(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】しおり
(51)【国際特許分類】
B42D 9/00 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
B42D9/00 C
(21)【出願番号】P 2018228422
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】518197960
【氏名又は名称】有限会社山本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】山本 一公
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04793632(US,A)
【文献】特開平09-109574(JP,A)
【文献】特開2010-012767(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0919993(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冊子の表紙または背中に固定する固定部と、
薄板あるいはシートを用いて形成され、前記冊子のページ紙間に挿み込むしおり本体と、
前記しおり本体と前記固定部とを接続するアーム部と、
前記アーム部を前記冊子の上辺に対して平行な状態で揺動するように支持し、前記固定部によって前記冊子に固定されるアーム揺動部と、
前記アーム部と前記しおり本体との間に配置し、前記冊子のページ紙の紙面上から該冊子の外側の位置までの範囲で前記しおり本体を揺動させる本体ヒンジ部と、
を備え、
前記しおり本体は、
前記ページ紙間に挿んだ場合に該ページ紙の小口から突出するタグ部を有し、
該しおり本体または前記タグ部に、手または指を沿えてページを開こうとした時、前記ページ紙との間に適度な摩擦が生じ、不意にずれることを防ぐ複数の溝部または凹凸部を両面または片面に設
け、
前記アーム部は、
前記固定部と前記しおり本体との間の距離を調整するアーム長さ調整部を備えた、
ことを特徴とするしおり。
【請求項2】
前記アーム部は、
前記しおり本体を前記ページ紙間に挿んだときに生じる、前記しおり本体をねじる応力を解消するねじれ解消部を備えた、
ことを特徴とする請求項1に記載のしおり。
【請求項3】
前記しおり本体を揺動するように支持し、前記本体ヒンジ部によって前記しおり本体とともに揺動するように前記本体ヒンジ部に接続された本体揺動支持部を備え、
前記しおり本体は、
前記本体揺動支持部の揺動軸方向と直交する方向の片端部または両端部に前記タグ部を備え、
前記本体揺動支持部は、
該本体揺動支持部の揺動軸が、前記本体ヒンジ部の揺動軸に対して直交するように配置され、前記しおり本体を前記ページ紙間に挿んだときに生じる、前記しおり本体をねじる応力を解消するように揺動する、
ことを特徴とする請求項1に記載のしおり。
【請求項4】
前記本体ヒンジ部は、
前記しおり本体の位置を保持する保持手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のしおり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手帳、メモ帳、ノート及び本、さらには手帳カバー等の紙面ページ間に目印として挟んでおくためのしおりに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な手帳や書籍などには、ページ紙面を綴じている上側部分に1本あるいは複数本の細いしおり紐が取付け固定されている。このしおり紐は、一端が上記の綴込み部に固定されており、自由端を手で操作して、例えば、手帳であれば、記入を終えたページに挿み込み、本であれば、読み終えたページに挿み込むように用いられている。このしおり紐は、柔軟性を有する素材を用いて比較的細く形成されているため、これを使用者が指で掴んで扱うとき紙の間に挟むことが難しい場合がある。
【0003】
上記のしおり紐に比べて使い勝手の良いものとして、適度な厚さの厚紙を短冊状に形成し、その上部に飾り紐等を結び付けたしおりを用いることが多い。このようなリーフ状のしおりは、紙面の間に挿みこむだけなので、例えば、ページ送りのように冊子状の紙面を送り動かすと、挿み込んだ部分から簡単に落下してしまうことがある。
上記のしおり紐をページ間から外す操作や、ページ間に深く挿まったしおりを外して適度な位置に挿みなおす煩わしさをなくし、また、しおりを挿んだページの開き難さを抑えるため、次のように構成されたしおりがある。
このしおりは、例えば、適度な弾性を有する樹脂シート等を用いて短冊状のしおり本体を形成し、当該短冊状の長手方向の一端に糊部を設け、この糊部を本の適当な位置に貼り付け、しおり本体に設けられた折目を折ることによって長手方向の他端を所望のページ間に挿むように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、プラスチックシートを抜き打ちカットすることにより、用紙差し替え式ノートに装着できるように形成し、棒状の目印部を備えたしおりがある(例えば、特許文献2参照)。
このしおりは、上記の用紙差し替え式ノートに備えられている用紙綴じ具に綴じ込むことができる係止部を備えており、この係止部を用紙綴じ具に綴じ込んだとき、ノート用紙の縁端から当該ノート外側へ突出するように目印部を備えている。このしおりを使用するときには、複数枚の用紙とともに用紙差し替え式ノートに綴じ込み、棒状の目印部を、例えば用紙の縁端と重なる位置で折り曲げて所望の用紙間に挿み込む。このように用紙間に挿み込んだとき、棒状の目印部の先端は、当該目印部の基端側となる用紙の一の縁辺に対向配置された他の縁辺から突出する。この突出した部位を手で操作することにより、所望の(目印部を挿み込んだ)ページを開くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平7-757号公報
【文献】特開2008-290251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来のしおりのように樹脂シート等を用いて、例えばポリプロピレン(PP)を用いてしおりを形成した場合、この素材が有する弾性によって、しおりを挿んだ手帳や本などのページ間が開いた状態になって綴込み部分やページ縁端などを傷めることがある。
また、上記のような樹脂製のしおりは、数十分程度、本などに挿んだ状態を保持すると、前述の折目などの可撓部分に癖がつき、元来の形状へ戻らなくなり、挿み込んだページの紙面から離れ難くなるという問題点があった。
【0007】
また、前述の用紙差し替え式ノートに綴じ込むしおりは、用紙の縁端から突出している目印部の先端を掴んで所望の用紙間(ページ)を開くとき、比較的大きな力と「こつ」が必要になる。
具体的には、所望のページ間に挿み込まれた棒状の目印部は、例えば、用紙差し替え式ノートを水平状態としてページ見開き状態にすると、目印部の折り返し部分と先端との間に複数ページの用紙が積み上げられた状態となる。即ち、折り返し部分と先端との間には複数ページの用紙の荷重が加えられている。
【0008】
この荷重を持ち上げる(見開く)ための力をFとする。また、力Fが加えられる位置から用紙綴込み部分までの距離をL1、目印部に積層されている用紙の重量をW、重量Wの用紙の重心と用紙綴込み部分までの距離をL0としたとき、用紙見開きに要する力Fは、F=W×L0/L1となる。
ここで、距離L1は、距離L0に比べて十分小さいことから、目印部に積層されている用紙の重量Wよりも相当に大きな力Fが用紙見開きに必要になり、操作感が重くなってしまう。このように用紙重量Wよりも大きな力Fが必要になることから、実際に用紙を見開き状態にする場合には、前述の用紙の他の縁端から突出している目印部の先端を、用紙綴込み部分から引き離すように移動させ、当該目印部をひねるように力を加えながら、見開き状態となるように持ち上げる「こつ」が必要になり、素早く所望のページを開くことが難しいという問題点があった。
【0009】
本開示は上記の問題点に鑑みなされたもので、ページを開く際にしおりを落下させることなく、小さな力で素早くページを開くことができるとともに、簡易に当該しおりを所望のページに挿入することができ、また、読書や書き込み等の作業を行うときには邪魔とならない位置に配置することができるしおりを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係るしおりは、冊子の表紙または背中に固定する固定部と、薄板あるいはシートを用いて形成され、前記冊子のページ紙間に挿み込むしおり本体と、前記しおり本体と前記固定部とを接続するアーム部と、前記アーム部を前記冊子の上辺に対して平行な状態で揺動するように支持し、前記固定部によって前記冊子に固定されるアーム揺動部と、前記アーム部と前記しおり本体との間に配置し、前記冊子のページ紙の紙面上から該冊子の外側の位置までの範囲で前記しおり本体を揺動させる本体ヒンジ部と、を備え、前記しおり本体は、前記ページ紙間に挿んだ場合に該ページ紙の小口から突出するタグ部を有し、該しおり本体または前記タグ部に、手または指を沿えてページを開こうとした時、前記ページ紙との間に適度な摩擦が生じ、不意にずれることを防ぐ複数の溝部または凹凸部を両面または片面に設けた、ことを特徴とする。
【0011】
また、前記アーム部は、前記しおり本体を前記ページ紙間に挿んだときに生じる、前記しおり本体をねじる応力を解消するねじれ解消部を備えた、ことを特徴とする。
【0012】
また、前記しおり本体を揺動するように支持し、前記本体ヒンジ部によって前記しおり本体とともに揺動するように前記本体ヒンジ部に接続された本体揺動支持部を備え、前記しおり本体は、前記本体揺動支持部の揺動軸方向と直交する方向の片端部または両端部に前記タグ部を備え、前記本体揺動支持部は、該本体揺動支持部の揺動軸が、前記本体ヒンジ部の揺動軸に対して直交するように配置され、前記しおり本体を前記ページ紙間に挿んだときに生じる、前記しおり本体をねじる応力を解消するように揺動する、ことを特徴とする。
【0013】
また、前記アーム部は、前記固定部と前記しおり本体との間の距離を調整するアーム長さ調整部を備えた、ことを特徴とする。
【0014】
また、前記本体ヒンジ部は、前記しおり本体の位置を保持する保持手段を備えた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、冊子である手帳や本などの所望のページ間に挿めたとき、小さな力で素早くページを開くことができ、また、読書や書き込み等を行う際には、邪魔とならない位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施例1によるしおりを冊子に装着した状態を示す説明図である。
【
図2】実施例1によるしおりの構成を示す説明図である。
【
図3】実施例1のしおりを冊子の背中に装着した一例を示す説明図である。
【
図4】実施例1のしおりのアーム部の一例を示す説明図である。
【
図5】本開示の実施例2によるしおりの構成を示す説明図である。
【
図6】実施例2のしおりを冊子に装着した一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この開示の実施の一形態を説明する。
(実施例1)
図1は、本開示の実施例1によるしおり1を冊子100に装着した状態を示す説明図である。また、
図2は、実施例1によるしおり1の構成を示す説明図である。
しおり1は、薄い樹脂板または樹脂シートを用いて形成されたしおり本体10、しおり1を冊子100に固定する固定部15、固定部15としおり本体10とを接続するアーム部14を備えている。
【0018】
しおり本体10は、上記の樹脂素材と同様な特徴を備えた、金属素材、複合素材(ハイブリッド素材)等を用いて形成することも可能である。
しおり本体10は、表面に適当なざらつきを有する樹脂製の薄板、シート等を用いて構成してもよく、さらに、表面に適当なざらつきを有する厚紙を用いて構成してもよい。
しおり本体10は、しおり1を冊子100に装着したとき、ページ紙104の小口から突出する(ページ紙104の紙面側方へ突出する)タグ部11を有している。また、しおり本体10の上側部分には、当該しおり本体10とアーム部14とを接続する本体ヒンジ部12が設けられている。
【0019】
本体ヒンジ部12は、アーム部14としおり本体10の間、または、本体ヒンジ部12はしおり本体10に接続したアーム部14とアーム部揺動部16との間に配置され、例えばアーム部14の先端部分に設置されて、アーム部14に対してしおり本体10が揺動するように構成されている。
本体ヒンジ部12は、例えば、しおり本体10の上側部分に管状の部位を設け、この管状部位の管孔にアーム部14の先端部分を挿通して構成されている。
換言すると、本体ヒンジ部12は、アーム部14のアーム軸を中心に回転するように構成されている。
【0020】
本体ヒンジ部12によって支持されたしおり本体10は、
図2の矢印Bが示す方向に揺動する。
本体ヒンジ部12は、しおり1を冊子100に装着したとき、しおり本体10をページ紙104の間に挿むことができる位置から、しおり本体10がページ紙104の外縁よりも外側となる位置までの範囲で回転する。換言すると、本体ヒンジ部12は、ページ紙104の紙面上から冊子100の外側となる位置までの範囲で、しおり本体10を揺動させることができるように構成されている。
【0021】
本体ヒンジ部12は、しおり本体10とページ紙104との位置関係を保持する保持手段を有してもよい。例えば、保持手段として、本体ヒンジ部12の回転軸部分に上記の位置関係を保持することができる程度の回転抵抗が生じる構成を有してもよく、簡易なラッチ機構などを有してもよい。
例えば、本体ヒンジ部12にしおり本体10の揺動位置を保持する保持手段を備えた場合、この保持力は使用者の指先の力で当該しおり本体10の位置を調整することができる程度の強さである。なお、この保持力は、後述する本体ヒンジ部32の保持手段においても同様に有している。
【0022】
ここで、ページ紙104を見開くための力をF、この力Fが加えられる位置から綴込み部分までの距離をL1、しおり本体10に積層されているページ紙104の重量をW、当該重量Wを有するページ紙104の重心から綴込み部分までの距離をL0としたとき、見開きに要する力Fは、F=W×L0/L1となる。
しおり1は、しおり本体10のタグ部11に手を沿え、または指を掛け、押し開くように操作することで、小さな力で且つ素早くページを開くことができる。
【0023】
本体ヒンジ部12は、前述の保持手段を有しない構成でもよい。このように保持力を有さない本体ヒンジ部12を用いた場合には、例えば、本体ヒンジ部12の可動域を90度以上とし、かつ、しおり本体10が手前に倒れてこない角度に、突き当て等で角度位置を制限するように構成し、上記保持手段の代替え機能としてもよい。
なお、後述するしおり2においても、保持手段を有さない本体ヒンジ部を備えて構成してもよく、この場合に、上述の代替え機能を有するように構成するとよい。
上記のように本体ヒンジ部12が回転することから、しおり本体10を目的のページ紙面上の視界から外に出すことが可能となる。
【0024】
しおり本体10は、冊子100のページ紙104等に当接したとき、容易に滑り移動することがないように、表面に適当な大きさの複数の凹凸部または複数の溝部を備えている。
ここで例示したしおり本体10は、片側面または両面に複数の本体溝部13を、アーム部14の長手方向に対して鉛直に(ページ紙104の小口と平行となるように)設け、ページ紙104、さらにはページ紙104の小口との間に適度な摩擦を発生させ、しおり本体10に手または指を沿えてページを開こうとした時、不意にずれることを防ぐように構成している。
【0025】
例えば、冊子100が手帳であり、この冊子100の(ページ紙104の)1ページ厚さが0.1[mm]以下である場合、これに装着するしおり1(しおり本体10)は、溝断面が半円形状であって、半径0.05[mm]、半円深さが0.05[mm]の本体溝部13を備えるとよい。
固定部15は、例えば、ばね性の材質を用いたクリップであり、
図2に例示したように、下方を開口した略U字状に形成されている。
【0026】
図3は、実施例1のしおり1を冊子100の背中103に装着した一例を示す説明図である。なお、
図3は背中103の断面を示している。
クリップ状の固定部15は、例えば、
図3に示したように、冊子100の背中103等を略U字状の2つの長辺部分の間に挟み込んで、しおり1を冊子100に固定する。固定部15は、背中103以外には、表表紙100や裏表紙101の、背中103近傍の適当な位置に固定してもよい。
なお、固定部15は、クリップ状に構成したものに限定されず、例えば、接着剤や両面テープ(接着シート)等を、所定位置に塗布また張り付けた部材によって構成してもよく、また、後述する
図5に示した固定部25のように構成することも可能である。
【0027】
固定部15は、アーム部14の基端部を支持するアーム揺動部16を備えている。固定部15を固定する位置は、アーム揺動部16に支持されたアーム部14が揺動できる位置であり、アーム部14に支持されたしおり本体10がページ紙104に挿まれた場合に、タグ部11がページ紙104の小口から突出する位置である。
アーム揺動部16は、例えば、固定部15を冊子100に固定したとき、背中103の内側となるように、固定部15に設けられている。
図2のアーム揺動部16は、例えば、管状に形成したアーム揺動部16の断面を示している。
アーム揺動部16は、冊子100に固定されたとき、アーム部14が冊子100の上辺(上端の縁辺)に対して概ね平行な状態で揺動する(冊子100の概ね厚み方向に揺動する)ように設けられている。
アーム揺動部16は、例えば、冊子100にしおり1を固定した状態において、表表紙101の位置から裏表紙102の位置までの範囲で、アーム部14が揺動できるように構成されている。
【0028】
図2のアーム揺動部16は、管形状を上下方向に延設しており、管孔にアーム部14の基端部側を挿通させている。
なお、アーム揺動部16についても、本体ヒンジ部12と同様に保持手段を有し、例えば、回転軸の摩擦抵抗などによって不意に回転(揺動)しないように構成してもよい。
【0029】
図2のアーム部14は、アーム揺動部16の上端部で鉛直に曲げられている。また、この曲げ位置から当該アーム部14の先端部まで、例えば直線状に形成されている。
なお、アーム部14の上記曲げ位置から先端部までの部分は、しおり1を冊子100に装着した状態において、ページ紙104の上辺からの距離が本体ヒンジ部12と概ね同じであればよく、上記の形状(直線状)に限定されない。
アーム部14は、上記のようにアーム揺動部16に支持されることにより、
図2の矢印Aが示す方向に揺動する。即ち、しおり1を、
図1に示したように冊子100に装着したとき、アーム部14は冊子100の上辺(天)に対して概ね平行な状態を維持して揺動する。
アーム部14は、固定部15を冊子100の背中103、または、その近傍の表表紙101や裏表紙102に固定し、当該アーム部14の先端側に備えたしおり本体10を、所望のページ紙104の間に挿んだとき、タグ部11がページ紙104の前小口から突出することができる長さを有する。
【0030】
図4は、実施例1のしおり1のアーム部14の一例を示す説明図である。
図4のしおり1は、アーム部14に、例えば、可撓性のスパイラルチューブを用いたねじれ解消部17を備えている。
アーム部14によって支持されたしおり本体10をページ紙104の間に挿んだとき、しおり本体10をねじるように作用する応力(ストレス)が生じる。そのため、この応力を解消する機構を備えることが好ましい。
図4のねじれ解消部17は、スパイラルチューブが歪む、もしくは変形することによって上記の応力を解消するようにしたものである。
【0031】
ねじれ解消部17を備えたアーム部14は、アーム揺動部16に支持された基端部、本体ヒンジ部12を備えた先端部等に適度な剛性を備え、前述のように揺動することができるように構成されている。
なお、ねじれ解消部17は、上記のスパイラルチューブに限定されず、しおり本体10をねじる応力を解消するものであれば、他の構造でもよい。
また、例えば、アーム部14が十分に長く、ページ紙104の間に挿んだしおり本体10にねじれが生じない(ねじれが無視できるほど小さい)場合には、ねじれ解消部17を備えずにアーム部14を構成してもよい。
【0032】
(実施例2)
図5は、本開示の実施例2によるしおり2の構成を示す説明図である。
しおり2は、薄い樹脂板または樹脂シートを用いて形成されたしおり本体20、しおり2を例えば前述の冊子100に固定する固定部25、固定部25としおり本体20とを接続するアーム部24を備えている。
しおり本体20は、上記の樹脂素材と同様な特徴を備えた、金属素材、複合素材(ハイブリッド素材)等を用いて形成することも可能である。
しおり本体20は、表面に適当なざらつきを有する樹脂製の薄板、シート等を用いて構成してもよく、さらに、表面に適当なざらつきを有する厚紙を用いて構成してもよい。
【0033】
しおり本体20は、しおり2を冊子100に装着したとき、ページ紙104の小口から突出するタグ部21aならびにタグ部21bを有している。
タグ部21aとタグ部21bは、
図5に例示したしおり本体20では、長手方向の両端部に各々配置されている。
後述する本体揺動支持部33に支持されたしおり本体20は、本体揺動支持部33の揺動軸に直交する方向に位置する(しおり本体20の)両端部にタグ部21aとタグ部21bを各々備えている。
しおり本体20は、冊子100のページ紙104等に当接したとき、容易に滑り移動することがないように、表面に適当な大きさの複数の凹凸部または複数の溝部を備えている。
図5に例示したしおり本体20は、片側面または両面に複数の本体溝部23を形成させ、ページ紙104、さらにはページ紙104の小口との間に適度な摩擦が生じるようにして、当該しおり本体20に手または指を沿えてページを開こうとした時、不意にずれることを防ぐように構成している。
【0034】
本体溝部23は、しおり本体20の上下方向に延びるように、即ち、アーム部24の長手方向に対して鉛直に(ページ紙104の小口と平行となるように)設け、ページ紙104、さらにはページ紙104の小口との間に適度な摩擦を発生させ、しおり本体10に手または指を沿えてページを開こうとした時、不意にずれることを防ぐように構成されている。
本体溝部23は、例えば、前述のしおり本体10に形成されている本体溝部13と同様な溝断面形状で同様な大きさに形成されている。
本体溝部23は、例えば、タグ部21a,21bを含めてしおり本体20全体に形成されている。
なお、しおり本体20のうち、タグ部21a,21bのみに本体溝部23を設けた構成としてもよい。
また、本体溝部23に替えて、前述のしおり本体10と同様に、複数の凹凸部を備えてもよい。
【0035】
図5に例示したしおり本体20は、長手方向の中央部分(タグ部21aとタグ部21bの中間位置)に本体揺動支持部33が設けられ(接続され)、本体揺動支持部33を介して本体ヒンジ部32に接続されている。
本体ヒンジ部32は、例えばアーム部24の長手方向の先端に設置されており、アーム部24に対してしおり本体20が揺動するように構成されている。なお、本体ヒンジ部32は、後述するアーム長さ調整部30の伸縮によって、固定部25から当該本体ヒンジ部32までの距離を調整することができる位置であれば、アーム部24のどこに設置してもよく、当該設置位置は上記の先端に限定されない。
即ち、本体ヒンジ部32は、アーム部24のアーム軸を中心に回転する(
図5の矢印Dが示す方向に回転する)ように構成されている。上記のようにアーム部24の先端側に設置した本体ヒンジ部32は、しおり本体20と共に本体揺動支持部33を含めて揺動させる。
【0036】
本体ヒンジ部32は、前述の本体ヒンジ部12と同様に、しおり本体20の位置を保持する保持手段を有し、例えば、回転軸の摩擦抵抗などによって、しおり本体20とページ紙104の位置関係を保持することができるように構成してもよい。
なお、本体ヒンジ部32は、本体ヒンジ部12と同様に保持手段を有しないように構成してもよく、この場合には前述の代替え手段を備えることも可能である。
【0037】
本体揺動支持部33は、本体ヒンジ部32の回転軸(揺動軸)に対して直交する回転軸(揺動軸)を有し、
図5の矢印Eが示す方向に回転するように配置されている。
本体揺動支持部33は、自身の揺動軸が、しおり本体20の表面と平行になるように、しおり本体20を支持している。
しおり本体20は、上記の揺動軸に対して直交する方向の各端部にタグ部21aとタグ部21bを各々備えている。
【0038】
しおり本体20は、本体揺動支持部33の揺動軸に対して直交する方向に該当する端部(2つの端部)にタグ部21aとタグ部21bを備えている。
例えば、本体揺動支持部33が、しおり本体10のような形状(1つのタグ部を備えたもの)を支持する場合には、当該しおり本体は、本体揺動支持部33の揺動軸に対して直交する方向の片端部にタグ部を備える。
図5の本体揺動支持部33は、例えば、しおり本体20の長手方向の中央部分、即ち、タグ部21aとタグ部21bの中間点となる位置を支持している。
このように支持した場合、本体揺動支持部33は、しおり2を冊子100に固定した状態において、しおり本体20を回転させてタグ部21aとタグ部21bの位置を入れ替え、ページ紙104の小口から突出するタグ部を替えることも可能にする。
【0039】
本体揺動支持部33は、上記のように本体ヒンジ部32に対して直交配置されている。そのため、本体ヒンジ部32の揺動と本体揺動支持部33の揺動により、しおり本体20の向き(ページ紙面に対向する角度)を立体的に調節することができ、しおり本体20の表面を、ページ紙104の紙面と平行にすることが可能になる。
即ち、本体揺動支持部33は、しおり本体20をページ紙104間に挿んだときに生じる、しおり本体20をねじる応力を解消するように作用し、前述のねじれ解消部17に相当する。
【0040】
アーム部24の基端部は、アーム揺動部31によって支持されている。アーム揺動部31は、
図5の矢印Cが示す方向に回転するように構成されており、固定部25とアーム部24を接続するように備えられている。
アーム揺動部31は、固定部25を冊子100に固定したとき、アーム部24が冊子100の上辺(上端の縁辺)に対して概ね平行な状態で揺動する(冊子100の概ね厚み方向に揺動する)ように設けられている。
アーム揺動部31は、例えば、冊子100にしおり2を固定した状態において、表表紙101の位置から裏表紙102の位置までの範囲で、アーム部24が揺動できるように構成されている。
なお、アーム揺動部31、本体揺動支持部33についても、本体ヒンジ部32と同様に保持手段を有し、例えば、回転軸の摩擦抵抗などによって不意に回転(揺動)しないように構成してもよい。
【0041】
アーム部24は、概ね、前述のアーム部14と同様な形状をしており、アーム揺動部31の上端部よりも上側で鉛直に曲げられている。
アーム部24は、この曲げ位置から本体ヒンジ部32までの間にアーム長さ調整部30を備えている。
アーム長さ調整部30は、アーム部24のアーム腕(長手部分)の長さを調整するもので、
図5の矢印Gの方向に伸縮し、固定部25と、しおり本体20との間の距離を調整するように構成されている。なお、前述のアーム部14に、アーム長さ調整部30を備えることも可能である。
【0042】
固定部25は、例えば、金属製の棒材を曲げ加工してばね性を有するように形成したクリップ部分を備え、冊子100の表表紙101や裏表紙102を挟むように構成されている。固定部25は、冊子100の背中103を挟むように構成してもよく、例えば、固定部15のように構成してもよい。また、例えば、接着剤や両面テープ(接着シート)等を、所定位置に塗布また張り付けた部材によって構成してもよい。
固定部25は、
図5に示した構成に限定されず、上記のように、冊子100の表表紙101、裏表紙101、背中103等に固定することができ、また、前述のようにアーム部24が揺動できる位置にアーム揺動部31を固定する構成であればよい。
【0043】
図6は、実施例2のしおり2を冊子100に装着した一例を示す説明図である。この図は、例えば、固定部25を裏表紙102に固定し、しおり本体20をページ紙104の間に挿んだ状態を示している。
図6(a)は、冊子100等を上方視したときの状態を示し、
図6(b)は冊子100を表表紙101側から斜視したときの状態を示している。
図示したように、固定部25を裏表紙102の小口側に固定した場合、アーム長さ調整部30を調整し、しおり本体20をページ紙104の間に挿んだ状態で、タグ部21a(またはタグ部21b)がページ紙104から突出するように、アーム部24のアーム腕長さを短くして使用する。
【0044】
しおり2は、アーム揺動部31、本体ヒンジ部32、本体揺動支持部33を備え、また、アーム長さ調整部30を備えることにより、冊子100の小口側に固定部25を固定しても、タグ部21a,21bのいずれかをページ紙104の小口側から突出させることが可能になる。
なお、固定部25を、冊子100の背中103、表表紙101または裏表紙102の背中103近傍の位置に固定した場合には、しおり1のアーム部14と同様な長さに調整し、タグ部21aまたはタグ部21bがページ紙104の小口側から突出することができる状態として、しおり2を使用する。
【0045】
以上のように本開示のしおり1,2は、しおり本体またはタグ部に手を沿え、または指を掛け、押し開くように操作することで、小さな力で且つ素早くページを開くことができる。
また、しおり1,2は、しおり本体を挿んだページ紙を見開き状態として、本体ヒンジ部を回転させることにより、しおり本体をページ紙表面から遠ざけておくことができることから、簡易な操作で所望のページを開いて読書や書き込みを始めることができる。
【0046】
また、しおり1は、しおり本体10にタグ部11を備えて略L型に形成され、しおり2は、しおり本体20にタグ部21a,21bを備えて略T型に形成されているが、複数のタグ部を備えるしおり本体を略十字型に形成し、これを用いて前述のような本体ヒンジ部等を備えたしおりを構成してもよい。
また、しおり2のように、アーム長さ調整部30を備え、しおり本体20の長手方向両端にタグ部21aとタグ部21bを対向配置することにより、表表紙101または裏表紙102の上辺に沿って、どの位置に固定部25を固定しても、しおり本体20をページ紙104に挿めて、タグ部21aまたはタグ部21bを突出させることも可能になり、使い勝手を向上させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1,2しおり
10,20しおり本体
11,21a,21bタグ部
12,32本体ヒンジ部
13,23本体溝部
14,24アーム部
15,25固定部
16,31アーム揺動部
17ねじれ解消部
30アーム長さ調整部
33本体揺動支持部
100冊子
101表表紙
102裏表紙
103背中
104ページ紙