(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】聴音装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20230106BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
H04R1/00 317
H04R1/10 104A
(21)【出願番号】P 2020153138
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】516040866
【氏名又は名称】BoCo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】謝 端明
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-117098(JP,A)
【文献】特開昭63-086997(JP,A)
【文献】特開2017-135446(JP,A)
【文献】特開2013-153530(JP,A)
【文献】特開2020-113890(JP,A)
【文献】特開2013-115800(JP,A)
【文献】特開2012-244515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00- 1/10
H04R 25/00-25/04
A61F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨伝導を利用した聴音装置であって、
基板とバッテリーとが収容される本体部と、音響電気信号を振動に変換して振動を出力する振動部と、前記振動部を利用者に押圧するための弾性部と、
を有し、
前記弾性部は、形状記憶合金製の管状の芯材と、前記芯材の内部に配置された電線とを有
し、
耳を表側と裏側から挟み込む一対の挟持体を有し、前記弾性部は、一対の前記挟持体同士を連結する連結部であり、
前記連結部によって、前記挟持体を耳に装着可能であり、
前記振動部は、一方の前記挟持体に収容され、前記本体部は、他方の前記挟持体に収容され、
前記一方の挟持体には、耳の表側または耳の裏側に接触して振動を伝達する伝達面が設けられ、
前記電線によって、前記他方の挟持体から前記一方の挟持体の内部の前記振動部へ電気信号が伝送されることを特徴とする聴音装置。
【請求項2】
前記連結部は、それぞれの前記挟持体を湾曲形状で連結し、湾曲形状の外周面側において、湾曲形状に沿ってタッチスイッチが配置され、前記タッチスイッチによって聴音装置の操作が可能であることを特徴とする請求項
1に記載の聴音装置。
【請求項3】
前記芯材の外周面の少なくとも一部が、樹脂で被覆されることを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の聴音装置。
【請求項4】
前記電線と前記振動部とは、コネクタ構造によって接続されることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれかに記載の聴音装置。
【請求項5】
前記弾性部は湾曲形状を有し、前記芯材の断面形状は、湾曲方向につぶれた偏平形状であることを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれかに記載の聴音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨に振動を与えることで音を認識させる骨伝導を利用した聴音装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、音楽や会話を聴く手段として、ヘッドホンやイヤホンなどのような装置(以下、聴音装置という。)が広く使用されてきている。このような聴音装置としては、空気伝導を利用したものと骨伝導を利用したものとがある。空気伝導を利用したものは、電気信号として入力された音源を空気の振動に変換して鼓膜に伝えて振動させ、鼓膜の振動が耳の奥の中耳を通って、脳に音の情報が伝達され認識される仕組みを利用している。
【0003】
一方、骨伝導を利用した聴音装置は、電気信号として入力された音響信号を機械的な振動に変換し、その振動を適切な位置から骨に与えて骨に振動を伝え、その振動により伝わる骨伝導音で音を認識させるものである。この骨伝導を利用した聴音装置は、ヘッドホンやイヤホンのように耳孔に挿入して使用する必要がなく、耳には周囲の音が遮蔽されることなく入ってくるので、装着していても安全である。また、鼓膜の振動を利用しないことから、難聴の人でも音を認識することができ、補聴器等への利用も進められている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような骨伝導を利用した聴音装置は、振動部を適切な位置に当接させることで聴音が可能となる。適切な位置としては、例えば、こめかみや乳様突起と呼ばれる部位が挙げられる。
【0006】
一方、効率よく骨伝導を利用するためには、ある程度の力で振動部を対象部位に押し付ける必要がある。例えば、ある程度の弾性力で対象部位を挟み込むことで、振動部を対象部位に押し付ける必要がある。しかし、聴音装置を脱着する際には、弾性部を変形させる必要があるため、変形によって弾性部が破損する恐れがある。特に、弾性部の内部に電線等が収容される場合には、弾性部に局所的な変形があると、内部の電線等の損傷の恐れがある。また、長期の利用によって、弾性部の弾性力が徐々に低下し、振動部の対象部への押圧力が低下する恐れがある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、装着性に優れる聴音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明は、骨伝導を利用した聴音装置であって、基板とバッテリーとが収容される本体部と、音響電気信号を振動に変換して振動を出力する振動部と、前記振動部を利用者に押圧するための弾性部と、を有し、前記弾性部は、形状記憶合金製の管状の芯材と、前記芯材の内部に配置された電線とを有し、耳を表側と裏側から挟み込む一対の挟持体を有し、前記弾性部は、一対の前記挟持体同士を連結する連結部であり、前記連結部によって、前記挟持体を耳に装着可能であり、前記振動部は、一方の前記挟持体に収容され、前記本体部は、他方の前記挟持体に収容され、前記一方の挟持体には、耳の表側または耳の裏側に接触して振動を伝達する伝達面が設けられ、前記電線によって、前記他方の挟持体から前記一方の挟持体の内部の前記振動部へ電気信号が伝送されることを特徴とする聴音装置である。
【0010】
前記連結部は、それぞれの前記挟持体を湾曲形状で連結し、湾曲形状の外周面側において、湾曲形状に沿ってタッチスイッチが配置され、前記タッチスイッチによって聴音装置の操作が可能であってもよい。
【0011】
前記芯材の外周面の少なくとも一部が、樹脂で被覆されてもよい。
【0012】
前記電線と前記振動部とは、コネクタ構造によって接続されてもよい。
【0013】
前記連結部は湾曲形状を有し、前記芯材の断面形状は、湾曲方向につぶれた偏平形状であってもよい。
【0014】
本発明によれば、振動部を利用者に押圧するための弾性部が、形状記憶合金で形成されるため、大きな変形があっても破損することがなく、また弾性力が低下することもない。また、電線等の保護管として、管状の形状記憶合金を用いるため、弾性部を大きく変形させても、局所的な変形がなく、内部の電線等を確実に保護することができる。
【0015】
また、弾性部が一対の挟持体を連結する連結部であり、挟持体によって耳介を表裏から挟み込むようにして聴音装置を取り付けることができれば、振動部を効率よく、耳介又は耳介近傍に当接させることができる。この際、振動部が収容される一方の挟持体と、振動部に電気信号を伝送し、バッテリー等を収容する他方の挟持体とが別々に構成されれば、振動部が収容される一方の挟持体をコンパクトにすることができ、挟持体の伝達面を効率よく耳介に接触させることができる。特に、一方の挟持体を耳介の表側に配置する場合でも、目立ちにくく見た目にも優れる。
【0016】
また、連結部が湾曲形状であり、湾曲形状の外周面側において、湾曲形状に沿ってタッチスイッチを配置すれば、タッチスイッチによって聴音装置の操作が可能となる。このため、聴音装置の操作が容易である。
【0017】
また、芯材の外周面の少なくとも一部を樹脂で被覆することで、芯材の破損を抑制することができる。
【0018】
また、電線と前記振動部とは、コネクタ構造によって接続されれば、聴音装置の組立が容易である。
【0019】
また、芯材の断面形状を偏平形状とすることで、連結部の変形が容易である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、装着性に優れる聴音装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】(a)は聴音装置1の側面図、(b)は聴音装置1の構成を示す図。
【
図3】(a)は、
図2(a)のD-D線断面図、(b)は、(a)の他の実施形態を示す図。
【
図5】利用者の耳介21に聴音装置1を装着した状態を示す概念図。
【
図6】(a)~(c)は、利用者の耳介21に対して、挟持体3aの配置を調整する状態を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、聴音装置1の斜視図、
図2(a)は聴音装置1の側面図(連結部5の湾曲形状を正面から見た図)、
図2(b)は、聴音装置1の構成を示す概念図である。骨伝導を利用する聴音装置1は、主に、挟持体3a、3b、連結部5、振動部7、基板9、バッテリー11等から構成される。本実施形態では、連結部5が、振動部7を利用者に押圧するための弾性部6となる。
【0023】
一対の挟持体3a、3bは、所定の間隔をあけて対向して配置され、弾性部6である連結部5で連結される。連結部5は、弾性変形が可能であり、挟持体3a、3bで耳介を挟み込んだ状態で聴音装置1を保持し、聴音装置1を耳に装着することができる。すなわち、挟持体3a、3bは耳介を表側と裏側から挟み込む部位である。なお、連結部5についての詳細は後述する。
【0024】
図2(b)に示すように、一方の挟持体3aの内部には、振動部7が収容される。振動部7は、電気信号として入力された音響信号を機械的な振動に変換して振動を出力する部位である。なお、音響電気信号を振動に変換するとは、外部から入力された音響電気信号を機械振動に変換することであり、例えば、音響電気信号によってダイヤフラム等を振動させることで、音響電気信号を骨に伝達する機械振動に変換する。なお、本発明においては、振動部7における振動方式は、特に限定されるものではなく、音響電気信号を機械振動に変換できればよく、圧電式、電磁式、超磁歪など、従来から用いられている方法を採用することができる。
【0025】
このようにして得られる振動は、挟持体3aの一方の面における伝達面15から利用者の骨に伝達される。本実施形態では、挟持体3aの伝達面15は、挟持体3bに対向する向きに形成される。なお、振動部7の振動が挟持体3aの筐体等に伝わることを抑制するため、所定の部位に制振材8を配置してもよい。
【0026】
ここで、挟持体3aから耳介の軟骨へ効率よく振動を伝達するためには、挟持体3aの伝達面15が耳介の小さなスペースに配置できるように、挟持体3aのサイズは、十分に小さいことが望ましい。例えば、10φ以下のサイズの振動子を用いることで、挟持体3aのサイズを小さくすることができるため望ましい。
【0027】
挟持体3aの伝達面15は、装着者の皮膚に直接触れるので、装着時に痛みや不快感を与えない素材で構成される。例えば、合成樹脂や合成ゴム等が挙げられ、これに限られないが、耳介に当接するものであるため、可撓性や柔軟性を有する素材で構成されることが好ましい。
【0028】
他方の挟持体3bは、外形が、略円柱形状の部位を有する。挟持体3bの略円柱形状の軸方向は、挟持体3aとの対向方向に対して略垂直に配置される。すなわち、挟持体3bの、挟持体3aとの対向面は、略円柱形状の側面であって、曲面で形成される。
【0029】
なお、略円柱形状の部位を有するとは、端面に平坦な面が無くてもよく、断面が略円形であって、断面に垂直な方向が長手方向(軸方向)となるような形状であればよい。また、連結部5の湾曲形状を正面から見た際に(挟持体3bの軸方向から見た際に)、挟持体3aとの対向面が曲面となるように形成されれば、略円柱形状でなくてもよい。
【0030】
挟持体3bには、振動部7を駆動する基板9とバッテリー11等が収容される。基板9は、振動部7を制御する制御部や、無線通信を行う通信部等を有する。例えば、通信部は、他の端末等からの音響電気信号を無線で受信する受信部を有し、無線(例えばBluetooth(登録商標))などの近距離無線通信を行うことができる。また、この他、聴音装置1の操作部や音楽情報を記憶する記憶部等を有していてもよい。
【0031】
また、図示したように、連結部5は、それぞれの挟持体3a、3bを湾曲形状で連結し、湾曲形状の外周面側において、湾曲形状に沿ってタッチスイッチ17が配置される。タッチスイッチ17は、例えばフレキシブルなフィルム状であり、基板9と電線13によって接続される。すなわち、タッチスイッチ17によって聴音装置1の操作が可能である。例えば、タッチスイッチ17に触れて一方にスライドさせることで、音量調整が可能であり、タップすることで電源のオン/オフの切り替えが可能である。
【0032】
なお、聴音装置1は、片耳で用いられてもよく、右耳用と左耳用のセットで用いられてもよい。この際、一対の聴音装置1の通信部同士は有線で接続されてもよく、または、近距離磁気誘導方式などの無線通信や、他の端末を介して無線で接続されてもよい。
【0033】
挟持体3b内部の基板9と、挟持体3a内部の振動部7とは、電線13で接続される。電線13は、連結部5に収容され、挟持体3bから挟持体3aの内部の振動部7へ電気信号が伝送される。すなわち、本発明では、挟持体3aには、基板9やバッテリー11が収容されず、挟持体3aとは別の挟持体3bに配置される。このため、挟持体3aが大型化することを抑制することができる。
【0034】
ここで、
図2(a)に示すように、それぞれの挟持体3a、3bを対向させて配置した状態において、挟持体3a、3bの対向方向(図中A)に垂直な、それぞれの挟持体3a、3bの中心線をB、Cとする。この際、連結部5は、それぞれの中心線B、Cに対して、中心線B、Cよりも互いに遠い側においてそれぞれの挟持体3a、3bと連結する。このようにすることで、聴音装置1のサイズを大きくすることなく、連結部5の長さを長くとることができる。このため、連結部5の変形能を高め、より大きな変形を可能とすることができる。
【0035】
次に、連結部5の詳細について説明する。
図3(a)は、
図2(a)のD-D線断面図である。連結部5は、挟持体3a、3bを湾曲形状で連結する。連結部5は、主に芯材23と保護部材25等から構成される。連結部5の外周面の少なくとも一部は、連結部5の芯材23と比較して軟質である保護部材25で構成される。芯材23は、管状であり、例えば、NiTi系の形状記憶合金製である。また、芯材23の断面形状は、湾曲方向につぶれた偏平形状である。このようにすることで、芯材23を湾曲方向に容易に変形させることができる。
【0036】
なお、連結部5の外周面の少なくとも一部が保護部材25で構成されるとは、例えば、芯材23の外周側にのみ保護部材25が配置されていてもよく、例えば、
図3(b)に示すように、芯材23の内周側は、保護部材25が配置されていなくてもよい。すなわち、保護部材25によって、芯材23が完全に覆われなくてもよい。なお、タッチスイッチ17と接続される電線13は、例えば、芯材23を貫通して内部に導入される。
【0037】
図4は、
図2(a)のE部の拡大断面図であり、連結部5と挟持体3bとの接続構造の拡大概略図である。なお、挟持体3aとの接続構造も同様の構造とすることができる。連結部5は、挟持体3bの筐体を貫通する。連結部5と挟持体3bとの間は、例えばシール31によって塞がれる。シール31は、例えば柔軟なシリコン樹脂等で形成される。
【0038】
連結部5の端部近傍において、挟持体3bと芯材23とはピン29によって固定される。すなわち、挟持体3bと芯材23とは完全に固定されて、連結部5の軸方向への移動が規制される。一方、挟持体3bと、少なくとも芯材23の外周側の保護部材25とは完全に固定されずに、挟持体3bに対して保護部材25の多少の動きが許容される。
【0039】
また、挟持体3a内の振動部7と接続される電線13や、タッチスイッチ17と接続される電線13の先端には、コネクタ33aが接続される。一方、基板9側の接続部にもコネクタ33bが接続される。すなわち、電線13と振動部7等とは、挟持体3bにおいて、コネクタ構造によって接続される。このように、コネクタ構造による接続とすることで、挟持体3bと、その他部位とを別々に製造して組み立てることができ、聴音装置1の組立が容易である。なお、挟持体3a側における電線13との接続部も、コネクタ構造としてもよい。
【0040】
次に、聴音装置1の使用方法について説明する。
図5は、利用者が聴音装置1を装着した状態を示す概念図(耳介21の一部断面図)である。なお、利用者の右耳に聴音装置1を装着した例について説明するが、左耳についても対称に装着可能である。
【0041】
本発明にかかる聴音装置1は、挟持体3a、3bを開き、挟持体3a、3bで耳介21を挟み込むようにして装着される。挟持体3a、3bを開いた際には、連結部5は大きく変形するが、連結部5が形状記憶合金製であるため、内部に電線13を配置しても、変形時の破損を抑制することができる。
【0042】
また、挟持体3a、3bを開く際に、連結部5の外周側は、軸方向に対する圧縮力がかかるが、保護部材25は、挟持体3a、3bに対して多少の動きが許容されるため、連結部5の変形時に、保護部材25が変形の妨げとなることがない。また、連結部5が弾性体であるため、連結部5の復元力によって挟持体3a、3bが耳介21に密着して装着された状態を保持することができる。
【0043】
聴音装置1を耳介21に装着すると、挟持体3aの伝達面15は、耳介21の表側(
図5の右側)に当接され、挟持体3bは耳介21の裏側に当接される。より詳細には、挟持体3aは、耳介21の前面の凹部(耳たぶより上方の凹部)に嵌るように装着され、伝達面15は、挟持体3bとの対向方向であって、耳介21の凹部の上面近傍に密着する。
【0044】
ここで、発明者は、鋭意研究の結果、頭蓋骨ではなく、耳介の軟骨に音を伝えることで、より小さなパワーで大きな音量を得ることができることを見出した。このため、本実施形態によれば、利用者が聴音装置1を装着した際のフィット感を得ることができ、伝達面15からの振動を効率よく耳介21の軟骨へ伝達することができる。
【0045】
図6(a)は、この状態を上方から見た概念図である。前述したように、挟持体3bの挟持体3aとの対向面は、曲面で構成される。ここで、利用者によって耳介21の形状は異なる。このため、利用者によって、効率よく振動が骨に伝わる位置が異なる。このため、挟持体3aの位置を微調整する必要がある場合がある。しかし、耳介21の背面に位置する挟持体3bの位置を自由に調整するのは困難であり、挟持体3bの位置は固定した状態で、挟持体3aの位置を微調整できることが望ましい。
【0046】
本実施形態では、挟持体3bの耳介21との接触部(すなわち、挟持体3aとの対向面)が曲面である。このため、
図6(b)、
図6(c)に示すように、挟持体3bの位置(すなわち、挟持体3bと耳介21との接触位置)は同じまま、挟持体3bを回転させることで、容易に、挟持体3aの配置と角度の微調整が可能である。
【0047】
以上、本実施の形態によれば、連結部5が形状記憶合金製の芯材23によって形成されるため、大きな変形によっても、連結部5が破損することが抑制される。また、芯材23が、形状記憶合金製の管体であるため、内部に電線13を配置しても、電線13の損傷を抑制することができる。また、芯材23が湾曲方向(変形方向)に対して潰れた偏平形状であるため、連結部5を容易に変形させることができる。この際、形状記憶合金製の芯材23によって、利用者の耳介の適切な位置に適度な圧力で挟持体3aを押圧することができる。また、長期にわたって、押圧力(保持力)が変化することがない。
【0048】
また、挟持体3a、3bのそれぞれに、振動部7と、基板9及びバッテリー11を分けて配置することで、一方の挟持体が大型化することを抑制することができる。特に、耳介21の前面に配置される挟持体3aには振動部7のみが収容されるため、挟持体3bと比較して小型化することができ、装着性がよく、見た目にも目立ちにくい。また、基板9及びバッテリー11が収容される挟持体3bは、耳介21の後ろ側に配置されるため目立ちにくく、装着性が良好である。
【0049】
また、弾性体であるアーム状の連結部5によって、伝達面15を皮膚へ密着させることができるため、簡易な構造で、確実に振動を耳介21の軟骨に伝達することができる。この際、連結部5と挟持体3a、3bとの接続部が、互いに遠い側に配置されるため、連結部5の長さを確保することができ、連結部5の変形能を高めることができる。また、連結部5の外周側の保護部材25の動きを許容することで、挟持体3a、3bを開く方向に連結部5を変形させた際に、連結部5(保護部材25)の破損等を抑制することができる。
【0050】
また、挟持体3bの挟持体3aとの対向面を曲面とすることで、耳介21に取り付けた際に、挟持体3bを回転させて、挟持体3bと耳介21との接触部を変えることなく、挟持体3aの位置の微調整を容易に行うことができる。このため、利用者の耳介21の形状等に対して、適切な位置に伝達面15を配置することができる。
【0051】
この際、挟持体3bが略円柱形状の部位を有し、略円柱形状の軸方向が、挟持体3bとの対向方向に対して略垂直に配置されれば、挟持体3bを耳介21の後方に容易に配置することができる。
【0052】
また、挟持体3b又は挟持体3aと電線13との接続をコネクタ構造とすることで、組立が容易となる。また、連結部5の外周面に、湾曲形状に沿ってタッチスイッチ17を配置することで、利用者は、ボタン位置などを探る必要がなく、より感覚的に聴音装置1を操作することができる。
【0053】
次に、第2の実施形態について説明する。
図7は、聴音装置1aの使用状態を示す図である。なお、以下の説明において、聴音装置1と同様の構成については、
図1~
図5と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0054】
聴音装置1aは、一対の本体部35同士が弾性部6aで連結されて構成される。本体部35は、例えば、挟持体3aと同様の構成である。また、本体部35には、振動部7aが接続される。すなわち、本実施形態では、本体部35と振動部7aとが弾性部で接続されるのではなく、一対の本体部35同士が、弾性部6aで連結される。弾性部6aの断面構造は、弾性部6(連結部5)と略同様である。また、振動部7aは、挟持体3aの構造と略同様である。
【0055】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、形状記憶合金製の管体を何らかの構造を連結する弾性部として利用し、着脱の際の変形によって、弾性部や内部の電線の破損を抑制することが可能であれば、挟持体同士の連結部としての利用以外にも適用可能である。
【0056】
なお、聴音装置1、1aとしては、外部の端末等から音響信号を無線で受信したが、挟持体3bにマイクを収容し、マイクで集音した音声情報を挟持体3aの内部の振動部7へ電気信号として伝送することで、補聴器として利用することができる。また、無線受信部を基板9に配置して、補聴器としての利用と、音楽等のイヤホンとしての利用を切り替えられるようにしてもよい。
【0057】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0058】
1、1a………聴音装置
3a、3b………挟持体
5………連結部
6、6a………弾性部
7、7a………振動部
8………制振材
9………基板
11………バッテリー
13………電線
15………伝達面
17………タッチスイッチ
21………耳介
23………芯材
25………保護部材
29………ピン
31………シール
33a、33b………コネクタ
35………本体部