(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】布団篭及び布団篭の吊り構造
(51)【国際特許分類】
E02B 3/08 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
E02B3/08 301
E02B3/08
(21)【出願番号】P 2022084481
(22)【出願日】2022-05-24
【審査請求日】2022-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019323
【氏名又は名称】小岩金網株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515162442
【氏名又は名称】旭化成アドバンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】坂本 茂
(72)【発明者】
【氏名】柳 拓也
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-171652(JP,A)
【文献】特開2019-127740(JP,A)
【文献】特開平07-109718(JP,A)
【文献】特開平07-189230(JP,A)
【文献】特開平09-041342(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187264(JP,U)
【文献】特開2013-053477(JP,A)
【文献】特開2001-348833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4枚の側面網を有する
外形が略矩形の篭本体と、
前記篭本体の内面に設置した支持シートと、を備え、
対向する2枚の前記側面網に前記支持シートを連結し、
前記支持シートの対向する2側辺を、前記2枚の側面網より外側に延出させて一対の延出部を設け
、
前記支持シートが、前記一対の延出部の側縁に沿って帯状体を付設してなる、吊り上げ手段により吊り上げ可能な吊り縁を有することを特徴とする、
布団篭。
【請求項2】
前記支持シートが、格子状の合成樹脂製ジオグリッドであり、前記ジオグリッドの格子寸法が、前記篭本体の網目寸法より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の布団篭。
【請求項3】
前記吊り縁が、前記帯状体の長手方向に沿って設けた複数のハトメ部を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の布団篭。
【請求項4】
前記篭本体が、コイル状の金属線からなる連結材を備え、前記連結材を、前記側面網の網目と前記支持シートに連通することで、前記側面網に前記支持シートを連結したことを特徴とする、請求項1又は2に記載の布団篭。
【請求項5】
前記篭本体が、底面を有さないか、底面に対向する2枚の側面網間にわたる開口部を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の布団篭。
【請求項6】
前記一対の延出部が、前記篭本体の蓋を構成可能な長さを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の布団篭。
【請求項7】
前記篭本体が、蓋パネルを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の布団篭。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の布団篭と、
前記布団篭内に充填した中詰材と、
吊り上げ手段と、を備え、
前記吊り上げ手段によって、前記一対の延出部を吊ることで、前記支持シートに前記篭本体の荷重と前記中詰材の荷重を支持させたことを特徴とする、
布団篭の吊り構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布団篭及び布団篭の吊り構造に関し、特に製造コストが安く、篭本体の変形を抑止しつつ安定して吊り上げ可能な、布団篭及び布団篭の吊り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
布団篭は、斜面の土留めや海岸や河川の護岸などに用いる函状の篭体である。
布団篭の施工では、布団篭を構成するパネルを設置場所で組み立て、内部に中詰材を充填して設置する方法が一般的である。しかし、例えば急傾斜地や海中など作業員による組み立て作業が困難な場合や、災害復旧のように緊急性を要する場合には、予め布団篭を組み立て、内部に中詰材を充填した状態で、クレーンで吊り上げ、設置場所に吊り込んで配置する。
特許文献1~3には、クレーンの吊り上げによる変形や損壊を防ぐため、構造を強化した布団篭が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11―310912号公報
【文献】特開平11―336045号公報
【文献】特開2022-55434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術は、いずれも補強部材を追加したり線径を太くする等して、布団篭自体の剛性を高めることで変形や損壊に抵抗する発想であるため、構造が複雑になり又鉄量が増加して、製造コストが嵩む。
また、吊り上げ時に、中詰材の荷重が吊りフック部分の線材に集中するため、たとえ布団篭全体の剛性を高めても、部分的な変形を完全に抑制することはできない。この場合、なまじ線材の剛性を高めているが故に、変形の修正が困難となり、下層の布団篭の線材が上方に突起することで、その後に積み上げる布団篭の配置に悪影響が生じ、全体の出来形が悪くなる。
更に、上記のような構造を強化した吊り施工専用の布団篭を使用する必要があり、現場組み立てタイプの布団篭を吊り施工に転用できないという問題もある。
【0005】
本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決するための布団篭及び布団篭の吊り構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の布団篭は、少なくとも4枚の側面網を有する篭本体と、篭本体の内面に設置した支持シートと、を備え、対向する2枚の側面網に支持シートを連結し、支持シートの対向する2側辺を、2枚の側面網より外側に延出させて一対の延出部を設けたことを特徴とする。
【0007】
本発明の布団篭は、支持シートが、格子状の合成樹脂製ジオグリッドであり、ジオグリッドの格子寸法が、篭本体の網目寸法より小さくてもよい。
【0008】
本発明の布団篭は、支持シートが、延出部の側縁に帯状体を付設してなる吊り縁を備えていてもよい。
【0009】
本発明の布団篭は、篭本体が、コイル状の金属線からなる連結材を備え、連結材を、側面網の網目と支持シートに連通することで、側面網に支持シートを連結してもよい。
【0010】
本発明の布団篭は、篭本体が、底面を有さないか、底面に対向する2枚の側面網間にわたる開口部を有していてもよい。
【0011】
本発明の布団篭は、一対の延出部が、篭本体の蓋を構成可能な長さを有していてもよい。
【0012】
本発明の布団篭は、篭本体が、蓋パネルを備えていてもよい。
【0013】
本発明の布団篭の吊り構造は、布団篭と、布団篭内に充填した中詰材と、吊り上げ手段と、を備え、吊り上げ手段によって、一対の延出部を吊ることで、支持シートに篭本体の荷重と中詰材の荷重を支持させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の布団篭及び布団篭の吊り構造は、上述した構成により以下の効果のうち少なくとも1つを有する。
<1>中詰材の荷重を篭本体でなく支持シートが支持する構造であるため、篭本体の剛性を高める加工が必要ない。このため、布団篭の製造コストが安い。
<2>篭本体の剛性に依存しない。このため、通常線径で補強のない現場組み立てタイプの布団篭を、吊り施工に転用することができる。
<3>柔軟な支持シートによって中詰材の荷重を分散して支持できるため、吊り上げ時の安定性が高く、支持シートが多少伸びて変形しても、篭本体の変形量は僅かであるため、上方に積み上げる布団篭の配置に大きな影響が生じない。
<4>支持シートの目合いを篭本体の網目寸法より小さくすることで、充填材として網目寸法より小さい砕石を使用することができる。このため、重機のバケット等による機械充填が可能であり、施工性が非常に高い。
<5>中詰材の荷重を篭本体の底面ではなく支持シートで支持する構造であるため、篭本体の底面の剛性を考慮する必要がない。このため、底面に開口部を設けたり、底面のないボトムレス構造とすることで、製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の布団篭について詳細に説明する。
なお、本願発明において、布団篭等の「幅方向」とは短辺方向を、「長さ方向」とは長辺方向を意味する。ただし両者の区別は説明の便宜に過ぎず、発明の実施にあたっては両者を入れ替えてもかまわない。
【実施例1】
【0017】
[布団篭]
<1>全体の構成(
図1)
本発明の布団篭1は、吊り込み施工に対応した土木用途の篭体である。
布団篭1は、篭本体10と、篭本体10の内面に設置した支持シート20と、を少なくとも備える。
支持シート20は、篭本体10内の幅方向にわたり、篭本体10の内面に沿って敷設され、シート本体21の両側縁が側面網の外側に延出して、一対の延出部21aを構成する。
支持シート20は、少なくとも篭本体10における幅方向2枚の側面網と連結する。
【0018】
<2>篭本体(
図2)
篭本体10は、中詰材Aを充填する函体である。
篭本体10は、少なくとも4枚の側面網11b、12aを有する。
本例では篭本体10として、本体パネル11と、2枚の端部パネル12と、複数の連結材13と、補強材14と、の組み合わせを採用する。
本体パネル11は、2枚の側面網11bの下部を底面網11aで接続した断面略U字型を呈する。
端部パネル12は、側面網12aからなる。
本体パネル11及び端部パネル12には、亜鉛-10%アルミ合金めっき鉄線製の溶接金網を採用する。
本体パネル11の長手方向の開放部に、端部パネル12を配置し、複数の連結材13で連結することで、上部を開放した長尺の函体を構成する。なお、本例では蓋パネル15を設けないが、用途に応じて蓋パネル15を設けてもよい。
本例では、本体パネル11の中央付近に補強材14を設ける。
本発明の布団篭1は、篭本体10が、吊り上げ時の中詰材Aの荷重を負担しないため、土留め等、供用時の用途に応じた剛性のみを考慮すればよい。このため、過剰設計を排して、製造コストを低廉化することができる。
【0019】
<2.1>連結材(
図2)
連結材13は、部材同士を連結するための部材である。
本例では連結材13として、金属製のコイルを採用する。
本体パネル11における側面網11bの側縁と、端部パネル12における側面網12aの側縁とを、連結材13のコイル内に一体に巻き込んで連結する。
本体パネル11における底面網11aの長さ方向の側縁と、端部パネル12における側面網12aの下縁とを、連結材13のコイル内に一体に巻き込んで連結する。
本体パネル11における側面網11bの上縁と、シート本体21の格子とを、連結材13のコイル内に一体に巻き込んで連結する。
なお、連結材13はコイルに限られず、番線、結束帯、ピン、クリップなどの他の公知の手段を採用してもよい。あるいは、例えば篭本体10が鉄筋篭の場合、各パネルの端縁を構成する鉄筋を、U字ボルトで連結する手段であってもよい。
【0020】
<2.2>補強材(
図2)
補強材14は、篭本体10を補強するための部材である。
補強材14は、鉄線を篭本体10の断面形状に対応した枠状に組んでなる。
補強材14は、本体パネル11の対向する2枚の側面網11bの間に配置し、補強材14の両側を、連結材13によって側面網11bに連結する。この際、シート本体21も同時に連結することが望ましい。
この他、補強材14として、両端にフックを有するステーなどを採用してもよい。
【0021】
<3>支持シート(
図3)
支持シート20は、吊り上げ時に中詰材Aの荷重を支持する部材である。
支持シート20は、少なくともシート本体21を有する。
支持シート20は、シート本体21を篭本体10の本体パネル11の内面に沿って設置し、シート本体21の両側縁を側面網11bの外側に延出させて、一対の延出部21aを構成する。
本例では、端部パネル12の側面網12aの内面に、中詰材Aの漏出防止用の端部シート23を設置する。ただし、中詰材Aの粒径が側面網12aの網目寸法以上であれば、端部シート23を設置する必要はない。
本例では、シート本体21の両側縁に吊り縁22を設ける。
【0022】
<3.1>シート本体(
図3)
シート本体21は、篭本体10内に配置するシート材である。
本例ではシート本体21として、高強力ナイロンを集束し、樹脂成型した格子状補強材(ジオグリッド)を採用する。
ジオグリッドは、耐久性及び耐候性に優れ、格子の目合いにコイルや結束帯を通すことで篭本体10と容易に連結できるため、施工性が高い。このようなジオグリッドの製品は、例えば旭化成アドバンス株式会社の「ジオエース(登録商標)」として入手可能である。
ただし、シート本体21は高強力ナイロン製ジオグリッドに限らず、高強度ポリエステル製、ポリウレタン製、ナイロン製、又はポリエステル製等のジオグリッド、ジオシンセティックス(一部又は全部を高分子材料又は天然材料で構成したシート材)、不織布、織布、その他適宜のシート材を採用することができる。
シート本体21の格子寸法を、篭本体10の網目寸法より小さくすることで、シート本体21に中詰材Aの漏出防止機能を発揮させることができる。
【0023】
<3.2>吊り縁(
図3)
吊り縁22は、吊り上げ手段Bによる吊り上げ用の帯状の部材である。
吊り縁22は、延出部21aのジオグリッドの側縁を帯状体22aで挟み、縫製してなる。ただし吊り縁22の構造はこれに限らず、帯状体22aを接着又は溶着し、あるいはシート本体21の製造時に側縁を帯状に加工して構成してもよい。
吊り縁22には、吊り上げ用のハトメ部22bを設けることができる。
支持シート20に吊り縁22を設けることで、吊り上げ時にシート本体21の特定の格子に荷重が集中することを避けて、シート本体21の破損を防ぐことができる。
【0024】
<4>吊り構造(
図4)
本発明の布団篭1は、篭本体10の内部に中詰材Aを充填して、吊り上げ手段Bによって吊り上げることができる。
本例では中詰材Aとして、単粒度砕石を採用する。この他、中詰材Aは用途に応じて、栗石、割栗石、玉石、岩砕、再生砕石等を採用することができる。
クレーンから吊下げた吊り手段Bのフックを、吊り縁22のハトメ部22bに通して、吊り手段Bを吊り上げる。すると、延出部21aが上方に引き上げられて、布団篭1が地切りし、中詰材Aごと吊り上げられる。
吊り上げ時の状態において、中詰材Aの荷重の殆どは、シート本体21全体に分散して支持シート20が支持する。同時に、側面網11bの上縁に連結した連結材13を介して、篭本体10が支持シート20から吊下げられる。
【実施例2】
【0025】
[底面に開口部を設ける実施例]
本発明の布団篭1は、吊り上げ時に中詰材Aの荷重を支持シート20で支持するため、篭本体10の底面に開口部16を設けることができる(
図5)。
本例では、本体パネル11を断面略L字形状の溶接金網から構成し、一対の本体パネル11の間に開口部16を設ける。この他、本体パネル11を側面網11bのみとして、底面網を設けないボトムレス構造としてもよい。
本例の場合、吊り上げ時に支持シート20が開口部16を通して下方に膨らむことで、篭本体10の変形量が減る。また、重心が低くなるため、吊り上げ時の安定性が増す。更に開口部16の分だけ鉄量が減るため、製造コストを大幅に削減できる。
【実施例3】
【0026】
[延出部を蓋に使用する実施例]
本発明の布団篭1は、延出部21aを布団篭1の蓋に利用することができる(
図6)。
本例では、シート本体21の延出部21aの長さを、それぞれ篭本体10の幅の半分とする。
布団篭1の吊り込み後、延出部21aを中詰材Aの上に畳み、帯状部22a同士を突き合わせて、ハトメ部22bにロープを通して縛る。
延出部21aに吊り縁22を設けない場合は、シート本体21の格子内にロープや番線を通して連結することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 布団篭
10 篭本体
11 本体パネル
11a 底面網
11b 側面網
12 端部パネル
12a 側面網
13 連結材
14 補強材
15 蓋パネル
16 開口部
20 支持シート
21 シート本体
21a 延出部
22 吊り縁
22a 帯状部
22b ハトメ部
23 端部シート
A 中詰材
B 吊り上げ手段
【要約】
【課題】製造コストが安く篭本体の変形を抑止しつつ安定して吊り上げ可能な布団篭及び布団篭の吊り構造を提供すること。
【解決手段】本発明の布団篭1は、少なくとも4枚の側面網を有する篭本体10と、篭本体10の内面に設置した支持シート20と、を備え、対向する2枚の側面網11bに支持シート20を連結し、支持シート20の対向する2側辺を、2枚の側面網11bより外側に延出させて一対の延出部21aを設けたことを特徴とする。本発明の布団篭の吊り構造は、布団篭1と、布団篭1内に充填した中詰材Aと、吊り上げ手段Bと、を備え、吊り上げ手段Bによって、一対の延出部21aを吊ることで、支持シート20に篭本体10の荷重と中詰材Aの荷重を支持させたことを特徴とする。
【選択図】
図1