(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】除去制御装置、除去制御方法及び除去制御用プログラム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20230106BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230106BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/04 F
(21)【出願番号】P 2021169310
(22)【出願日】2021-10-15
【審査請求日】2022-04-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517149807
【氏名又は名称】株式会社ソリッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【氏名又は名称】奥 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100173510
【氏名又は名称】美川 公司
(72)【発明者】
【氏名】佐野 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】平山 俊之
(72)【発明者】
【氏名】三上 博之
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-184474(JP,A)
【文献】国際公開第2006/106681(WO,A1)
【文献】特開2020-149887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 -10/48
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池の電極上にサルフェーション現象によって生じた硫酸鉛皮膜の表層部に対して表皮効果を伴うパルス幅のパルス電流を出力し、当該硫酸鉛皮膜を分解する皮膜除去装置を制御する除去制御装置であって、
前記鉛蓄電池の内部抵抗値の変化を計測可能な抵抗値を有し且つ当該鉛蓄電池に並列に接続された抵抗手段と、
予め設定された計測期間ごとに前記抵抗手段を用いて前記内部抵抗値を計測する計測手段と、
一の前記
計測期間中に計測された
前記内部抵抗値に基づいて、前記表層部に対する前記パルス電流の出力態様を制御する出力態様制御手段と、
を備え
、
前記出力態様制御手段は、(i)各前記計測期間内にそれぞれ計測された前記内部抵抗値に基づいて、前記出力態様の制御を行うか否かを一の当該計測期間に一度判定すること、及び、(ii)一の前記計測期間において前記出力態様の制御を行うと判定されたとき、当該一の前記計測期間内に計測された前記内部抵抗値に基づいて前記出力態様を制御すること、を、(iii)当該計測期間ごとに繰り返し、
当該計測期間が一ヶ月であることを特徴とする除去制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の除去制御装置において、
前記出力態様制御手段は、前記出力態様としての前記パルス電流の電流値及び出力時間を、前記内部抵抗値に基づいて制御することを特徴とする除去制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の除去制御装置において、
当該除去制御装置及び前記皮膜除去装置は前記鉛蓄電池からの電力を当該除去制御装置及び当該皮膜除去装置の駆動電力としており、
前記計測手段は、前記パルス電流が出力されていない期間に前記内部抵抗値を計測することを特徴とする除去制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の除去制御装置において、
前記計測手段は、前記内部抵抗値が計測可能な最少時間として予め設定された時間内でのみ当該内部抵抗値の計測を行うことを特徴とする除去制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の除去制御装置において、
前記鉛蓄電池の周囲環境の温度を検出する温度検出手段と、
前記検出された温度を用いて前記検出された内部抵抗値を補正する補正手段と、
を更に備え、
前記出力態様制御手段は、前記補正された内部抵抗値に基づいて前記出力態様を制御することを特徴とする除去制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の除去制御装置において、
前記計測された内部抵抗値に含まれる誤差を排除するためのパラメータに基づいて当該誤差を排除して前記出力態様制御手段における前記出力態様の制御に供させる誤差除去手段を更に備えることを特徴とする除去制御
装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の除去制御装置において、
前記出力態様制御手段は、前記計測された内部抵抗値に基づいて前記パルス電流におけるパルス間隔を制御することを特徴とする除去制御
装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の除去制御装置において、
前記出力態様制御手段は、前記鉛蓄電池に固有の内部抵抗値の初期値を示す初期値データを含む基準データを更に用いて前記出力態様を制御することを特徴とする除去制御装置。
【請求項9】
鉛蓄電池の電極上にサルフェーション現象によって生じた硫酸鉛皮膜の表層部に対して表皮効果を伴うパルス幅のパルス電流を出力し当該硫酸鉛皮膜を分解する皮膜除去装置を制御する除去制御装置であって、前記鉛蓄電池の内部抵抗値の変化を計測可能な抵抗値を有し且つ当該鉛蓄電池に並列に接続された抵抗手段を備える除去制御装置において実行される除去制御方法であって、
予め設定された計測期間ごとに前記抵抗手段を用いて前記内部抵抗値を計測する計測工程と、
一の前記計測期間中に計測された前記内部抵抗値に基づいて、前記表層部に対する前記パルス電流の出力態様を制御する出力態様制御工程と、
を含み、
前記出力態様制御工程においては、(i)各前記計測期間内にそれぞれ計測された前記内部抵抗値に基づいて、前記出力態様の制御を行うか否かを一の当該計測期間に一度判定すること、及び、(ii)一の前記計測期間において前記出力態様の制御を行うと判定されたとき、当該一の前記計測期間内に計測された前記内部抵抗値に基づいて前記出力態様を制御すること、を、(iii)当該計測期間ごとに繰り返し、
当該計測期間が一ヶ月であることを特徴とする除去制御方法。
【請求項10】
鉛蓄電池の電極上にサルフェーション現象によって生じた硫酸鉛皮膜の表層部に対して表皮効果を伴うパルス幅のパルス電流を出力し当該硫酸鉛皮膜を分解する皮膜除去装置を制御する除去制御装置であって、前記鉛蓄電池の内部抵抗値の変化を計測可能な抵抗値を有し且つ当該鉛蓄電池に並列に接続された抵抗手段を備える除去制御装置に含まれるコンピュータを、
予め設定された計測期間ごとに前記抵抗手段を用いて前記内部抵抗値を計測する計測手段、及び、
一の前記計測期間中に計測された前記内部抵抗値に基づいて、前記表層部に対する前記パルス電流の出力態様を制御する出力態様制御手段、
として機能させる除去制御用プログラムであって、
前記出力態様制御手段として機能する前記コンピュータを、(i)各前記計測期間内にそれぞれ計測された前記内部抵抗値に基づいて、前記出力態様の制御を行うか否かを一の当該計測期間に一度判定すること、及び、(ii)一の前記計測期間において前記出力態様の制御を行うと判定されたとき、当該一の前記計測期間内に計測された前記内部抵抗値に基づいて前記出力態様を制御すること、を、(iii)当該計測期間ごとに繰り返すように機能させ、
当該計測期間が一ヶ月であることを特徴とする除去制御用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除去制御装置、除去制御方法及び除去制御用プログラムの技術分野に属する。より詳細には、鉛蓄電池の電極上に生じた硫酸鉛皮膜を分解して除去する皮膜除去装置の動作を制御する除去制御装置及び除去制御方法並びに当該除去制御装置に用いられる除去制御用プログラムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛蓄電池におけるサルフェーション現象が問題となっている。サルフェーション現象とは、鉛蓄電池の放電によって生成される硫酸鉛(PbSO4)が当該鉛蓄電池の電極上に析出し、それが次第に成長して当該電極上に不導体皮膜(硫酸鉛皮膜)を形成する現象である。このようなサルフェーション現象が生じる原因としては、例えば、鉛蓄電池の放電条件、放電せずに鉛蓄電池が放置されているときの周囲温度の変化、又は鉛蓄電池に外部から加わる振動等が挙げられる。そして、サルフェーション現象が発生すると、それに伴う上記硫酸鉛皮膜により鉛蓄電池の内部抵抗が増大し、これにより鉛蓄電池としての性能が低下したり、使用不能になったりすることがあった。
【0003】
ここで、形成された硫酸鉛皮膜の成長を阻止するためには、鉛蓄電池としての放電条件、その周囲温度、及びそれに対する振動等を、細心の注意をもって管理する必要がある。しかしながら、一般的な鉛蓄電池の実際の使用態様を考えたとき、その使用者が絶えずこのような注意を払うことは不可能である。従って、一旦形成された硫酸鉛皮膜を除去することで、鉛蓄電池としての性能を回復させる技術の開発が望まれていた。ここで、このような技術を開示した先行技術文献としては、例えば下記特許文献1が挙げられる。
【0004】
この特許文献1には、鉛蓄電池に取付けられ、サルフェーション現象によってその電極上に形成された硫酸鉛皮膜を分解して除去する皮膜除去装置が開示されている。より具体的に、特許文献1に開示されている皮膜除去装置は、電圧検出器、基準電圧発生器、電圧比較器、動作・非動作切替器、発振器、増幅器、波形整形回路、ネガティブパルス電流発生器及び通電表示器を備え、表皮効果を伴う短いパルス幅のパルス電流を出力して硫酸鉛皮膜の表層部を集中的に分解することで、当該硫酸鉛皮膜を除去する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで一般に、鉛蓄電池は長期間使用されることが多いため、電極上における上記硫酸鉛皮膜の形成状況や成長状況は、鉛蓄電池自体の経年変化や周囲環境の変化等に起因して経時的に変化する。従って、上記パルス電流の出力によるその分解も、当該形成状況や成長状況に対応させて最適化されるべきであり、これにより皮膜除去装置としての硫酸鉛皮膜の除去効果を長期間に渡って維持することが求められる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、このような要請に応じる点については考慮されていない。よって、当該特許文献1に記載の技術では上記要請に応じることはできないという問題点があった。
【0008】
そこで本発明は、上記の要請に鑑みて為されたものであり、その課題の一例は、硫酸鉛皮膜の除去効果を長期に渡って維持することが可能となるように皮膜除去装置を制御することが可能な除去制御装置及び除去制御方法並びに当該除去制御装置に用いられる除去制御用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、鉛蓄電池の電極上にサルフェーション現象によって生じた硫酸鉛皮膜の表層部に対して表皮効果を伴うパルス幅のパルス電流を出力し、当該硫酸鉛皮膜を分解する皮膜除去装置を制御する除去制御装置であって、前記鉛蓄電池の内部抵抗値の変化を計測可能な抵抗値を有し且つ当該鉛蓄電池に並列に接続された抵抗回路等の抵抗手段と、予め設定された計測期間ごとに前記抵抗手段を用いて前記内部抵抗値を計測するバッテリ抵抗/温度計測部等の計測手段と、一の前記計測期間中に計測された前記内部抵抗値に基づいて、前記表層部に対する前記パルス電流の出力態様を制御するパルス制御部等の出力態様制御手段と、を備え、前記出力態様制御手段は、(i)各前記計測期間内にそれぞれ計測された前記内部抵抗値に基づいて、前記出力態様の制御を行うか否かを一の当該計測期間に一度判定すること、及び、(ii)一の前記計測期間において前記出力態様の制御を行うと判定されたとき、当該一の前記計測期間内に計測された前記内部抵抗値に基づいて前記出力態様を制御すること、を、(iii)当該計測期間ごとに繰り返し、当該計測期間が一ヶ月であるように構成される。
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項9に記載の発明は、鉛蓄電池の電極上にサルフェーション現象によって生じた硫酸鉛皮膜の表層部に対して表皮効果を伴うパルス幅のパルス電流を出力し当該硫酸鉛皮膜を分解する皮膜除去装置を制御する除去制御装置であって、前記鉛蓄電池の内部抵抗値の変化を計測可能な抵抗値を有し且つ当該鉛蓄電池に並列に接続された抵抗回路等の抵抗手段を備える除去制御装置において実行される除去制御方法であって、予め設定された計測期間ごとに前記抵抗手段を用いて前記内部抵抗値を計測する計測工程と、一の前記計測期間中に計測された前記内部抵抗値に基づいて、前記表層部に対する前記パルス電流の出力態様を制御する出力態様制御工程と、を含み、前記出力態様制御工程においては、(i)各前記計測期間内にそれぞれ計測された前記内部抵抗値に基づいて、前記出力態様の制御を行うか否かを一の当該計測期間に一度判定すること、及び、(ii)一の前記計測期間において前記出力態様の制御を行うと判定されたとき、当該一の前記計測期間内に計測された前記内部抵抗値に基づいて前記出力態様を制御すること、を、(iii)当該計測期間ごとに繰り返し、当該計測期間が一ヶ月であるように構成される。
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項10に記載の発明は、鉛蓄電池の電極上にサルフェーション現象によって生じた硫酸鉛皮膜の表層部に対して表皮効果を伴うパルス幅のパルス電流を出力し当該硫酸鉛皮膜を分解する皮膜除去装置を制御する除去制御装置であって、前記鉛蓄電池の内部抵抗値の変化を計測可能な抵抗値を有し且つ当該鉛蓄電池に並列に接続された抵抗回路等の抵抗手段を備える除去制御装置に含まれるコンピュータを、予め設定された計測期間ごとに前記抵抗手段を用いて前記内部抵抗値を計測する計測手段、及び、一の前記計測期間中に計測された前記内部抵抗値に基づいて、前記表層部に対する前記パルス電流の出力態様を制御する出力態様制御手段、として機能させる除去制御用プログラムであって、前記出力態様制御手段として機能する前記コンピュータを、(i)各前記計測期間内にそれぞれ計測された前記内部抵抗値に基づいて、前記出力態様の制御を行うか否かを一の当該計測期間に一度判定すること、及び、(ii)一の前記計測期間において前記出力態様の制御を行うと判定されたとき、当該一の前記計測期間内に計測された前記内部抵抗値に基づいて前記出力態様を制御すること、を、(iii)当該継続期間ごとに繰り返すように機能させ、当該計測期間が一ヶ月であるように構成される。
【0012】
請求項1、請求項9又は請求項10のいずれか一項に記載の発明によれば、鉛蓄電池に並列に接続された抵抗手段を用いて既定の計測期間ごとに鉛蓄電池の内部抵抗値を計測し、一の計測期間中に計測された内部抵抗値に基づいて鉛蓄電池の電極上の硫酸鉛皮膜の表層部に対するパルス電流の出力態様を制御するので、皮膜除去装置による硫酸鉛皮膜の除去効果を長期に渡って維持することができる。
また、各計測期間内にそれぞれ計測された内部抵抗値に基づいて、パルス電流の出力態様の制御を行うか否かを一の当該計測期間に一度判定すること、及び、一の計測期間においてパルス電流の出力態様の制御を行うと判定されたとき、当該一の計測期間内に計測された内部抵抗値に基づいて当該出力態様を制御すること、が、当該継続期間ごとに繰り返され、更に、当該計測期間が一ヶ月であるように構成されるので、鉛蓄電池の電極上に生じた硫酸鉛皮膜を有効に除去することができる。
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の除去制御装置において、前記出力態様制御手段は、前記出力態様としての前記パルス電流の電流値及び出力時間を、前記内部抵抗値に基づいて制御するように構成される。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、パルス電流の出力態様としての当該パルス電流の電流値及び出力時間を内部抵抗値に基づいて制御するので、従来の構成を活用することで、皮膜除去装置による硫酸鉛皮膜の除去効果を簡易且つ長期に渡って維持することができる。
【0015】
上記の課題を解決するために、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の除去制御装置において、当該除去制御装置及び前記皮膜除去装置は前記鉛蓄電池からの電力を当該除去制御装置及び当該皮膜除去装置の駆動電力としており、前記計測手段は、前記パルス電流が出力されていない期間に前記内部抵抗値を計測するように構成される。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加えて、除去制御装置及び皮膜除去装置が鉛蓄電池からの電力を駆動電力としており、パルス電流が出力されていない期間に内部抵抗値を計測するので、鉛蓄電池からの電力の使用量を最小限としつつ、皮膜除去装置による硫酸鉛皮膜の除去効果を簡易且つ長期に渡って維持することができる。
【0017】
上記の課題を解決するために、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の除去制御装置において、前記計測手段は、前記内部抵抗値が計測可能な最少時間として予め設定された時間内でのみ当該内部抵抗値の計測を行うように構成される。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の作用に加えて、内部抵抗値が計測可能な最少時間として既定された時間内でのみ当該内部抵抗値の計測を行うので、鉛蓄電池からの電力の使用量をより低減することができる。
【0019】
上記の課題を解決するために、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の除去制御装置において、前記鉛蓄電池の周囲環境の温度を検出する温度センサ等の温度検出手段と、前記検出された温度を用いて前記計測された内部抵抗値を補正する内部抵抗計算部等の補正手段と、を更に備え、前記出力態様制御手段は、前記補正された内部抵抗値に基づいて前記出力態様を制御するように構成される。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、鉛蓄電池の周囲環境の温度を検出し、その検出された温度を用いて内部抵抗値を補正し、その補正された内部抵抗値に基づいてパルス電流の出力態様を制御するので、より効果的に当該出力態様を制御することができる。
上記の課題を解決するために、請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の除去制御装置において、前記計測された内部抵抗値に含まれる誤差を排除するためのパラメータに基づいて当該誤差を排除して前記出力態様制御手段における前記出力態様の制御に供させる誤差除去手段を更に備える。
請求項6に記載の発明によれば、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、計測された内部抵抗値に含まれる誤差を排除するためのパラメータに基づいて当該誤差を排除してパルス電流の出力態様の制御に供させるので、硫酸鉛皮膜の除去効果をより正確且つ長期に渡って維持することができる。
上記の課題を解決するために、請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の除去制御装置において、前記出力態様制御手段は、前記計測された内部抵抗値に基づいて前記パルス電流におけるパルス間隔を制御するように構成される。
請求項7に記載の発明によれば、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、計測された内部抵抗値に基づいてパルス電流におけるパルス間隔を制御するので、硫酸鉛皮膜の除去効果をより正確且つ長期に渡って維持することができる。
上記の課題を解決するために、請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の除去制御装置において、前記出力態様制御手段は、前記鉛蓄電池に固有の内部抵抗値の初期値を示す初期値データを含む基準データを更に用いて前記出力態様を制御するように構成される。
請求項8に記載の発明によれば、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、鉛蓄電池に固有の内部抵抗値の初期値を示す初期値データを含む基準データを更に用いて出力態様を制御するので、鉛蓄電器の固有の特性に合わせて硫酸鉛皮膜の除去効果をより正確且つ長期に渡って維持することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、鉛蓄電池に並列に接続された抵抗手段を用いて既定の計測期間ごとに鉛蓄電池の内部抵抗値を計測し、一の計測期間中に計測された内部抵抗値に基づいて鉛蓄電池の電極上の硫酸鉛皮膜の表層部に対するパルス電流の出力態様を制御するので、皮膜除去装置による硫酸鉛皮膜の除去効果を長期に渡って維持することができる。
【0022】
従って、皮膜除去装置による硫酸鉛皮膜の除去効果を長期に渡って維持することができる。
また、各計測期間内にそれぞれ計測された内部抵抗値に基づいて、パルス電流の出力態様の制御を行うか否かを一の当該計測期間に一度判定すること、及び、一の計測期間においてパルス電流の出力態様の制御を行うと判定されたとき、当該一の計測期間内に計測された内部抵抗値に基づいて当該出力態様を制御すること、が、当該継続期間ごとに繰り返され、更に、当該計測期間が一ヶ月であるように構成されるので、鉛蓄電池の電極上に生じた硫酸鉛皮膜を有効に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態の鉛蓄電池回復システムの概要構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態の鉛蓄電池回復システムで用いられるネガティブパルス電流の波形を例示する図である。
【
図3】第1実施形態の鉛蓄電池回復処理を示すフローチャート等であり、(a)は当該フローチャートであり、(b)は当該鉛蓄電池回復処理における諸データの変化を例示する図である。
【
図4】第2実施形態の鉛蓄電池回復処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、複数の鉛蓄電池が接続されてなるバッテリにおける当該鉛蓄電池の特性を改善してこれを延命させる鉛蓄電池回復システムに本発明を適用した場合の実施の形態である。
【0025】
(I)
第1実施形態
初めに、本発明の第1実施形態について、
図1乃至
図3を用いて説明する。なお、
図1は第1実施形態の鉛蓄電池回復システムの概要構成を示すブロック図であり、
図2は当該鉛蓄電池回復システムで用いられるネガティブパルス電流の波形を例示する図であり、
図3は第1実施形態の鉛蓄電池回復処理を示すフローチャート等である。
【0026】
図1に示すように、第1実施形態の鉛蓄電池回復システムSは、一又は複数の鉛蓄電池セル(その図示を省略する)が接続されてなるバッテリBTに対して、プラス端子T+及びマイナス端子T-を介して接続されている。このような鉛蓄電池回復システムSは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなるメインユニットMUと、抵抗回路Rと、基準電圧発生器1と、温度センサ2と、通電・アラーム表示器3と、SSD(Solid State Drive)等からなる不揮発性のデータ記録部4と、変圧器5と、ネガティブパルス電流発生部6と、により構成されている。以上の構成において、抵抗回路Rが本発明の「抵抗手段」の一例に相当し、温度センサ2が本発明の「温度検出手段」の一例に相当する。
【0027】
一方、メインユニットMUは、電圧検出部10と、動作・非動作切替部11と、バッテリ抵抗/温度計測部12と、内部抵抗計算部13と、パルス制御部14と、により構成されている。このとき、上記電圧検出部10、上記動作・非動作切替部11、上記バッテリ抵抗/温度検出部12、上記内部抵抗計算部13及び上記パルス制御部14は、メインユニットMUを構成する上記CPU等を含むハードウェアロジック回路により実現されるものであってもよいし、後述する第1実施形態の鉛蓄電池回復処理を示すフローチャートに対応するプログラムを上記CPUが読み込んで実行することにより、ソフトウェア的に実現されるものであってもよい。なお当該プログラムは、例えばデータ記録部4に予め記録されているものを読み出してもよい。以上の構成において、バッテリ抵抗/温度計測部12が本発明の「計測手段」の一例に相当し、内部抵抗計算部13が本発明の「補正手段」の一例に相当し、パルス制御部14が本発明の「出力態様制御手段」の一例に相当する。
【0028】
他方、データ記録部4は、後述する第1実施形態の記録データを不揮発性に記録する記録データベース40と、後述する第1実施形態の比較データを不揮発性に記録する比較データ記録部41と、後述する第1実施形態の第1許容範囲データを不揮発性に記録する許容範囲データ記録部42と、後述する第1実施形態の第1基準データを不揮発性に記録する第1基準データ記録部43と、後述する第1実施形態の第2基準データを不揮発性に記録する第2基準データ記録部44と、後述する第1実施形態の第3基準データを不揮発性に記録する第3基準データ記録部45と、を備えている。
【0029】
更に、ネガティブパルス電流発生部6は、発振器60と、増幅器61と、波形整形回路62と、ネガティブパルス電流発生器63と、を備えて構成されている。
【0030】
以上の構成において、基準電圧発生器1、変圧器5、電圧検出器10、動作・非動作切替部11、並びにネガティブパルス電流発生部6を構成する発振器60、増幅器61、波形整形回路62及びネガティブパルス電流発生器63は、基本的には上記特許文献1に記載されている基準電圧発生器、電圧比較器、電圧検出器、動作・非動作切替器、発振器、増幅器、波形整形回路及びネガティブパルス電流発生器と同様に機能し、バッテリBTを構成する鉛蓄電池セルの電極上に形成されている上記硫酸鉛皮膜をその表皮効果により微粒子状に分解するためのネガティブパルス電流を生成する。当該生成されたネガティブパルス電流は、動作・非動作切替部11によりその動作/非動作が制御されるネガティブパルス電流発生部6の動作時において、プラス端子T+及びマイナス端子T-を介してバッテリBTに印加される。
【0031】
このとき、バッテリBTに印加されるネガティブパルス電流の例としては、例えば
図2に示すように、一のネガティブパルス電流NPについて、パルス幅がTneg.秒でありパルス電圧が-Eneg.ボルトであるネガティブパルス電流NPが、上記発振器60等を含むネガティブパルス電流発生部6により、パルス間隔がTint.秒となるように連続して生成される。なお、
図2に示す一のネガティブパルス電流NPの波形は、上記特許文献1の
図2に示されるネガティブパルス電流の波形と同様である。そして、生成されたネガティブパルス電流NPは、プラス端子T+及びマイナス端子T-を介してバッテリBTに供給され、表皮効果による上記硫酸鉛皮膜の除去に供される。
【0032】
一方、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理において、メインユニットMUのパルス制御部14は、一のネガティブパルス電流NPにおける
図2に示す斜線部の面積(換言すれば、ネガティブパルス電流NPの電流値及び出力時間)を、バッテリBTとしての内部抵抗値と、バッテリBT及び鉛蓄電池回復システムSの周囲温度と、に基づいて制御(変更)する。これによりパルス制御部14は、バッテリBTに印加される一のネガティブパルス電流NPとしての強度を、上記内部抵抗値及び上記周囲温度に基づいて制御する。
【0033】
そして鉛蓄電池回復システムSは、上記ネガティブパルス電流NPの強度を制御すべく、バッテリBTに対して並列に接続され且つバッテリBTの内部抵抗値及びその変化を計測するための抵抗回路Rを備えている。ここで、バッテリBTの内部抵抗値の変化は例えば1ミリオーム(mΩ)以下の微小な変化であり、抵抗回路Rの接続位置から見た鉛蓄電池回復システムSの内部抵抗値よりも極めて小さい。そこで、抵抗回路Rとしての抵抗値は、バッテリBTの内部抵抗値の変化を計測可能な抵抗値とする。
【0034】
また、鉛蓄電池回復システムSは、上記ネガティブパルス電流NPの強度の制御に用いられる上記周囲温度を検出するための上記温度センサ2を備えている。そして、メインユニットMUのバッテリ抵抗/温度計測部12は、抵抗回路Rからの検出出力によりバッテリBTのその時点での内部抵抗値を計測すると共に、温度センサ2からの検出出力により上記周囲温度を計測し、それぞれの計測結果をメインユニットMUの内部抵抗計算部13に出力する。なお、バッテリ抵抗/温度計測部12におけるバッテリBTの内部抵抗値の計測と周囲温度の計測は、それぞれ、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理における計測期間(例えば一ヶ月)内の予め設定された日数(例えば月初めの五日)ごとに実行され、それぞれの計測結果が、当該計測の都度、内部抵抗計算部13に出力される。また、バッテリ抵抗/温度計測部12におけるバッテリBTの内部抵抗値の計測は、当該内部抵抗値が計測可能な最少時間として予め設定された時間内であって、上記パルス間隔(Tint.秒)内でのみ行われる。
【0035】
次に内部抵抗計算部13は、バッテリ抵抗/温度計測部12から出力されたバッテリBTの内部抵抗の計測結果及び周囲温度の計測結果に基づき、バッテリBTの実際の内部抵抗値を算出する。この内部抵抗値の算出は、バッテリ抵抗/温度計測部12からバッテリBTの内部抵抗値及び周囲温度それぞれの計測結果が出力されてくる度に、その最大値及び最小値を除きつつ実行される。このとき内部抵抗計算部13は、バッテリBTの内部抵抗値の計測結果を上記周囲温度の計測結果を用いて補正し、バッテリBTの実際の内部抵抗値を算出する。より具体的に内部抵抗計算部13は、上記周囲温度の計測結果を用いてバッテリBTの内部抵抗値の計測結果を補正し、バッテリBTの実際の内部抵抗値を算出する。このとき当該補正として具体的には、例えば、周囲温度の計測結果が予め設定された温度範囲内(例えば、18度から28度の間)は補正をせず、一方、当該計測結果が当該温度範囲以外の温度(当該温度範囲以下又は未満の場合と当該温度範囲以上又はそれを越えている場合を含む)の場合に例えば温度センサ2の特性に応じて予め設定された補正方法により補正を行うことが考えられる。このように算出されたバッテリBTの実際の内部抵抗値は、パルス制御部14に出力される。
【0036】
そしてパルス制御部14は、内部抵抗計算部13から出力されたバッテリBTの実際の内部抵抗値、並びにデータ記録部4の記録データベース40に記録されている記録データ、比較データ記録部41に記録されている比較データ、許容範囲データ記録部42に記録されている第1許容範囲データ、第1基準データ記録部43に記録されている第1基準データ、第2基準データ記録部44に記録されている第2基準データ及び第3基準データ記録部45に記録されている第3基準データをそれぞれ用いて、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理を実行して上記ネガティブパルス電流NPの強度を制御する。
【0037】
このとき、第1実施形態の上記記録データは、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理において、上記内部抵抗計算部13から出力されたバッテリBTの実際の内部抵抗値そのものを示すデータである。これに対し、第1実施形態の上記比較データは、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理において、上記計測期間に記録された上記記録データ(バッテリBTの実際の内部抵抗値)の、当該計測期間内における平均値を示すデータである。
【0038】
また第1実施形態の上記第1基準データは、バッテリBTを構成する鉛蓄電池セルに固有のデータであり、バッテリBTに含まれている鉛蓄電池セルにおける固有の内部抵抗値の初期値を示す初期値データ、及び経年変化等に起因して当該鉛蓄電池セルを交換すべき時期に至っていることを示す内部抵抗値である要交換値を示す要交換値データ、の二つのデータからなる。この第1基準データは、例えば鉛蓄電池回復システムS及びバッテリBTの装着時に当該バッテリBTのメーカ名及び型式を入力することにより、当該メーカ名及び型式に対応した図示しないデータベースから選択されるものである。この入力方法としては、例えばいわゆるIC(Integrated Circuit)カードを介した入力方法又は無線通信を介した入力方法が挙げられる。なお、上記データベースが更新された場合に、第1基準データも、当該更新に対応して常に更新される(最新版とされる)。
【0039】
更に第1実施形態の上記第1許容範囲データは、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理において、上記ネガティブパルス電流NPの強度を変更して上記鉛蓄電池セルの電極上に形成された硫酸鉛皮膜の除去を促進するか否かを判定する際に用いられるパラメータであって、上記第1基準データに対応して予め設定されたパラメータである。更にまた、第1実施形態の上記第3基準データは、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理において上記比較データの値によって変わるパラメータであり、上記第1許容範囲データとの比較により上記ネガティブパルス電流NPの強度を変更して上記鉛蓄電池セルの電極上に形成された硫酸鉛皮膜の除去を促進するか否かを判定する際に用いられるパラメータである。また、要交換値データとの比較によりバッテリBTが要交換であるか否かを判定するために用いられるパラメータでもある。最後に第1実施形態の上記第2基準データは、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理において、上記第1許容範囲データと上記比較データの値との関係において、上記第3基準データを更新する(書き換える)か否かを判定するために用いられるパラメータである。
【0040】
ここで、鉛蓄電池回復システムSにおける通電状態は、メインユニットMUの制御の下、通電・アラーム表示器3により例えばLED(Light Emitted Diode)表示される。これに加えて、バッテリBTを構成する鉛蓄電池セルの交換時期を示す警告表示も、通電・アラーム表示器3により、識別色の変更及び/又はオン/オフ表示等により表示される。
【0041】
次に、上記記録データ、上記比較データ、上記第1許容範囲データ、上記初期値データ及び上記要交換値データからなる上記第1基準データ、上記第2基準データ並びに上記第3基準データを用いてメインユニットMUのパルス制御部14を中心として実行される、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理について、より具体的に
図1及び
図3を用いて説明する。
【0042】
対応するプローチャートを
図3(a)に示すように、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理は、バッテリBT及びそれに対応する鉛蓄電池回復システムSが設置されたタイミングから開始される。なお、鉛蓄電池回復システムS自体の動作のための電力は、上記特許文献1に記載された硫酸鉛皮膜の除去装置と同様に、プラス端子T+及びマイナス端子T-を介してバッテリBTから供給されるように構成されている。また第1基準データ記録部43には、同時に設置されたバッテリBTを構成する鉛蓄電池セルについての上記初期値データ及び上記要交換値データからなる上記第1基準データが、既に不揮発性に記録されている。更に、ネガティブパルス電流発生部6によるネガティブパルス電流NPのバッテリBTへの印加は、バッテリBT及び鉛蓄電池回復システムSが設置されたタイミングで開始される。このときのネガティブパルス電流NPの印加は、バッテリBTを構成する鉛蓄電池セルの諸元(初期諸元)に対応して予め設定された初期値(上記パルス幅(Tneg.)、上記パルス電圧(-Eneg.)及び上記パルス間隔(Tint.)それぞれの予め設定された初期値)により開始される。
【0043】
そして、対応するバッテリBTと共に鉛蓄電池回復システムSが設置されて、当該バッテリBTから鉛蓄電池回復システムSへの電力供給が開始されると、バッテリ抵抗/温度計測部12によるバッテリBTのその時点での内部抵抗値の計測と、温度センサ2からの検出出力を用いた上記周囲温度の計測が開始され、それぞれの計測結果が内部抵抗計算部13に出力される。そして内部抵抗計算部13は、出力された各計測結果に基づき、その時点でのバッテリBTの実際の内部抵抗値を算出し、パルス制御部14に出力する。これによりパルス制御部14は、当該出力されたバッテリBTの内部抵抗値を、上記記録データとして、当該出力の日時を示す時刻データと共に記録データベース40に記録する(ステップS1)。
【0044】
次にパルス制御部14は、直前のステップS1における記録データの記録(上記ステップS1参照)が、バッテリBT及び鉛蓄電池回復システムSの設置後最初の記録であるか否かを、同時に記録される上記時刻データに基づいて判定する(ステップS2)。ステップS2の判定において、当該記録データの記録が鉛蓄電池回復システムS等の設置後最初の記録である場合(ステップS2:YES)、パルス制御部14は、直前のステップS1で記録データベース40に記録された記録データを、そのまま、第2基準データ及び第3基準データとして、それぞれ、第2基準データ記録部44及び第3基準データ記録部45に記録する(ステップS3)。その後パルス制御部14は、後述するステップS4に移行する。
【0045】
一方、ステップS2の判定において、直前の記録データの記録が鉛蓄電池回復システムS等の設置後最初の記録でない場合(ステップS2:NO)、パルス制御部14は次に、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理が開始されてから一の上記計測期間が経過しているか否かを、メインユニットMU内に備えられた図示しないタイマ等を参照して判定する(ステップS4)。ステップS4の判定において、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理が開始されてから一の上記計測期間が経過していない場合(ステップS4:NO)、パルス制御部14は、上記ステップS1に戻って、新たな記録データ記録等の処理を継続する。
【0046】
他方、ステップS4の判定において、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理が開始されてから一の上記計測期間が経過している場合(ステップS4:YES)、パルス制御部14は次に、直前の計測期間において記録データベース40に記録されている記録データの平均値を算出し、当該平均値を、直前の計測期間に対応する上記比較データとして比較データ記録部41に記録する(ステップS5)。その後パルス制御部14は、現時点で第2基準データ記録部44に記録されている第2基準データを読み出し、当該読み出された第2基準データの値と、現時点で比較データ記録部41に記録されている比較データの値と、の差の絶対値が上記第1許容範囲データの値より大きいか否かを判定する(ステップS6)。
【0047】
ステップS6の判定において、例えばバッテリBTを構成する鉛蓄電池セルにおける硫酸鉛皮膜の形成又はその成長による内部抵抗値の上昇に起因して、上記差の絶対値が上記第1許容範囲データの値より大きくなっている場合(ステップS6:YES)、パルス制御部14は次に、その時点での上記比較データを新たな第3基準データとして第3基準データ記録部45に記録する(ステップS7)。その後パルス制御部14は、上記鉛蓄電池セルの電極上に形成された硫酸鉛皮膜の除去を促進すべく、上記第1基準データを参照しつつ、上記ネガティブパルス電流NPの強度を上げる第1態様で当該ネガティブパルス電流NPの強度を制御する(ステップS8)。このとき、第2基準データの値と比較データの値との差の絶対値が第1許容範囲データの値より大きい場合、パルス制御部14は、当該差の絶対値の大きさに対応した変更方法により、ネガティブパルス電流NPの強度を上げるように制御する。その後、パルス制御部14は、上記第1基準データとして第1基準データ記録部43に記録されている上記要交換値データの値が、現時点で第3基準データ記録部45に記録されている第3基準データ(上記ステップS7参照)の値より大きいか否かを判定する(ステップS9)。
【0048】
一方、上記ステップS6の判定において、上記差の絶対値が上記第1許容範囲データの値より大きくなっていない場合(ステップS6:NO)、パルス制御部14は次に、上記第1基準データとして第1基準データ記録部43に記録されている初期値データの値が上記読み出された第2基準データよりも大きいか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14の判定において、上記読み出された第2基準データの値が上記初期値データの値以上である場合(ステップS14:NO)、パルス制御部14は、現時点ではネガティブパルス電流NPの強度を変更する必要がないとして、上記ステップS1に戻って、新たな記録データ記録等の処理を継続する。
【0049】
他方、ステップS14の判定において、上記初期値データの値が上記読み出された第2基準データの値より大きい場合(ステップS14:YES)、パルス制御部14は、ネガティブパルス電流NPの強度が上記バッテリBTの内部抵抗値が上昇しない程度の強度となる第2態様で当該ネガティブパルス電流NPの強度を制御する(ステップS15)。その後パルス制御部14は、上記ステップS9の判定に移行する。
【0050】
次に、上記ステップS9の判定において、上記要交換値データの値が、現時点の第3基準データの値より大きくない(すなわち、現時点の第3基準データの値が要交換値データの値以上である)場合(ステップS9:NO)、バッテリBTを構成する鉛蓄電池セルの劣化等によりその交換時期が到来しているとして、パルス制御部14は、通電・アラーム表示器3を用いて当該交換時期を示す警告表示を行う(ステップS10)。その後、パルス制御部14を含むメインユニットMUは、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理を終了する。
【0051】
一方、上記ステップS9の判定において、上記要交換値データの値が現時点の第3基準データの値より大きい場合(ステップS9:YES)、バッテリBTを構成する鉛蓄電池セルの劣化等はその交換を行うほどではないとして、パルス制御部14は次に、上記初期値データの値が現時点で第3基準データ記録部45に記録されている第3基準データ(上記ステップS7参照)の値より大きいか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11の判定において、上記初期値データの値が上記第3基準データの値より大きくない(すなわち、現時点の第3基準データの値が初期値データの値以上である)場合(ステップS11:NO)、パルス制御部14は、現時点ではネガティブパルス電流NPの強度を変更する必要がないとして、上記ステップS1に戻って、新たな記録データ記録等の処理を継続する。
【0052】
他方、ステップS11の判定において、上記初期値データの値が上記第3基準データの値より大きい場合(ステップS11:YES)、パルス制御部14は次に、現時点で第2基準データ記録部44に記録されている第2基準データ及び現時点で第3基準データ記録部45に記録されている第3基準データを読み出し、当該読み出された第2基準データ及び第3基準データそれぞれの値を比較し、当該第3基準データの値が当該第2基準データの値より小さいか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12の判定において、当該第3基準データの値が当該第2基準データの値以上である場合(ステップS12:NO)、パルス制御部14は、現時点ではネガティブパルス電流NPの強度を変更する必要がないとして、上記ステップS1に戻って、新たな記録データ記録等の処理を継続する。
【0053】
一方、ステップS12の判定において、当該第3基準データの値が当該第2基準データの値より小さい場合(ステップS12:YES)、パルス制御部14は、当該第3基準データの値を用いて第2基準データの値を更新する(ステップS13)。その後パルス制御部14は、上記ステップS1に戻って、新たな記録データ記録等の処理を継続する。
【0054】
ここで、上述した第1実施形態の鉛蓄電池回復処理が実行された場合の比較データ、第2基準データ及び第3基準データそれぞれの値の変遷について、
図3(b)を用いて例示しつつ説明する。なお、
図3(b)に例示するように、第1基準データ記録部43に記録されている第1基準データにおける上記初期値データにより示される初期値は0.2ミリオームであり、当該第1基準データにおける上記要交換値データにより示される要交換値は0.4ミリオームであるとする。また、許容範囲データ記録部42に記録されている第1許容範囲データの値は0.02ミリオームであるとする。更に、上記計測期間は一ヶ月であるとする。
【0055】
先ず、最初の計測期間において、バッテリBT及び鉛蓄電池回復システムSの設置後最初に記録された記録データの値が0.25ミリオームであったとすると(
図3(a)ステップS1参照)、その時点での第2基準データ及び第3基準データそれぞれの値は、いずれも0.25ミリオームとなる(
図3(a)ステップS3参照)。そして、最初の計測期間(一ヶ月)における比較データの値が0.275ミリオームであるとすると(
図3(a)ステップS4及びステップS5参照)、その時点でのステップS6の判定としては、
|比較データ-第2基準データ|=|0.275-0.25|=0.025>0.02(第1許容範囲)
となるので(
図3(a)ステップS6:YES参照)、
図3(a)に示すステップS7の処理により、第3基準データの値はその時点での比較データの値(0.275ミリオーム)とされる。このとき、その後の
図3(a)に示すステップS8の処理により、上記鉛蓄電池セルの電極上に形成された硫酸鉛皮膜の除去を促進すべく、上記第1態様でネガティブパルス電流NPの強度が制御される。そして、この第1態様でのネガティブパルス電流NPの強度の制御により、上記鉛蓄電池セルの電極上に形成された硫酸鉛皮膜の除去が促進され、例えばnヶ月後にバッテリBTの内部抵抗値が0.195ミリオームに低下したとする。
【0056】
一方、バッテリBTの内部抵抗値が0.195ミリオームに低下した後のnヶ月目の計測期間においては、その間の上記ステップS7の処理により第3基準データの値が0.195ミリオームとされ、更にその間の上記ステップS13の処理により第2基準データの値も0.195ミリオームとされる。以上の第1実施形態の鉛蓄電池回復処理としての一連の動作が継続して繰り返されることにより、ネガティブパルス電流NPの強度がバッテリBTの実際の内部抵抗値の変化に応じて適切に制御される。これに対し、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理にも拘わらず、バッテリBTを構成する鉛蓄電池セルの交換時期が到来した場合には(
図3(a)ステップS9:NO参照)、速やかにその旨が通電・アラーム表示器3により警告表示される(
図3(a)ステップS10参照)。
【0057】
以上説明したように、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理によれば、鉛蓄電池セルにより構成されるバッテリBTに並列に接続された抵抗回路Rを用いてバッテリBTの内部抵抗値を計測し、計測された内部抵抗値に基づき、バッテリBTに印加されるネガティブパルス電流NPの強度を制御する。よって、上記特許文献1記載の発明による効果に加えて、パルス発生部6による硫酸鉛皮膜の除去効果(サルフェーション現象の進行の予防促進効果)を長期に渡って維持することができる。
【0058】
また、ネガティブパルス電流NPの電流値及び出力時間を内部抵抗値に基づいて制御するので、上記特許文献1記載の構成を活用することで、硫酸鉛皮膜の除去効果を簡易且つ長期に渡って維持することができる。
【0059】
更に、鉛蓄電池回復システムSがバッテリBTからの電力を駆動電力としており、ネガティブパルス電流NPが出力されていない期間(ネガティブパルス電流NPのパルス間隔内)に内部抵抗値を計測するので、バッテリBTからの電力の使用量を最小限としつつ、硫酸鉛皮膜の除去効果を簡易且つ長期に渡って維持することができる。
【0060】
更にまた、内部抵抗値が計測可能な最少時間として既定された時間内でのみ当該内部抵抗値の計測を行うので、バッテリBTからの電力の使用量をより低減することができる。
【0061】
また、バッテリBT及び鉛蓄電池回復システムSの設置場所の周囲の温度を検出し、その検出された温度を用いて内部抵抗値を補正し、その補正された内部抵抗値に基づいてネガティブパルス電流NPの強度を制御するので、より効果的に当該強度を制御することができる。
【0062】
(II)
第2実施形態
次に、本発明の他の実施形態である第2実施形態について、
図4を用いて説明する。なお
図4は、第2実施形態の鉛蓄電池回復処理を示すフローチャートである。このとき
図4では、
図3に示す第1実施形態の鉛蓄電池回復処理と同様の処理については同様のステップ番号を付しており、以下の説明ではそれらの詳細な説明を省略する。また、第2実施形態の鉛蓄電池回復システムのハードウェア的な構成は、基本的には第1実施形態の鉛蓄電池回復システムSと同様である。よって以下の説明では、当該鉛蓄電池回復システムSと同様の部材については同様の部材番号を用いて細部の説明を省略する。
【0063】
上述した第1実施形態の鉛蓄電池回復システムSにおいて、許容範囲データ記録部42に記録されているのは、ネガティブパルス電流NPの強度を上げるか否かを判定する際に用いられるパラメータとしての上記第1許容範囲データのみであった。これに対し、以下に説明する第2実施形態の鉛蓄電池回復システムでは、上記第1許容範囲データに加えて、内部抵抗値の計測における誤差を排除するために用いられるパラメータである第2許容範囲データを許容範囲データ記録部42に記録している。そして、上記第1許容範囲データを用いた判定に先駆けて、上記第2許容範囲データを用いた判定を行い、上記計測における誤差を排除する。なお、上記第1許容範囲データの値の具体例が0.02ミリオームである場合の第2許容範囲データの値の具体例としては、例えば0.01ミリオームとされる。
【0064】
すなわち
図4に示すように、第2実施形態の鉛蓄電池回復処理では、初めに、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理と同様のステップS1乃至ステップS5が、メインユニットMUにより実行される。次に第2実施形態の鉛蓄電池回復システムのパルス制御部14は、現時点で第2基準データ記録部44に記録されている第2基準データを読み出し、当該読み出された第2基準データの値と、現時点で比較データ記録部41に記録されている比較データの値と、の差の絶対値が上記第2許容範囲データの値より大きいか否かを判定する(ステップS20)。
【0065】
ステップS20の判定において、例えばバッテリBTの内部抵抗値の計測誤差等に起因して、上記差の絶対値が上記第2許容範囲データの値より大きくなっている場合(ステップS20:YES)、バッテリBTの内部抵抗値の計測誤差を超えた上記第2基準データの値と上記比較データの値との差があると見込んで、パルス制御部14は、以降、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理と同様のステップS6乃至ステップS15の処理を実行する。これに対し、上記ステップS20の判定において、上記差の絶対値が上記第2許容範囲データの値より大きくなっていない場合(ステップS20:NO)、パルス制御部14は、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理と同様のステップS14以降の処理に移行する。
【0066】
以上説明したように、第2実施形態の鉛蓄電池回復処理によれば、第1実施形態の鉛蓄電池回復処理による効果に加えて、バッテリBTの内部抵抗値の計測における誤差を排除しつつ、硫酸鉛皮膜の除去効果を正確且つ長期に渡って維持することができる。
【0067】
なお、上述した各実施形態では、ネガティブパルス電流NPそれぞれの態様(パルス幅やパルス間隔等)を同一とした。しかしながら、これらのうちのパルス間隔(換言すればパルス周波数)については、例えばソフトウェア又は外部スイッチ(例えばICカード型の外部スイッチ)を用いて、10キロヘルツ乃至50キロヘルツのパルス周波数となるように当該パルス間隔を変更するように構成することもできる。また、上記パルス間隔(パルス周波数)を、通信モジュールを介して遠隔操作により変更可能に構成することもできる。
【0068】
更に、バッテリBTに対しては温度センサ2、抵抗回路R及びバッテリ抵抗/温度計測部12並びに通信モジュールを設けると共に、当該通信モジュール及びインターネット等のネットワークを介して当該バッテリ抵抗/温度計測部12に接続された外部サーバ上に、データ記録部4を含む上記メインユニットMU等を備えるように構成してもよい。この場合には、通信モジュールを介した内部抵抗値の計測結果の送信は、例えば数分に一度程度が好適である。このような構成の場合には、複数のバッテリBTにおける硫酸鉛皮膜の除去を、当該外部サーバにおいて一元的に制御することができることになる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上それぞれ説明したように、本発明は鉛蓄電池セルにより構成されるバッテリBTの延命の分野に利用することが可能であり、特に鉛蓄電池セルの電極の表面に形成された硫酸鉛皮膜の除去(サルフェーション現象の進行の予防促進)の分野に適用すれば特に顕著な効果が得られる。
【符号の説明】
【0070】
1 基準電圧発生器
2 温度センサ
3 通電・アラーム表示器
4 データ記録部
5 変圧器
6 ネガティブパルス電流発生部
10 電圧検出部
11 動作・非動作切替部
12 バッテリ抵抗/温度計測部
13 内部抵抗計算部
14 パルス制御部
40 記録データベース
41 比較データ記録部
42 許容範囲データ記録部
43 第1基準データ記録部
44 第2基準データ記録部
45 第3基準データ記録部
60 発振器
61 増幅器
62 波形整形回路
63 ネガティブパルス電流発生器
S 鉛蓄電池回復システム
R 抵抗回路
BT バッテリ
T+ プラス端子
T- マイナス端子
MU メインユニット
NP ネガティブパルス電流
【要約】
【課題】硫酸鉛皮膜の除去効果を長期に渡って維持することが可能となるように皮膜除去装置を制御することが可能な除去制御装置等を提供する。
【解決手段】鉛蓄電池の電極上にサルフェーション現象によって生じた硫酸鉛皮膜の表層部に対して表皮効果を伴うパルス幅のパルス電流を出力し、当該硫酸鉛皮膜を分解する鉛蓄電池回復システムSを制御する場合に、鉛蓄電池の内部抵抗値の変化を計測可能な抵抗値を有し且つ鉛蓄電池に並列に接続された抵抗回路Rと、抵抗回路Rを用いて内部抵抗値を計測するバッテリ抵抗/温度計測部12と、計測された内部抵抗値に基づいて、上記表層部に対するパルス電流の出力態様を制御するパルス制御部14と、を備える。
【選択図】
図1