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特許7204213中枢神経系障害治療用のベンゾエート化合物とタンニン酸を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】中枢神経系障害治療用のベンゾエート化合物とタンニン酸を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20230106BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20230106BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230106BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230106BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230106BHJP
   A61K 9/68 20060101ALI20230106BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20230106BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230106BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230106BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230106BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230106BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230106BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230106BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K47/26
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/28
A61P25/22
A61P25/16
A61P25/14
A61P13/02
A61P25/08
A61K45/00
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/68
A61K9/00
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/08
A61K9/10
A23L33/10
A23L33/105
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019505241
(86)(22)【出願日】2017-08-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 CN2017096002
(87)【国際公開番号】W WO2018024245
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】62/371,081
(32)【優先日】2016-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/655,683
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518343246
【氏名又は名称】シニュークス インターナショナル(タイワン)コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】ホアン チン-スン
(72)【発明者】
【氏名】ワン チン-チョン
(72)【発明者】
【氏名】シエ ティエン-ラン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ クオチョアン エミル
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/146026(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0020332(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105079798(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101342190(CN,A)
【文献】JAMA Psychiatry,2013年,Vol. 70, No. 12,pp. 1267-1275
【文献】千葉医学,2015年,Vol. 91,pp. 245-249
【文献】FEBS Letters,2006年,Vol. 580,pp. 6623-6628
【文献】生化学,2008年,第80巻第4号,pp. 337-343
【文献】日薬理誌,2013年,Vol. 142,pp. 1-6
【文献】化学と生物,1993年,Vol. 31, No. 11,pp. 726-734
【文献】Progress In Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry,2005年,Vol. 29,pp. 827-832
【文献】日薬理誌,2012年,Vol. 140,pp. 102-106
【文献】日薬理誌,2007年,Vol. 130,pp. 117-123
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 36/00-36/9068
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において中枢神経系(CNS)障害の治療に使用するための組成物であって、
前記組成物は、ベンゾエート化合物と賦形剤とを含み、ここで、
前記賦形剤がタンニン酸またはその薬学的に許容される塩であり;
前記ベンゾエート化合物が、安息香酸ナトリウムまたは安息香酸リチウムであり;
前記ベンゾエート化合物と前記タンニン酸が、前記組成物中1:1~100:1の重量比であり;
前記ベンゾエート化合物が、前記組成物中100mg~1,200mgであり;
前記組成物が、単位剤形であり;そして
前記CNS障害が、注意欠陥多動性障害、統合失調症、大うつ病性障害、アルツハイマー疾患、双極性障害、人格障害、チック障害、心的外傷後ストレス障害、パニック障害、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、強迫性障害、トゥレット症候群、認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、夜尿症、眼瞼けいれん、学習および記憶障害、および非てんかん発作から成る群より選択される、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、固形組成物(solid composition)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ベンゾエート化合物と前記タンニン酸が3:1~60:1の重量比で存在する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記タンニン酸が前記組成物中2.0~1,200mgである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ベンゾエート化合物が前記組成物中100~500mgでありそして前記タンニン酸が前記組成物中2.5mg~500mgである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ベンゾエート化合物が前記組成物中100~500mgでありそして前記タンニン酸が前記組成物中5~50mgである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
中枢神経系(CNS)障害のための追加の治療薬を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記CNS障害のための追加の治療薬が、カリプラジン、ブレクスピプラゾール、ブチロフェノン、フェノチアジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、プロメタジン、チオキサンテン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、アリピプラゾール、ラモトリジン、ドロペリドール、ピモジド、ブタペラジン、カルフェナジン、レモキシプリド、ピペラセタジン、スルピリド、アカンプロセート、テトラベナジン、ビラゾドン、レボミルナシプラン、フルオキセチン、パロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、フルボキサミン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、デュロキセチン、ミルタザピン、ミアンセリン、レボキセチン、ブプロピオン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、デシプラミン、トリミプラミン、アモキサピン、クロミプラミン、ドキセピン、トラニルシプロミン、セレギリン、トラゾドン、ネファゾドン、フェネルジン、ラマトロジン、リチウム塩、トピラメート、ガバペンチン、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、バルプロエート、マプロチリン、ミルタザピン、ブロファロミン、モクロベミド、イソニアジド、イプロニアジド、アンフェタミン、混合塩アンフェタミン、モダフィニル、デソキシン、メタンフェタミン、コカイン、アレコリン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート、リスデキサンフェタミンジメシレート、アトモキセチン、クロニジン、グアンファシン、アレコリン、ペモリン、ドネペジル、タクリン、リバスチグミン、メマンチン、フィゾスチグミン、アレコリン、セレギリン、リルゾール、およびイチョウ葉エキスから成る群より選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が経口投与または非経口投与用に製剤化された、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が錠剤、カプセル、ソフトチューまたはゲルである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が医薬組成物であり、薬学的に許容される担体を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が栄養補給食品組成物、医療用食品または健康食品である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記CNS障害が、統合失調症、認知症、レヴィー小体型認知症、および老人性認知症から成る群より選択された多動性症状を有するCNS障害である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記被験体がCNS障害を有するヒト患者である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が全身投与用に製剤化された、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が経口投与または非経口投与用に製剤化された、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
1日4回から月1回までの頻度で投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記被験体がCNS障害の別の治療を施行中である、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記単位剤形が、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤または懸濁剤である、請求項に記載の組成物。
【請求項20】
前記単位剤形が、錠剤、丸剤、またはカプセル剤である、請求項19に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願〕
【0002】
本発明は、本出願は、2016年8月4日出願の米国仮特許出願第US 62/371,081号と2017年7月20日出願の米国特許出願第15,655,683号の優先権の利益を主張する。両出願の各々の全内容が参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
〔発明の背景〕
中枢神経系(CNS)は脳と脊髄を含む。CNSは、外傷、感染、変性、構造的欠損および/または損傷、腫瘍、血流の途絶および自己免疫疾患をはじめとする様々な要因により引き起こされうる、様々な疾患に影響を受けやすい。CNS障害の症状は、該疾患に関係する中枢神経の領域と該疾患の原因に依存する。
【0004】
CNS障害の効果的治療法の開発は、そのような疾患の複雑さと、血液-脳関門を通り治療薬を輸送する効果的技術がないゆえに、他の治療領域より遅れをとっている。そのため、CNS疾患の新規治療アプローチを開発することに非常に関心がある。
【発明の概要】
【0005】
〔発明の要約〕
本発明は、少なくとも一部は、タンニン酸が、CNS疾患に随伴する症状、例えばCNS障害のマウスモデルにおいて観察されるような移動運動活性と感覚運動機能に対する安息香酸塩の治療効果を増強するという予想外の発見に基づく。
【0006】
従って、本発明の一態様は、ベンゾエート化合物と賦形剤とを含む組成物(例えば医薬組成物または健康食品)を特徴とし、ここで前記賦形剤は一種または多種混合物のタンニン酸、またはその薬学的に許容される塩である。
【0007】
ある実施形態では、ベンゾエート化合物は組成物中約100~約1200 mgであり、そしてタンニン酸は組成物中約2.0~約1200 mgである。ある実施形態では、ベンゾエート化合物とタンニン酸は1:100~100:1の比である。
【0008】
ある実施形態では、本明細書中に記載の組成物はいずれも医薬組成物であることができ、それは更に薬学的に許容される担体を含む。本明細書に記載の医薬組成物はいずれも経口投与または非経口投与用に処方することができる。
【0009】
別の実施形態では、該組成物は健康食品(例えば栄養補助食品組成物、医療用食品、または健康食品)であることができ、それは可食性担体を含んでもよい。そのような組成物は錠剤、カプセル剤、ソフトチュー(チュアブル剤)、またはゲルとして処方してもよい。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は中枢神経系(CNS)障害の治療方法を特徴とし、該方法は治療を必要とする被験体に、本明細書中に記載のいずれかの組成物の治療上有効量を投与することを含む。ある実施形態では、該組成物の治療上有効量は、約100~約1000 mgのベンゾエート化合物と約2.5~約1000 mgのタンニン酸を含有する。
【0011】
典型的なCNS障害としては、非限定的に、注意力欠陥多動性障害(ADHD)、統合失調症、精神障害、大うつ病性障害、アルツハイマー病、疼痛、うつ病、双極性障害、摂食障害、嗜癖障害、人格障害、チック障害、心的外傷後ストレス障害、不安症、社会不安障害、パニック障害、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、脆弱X症候群(FXS)、強迫性障害(OCD)、学習障害、トゥレット症候群、軽度認知障害(MCI)、良性健忘症、閉塞性頭部外傷、認知症(例えば血管性認知症、前頭側頭型認知症、レヴィー小体型認知症、老年性認知症、アルツハイマー型軽度認知症)、パーキンソン病、ハンチングトン病、夜尿症、眼瞼けいれん、非てんかん発作、月経前症候群、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)が挙げられる。
【0012】
ある実施形態では、治療を必要とする被験体は、CNS障害を有するかまたは有する疑いのあるヒト患者である。ある実施形態では、被験体は別のCNS障害療法を受けたことがあるかまたは現在施行中であるヒト患者である。ある実施形態では、被験体は1日4回から月1回までの頻度で当該組成物を投与される。ある実施形態では、当該組成物は全身経路により投与され、それは経口投与または非経口投与であってもよい。
【0013】
本発明の範囲内には、(i) 本明細書に開示されるもののようなCNS関連疾患/障害の治療に用いるための、ベンゾエート化合物とタンニン酸を含む任意の組成物(例えば医薬組成物または健康食品)、および(ii) 本明細書に開示されるものを含む任意の疾患/障害の治療に用いるための医薬品を製造する際の斯かる組成物の使用も含まれる。
【0014】
本発明の1または複数の実施形態の詳細を下記の記載に与える。本発明の他の特徴と利点は、下記の図面および幾つかの実施形態の詳細な説明から、更には添付の特許請求の範囲から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、典型的な実験デザインを示す図面である。単独での安息香酸ナトリウムまたはタンニン酸、安息香酸ナトリウムとタンニン酸の組み合わせ、または対照の賦形剤を、MK801注射の15分前に強制経口投与により各マウスに投与した。MK801の腹腔内注射剤を、行動試験の20分前に各マウスに投与した。
図2図2は、MK801処置し単独の安息香酸ナトリウムをまたは安息香酸ナトリウムとタンニン酸の組み合わせを投与したマウスによる、オープン・フィールド試験での合計移動距離を示すチャートである。MK801は多動性を誘引したが、これは1000 mg/kgの安息香酸ナトリウムにより完全に抑止され、一方で200 mg/kgの安息香酸ナトリウムでは効果が小さい。しかしながら、60 mg/kgのタンニン酸は200 mg/kgの安息香酸ナトリウムの効果を改善し、比して30 mg/kgのタンニン酸では改善しない。
図3図3は、MK801処置し単独の安息香酸ナトリウムをまたは安息香酸ナトリウムとタンニン酸の組み合わせを投与したマウスにおけるプレパルス抑制率を示すチャートである。MK801はプレパルス抑制を害するが、これは200、600または1000 mg/kgの安息香酸ナトリウムにより改善することができる。同時に、タンニン酸は、プレパルス抑制に対する安息香酸ナトリウムの効果を用量依存的に向上させる。
図4図4は、単独でのタンニン酸が、MK801で誘発されたプレパルス抑制に対する効果がほとんどないまたは全くないことを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、治療を必要とする被験体において基本的機能と認知行動を改善するためおよび/またはCNSに関連した疾患と障害を治療するための、組成物、キット、それらの使用方法を提供する。本発明により提供される組成物は、ベンゾエート化合物(例えば安息香酸塩、例えば安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム)と賦形剤を含み、ここで前記賦形剤はタンニン酸(一種のまたは多種混合物のタンニン酸)またはその薬学的に許容される塩である。
【0017】
〔組成物〕
本発明の一態様は、ベンゾエート化合物、例えば安息香酸ナトリウムまたは安息香酸リチウムと、賦形剤とを含む組成物に関し、ここで前記賦形剤はタンニン酸(一種のまたは多種混合物のタンニン酸)またはその薬学的に許容される塩である。ある実施形態では、該組成物が更に薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。ある実施形態では、当該組成物が栄養補助食品組成物、医療用食品、または健康食品である。
【0018】
本発明の組成物は、本明細書に記載のようなCNS疾患(例えば多動性および/または知覚運動障害)に関連した1または複数の症状を軽減するために、または標的のCNS疾患を治療するために有用である。実施例は、タンニン酸がCNS疾患の症状、例えば運動活性や感覚運動ゲート機能(sensorimotor gating function)に対する安息香酸塩の効果を増強することを実証する。安息香酸ナトリウムと組み合わせたタンニン酸の投与は、治療効果を生じさせるため投与することができる安息香酸ナトリウムの量の削減を可能にした。例えば、CNS疾患のマウスモデルでは、60 mg/kgのタンニン酸と200 mg/kgの安息香酸ナトリウムが、単独での1000 mg/kgの安息香酸ナトリウムと同様な治療効果を生じた(図2)。更に、タンニン酸は安息香酸ナトリウムの効果を用量依存的に増強した(図2図3)。単独でのタンニン酸はMK801で誘引されるプレパルス抑制に対してほとんどまたは全く効果がないことが観察された;しかしながら、それは併用すると安息香酸ナトリウム化合物の治療効果を有意に増強した。
【0019】
従って、ベンゾエート化合物と賦形剤を含む組成物であって、該賦形剤がタンニン酸(一種または多種混合物)またはその薬学的に許容される塩である組成物、並びにCNS障害を治療するためまたはそれの1もしくは複数の症状を軽減するためのそれの使用が記載される。また、意図する目的でのベンゾエート化合物とタンニン酸の併用も提供され、ここで前記ベンゾエート化合物とタンニン酸は別々の組成物中に製剤化することができる。
【0020】
ベンゾエート化合物とタンニン酸内容物
本明細書に記載の組成物はベンゾエート化合物と賦形剤を含み、該賦形剤はタンニン酸またはその薬学的に許容される塩である。ベンゾエート化合物とタンニン酸は常用技術に従った化学合成により調製でき、または商業的業者より入手することができる。あるいは、タンニン酸の混合物を適当な植物源より抽出または単離することができる。タンニン酸抽出物または単離物は、1以上の濃縮もしくは精製操作、例えばゲルろ過、分画およびクロマトグラフィー(例えばHPLC)またはそれの組み合わせに供することができる。
【0021】
本明細書に記載の組成物中に含まれる「ベンゾエート化合物」は、式
【0022】
【化1】
【0023】
の化合物を指し、式中、R1は独立に水素原子、C1-C3アルキル、ハロゲン、 -CN、-NO2、-N3、C2-C4 アルケニル、C2-C4 アルキニル、-OR、-NH2または-SRであり、Rは水素原子、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、アシル、C1-3 アルキル、C2-4 アルケニル、C2-4 アルキニルであり;そしてaは0, 1, 2, 3, 4または5である。ある実施形態では、ベンゾエート化合物またはその薬学的に許容される塩は、安息香酸ナトリウム化合物または安息香酸リチウム化合物である。本明細書中に記載のいずれかの組成物中に含まれる「安息香酸ナトリウム化合物」は、式
【0024】
【化2】
【0025】
の化合物を指し、式中、 R1 は独立に水素原子、C1-3 アルキル、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、 C2-C4 アルケニル、C2-C4 アルキニル、-OR、-NH2または-SRであり、R は水素原子、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、アシル、C1-3 アルキル、C2-4 アルケニル、C2-4 アルキニルであり;そしてaは0, 1, 2, 3, 4または5である。ある実施形態では、安息香酸ナトリウム化合物が
【0026】
【化3】
【0027】
(安息香酸ナトリウム)である。ある実施形態では、安息香酸リチウム化合物が安息香酸リチウムである。
【0028】
「C1-3 アルキル」とは、1~3個の炭素原子、例えば1~2個の炭素原子(「C1-2 アルキル」)または1個の炭素原子(「C1 アルキル」)を有する直鎖または分枝飽和炭化水素基の残基を指す。別記しない限り、各場合のアルキル基は独立に、非置換(「非置換アルキル」)であるかまたは1個以上の置換基(例えばハロゲン、例えばF)により置換されてもよい(「置換アルキル」)。ある場合には、アルキル基は非置換C1-3 アルキル(例えば-CH3または-CF3)である。「ハロ」または「ハロゲン」はフッ素(フルオロ、-F)、塩素(クロロ、-Cl)、臭素(ブロモ、-Br)またはヨウ素(ヨード、-I)を指す。
【0029】
「C2-4 アルケニル」は、2~4個の炭素原子と1個以上の炭素-炭素二重結合を有し三重結合を持たない直鎖または分枝炭化水素基を指す。ある実施形態では、C2-4 アルケニル基は2,3または4個の炭素原子を有する。特に断らない限り、各場合のアルケニル基は独立に随意に置換されることがあり、即ち、非置換(「非置換アルケニル」)であるかまたは1個以上の置換基により置換されてもよい(「置換アルケニル」)。ある実施形態では、アルケニル基は非置換C2-4 アルケニルである。ある実施形態では、アルケニル基は置換C2-4 アルケニル、例えばFもしくはClのようなハロゲンによりまたは-CH3のようなC1-3アルキルにより置換されたC2-4 アルケニルである。アルケニル基において、立体化学が特定されないC=C二重結合(例えば-CH=CHCH3 または
【0030】
【化4】
【0031】
)は、(E)-または(Z)-二重結合であることができる。
【0032】
「C2-4 アルキニル」は、2~4個の炭素原子、1個以上の炭素-炭素三重結合、および随意に1個以上の二重結合を有する直鎖または分枝炭化水素基の残基を指す。ある実施形態では、アルキニル基は、2,3または4個の炭素原子を有する。特に断らない限り、各場合のアルキニル基は独立に随意に置換されることがあり、即ち非置換(「非置換アルキニル」)であるかまたは1個以上の置換基、例えばFもしくはClのようなハロゲンによりまたは-CH3のようなC1-3アルキルにより置換されてもよい(「置換アルキニル」。
【0033】
本明細書中に記載の組成物中に賦形剤として含まれるタンニン酸は、2~12個のガロイル部分を含むポリガロイルグルコースまたはポリガロイルキニン酸エステルの混合物を言う。該組成物は、多様な数のガロイル部分を有するタンニン酸の混合物、または限定された数のガロイル部分を有するタンニン酸の実質的に均一の集団を含んでよい。下記に提供されるのは、グルコース基に連結された10個のガロイル部分を含む、典型的なタンニン酸分子の構造である。
【0034】
【化5】
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物中のタンニン酸内容物は、様々な個数、例えば2~12個のガロイル部分を有するタンニン酸の混合物、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの例では、タンニン酸の混合物は少なくとも4つのガロイル部分を有するタンニン酸(例えば4-12、5-12、6-12、7-12、または8-12個のガロイル部分)またはその薬学的に許容される塩を含有する。場合により、当該組成物中のタンニン酸は4個以下のガロイル部分を有するタンニン酸は実質的に含まないだろう。本明細書で使用される場合、4個以下のガロイル部分を有するタンニン酸を「実質的に含まない」とは、組成物中のそのようなタンニン酸の合計量が10重量%以下であることを意味する。いくつかの例では、4個以下のガロイル部分を有するタンニン酸の合計量は8%、5%、2%、1%またはそれ未満である。
【0036】
他の実施形態では、本明細書に記載の組成物に含まれるタンニン酸内容物は、実質的に均一な集団である。そのようなタンニン酸集団は、限定数のガロイル部分、例えば2~12の間の任意数(2と12を含む)を有するタンニン酸、またはその薬学的に許容される塩を含有することができる。本明細書で使用する場合、「実質的に均一」という用語は、限定された数のガロイル部分を有するタンニン酸が、組成物中の全タンニン酸内容物の少なくとも85重量%(例えば90%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上)を占めることを意味する。幾つかの例では、実質的に均一のタンニン酸集団は5、6、7、8、9、10、11、又は12個のガロイル部分を有するタンニン酸を含有する。
【0037】
用語「薬学的に許容される塩」は、堅実な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずに、ヒトや下等動物の組織と接触させての使用に適しており、かつ合理的なベネフィット/リスク比に見合っている塩を指す。薬学的に許容される塩は当該技術分野で周知である。例えば、Berge他はJ.Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1-19中に薬学的に許容される塩を詳細に記載しており、それは参考として本明細書中に組み込まれる。
【0038】
本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩としては、適当な無機および有機の酸または塩基から誘導されるものが挙げられる。薬学的に許容される非毒性酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸と共に、または例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸と共に形成されるアミノ基の塩、あるいはイオン交換などの当技術分野で公知の他の方法を使用することによって形成されるアミノ基の塩である。
【0039】
他の薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適当な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN+(C 1-4アルキル)4 -塩が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム塩などが挙げられる。さらなる薬学的に許容される塩としては、適当である場合、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸、硫酸、リン酸、硝酸、低級アルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸などの対イオンを用いて形成された、非毒性のアンモニウム塩、第四級アンモニウム塩およびアミンカチオン塩が挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態において、ベンゾエート化合物は組成物中約100 mg~1200 mgまたはそれ以上の範囲であり、そしてタンニン酸は組成物中約2.0 mg~1200 mgまたはそれ以上の範囲であってよい。ある実施形態では、ベンゾエート化合物は、組成物中約100 mg、約150 mg、約200 mg、約300 mg、約400 mg、約500 mg、約600 mg、約700 mg、約800 mg、約900 mg、約1000 mg、約1100 mg、約1200 mgまたはそれ以上を含むことができ、そしてタンニン酸は組成物中約2.0 mg、約2.5 mg、約5 mg、約10 mg、約15 mg、約20 mg、約30 mg、約40 mg、約50 mg、約60 mg、約70 mg、約80 mg、約90 mg、約100 mg、約200 mg、約300 mg、約400 mg、約500 mg、約600 mg、約700 mg、約800 mg、約900 mg、約1000 mg、約1100 mgまたは約1200 mgを含むことができる。
【0041】
ベンゾエート化合物とタンニン酸との比は変動することができる。ある実施形態では、ベンゾエート化合物とタンニン酸が1:100~100:1の比である。ある実施形態では、ベンゾエート化合物とタンニン酸の比が1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1または100:1の比である。
【0042】
医薬組成物
ある実施形態において、本明細書に記載されるベンゾエート化合物とタンニン酸を含む組成物は、薬学的に許容される担体と混合し、本明細書に記載されるような標的疾患のいずれかを治療するために使用することができる医薬組成物を形成することができる。「許容される」担体は、組成物の活性成分と適合できる(かつ好ましくは活性成分を安定化することができる)必要があり、処置される被験体にとって有害であってはならないことを意味する。緩衝液を含む薬学的に許容される賦形剤(担体)は当技術分野でよく知られている。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 第20版(2000)Lippincott Williams and Wilkins, K.E. Hoover編を参照のこと。
【0043】
薬学的に許容される担体としては、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、および当該技術分野で周知である他の物質が挙げられる。特にペプチド用の典型的な薬学的に許容される担体は、米国特許第5,211,657号明細書に記載されている。そのような製剤は通常、塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、および場合により他の治療薬を含有してもよい。薬用の場合、塩は薬学的に許容されるべきであるが、薬学的に許容される塩でないものも、薬学的に許容される塩を調製するために好都合に使用されてよく、本発明の範囲から除外されない。そのような薬理学的におよび薬学的に許容される塩としては、非限定的に、以下の酸から調製されるものが挙げられる。塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等。また、薬学的に許容される塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩として調製することもできる。
【0044】
本明細書に記載のベンゾエート化合物とタンニン酸を含む医薬組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形で、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含むことができる。(Remington: The Science and Practice of Pharmacy 第20版 (2000) Lippincott Williams and Willkins, K.E. Hoover編)。適当な担体、賦形剤または安定剤は、使用される用量と濃度において受容者に対し非毒性であり、かつ緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸およびメチオニン;保存剤(例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノールおよびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン;単糖類、二糖類および他の炭水化物、例えばグルコース、マンノースまたはデキストラン;キレート化剤、例えばEDTA;糖類、例えばショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成性対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えばツイーン(商標)(TWEENTM)、プルロニクス(商標)(RLURONICSTM)またはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0045】
別の例では、本明細書に記載の医薬組成物は徐放性形態で製剤化することができる。適当な徐放性製剤の例としては、タンニン酸を含む疎水性固体ポリマーの半透性母材が挙げられ、このような母材は成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形である。徐放性母材の例としては、ポリエステル、ヒドロゲル、例えばポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸と7エチル-L-グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニルコポリマー、分解性乳酸-グルコール酸コポリマー、例えばルプロン・デポ(商標)(LUPRON DEPOTTM;乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)、酢酸イソ酪酸スクロース、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0046】
生体内(インビボ)投与に使用される医薬組成物は無菌でなければならない。これは、例えば滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。治療用組成物は一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈注射溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0047】
本明細書に記載の医薬組成物は、経口投与、非経口投与もしくは直腸投与、または吸入もしくは吹送による投与のための単位剤形、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤もしくは懸濁剤、または坐剤などであり得る。
【0048】
錠剤などの固形組成物を調製するために、主活性成分を医薬担体と混合することができ、例えば、常用の錠剤化成分、例えばコーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはガム、および他の医薬希釈剤、例えば水と混合し、本発明の化合物またはその薬学的に許容される非毒性塩の均質混合物を含む、固形の予備処方組成物を成形することができる。それらの予備処方組成物について「均質」と言及する場合、組成物は容易に、例えば錠剤、ピルおよびカプセルなどの均等に有効な単位剤形に細分することができるように、活性成分が組成物全体に均一に分散されていることを意味する。この固形予備処方組成物は、次いで、本発明の活性成分0.1~約500 mgを含む前記タイプの単位剤形に細分される。新規組成物の錠剤または丸剤は、コーティングを施すことができ、または他の方法で配合して持効性作用の利点を付与する剤形を提供することができる。例えば、錠剤または丸剤は内側投薬成分と外側投薬成分を含み、後者は前者を被覆する外膜の形態であることができる。前記二成分は、胃での崩壊に抵抗する働きをしかつ内側の成分を十二指腸へとそのまま通過させるかまたは放出を遅延させる腸溶性層によって互いに分離することができる。そのような腸溶性層またはコーティングには様々な材料を使用することができ、その材料としてはシェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースが含まれる。
【0049】
適当な界面活性剤としては、特に非イオン性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタン(例えばツイーン(商標)TweenTM 20、40、60、80または85)および他のソルビタン(例えばスパン(商標)SpanTM 20、40、60、80または85)が挙げられる。界面活性剤を含む組成物は、好都合には0.05~5%界面活性剤を含み、それは0.1~2.5%の間であることができる。必要に応じて、他の成分、例えばマンニトールまたは他の薬学的に許容される賦形剤を添加してもよいことが理解されるであろう。
【0050】
適当な乳剤は、イントラリピッド(商標) IntralipidTM、リポシン(商標)LyposynTM、インフォヌトロール(商標)InfonutrolTM、リポフンディン(商標)LipofundinTMおよびリピフィサン(商標)LipiphysanTMといった市販の脂肪乳剤を使って調製することができる。活性成分は、事前混合した乳剤組成物中に溶解させることができ、あるいはそれは油(例えば大豆油、紅花油、綿実油、ゴマ油、コーン油または落花生油)中およびリン脂質(例えば、卵リン脂質、大豆リン脂質または大豆レシチン)と水とを混合することから形成された乳剤中に溶解させてもよい。他の成分、例えばグリセロールまたはグルコースを添加してもよいことは理解されよう。適当な乳剤は、典型的には20%以下の油、例えば5~20%の間の油を含むであろう。脂肪乳剤は、0.1と1.0 .im、特に0.1~0.5 .imの脂肪滴を含むことができ、5.5~8.0の範囲内のpHを有する。
【0051】
吸入または吹送用の医薬組成物は、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒またはそれらの混合物中の溶液と懸濁液、並びに粉末を含む。液体または固体組成物は上述したような適当な薬学的に許容される賦形剤を含有してもよい。ある実施形態では、組成物は局所または全身作用のために経口または経鼻呼吸経路により投与される。
【0052】
好ましくは無菌の薬学的に許容される溶媒中の組成物は、ガスを用いて噴霧することもできる。噴霧液は、噴霧器から直接吸引してもよく、または噴霧器をフェイスマスク、栓(tent)または間欠的陽圧呼吸器に取り付けることもできる。溶液、懸濁液または粉末組成物は、適切な方法で製剤を送達する装置から、好ましくは経口または経鼻的に投与することができる。
【0053】
ある実施形態では、ベンゾエート化合物とタンニン酸を含む任意の医薬組成物は、該組成物の意図する治療用途に基づいて追加の治療薬を更に含んでもよい。
【0054】
いくつかの例として、追加の治療薬はCNS疾患/障害を治療するための剤である。そのような治療薬は抗精神病薬でもよい。典型的な抗精神病薬としては、限定されないが、ブチロフェノン(例えばハロペリドール(ハルドール(商標)HALDOLTM)、フェノチアジン(例えばクロルプロマジン(ソラジン(商標)THORAZINTM)、フルフェナジン(プロリキシン(商標)PROLIXINTM)、ペルフェナジン(トリラホン(商標)TRILAFON TM)、プロクロルペラジン(コンパジン(商標)COMPAZINETM)、チオリダジン(メラリル(商標)MELLARILTM)、トリフルオペラジン(ステラジン(商標)STELAZINETM)、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン(べスプリン(商標)VESPRINTM)、レボメプロマジン(ノジナン(商標)NOZINANTM)、プロメタジン(フェネルガン(商標)PHENERGANTM)、チオキサンテン(例えばクロルプロチキセン、フルペンチキソール(デピキソール(商標)DEPIXOLTM、フルアンキソール(商標)FLUANXOLTM)、チオチキセン(ナバン(商標)NAVANETM)、ズクロペンチキソール(クロピキソール(商標)CLOPIXOLTM、アキュフェーズ(商標)ACUPHASETM)、クロザピン(クロザリル(商標)CLOZAPILTM)、オランザピン(ジプレキサ(商標)ZYPREXATM)、リスペリドン(リスパダール(商標)RISPERDALTM、リスパダール,コンスタ(商標)RISPERDAL CONSTATM)、クエチアピン(セロクエル(商標)SEROQUELTM)、ジプラシドン(ゲオドン(商標)GEODONTM)、アミスルプリド(ソリアン(商標)SOLIANTM)、アセナピン、パリペリドン、アリピプラゾール(エビリファイ(商標)ABILIFYTM)、ドーパミン部分アゴニスト(ビフェプルノックス(商標)BIFEPRUNOXTM、ノルクロザピン(商標)NORCLOZAPINETM(ACP-104))、ラモトリジン(ラミクタール(商標)LAMICTALTM)、メマンチン(アクスラ(商標)AXURA TM、アカチノール(商標)AKATINOLTM、ナメンダ(商標)NAMENDATM、エビキサ(商標)EBIXA TM、アビキサ(商標)ABIXATM)、テトラベナジン(ニトマン(商標)NITOMANTM、キセナジン(商標)XENAZINETM) 、カンナビジオール、LY2140023、などが挙げられる。
【0055】
また、追加の治療薬は、抗うつ薬および/または気分安定薬であることができる。特定の実施形態では、抗うつ薬はモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、三環系抗うつ薬(例えばイミプラミン(商標)IMIPRAMINETMなどのTCA)、四環系抗うつ薬(TECA)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性抗うつ薬(ナッサ)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害剤、ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤、および/またはセロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)を包含する。典型的SSRIには、フルオキセチン(プロザックPROZACTM)、パロキセチン(パキシル PAXILTM、セロザット SEROXATTM、エスシタロプラム(レキサプロ(商標)LEXAPROTM、エシプラム(商標) ESIPRAMTM)、シタロプラム(セレキサ(商標)CELEXATM)、セルトラリン(ゾロフト(商標)ZOLOFTTM)、フルボキサミン(ルボックス(商標)LUVOXTM))がある。典型的SNRIには、ベンラファキシン(イフェクサー(商標)EFFEXORTM)、ミルナシプランおよびデュロキセチン(シンバルタ CYMBALTATM)がある。追加の抗うつ薬には、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NSSA)(例えば、ミルタザピン(アバンザ(商標)AVANZATM、ジスピン ZISPINTM、レメロン(商標)LEMERONTM)、またはミアンセリン)、ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤(NRI)(例えばレボキセチン(エドロナックス(商標)EDRONAX TM)) 、ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤(例えばブプロピオン(ウェルブトリン(商標)WELLBUTRINTM、ザイバン(商標)ZYBANTM) )、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、デシプラミン、トリミプラミン、アモキサピン、ブプロピオン、ブプロピオンSR、S-シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、イソカルボキサジド、ベラファキシンXR、トラニルシプロミン、トラゾドン、ネファゾドン、フェネルジン、ラマトロジン、リチウム、トピラメート、ガバペンチン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、バルプロエート、マプロチリン、ミルタザピン、ブロファロミン、ゲピロン、モクロベミド、イソニアジド、イプロニアジド等がある。
【0056】
他の例としては、追加の治療薬はADDおよび/またはADHD治療薬であることができる。適当なADHD治療薬としては、限定されないが、スタチン、アンフェタミン、モダフィニル、デソキシン、メタンフェタミン、コカイン、アレコリン、デクスメチルフェニデート(フォカリン、フォカリンXR)、デキストロアンフェタミン(デキセドリン、デキセドリンスパンスレス、デクストロアンフェタミンER、デクストロスタット)、メチルフェニデート(コンセルタ、デイトラナ、メタデートCD、メタデートER、メチリン、メチリンER、リタリン、リタリン-LA、リタリン-SR)、リスデキサンフェタミン・ジメシレート(ビバンセ)、混合塩アンフェタミン(アデラール、アデラールXR)、アトモキセチン(ストラテラ)、塩酸クロニジン(カタプレス)、塩酸グアンファシン(テネックス)、アレコリンおよびペモリンが挙げられる。
【0057】
更に、追加の治療薬は認知障害、および/または神経変性により特徴づけられる状態(例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病)の治療に用いられる剤であることができる。そのような治療薬としては、限定されないが、ドネペジル(アリセプト(商標)AriceptTM)、タクリン、リバスチグミン、メマンチン(アクスラ(商標)AXURATM、アカチノール(商標)AKATINOLTM、ナメンダ(商標)NAMENDATM、エビキサ(商標)EBIXATM、アビキサ(商標)ABIXATM)、フィゾスチグミン、ニコチン、アレコリン、フペルジンアルファ、セレギリン、リルテック(商標)(RilutexTM(リルゾール))、ビタミンC、ビタミンE、カロテノイド、イチョウ派エキス等が挙げられる。
【0058】
例示的な追加の治療薬としては、限定されないが、カリプラジン、ブレクスピプラゾール、ブチロフェノン、フェノチアジン、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、チオキサンテン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、アリピプラゾール、ラモトリジン、テトラベナジン、カンナビジオール、LY2140023、ドロペリドール、ピモジド、ブタペラジン、カルフェナジン、レモキシプリド、ピペラセタジン、スルピリド、アカンプロセート、ビラゾドン、レボミルナシプラン、ボルチオキセチン、フルオキセチン、パロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、フルボキサミン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、デュロキセチン、ミルタザピン、ミアンセリン、レボキセチン、ブプロピオン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、デシプラミン、トリミプラミン、アモキサピン、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、イソカルボキサジド、トラニルシプロミン、トラゾドン、ネファゾドン、フェネルジン、ラマトロジン、リチウム、トピラメート、ガバペンチン、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、バルプロエート、マプロチリン、ミルタザピン、ブロファロミン、ゲピロン、モクロベミド、イソニアジド、イプロニアジド、スタチン、アンフェタミン、モダフィニル、デソキシン、メタンフェタミン、コカイン、アレコリン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート、リスデキサンフェタミンジメシレート、混合塩アンフェタミン、アトモキセチン、塩酸クロニジン、塩酸グアンファシン、アレコリン、ペモリン、ドネペジル、タクリン、リバスチグミン、メマンチン、フィゾスチグミン、リチウム塩、ニコチン、ヒューペルジンアルファ、セレギリン、リルゾール、ビタミンC、ビタミンE、カロチノイド、およびイチョウ葉エキスが挙げられる。
【0059】
健康食品
ある実施形態では、本明細書に記載のベンゾエート化合物とタンニン酸を含む組成物は健康食品であることができ、それはヒトや動物に栄養補給するため、基本的行動機能および/または認知機能を改善するため、あるいは本明細書に記載されるような標的疾患(例えば本明細書に記載のものを含むCNS障害)の治療を促進するため、に用いられる任意の種類の液体または固体/半固体材料であることができる。健康食品は、食品(例えば、茶系飲料、ジュース、コーヒー、ミルク、ゼリー、クッキー、シリアル、チョコレート、スナックバー、ハーブエキス、乳製品(例えばアイスクリームやヨーグルト))、食品/栄養補助食品、または栄養補給用製剤であることができる。本明細書に記載の健康食品は、1以上の追加の治療薬(例えばCNS疾患/障害を治療するための追加の治療薬)を更に含んでもよい。
【0060】
ベンゾエート化合物とタンニン酸(例えば本明細書に記載のような安息香酸ナトリウムとタンニン酸)を含有する本明細書に記載の健康食品は、1つ以上の可食性担体を含むことができ、そのような担体は当該製品におけるタンニン酸に対して1または複数のベネフィット(利点)を付与するものである。可食性担体の例としては、デンプン、シクロデキストリン、マルトデキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、およびそれらの水溶液が挙げられる。他の例としては、当業者に既知であるような、溶媒、分散剤、コーティング剤、界面活性剤、酸化防止剤、保存剤(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料等、この種の物質およびそれらの組み合わせが挙げられる。ある例では、本明細書に記載の健康食品は、更に魚油および/または亜麻仁油のような神経保護食品を更に含んでもよい。
【0061】
いくつかの例では、健康食品は栄養補助食品組成物であり、それは食料源からの成分を含み、食品中に認められる基本栄養価に加えて、追加の健康上の効用を付与する組成物を指す。本明細書に記載される栄養補助食品組成物は、本明細書に記載のタンニン酸含有物(例えば、タンニン酸混合物または本明細書に記載のように実質的に均質のタンニン酸集団)並びに健康を増進するおよび/またはタンニン酸の安定性や生物活性を強化する追加の成分およびサプリメントを含む。
【0062】
栄養補助食品組成物の作用は、高速または/および短期間であってもよいし、本明細書に記載したように長期的な健康目標を達成するのを助けてもよく、例えば、CNS障害に関連した疾患を有するかまたは罹患するリスクがあるヒト被験者において、基本的行動機能および/または認知機能を改善することを助けてもよい。栄養補助食品組成物は、例えば栄養補助食品または医薬製剤として、可食性材料中に含まれていてもよい。栄養補助食品として、追加の栄養素、例えばビタミン、ミネラルまたはアミノ酸が含まれてもよい。該組成物はまた、飲料または食品、例えば、茶、ソフトドリンク、ジュース、牛乳、コーヒー、クッキー、シリアル、チョコレート、スナックバーであることもできる。所望であれば、該組成物は、ソルビトール、マルチトール、水素化グルコースシロップおよび水素化デンプン水解物、加糖ブドウ糖液糖、甘蔗糖、甜菜糖、ペクチンまたはスクラロースといった甘味剤を添加することにより甘くすることができる。
【0063】
本明細書中に開示される栄養補助食品組成物は、溶液の形態であることができる。例えば、栄養補助食品製剤は、緩衝剤、溶剤、希釈剤、不活性担体、油またはクリームのような基剤の中に提供することができる。いくつかの例では、該製剤は、任意にアルコールのような非水性共溶媒を含有する水性溶液中に存在する。栄養補助食品組成物は、粉末、ペースト、ゼリー、カプセル、または錠剤の形態であることもできる。カプセル剤用の希釈剤としておよび錠剤用の担体としてラクトースやコーンスターチが汎用される。錠剤を成形するためにはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤が添加される。
【0064】
健康食品は、適当な投与経路、例えば経口投与用に製剤化することができる。経口投与用には、例えば錠剤やカプセル剤の形状をとることができ、それは適当な賦形剤、例えば結合剤(例えばトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えばジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)を用いる常用手段により調製される。錠剤は、当技術分野で周知の方法によりコーティングを施すことができる。また、バーや他のチュアブル製剤も含まれる。
【0065】
いくつかの例では、健康食品は液体形態であることができ、一つ以上の可食性担体が非限定的にエタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、脂質(例えばトリグリセリド、植物油、リポソーム)またはそれらの組み合わせを含む溶媒または分散媒であることができる。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用により;例えば液体ポリオールまたは脂質のような担体中への分散による必要な粒径の維持により;例えばヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤の使用により;またはそれらの組み合わせにより、維持することができる。多くの場合、例えば糖、塩化ナトリウムまたはそれらの組み合わせのような等張化剤を含めることが賢明であろう。
【0066】
経口投与用の液体製剤は、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液の形をとることができ、あるいは使用前に水または他の適当な賦形剤による構築のための乾燥品として提供することができる。一実施形態では、液体製剤は果汁飲料での投与用に処方することができる。そのような液体製剤は、薬学的に許容される添加剤、例えば懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例えばレシチンまたはアカシア);非水性賦形剤(例えば落花生油、油性エステル、エチルアルコールまたは分留植物油);および防腐剤(例えばメチル-もしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を用いて常法により調製することができる。
【0067】
ある実施形態では、組成物は医療用食品である。医療用食品は、経腸的に消費または投与できるように処方された食品である。そのような食品は、通常、本明細書に記載されるもののような標的疾患に対する特別な食事管理のために医師の監督下で使用される。ある場合、このような医療用食品組成物は、治療が必要な患者(例えば病気を罹患しているかまたは特別な食事管理によって疾患もしくは状態を軽減するために主活性薬剤としてその製品を使用する必要があるヒト患者)のために特別に調合され加工される。幾つかの例では、本明細書に記載の医療用食品組成物は、症状を管理するためまたは病気や状態のリスクを減らすために全体的な食事療法の一部として医師により単純に推奨されているものの1つではない。
【0068】
ベンゾエート化合物とタンニン酸並びに少なくとも1つの担体(例えば本明細書に記載されるもの)を含む本明細書に記載の医療用食品組成物は、いずれも、下記に詳述するように、液体溶液;粉末、バー、ウェハース、適切な液体中のまたは適当な乳液中の懸濁液の形であることができる。天然のまたは合成(非天然)のいずれかであることができる少なくとも1つの担体は、ベンゾエート化合物とタンニン酸を含む組成物に、例えば、安定性、バイオアベイラビリティ(生物利用性)および/または生物活性といった1つ以上のベネフィットを付与するだろう。本明細書に記載の担体のいずれも、医療用食品組成物を製造するために使用することができる。いくつかの実施形態では、医療用食品組成物は、非限定的に次のもの:天然香料、人工香料、主微量元素および超微量ミネラル、ビタミン、オート麦、ナッツ、スパイス、乳、卵、塩、小麦粉、レシチン、キサンタンガムおよび/または甘味剤を含む群から選ばれた1つ以上の追加の成分を更に含んでもよい。該医療用食品組成物は、適当な容器中に入れることができ、それは本明細書に記載されるもののような少なくとも1つの追加の治療薬を更に含んでもよい。
【0069】
CNS障害の治療方法
本発明の別の態様は、中枢神経系(CNS)障害の治療方法であって、本明細書に記載のいずれかの組成物の治療上有効量を、治療を必要とする被験体に投与することを含む方法に関する。典型的なCNS障害としては、注意欠陥多動性障害(ADHD)、統合失調症、精神病性障害、大うつ病性障害、アルツハイマー疾患、疼痛、うつ病、双極性障害、摂食障害、中毒障害、人格障害、チック障害、心的外傷後ストレス障害、不安障害、社会不安障害、パニック障害、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、脆弱X症候群(FXS)、強迫性障害(OCD)、学習障害、トゥレット症候群、軽度認知障害(MCI)、良性健忘症、閉塞性頭部外傷、認知症(例えば血管性認知症、前頭側頭型認知症、レヴィー小体型認知症、老人性認知症およびアルツハイマー型軽度認知症)、パーキンソン病、ハンチングトン病、夜尿症、眼瞼けいれん、非てんかん発作、月経前症候群、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)が挙げられる。
【0070】
他の実施形態では、CNS障害は多動性症状を有するCNS障害を指す。典型的な多動性症状を有するCNS障害としては、非限定的に、統合失調症、双極性障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、トゥーレット症候群、自閉症スペクトラム障害、脆弱X症候群、パーキンソン病、レヴィー小体型認知症、老人性認知症が挙げられる。
【0071】
他の実施形態では、CNS障害は、感覚運動障害を有するCNS障害を指す。感覚運動障害を有する典型的なCNS障害としては、非限定的に、統合失調症、大うつ病性障害、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、チック障害、強迫性障害、トゥレット症候群、眼瞼けいれん、心的外傷後ストレス障害、パニック障害、アスペルガー障害、アルツハイマー病、アルツハイマー型軽度認知症、レヴィー小体型認知症、ハンチントン病、人格障害、夜尿症、および非てんかん発作が挙げられる。
【0072】
ある実施形態では、神経精神疾患が、注意欠陥障害を含む注意欠陥多動性障害である。ある実施形態では、神経精神疾患が統合失調症である。ある実施形態では、神経精神疾患が精神障害である。ある実施形態では、神経精神疾患が大うつ病性障害である。ある実施形態では、神経精神疾患がアルツハイマー病である。ある実施形態では、神経精神疾患が疼痛である。ある実施形態では、神経精神疾患が気分変調や死別などを含むうつ病である。ある実施形態では、神経精神疾患が双極性I型およびII型障害を含む双極性障害である。ある特定の実施形態では、神経精神疾患が過食症と拒食症を含む摂食障害である。ある実施形態では、神経精神疾患が嗜癖障害である。ある実施形態では、神経精神疾患が妄想、統合失調症、統合失調型、反社会性、境界型、演技、自己陶酔、回避性、依存性および強迫性人格障害をはじめとする人格障害である。ある実施形態では、神経精神疾患がチック障害である。ある実施形態では、神経精神障害が心的外傷後ストレス障害である。ある実施形態では、神経精神疾患がパニックおよび恐怖障害を含む不安障害である。ある実施形態では、神経精神疾患が社会不安障害である。ある実施形態では、神経精神疾患がパニック障害である。ある実施形態では、神経精神疾患がアスペルガー障害などの自閉症スペクトラム障害である。ある実施形態では、神経精神疾患が脆弱X症候群である。ある実施形態では、神経精神疾患が強迫性障害である。ある実施形態では、神経精神疾患が学習障害である。ある実施形態では、神経精神疾患がトゥレット症候群である。ある実施形態では、神経精神疾患が軽度認知障害である。ある実施形態では、神経精神疾患が良性健忘症である。ある実施形態では、神経精神疾患が閉鎖性頭部外傷である。ある実施形態では、神経精神疾患が、認知症、例えば血管性認知症、前頭側頭型認知症、老人性認知症、アルツハイマー型軽度認知症、レヴィー小体型認知症などである。ある実施形態では、神経精神疾患がパーキンソン疾患である。ある実施形態では、神経精神疾患がハンチントン病である。ある実施形態では、神経精神疾患が夜尿症である。ある実施形態では、神経精神疾患が眼瞼けいれんである。ある実施形態では、神経精神疾患が非てんかん発作である。ある実施形態では、神経精神疾患が月経前症候群である。ある実施形態では、神経精神疾患が筋萎縮性側索硬化症である。
【0073】
幾つかの実施形態では、被験体は、本明細書に記載のCNS障害を有するかまたは有する疑いのあるヒト患者である。
【0074】
幾つかの実施形態では、該組成物の治療上有効量は、約100~約1200 mgのベンゾエート化合物と約2.0~約1200 mgのタンニン酸を含有する。ある実施形態では、該組成物の治療上有効量は約100~約1000 mgのベンゾエート化合物と約2.5~約1000 mgのタンニン酸を含有する。ある実施形態では、該組成物は約100~約800 mgの安息香酸ナトリウムと約20~約80 mgのタンニン酸を含有する。
【0075】
幾つかの実施形態では、当該組成物は全身経路により投与される。いくつかの実施形態では、全身経路が経口投与または非経口投与である。
【0076】
幾つかの実施形態では、被験体は1日4回から月1回までの頻度で該組成物が投与される。
【0077】
ある実施形態では、被験体は別のCNS障害療法を施行中である。別のCNS障害療法に用いられる治療薬は、本明細書に記載の追加の治療薬から選択される。
【0078】
〔キット〕
本発明はまた、基本的行動機能および/または認知機能を改善するため、あるいは本明細書に記載のような標的疾患(例えばCNS障害)を治療するために用いられるキットを提供する。そのようなキットは、本明細書中に記載のベンゾエート化合物とタンニン酸、並びに場合により本明細書中に記載の1つ以上の追加の治療薬を含有する組成物を含む1つ以上の容器を含むことができる。
【0079】
ある実施形態では、該キットは本明細書に記載の方法のいずれかに従って使用するための指示(使用説明書)を含むことができる。含められる指示は、例えば、ベンゾエート化合物とタンニン酸を含む組成物の投与の説明、および場合により基本行動機能および/または認知機能を改善するため、または本明細書に記載の標的疾患を治療するための追加の治療薬(1または複数)の投与の説明を含むことができる。該キットは更に、個体が該疾患を有するかどうかまたは該疾患のリスクがあるかどうかを判別することに基づいて治療に適した個体を選択することの説明を更に含む。更に別の実施形態では、該指示は該疾患のリスクがある個体または基本的行動機能および/または認知機能を改善する必要がある個体に本発明の2以上の薬剤を投与することの説明を更に含む。
【0080】
意図する治療効果を達成するためのベンゾエート化合物とタンニン酸を含む組成物の使用に関する指示は、一般に、意図する処置についての投与量、投薬スケジュールおよび投与経路に関する情報を含む。容器は単位投与(1回量)形態、バルク包装(例えば多回投与包装)またはサブユニット投与形態であることができる。本発明のキットに提供される指示は、典型的にはラベルまたは添付文書(例えばキット中に入れられる紙シート)上への書面での指示であるが、機械で読み取り可能な指示(例えば磁気または光学式記憶ディスク上で実行される指示)も許容される。
【0081】
ラベルまたは添付文書は、該組成物が意図する治療的有用性に用いられることを表示することができる。そのような指示は本明細書に記載の方法のいずれかを実施するために提供することができる。
【0082】
本発明のキットは適当な包装の中にある。適当な包装としては、非限定的に、バイアル、ボトル、ジャー、フレキシブル包装(例えばマイラー(Mylar;商標)またはプラスチック封入袋)等が挙げられる。特殊な装置、例えば吸入器、鼻腔内投与装置(例えばアトマイザー)またはミニポンプのような輸液用器具と組み合わせた使用のための包装も考慮される。キットは無菌のアクセスポート(access port)を有してもよい(例えば容器が皮下注射針により穿孔可能であるストッパーを有する輸液用袋またはバイアルであってもよい)。容器も同様に無菌のアクセスポートを有してもよい(例えば容器が皮下注射針により穿孔可能であるストッパーを有する輸液用袋またはバイアルであってもよい)。
【0083】
キットは所望により追加の成分、例えば緩衝剤および解釈用情報を提供してもよい。普通、キットは容器と、該容器の上にまたは該容器と共にラベルまたは添付文書を含む。ある実施形態では、本発明は上記キットの内容物を含む製品を提供する。
【0084】
〔ベンゾエート化合物とタンニン酸を含む組成物の用途〕
本発明は、必要とする被験体において、CNS障害を治療する、リスクを低減する、または発病を遅らせる方法であって、該被験体に有効量(例えば治療上有効量)のベンゾエート化合物(例えば安息香酸リチウムまたは安息香酸ナトリウム)と賦形剤とを含む組成物を投与することを含み、該賦形剤がタンニン酸またはその薬学的に許容される塩である方法を提供する。
【0085】
本明細書中で用いる時、用語「治療する」とは、疾患を治療する、治癒する、軽減する、緩和する、改変する、状態を修正する、改善する、向上させるという目的で、あるいは疾患に、疾患の症状にまたは疾患もしくは障害にかかりやすい体質に作用するという目的で、治療が必要である被験体、例えば標的疾患もしくは障害、該疾患/障害の症状、または疾患/障害にかかりやすい体質を有する被験体に、1つ以上の活性剤を含む組成物を適用または投与することを指す。
【0086】
標的疾患/障害を軽減することは、疾患の進展または進行を遅らせること、または病気の重症度を低減することを含む。疾患を軽減することは必ずしも治癒結果を必要としない。本明細書中で用いる時、標的疾患または障害の進展を「遅らせる」とは、該疾患の進行を遅らせる、妨害する、遅くする、抑制する、安定させる、および/または延期することを意味する。この遅延は、病歴および/または治療する個体に依存して、変動する時間の長さであることができる。疾患の進展を「遅らせる」もしくは軽減するまたは疾患の発症を遅らせる方法は、その方法を使用しない場合に比較して、一定の時間枠で疾患の1以上の症状を発生する確率を減らすそして/または一定の時間枠で症状の程度を減少させる方法である。そのような比較は、典型的には、統計学的に有意な結果を与えるのに十分な数の被験体を使った臨床試験に基づく。
【0087】
ある疾患の「進展」または「進行」とは、該疾患の初期兆候および/または次の進行を意味する。疾患の進展は、当技術分野で周知の標準的臨床技術を使って検出可能であり評価することができる。しかしながら、進展は、検出できないかもしれない進行も指す。本開示の目的上、進展または進行は、症状の生物学的過程を指す。「進展」は発生、再発および発症を含む。本明細書中で用いる時、標的疾患または障害の「発症」または「発生」は、最初の発症および/または再発を含む。
【0088】
本明細書中に記載の意図する治療効果のいずれかを達成するために、ベンゾエート化合物とタンニン酸または薬学的に許容されるその塩とを含む組成物の有効量を、適当な経路で治療を必要とする被験体に投与することができる。
【0089】
用語「被験体」、「個体」および「患者」は、本明細書中互いに交換可能に用いられ、それは治療について評価するおよび/または治療する予定である哺乳類を指す。被験体はヒトであってもよいが、他の哺乳類、特にヒト疾患のための実験モデルとして有用な哺乳類、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ等も含む。
【0090】
治療を必要とするヒト被験体は、標的CNS疾患/障害を有する、リスクがある、または疑いのある被験体であることができる。標的疾患または障害を有する被験体は、日常的な健康診断により、例えば臨床試験、臓器機能試験および/または行動試験により特定することができる。そのような標的疾患/障害の疑いのある被験体は、1つ以上の症状を示しうる。そのような標的疾患/障害のリスクがある被験体は、該疾患/障害の1つ以上のリスク因子(危険因子)、例えば遺伝因子、を有する被験体であることができる。ある場合、ヒト被験体は、小児に関するCNS障害、例えば注意力欠損/多動性障害(ADHD)、自閉症、学習障害およびアスペルガー障害を有する疑いがあるかまたはリスクがある小児である。
【0091】
治療を必要とするヒト被験体は、CNS疾患/障害を治療したことがあるか、または現在治療中であるヒト被験体であることができる。例えば、被験体は統合失調症を治療したことがあるかまたは現在治療中であってよく、本明細書に記載の組成物を使って統合失調症の治療を行うことができる。別の例では、被験体はアルツハイマー病を治療したことがあるかまたは現在治療中であってよく、本明細書に記載の組成物を使ってアルツハイマー病の治療を行うことができる。CNS疾患/障害を治療したことがある被験体は、本明細書に記載の治療の前に処置された(例えば本明細書に記載の治療の二週間前、一カ月前、一年前またはそれ以上前に処置された)被験体であることができ、そして当該治療法を被験体に施す時点では前治療をもはや実施していなくてもよい。CNS疾患/障害を治療したことがある被験体は、本発明の治療法よりも前に1回、2回またはより多数回治療を受けた被験体であることができる。CNS疾患/障害を現在治療中である被験体は、本発明の治療法を被験体に適用する時にまだそのような治療を実施中である被験体である。
【0092】
本明細書に記載の方法および組成物は、CNS障害を治療するために用いることができる。そのようなCNS障害としては、限定されないが、多動性症状を有するCNS障害、および知覚運動障害を有するCNS障害が含まれる。本明細書に記載の方法と組成物により治療することができる典型的なCNS障害としては、注意欠陥多動性障害(ADHD)、統合失調症、精神病性障害、大うつ病性障害、アルツハイマー疾患、疼痛、うつ病、双極性障害、摂食障害、中毒障害、人格障害、チック障害、心的外傷後ストレス障害、不安障害、社会不安障害、パニック障害、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、脆弱X症候群(FXS)、強迫性障害、学習障害、トゥレット症候群、軽度認知障害(MCI)、良性健忘症、閉塞性頭部外傷、認知症(例えば血管性認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー型軽度認知症、レヴィー小体型認知症 、老人性認知症等)、パーキンソン病、ハンチングトン病、夜尿症、眼瞼けいれん、非てんかん発作、月経前症候群、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)が挙げられる。
【0093】
多動性症状を有する典型的CNS障害としては、非限定的に、統合失調症、双極性障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、トゥレット症候群、自閉症スペクトラム障害、脆弱X症候群、パーキンソン病、レヴィー小体型認知症、老人性認知症が挙げられる。
【0094】
感覚運動障害を有する典型的CNS障害としては、非限定的に、統合失調症、大うつ病性障害、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、チック障害、強迫性障害、トゥレット症候群、眼瞼けいれん、心的外傷後ストレス障害、パニック障害、アスペルガー障害、アルツハイマー病、アルツハイマー型の軽度認知症、レビー小体認知症、ハンチントン病、人格障害、夜尿症、および非てんかん発作が挙げられる。
【0095】
本明細書中で用いる場合、用語「人格障害」は、多くの事情に渡って現れ、かつ個人の文化により受け入れられるものから著しく逸脱している、行動、認知および内的経験の永続的な不適応パターンにより特徴づけられる精神障害を指す。それらのパターンは、最初に出現し、不動であり、相当な苦痛や無力を伴う。例えば、人格障害としては、非限定的に、妄想、統合失調、統合失調型、反社会性、境界性、演技性、自己陶酔型、回避性、依存性および強迫性人格障害を挙げることができる。
【0096】
本明細書に記載のベンゾエート化合物とタンニン酸を含む組成物の「治療上有効量」は、ある状態の処置において治療的有用性を提供するか、あるいはその状態に関連した1以上の症状を遅らせるまたは最小にするのに十分な量である。ベンゾエート化合物とタンニン酸を含む組成物の治療上有効量は、その状態の処置において治療的有用性を提供する、単独でのまたは他の治療法と組み合わせた、治療薬の量を意味する。用語「治療上有効量」は、全体的な治療を改善する、その状態の症状、徴候または原因を減少させるまたは回避する、および/または別の治療薬の治療効果を増強する量を包含しうる。
【0097】
本明細書中で用いる場合、「有効量」は、単独でまたは1以上の別の活性薬剤、例えば本明細書に記載の1以上の追加の治療薬と組み合わせて、被験体に対して治療効果を付与するのに必要とされる各活性薬剤の量を指す。ある実施形態では、治療効果は、NMDA受容体機能の改善、および/または基本的行動機能の改善、および/または認知機能の改善である。ある実施形態では、治療効果は、本明細書に記載のいずれかのCNS障害に伴う1以上の症状を緩和することである。
【0098】
本明細書に記載される組成物の量が治療効果を達成したかどうかの判定は当業者に明白であろう。有効量は、当業者に知られるように、処置する特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ、性別および体重といった個々の患者のパラメーター、治療期間、併用療法(もしあれば)の性質、特定の投与経路および類似の因子に依存して、医療従事者の知識と経験の範囲内で異なる。それらの因子は当業者に周知であり、単なる日常的実験を用いて対処することができる。一般に個々の成分またはそれの組み合わせの最大用量が使用され、すなわち、音響判定に従って最高の安全量を使用するのが好ましい。
【0099】
半減期のような経験的考察は、投与量の決定に寄与するであろう。投与の頻度は、治療の過程において決定されそして調整され、一般的にしかし必然的ではなく、標的疾患/障害の治療および/または抑制および/または軽減および/または遅延に基づく。あるいは、本明細書に記載のような組成物の持続放出(徐放)製剤が適当である。徐放を達成するための様々な製剤と装置が当業界で知られている。
【0100】
一般に、任意の当該組成物の投与の場合、上記に言及された因子に依存して、当該組成物の典型的1日量は、約100 mg~1200 mgまたはそれ以上の安息香酸化合物と、約2.0 mg~1200 mgまたはそれ以上のタンニン酸に及ぶことができる。状態に依存して数日間またはそれ以上の期間に渡る反復投与の場合、治療は、所望の症状の抑制が起こるまで、または標的疾患/障害もしくはその症状を軽減するのに十分な治療レベルが達成されるまで、維持される。典型的な投薬レジメンは、適当な間隔で適当な期間に渡り1または複数の初回量を投与することを含む。必要であれば、複数の維持量が適当な間隔で適当な期間に渡り被験体に投与することが可能である。しかしながら、実施者が達成したいと所望する薬物動態的崩壊パターンに依存して、別の投薬レジメンも有用である。例えば、1日1~4回、または1か月もの長期に1回~4回の投与が考えられる。ある実施形態では、約100 mg~約1200 mgのベンゾエート化合物(例えば約100 mg、約150 mg、約200 mg、約300 mg、約400 mg、約500 mg、約600 mg、約700 mg、約800 mg、約900 mg、約1000 mg、約1100 mgおよび約1200 mg)と約2.0 mg~約1200 mgのタンニン酸(例えば約2.0 mg、約2.5 mg、約5 mg、約10 mg、約15 mg、約20 mg、約30 mg、約40 mg、約50 mg、約60 mg、約70 mg、約80 mg、約90 mg、約100 mg、約200 mg、約300 mg、約400 mg、約500 mg、約600 mg、約700 mg、約800 mg、約900 mg、約1000 mg、約1100 mg、約1200 mg)を使用できる。ある実施形態では、投薬頻度は1日1回、1日2回、隔日1日、週1回、2週間に1回、4週間に1回であることができる。投薬レジメンは経時変化することができる。
【0101】
ある実施形態では、正常体重の成人患者の場合、約100~約1200 mgのベンゾエート化合物と約2.0~約1200 mgのタンニン酸の範囲内の用量を投与することができる。ある実施形態では、正常体重の成人患者の場合、約100~約1000 mgのベンゾエート化合物と約2.5~約1000 mgのタンニン酸の範囲内の用量を投与することができる。ある実施形態では、正常体重の成人患者の場合、約100 mg/kg~約500 mg/kgのベンゾエート化合物と約5 mg/kg~約50 mg/kgのタンニン酸の範囲内の用量を投与することができる。特定の投薬レジメン、すなわち用量、タイミングおよび頻度は、特定の個体およびその個体の病歴、並びに個々の薬剤の性質(例えば薬剤の半減期および当業界で周知の他の考慮すべき事項)に依存するだろう。
【0102】
本開示の目的上、本明細書に記載のベンゾエート化合物とタンニン酸を含む組成物の適当な用量は、特定のベンゾエート化合物、タンニン酸、タンニン酸混合物、および/または使用する他の活性成分、疾患/障害の型および重症度、組成物が予防目的と治療目的のいずれで投与されるのか、過去の療法、患者の臨床履歴、アンタゴニストに対する応答、並びに担当医の裁量に依存するだろう。典型的には、所望の結果を達成する用量に到達するまで、臨床医は組成物を投与するだろう。
【0103】
医療業界の当業者に既知である従来法を用いて、処置すべき疾患のタイプまたは該疾患の部位に依存して、組成物(例えば医薬組成物または栄養補給組成物)を被験体に投与することができる。この組成物は、他の従来の経路を介して投与することもでき、例えば経口的に、非経口的に、吸入噴霧により、局所的に、直腸内に、経鼻的に、口腔内に、膣内的に、または埋込型リザーバーを介して投与することもできる。ここで用いる用語「非経口」には、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、血管内、動脈内、渇液嚢内、胸骨内、クモ膜下、病巣内、頭蓋内注射または輸液技術が含まれる。加えて、1-、3-もしくは6カ月デポー注射用材料または生分解性材料および方法といったデポー注射経路によって被験体に投与することができる。ある例では、医薬組成物が眼内にまたは硝子体内に投与される。
【0104】
注射用組成物は、様々な担体、例えば植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノールおよびポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)を含んでもよい。静脈注射用には、ベンゾエート化合物とタンニン酸および生理学的に許容される賦形剤を含む医薬製剤を輸液することにより、水溶性抗体をドリップ法により投与することができる。生理学的に許容される賦形剤は、例えば、5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンガー液、または他の適当な賦形剤を含んでよい。筋肉内用製剤、例えばベンゾエート化合物とタンニン酸の適当な可溶性塩形態の無菌製剤は、注射用水(Water for Injection)、0.9%生理食塩水、または5%ブドウ糖液といった医薬賦形剤中に溶解し投与することができる。
【0105】
一実施形態では、ベンゾエート化合物とタンニン酸を含む組成物が、部位特異的または標的指向型局所送達技術を介して投与される。部位特異的または標的指向型局所送達技術の例としては、組成物の種々の移植可能デポー剤源または局所送達カテーテル、例えば注入カテーテル、留置カテーテル、または針カテーテル、人工血管、外膜ラップ、シャントおよびステントまたは他の移植可能装置、部位特異的キャリヤ、直接注入または直接適用が挙げられる。例えばPCT公報第WO 00/53211号および米国特許第5,981,568号明細書を参照されたい。
【0106】
CNS障害を治療するためまたはその症状を軽減するための本明細書に記載のベンゾエート化合物とタンニン酸の併用も、本発明の範囲内である。ベンゾエート化合物とタンニン酸は、別々の組成物中に製剤化してもよく、本明細書に記載のようなベンゾエート化合物とタンニン酸の用量でおよび/またはベンゾエート化合物/タンニン酸の比で、連続的にまたは同時に、必要な被験体に投与することができる。
標的疾患/障害に対する治療効果は、周知の方法により評価することができる。
【0107】
〔併用療法〕
本明細書に記載のベンゾエート化合物とタンニン酸とを含む組成物および追加の治療薬(本明細書に記載のような)を使用する併用療法もまた、提供される。ここで使用する併用療法という用語は、逐次的方法で、すなわち各治療薬が異なる時点で投与される形式で、それらの薬剤(例えばベンゾエート化合物とタンニン酸とを含む組成物および抗CNS薬)の投与;並びに実質的に同時形式で、それらの治療薬またはそれらの薬剤の少なくとも2つの投与を包含する。各薬剤の逐次的または実質的に同時の投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内、皮下経路、および粘膜組織を通る直接吸収をはじめとする任意の適切な経路をとることができる。薬剤は同一経路または異なる経路により投与することができる。例えば、第1薬剤(例えば、安息香酸化合物とタンニン酸を含む組成物)を経口投与することができ、そして追加の薬剤(例えば抗CNS剤)を静脈内投与することができる。
【0108】
用語「逐次的」は、特に断らない限り、正則列または順序によって特徴付けられるものを意味し、例えば投薬レジメンがベンゾエート化合物とタンニン酸とを含む組成物および抗CNS薬の投与を含むならば、逐次的投薬レジメンは、抗CNS薬の投与の前に、同時に、実質的同時に、または後に該組成物の投与を含むことができるが、ただしそれら2つの薬剤は正則列または順序で投与されるだろう。用語「別個の」とは、特に断らない限り、互いに離れた状態を維持することを意味する。用語「同時に」とは、別に断らない限り、同時に起こるまたは行われること、すなわち本発明の薬剤が同時に投与されることを意味する。「実質的に同時に」という用語は、薬剤が互いに数分以内に(例えば互いに10分以内に)投与され、共同投与並びに連続投与を包含するつもりであり、そして該投与が連続的であるならばそれはごく短い時間の間(例えば、医療従事者が2つの薬剤を別々に投与するのに要するだろう時間)だけ離れている。本明細書で使用する場合、同時投与と実質的に同時投与は、互いに交換可能に使用される。
【0109】
併用療法は、本明細書に記載の薬剤(例えば、ベンゾエート化合物とタンニン酸と抗CNS薬を含む組成物)を、別の生物学的活性成分(例えば異なる抗CNS薬)および非薬物療法(例えば手術)とさらに組み合わせた投与も包含しうる。
【0110】
ベンゾエート化合物とタンニン酸とを含む組成物と、追加の治療薬(例えば抗CNS薬)の任意の組み合わせを、標的疾患を治療するために、任意の順序で使用することができると理解すべきである。本明細書に記載の組み合わせは、限定されないが、NMDA受容体機能を増加する、基本的行動機能を改善する、認知機能を強化する、および/または標的疾患に関連する少なくとも1つの症状を軽減するという有効性、あるいは該組成物の別の薬剤の副作用を緩和するという有効性を含む、多数の因子に基づいて選択することができる、例えば、本明細書中に記載の併用療法は、該組成物の個々の構成メンバーに関連する副作用、例えば追加の治療薬に関連する副作用を低減することができる。
〔一般的技術〕
【0111】
本発明の実施は、異なって指摘されない限り、当業者の技術の範囲内である分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学を使用する。そのような技術は、例えばCurrent protocol in Neuroscience (Developmental Editor: Eric Prager, Online ISBN: 9780471142300、DOI:10.1002/0471142301)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版(Sambrook他編、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M. J. Gait編、1984);Methods in Molecular Biology, Human Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis編、1988) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Fredney編、1987); Introduction to Cell and Tissue Culture (J.P. Mather & P.E. Roberts, 1998) Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A.Doyle, J.B. Griffiths & D.G. Newell編、1993-8) J. Wiley and Sons;Methods in Enzymology (Acedemic Press, Inc.);Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weier & C.C. Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller & M.P. Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel他編、1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction (Mullis他編、1994);Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan他編、1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley & Sons, 1999);Immunobiology (C.A. Janeway & P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: a practical approach (D. Catty編、IRL Press, 1988-1989);Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shephered & C. Dean編、Oxford University Press, 2000);Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow & D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti & J.D. Capra編、Harwood Academic Publishers, 1995)のような文献中に十分に説明されている。
【0112】
さらに詳述することなく、当業者は、上記説明に基づいて、本発明を最大限に利用できると思われる。従って、本明細書に提供される特定の実施形態は、単に例示であり、何であれ本開示の残部を限定するものではないと解釈すべきである。ここで引用する全ての刊行物は、本明細書に参照される目的や主題への参考として援用される。
【実施例
【0113】
本開示をより十分に理解できるようにするため、以下の実施例を与える。本願明細書に記載の実施例は、安息香酸ナトリウムとタンニン酸の組み合わせを含む組成物およびそれの使用を例示するために提供され、何であれその範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【0114】
実施例1: MK801で処置したマウスにおけるタンニン酸とベンゾエート化合物の組み合わせの救済/保護効果
【0115】
本実験の目的は、周知のNMDA受容体アンタゴニストであるMK801(Kovacic他、Oxid MedCell Longev, 3(1):13-22 [2010])により誘発されるCNS疾患の症状を有するマウスモデルを用いて、そのようなCNS疾患の症状を緩和することに関する安息香酸ナトリウムとタンニン酸を含む組成物の潜在的作用機序を評価することであった。MK801は、NMDA受容体機能低下を誘発することが知られており、従って、MK801と、安息香酸ナトリウムおよび/またはタンニン酸を含む組成物を、それぞれ、行動試験(すなわちオープンフィールドおよびプレパルス抑制)の前に腹腔内(i.p.)注射によりまたは経口経路によりマウスに投与した。
【0116】
MK801により誘発されるNMDA受容体機能低下は、常同行動、無快感症、学習および記憶障害、作業記憶障害および感覚機能の異常といった中枢神経系疾患の症状を発症する(Furuya他、Eur J Pharmacol, 364(2-3):133-140 [1999]; McLamb他、Pharmacol Biochem Behav, 37(1): 41-45 [1990]; Vardigan他、Pharmacol Biochem Behav, 95(2): 223-229 [2010]; White他、Pharmacol Biochem Behav, 59(3): 613-617 [1998]; Wu他、Psychopharmacology (Berl), 177(3): 256-263 [2005])。このような症状は、注意欠陥多動性障害(ADHD)、統合失調症、精神異常、大うつ病性障害、アルツハイマー病、疼痛、うつ病、双極性障害、摂食障害、嗜癖障害、人格障害、チック障害、心的外傷後ストレス障害、不安障害、社会不安障害、パニック障害、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、脆弱X症候群(FXS)、強迫性障害(OCD)、学習障害、トゥレット症候群、軽度認知障害(MCI)、良性健忘症、 閉鎖性頭部外傷、認知症(例えば血管性認知症、前頭側頭型認知症、レヴィー小体型認知症、老人性認知症、アルツハイマー型軽度認知症)、パーキンソン病、ハンチングトン病、夜尿症、眼瞼けいれん、非てんかん発作、月経前症候群、および筋委縮性側索硬化症をはじめとする、様々なCNS障害に関連する。
典型的な実験デザインを図1に示す。
【0117】
〔材料および方法〕
動物と飼育条件
C57BL/6J雄マウスを、動物室において飼料と水を自由に摂取可能にしたポリスルホン換気ケージ(Alternative Design, AR, USA)内で群飼した(ケージあたり3~5匹のマウス)。コロニーを22±2℃の温度で12/12時間の明/暗サイクルに維持し、全ての行動試験は暗サイクル中に実行する。本試験で用いた全ての動物は、成体マウス(少なくとも2.5カ月齢)であった。
【0118】
薬剤投与
コホート1
マウスを下記の6グループに無作為に割り付けた。
グループ1:賦形剤+生理食塩水の対照
グループ2:賦形剤+MK801
グループ3:安息香酸ナトリウム(1000 mg/kg)+MK801
グループ4:安息香酸ナトリウム(200 mg/kg)+MK801
グループ5:安息香酸ナトリウム(200 mg/kg)+タンニン酸(30 mg/kg)+MK801
グループ6:安息香酸ナトリウム(200 mg/kg)+タンニン酸(60 mg/kg)+MK801。
【0119】
グループ2~6の各マウスは、行動試験の20分前に生理食塩水中に溶解したMK801の急性投与(0.1 mg/kg, 腹腔内)を受けた。グループ3~6の各マウスは、MK801投与の20分前に、強制経口投与により単独の安息香酸ナトリウムまたはタンニン酸(PBS中に溶解した、30または60 mg/kg)と組み合わせた安息香酸ナトリウムの急性投与を受けた。
【0120】
コホート2
マウスを下記の10グループに無作為に割り付けた。
グループ7:賦形剤+生理食塩水の対照
グループ8:賦形剤+MK801
グループ9:安息香酸ナトリウム(1000 mg/kg)+MK801
グループ10:安息香酸ナトリウム(200 mg/kg)+MK801
グループ11:安息香酸ナトリウム(600 mg/kg)+MK801
グループ12:安息香酸ナトリウム(200 mg/kg)+タンニン酸(30 mg/kg)+MK801
グループ13:安息香酸ナトリウム(200 mg/kg)+タンニン酸(60 mg/kg)+MK801
グループ14:安息香酸ナトリウム(600 mg/kg)+タンニン酸(10 mg/kg)+MK801
グループ15:安息香酸ナトリウム(600 mg/kg)+タンニン酸(30 mg/kg)+MK801
グループ16:安息香酸ナトリウム(600 mg/kg)+タンニン酸(60 mg/kg)+MK801。
【0121】
グループ8~16の各マウスは、行動試験の20分前に生理食塩水中に溶解したMK801の急性投与(0.1 mg/kg、腹腔内)を受けた。グループ9~16の各マウスは、MK801を投与する20分前に強制経口投与により単独の安息香酸ナトリウムまたはタンニン酸(PBS中に溶解した、10、30または60 mg/kg)と組み合わせた安息香酸ナトリウムの急性投与を受けた。
【0122】
コホート3
マウスを下記の5グループに無作為に割り付けた:
グループ17:PBS+生理食塩水の対照
グループ18:PBS+MK801
グループ19:タンニン酸_10 mg/kg+MK801
グループ20:タンニン酸_30 mg/kg+MK801
グループ21:タンニン酸_100 mg/kg+MK801。
【0123】
グループ18~21の各マウスは、行動試験の20分前に、生理食塩水に溶解したMK-801(NMDA受容体アンタゴニスト)の急性投与(0.1 mg/kg、腹腔内)を受けた。一方、グループ19~21の各マウスは、MK801投与の20分前に、強制経口投与によりタンニン酸(PBS中30%PEG400中に溶解した、10、30または100 mg/kg)の急性投与を受けた。
【0124】
MK801処置マウスに対する、安息香酸ナトリウムとタンニン酸の組み合わせ投与の効果の調査
本研究でのコホート1の全マウスは、下記のようなオープンフィールド試験により評価した。本研究でのコホート2と3のマウスは、下記のようなプレパルス抑制試験により評価した。
【0125】
オープンフィールド試験により決定される自発運動活性
オープンフィールド試験は、マウスとラットの両方における、新たに誘発される探索行動と一般活動性の共通の測定法である。この研究では、マウスを50~65ルクスの光強度下でプレキシグラス・ケージ(37.5 cm×21.5 cm×18 cm)中に入れた。それらのマウスの自発運動活性を、エソビジョン(商標)(EthoVision)ビデオ・トラッキングシステム(Noldus Information Technology社製、オランダ)を用いて60分間測定した。自発運動活性の指標として、各マウスの走行距離を測定した。それは多動性(過活動)を発生させ、多動性は非限定的に、統合失調症、双極性障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、トゥレット症候群、自閉症スペクトラム障害、脆弱X症候群、パーキンソン病、レヴィー小体型認知症および老人性認知症をはじめとする動物モデルとして頻繁に適用される(Rubia他、2010; Sheppard & Bradshaw,1999; Bent他、2014; Powell & Miyakawa, 2006; Nestler & Hyman,2010; Buben’kova’-Valesova他、2008; Gobira他、2013; Lai他、2014; Maio他、2014; Sontag他、2010; Ding他、2014; Walitza他、2007; Finestone他、1982; Golimstok他、2011参照)。
【0126】
プレパルス抑制試験により決定される感覚運動機能
事前注意処理は、無意識でかつ迅速であり、自覚している意識の外で働く傾向がある。一方で、意図的注意処理は、限られたリソースを有し、より多くの労作を必要とし、かつよりゆっくりと作動する。事前注意処理の一般的な尺度は、プレパルス抑制である。それの欠如がヒト症状と同様な様式で現れるため、このパラダイムは、非限定的に統合失調症、大うつ病性障害、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、チック障害、強迫性障害、トゥレット症候群、眼瞼けいれん、心的外傷後ストレス障害、パニック障害、アスペルガー障害、アルツハイマー病、アルツハイマー型の軽度認知症、レヴィー小体型認知症、ハンチントン病、人格障害、夜尿症、および非てんかん発作をはじめとする幾つかの精神病のマウスモデルにおいて検討されている(McAlonan他、2002; Braff他、2001; Giakoumaki他、2007; Ueki他、2006; Perriol他、2005; Ludewig他、2002; Castellanos他、1996; Cadenhead他、2000; Matsuo他、2017; Lai他、2014; McCool他、2003; Arguello & Gogos, 2006)。
【0127】
プレパルス抑制は、SR-LAB驚愕装置(San Diego Instruments社製、San Diego, CA, USA)を使用した感覚運動ゲート機能の指数として使用した。驚愕刺激は、40 ms(ミリ秒)、120 dB(デシベル)の白色雑音バーストであった。プレパルス(pp)+パルス試行では、82dB(pp10)または90 dB(pp18)の20 ms白色雑音プレパルス刺激を、40 ms, 120 dBパルスの前に100 ms与えた。試験は疑似ランダムに提供され、72 dBのバックグラウンド雑音のもと、平均して15秒(10~20秒の間で変化する)の試行間隔により隔てられた。プレパルス抑制率は次の式により評価した:
【0128】
%PPI=100×[(PAスコア)-(pp-Pスコア)] /(PAスコア)、
ここでPAスコアは中央ブロックのPA値の平均であった。
【0129】
〔結果〕
MK801処置マウスの自発運動に対する安息香酸ナトリウムとタンニン酸の組み合わせの効果
この実施例では、MK801で誘発された過剰自発運動を有するコホート1のマウスの全身運動性に対する安息香酸ナトリウムとタンニン酸の組み合わせの効果を調べるためにオープンフィールド試験を使用した。1000 mg/kgの用量での安息香酸ナトリウムの投与は、200 mg/kgより高いMK801で誘発された過剰自発運動からマウスを救済/保護した(図2)。60 mg/kgの用量のタンニン酸と組み合わせた200 mg/kgの用量での安息香酸ナトリウムの投与は、単独での1000 mg/kgの安息香酸ナトリウムと同様な、顕著な救済効果を生じた(図2)。従って、このデータは、タンニン酸がマウスにおけるMK801誘発過剰自発運動に対する安息香酸ナトリウムの救済/保護効果を増強することを立証した。
【0130】
MK801処置マウスの感覚運動ゲート機能に対する安息香酸ナトリウムとタンニン酸の組み合わせの効果
この実施例では、プレパルス抑制試験を用いて、コホート2のMK801処置マウスの感覚運動機能に対する安息香酸ナトリウムとタンニン酸の組み合わせの効果を調べた。単独での200 mg/kgまたは600 mg/kgの安息香酸ナトリウムは、MK801で破壊されたPPIを救済することに対してあまり効果を示さなかった。単独の1000 mg/kg安息香酸ナトリウムで処置した群に比較すると、安息香酸ナトリウム200 mg/kg群および600 mg/kg群について30 mg/kg、60mg/kgのタンニン酸と10、30、60 mg/kgと増加する用量のタンニン酸はそれぞれ、有意に高い割合のプレパルス抑制を示した(図3)。同様の結果が82 dBと90 dBのプレパルス強度で得られた(図3)。また、タンニン酸単独ではMK801誘発性過剰運動の救出に対してほとんどまたは全く効果を示さないことが観察された。以下の検討を参照のこと。従って、このデータは、タンニン酸が、マウスにおいてMK801で誘発されたプレパルス抑制欠損に対する安息香酸ナトリウムの救済/保護効果を用量依存的に増強することを示した。
【0131】
MK801処置マウスの感覚運動ゲート機能に対するタンニン酸の効果
この実施例では、プレパルス抑制試験を用いてコホート3のMK801処置マウスの感覚運動ゲート機能に対するタンニン酸の効果を調べた。10、30、100 mg/kgのタンニン酸処置は、MK801破壊PPIに対してほとんどまたは全く効果を示さなかった。82 dBと90 dBのプレパルス強度で同様な結果が得られた(図4)。従って、該データは、タンニン酸がマウスにおけるMK801誘発性プレパルス抑制欠損に対して救済/保護効果を持たないことを証明した。
【0132】
〔同等物および範囲〕
特許請求の範囲では、「a」、「an」および「the」のような冠詞は、異なって指摘されるかまたは文脈から違った風に明らかでない限り、1または複数を意味する。1つの群の中の1つ以上のメンバー間に「または」を含む請求項または記載は、異なって指摘されるかまたは文脈から違った風に明らかでない限り、その群の1つ、複数または全部のメンバーが、ある所定の製品または製法(プロセス)において実在し、使用されまたは他の形で関連するならば、その要件が成立すると見なされる。本発明は、その群のメンバーの複数または全部が、或る所定の製品または製法において実在し、使用され、または他の形で関連する実施形態を包含する。
【0133】
さらに、本発明は、列挙された1または複数の請求項からの1つ以上の限定、要素、節および記述用語が別の請求項中に導入されているような全ての変形、組み合わせおよび順列を包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基礎請求項に従属する任意の他の請求項に見つかる1以上の限定を含むように改変することができる。構成要素がリストとして提示されている場合、例えば、マーカッシュ群形式で提供されている場合、該要素の各サブグループも開示され、任意の要素(単数または複数)を各グループから除去することができる。一般に、本発明、または本発明の局面が、特定の要素および/または特徴を含むとして言及される場合、本発明の或る実施形態または本発明の或る局面がそのような要素および/または特徴から成るか、または本質的に成ると理解すべきである。簡便化の目的で、それらの実施形態は、明細書中ではこの言葉で具体的に記述されていない。用語「含む」と「含有する」はオープンであり、追加の要素や工程の包含を許容するものであることも留意すること。範囲が与えられている場合、端点も含まれる。更に、異なって指摘されるかまたは当業者の理解と文脈から別な風に明らかでない限り、範囲として表現される数値は、文脈が明白に異なるように指示しない限り、本発明の異なる実施形態に記載の範囲内の任意の特定値、またはその範囲の下限の単位の10分の1までの下位範囲をとることができる。
【0134】
本出願は、様々な交付済み特許、公開された特許出願、学術論文、および他の出版物を指し、そのすべてが参考として本明細書中に組み込まれる。組み込まれた参考文献のいずれかと本明細書との間に矛盾がある場合、本明細書が優先するものとする。加えて、先行技術内に入る本発明の任意の特定の実施形態は、請求項のいずれか一つまたは複数から除外してもよい。そのような実施形態は当業者に既知であるとみなされるので、たとえそれらの除外が明示的に本明細書に記載されていない場合であっても、除外することが可能である。本発明の任意の特定の実施形態は、先行技術の存在に関連するかどうかにかかわらず、何らかの理由で任意の請求項から除外することができる。
【0135】
当業者は、単なる日常的な実験を使って、本明細書に記載の特定の実施形態に対する多数の等価物を認識または確かめることができよう。明細書に記載の本実施形態の範囲は、上記の詳細な説明に限定されるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載の通りである。当業者は、添付の請求の範囲に限定されるような本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本記載に対し様々な変更と改良を遂行できることを十分理解するだろう。
図1
図2
図3
図4