(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】井戸洗浄装置及び井戸洗浄方法
(51)【国際特許分類】
E03B 3/15 20060101AFI20230106BHJP
B08B 1/04 20060101ALI20230106BHJP
B08B 9/035 20060101ALI20230106BHJP
B08B 9/043 20060101ALI20230106BHJP
B08B 9/045 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
E03B3/15
B08B1/04
B08B9/035
B08B9/043 436
B08B9/045
(21)【出願番号】P 2021164316
(22)【出願日】2021-10-05
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】521435639
【氏名又は名称】くびき野温泉開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】丸山 隆志
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 哲行
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-035708(JP,A)
【文献】特開平05-171632(JP,A)
【文献】実公昭51-000787(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 3/15
E21B 31/03
B08B 1/00- 1/04
B08B 5/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔に
スリットが所定間隔で設けられたストレーナ部を有するケーシング体を配して構築され
揚水管により地下水を揚水する構成の井戸
における該ストレーナ部を洗浄する井戸洗浄装置であって、前記井戸内に設けられるブラシ体と、このブラシ体を上昇させるブラシ体駆動部とを有し、前記ブラシ体駆動部は、
前記ブラシ体が前記ストレーナ部の下端部から上端部まで上昇して該ストレーナ部を洗浄する場合、下記式で算出される前記ケーシング体内への地下水導入流速の
50%~70%の速度で前記ブラシ体を上昇させる制御手段を有
し、更に、汚れ地下水排出用揚水管により前記ブラシ体の通過で生じた汚れ地下水を揚水する汚れ地下水排出装置を併設して構成されていることを特徴とする井戸洗浄装置。
記
ケーシング体内への地下水導入流速=ケーシング体内への地下水導入量/ケーシング体の横断面積
【請求項2】
請求項1記載の井戸洗浄装置において、前記汚れ地下水排出用揚水管は、多数の管部材を継合して成るものであることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体は、駆動回転する回転軸部の周面に外方へ向けてブラシ材を突出して構成さ
れ、このブラシ体の外径は前記ストレーナ部の内径以下に設定されていることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の井戸洗浄装置において、前記井戸は温泉井戸であることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項5】
掘削孔に
スリットが所定間隔で設けられたストレーナ部を有するケーシング体を配して構築され
揚水管により地下水を揚水する構成の井戸内にブラシ体を
配設し、このブラシ体を上昇させることで
前記ストレーナ部を洗浄する方法であって、
前記ブラシ体を前記ストレーナ部の下端部から上端部まで上昇させる際、前記ブラシ体を下記式で算出される前記ケーシング体内への地下水導入流速の
50%~70%の速度
で上昇さ
せ、その後、汚れ地下水排出用揚水管により前記ブラシ体の通過で生じた汚れ地下水を揚水することを特徴とする井戸洗浄方法。
記
ケーシング体内への地下水導入流速=ケーシング体内への地下水導入量/ケーシング体の横断面積
【請求項6】
請求項5記載の井戸洗浄方法において、前記汚れ地下水排出用揚水管は、多数の管部材を継合して成るものであることを特徴とする井戸洗浄方法。
【請求項7】
請求項5,6いずれか1項に記載の井戸洗浄方法において、前記ブラシ体は駆動回転する回転軸部の周面に外方へ向けてブラシ材を突出して構成さ
れ、このブラシ体の外径は前記ストレーナ部の内径以下に設定されていることを特徴とする井戸洗浄方法。
【請求項8】
請求項5~7いずれか1項に記載の井戸洗浄方法において、前記井戸は温泉井戸であることを特徴とする井戸洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸洗浄装置及び井戸洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、掘削孔にケーシング体を配して構築される井戸を洗浄するための装置として特開2005-307575に開示される井戸洗浄装置(以下、「従来例」という。)が提案されている。
【0003】
この従来例は、井戸内へ挿入可能な揚水管の外周面に、井戸の内周面に付着した汚れを掻き落とすブラシを設けたものであり、このブラシを上下方向に移動させることで井戸内を洗浄するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述したように従来例はブラシを上下方向に移動させて洗浄するが、ブラシを上昇させた際の勢いでブラシよりも下方部位が負圧状態となってケーシング体が潰れてしまう場合がある。
【0006】
このケーシング体の破損は、ブラシをゆっくり上昇させるようにすれば防げるが、当然ながら、このブラシの上昇を遅くすればするほど作業に時間がかかってしまい、特に営業を営む温泉井戸の場合、なるべく早期に作業が完了することが望まれることもあって、この加減が分からず作業を急ぐあまり破損させてしまうケースが多い。
【0007】
本発明は、前述した問題点について鑑みてなされたものであり、従来に無い画期的な井戸洗浄装置及び井戸洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
掘削孔51にスリット32aが所定間隔で設けられたストレーナ部32を有するケーシング体31を配して構築され揚水管33により地下水Wを揚水する構成の井戸30における該ストレーナ部32を洗浄する井戸洗浄装置であって、前記井戸30内に設けられるブラシ体1と、このブラシ体1を上昇させるブラシ体駆動部2とを有し、前記ブラシ体駆動部2は、前記ブラシ体1が前記ストレーナ部32の下端部から上端部まで上昇して該ストレーナ部32を洗浄する場合、下記式で算出される前記ケーシング体31内への地下水導入流速の50%~70%の速度で前記ブラシ体1を上昇させる制御手段を有し、更に、汚れ地下水排出用揚水管7aにより前記ブラシ体1の通過で生じた汚れ地下水DWを揚水する汚れ地下水排出装置7を併設して構成されていることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0010】
記
ケーシング体31内への地下水導入流速=ケーシング体31内への地下水導入量/ケーシング体31の横断面積
【0011】
また、請求項1記載の井戸洗浄装置において、前記汚れ地下水排出用揚水管7aは、多数の管部材を継合して成るものであることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体1は、駆動回転する回転軸部3aの周面に外方へ向けてブラシ材1aを突出して構成され、このブラシ体1の外径は前記ストレーナ部32の内径以下に設定されていることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の井戸洗浄装置において、前記井戸30は温泉井戸であることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0014】
また、掘削孔51にスリット32aが所定間隔で設けられたストレーナ部32を有するケーシング体31を配して構築され揚水管33により地下水Wを揚水する構成の井戸30内にブラシ体1を配設し、このブラシ体1を上昇させることで前記ストレーナ部32を洗浄する方法であって、前記ブラシ体1を前記ストレーナ部32の下端部から上端部まで上昇させる際、前記ブラシ体1を下記式で算出される前記ケーシング体31内への地下水導入流速の50%~70%の速度で上昇させ、その後、汚れ地下水排出用揚水管7aにより前記ブラシ体1の通過で生じた汚れ地下水DWを揚水することを特徴とする井戸洗浄方法に係るものである。
【0015】
記
ケーシング体31内への地下水導入流速=ケーシング体31内への地下水導入量/ケーシング体31の横断面積
【0016】
また、請求項5記載の井戸洗浄方法において、前記汚れ地下水排出用揚水管7aは、多数の管部材を継合して成るものであることを特徴とする井戸洗浄方法に係るものである。
【0017】
また、請求項5,6いずれか1項に記載の井戸洗浄方法において、前記ブラシ体1は駆動回転する回転軸部3aの周面に外方へ向けてブラシ材1aを突出して構成され、このブラシ体1の外径は前記ストレーナ部32の内径以下に設定されていることを特徴とする井戸洗浄方法に係るものである。
【0018】
また、請求項5~7いずれか1項に記載の井戸洗浄方法において、前記井戸30は温泉井戸であることを特徴とする井戸洗浄方法に係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述のように構成したから、井戸を破損させることなく良好に洗浄することができるなど、従来に無い画期的な井戸洗浄装置及び井戸洗浄方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】洗浄対象となる井戸30に汚れが付着した状態の拡大説明図である。
【
図3】本実施例に係る井戸洗浄装置の説明図である。
【
図5】本実施例に係る井戸洗浄方法の説明図である。
【
図6】本実施例に係る井戸洗浄方法の説明図である。
【
図7】本実施例で洗浄した後の井戸30の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0022】
井戸30内にブラシ体1を配し、ブラシ体駆動部2を作動させてブラシ体1を上昇させることで井戸30内を洗浄する。
【0023】
本発明は、ブラシ体駆動部2は、洗浄対象となる井戸30のケーシング体31内への地下水導入流速の50%~70%の速度でブラシ体1を上昇させる制御手段を有しており、この構成から、前述した従来のように井戸30を破損させることなく良好に洗浄することができ、また、洗浄対象となる井戸30を破損させない程度にできるだけ速い速度で上昇させることができるため、井戸30内の洗浄作業が良好に行えることになる。
【実施例】
【0024】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0025】
本実施例は、地盤50に形成した掘削孔51にストレーナ部32を有するケーシング体31を配して構築される井戸30内を洗浄する井戸洗浄装置である。
【0026】
本実施例では、
図1に図示したように洗浄対象となる井戸30は温泉井戸であり、約1500mの掘削孔51に直径約15cmの管部材31aを多数継合して成るケーシング体31を配設して構成され、このケーシング体31の途中部位(水源となる部位)に複数本の通水用スリット32a(幅約6~12mm,長さ約10~30cm)が長さ方向に形成された管部材31aを配してストレーナ部32(ケーシング体31における地下800m~1500mの範囲に合計約400mの長さのストレーナ部32)が設けられている。
【0027】
符号33は揚水管、34はポンプ(水位計を備えたポンプ)である。
【0028】
具体的には、本実施例は、井戸30内に設けられるブラシ体1と、このブラシ体1を上昇させるブラシ体駆動部2とを有している。
【0029】
ブラシ体1は、
図3に図示したように後述するブラシ体駆動部2の吊材4で吊り下げ状態に設けられる回転駆動部3(電動モーター)の回動軸部3aの周面に外方(放射方向)へ向けてブラシ材1aを突出して構成されている。尚、この回転駆動部3は後述する制御手段により回転及び回転停止が制御される。
【0030】
従って、ブラシ体1は、ブラシ体駆動部2の作動により上昇させることができ、回転駆動部3の作動により回転する。尚、本実施例では、ブラシ体1の降下はブラシ体1及び回転駆動部3の自重により行われるが、駆動により降下する構成としても良い。
【0031】
また、ブラシ体1の外径はストレーナ部32の内径以下に設定されている(
図4参照)。
【0032】
具体的には、本実施例では、井戸30の内径と略同一となる複数種類の外径寸法のブラシ体1が用意されている。
【0033】
従って、この回転しながら上昇するブラシ体1により、ストレーナ部32の通水用スリット32a内縁に付着する汚れDを良好に除去することができ、しかも、ブラシ材1aが通水用スリット32aに入り込んで挟まって抜けてしまうなどのブラシ体1の破損が防止される。
【0034】
ブラシ体駆動部2は、
図3に図示したように地盤50の表面に設置されるケース体5内に、先端にブラシ体1(回転駆動部3)が連結される吊材4(ワイヤー)を送り出し自在に巻回する図示省略の吊材巻回部を設けて構成されており、このブラシ体駆動部2は、各種作動条件を入力・操作し得る電動の制御手段(コンピュータシステム)で制御されて作動する。尚、前述したようにこの制御手段は回転駆動部3の制御も行う。符号6は吊材4を垂設するための滑車である。
【0035】
また、ブラシ体駆動部2の制御手段は、洗浄する際にブラシ体1が上昇する速度(吊材巻回部の巻回速度)を制御するように構成されている。
【0036】
具体的には、この制御手段は、洗浄対象となる井戸30の下記式で算出されるケーシング体31内への地下水導入流速の50%~70%の速度でブラシ体1を上昇させるように構成されている。
【0037】
記
ケーシング体31内への地下水導入流速(cm/sec)=ケーシング体31内への地下水導入量(L/min)/ケーシング体31の横断面積(m2)
【0038】
このブラシ体1を上昇させる速度の基準となるケーシング体31内への地下水導入流速(cm/sec)は、井戸30の構築時(掘削時)に計測した数値でも良いし、洗浄を行う時に計測した数値でも良い。
【0039】
また、本実施例では、このケーシング体31内への地下水導入流速(cm/sec)を算出するためのケーシング体31内への地下水導入量(L/min)は、ポンプ34の水位計を利用し、ケーシング体31内の地下水を汲み上げるポンプ34のポンプ作動時における動水位L1からポンプ停止後の所定時間(sec)における所定上昇水位L2までの水の体積(m
3)を基準に計測され、この所定上昇水位L2としては例えば自然水位である(
図1参照)。尚、この所定上昇水位L2としては自然水位以外の任意の水位でも良い。
【0040】
また、ケーシング体31内への地下水導入量(L/min)の計測は、前述した計測方法の他、例えば揚水管33やポンプ34に流量計を付設して流量を計測するようにしても良い。
【0041】
前述したケーシング体31内への地下水導入流速の50%~70%の速度でブラシ体1を上昇させる点については、従来の破損例から70%よりも速いとケーシング体31(ストレーナ部32)が破損し且つ洗浄が不十分であり、一方、50%よりも遅いとケーシング体31(ストレーナ部32)は破損せず洗浄は十分行われるが洗浄時間がかかり過ぎるからである。
【0042】
本発明者は、実際に前述した方法により洗浄対象となる温泉井戸30のケーシング体31(長さ1500m、内径250mm(0.0490625m2)、スリットの合計長さ399m、自然水位90m)内への地下水導入量(m3/sec)を計測したところ、0.000533m3/secであり、よって、この井戸30のケーシング体31の横断面積が0.0490625m2であることから、ケーシング体31内への地下水導入流速が0.0109m/sec(0.000533m3/sec÷0.0490625m2)であることが分かった。
【0043】
そこで、このケーシング体31内への地下水導入流速(0.0109m/sec)の70%である速度0.00763m/secでブラシ体1を上昇させて洗浄(2回繰り返し行う洗浄)したところ、ケーシング体31(ストレーナ部32)を破損することなく(潰すことなく)、良好に洗浄することができることを確認した。
【0044】
上記の場合、ケーシング体31におけるスリット形成範囲である800m~1500mまでの間で行った洗浄時間は約6.5時間であり、更に、洗浄作業後にまで上昇させる時間も考慮すると、温泉井戸を運営する観点から現実的な速度としては50%以上であるのが望ましく、好ましくは50%~70%程度が最適と考える。
【0045】
従って、本実施例に係る制御手段は、洗浄対象となる井戸30の前述した式で算出されるケーシング体31内への地下水導入流速の50%~70%の速度でブラシ体1を上昇させるように構成されている。
【0046】
尚、一般的なケーシング体31の全体における限界速度は(土の種類と掃流限界速度)は、砂の粒径にもよるが、細砂(粒径0.05~0.25)の限界流速は1.5~1.5cm/s、中砂(粒径0.25~0.5)の限界流速は1.5~1.7、荒砂(0.65~2.0)は1.7~3.7cm/sと言われており、これ以上の流速を上げることは避けるのが望ましい。
【0047】
また、制御手段には、洗浄対象となる井戸30のストレーナ部32の情報(位置や長さ)を入力することでストレーナ部32の下端部から上端部までを上昇する際に前述した速度で上昇するように制御される。ストレーナ部32の洗浄は、ストレーナ部32の下端部から上端部までブラシ体1を回転しながらブラシ体駆動部2の駆動により上昇し、ブラシ体1の回転を停止して自重によりブラシ体1をストレーナ部32の上端部から下端部まで降下し、この駆動上昇と自重降下を2~3度繰り返し行うことで1つのストレーナ部32の洗浄作業(ブラッシング工程)が完了する。
【0048】
また、本実施例では、前述したブラッシング工程においてブラシ体1で除去された汚れDが地下水W内に浮いた汚れ含有地下水DW(濁った地下水)を排出する汚れ地下水排出装置7を設けている。
【0049】
この汚れ地下水排出装置7は、多数の金属製の管部材を継合して成る汚れ地下水排出用揚水管7aと、この汚れ地下水排出用揚水管7aの下端部に設けられる汚れ地下水排出用ポンプ7bとで構成されている。
【0050】
従って、この汚れ地下水排出装置7によりブラッシング工程で出た汚れ地下水DWを地上(井戸30外)に排出する作業(汚れ地下水排出工程)が行われる。
【0051】
以上の構成から成る本実施例に係る井戸洗浄装置を用いた井戸の洗浄方法について説明する。尚、通常、ストレーナ部32の通水用スリット32a内縁に汚れDが付着して該通水用スリット32aを塞ぐように成長するが(
図1~3参照)、この汚れDの付着により水位(動水位)が低下していると判断された場合に井戸30(ストレーナ部32)の洗浄作業が行われる。
【0052】
先ず、洗浄対象となる井戸30におけるケーシング体31内への地下水導入速度(m/sec)を算出し、この情報を制御手段に入力する。この制御手段に入力する情報として、前述したケーシング体31内への地下水導入速度(cm/sec)の他、ストレーナ部32の情報(位置や長さ)も入力する。
【0053】
また、揚水管33及びポンプ34を撤去し、井戸洗浄装置を配置する。
【0054】
具体的には、制御手段の制御によりブラシ体駆動部2が作動して吊材4は所定量(ブラシ体1が洗浄するストレーナ部32に到達する量)だけ送り出され、ブラシ体1は自重により洗浄する位置(ストレーナ部32の下端部)まで降下する(
図3参照)。
【0055】
続いて、ブラシ体1が洗浄するストレーナ部32の下端位置まで達した後、
制御手段の制御によりブラシ体1は回転を開始して上昇する(
図5参照)。この際、制御手段により制御されてブラシ体1はケーシング体31内への地下水導入速度(cm/sec)の
50%~70%の速度で上昇しながら洗浄する。
【0056】
ブラシ体1がストレーナ部32の上端部まで回転しながら上昇した後、ブラシ体1の回転を停止して自重によりブラシ体1をストレーナ部32の上端部から下端部まで降下し、この洗浄を行う駆動上昇と自重降下を2~3度繰り返し行うことで1箇所のストレーナ部32の洗浄作業(ブラッシング工程)が完了する。このブラッシング工程を井戸30のストレーナ部32全てに対して行う。
【0057】
続いて、ブラッシング工程完了後、井戸30からブラシ体1を撤去し、汚れ地下水排出装置7(汚れ地下水排出用揚水管7a及び汚れ地下水排出用ポンプ7b)を配置して汚れDの浮いた汚れ地下水DWを排出する。この汚れ地下水DWの排出は、揚水される地下水が所定の基準(温泉水として使用できる状態)になるまで行う。
【0058】
続いて、井戸30から汚れ地下水排出装置7を撤去し、揚水管33及びポンプ34を配置して通常稼働を行う(
図10参照)。
【0059】
本実施例は上述のように構成したから、ブラシ体駆動部2は、洗浄対象となる井戸30のケーシング体31内への地下水導入流速(cm/sec)の50%~70%の速度でブラシ体1を上昇させる制御手段を有しており、この構成から、前述した従来のように井戸30を破損させることなく良好に洗浄することができ(これはブラシ体1を上昇させた後の空間に対するブラシ体1の上昇により無くなる地下水の量と、地盤からケーシング体31内に導入される地下水の量とのバランスが崩れず、当該空間が負圧にならないからと考えられる。)、また、洗浄対象となる井戸30を破損させない程度にできるだけ速い速度で上昇させることになるため、井戸30内の洗浄作業が良好に行えることになる。
【0060】
また、本実施例は、ケーシング体31内への地下水導入流速(cm/sec)を算出するためのケーシング体31内への地下水導入量(L/min)は、ケーシング体31内の地下水を汲み上げるポンプ34のポンプ作動時における動水位L1からポンプ停止後の所定時間(sec)における所定上昇水位L2までの水の体積(m3)を基準に高精度に計測されるから、前述した作用効果を確実に奏することになる。
【0061】
また、本実施例は、所定上昇水位L2は自然水位であるから、この点においても前述した作用効果を確実に奏することになる。
【0062】
また、本実施例は、ブラシ体1がストレーナ部32を通過して洗浄する場合に、ケーシング体31内への地下水導入流速(cm/sec)の50%~70%の速度でブラシ体1を上昇させるように制御手段は構成されているから、ケーシング体31における強度上の弱い部分であるストレーナ部32(通水用スリット32aが形成される分だけストレーナ部32はその他の部位に比して強度上弱い)の破損を確実に防止することができる。
【0063】
また、本実施例は、ブラシ体1は、駆動回転する回転軸部3の周面に外方へ向けてブラシ材1aを突出して構成されており、このブラシ体1の外径はストレーナ部32の内径以下に設定されているから、ストレーナ部32を良好に洗浄することができる。
【0064】
また、本実施例は、井戸30は温泉井戸であるから、本実施例のメリット(ケーシング体31を破損することなく最短で良好に洗浄できるメリット)を十分に発揮することができる。
【0065】
尚、本発明は、実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0066】
W 地下水
DW 汚れ地下水
1 ブラシ体
1a ブラシ材
2 ブラシ体駆動部
3a 回転軸部
7 汚れ地下水排出装置
7a 汚れ地下水排出用揚水管
30 井戸
31 ケーシング体
32 ストレーナ部
32a スリット
33 揚水管
51 掘削孔
【要約】
【課題】本発明は、従来に無い画期的な井戸洗浄装置及び井戸洗浄方法を提供することを目的とする。
【解決手段】掘削孔51にストレーナ部32を有するケーシング体31を配して構築された井戸30内を洗浄する井戸洗浄装置であって、前記井戸30内に設けられるブラシ体1と、このブラシ体1を上昇させるブラシ体駆動部2とを有し、前記ブラシ体駆動部2は、洗浄対象となる前記井戸30の前記ケーシング体31内への地下水導入流速の70%~50%の速度で前記ブラシ体1を上昇させる制御手段を有するものである。
【選択図】
図3