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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】ガス溶断機の遠隔操作装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 7/00 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
B23K7/00 505E
B23K7/00 501E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021081398
(22)【出願日】2021-05-13
(65)【公開番号】P2022175185
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2022-09-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592077512
【氏名又は名称】株式会社西日本メタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】中野 大和
(72)【発明者】
【氏名】戸田 康太
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-193097(JP,A)
【文献】特開2003-4385(JP,A)
【文献】実開平7-15158(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置を有する溶断機本体と、該溶断機本体を運転操作可能な一つの操作端末と、該溶断機本体の運転状況を監視可能な一つ以上の管理端末と、を備え、
前記操作端末および前記管理端末はそれぞれ、前記溶断機本体と無線通信可能であり、非常停止ボタンを有し、
前記制御装置は、前記管理端末と前記溶断機本体との通信が切断状態となった際、前記溶断機本体を前記操作端末の操作によって運転継続可能とするが、該切断状態が所定時間継続した際は、該操作端末による該溶断機本体の運転操作を不可とするとともに該溶断機本体を運転一時停止状態とし、
前記運転一時停止状態においても、前記操作端末の前記非常停止ボタンは操作可能であり、該非常停止ボタンが押されると、前記制御装置は、前記溶断機本体を非常停止状態とすることを特徴とするガス溶断機の遠隔操作装置。
【請求項2】
制御装置を有する溶断機本体と、該溶断機本体を運転操作可能な一つの操作端末と、該溶断機本体の運転状況を監視可能な一つ以上の管理端末と、を備え、
前記操作端末および前記管理端末はそれぞれ、前記溶断機本体と無線通信可能であり、非常停止ボタンを有し、
前記制御装置は、前記操作端末と前記溶断機本体との通信が切断状態となり、該切断状態が所定時間継続した際に、該溶断機本体を運転一時停止状態とし、
前記運転一時停止状態においても、前記管理端末の前記非常停止ボタンは操作可能であり、該非常停止ボタンが押されると、前記制御装置は、前記溶断機本体を非常停止状態とすることを特徴とするガス溶断機の遠隔操作装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記操作端末およびすべての前記管理端末と前記溶断機本体との通信が切断状態となり、該切断状態が所定時間継続した際は、該溶断機本体を運転一時停止状態とし、該切断状態がさらに所定時間継続した際は、該溶断機本体を非常停止状態とすることを特徴とする請求項1または2に記載のガス溶断機の遠隔操作装置。
【請求項4】
前記操作端末は操作用タブレットであり、前記管理端末の少なくとも一つは管理用パーソナルコンピュータであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガス溶断機の遠隔操作装置。
【請求項5】
前記溶断機本体は、作業者が搭乗可能な大型のガス溶断機であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガス溶断機の遠隔操作装置。
【請求項6】
前記溶断機本体は、安全装置を有するガスユニットを備え、該安全装置は、該溶断機本体が非常停止状態となった際、該溶断機本体の可燃性ガスの噴出部へ失火用ガスを噴出することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のガス溶断機の遠隔操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス溶断機の遠隔操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可燃性ガスを点火し、高温の火炎を噴射して金属等を溶断するガス溶断機が様々な作業現場で用いられている。このようなガス溶断機には、溶断機本体と無線通信可能な操作端末を備え、作業者が操作端末によって遠隔で操作可能な遠隔操作装置を備えるものも提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光通信によって自動切断機本体を制御する持ち運び可能な遠隔操作装置付自動切断機が開示されており、作業者が主操作盤付近にいない場合であっても、切断機に異常が発生した場合は、作業者が遠隔操作器を操作して異常に対する最適な制御を行うことができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平7-15158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような無線通信による制御では、通信障害が発生し、装置本体と遠隔操作装置との通信が切断された際に、どのように安全性を確保するかという問題がある。特に、高温の火炎を噴射するガス溶断機にあっては、ガス溶断機の運転中に操作端末との通信が切断されて制御不能となることを防ぐため、対策を講じることが喫緊の課題である。
【0006】
このような問題に対応すべく、従来のガス溶断機には、装置本体と遠隔操作装置との通信が切断された際に、その都度、制御装置によって装置本体を非常停止するように制御するものがあるが、通信が切断される度に溶断機本体が非常停止したのでは、作業効率が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、無線通信状態が不安定な環境においても、作業効率および安全性を確保可能なガス溶断機の遠隔操作装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明では、一つの操作端末と、一つ以上の管理端末を備え、操作端末と溶断機本体との通信切断状態によって、溶断機本体を段階的に制御可能とした。
【0009】
具体的には、第1の発明では、制御装置を有する溶断機本体と、該溶断機本体を運転操作可能な一つの操作端末と、該溶断機本体の運転状況を監視可能な一つ以上の管理端末と、を備え、前記操作端末および前記管理端末はそれぞれ、前記溶断機本体と無線通信可能であり、非常停止ボタンを有し、前記制御装置は、前記管理端末と前記溶断機本体との通信が切断状態となった際、前記溶断機本体を前記操作端末の操作によって運転継続可能とするが、該切断状態が所定時間継続した際は、該操作端末による該溶断機本体の運転操作を不可とするとともに該溶断機本体を運転一時停止状態とし、前記運転一時停止状態においても、前記操作端末の前記非常停止ボタンは操作可能であり、該非常停止ボタンが押されると、前記制御装置は、前記溶断機本体を非常停止状態とすることを特徴とする。
【0010】
第1の発明によると、溶断機本体と無線通信可能な一つ以上の管理端末を備えるため、複数の作業者によって一つの溶断機本体の作業を監視することが可能である。管理端末と溶断機本体との通信が切断状態となっても操作端末によって運転継続可能だが、通信切断状態が所定時間継続した際は、制御装置が、溶断機本体を運転一時停止状態とする。通信が切断される度に溶断機本体の運転を非常停止させるように制御せずとも安全性を担保でき、無線通信が不安定な状態であっても、通信回復後すぐに運転を再開できるため、作業効率を確保することもできる。また、作業者が危険を感じたときは、運転一時停止状態であっても、管理端末の非常停止ボタンによって溶断機本体への電力の供給を遮断して溶断機本体を非常停止状態とすることができる。このように、通信切断状態の継続時間によって段階的なフェイルセーフを構築し、作業効率と安全性の両立を図ることが可能となる。
【0011】
第2の発明では、制御装置を有する溶断機本体と、該溶断機本体を運転操作可能な一つの操作端末と、該溶断機本体の運転状況を監視可能な一つ以上の管理端末と、を備え、前記操作端末および前記管理端末はそれぞれ、前記溶断機本体と無線通信可能であり、非常停止ボタンを有し、前記制御装置は、前記操作端末と前記溶断機本体との通信が切断状態となり、該切断状態が所定時間継続した際に、前記溶断機本体を運転一時停止状態とし、前記運転一時停止状態においても、前記管理端末の前記非常停止ボタンは操作可能であり、該非常停止ボタンが押されると、前記制御装置は、該溶断機本体を非常停止状態とすることを特徴とする。
【0012】
第2の発明によると、操作端末と溶断機本体との通信が切断状態となり、通信切断状態が所定時間継続した際は、制御装置が、溶断機本体を運転一時停止状態とする。また、作業者が危険を感じたときは、運転一時停止状態であっても、管理端末の非常停止ボタンによって溶断機本体への電力の供給を遮断して溶断機本体を非常停止状態とすることができる。通信が切断される度に溶断機本体の運転を非常停止させるように制御せずとも安全性を担保でき、無線通信が不安定な状態であっても、通信回復後すぐに運転を再開できるため、作業効率を確保することもできる。このように、通信切断状態の継続時間によって段階的なフェイルセーフを構築し、作業効率と安全性の両立を図ることが可能となる。
【0013】
第3の発明では、第1または第2の発明において、前記制御装置は、前記操作端末およびすべての前記管理端末と前記溶断機本体との通信が切断状態となり、該切断状態が所定時間継続した際は、該溶断機本体を運転一時停止状態とし、該切断状態がさらに所定時間継続した際は、該溶断機本体を非常停止状態とすることを特徴とする。
【0014】
第3の発明によると、操作端末およびすべての管理端末と溶断機本体との通信が切断状態となったとき、その切断状態の継続時間によって、さらに段階的なフェイルセーフを構築できる。切断状態が続き危険性が高くなると、制御装置によって自動的に非常停止状態となるため、安全性をより一層高めることが可能となる。
【0015】
第4の発明では、第1から第3のいずれかの発明において、複数の前記操作端末は操作用タブレットであり、前記管理端末の少なくとも一つは管理用パーソナルコンピュータであることを特徴とする。
【0016】
第4の発明によると、作業者は操作用タブレットによって、任意の場所から溶断機本体を操作可能である。また、管理端末を管理用パーソナルコンピュータとすることで、複数の作業者が溶断機本体から離れた場所において溶断機本体の作業状況を監視することが可能となり、溶断機本体の安全性をより高めることが可能となる。
【0017】
第5の発明では、第1から第4のいずれかの発明において、前記溶断機本体は、作業者が搭乗可能な大型のガス溶断機であることを特徴とする。
【0018】
第5の発明によると、溶断機本体が、作業者が搭乗して運転・操作する大型のガス溶断機にあっては、搭乗する作業者が、操作端末によって溶断機本体を操作可能である。また、運転席からの操作のみでは、死角やヒュームによる視界不良で作業が困難となる場合があるが、搭乗する作業者以外の作業者が、管理端末によって監視することが可能であるため、作業の安全性を確保できる。また、装置が大型であるために、作業者が搭乗しない小型のガス溶断機よりも火力が強く、一層の安全管理が必要であるとともに、従来のように通信切断毎に溶断機本体を非常停止させると、作業再開までのタイムロスが著しく作業効率を確保し難い。作業効率と安全性の両立は、作業者が搭乗しない小型のガス溶断機の場合と比較して難しいが、通信切断状態によって段階的なフェイルセーフを構築することで作業効率と安全性の両立が可能となるため、本発明によって課題を解決することの意義が大きい。
【0019】
第6の発明では、第1から第5のいずれかの発明において、前記溶断機本体は、安全装置を有するガスユニットを備え、該安全装置は、該溶断機本体が非常停止状態となった際、該溶断機本体の可燃性ガスの噴出部へ失火用ガスを噴出することを特徴とする。
【0020】
第6の発明によると、失火用ガスを噴出して可燃性ガスの噴出部を消火することにより、溶断機本体の非常停止状態において噴出部において可燃性ガスが燃え続けることを防止し、安全性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によると、無線通信状態が不安定な環境においても、作業効率および安全性を確保可能なガス溶断機の遠隔操作装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係るガス溶断機の遠隔操作装置を示す概略図である。
図2】溶断機本体の概略平面図である。
図3】溶断機本体の概略側面図である。
図4】本実施形態に係る遠隔操作装置の構成を示すブロック図である。
図5】操作用タブレットの画面を示す概略図である。
図6】管理用パーソナルコンピュータの画面を示す概略図である。
図7】本実施形態に係る溶断機本体のガスユニットを示す概略図である。
図8】他の実施形態に係る溶断機本体のガスユニットを示す概略図である。
図9】本実施形態に係る遠隔操作装置の通信切断時の制御を説明するための表である。
図10】本実施形態に係る遠隔操作装置の通信切断時の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
(遠隔操作装置の構成)
図1に示すように、本実施形態のガス溶断機の遠隔操作装置1は、制御装置20を有する溶断機本体2と、溶断機本体2を運転操作可能な一つの操作端末31と、溶断機本体2の運転状況を監視可能な一つ以上の管理端末32とを備える。溶断機本体2と操作端末31および管理端末32はそれぞれ、溶断機本体2側の溶断機側リピーター201と操作端末31,管理端末32側の制御側リピーター301を介して、無線通信可能である。無線通信とは、例えば、無線LAN通信である。
【0025】
本実施形態において、溶断機本体2は、作業者が搭乗可能な大型のガス溶断機であり、主に製鉄所等にて使用され、可燃性ガスの燃焼によって大型のスラグや廃材等の切断作業を行うものである。溶断機本体2に搭乗する作業者は、例えば、操作端末である操作用タブレット31によって溶断機本体2の運転席において溶断機本体2を操作することが可能である。溶断機本体2は、無線通信可能な制御装置20と、可燃性ガスを噴出する作業装置21を備える。なお、溶断機本体2は、図2においてクローラ式のものを例として記載したが、クローラ式以外にも定置式やレール式等があり、その形態は限定されない。
【0026】
溶断機本体2の作業装置21は、左右にそれぞれ伸縮アーム22,22を備える。2つの伸縮アーム22,22は、図2に示すように、左右方向(図2中、矢印Wの方向)にそれぞれ移動可能である。伸縮アーム22,22は、さらに、図3に示すように、高さ方向(図3中、矢印Hの方向)にそれぞれ移動可能、かつ、前後方向(図3中、矢印Lの方向)に伸縮可能である。
【0027】
伸縮アーム22は、その先端に酸素と可燃性ガスを噴出し燃焼させることのできる吹管22aを備える。吹管22aの先端部にある噴出部22bは下方に向けて開口している。溶断機本体2は、伸縮アーム22によって、吹管22aを上下左右前後に移動させることが可能であり、最大で厚さ1200mm程度の鋼材を切断することが可能である。
【0028】
伸縮アーム22,22の移動制御を含め、溶断機本体2の様々な制御を制御装置20が担っている。制御装置20は、例えば、溶断機制御PLC20aおよび溶断機制御PC20bである。制御装置20は、溶断機本体2と、操作端末31および一つ以上の管理端末32との通信状態を監視し、溶断機本体2と、操作端末31または管理端末32の少なくとも一方との通信が切断され、その切断状態が所定時間継続した際には、操作端末31および管理端末32の操作に関わらず、切断状態の継続時間に応じて溶断機本体2を強制的に制御する。
【0029】
例えば、制御装置20は、管理端末32と溶断機本体2との通信が切断状態となった際、溶断機本体2を操作端末31の操作によって運転継続可能とする。
【0030】
また、制御装置20は、管理端末32と溶断機本体2との通信切断状態が所定時間継続した際は、操作端末31による溶断機本体2の運転操作を不可とするとともに溶断機本体2が運転中であっても強制的に運転一時停止状態とする。
【0031】
また、制御装置20は、操作端末31と溶断機本体2との通信が切断状態となり、その切断状態が所定時間継続した際は、溶断機本体2が運転中であっても溶断機本体2を運転一時停止状態とする。
【0032】
また、制御装置20は、例えば、操作端末31および管理端末32の双方と溶断機本体2との通信が切断状態となった際、溶断機本体2の警告灯を点滅させ、その切断状態が所定時間継続した際は、溶断機本体を運転一時停止状態とする。その切断状態がさらに所定時間継続した際は、制御装置20は、溶断機本体2の警告灯を点灯させ、溶断機本体2を非常停止状態とする。
【0033】
なお、溶断機本体2の運転一時停止状態とは、溶断機本体2に電力の供給が維持されたまま、溶断機本体2の運転が停止した状態を言い、溶断機本体2の非常停止状態とは、後述するサーキットブレーカ5が遮断されて、溶断機本体2への電力供給が絶たれた状態を言う。
【0034】
溶断機本体2の構成の詳細を、図4に示す。溶断機本体2は、SHTを備えた電源用サーキットブレーカ5からAC/DCコンバータ51、モータ制御インバータ52、ガス制御リレー53にDC電源供給される。モータ制御インバータ52は位置調整モータ520へ、ガス制御リレー53は火力調整ソレノイド530へそれぞれ電力を供給する構成となっている。AC/DCコンバータ51から出力されるAC電源は、溶断機制御PLC20aとUPS510に供給される。AC電源は、無停電電源装置(UPS)510を介して溶断機制御PC20b、ブレーカ制御リレー54、窒素制御リレー60、警告灯リレー41,42へ電力を供給する。ブレーカ制御リレー54はサーキットブレーカ5へ、窒素制御リレー60は窒素ソレノイド6へ、警告灯リレー41,42は警告灯4へそれぞれ電力を供給する。
【0035】
溶断機制御PLC20aの制御信号は、ブレーカ制御リレー54、窒素制御リレー60、警告灯リレー41、モータ制御インバータ52、ガス制御リレー53に接続され、それぞれを制御する。溶断機制御PC20bの制御信号は、ブレーカ制御リレー54、窒素制御リレー60、警告灯リレー42に接続され、それぞれを制御する。なお、溶断機制御PLC20a、溶断機制御PC20b、UPS510、および溶断機側リピーター201はEther通信によって接続され、制御される。
【0036】
操作端末31は、どのような形態であってもよいが、操作用タブレット31であることが望ましい。操作端末31は、一つの溶断機本体2に対して一つ備える。複数の操作端末31を備えると、同時操作により誤作動を起こす危険性が高いためである。
【0037】
操作用タブレット31は、溶断機本体2に搭乗する作業者が使用するものである。操作用タブレット31は、例えば、図5に示す画面を表示する。操作用タブレット31の画面は、溶断機本体2を操作するための操作部31aと、溶断機本体2との通信切断状態を示すためのエラー表示部31bと、溶断機本体2を運転開始または一時停止させるための運転・停止ボタン31cと、溶断機本体2への電力の供給を遮断するための非常停止ボタン31dを備える。操作部31aでは、主に、火力の調整と伸縮アーム22の移動の操作をすることが可能である。
【0038】
運転・停止ボタン31cは、誤操作防止のため、溶断機本体2の始動時は常に「停止」となっており、「停止」ボタンを押すと溶断機本体2は一時停止状態となる。一時停止状態において、操作用タブレット31は操作部31aにおける操作ができない。運転・停止ボタン31cを「運転」側に入れると、操作部31aにて溶断機本体2の操作が可能となる。なお、「運転」ボタンと「停止」ボタンは同時には入らない。
【0039】
操作用タブレット31は、溶断機本体2に搭乗する作業者に限らず、溶断機本体2から離れた場所にいる作業者が使用してもよい。
【0040】
管理端末32は、一つの溶断機本体2に対して一つ以上備える。管理端末32は、少なくとも一つが管理用パーソナルコンピュータ32(以下、管理用PC32と表記する)であることが望ましい。
【0041】
管理用PC32は、例えば、溶断機本体2から離れた監視室に備え付けられるものである。管理用PC32は、溶断機本体2において撮影された作業状況のリアルタイム映像を受信することが可能である。管理用PC32は、例えば、図6に示す画面を表示する。管理用PC32の画面は、溶断機本体2との通信切断状態を示すためのエラー表示部32aと、溶断機本体2への電力の供給を遮断するための非常停止ボタン32bを備える。
【0042】
操作用タブレット31の非常停止ボタン31dは、操作用タブレット31と溶断機本体2との通信が維持されていれば、溶断機本体2が制御装置20によって強制的に運転一時停止状態となった場合においても操作可能である。また、管理用PC32の非常停止ボタン32bは、管理用PC32と溶断機本体2との通信が維持されていれば、溶断機本体2が制御装置20によって強制的に運転一時停止状態となった場合においても操作可能である。いずれかの非常停止ボタン31d,32bが押されると、制御装置20は、溶断機本体2への電力の供給を遮断して溶断機本体2を非常停止状態とする。
【0043】
(安全装置の構成)
また、溶断機本体2は、図7に示すように、吹管22aの噴出部22bへ繋がる安全装置24を有するガスユニット25を備える。
【0044】
ガスユニット25は、予熱ガスGを噴出部22bへ供給する予熱ガス管26aと、予熱酸素O1を噴出部22bへ供給する予熱酸素管27aと、切断用の酸素O2を噴出部22bへ供給する切断酸素管28aと、溶断機本体2が非常停止状態となった際、噴出部22bへ失火用ガスNを噴出する失火ガス管24aを有する安全装置24を備える。
【0045】
予熱ガスGは、例えば、アセチレン、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の可燃性ガスを使用可能である。予熱ガスGは、溶断時に必要な流量の可燃ガスである。予熱ガスGが供給される予熱ガス管26aには、電磁弁26bが取り付けられ、制御装置20により予熱ガスGの流量が制御される。電磁弁26bより下流側(噴出部22b側)には逆火防止弁26cが取り付けられている。予熱ガス管26aは直接噴出部22bへ繋がっているのではなく、後述の三方電磁弁24cを介して噴出部22bへ繋がっており、三方電磁弁24cによって失火ガス管24aと並列に連結されている。
【0046】
予熱酸素O1は、火種を保持する為に必要な流量の酸素である。予熱酸素O1が供給される予熱酸素管27aには、電磁弁27bが取り付けられ、制御装置20により予熱酸素O1の流量が制御される。電磁弁27bより下流側には逆火防止弁27cが取り付けられている。予熱酸素管27aは、直接噴出部22bへ繋がっている。
【0047】
切断用の酸素O2を供給する切断酸素管28aには、電磁弁28bが取り付けられ、制御装置20により切断用の酸素O2の流量が制御される。切断酸素管28aは、直接噴出部22bへ繋がっている。
【0048】
安全装置24は、例えば窒素ガス等の失火用ガスNを供給する。安全装置24は、失火ガス管24aと、予熱ガス管26aと連結された三方電磁弁24cと、三方電磁弁24cの上流側に取り付けられた電磁弁24bを備える。三方電磁弁24cは、上流側において、予熱ガス管26aと失火ガス管24aとを並列に繋ぎ、下流側はガス管29によって噴出部22bへ繋がっている。三方電磁弁24cは、予熱ガス管26aおよび失火ガス管24aとの接続口において、一方が開けば他方が閉じるように連動して動く。本実施形態において三方電磁弁24cは、予熱ガス管26aとの接続口において常時閉状態(NC)および失火ガス管24aとの接続口において常時開状態(NO)である。溶断機本体2が非常停止状態となった際、制御装置20からの制御信号によって、電磁弁24bおよび三方電磁弁24cが制御されることにより噴出部22bへ失火用ガスNを噴出する。これと同時に、三方電磁弁24cは予熱ガスGを遮断する為、予熱ガスGは、電磁弁26bと三方電磁弁24cにより2重切りとなり、弁の故障に備えた安全な構造となる。
【0049】
また、安全装置24は、図8に示すような形態であってもよい。図8に示すガスユニット25は、上記実施形態のガスユニット25と安全装置24の構成が一部異なる。図7のガスユニット25と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明は省略する。図8に示すガスユニット25において、安全装置24は、三方電磁弁24cを備えず、失火ガス管24aが逆止弁24dを有し、予熱ガス管26aへ直接接続されていてもよい。
【0050】
(通信切断時の処理)
次に、図9および図10に基づいて、操作端末31、管理端末32と溶断機本体2との通信が切断状態となった際の段階的な処理について説明する。なお、本実施形態においては、一つの管理用PC32を用いているが、これには限られず、二つ以上の管理用PC32に適用することも可能である。
【0051】
本実施形態において、通常状態とは管理用PC32および操作用タブレット31の両方が溶断機本体2との通信状態を正常に保っている状態である。通常状態において、溶断機本体2の警告灯4は消灯し、管理用PC32および操作用タブレット31のエラー表示部32a,31bは、非表示状態である。また、操作用タブレット31において、運転・停止ボタン31cで溶断機本体2の運転開始と一時停止を操作可能である。
【0052】
このような通常状態から、制御装置20は、ステップS100における処理で、操作用タブレット31との通信状態を確認するため、操作用タブレット31から応答があるかどうかを判定する。判定結果がYesの場合は、ステップS200における処理で、管理用PC32との通信状態を確認するため、管理用PC32から応答があるかどうかを判定し、ステップS200の判定結果もYesであれば、通常状態が継続される。
【0053】
溶断機本体2と操作用タブレット31との通信状態は正常だが、管理用PC32との通信が切断された際、ステップS200の判定結果はNoとなる。このように、管理用PC32のみ溶断機本体2との通信が切断状態となった際、操作用タブレット31は、操作部31aおよび運転・停止ボタン31cによって溶断機本体2を操作可能である。
【0054】
次に、ステップS201において、管理用PC32が溶断機本体2と通信切断状態となってから所定時間、例えば3秒以内に管理用PC32から応答があるかどうか判定される。この判定結果がYesであり、管理用PC32と溶断機本体2との通信状態が3秒経過するまでに回復した場合は、通常状態が継続される。しかしながら、ステップS201の判定結果がNoであり、管理用PC32と溶断機本体2との通信切断状態が3秒以上継続した場合は、通信エラーの第1段階であるERR1状態(ERR STATE 1)となる。
【0055】
ERR1状態では、操作用タブレット31のエラー表示部31bにエラーが表示され、溶断機本体2の警告灯4が点滅する。エラー発生時に溶断機本体2が運転中であった場合、操作用タブレット31は操作部31aおよび運転・停止ボタン31cによって溶断機本体2の操作を継続可能である。エラー発生時に溶断機本体2が運転一時停止状態であった場合、操作用タブレット31は、操作部31aおよび運転・停止ボタン31cの操作が不可となる。非常停止ボタン31dは、エラー発生時の溶断機本体2の運転状況に関わらず操作可能である。
【0056】
次に、ERR1状態におけるステップS202において、通信切断状態となってから所定時間、例えば15秒以内に管理用PC32から応答があるかどうか判定される。この判定結果がYesであり、管理用PC32と溶断機本体2との通信状態が15秒経過するまでに回復した場合は、ERR1状態が解除され、通常状態に戻る。しかしながら、ステップS202の判定結果がNoであり、管理用PC32と溶断機本体2との通信切断状態が15秒以上継続した場合は、通信エラーの第2段階であるERR2状態(ERR STATE 2)となる。
【0057】
管理用PC32のみ15秒以上通信切断が継続したERR2状態では、ERR1状態から継続して、操作用タブレット31のエラー表示部31bにエラーが表示され、溶断機本体2の警告灯4が点滅する。ERR2状態では、溶断機本体2は、エラー発生時に運転中であっても強制的に運転一時停止状態となる。このとき、溶断機本体2との通信を維持している操作用タブレット31の、非常停止ボタン31dは操作可能であるが、操作部31aおよび運転・停止ボタン31cは操作不可となる。
【0058】
次に、ERR2状態におけるステップS203において、管理用PC32から応答があるかどうか判定される。ステップS203の判定結果がYesであり、管理用PC32と溶断機本体2との通信状態が回復した場合は、ERR2状態が解除され、通常状態に戻る。なお、ERR2状態が解除された際、溶断機本体2は運転一時停止状態が維持されている。ステップS203の判定結果がNoであれば、ERR2状態が継続する。
【0059】
ステップS100において、操作用タブレット31から応答があるかどうかが判定され、判定結果がNoの場合は、ステップS110における処理で、さらに管理用PC32との通信状態を確認するため、管理用PC32から応答があるかどうかを判定する。
【0060】
ステップ110における判定結果がYesの場合は、ステップS111における処理で、通信切断状態となってから所定時間、例えば3秒以内に操作用タブレット31から応答があるかどうか判定される。ステップS111の判定結果がYesであり、操作用タブレット31と溶断機本体2との通信状態が3秒経過するまでに回復した場合は、通常状態となる。しかしながら、ステップS111の判定結果がNoであり、操作用タブレット31と溶断機本体2との通信切断状態が3秒以上継続した場合は、通信エラーの第2段階であるERR2’状態(ERR STATE 2’)となる。
【0061】
このERR2’状態では、管理用PC32のエラー表示部32aにエラーが表示され、溶断機本体2の警告灯4が点滅する。操作用タブレット31のみが3秒以上通信切断されたERR2’状態では、溶断機本体2は、エラー発生時に運転中であっても強制的に運転一時停止状態となる。このとき、管理用PC32の非常停止ボタン32bは操作可能である。
【0062】
次に、ERR2’状態におけるステップS112において、操作用タブレット31から応答があるかどうか判定される。S112の判定結果がYesであり、操作用タブレット31と溶断機本体2との通信状態が回復した場合は、ERR2’状態が解除され、通常状態に戻る。なお、ERR2’状態が解除された際、溶断機本体2は運転一時停止状態が維持されている。ステップS112の判定結果がNoであれば、ERR2’状態が継続する。
【0063】
ステップ110における判定結果がNoの場合は、管理用PC32および操作用タブレット31の両方と溶断機本体2との通信が切断された状態である。この場合、ステップS120における処理で、溶断機本体2と通信切断状態となってから所定時間、例えば3秒以内に管理用PC32および操作用タブレット31から応答があるかどうか判定される。
【0064】
ステップS120における判定結果がYesであり、管理用PC32および操作用タブレット31と溶断機本体2との通信状態が3秒経過するまでに回復した場合は、通常状態となる。しかしながら、ステップS120の判定結果がNoであり、管理用PC32および操作用タブレット31と溶断機本体2との通信切断状態が3秒以上継続した場合は、通信エラーの第3段階であるERR3状態(ERR STATE 3)となる。
【0065】
ERR3状態では、溶断機本体2の警告灯4が点滅する。溶断機本体2は、エラー発生時に運転中であっても強制的に運転一時停止状態となる。また、管理用PC32および操作用タブレット31による操作は不可であり、非常停止ボタン32b,31dも操作することはできない。
【0066】
次に、ERR3状態におけるステップS121において、管理用PC32および操作用タブレット31と溶断機本体2とが通信切断状態となってから所定時間、例えば15秒以内に、管理用PC32および操作用タブレット31から応答があるかどうか判定される。S121の判定結果がYesであり、管理用PC32および操作用タブレット31と溶断機本体2との通信状態が回復した場合は、ERR3状態が解除され、通常状態に戻る。なお、ERR3状態が解除された際、溶断機本体2は運転一時停止状態が維持されている。ステップS121の判定結果がNoであれば、通信エラーの第4段階であるERR4状態(ERR STATE 4)となる。
【0067】
ERR4状態では、制御装置20が、警告灯リレー41を作動させて溶断機本体2の警告灯4が点灯し、ブレーカ制御リレー54を作動させてサーキットブレーカ5を遮断し、非常停止状態となる。また、制御装置20からの制御信号は、安全装置24を作動させる。安全装置24は、溶断機本体2の可燃性ガスの噴出部22bへ失火用ガスNを噴出する。
【0068】
なお、ステップS201、ステップS202、ステップS111、ステップS120およびステップS121において、それぞれ溶断機本体2との通信が切断されてから所定時間内に操作端末31,管理端末32が応答するか否かを判定しているが、これらの所定時間は、3秒や15秒に限らず、それぞれ任意に設定可能である。
【0069】
(作用効果)
本実施形態によれば、溶断機本体2と無線通信可能な一つの操作端末(操作用タブレット31)と一つ以上の管理端末(管理用PC32)を備えるため、複数の作業者によって一つの溶断機本体の作業を監視することが可能である。管理用PC32と溶断機本体2との通信が切断状態となった際(ERR1状態)も、通信切断時に溶断機本体2が運転状態であれば、操作用タブレット31の操作によって溶断機本体2の運転を継続することができるので、無線通信が不安定な状態であっても、切断状態になる度に溶断機本体2の運転を非常停止させる必要がなく、すぐに運転再開できる。
【0070】
さらに、管理用PC32と溶断機本体との通信切断状態が所定時間継続した際(ERR2状態)は、制御装置20が、操作用タブレット31による溶断機本体の運転操作を不可とするとともに溶断機本体2を運転一時停止状態とする。操作用タブレット31の通信切断状態が所定時間継続した際(ERR2’状態)も同様に、制御装置20は溶断機本体2を運転一時停止状態とする。
【0071】
また、非常停止ボタン32b,31dは、それぞれ端末31,32が溶断機本体2と通信可能であれば、溶断機本体2の運転一時停止状態においても操作可能であって、作業者が危険を感じたときは、非常停止ボタン32b,31dによって溶断機本体2への電力の供給を遮断して溶断機本体2を非常停止状態とすることができる。このように、通信切断状態の継続時間によって段階的なフェイルセーフを構築し、作業効率と安全性の両立を図ることが可能となる。
【0072】
そして、操作端末31およびすべての管理端末32と溶断機本体2との通信が切断状態となり、通信切断状態が所定時間継続した際(ERR3状態)は、溶断機本体2を運転一時停止状態とし、通信切断状態がさらに所定時間継続した際(ERR4状態)は、溶断機本体2を非常停止状態とする。このような構成によって、さらなる段階的なフェイルセーフを構築することが可能となる。
【0073】
また、溶断機本体2が非常停止状態となった際、安全装置24は、失火用ガスNを噴出して溶断機本体2の噴出部22bを消火することにより、非常停止状態において噴出部22bが燃え続けることを防止し、安全性をより高めることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 遠隔操作装置
2 溶断機本体
20 制御装置
22 伸縮アーム
22a 吹管
22b 噴出部
24 安全装置
24a 失火ガス管
24b 電磁弁
24c 三方電磁弁
24d 逆止弁
25 ガスユニット
31 操作用タブレット(操作端末)
31a 操作部
31b エラー表示部
31c 運転・停止ボタン
31d 非常停止ボタン
32 管理用パーソナルコンピュータ(管理端末)
32a エラー表示部
32b 非常停止ボタン
201 溶断機側リピーター
301 制御側リピーター
G 予熱ガス
N 失火用ガス
O1 予熱酸素
O2 切断用の酸素
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10