(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】高周波電極構造及び高周波誘電加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/54 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
H05B6/54
(21)【出願番号】P 2020071606
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390024394
【氏名又は名称】山本ビニター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰司
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】実公昭43-017729(JP,Y1)
【文献】特開2012-099263(JP,A)
【文献】特開2006-269197(JP,A)
【文献】特開2004-55199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の外周を対向方向から囲繞する半割れの高周波電極構造であって、
前記対向方向に同一寸法を有し、かつ対向する面にそれぞれ接触面が形成されると共に前記両接触面の一部の対向部位に前記管の周面の形状に一致した凹面が分担して形成された第1の分割電極部と第2の分割電極部
とを備え、
前記第1の分割電極部は、前記対向方向における中央側の第1電極体と、外側の絶縁体とを備え
、
前記第2の分割電極部は、前記対向方向における中央側の第2電極体と、外側の導電体とを備え、
前記第2電極体は、前記第1電極体と前記対向方向に同一寸法であることを特徴とする高周波電極構造。
【請求項2】
前記第
1の分割電極部
及び前記第2の分割電極部は、それぞれ直方体形状である請求項1に記載の高周波電極構造。
【請求項3】
前記第1の分割電極部及び前記第2の分割電極部
の少なくとも一方は、他方に対して位置決め用の係合部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波電極構造。
【請求項4】
前記
係合部は、前記管の中心に対して点対称となる位置に形成されていることを特徴とする請求
項3に記載の高周波電極構造。
【請求項5】
管の外周を対向方向から囲繞する半割れの高周波電極構造と、
前記高周波電極構造を前記対向方向の両外側から圧接する、高周波電力の通電用の一対の金属板とを備え、
前記高周波電極構造は、前記対向方向に同一寸法を有し、かつ対向する面にそれぞれ接触面が形成されると共に前記両接触面の一部の対向部位に前記管の周面の形状に一致した凹面が分担して形成された第1の分割電極部と第2の分割電極部とを備え、
前記第1の分割電極部は、前記対向方向における中央側の第1電極体と、外側の絶縁体とを備えると共に、
前記高周波電極構造は、前記一対の金属板間で、前記管の軸方向に対して所定間隔を置いて配置され、かつ前記高周波電極構造の互いの隣接する配置位置において前記第1の分割電極部と前記第2の分割電極部とが前記管に対して交互に逆位置となるように配置された高周波
誘電加熱装置。
【請求項6】
前記第2の分割電極部は、前記対向方向における中央側の第2電極体と、外側の導電体とを備え、
前記第2電極体は、前記第1電極体と前記対向方向に同一寸法である請求項5に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項7】
前記一対の金属板は、一方が接地されており、
前記管の軸方向の両側には、前記第
2の分割電極部が前記一方の金属板と接するように配置された請求項
5に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項8】
前記一対の金属板を開閉させる機構部を備えた請求項7に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項9】
前記管の軸方向下流端から搬出される流動性材を接地させる接地回路を備えた請求項
5~8のいずれかに記載の高周波誘電加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内を移送される流動性材を誘電加熱する高周波電極構造及び高周波誘電加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒体内を移送される流動性を有する混合食品にジュール熱加熱及びマイクロ波照射を施して内部加熱を行う加工食品製造装置が知られている(特許文献1~5)。また、加熱をより均一にするべく、筒体に対し、その軸方向に所定間隔を置いてリング状電極を周設し、かつ隣同士の電位が交互に逆極性となるように接続して、筒体内に高周波の変位電流を生成して誘電加熱を行う高周波誘電加熱装置が提案されている(特許文献6,7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-161261号公報
【文献】特開2013-226083号公報
【文献】特開2002-45110号公報
【文献】特開2011-39号公報
【文献】特許第5113934号公報
【文献】特開2001-148282号公報
【文献】特開2004-55199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献6,7に記載のリング状電極は、長尺の筒体に単に複数外嵌されたもので、高周波電力の供給は、正負側の給電線を交互にリング状電極に接続するようにして実現している。また、サニタリー性の観点から使用後には毎回、筒体や筒体周りの洗浄作業を要し、またリング状電極のメンテナンスや交換作業においても、長尺の筒体からリング状電極をすべて抜き差しするなどしなければならず、手間が掛かって作業性を低下させている。さらに、金属材であるリング状電極の重量を全て筒体が受け持つため、筒体側の強度上、またリング状電極のサイズ(重量)、配列個数に制約がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、半割れ構造型の高周波電極で管の外周を囲繞し、かつ1種類の半割れ構造で両方が兼用可能な高周波電極構造及び高周波誘電加熱装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る高周波電極構造は、管の外周を対向方向から囲繞する半割れの高周波電極構造であって、前記対向方向に同一寸法を有し、かつ対向する面にそれぞれ接触面が形成されると共に前記両接触面の一部の対向部位に前記管の周面の形状に一致した凹面が分担して形成された第1の分割電極部と第2の分割電極部を備え、前記第1の分割電極部は、前記対向方向における中央側の第1電極体と、外側の絶縁体とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、高周波電極構造は、加熱対象物移送用の管の外周を対向方向から囲繞する半割れ構造を有する。高周波電極構造は、管を挟んで正対する第1の分割電極部と第2の分割電極部とを備え、それぞれ対向方向の長さ寸法が同一で、かつ対向する面に管の周面形状に一致した凹面が分担して形成されている。第1の分割電極部は、対向方向における中央側の第1電極体と、外側の絶縁体とを備える。従って、第1の分割電極部と第2の分割電極部とは管を挟む位置を互いに入れ替えて適用可能となる。そして、入れ替えを行うことで、共通の電力供給構造に対して、正負両極性の電位の供給を受けることが可能となる。
【0008】
また、前記第2の分割電極部は、前記対向方向における中央側の第2電極体と、外側の導電体とを備え、前記第2電極体は、前記第1電極体と前記対向方向に同一寸法である。この構成によれば、第1、第2電極体を、管を挟む位置を互いに入れ替えて適用でき、さらに凹面が点対称、線対称の形状であれば、1種類で兼用可能となり、部品種類の点数が低減できる。
【0009】
また、前記第1の分割電極部及び前記第2の分割電極部は、それぞれ直方体形状である。この構成によれば、構造が簡易で、かつそれぞれの組み付け作業が容易となる。従って、管の軸方向への高周波電極構造の配置、ピッチの調整作業が容易に行える。
【0010】
また、前記第1の分割電極部及び前記第2の分割電極部の少なくとも一方は、他方に対して位置決め用の係合部が形成されていることを有するものである。この構成によれば、組み付けた状態での位置ずれが防止される。
【0011】
また、前記係合部は、前記管の中心に対して点対称となる位置に形成されていることを特徴とする。この構成によれば、管を挟む位置を互いに入れ替えて適用でき、1種類で兼用可能となり、部品種類の点数が低減できる。
【0012】
本発明は、請求項1~5のいずれかに記載の高周波電極構造を対向方向の両外側から圧接する、高周波電力の通電用の一対の金属板を備え、前記高周波電極構造は、前記一対の金属板間で、前記管の軸方向に対して所定間隔を置いて配置され、かつ前記高周波電極構造の互いの隣接する配置位置において前記第1の分割電極部と前記第2の分割電極部とが前記管に対して交互に逆位置となるように配置されたものである。
【0013】
本発明によれば、高周波電力の通電用の一対の金属板の間に、第1の分割電極部と第2の分割電極部を入れ替えて配置すれば済み、また、通電用の構成を簡易で、かつ高周波電極構造の配置ピッチ、個数などの変更に応じて配線構造が影響されない。
【0014】
また、前記一対の金属板は、一方が接地されており、前記管の軸方向の両側には、前記第2の分割電極部が前記一方の金属板と接するように配置されたものである。この構成によれば、管の軸方向の両側でアース電位とされるので、管内を移送される加熱対象物が管6に対して搬入搬出される部位でアースに接地される。従って、加熱対象物を経由して高周波電流が管6の上下流側に漏洩することが効果的に抑制される。なお、この構成によれば、高周波電極構造の配置個数は奇数となる。
【0015】
また、本発明は、前記一対の金属板を開閉させる機構部を備えたものである。この構成によれば、清掃乃至洗浄時の作業、またメンテナンスや交換時の作業が容易となる。
【0016】
また、本発明は、前記管の軸方向下流端から搬出される流動性材を接地させる接地回路を備えたものである。この構成によれば、作業者が不意に電気的な刺激を受けることが解消される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、1種類の半割れ構造で両方を兼用可能とする簡易な高周波電極構造及びそれを用いた高周波誘電加熱装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る加熱装置の一実施形態を示す概略正面図である。
【
図2】
図1に示す高周波電極構造が配設された状態の図で、(A)は正面視の縦断面図、(B)はB-B矢視図である。
【
図3】互いに隣接する高周波電極構造間に生じる変位電流(高周波電流)を説明する図である。
【
図5】高周波電極構造の係合部を示す側面図で、(A)は係合部が上部電極体及び下部電極体の一方に形成されている場合、(B)は係合部が上部電極体及び下部電極体の両方に点対称で形成されている場合である。
【
図6】上部電極体と下部電極体の接触面の一部の対向位置に形成された凹面の側面図で、(A)は対称でない形状、(B)(C)は点対称の形状、(D)は線対称の形状の場合である。
【
図7】高周波電極構造の位置決め用治具を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明に係る加熱装置の一実施形態を示す概略正面図である。加熱装置1は、流動材、本実施形態ではハム、ウインナー又はソーセージなどの製造工程においてミンチ状に調製された食肉材料、あるいは魚肉のスリ身などをペースト状又はスラリー状の流動性食材にし、さらに高周波を印加して加熱調理や殺菌処理を施すものである。加熱装置1は、流動性食材100を送り出す送出部2と、送出部2から送り出され、管6内を移送中の流動性食材100に対して高周波電力を印加して誘電加熱する高周波誘電加熱装置3と、加熱済みの食材100aに必要に応じて所定の加工処理を施すための加工処理部7とを備えている。
【0020】
送出部2は、所定の高さを有する基台20、基台20上に配置されるホッパ21、押し出し部22、及び駆動部23を備えている。ホッパ21は、漏斗状で、上方から投入された流動性食材100を下端の小径の排出口から下方に流下させるものである。押し出し部22は、横向きの筒形状を有し、水平方向に延設されて先端が管6に連通されている。押し出し部22の筒内には軸心に沿ってスクリュー等のスパイラル状の移送構造が内装されている。駆動部23は、モータ等で構成され、スクリューを回転させてホッパ21の排出口から流下された流動性食材100を押し出し部22の筒内から管6に圧送する。管6は、テフロン(登録商標)、セラミック材料、誘電損失の少ないプラスチック材料であるPP、PE、PA、PC、PPS、PEEK等の絶縁材であり、本実施形態では円形の断面形状を有している。なお、管6は、径寸法や断面形状の異なる複数種類が必要に応じて準備されており、加熱対象物等に応じて適宜の種類の管6が採用され、装置1に交換可能に装着される。
【0021】
高周波誘電加熱装置3は、例えば直方体形状の筐体30を備え、その内部に水平方向に管6が貫通配置されている。高周波誘電加熱装置3は、管6内を移送中の流動性食材100に対して誘電加熱処理を施して、流動性食材100を蛋白変性させて固形化させる。高周波誘電加熱装置3は、筐体30の内部に高周波回路部31、互いに対向する一対の上下金属板32,33、管6を上下から挟み込む(囲繞する)高周波電極構造4、及び上金属板32を昇降させる昇降機構5を備えている。高周波誘電加熱装置3には、筐体30の外部適所であって管6の入、出口部に対応する位置に温度センサ35,36配置され、管6内を移送中の流動性食材100の温度を計測する。
【0022】
高周波回路部31は、公知の回路構成が採用可能であり、図略の電源部、高周波発振器及び整合回路を備え、温度センサ35,36の計測内容、例えば計測温度差などに応じて制御部によって出力調整処理が実行される。高周波発振周波数は、1~100MHzが採用可能であり、10~40MHz(例えば、13.56MHz、27.12MHz、40.68MHz)がより好ましい。正負の電力給電線311は、高周波電力の出力端子と上下金属板32,33とを接続するもので、この正負の電力給電線311を介して上下金属板32,33間に高周波電力が供給される。なお、本実施形態では、下金属板33が接地されている。
【0023】
昇降機構5は、上金属板32の上方で、テフロン(登録商標)等からなる棒状の絶縁体52,52を介して上金属板32と平行に組み立てられた金属製の昇降板51と、昇降板51の略中央の上面から上方に立設され、上半部適所にラックギアが形成されたラック部材53と、筐体30に固定された支持部54に取り付けられて、ラック部材53に噛合するピニオンギアを備えたモータ等の昇降駆動部55とを備えている。昇降駆動部55を回転駆動させることで、ピニオンギア及びラックギアを介して上金属板32が昇降し、下金属板33との間が開閉される。上金属板32が上昇したときは、高周波電極構造4のピッチを適宜に変更可能となる。また、上金属板32が降下したときは、下金属板33との間で高周波電極構造4を圧接状態で位置固定でき、かつ高周波電力を供給することができる。なお、昇降機構としては、ラック・ピニオンの態様の他、駆動力が伝達可能な種々の駆動力伝達機構が採用可能である。
【0024】
高周波電極構造4は、上下金属板32,33間で、かつ管6の軸方向(X方向)に所定間隔を置いて複数個所に配置される。なお、高周波電極構造4の詳細は、
図2~
図4を用いて後述する。
【0025】
加工処理部7は、公知乃至既存の構成が必要に応じて採用され、作業台となる基台70等を備え、さらに管6の下流端部61から練り出される食材100aを受け取るための、移送速度と同一速度で周回するベルト周回部71が配置されている。加工処理部7は、下流端部61から搬出される固形化された状態の食材100aを、例えば所定寸法ずつ切断し、包装するなどの加工処理を施す。なお、下流端部61から搬出される固形化状態の食材100aには、高周波の印加に伴って生じる変位電流などによって、食材100aに触れる作業者が不意に刺激を受けることがないように、例えば下流端部61を金属製で構成し、練り出し中の食材100aを下流端部61からアース回路(アース線など)62を経てアース電位に落とすようにしている。あるいは、練り出し中の食材100aに直接接する位置に導電性の接片を配置し、アース回路62を経て接地する態様でもよい。なお、管6の上流側にもアース回路62と同様のアース回路を配置することが好ましい。配置位置は、例えば管6の入口近傍、又は押し出し部22の内部適所、ホッパ21の下部適所でよく、これらの位置に、アースに接続された導電性の切片を配置した構成とすることが好ましい。切片は、線状でも面状(環状含む)でもよい。
【0026】
図2は、
図1に示す高周波電極構造4が配設された状態の図で、(A)は正面視の縦断面図、(B)はB-B矢視図である。
図3は、互いに隣接する高周波電極構造4間に生じる変位電流を説明する図である。
図4は、高周波電極構造4の分解斜視図である。
【0027】
図2に示すように、本実施形態では、管6は、上下金属板32,33の上下方向の中間となる位置で水平に配設されている。
【0028】
高周波電極構造4は、管6の軸方向Xにピッチpで複数配置されている。高周波電極構造4の配置数及びピッチpは、加熱対象物の種類や加熱条件等によって設定される。各高周波電極構造4は、管6を両側から、ここでは上下方向から挟む半割れの上下部分割電極部41,42で構成されている。
【0029】
上下部分割電極部41,42は、上下金属板32,33間で正対(対向)して配置されている。上部分割電極部41は、1個の導電体で構成されてもよいが、本実施形態では中心側(管6側)の上部電極体411と外側(上金属板32側)の導電体412とで構成されている。下部分割電極部42は、中心側(管6側)の下部電極体421と外側(下金属板33側)の絶縁体422とで構成されている。上下部分割電極部41,42は、対向方向に同一長さ寸法を有する。上部電極体411、導電体412及び下部電極体421は、例えばアルミニウム製でもよく、絶縁体422はテフロン(登録商標)製でもよい。
【0030】
上部電極体411、導電体412、下部電極体421及び絶縁体422は、本実施形態では簡易形状の一例して、いずれも直方体形状を有するものとしている。上部電極体411と下部電極体421とは、対向方向に同一長さ寸法を有し、導電体412と絶縁体422とは上下方向に同一長さ寸法を有する。
【0031】
なお、
図4に示す上部電極体411、導電体412、下部電極体421及び絶縁体422は、対向方向の他、管6の軸方向Xに対して、また前後方向Yに対して各々同一長さ寸法としてもよい。
【0032】
図2(A)に示すように、管6の軸方向Xに配設された各高周波電極構造4は、交互に上下逆向きに配置されている。例えば、
図2(A)の右端から2番目の高周波電極構造4は、上金属板32から下金属板33に向けて導電体412、上部電極体411、下部電極体421、絶縁体422の順で配置され、一方、右端(すなわち隣)の高周波電極構造4は、逆に下金属板33から上金属板32に向けて導電体412、上部電極体411、下部電極体421、絶縁体422の順で配置されている。従って、上金属板32に正電位が、下金属板33に負電位が印加されたタイミングでは、
図2(A)の右端から2番目の高周波電極構造4は、正電位にある上金属板32から導電体412を介して上部電極体411及び下部電極体421は正電位となり、右端(すなわち隣)の高周波電極構造4は、負電位にある下金属板33から導電体412を介して上部電極体411及び下部電極体421が負電位となる。このように、給電側の回路(上下金属板32,33)を一様な構造としながら、管6の軸方向Xに交互に逆極性となる電極構造が形成できる。
【0033】
その結果、
図3に示すように、正電位にある右側の高周波電極構造4から負電位にある中間の(左隣の)高周波電極構造4に向かって変位電流ELが生じている。また、このとき中間の高周波電極構造4の左隣の(すなわち
図3の左側の)高周波電極構造4は、上部電極体411及び下部電極体421が正電位となるから、中間の高周波電極構造4に向かって変位電流ELが生じている。そして、管6が上部電極体411と下部電極体421との中間に位置しているため、変位電流ELは主に管6の内部を軸方向に沿って交互に逆向きに流れ、それによって移送中の流動性食材100に対する連続加熱が効率的かつより均一に行われる。なお、管6の軸方向Xに対する高周波電極構造4の正負電位に対する交互の配列は、筐体30の入出口部で負電位となる向きで配置し(例えば
図2(A)参照)、全体で3個、5個(例えば
図2(A)参照)、…などのように奇数個設置されることが好ましい。管6の軸方向Xの両側、すなわち管6の入出口部がアース電位とされるので、管6内を移送される流動性食材100が管6に出入りする際にアースに接地される。従って、導電性を有する流動性食材100を経由して高周波電流が管6の上下流側に漏洩することが抑制される。
【0034】
図2(B)、
図4に示すように、対向する上部電極体411と下部電極体421とは、互いの先端側の接触面4110と接触面4210とで接触し、その接触面4110,4210の一部の対向位置に、管6の外周に等しい形状を上下で半割れ状に2分割した凹面4111,4211が形成されている。本実施形態では、凹面4111,4211はそれぞれ半円の断面形状を有する。
【0035】
以上によれば、上下部分割電極部41,42は、上下方向の長さ寸法が等しく、従って、圧接中の金属板32,33間の中間位置に管6が位置するような場合に、上下部分割電極部41,42の上下を点対称(かつ線対称)のように逆にしても管6を中間で囲繞することができる。
【0036】
また、
図4に示すように、本実施形態では、接触面4110,4210には、所定寸法だけ離れた2つの半円である凹面4111,4211が並列に形成されている。これにより、管6が2本並列配置された態様に適用可能となる。なお、管6が1本の場合、3本乃至それ以上の場合には、同様にして同一数の凹面4111,4211を形成すればよい。
【0037】
さらに、上部電極体411を導電体412と別体で構成する態様では、上部電極体411と下部電極体421の上下方向の長さ寸法が一致することで、両者は、1種類で構成して兼用が可能となるから、部品種類の点数が低減される。
【0038】
図5は、高周波電極構造の係合部を示す側面図で、(A)は係合部が上部電極体及び下部電極体の一方に形成されている場合、(B)は係合部が上部電極体及び下部電極体の両方に点対称で形成されている場合である。
図5(A)では、上部電極体411は、
図5の左右方向(Y方向)の寸法が下部電極体421に比して大きく、かつ両端の幅広部分の接触面4110から方形状の凸部4110aが突出形成されている。この凸部4110aは、下部電極体421の左右方向Yの両端に嵌合し、それによって上部電極体411と下部電極体421との左右方向Yの位置関係が維持される。
【0039】
図5(B)では、上部電極体411の左右一方側、ここでは左端に方形状の凸部4110aが突出形成されている。また、下部電極体421の左右一方側、ここでは右端に方形状の凸部4210aが突出形成されている。凸部4110a,4210aが互いに相手側の下部電極体421及び上部電極体411に嵌合することで、両者の左右方向の位置関係が維持される。また、
図5(B)では、凸部4110a,4210aが上部電極体411、下部電極体421に対して点対称となる位置関係に形成されているため、兼用が可能となる。
【0040】
図6は、上部電極体と下部電極体の接触面の一部の対向位置に形成された凹面の側面図で、(A)は対称でない形状、(B)(C)は点対称の形状、(D)は線対称の形状の場合である。上部電極体411と下部電極体421の凹面4111,4211で囲繞される形状は、管6の断面形状に一致する。管6の断面形状が、食材100aの最終商品の形状となる。
【0041】
図6(A)では、上部電極体411aの凹面4111aは、所定の曲率を有する曲面であり、下部電極体421aの凹面4211aは、方形状であり、いわゆる蒲鉾型の形状に対応する。
図6(B)では、上部電極体411bの凹面4111bは、方形状であり、下部電極体421bの凹面4211bは、同一の方形状であり、全体として長方形(正方形含む)となる。
図6(C)では、上部電極体411cの凹面4111cは、スター型の半割れ部分であり、下部電極体421cの凹面4211cは、スター型の残りの半割れ部分である。このように、上部電極体411及び下部電極体421の凹面4111,4211を互いに点対称の形状に形成することで、上下側の部材の兼用が図れる。
【0042】
図6(D)では、上部電極体411dの凹面4111dは、例えば正三角形(あるいは二等辺三角形)の半割れの直角三角形の部分であり、下部電極体421dの凹面4211dは、その残りの直角三角形である。凹面4111d及び凹面4211dは、接触面4110,4210に対して線対称であり、かつ上部電極体411d及び下部電極体421dのY方向の中心に形成されている。このように、接触面4110,4210の中心に凹面4111d,4211dが線対称に形成されている場合であれば、上下一方を、例えば上部電極体411dを中心周りに(すなわち紙面上で)180°回転させて下側に位置させ、次にX方向に反転させると、元の下側の下部電極体421と同姿勢に再現できるため、上下用を1種類で兼用可能となる。
【0043】
図7は、高周波電極構造の位置決め用治具を示す部分斜視図である。位置決め用治具34は、加熱対象物の種類や加熱条件などによって、形状の異なる複数の種類の高周波電極構造4を適宜交換して使用可能にするものである。
【0044】
位置決め用治具34は、下金属板33の上面に載置される一対の位置決め板341と、位置決め板341に穿設された、Y方向に長い長孔に嵌合される締結具342とを備え、さらに、図では見えていないが、下金属板33の上面に穿設された雌ねじを含む。締結具342は、下部に、下金属板33の雌ねじと噛合する雌ねじが形成されており、位置決め板341を挟んで締結具342を締め付けることで、下金属板33に対して位置決め板341のY方向位置が固定される。位置決めは、視認可能な目盛331を参照するなどして設定できる。また、X方向の目盛332によって、高周波電極構造4のX方向での載置位置を指示するようにしてもよい。
【0045】
なお、位置決めのための前記構造は、1か所でもよいが、X方向に離間した2か所に設けられることが好ましい。また、位置決め板341は一方を固定型とし、他方のみでY方向に対するスライド調整を可能にする構造でもよい。そして、高周波電極構造4は、一対の位置決め板341の間に嵌め込まれて下金属板33と接触する。
【符号の説明】
【0046】
3 高周波誘電加熱装置
31 高周波回路部
32 上金属板
33 下金属板
4 高周波電極構造
41 上部分割電極部(第2の分割電極部)
411,411a~d 上部電極体(第2電極体)
412 導電体(導電体)
42 下部分割電極部(第1の分割電極部)
421,421a~d 下部電極体(第1電極体)
422 絶縁体
4110,4210 接触面
4111,4211,4111a~d、4211a~d 凹面
4110a、4210a 係合部
5 昇降機構
6 管
62 接地回路