクロミラーは画素に配列することができ、そのそれぞれは、同様に配向されたマイクロミラーを有する。マイクロミラーにより、特に、モーション効果又は3D効果も、モチーフ領域及び/又は背景領域内で実現することができる。また、フレネル構造(欧州特許第1562758 B1号明細書を参照)を使用することができる又はマイクロミラーと組み合わせることもできる。マイクロミラーにおいては、最大100μm~最大1μmのレリーフ高さ及び100μm未満~10μm未満の横寸法が知られている。当然、各場合において、背景領域とモチーフ領域とに対して異なるレリーフ構造を使用することはできる。重要な点は、輪郭領域が第1のコーティング及び第2のコーティングの効果を和らげる又は強調することである。これはいわゆるモスアイ構造の形態で特に良く達成される(国際公開第2006/026975 A2号パンフレット及び欧州特許出願公開第2453269 A1号明細書を参照)。
【0016】
1つの変更態様では、輪郭領域は、構造化部を備えることができ、レリーフ構造はそれに応じて構造化されるように設計されている。構造化部は、輪郭領域の中断部を意味し得る及び/又は肉眼で検出できないマイクロテキスト若しくは情報アイテムを含み得る。
【0017】
輪郭領域は、また、複合モチーフ内の外形線であってもよい。複合モチーフは複数のモチーフ構成要素からなり、モチーフ構成要素の1つは、輪郭領域が背景領域を区切るように、すなわち、複合モチーフのうちの1つのモチーフ領域を複合モチーフの別のモチーフ領域から区切るように他に対して光学的に知覚されたときに背景であると理解される。
【0018】
本発明を、本発明に必須の特徴も示すことができる例に基づき、及び図を参照して、以下で更に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】セキュリティ要素を有する紙幣の平面図である。
【
図2】輪郭が背景からモチーフを区切る、背景に対して複数のモチーフを有するセキュリティ要素の平面図である。
【
図3】2つの輪郭によりモチーフが背景から区切られる領域内のセキュリティ要素の拡大図である。
【
図4】
図3に示される領域の領域内のセキュリティ要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、偽造から保護するためのセキュリティ要素Sを有する紙幣Bの平面図を示す。
図1の概略図のセキュリティ要素は、例示的実施形態では、フィルム要素として設計され紙幣Bの紙幣用紙上に貼り付けられた矩形パッチである。セキュリティ要素は、紙幣Bのセキュリティスレッド又は窓領域に等しく使用され得る。
【0021】
図2は、純粋に例として、背景に対するモチーフとしてハチドリを年と共に示すセキュリティ要素Sを示す。モチーフ領域1と背景領域2とは、モチーフを肉眼で認識することができるように反射して光学コントラストを形成する異なるコーティングによって形成されている。ハチドリと年とはそれぞれ、輪郭により背景から分離されている。輪郭は、モチーフ領域1と背景領域2との両方とコントラストを形成するように設計されたレリーフ構造によって輪郭領域3内に作製される。これにより、観察者にとってのモチーフの知覚性が大幅に高まる。
【0022】
輪郭内のレリーフ構造はエンボス構造を備え、このエンボス構造は、コーティング後、領域1及び領域2に対してコントラストを示し、好ましくは暗くなる。輪郭の外観は、それがモチーフ領域1のコーティング又は背景領域2のコーティングを備えるかどうかとはほとんど無関係である。可能な両方のコーティングによって、輪郭領域3は有利には、同等に又はほぼ同等に暗い。位置合わせのばらつきのせいで、輪郭領域は、通常、部分的に第1のコーティングと部分的に第2のコーティングとを備える。しかしながら、これは、金属被覆を有するその外観が両方とも同じように暗い場合には(例えば、吸収レベルのずれが0.2未満、好ましくは0.1未満である)、たとえ認められるとしてもほとんど認められない。輪郭領域3と領域1及び領域2との間のコントラストが、輪郭内の異なるコーティング間のコントラストよりも優位になる。輪郭領域3は2つの機能を有する。一方では、これらの輪郭領域3は、背景からモチーフを区切ること又は異なるモチーフ領域を互いに区切ることによってモチーフの構造化部を支持する。他方では、レリーフ構造は、2つのコーティングのうちの1つで覆われたとしても隣接する領域間にコントラストをなお発生させるため、これらの輪郭領域3は、コーティングの適用時の位置合わせのばらつきを吸収する。
【0023】
図3及び
図4は、この状況を示す。
図3は、
図2のセキュリティ要素の切取部、すなわち、モチーフ領域1が両側で背景領域2から区切られる場所を示す。境界部に、輪郭領域3が位置する。輪郭領域3は、モチーフ領域1に第1のコーティングを、又は背景領域3に第2のコーティングを適用する最中の位置合わせのばらつきを吸収するように選択された幅を有する。各輪郭領域3の幅は、コーティング適用時における最大の位置合わせのばらつきよりも大きい。
【0024】
図4は、これらの割合を、
図3の破線の円により表される切取部4の断面図で示す。セキュリティ要素Sは基材5上で組み合わされ、基材5の上側に、エンボスラッカー層6が形成される。モチーフ領域1は第1のコーティング7を特徴とし、背景領域2は第2のコーティング8を特徴とし、モチーフ領域1及び背景領域2の反射の印象に影響する又はこれを画定する。透明カバリングフィルム9は、セキュリティ要素Sの上側の保護を確実にする。輪郭領域3は、コーティング7、8の下のエンボスラッカー層6内にモスアイ構造10がエンボス加工されることによって形成され、モスアイ構造10は、第1のコーティング7及び/又は第2のコーティング8と重なった場合、輪郭領域を光吸収型にする。2つのコーティング7、8は境界線11において互いに当接する。この境界線11はモスアイ構造10の上方である。光学的印象、すなわち、モチーフ領域1又は背景領域2の境界部は、輪郭領域3により、したがって、モスアイ構造10により画定される。モスアイ構造10の幅は、第1のコーティング7と第2のコーティング8との間の境界線11の位置に関する位置合わせのばらつきが吸収されるように選択される。したがって、モスアイ構造10の幅は、第1及び第2のコーティング7、8が適用されたときに生じる位置合わせのばらつきよりも大きい。
【0025】
境界線11の代わりに、2つの層7、8の間に間隙が存在し、次いで、モスアイ構造10の上方に、すなわち輪郭領域3内に全体的に位置付けること、又はコーティング7、8が輪郭領域3内で重なることも可能である。
【0026】
第1のコーティング7及び第2のコーティング8の縁部又は境界線11の生産技術関連のばらつきは輪郭内の輪郭領域3の下層にあるレリーフ構造によって隠れ、輪郭内の輪郭領域3は、第1のコーティング7又は第2のコーティング8との任意の重なりとは無関係に、隣接する領域1、2に対しコントラストを作成し、両コーティングは好ましくは同じ又はほぼ同じに見える。
【0027】
第1のコーティング7の例は、多層構造の形態で先行技術から知られる、例えば、赤みを帯びた若しくは金色のコーティング(例えば、Au、Cu、又はAl-Cu合金)、又はカラーシフトコーティングである。背景領域2の第2のコーティング8の例はアルミニウム金属被覆である。コーティング7、8は、先行技術で知られるいわゆるウォッシュカラー印刷法によって構造化され得る。輪郭領域3の幅は、位置合わせマークのばらつきによるコーティングの縁部又はそれらの境界線11が常に輪郭領域2内にあるように選択される。例えば、ウォッシュカラー印刷によって境界線位置の公差+/-0.2mmを達成できる場合、輪郭領域は幅が少なくとも0.4mmになるように選択される。したがって、各場合において、2つの異なるコーティングが境界線の上方で互いに当接し又は重なり、好ましくはあらゆる位置合わせ状況において少なくとも依然として接するように、第2のコーティングは、第1のコーティングに隣接する又は第1のコーティングと十分に重なるように適用される。位置合わせマークのばらつきに関わらず、観察者は、2つの異なる色の領域、すなわち、モチーフ領域1と背景領域2とが互いに完全に整列し、それらの間に厳密に幅0.4mmの輪郭が延びる状態で見える。
【0028】
1つの変更態様においては、輪郭の光学的印象を向上させるために、レリーフ構造を覆う領域のコーティング7、8を、同じく構造化された手法で、例えば、レーザ光の照射によって除去することが可能である。このようにして、異なるようにコーティングされた領域をエンボス加工のために完全に位置合わせさせて正確に分離する、透明な輪郭が得られる。これにより、例えば、輪郭にマイクロテキスト又はマイクロシンボルを導入するための構造化を行うことも可能になる。
【0029】
「輪郭」という用語は、モチーフの外部境界に限定されない。この用語は、あるモチーフ領域が背景領域とみなされ、他がモチーフ領域とみなされるようにモチーフの異なる領域を互いに区切る内部外形線でもあり得る。
【0030】
輪郭領域3の所望のコントラストのある構造を提供するためには、
図1~
図4で使用されるモスアイ構造10が特に好適である。そのようなモスアイ構造10を生成するための様々な方法が文献から知られている。一例として、国際公開第2006/026975 A2号パンフレット又は欧州特許第1434695(B1)号明細書を参照されたい。これらの公報では、屈折率勾配層を形成するとともに良好な吸収効果を有するランダム面について説明している。これらランダム面の構造の深さは、好ましくは、50nmを超え、隣接する上昇部間の平均距離は500nm未満である。したがって、これらはサブ波長構造の一例である。このようなランダム面は、PMMAなどのプラスチック基材からブラズマエッチングプロセスにより生成することができる。代替的に、周期的に配置されたモスアイ構造も使用することができる。500nmを超える平均間隔を有するマイクロキャビティもまた高吸収効果を有し得る。欧州特許第1434695(B1)号明細書は、420nm未満の周期を有する金属被覆された交差格子により形成されるモスアイ構造について開示している。また、光吸収については、例えば、国際公開第2012/156049 A1号パンフレットに記載されているように、2次元周期のサブ波長回折格子を使用することができる。
【0031】
背景領域とモチーフ領域と輪郭領域との間の分界は、色フィルタとして機能するレリーフ構造によって実現することができる。これらは必ずしも黒である必要はなく、赤又は青などの異なる色に見えることもできる。モチーフの知覚性のためには暗色が有利である。上述の金属サブ波長構造は、一部、光の共振吸収により、可視スペクトル範囲内で光吸収の増加を示し、反射の色度をもたらす。レリーフ構造では、可視波長域内の平均吸収が、例えば、モチーフ領域及び背景領域に提供されるような平滑面のものよりも常に高いため、輪郭領域とモチーフ領域及び/又は背景領域との間の高コントラストが保証される。あるいは、これらの構造は、また、いくつかの方向からは暗くならなくてもよい。
【0032】
良好な知覚性のために、輪郭領域の平均明るさは、有利には、反射において、モチーフ領域の平均明るさ及び背景領域の平均明るさの50%未満である。
【0033】
輪郭領域3のレリーフ構造は、例えば、二光子吸収過程で機能するeビームシステム又はレーザ描画システムなどのリソグラフィ法により製造されることが好ましい。あるいは、その輪郭領域3のレリーフ構造は、二段階リソグラフィプロセスで生成することができる。第1の段階において、ナノ構造化が実施される。これは、例えば、電子ビームリソグラフィプロセスにより実行される。代替として、レーザビーム干渉法も使用することができる。非周期的モスアイ構造はまた、ブラズマエッチングによって又は超短レーザパルスでの構造化によって生成することができる。次の工程で、そのような構造の原型又は複製はフォトレジストにより平坦化される。この目的に適した方法は主に、スピンコーティング又はディップコーティングである。その後、フォトリソグラフィ工程においてフォトレジストにレリーフ構造が刻まれ、構造の所望の領域が露光される。このプロセスは、直接露光手順においてレーザライタを用いて実行され得る。その後、得られた原型を、電解的に又は感光性ポリマー(例えば、ormocer)を使用して複製することができる。このようにして作製されたスタンプの表面構造は、その後、ステップアンドリピート方式によってより広い面積上に隣り合わせで複製することができる。表面上に複製されたこの原型の電解刻印によって、それからエンボスシリンダを作製することができる。最後に、構造は、連続的なロールツーロールプロセスでフィルム上にエンボス加工され得る。UV硬化性材料でのホットスタンピング又はエンボス加工などのナノインプリント法がここでは好適である。
【0034】
最後に、エンボス加工されたフィルムは2つのコーティングを備える。この目的のためには、電子ビーム蒸着などの一般的な蒸着技術、熱蒸発、又はスパッタリングが好適である。金属材料としては、アルミニウム、銀、銅、パラジウム、金、クロム、ニッケル、鉄、コバルト及び/又はタングステン、並びにそれらの合金などの金属が使用される。最後に、構造は、任意選択的に、カバーフィルム9で積層加工され、それにより保護される。単純な金属コーティングの代わりに、レリーフ構造を多層構造で被覆することもできる。この目的のために、特に、半透明金属層と、誘電体間隔層と、その下に位置する金属鏡層とからなる、いわゆるカラーシフトコーティングが使用される。特に好適な誘電体は、SiO2、MgF2、Ta2O5、ZnS、及びポリマーである。更なる代替物は、高屈折率材料を有する誘電体コーティングである。
【符号の説明】
【0035】
1 モチーフ領域
2 背景領域
3 輪郭領域
4 切取部
5 基材フィルム
6 エンボスラッカー層
7 第1のコーティング
8 第2のコーティング
9 カバーフィルム
10 モスアイ構造
11 境界線
B 紙幣
S セキュリティ要素