(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】溶融型道路用塗料
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230106BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230106BHJP
B05D 7/24 20060101ALN20230106BHJP
B05D 7/00 20060101ALN20230106BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/65
B05D7/24 303G
B05D7/00 L
(21)【出願番号】P 2018230987
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2018041008
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101477
【氏名又は名称】アトミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【氏名又は名称】吉川 雅也
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】東 弘一朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏行
(72)【発明者】
【氏名】小川 博巳
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-197556(JP,A)
【文献】特開2015-205994(JP,A)
【文献】特開2017-019896(JP,A)
【文献】特開2017-082188(JP,A)
【文献】特開2005-008834(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0244617(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B05D 7/00
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、顔料と、数平均繊維径が2nm以上500nm以下のセルロースナノファイバーと、を含み、
前記セルロースナノファイバーが、リグニン、リグニン誘導体、フルオレン及びフルオレン誘導体からなる群より選ばれる何れかの物質で修飾されたものであり、
前記セルロースナノファイバーの固形分比率が、0.0001質量%以上2.95質量%以下であることを特徴とする溶融型道路用塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融型道路用塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路交通に関する規制、警戒、案内、指示等の情報を適切に車両の運転手や歩行者に与えるために、各種の区画線、道路標示、カラーリング(以下、道路用塗料)を用いて路面に施されている。
【0003】
共用道路における道路用塗料の施工は道路交通を規制して行われるが、交通規制時間を短縮するために、道路用塗料には、塗料を塗布してから硬化するまでの時間が短いことが要求される。そのため、自然放冷により固化する熱可塑性樹脂を用いた溶融型道路用塗料が使用されてきた。溶融型道路用塗料は、ニーダーと呼ばれる溶融釜で一般的に約180~220℃の温度で溶融された後、専用塗装機で路面に塗布される。
【0004】
一般的に、溶融型道路用塗料は、60~180℃で熱溶融する熱可塑性樹脂、着色顔料、体質顔料、ガラスビーズ、骨材、添加剤等で構成されている。塗膜中の顔料、ガラスビーズ、骨材等の濃度が高くなると、硬化時間の短縮、機械的強度の向上及びコスト削減等の観点では有利であるが、その反面、塗膜の可撓性、柔軟性が低下するため、塗膜の耐クラック性等の耐久性の低下が懸念される。
【0005】
塗膜の可撓性や柔軟性を改善する目的で、塗膜に含まれる樹脂のガラス転移温度を低くする方法や、フタル酸エステル、鉱油、不乾性アルキド樹脂等の可塑剤を添加する方法がある。これらの方法は、塗膜に可撓性や柔軟性を付与することができるが、同時に塗膜の機械的強度を低下させたり、硬化時間を増大させるといった課題がある。
【0006】
一方、近年、セルロースナノファイバーと呼ばれる微細なセルロース繊維が開発され、実用化研究が行なわれている。セルロースナノファイバーは、植物繊維をナノオーダーにまで細かく解きほぐした(解繊した)ものである。このセルロースナノファイバーを塗料に添加すると、塗料の流動特性を制御することが可能となることから、塗料業界においては、主にレオロジーコントロール剤として検討されている。
【0007】
特許文献1には、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基及びカルボキシル基に変性されており、カルボキシル基の量が0.6~2.2mmol/gであるセルロースナノファイバーを塗料組成物に含有させると、セルロースナノファイバーの含有量が低濃度であっても、塗料組成物が高い粘性、高いTI値(チクソトロピーインデックス)を示すことが記載されている。また、セルロースナノファイバーはレオロジーコントロール剤として有用であり、塗料製造時の顔料分散性を向上させること、塗料保管時の沈降及び分離の防止、並びに塗料のタレ防止効果に寄与すること、また、水溶性でないため塗膜の耐水性を低下させないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1では、塗料組成物にセルロースナノファイバーを含有させることで、塗料組成物の粘度が上昇すると共に、塗料組成物にチクソトロピー性が付与され、塗装作業性やタレ防止等の塗料の流動特性は改善されるものの、塗膜の耐久性に関しては依然として改善が望まれている。
なお、上記の特許文献1は、水系塗料に限定したものであり、加熱して溶融する溶融型塗料については、言及していない。
【0010】
本発明は、耐久性に優れた塗膜の形成が可能な溶融型道路用塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様である溶融型道路用塗料は、熱可塑性樹脂と、顔料と、数平均繊維径が2nm以上500nm以下のセルロースナノファイバーと、を含み、前記セルロースナノファイバーが、リグニン、リグニン誘導体、フルオレン及びフルオレン誘導体からなる群より選ばれる何れかの物質で修飾されたものであり、前記セルロースナノファイバーの固形分比率が、0.0001質量%以上2.95質量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様である溶融型道路用塗料は、数平均繊維径が2nm以上500nm以下のセルロースナノファイバーを含み、セルロースナノファイバーの固形分比率が、0.0001質量%以上2.95質量%以下である。このような構成により、塗膜に可撓性が付与されて、塗膜の耐クラック性が向上する。よって、塗膜の耐久性を優れたものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る溶融型道路用塗料について説明する。
【0014】
本実施形態に係る溶融型道路用塗料は、熱可塑性樹脂と、顔料と、数平均繊維径が2nm以上500nm以下のセルロースナノファイバーと、を含み、当該セルロースナノファイバーの固形分比率が、0.0001質量%以上2.95質量%以下である。
【0015】
本実施形態の溶融型道路用塗料は、車両の運転者及び歩行者に対して道路交通に関する規制、警戒、案内、指示等の情報を路面に表示するために用いられるものである。溶融型道路用塗料の具体例としては、JIS K 5665 3種などが挙げられる。
【0016】
なお、本実施形態において「路面」とは、車両通行のための道路舗装面、飛行機の滑走路面、工場内の通行路、自転車道、歩道等の舗装面、及び、屋内外の駐車場等の舗装面等を意味する。また本実施形態において「舗装」とは、アスファルト舗装、コンクリート舗装及び敷石舗装等を意味する。さらに、本実施形態において「路面標示」とは、特に限定されるものではないが、路面に各種の情報の表示を目的として塗装により形成されるマーク等であり、例えば、区画線、横断歩道、はみ出し禁止等を線、文字、記号及び模様等で表した交通標示や、路面をカラーリングし視覚により注意喚起するもの等を挙げることができる。
【0017】
セルロースナノファイバーは、軽くて強い素材であり、大きな比表面積を有しレオロジー特性を付与することが可能であること、線熱膨張係数がガラス繊維並みに小さいこと、及び、弾性率がガラス繊維より高いこと等の優れた特性を有している。また、セルロースナノファイバーは、広葉樹、針葉樹及び竹等の様々な植物原料から製造することが可能であることから、環境負荷が小さく、リサイクル性に優れた材料である。さらに、森林資源の豊富な日本にとって新たな産業になると期待されており、各分野で研究が盛んに実施されている。
【0018】
本実施形態の溶融型道路用塗料に含まれるセルロースナノファイバーは、パルプ等の植物繊維(セルロース)をナノ(1×10-9m)オーダーにまで細かく解きほぐした(解繊した)ものである。セルロースを解繊する方法としては、セルロースの水懸濁液等を高圧ホモジナイザーやビーズミル等を用いて機械的に解繊する方法等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0019】
本実施形態において溶融型道路用塗料は、通常、セルロースナノファイバーがセルロースナノファイバー以外の他の成分(熱可塑性樹脂、顔料等)と共に混合されることにより製造される。そして、セルロースナノファイバーと他の成分との混合物を加熱溶融させた後に対象箇所に塗装することで、混合物が冷却固化し、塗膜が形成される。しかし、セルロースナノファイバーを溶融型道路用塗料に含有させる方法はこれに限定されない。例えば、セルロースナノファイバー以外の他の成分を混合した混合物を加熱溶融させた後に、その混合物にセルロースナノファイバーを添加してもよい。また、本実施形態の溶融型道路用塗料は溶袋式であってもよい。溶袋式とは、塗料成分を加熱溶融させる際に、塗料成分を入れている袋も溶解させるというものである。溶袋式の場合には、袋にセルロースナノファイバーを含有させることで、塗膜にセルロースナノファイバーを含有させることができる。本実施形態では、溶袋式の場合、袋に入っている塗料成分だけでなく、袋も含めて溶融型道路用塗料と捉える。なお、塗料成分を入れる容器は、袋に限定されるものではなく、塗料成分を運搬可能な容器であれば形状及び形態は特に限定されない。
【0020】
溶融型道路用塗料に含まれるセルロースナノファイバーの数平均繊維径は2nm以上500nm以下であり、溶融型道路用塗料におけるセルロースナノファイバーの固形分比率は、0.0001質量%以上2.95質量%以下である。セルロースナノファイバーの数平均繊維径及び固形分比率を上記の範囲とすると、本実施形態の溶融型道路用塗料を用いて形成された塗膜に可撓性が付与されて、塗膜の耐クラック性が向上する。よって、塗膜の耐久性を優れたものとすることができる。
【0021】
上記のような観点から、溶融型道路用塗料におけるセルロースナノファイバーの固形分比率は、0.0001質量%以上2.5質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましい。また、セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、2nm以上400nm以下であることがより好ましく、2nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。セルロースナノファイバーの数平均繊維径が大きくなると、単位質量当たりのセルロースナノファイバーの数が減少して、セルロースナノファイバーによるネットワーク構造が形成されにくくなり、充分な補強効果が得られないため、上記範囲が好ましい。また、セルロースナノファイバーの長さは、100nm以上900μm以下であることが好ましい。
【0022】
本実施形態において、セルロースナノファイバーを他の成分と混合する際に、セルロースナノファイバーの形状及び形態は特に限定されない。例えば、粉末状、ペースト状又はゲル状等の任意の形状のセルロースナノファイバーを使用することができ、セルロースナノファイバーを熱可塑性樹脂、熱可塑性添加剤、可塑剤に分散させたものも使用することができる。具体的に、セルロースナノファイバーの濃度が1質量%以上10質量%以下となるように調整された熱可塑性樹脂分散体を使用することができる。しかし、セルロースナノファイバー分散体におけるセルロースナノファイバーの濃度は特に限定されるものではなく、セルロースナノファイバーの濃度が1質量%未満であってもよく、また、10質量%超過であってもよく、さらにより高濃度であってもよい。また、水、有機溶剤を含むセルロースナノファイバー溶液は、乾燥させた後に使用することもできる。なお、溶融型道路用塗料にセルロースナノファイバーを含有させる際、セルロースナノファイバーの濃度は、セルロースナノファイバーの固形分比率が0.0001質量%以上2.95質量%未満となる様に適宜調整される。
【0023】
セルロースナノファイバーの種類は特に限定されるものではないが、150℃以下の加熱温度で変色するものは、塗料を加熱溶融する際に塗料が着色するため、白色系塗料や淡彩色系塗料には好ましくない。セルロースナノファイバーの耐熱性を向上させるために、セルロースナノファイバーをリグニン、リグニン誘導体、フルオレン、フルオレン誘導体等の物質で修飾したり、前記物質をセルロースナノファイバーに添加することが好ましい。すなわち、本実施形態で使用するセルロースナノファイバーは、前記物質で修飾したセルロースナノファイバーであってもよい。例えば、フルオレンで修飾したセルロースナノファイバーとして大阪ガスケミカル株式会社製のHBA0201が挙げられる。
【0024】
本実施形態において、熱可塑性樹脂は、必要に応じて単独又は2種類以上の熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、意匠性、視認性を阻害するものでなければ特に限定されるものはない。
【0025】
熱可塑性樹脂としては、例えば、C5、C9石油樹脂、ロジン及びその誘導体、クマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、軟化点が60~180℃程度のもの、好ましくは80~160℃のものが使用される。
【0026】
顔料としては、塗料に一般的に使用されている顔料を挙げることができ、溶融型道路用塗料の安定性を阻害するものでなければ特に限定されるものではないが、例えば、二酸化チタン、黄鉛や酸化鉄等の無機顔料、アゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料等の各種着色顔料、及び、炭酸カルシウム、タルク、沈降性硫酸バリウム等の体質顔料が挙げられる。その他夜間視認性を向上させる目的としてガラスビーズ、寒水石、珪砂粉などの骨材も使用できる。
【0027】
顔料及び骨材の含有量は、特に限定されるものではない。
【0028】
また、溶融型道路用塗料には、塗装作業性、着色、塗料物性及び塗膜物性等を向上させる目的で、各種添加剤を適宜選択し、それぞれ単独、あるいは2種以上を組み合わせて添加することができる。添加可能な添加剤としては、沈澱防止剤、チクソトロピック付与剤、流動調整剤、汚染防止剤、乾燥向上剤等が挙げられる。沈澱防止剤は、溶融中の骨材の沈降を防止する目的で添加される。流動調整剤は、材料に流動性を付与し作業性の向上を図る目的で添加される。汚染防止剤は、塗膜表面への汚染物の付着を防止する目的で添加される。乾燥向上剤は、乾燥性の向上等を図る目的で添加される。
【0029】
添加剤の含有量は、上記目的を達成することができれば、特に限定されるものではない。
【0030】
塗料成分を180~220℃に加熱することで、塗料成分が溶融し均一に混合される。混合後、溶融型道路用塗料は、施工機を用いて0.5~10mm、好ましくは0.8~8mmの厚みで塗布される。
【0031】
このように溶融型道路用塗料を均一に混合することにより、セルロースナノファイバーの固形分比率が低い範囲においても、塗膜に耐衝撃性を付与することができ、塗膜の耐クラック性を向上させることができる。よって、セルロースナノファイバーの固形分比率が低い範囲においても、塗膜の耐久性を優れたものとすることができる。
【0032】
本実施形態の溶融型道路用塗料は、上述のように、熱可塑性樹脂と、顔料と、数平均繊維径が2nm以上500nm以下のセルロースナノファイバーと、を含み、セルロースナノファイバーの固形分比率が、0.0001質量%以上2.95質量%以下である。このような構成により、塗膜に耐衝撃性が付与されて、塗膜の耐クラック性が向上する。よって、塗膜の耐久性を優れたものとすることができる。また、耐衝撃性が付与されることにより、耐チッピング磨耗性も向上する。
【0033】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、当該実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の溶融型道路用塗料の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【実施例】
【0034】
以下に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
<セルロースナノファイバー分散溶融型道路用塗料の調製>
(実施例1)
表1に示す配合でセルロースナノファイバー分散溶融型道路用塗料を調製した。
基本塗料(アトムライン#15白、顔料分86質量%、熱可塑性樹脂の固形分14質量%)100質量部に対して、フルオレン修飾されたセルロースナノファイバー(大阪ガスケミカル株式会社製のHBA0201、繊維径100nm~200nm、以下では単に「セルロースナノファイバー」と記す)を0.0001質量部を添加した。ディゾルバーを用いて塗料温度を190~200℃に維持しながら1500rpmで10分攪拌し、セルロースナノファイバーの固形分比率が0.0001質量%となるように調整し、実施例1の溶融型道路用塗料を調製した。
【0036】
【0037】
(注1)アトミクス株式会社製:溶融型道路用塗料
(顔料分86質量%、熱可塑性樹脂の固形分14質量%)
(注2)大阪ガスケミカル株式会社製:フルオレンセルロースナノファイバー、粉末状(固形分100%)
顔料:二酸化チタン、炭酸カルシウム、ガラスビーズ
熱可塑性樹脂:C5石油樹脂
【0038】
(実施例2)
添加するセルロースナノファイバーを0.001質量部とし、セルロースナノファイバーの固形分比率が0.001質量%となるように調整した以外は上記実施例1の溶融型道路用塗料と同様に、実施例2の溶融型道路用塗料を調製した。
【0039】
(実施例3)
添加するセルロースナノファイバーを0.01質量部とし、セルロースナノファイバーの固形分比率が0.01質量%となるように調整した以外は上記実施例1の溶融型道路用塗料と同様に、実施例3の溶融型道路用塗料を調製した。
【0040】
(実施例4)
添加するセルロースナノファイバーを0.1質量部とし、セルロースナノファイバーの固形分比率が0.10質量%となるように調整した以外は上記実施例1の溶融型道路用塗料と同様に、実施例4の溶融型道路用塗料を調製した。
【0041】
(実施例5)
添加するセルロースナノファイバーを0.251質量部とし、セルロースナノファイバーの固形分比率が0.25質量%となるように調整した以外は上記実施例1の溶融型道路用塗料と同様に、実施例5の溶融型道路用塗料を調製した。
【0042】
(実施例6)
添加するセルロースナノファイバーを0.502質量部とし、セルロースナノファイバーの固形分比率が0.50質量%となるように調整した以外は上記実施例1の溶融型道路用塗料と同様に、実施例6の溶融型道路用塗料を調製した。
【0043】
(実施例7)
添加するセルロースナノファイバーを1.01質量部とし、セルロースナノファイバーの固形分比率が1.00質量%となるように調整した以外は上記実施例1の溶融型道路用塗料と同様に、実施例7の溶融型道路用塗料を調製した。
【0044】
(実施例8)
添加するンセルロースナノファイバーを1.52質量部とし、セルロースナノファイバーの固形分比率が1.50質量%となるように調整した以外は上記実施例1の溶融型道路用塗料と同様に、実施例8の溶融型道路用塗料を調製した。
【0045】
(実施例9)
添加するセルロースナノファイバーを2.04質量部とし、セルロースナノファイバーの固形分比率が2.00質量%となるように調整した以外は上記実施例1の溶融型道路用塗料と同様に、実施例9の溶融型道路用塗料を調製した。
【0046】
(実施例10)
添加するセルロースナノファイバーを2.56質量部とし、セルロースナノファイバーの固形分比率が2.50質量%となるように調整した以外は上記実施例1の溶融型道路用塗料と同様に、実施例10の溶融型道路用塗料を調製した。
【0047】
(実施例11)
添加するセルロースナノファイバーを3.04質量部とし、セルロースナノファイバーの固形分比率が2.95質量%となるように調整した以外は上記実施例1の溶融型道路用塗料と同様に、実施例11の溶融型道路用塗料を調製した。
【0048】
(比較例1)
基本塗料(アトムライン#15白、顔料分86質量%、樹脂固形分14質量%)を比較例1とした。
【0049】
(比較例2)
添加するセルロースナノファイバーを3.09質量部とし、セルロースナノファイバーの固形分比率が3.00質量%となるように調整した以外は上記実施例1の溶融型道路用塗料と同様に、比較例2の溶融型道路用塗料を調製した。
【0050】
(比較例3)
添加するセルロースナノファイバーを4.17質量部とし、セルロースナノファイバーの固形分比率が4.00質量%となるように調整した以外は上記実施例1の溶融型道路用塗料と同様に、比較例3の溶融型道路用塗料を調製した。
【0051】
(比較例4)
添加すセルロースナノファイバーを5.26質量部とし、セルロースナノファイバーの固形分比率が5.00質量%となるように調整した以外は上記実施例1の溶融型道路用塗料と同様に、比較例4の溶融型道路用塗料を調製した。
【0052】
【0053】
<各種試験>
1.外観試験
190~200℃で溶融した溶融型道路用塗料を、JIS H 4000に規定する軟質のアルミニウム板(150×70×1.5mm)の片面に、硬化膜厚が1.5mm±0.2mmとなるようにJIS K 5665 3種用アプリケータを用いて塗布し、24時間後の塗膜の状態を目視で確認した。結果を表2に示す。なお、評価基準は、以下のとおりである。
○:塗膜の外観が正常である。
△:塗膜に凹み等が認められる。
×:連続塗膜にならない。
【0054】
2.拡散反射率試験
190~200℃で溶融した溶融型道路用塗料を、JIS H 4000に規定する軟質のアルミニウム板(150×70×1.5mm)の片面に、硬化膜厚が1.5mm±0.2mmとなるようにJIS K 5665 3種用アプリケータを用いて塗布し、24時間後の塗膜の拡散反射率を測定した。拡散反射率の試験は、JIS Z 8722に規定される装置を用い、塗膜の三刺激値Y値を測定することにより行った。結果を表2に示す。なお、評価基準は、以下のとおりである。
○:拡散反射率が75以上である。
×:拡散反射率が75未満である。
【0055】
3.黄色度試験
190~200℃で溶融した溶融型道路用塗料を、JIS H 4000に規定する軟質のアルミニウム板(150×70×1.5mm)の片面に、硬化膜厚が1.5mm±0.2mmとなるようにJIS K 5665 3種用アプリケータを用いて塗布し、24時間後の塗膜の黄色度を測定した。黄色度の試験は、JIS Z 8722に規定される装置を用い、塗膜の三刺激値X、Y、Z値を測定することにより行った。黄色度は、下記式より算出し、算出した値を小数点以下2桁に丸めた。
黄色度=(1.28X-1.06Z)/Y
結果を表2に示す。なお、評価基準は、以下のとおりである。
○:黄色度が0.10以下である。
×:黄色度が0.10より大きい。
【0056】
4.自重変形性試験
190~200℃で溶融した溶融型道路用塗料を内面のサイズが20mm×20mm×20mmの型に満たし、室温になるまで放冷した。次に加熱した小刀で型の上端面から盛り上がった部分を切り取った後、型から取り出しJIS R 6252に規定する研磨紙P100を用いて上端面を平らに仕上げた。試験片の上面と下面が平行になるように仕上げた。試験片を110℃±2℃に設定した恒温槽内に2時間静置し、試験片の変形の状態を確認した。初期の試験片の高さ(h1)と試験後の試験片の高さ(h2)をそれぞれノギスで測定し、下記式より変化率を算出した。
変化率(%)=100×(h1-h2)/h1
結果を表2に示す。なお、評価基準は、以下のとおりである。
○:変形がない。
△:変化率が20%未満である。
×:変化率が20%以上である。
【0057】
5.耐衝撃性試験
JIS K 2207に規定する針入度60~80のストレートアスファルトと、JIS Z 8801-1に規定するふるい網で表3に適合するようにふるい分けした骨材と、を表4に示す割合で配合した後、金属製型枠に充填し、ローラーコンパクタを用い、140℃~160℃、線圧29.4kN/mの条件で、試験用のアスファルトブロックを作製した。かさ密度(20℃)は2.3~2.6、寸法は300mm×300mm×50mmであった。
【0058】
【0059】
【0060】
190~200℃で溶融した溶融型道路用塗料を、試験用のアスファルトブロックの片面に、硬化膜厚が1.5mm±0.2mmとなるようにJIS K 5665 3種用アプリケータを用いて塗布した。塗布してから24時間後にデュポン式衝撃変形試験機を用い、試験条件を高さ50cm、重さ500g、撃ち型先端半径1/16インチとして試験を実施し、塗膜の状態を目視で確認した。結果を表2に示す。なお、評価基準は、以下のとおりである。
○:塗膜の破壊がないもの。
△:塗膜に割れが認められる。
×:塗膜が破壊している。
【0061】
以上の結果から分かるとおり、本発明の溶融型道路用塗料を用いると、塗膜に耐衝撃性が付与されて、塗膜の耐クラック性が向上する。よって、塗膜の耐久性を優れたものとすることができる。さらに、耐衝撃性が付与されることにより、車両走行時に受ける衝撃に対する耐性、いわゆる耐チッピング磨耗性も向上することが期待できる。また、アスファルト舗装は、夏季においては高温となり軟化しやすく、特に舗装厚さが小さい舗装や転圧荷重が小さい部分補修舗装に関してはさらに軟化しやすくなる。そこで、本発明の溶融型道路用塗料を用いると、アスファルト舗装が軟化することによって生じる塗膜のクラックの発生を抑制することができる。さらに、塗膜の耐久性を優れたものとできることから、経済的効果も期待できる。