(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】容器の栓部材
(51)【国際特許分類】
B65D 47/06 20060101AFI20230106BHJP
B65D 51/18 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
B65D47/06 300
B65D51/18
(21)【出願番号】P 2018156003
(22)【出願日】2018-08-23
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501449702
【氏名又は名称】戎屋化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 啓育
(72)【発明者】
【氏名】辻井 宣博
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特公昭47-010794(JP,B1)
【文献】特開2015-063342(JP,A)
【文献】実開平03-081864(JP,U)
【文献】特開2002-012253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
B65D 51/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に取り付けられる開口部を備えた中栓部と、中栓部の開口部に挿通し、中栓部の軸方向に沿って摺動可能にされるスライド伸縮ノズル部と、容器の口部を封止する栓部とからなる容器の栓部材において、前記中栓部の上端部は、口径が縮小する方向に内向きに延出するように形成されるとともに、スライド伸縮ノズル部の下端部の外周に突条が形成されてなり、
前記中栓部の内径、前記突条の外径、前記中栓部の上端部の口径及び前記スライド伸縮ノズル部の最下端部の外径はこの順に小さくなるように形成され、該中栓部の上端部の内向きに延出された上端とスライド伸縮ノズル部の下端とが、易破断部を介して接続された状態で一体成形されてなることを特徴とする容器の栓部材。
【請求項2】
前記中栓部の上端部の内向きに延出された上端に、スライド伸縮ノズル部の下端から延設した易破断部の端部が複数箇所で点接続されてなることを特徴とする請求項1に記載の容器の栓部材。
【請求項3】
前記容器の口部の上面に当接する中栓部のフランジの上面と、中栓部に収納されたスライド伸縮ノズル部の上面とが、略同一高さになるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の容器の栓部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の栓部材に関し、特に、容器の口部に取り付けられる開口部を備えた中栓部と、中栓部の開口部に挿通し、中栓部の軸方向に沿って摺動可能にされるスライド伸縮ノズル部と、容器の口部を封止する栓部とからなる容器の栓部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ソース、ケチャップ、オイル等の液状食品や、乳液、ヘアーリキッド等の液状化粧品等の液状内容物を収容した容器の栓部材として、容器の口部に取り付けられる開口部を備えた中栓部と、中栓部の開口部に挿通し、中栓部の軸方向に沿って摺動可能にされるスライド伸縮ノズル部と、容器の口部を封止する栓部とからなる栓部材が汎用されている(例えば、特許文献1~3参照。)。
【0003】
この種の栓部材は、液状内容物を取り出すとき、栓部を外すことで、中栓部の開口部に挿通し、中栓部の軸方向に沿って摺動可能にされるスライド伸縮ノズル部を、栓部と共に引き上げ、中栓部に係止することでその状態を維持することができるようにしている。
これにより、液状内容物を取り出す際の量や方向が安定するとともに、液状内容物の液だれを防止することができるようにしている。
そして、液状内容物を取り出した後、栓部をすることで、スライド伸縮ノズル部を押し下げて、容器の口部を封止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-40312号公報
【文献】実開昭63-82754号公報
【文献】実開昭52-168737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の栓部材は、別成形された各部材を組み合わせる方法によって製造されている。
そして、各部材は、生産効率を高めるため、金型に複数のキャビティを設定(複数個取り)することで、キャビティの数の部材を同時に成形することができるようにしている。
しかしながら、この方法によれば、以下の問題があることが分かった。
(1)中栓部とスライド伸縮ノズル部とが2パーツで構成されており、組み込み工程も必要でコスト高になる。
(2)2パーツの組み合わせのため、各部材の寸法のバラツキが原因で、スライド伸縮ノズル部の中栓部に対する摺動性、係止性、シール性のバラツキが発生しやすい。
【0006】
本発明は、上記従来の栓部材の有する問題点に鑑み、製造及び組み込みが容易で、かつ、各部材の寸法のバラツキの影響を受けず、スライド伸縮ノズル部の中栓部に対する摺動性、係止性、シール性を良好にできる容器の栓部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の容器の栓部材は、容器の口部に取り付けられる開口部を備えた中栓部と、中栓部の開口部に挿通し、中栓部の軸方向に沿って摺動可能にされるスライド伸縮ノズル部と、容器の口部を封止する栓部とからなる容器の栓部材において、前記中栓部とスライド伸縮ノズル部とが、易破断部を介して接続された状態で一体成形されてなることを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記中栓部の上端部に、スライド伸縮ノズル部の下端部から延設した易破断部の端部が複数箇所で点接続されてなるようにすることができる。
【0009】
また、前記容器の口部の上面に当接する中栓部のフランジの上面と、中栓部に収納されたスライド伸縮ノズル部の上面とが、略同一高さになるようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の容器の栓部材によれば、容器の口部に取り付けられる開口部を備えた中栓部と、中栓部の開口部に挿通し、中栓部の軸方向に沿って摺動可能にされるスライド伸縮ノズル部とが、易破断部を介して接続された状態で一体成形されてなるようにすることにより、製造及び組み込みが容易で、かつ、一体成形のため中栓部とスライド伸縮ノズル部の組み合わせが1つに固定され、各部材の寸法のバラツキの影響を受けず、スライド伸縮ノズル部の中栓部に対する摺動性、係止性、シール性を良好にできる。
【0011】
また、中栓部の上端部に、スライド伸縮ノズル部の下端部から延設した易破断部の端部が複数箇所で点接続されてなるようにすることにより、製造及び組み込みをより一層容易にすることができる。
【0012】
また、前記容器の口部の上面に当接する中栓部のフランジの上面と、中栓部に収納されたスライド伸縮ノズル部の上面とが、略同一高さになるようにすることにより、コンパクトでハンドリングが容易に栓部材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の容器の栓部材の第1実施例を示す説明図である。
【
図2】同容器の栓部材の使用方法を示す説明図である。
【
図3】本発明の容器の栓部材の第2実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の容器の栓部材の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1~
図2に、本発明の容器の栓部材の第1実施例を示す。
この容器の栓部材1は、容器Bの口部に取り付けられる開口部を備えた中栓部2と、中栓部2の開口部に挿通し、中栓部2の軸方向に沿って摺動可能にされるスライド伸縮ノズル部3と、容器Bの口部を封止する栓部5とからなり、中栓部2とスライド伸縮ノズル部3とが、易破断部4を介して接続された状態で一体成形されてなるようにしている。
【0016】
この場合において、一体成形する中栓部2、スライド伸縮ノズル部3及び易破断部4は、容器Bに収容する液状内容物に適合した合成樹脂材料、通常は、透明の合成樹脂材料を使用し、金型を用いた射出成形方法によって成形するようにする。
【0017】
中栓部2の上端部21は口径が縮小する方向に内向きに延出するように形成し、この中栓部2の上端部21に、スライド伸縮ノズル部3が収納状態のときは、スライド伸縮ノズル部3の最上端部の外周に形成したフランジ31が当接することでスライド伸縮ノズル部3が係止され、スライド伸縮ノズル部3が引き上げられたときは、スライド伸縮ノズル部3の下端部の外周に形成した突条32が当接することでスライド伸縮ノズル部3が係止されるようにしている。
また、中栓部2の下端部の内周に突条22を形成し、この中栓部2の突条22に、スライド伸縮ノズル部3が収納状態のときは、スライド伸縮ノズル部3の突条32が当接することで係止されるようにしている。
また、中栓部2の外周にフランジ23を形成し、中栓部2を容器Bの口部に装着したときに、当該口部の上面に当接することで係止されるようにしている。
そして、スライド伸縮ノズル部3の最下端部の外径D3は、中栓部2の上端部21の内径(口径)D2より小さく形成するとともに、スライド伸縮ノズル部3の突条32の下面はテーパ面に形成するようにしている。これにより、易破断部4を介して一体成形された中栓部2及びスライド伸縮ノズル部3を、スライド伸縮ノズル部3を中栓部2側に押し込み、易破断部4を破断することで、スライド伸縮ノズル部3の突条32のテーパ面に案内されて、中栓部2内にスライド伸縮ノズル部3が円滑に収納することができる。
【0018】
そして、本実施例において、中栓部2及びスライド伸縮ノズル部3は、易破断部4を介して一体成形された状態において、中栓部2の上端部に、スライド伸縮ノズル部3の下端部から延設した易破断部4の端部が複数箇所(例えば、等間隔で3~4箇所。本実施例においては、4箇所。)で点接続されてなるようにしている。
易破断部4は、中栓部2とスライド伸縮ノズル部3の組み合わせが1つに固定されるためのものであり、易破断部4を介して一体成形された中栓部2及びスライド伸縮ノズル部3を、成形後、適宜段階、例えば、容器Bの口部に装着する段階で、スライド伸縮ノズル部3を中栓部2側に押し込み、易破断部4を破断するようにする。
このため、易破断部4は、中栓部2とスライド伸縮ノズル部3とを点接続するほか、例えば、周接続するようにすることもできるが、この場合も、組み込み工程に手数を要しない容易に破断できる脆弱な構造(中栓部2及びスライド伸縮ノズル部3が容器Bの口部に装着されるまでに分離しない程度の脆弱な構造)にする必要がある。
【0019】
この容器の栓部材1は、従来のこの種の栓部材と同様、液状内容物を取り出すとき、栓部5を外すことで、中栓部2の挿通し、中栓部2の軸方向に沿って摺動可能にされているスライド伸縮ノズル部3を、栓部5の引き上げ部51との摩擦抵抗の作用で、栓部5と共に引き上げ、中栓部2に係止することでその状態を維持することができるようにしている。
なお、栓部5の引き上げ部51とスライド伸縮ノズル部3とは、アンダーカット構造により係合することによって、スライド伸縮ノズル部3を栓部5と共に引き上げるようにすることもできる。
【0020】
そして、この容器の栓部材1は、容器Bの口部に取り付けられる開口部を備えた中栓部2と、中栓部2の開口部に挿通し、中栓部2の軸方向に沿って摺動可能にされるスライド伸縮ノズル部3とが、易破断部4を介して接続された状態で一体成形されてなるようにすることにより、製造及び組み込みが容易で、かつ、一体成形のため中栓部2とスライド伸縮ノズル部3の組み合わせが1つに固定され、金型に複数のキャビティを設定(複数個取り)した場合の各部材の組み合わせの変動がなく、各部材の寸法のバラツキの影響を受けず、スライド伸縮ノズル部3の中栓部2に対する摺動性、係止性、シール性を良好にできる。
【実施例2】
【0021】
図3に、本発明の容器の栓部材の第2実施例を示す。
この容器の栓部材1は、容器Bの口部の上面に当接する中栓部2のフランジ23の上面と、中栓部2に収納されたスライド伸縮ノズル部3の上面となるスライド伸縮ノズル部3の最上端部の外周に形成したフランジ31の上面とが、略同一高さ(ここで、「略同一高さ」とは、フランジ31の厚み程度の差がある場合を含んでいう。なお、フランジ31の厚み寸法だけ中栓部2の上端部21の高さを低く形成することにより、この差をなくすこともできる。)になるようにしている。
これにより、コンパクトでハンドリングが容易に栓部材1とすることができる。
【0022】
なお、この容器の栓部材1のその他の構成及び作用は、上記第1実施例の容器の栓部材1と同様である。
【0023】
以上、本発明の容器の栓部材について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の容器の栓部材は、製造及び組み込みが容易で、かつ、各部材の寸法のバラツキの影響を受けず、スライド伸縮ノズル部の中栓部に対する摺動性、係止性、シール性を良好にできるという特性を有していることから、液状食品や液状化粧品等の液状内容物を収容した容器の栓部材の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 栓部材
2 中栓部
3 スライド伸縮ノズル部
4 易破断部
5 栓部
B 容器