(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】芯高さ調整機構
(51)【国際特許分類】
B23B 25/06 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
B23B25/06
(21)【出願番号】P 2018239107
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000127042
【氏名又は名称】株式会社アルプスツール
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】川島 房雄
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-254706(JP,A)
【文献】実開昭48-001190(JP,U)
【文献】中国実用新案第205085401(CN,U)
【文献】特開平02-024003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/00-29/24、25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持した工具の高さを調整する芯高さ調整機構であって、
前記工具が前記芯高さ調整機構を介して取り付けられる保持部と、工作機械に取り付けられる取付部を有するホルダ本体部を有し、
前記芯高さ調整機構は、前記保持部に挿入されると共に前記ホルダ本体部と摺接する移動クサビ部材と、前記工具に当接すると共に前記移動クサビ部材によって高さ方向に移動可能且つ前記工具のシャンクの長手方向に移動不能な固定クサビ部材と、前記移動クサビ部材と係合すると共に前記ホルダ本体部に螺合する調整ネジ部とを備え、
前記移動クサビ部材は、前記固定クサビ部材との当接面が勾配を有する斜面に形成され、
前記当接面の反対面には、前記調整ネジ部に形成されたツバ部が係合する係合溝を有し、
前記固定クサビ部材は、前記移動クサビ部材との当接面が前記斜面に対応するように勾配を有し、前記ホルダ本体部に対して前記工具のシャンクの長手方向に固定可能な固定手段を有することを特徴とする芯高さ調整機構。
【請求項2】
請求項1に記載の芯高さ調整機構において、
前記固定手段は、前記固定クサビ部材の長手方向の両端に形成されると共に、前記保持部の縁部に係合する一対の係合突起として形成されることを特徴とする芯高さ調整機構。
【請求項3】
請求項1に記載の芯高さ調整機構において、
前記固定手段は、前記固定クサビ部材の側面に形成されると共に高さ方向に沿って延設された溝部と、前記保持部内に突出する係合ピン部とが係合することを特徴とする芯高さ調整機構。
【請求項4】
請求項1に記載の芯高さ調整機構において、
前記固定手段は、前記固定クサビ部材の底面から突出すると共に前記移動クサビ部材を貫通して前記保持部に挿入される固定ピン部と、前記固定ピン部が挿通可能な長穴が前記移動クサビ部材に形成されることを特徴とする芯高さ調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋盤などの工具の保持を目的とする工具ホルダにおける、高さ調整機構に関し、特に、保持した工具の刃先の高さを調整する芯高さ調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から旋盤などの工作機械において、工具の刃先の高さを調整することは、加工精度を確保するために重要な作業である。そのため工具を保持する工具ホルダに芯高さ調整機能を持たせたものが使用されている。これらの芯高さ調整機能を有する芯高さ調整機構は、種々の形態が知られているが、最も一般的な形態として、特許文献1に記載されているように勾配を有するクサビ形状を工具のシャンクの長手方向に移動させて、芯高さの調整を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の芯高さ調整機構によると、
図13に示すように、ホルダ本体部110に形成された保持部111にクサビ部材120を介して工具102が取り付けられ、クサビ部材120に形成された係合溝121にホルダ本体部110に螺着された調整ネジ部130のツバ部131を係合させることで、調整ネジ部130を回転させて、クサビ部材120を工具102のシャンク106の長手方向に移動させ、クサビ部材120の勾配125及び保持部111に形成された勾配115によって工具102の芯高さを調整している。
【0005】
このような構成によると、クサビ部材120を工具102のシャンク106の長手方向に移動させると、クサビ部材120と工具102とが接触しているため、クサビ部材120と工具102との摩擦によって工具102が工具102のシャンク106の長手方向に移動してしまい、芯高さの他に、工具の刃先の位置を調整する必要が生じるという課題があった。
【0006】
また、このような構成によると、ホルダ本体部110の保持部111に形成された勾配115と、クサビ部材120に形成された勾配125とを同じ勾配面を有するように加工する必要があるが、勾配面を其々加工すると、相互の勾配に差が生じるため、精密加工を必要とし、加工時間や加工コストが増大してしまうという課題があった。
【0007】
さらに、調整ネジ部130を回転させることでクサビ部材120を移動させる構成では、ツバ部131が係合する係合溝121の底面とツバ部131との間に調整量を含めた隙間Sを設定する必要があり、芯高さ調整機構の省スペース化を図ることが難しいという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、芯高さ調整時に、工具のシャンクの長手方向への移動を防止し、工具の平行を保ったまま、芯高さ調整が可能且つ省スペース化を図ることが可能な芯高さ調整機構を高精度かつ安価に製造することが可能な芯高さ調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る芯高さ調整機構は、保持した工具の高さを調整する芯高さ調整機構であって、前記工具が前記芯高さ調整機構を介して取り付けられる保持部と、工作機械に取り付けられる取付部を有するホルダ本体部を有し、前記芯高さ調整機構は、前記保持部に挿入されると共に前記ホルダ本体部と摺接する移動クサビ部材と、前記工具に当接すると共に前記移動クサビ部材によって高さ方向に移動可能且つ前記工具のシャンクの長手方向に移動不能な固定クサビ部材と、前記移動クサビ部材と係合すると共に前記ホルダ本体部に螺合する調整ネジ部とを備え、前記移動クサビ部材は、前記固定クサビ部材との当接面が勾配を有する斜面に形成され、前記当接面の反対面には、前記調整ネジ部に形成されたツバ部が係合する係合溝を有し、前記固定クサビ部材は、前記移動クサビ部材との当接面が前記斜面に対応するように勾配を有し、前記ホルダ本体部に対して前記工具のシャンクの長手方向に固定可能な固定手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る芯高さ調整機構において、前記固定手段は、前記固定クサビ部材の長手方向の両端に形成されると共に、前記保持部の縁部に係合する一対の係合突起として形成されると好適である。
【0011】
また、本発明に係る芯高さ調整機構において、前記固定手段は、前記固定クサビ部材の側面に形成されると共に高さ方向に沿って延設された溝部と、前記保持部内に突出する係合ピン部とが係合すると好適である。
【0012】
また、本発明に係る芯高さ調整機構において、前記固定手段は、前記固定クサビ部材の底面から突出すると共に前記移動クサビ部材を貫通して前記保持部に挿入される固定ピン部と、前記固定ピン部が挿通可能な長穴が前記移動クサビ部材に形成されると好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、工具の芯高さ調整時の工具のシャンクの長手方向の移動を防止でき、工具の水平を保ったまま、芯高さ調整が可能になると共に、高精度な工具ホルダを容易に製造可能となり、隣の工具との距離が小さい場合でも芯高さ調整機構の省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る芯高さ調整機構を適用した工具ホルダの斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る芯高さ調整機構のホルダ本体部の構成を示す斜視図。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る芯高さ調整機構の構造を説明するための正面図。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る芯高さ調整機構の斜視図。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る芯高さ調整機構の固定クサビ部材の斜視図。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る芯高さ調整機構の構造を説明するための正面図。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る芯高さ調整機構の構造を説明するための側面図。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る芯高さ調整機構の斜視図。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る芯高さ調整機構の固定クサビ部材の斜視図。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る芯高さ調整機構の構造を説明するための正面図。
【
図11】本発明の第3の実施形態に係る芯高さ調整機構の斜視図。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係る芯高さ調整機構の移動クサビ部材及び固定クサビ部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る芯高さ調整機構を適用した工具ホルダの斜視図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る芯高さ調整機構のホルダ本体部の構成を示す斜視図であり、
図3は、本発明の第1の実施形態に係る芯高さ調整機構の構造を説明するための正面図であり、
図4は、本発明の第1の実施形態に係る芯高さ調整機構の斜視図であり、
図5は、本発明の第1の実施形態に係る芯高さ調整機構の固定クサビ部材の斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る工具ホルダ1は、それぞれ刃先形状の異なる複数の工具2a~2fを保持する部材であって、工具2a~2fを保持するホルダ本体部10と工作機械のスライドに取り付けられる取付部4を有している。
【0018】
工具2a~2fは、工具ホルダ1に芯高さ調整機構3を介して取り付けられており、取付部4に取り付けられた工作機械のスライドの基準面からの高さを調整可能に取り付けられている。また、取付部4は、ホルダ本体部10に締結される固定ブロック5によって工作機械を挟持して取り付けられている。
【0019】
図2に示すように、ホルダ本体部10は、工具2a~2f及び芯高さ調整機構3が挿入される保持部11a~11fと、工作機械のスライドの基準面に当接する取付面12を有している。なお、上述した固定ブロック5は、取付面12の近傍に幅方向(保持部11a~11fが配置される方向)に沿って形成された溝部13によって位置決めされた後、締結ボルト14によってホルダ本体部10に取り付けられる。なお、保持部11a~11fは、工具が挿入される工具保持部15と芯高さ調整機構3が挿入される調整機構保持部16とを有している。以下の説明においては、複数の工具2a~2f及び保持部11a~11fは、挿入される工具の形状に応じてそれぞれの形状が異なるものの、工具を保持するという機能は同一であるため、それぞれ「工具2」及び「保持部11」として説明を行う。
【0020】
図3に示すように、芯高さ調整機構3は、保持部11に工具2と共に挿入されており、ホルダ本体部10の保持部11の下面に摺接する移動クサビ部材21と、工具2に当接すると共に移動クサビ部材21によって高さ方向に移動可能且つ工具2のシャンク6の長手方向(保持部11の貫通方向)に移動不能に取り付けられた固定クサビ部材22と、該移動クサビ部材21に係合すると共にホルダ本体部10の螺合する調整ネジ部30とを有している。調整ネジ部30の頭部には、六角穴又はすり割り溝等が形成され、該六角穴又はすり割り溝に調整用工具を挿入して回転可能に構成されている。なお、工具2は、工具2のシャンク6の長手方向に沿って配置された複数のクランプネジ18によって高さ方向に保持されており、調整ネジ部30を操作する場合には当該クランプネジ18を予め緩めて、工具2及び固定クサビ部材22を高さ方向に移動可能な状態としておく必要がある。
【0021】
図4に示すように、芯高さ調整機構3を構成する移動クサビ部材21及び固定クサビ部材22は、互いに当接する当接面が勾配を有する斜面25,25が形成されている。また、移動クサビ部材21の斜面25との反対面は、ホルダ本体部10の保持部11の内壁面と摺接する摺接面27が形成され、固定クサビ部材22の工具2との当接面は、工具当接面26が形成されている。なお、摺接面27と工具当接面26とは、斜面25同士を合せて移動クサビ部材21と固定クサビ部材22とを重ねた際に、互いに平行となるように構成されている。
【0022】
このように、本実施形態に係る芯高さ調整機構3は、移動クサビ部材21と固定クサビ部材22のそれぞれに斜面25を形成しているので、例えば移動クサビ部材21と固定クサビ部材22とを同時加工、例えば平面研削盤で両部材を並べて同時に研削することで、両部材に同じ勾配を有する斜面25をそれぞれ形成することができるので、当該斜面25の加工の後、移動クサビ部材21と固定クサビ部材22の斜面25を重ね合わせると、上下に配置される工具当接面26と摺接面27は精密に平行とすることができる。
【0023】
また、移動クサビ部材21の摺接面27には、係合溝23が形成されており、該係合溝23にホルダ本体部10に螺合された調整ネジ部30のツバ部31が係合している。さらに、
図5に示すように、固定クサビ部材22には、固定手段となる一対の突起24が長手方向の両端に形成されている。一対の突起24は、
図3に示すように、ホルダ本体部10の保持部11の縁部に係合するように突出して形成されている。
【0024】
このように構成された本実施形態に係る芯高さ調整機構3は、調整ネジ部30を回転させることで、移動クサビ部材21を工具2のシャンク6の長手方向に前後させて、斜面25に倣って固定クサビ部材22を高さ方向に移動させて工具当接面26に当接した工具2の高さを調整可能となっている。このとき、固定クサビ部材22は、一対の突起24が保持部11の縁部に係合しているので、移動クサビ部材21の前後方向の移動によって、工具2のシャンク6の長手方向に移動することなく、工具2を芯高さの調整のみを行うことが可能となる。また、上下する部材は、固定クサビ部材22のみであるので、移動クサビ部材21に形成された係合溝23と調整ネジ部30のツバ部31の間に調整量を含めた隙間設定を行う必要がなく、部品相互の干渉余裕を微小とすることで、芯高さ調整機構全体の省スペース化に寄与する。
【0025】
[第2の実施形態]
以上、説明した第1の実施形態に係る芯高さ調整機構3では、固定クサビ部材22に形成された固定手段として、一対の突起24を形成し、該突起24がホルダ本体部10に形成された保持部11の縁部に係合するとで、固定クサビ部材22を工具2のシャンク6の長手方向に移動不能に取り付けている場合について説明を行った。次に説明する第2の実施形態に係る芯高さ調整機構は、第1の実施形態に係る芯高さ調整機構と異なる形態を有する固定手段の実施例について説明を行うものである。なお、上述した第1の実施形態の場合と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る芯高さ調整機構の構造を説明するための正面図であり、
図7は、本発明の第2の実施形態に係る芯高さ調整機構の構造を説明するための側面図であり、
図8は、本発明の第2の実施形態に係る芯高さ調整機構の斜視図であり、
図9は、本発明の第2の実施形態に係る芯高さ調整機構の固定クサビ部材の斜視図である。
【0027】
図6に示すように、本実施形態に係る芯高さ調整機構3aは、第1の実施形態に係る芯高さ調整機構3と同様に、互いに対応する勾配の斜面25を有する移動クサビ部材21と固定クサビ部材22aと、移動クサビ部材21に係合する調整ネジ部30とを有している。また、固定クサビ部材22aは、第1の実施形態と異なる形態を有する固定手段40によって工具2のシャンク6の長手方向に移動不能に取り付けられている。
【0028】
図7に示すように、本実施形態に係る芯高さ調整機構3aの固定手段40は、ホルダ本体部10に形成された保持部11へ貫通する貫通孔17に挿入された係合ピン部42が保持部11内へ突出しており、
図8に示すように、該係合ピン部42が固定クサビ部材22aに形成された溝部41に係合することで、固定クサビ部材22aを工具2のシャンク6の長手方向に移動不能に組み付けている。
【0029】
なお、
図9に示すように、本実施形態に係る固定クサビ部材22aは、係合ピン部42に対応する位置に溝部41が形成されており、該溝部41は、固定クサビ部材22aの側面に高さ方向に沿って延設されている。
【0030】
本実施形態に係る芯高さ調整機構3aによれば、固定手段が保持部11の縁部に係合する場合のように外部に露出することなく、保持部11内に固定手段を構成することができるので、より省スペース化を図ることが可能となる。
【0031】
[第3の実施形態]
以上、説明した第2の実施形態に係る芯高さ調整機構3aでは、固定クサビ部材22aに形成された固定手段として、溝部41と該溝部41に係合する係合ピン部42とによって保持部11内に固定手段40を形成した場合について説明を行った。次に説明する第3の実施形態に係る芯高さ調整機構は、第2の実施形態に係る芯高さ調整機構と異なる形態を有する固定手段の実施例について説明を行うものである。なお、上述した第1及び第2の実施形態の場合と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る芯高さ調整機構の構造を説明するための正面図であり、
図11は、本発明の第3の実施形態に係る芯高さ調整機構の斜視図であり、
図12は、本発明の第3の実施形態に係る芯高さ調整機構の移動クサビ部材及び固定クサビ部材の斜視図である。
【0033】
図10に示すように、本実施形態に係る芯高さ調整機構3bは、第1及び第2の実施形態に係る芯高さ調整機構3,3aと同様に、互いに対応する勾配の斜面25を有する移動クサビ部材21bと固定クサビ部材22bと、移動クサビ部材21bに係合する調整ネジ部30とを有している。また、固定クサビ部材22bは、第1及び第2の実施形態と異なる形態を有する固定手段50によって工具2のシャンク6の長手方向に移動不能に取り付けられている。
【0034】
図11に示すように、本実施形態に係る芯高さ調整機構3bは、固定クサビ部材22bに取り付けられた固定ピン部51が移動クサビ部材21bを貫通して、
図10に示すように保持部11内に形成されたピン受部54に係合することで固定クサビ部材22bが工具2のシャンク6の長手方向に移動不能に組み付けられている。
【0035】
図12に示すように、固定ピン部51は、固定クサビ部材22bに形成されたピン挿入孔52に挿入されると共に、移動クサビ部材21bに形成された長穴53を貫通している。このように移動クサビ部材21bに長穴53が形成されることで、移動クサビ部材21bが工具2のシャンク6の長手方向に移動した場合でも、固定ピン部51が長穴53に挿入されることで、固定クサビ部材22bを工具2のシャンク6の長手方向に移動不能に保持したまま、移動クサビ部材21bを工具2のシャンク6の長手方向に移動させることができる。なお、固定ピン部51は、移動クサビ部材21bの長穴53に挿入され、ホルダ本体部10に形成されたピン受部54にのみ挿入され、移動クサビ部材21bに固定されていなくとも構わない。なお、固定ピン部51は、長穴53を貫通し、ホルダ本体部10に形成されたピン受部54まで貫通する長さを有しており、固定ピン部51がピン受部54に挿入されることで固定クサビ部材22bがホルダ本体部10に対して移動不能とされている。
【0036】
本実施形態に係る芯高さ調整機構3bによれば、固定手段が保持部11の縁部に係合する場合のように外部に露出することなく、保持部11内に固定手段を構成することができるので、より省スペース化を図ることが可能となるとともに、保持部11内にピン受部54を形成することでホルダ本体部10に貫通孔17を形成する必要がなく、保持部11の内部から固定手段50を組み立てることができるため、組み立てが容易に行うことができる。なお、クランプネジ18の位置に固定ピン部51を設定すれば、クランプネジ18の締結孔を介してピン受部54のピン穴加工及び固定ピン部51の組付けを行うことも可能である。
【0037】
なお、本願は本実施形態に限定されるものではなく、種々の形態にて実施することが可能である。例えば、上述した実施形態では、固定手段を縁部への係合やピンなどを用いて固定クサビ部材を工具2のシャンク6の長手方向に移動不能に組み付けた場合について説明を行ったが、複数のピンを用いて固定手段を構成しても構わないし、工具を複数取り付けない、工具単独のホルダにも適用することができるなど、その形態が各実施例の形態に限定されるものではない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0038】
1 工具ホルダ
2 工具
3,3a,3b 芯高さ調整機構
10 ホルダ本体部
11 保持部
21 移動クサビ部材
22 固定クサビ部材
25 斜面
30 調整ネジ部
40,50 固定手段