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特許7204260代謝性骨疾患又は更年期症状の予防又は治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】代謝性骨疾患又は更年期症状の予防又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/488 20060101AFI20230106BHJP
   A61K 36/346 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 15/02 20060101ALI20230106BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230106BHJP
【FI】
A61K36/488
A61K36/346
A61P3/00
A61P19/00
A61P15/02
A23L33/105
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021531068
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 KR2019015988
(87)【国際公開番号】W WO2020111652
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】10-2018-0150175
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518069438
【氏名又は名称】ヘリックスミス カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ホピン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウォンウ
(72)【発明者】
【氏名】イ、トゥ ソク
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ミ ウォン
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0045036(KR,A)
【文献】Choi, J. H. et al.,Platycodin D Inhibits Osteoclastogenesis by Repressing the NFATc1 and MAPK Signaling Pathway,Journal of Cellular Biochemistry,2017年,Vol.118, No.4,p.860-868,doi:10.1002/jcb.25763
【文献】Choi, J. H. et al.,Saponins, especially platyconic acid A, from Platycodon grandiflorum reduce airway inflammation in ovalbumin-induced mice and PMA-exposed A549 cells,Journal of Agricultural and Food Chemistry,2015年,Vol.63, No.5,p.1468-1476,doi:10.1021/jf5043954
【文献】Lim, D. W. et al.,Effects of dietary isoflavones from Puerariae radix on lipid and bone metabolism in ovariectomized rats,Nutrients,2013,Vol.5, No.7,p.2734-2746,doi:10.3390/nu5072734
【文献】Wang, X. et al.,Puerariae radix prevents bone loss in ovariectomized mice,Journal of Bone and Mineral Metabolism,2003年,Vol.21, No.5,p.268-275,doi:10.1007/s00774-003-0420-z
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A23L 33/00-33/29
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有効成分としての葛根(Pueraria lobata)及び桔梗(Platycodon grandiflorum)複合抽出物;及び
(b)薬剤学的に許容される担体
からなり、
前記複合抽出物中の、葛根の桔梗に対する重量比(w/w)は、1:1~1:8であり、
前記複合抽出物はエタノール又はその水溶液で抽出されたものである
代謝性骨疾患又は更年期症状予防又は治療用の薬剤学的組成物。
【請求項2】
有効成分としての、葛根及び桔梗複合抽出物からなり
前記複合抽出物中の、葛根の桔梗に対する重量比(w/w)は、1:1~1:8であり、
前記複合抽出物はエタノール又はその水溶液で抽出されたものである、
代謝性骨疾患又は更年期症状予防又は改善するための食品組成物。
【請求項3】
葛根及び桔梗をエタノール又はその水溶液で抽出することを含み、
前記抽出において、前記葛根の前記桔梗に対する重量比(w/w)は、1:1~1:8である、
代謝性骨疾患又は更年期症状を予防、治療、又は改善するための組成物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大韓民国保健福祉部の支援下で課題番号HI16C0275によってなされたものであり、この課題の研究管理専門機関は韓国保健産業振興院、研究事業名は“韓医標準臨床診療指針開発事業団(韓医薬治療技術公共資源化事業産業化段階研究)”、研究課題名は“閉経期症候群治療漢方薬製剤開発のための生脈散加減方の品質指標確立及び有効性検証を用いた最適化研究”、主管機関は(株)バイロメド、研究期間は2018.07.02~2018.11.30である。
【0002】
本特許出願は、2018年11月28日に大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2018-0150175号に対して優先権を主張し、この特許出願の開示事項は本明細書に参照によって組み込まれる。
【0003】
本発明は、葛根及び桔梗複合抽出物を有効成分として含む代謝性骨疾患又は更年期症状の予防又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
代謝性骨疾患は、身体内で骨を生成する役割を担う造骨細胞(osteoblast)と骨を破壊する役割を担う破骨細胞(osteoclast)間の活性に調和が崩れながら発生する。破骨細胞は、骨が成長する過程で不要になった骨組織を破壊又は吸収する大型の多核細胞である。成熟した破骨細胞は多核細胞であり、造血母細胞から起源する。中間葉幹細胞から分化した造骨細胞は約34ケ月間生存し、活性化された破骨細胞が古い骨を分解させた部位に新しい骨を作る。数多くの造骨細胞が骨基質を作り、次第に基質が無機質化しながら骨形成が完成する。その後、造骨細胞の約70%以上は死滅し、一部は骨細胞(osteocyte)及び骨表面細胞(bone lining cell)に分化して生存する。骨の量は破骨細胞と造骨細胞のバランスによって維持されるので、破骨細胞に対して重要な役割を担う分子を標的にした治療剤の開発が重要である。すなわち、骨を吸収する破骨細胞の活性が増加すると、骨の分解が促進し、骨が薄くなって折れやすくなる骨多孔症のような疾病が起き、このため、破骨細胞の活性を調節できる因子が骨疾患の治療剤として研究されている。
【0005】
例えば、骨減少症(osteopenia)は骨多孔症の前段階を意味し、発生原因は過度な破骨細胞の吸収(resorption)及び形成と知られている。リウマチに見られる骨萎縮症(bone atrophy)も過度な破骨細胞の吸収と関連している。線維性骨異形成症(fibrous dysplasia)は、破骨細胞作用が活発であることに起因する。パジェット病(Paget disease)と高カルシウム血症(hypercalcemia)は、破骨細胞機能抑制を用いた治療剤が用いられている。過度な破骨細胞の生成及び/又は活性を抑制すると、骨の腫瘍性破壊(neoplastic bone destruction)が抑制でき、また、骨溶解(osteolysis)及び骨関節炎(osteoarthritis)は、破骨細胞の吸収増加又は破骨細胞の分化増加によって発生する。
【0006】
一方、骨に侵入した癌細胞は、骨周囲の微細環境で増殖して破骨細胞又は造骨細胞の活性を刺激することによって、骨溶解性転移に進行するか或いは造骨性転移に進行するかを決定するものと知られている。血管に沿って回りながら骨に定着した癌細胞は、PTHrP(parathyroid hormonerelatedprotein)、インターロイキン(interleukin;IL)-1、IL-6、IL-8及びIL-11のような骨溶解因子(osteolytic factors)を分泌する。分泌された因子は造骨細胞においてOPG(osteoprotegerin)の発現を減らし、RANKL(receptor activator of NF-kB ligand)の発現を増加させる。増加したRANKLは破骨前駆細胞のRANKと結合して多数の破骨前駆細胞を成熟化させ、結局には過多な骨吸収による骨破壊を招く。
【0007】
また、女性の更年期(climacteric)とは、内分泌症候群の一種で、卵巣機能の全般的且つ漸進的な老化による女性ホルモン、すなわちエストロゲンの減少によって生理的機能及び性機能が減少又は消失される過渡期を意味する。更年期だけでなく、卵巣切除、卵巣機能低下などの他の原因によるエストロゲン欠乏患者においても同じ症状が見られる。かかる更年期の症状には、顔面紅潮、頻脈、発汗又は頭痛のような血管性変化による症状と、筋肉痛、関節痛及び腰痛のような筋骨格系の変化による症状がある。また、頻尿又は尿失禁のような泌尿生殖器変化による症状があり、記憶力減退、鬱病、集中力減退及び目眩のような脳神経系変化による症状があり、その他にも、視力減退及び皮膚と毛髪が変化する症状が発生し、ホルモン変化による更年期性骨多孔症又は心血管系疾患など、女性の健康に致命的な疾患が発生することもある。
【0008】
中年女性の身体的、精神的健康及び生活の質を改善するために、更年期症状を改善できる治療剤の開発が要求されており、このような更年期症状の改善のためにホルモン代替療法及び非ステロイド系製剤などの薬物が開発されたことがある。しかし、これら薬物の殆どが頭痛及び体重増加などの副作用があると知られており、特に、エストロゲン代替療法も、人為的に体内にホルモンを投与するものであるため、それに対する拒否反応の他に子宮出血、脳卒中、心臓発作、乳癌及び子宮癌などの発生危険も増加すると知られている。
【0009】
かかる問題点から、食品や添加物の形態で摂取する自然的な方法でエストロゲン療法を代替することに関心が高まっており、副作用がないうえに、更年期症状の緩和効果に優れた新しい更年期治療剤の開発が要求されている状況である。
【0010】
そこで、本発明者らは、代謝性骨疾患又は更年期症状を予防又は改善できる物質を見出すために多く研究し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、副作用がない上にも効果に優れた天産物由来の代謝性骨疾患又は更年期症状を予防、改善又は治療できる物質を開発するために鋭意研究努力した。その結果、葛根及び桔梗複合抽出物を含む組成物が代謝性骨疾患又は更年期症状を予防、改善又は治療するのに優れた効能を有することを糾明し、本発明を完成するに至った。
【0012】
したがって、本発明の目的は、代謝性骨疾患又は更年期症状予防又は治療用の薬剤学的組成物を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、代謝性骨疾患又は更年期症状予防又は改善用の食品組成物を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、代謝性骨疾患又は更年期症状の予防、改善、又は治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、本発明は、(a)有効成分としての葛根(Pueraria lobata)及び桔梗(Platycodon grandiflorum)複合抽出物;及び
(b)薬剤学的に許容される担体を含む、代謝性骨疾患又は更年期症状予防又は治療用の薬剤学的組成物を提供する。
【0016】
本発明者らは、副作用がない上に効果に優れた天産物由来の代謝性骨疾患又は更年期症状を予防、改善又は治療できる物質を開発しようと鋭意研究努力した。その結果、葛根及び桔梗複合抽出物を含む組成物が代謝性骨疾患又は更年期症状を予防、改善又は治療するのに優れた効能を有することを糾明した。
【0017】
本発明における「桔梗(Platycodon grandiflorum)」は、キキョウ科(Campanulaceae)の植物であるキキョウ(Platycodon grandiflorum A.DC.)の根のことを指し、一般に、韓国ではキルキョン(Kilkyoung)、中国ではジゲン(Jiegeng)、日本ではキキョウ(Kikyo)と呼ばれ、伝統的な東洋医薬品として用いられてきた。桔梗は主に、去痰、鎮咳作用、咳及び気管支炎の治療剤として用いられている。
【0018】
本発明における「葛根(Pueraria lobata)」は、マメ科(Leguminosae)に属する多年生の蔓植物である葛(Pueraria thunbergiana BENTH)の塊茎のことを指し、プエラリン(puerarin)、プエラリンキシロース(puerarin xylose)、ダイゼイン(daidzein)、シトステロール(sitosterol)などの物質を含有しており、血流増加作用、鎮痙作用、解熱作用などを有するものと知られている。
【0019】
本発明の組成物は、有効成分として葛根及び桔梗複合抽出物を含む。本発明の葛根及び桔梗複合抽出物は、(i)葛根及び桔梗の混合物を抽出溶媒で抽出する単一抽出工程によって製造されるか、或いは(ii)葛根、桔梗の単一成分の抽出物をそれぞれ製造した後、両成分の抽出物を混合する方式で製造することができる。
【0020】
本明細書で使われる用語「抽出物」は、上述したように、当業界で粗抽出物(crude extract)として通用される意味を有するが、広義には、抽出物をさらに分画(fractionation)した分画物も含む。すなわち、葛根及び桔梗複合抽出物は、上述した溶媒から得られた物の他、ここに精製過程をさらに適用して得た物も含む。例えば、前記抽出物を、一定の分子量カットオフ値を有する限外濾過膜に通過させて得た分画、様々なクロマトグラフィー(サイズ、電荷、疎水性又は親和性による分離のために作製されたもの)による分離などの、さらに施された様々な精製方法によって得られた分画も、本発明の葛根及び桔梗複合抽出物に含まれる。
【0021】
本発明の一具現例において、本発明の抽出物は極性有機溶媒抽出物である。本明細書における用語「極性有機溶媒」とは、(a)水、(b)炭素数1~4の無水又は含水低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ノーマルプロパノール、イソプロパノール及びノーマルブタノールなど)、(c)酢酸、又は前記極性有機溶媒の混合物を含む。
【0022】
本発明の一具現例において、本発明の極性有機溶媒は、水、炭素数1~4の無水又は含水低級アルコール、酢酸、又はこれらの成分の中から選ばれる2以上の成分の混合物である。
【0023】
本発明の一具現例において、本発明の炭素数1~4の無水又は含水低級アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ノーマルプロパノール、イソプロパノール及びノーマルブタノールからなる群から選ばれるいずれか一つ以上である。
【0024】
前記有機溶媒の濃度は、1~100%(v/v)、具体的には、10~100%(v/v)、20~100%(v/v)、30~100%(v/v))、40~100%(v/v)、50~100%(v/v)、60~100%(v/v)、70~100%(v/v)、80~100%(v/v)であり、より具体的には、25%(v/v)、50%(v/v)、75%(v/v)、又は95%(v/v)であるが、これに制限されない。
【0025】
本発明の一具現例による抽出物を製造するために、抽出に使用される溶媒の量は、使用される生薬成分の量にしたがって適切に選ぶことができる。具体的に、例えば、抽出物の製造に使用される葛根及び桔梗の重量の1倍~20倍の体積、具体的に2倍~20倍の体積、より具体的に5倍~15倍の体積、さらに具体的に7倍~12倍の体積であるが、これに制限されない。
【0026】
本発明の抽出物の抽出温度は、特に制限されず、例えば0℃~120℃でよく、具体的には15℃~95℃でよい。
【0027】
本発明の一具現例において、本発明の抽出溶媒が水である場合、抽出温度は80℃以上が好ましく、抽出溶媒が炭素数1~4の低級アルコールである場合には、15℃~30℃が好ましい。
【0028】
本発明の抽出物の抽出時間は、特に制限されず、例えば、1時間~10日、1時間~120時間でよく、具体的には、1時間~72時間、1時間~48時間、1時間~36時間、1時間~24時間、1時間~12時間、1時間~10時間、1時間~6時間でよいが、これに制限されない。
【0029】
本発明に用いられる抽出物は、熱水抽出、冷浸抽出、還流冷却抽出、超音波抽出又は当業界における通常の抽出方法で抽出することができる。本発明の具体例において、本発明の抽出物は、熱水抽出又は低級アルコールを用いた冷浸抽出方法で製造でき、1回~10回反復抽出することができる。
【0030】
本発明の葛根及び桔梗複合抽出物は、減圧蒸留及び凍結乾燥又は噴霧乾燥などのような更なる過程によって粉末状に製造することができる。
【0031】
本発明の一具現例において、有効成分である葛根及び桔梗の配合重量比(w/w)は1:20~20:1である。他の具体例において、葛根及び桔梗の配合重量比(w/w)は、1:15~15:1、1:12~12:1、1:10~10:1、1:10~5:1、1:10~3:1、1:10~1:2、1:10~1:1、1:8~8:1、1:8~5:1、1:8~3:1、1:8~1:2、1:8~1:1、1:6~6:1、1:6~5:1、1:6~3:1、1:6~2:1、1:6~1:1、1:5~5:1、1:5~3:1、1:5~2:1、1:5~1:1、1:4~4:1、1:4~3:1、1:4~2:1、1:4~1:1、1:3~3:1、1:3~2:1、1:3~1:1、1:2~2:1、1:2~1:1、1:1.5~1.5:1又は1:1である。
【0032】
本発明の具体的な具現例において、前記葛根及び桔梗の配合重量比は1:1~1:8であり、より具体的には1:1、1:2、1:4、1:8、2:1、4:1、又は8:1であり、最も具体的には1:1であるが、これに限定されない。
【0033】
本明細書における用語「配合重量比(w/w)」とは、抽出工程を行う前における各成分の重量比のことを指す。例えば、本発明の複合抽出物が葛根及び桔梗の混合物を抽出溶媒で抽出する単一抽出工程で製造される場合、前記混合物に含まれた葛根及び桔梗のそれぞれの単一成分の重量比のことを指す。また、本発明の複合抽出物が葛根及び桔梗の各単一成分の抽出物をそれぞれ製造した後、両成分の抽出物を混合する方式で製造される場合、次の計算式によって計算される「単一成分基準重量」間の重量比を表す:
【0034】
【数1】
【0035】
本発明の組成物は、薬剤学的組成物として製造することができる。
【0036】
本発明において、用語「予防」とは、本発明に係る葛根及び桔梗複合抽出物を有効成分として含む組成物の投与によって代謝性骨疾患又は更年期症状の発病を阻害又は遅延させるあらゆる行為を意味する。
【0037】
本発明において、用語「治療」とは、本発明に係る葛根及び桔梗複合抽出物を有効成分として含む組成物の投与によって、代謝性骨疾患又は更年期症状の症状が好転したり或いは有益に変更されるあらゆる行為を意味する。
【0038】
本発明の薬剤学的組成物は、薬剤学的有効量の葛根及び桔梗複合抽出物を含む。前記「薬剤学的有効量」とは、上述した葛根及び桔梗複合抽出物の効能又は活性を達成するのに十分な量を意味し、本発明の目的を達成する限り、特に制限されない。
【0039】
本発明の薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体を含む。本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、シロップ及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されない。本発明の薬剤学的組成物は、これらの成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などもさらに含むことができる。適切な薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remignton’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0040】
本発明の薬剤学的組成物の適度の投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々に処方できる。本発明の薬剤学的組成物の通常の投与量は、成人基準で0.001~1000mg/kg範囲内である。また、人体内投与量は、動物実験に基づいて換算できる。
【0041】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することにより、単位容量の形態で製造されてもよく、多回容量容器内に内入させて製造されてもよい。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液、シロップ剤又は乳化液の形態であってもよく、エキス剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0042】
本発明における「代謝性骨疾患」とは、造骨細胞及び破骨細胞のアンバランスによって誘発される骨関連疾患のことを意味する。具体的な例には、過度な破骨細胞の骨吸収による骨多孔症(osteoprosis)、関節炎(arthritis)、歯周疾患(periodontal disease)、骨折又はパジェット病(Paget disease)などのような病理学的骨疾患によって骨破壊を促進する疾患が含まれるが、これらの骨代謝性疾患に限定されるものではない。
【0043】
上述した「骨多孔症」とは、骨の量が減少し、質的な変化によって骨の強度が弱くなって骨折の起きる可能性が高い状態を意味する。骨は人体内の諸器官を保護し、カルシウムのような体内に必要な物質を保管する貯蔵所として働き、骨組織に存在する骨を分解する破骨細胞(osteoclast)及び骨を生成する造骨細胞(osteoblast)間のバランスに続いて恒常性が維持される。骨多孔症は、両細胞活性のバランスが崩れながら破骨細胞による過度な骨の破壊が起きて発病及び進行する。骨多孔症において主要な分子としてはRANKL(receptoractivator of nuclear factor kappa-B ligand)があり、RANKLがその受容体に結合して様々な転写因子を活性化させ、破骨細胞の分化を促進させる。
【0044】
前記「関節炎」とは、一つ以上の関節部位に炎症を伴う関節疾患を意味する。前記関節炎の一般の形態は、関節を保護している軟骨の漸進的な損傷や退行性変化により、関節をなす骨と靭帯に損傷が起きて炎症及び疼痛が発生する、骨関節炎(osteoarthritis)である。本発明の目的上、前記関節炎は関節部位に骨損失を伴う疾患であり、その種類が特に次に制限されないが、骨関節炎又はリウマチ関節炎であってよい。
【0045】
前記「歯周疾患」とは、細菌に起因する歯牙支持組織の炎症状態を意味し、歯肉炎及び歯周炎に区別できる。発病原因は、不良な口腔衛生状態による口腔細菌が歯面細菌膜を形成することにある。歯面細菌膜とは、唾液中のねばっこい物質が接着剤となって細菌が歯牙表面にくっついて増殖した細菌塊のことを指す。歯面細菌膜はそのまま放置すると、炎症が発生して時には歯茎から出血があり、口臭がする場合があるが、このような症状を歯肉炎という。歯肉炎がさらに進行すると、歯牙と歯茎間の隙間がさらに深くなって歯周嚢ができ、ここに、歯周疾患を起こす細菌が繁殖して歯周炎につながる。歯周炎が進行すると、歯ブラシなどによる弱い刺激にも歯茎に出血或いは腫れがあり、しばしば急性炎症に変化して痛みを誘発する。このような炎症は、骨を作る機能は低下させ、骨を吸収する作用が大きくなるため、歯槽骨が益々低くなって歯槽骨が破壊され、結局には歯牙を喪失してしまう。
【0046】
前記「骨折」とは、骨や骨端板又は関節面の連続性が非正常に切れた状態であり、骨の破れを意味する。骨折を誘発する原因には、交通事故などの外傷、産業現場で起きる事故、骨多孔症、骨癌、代謝異常症などの疾病による骨の変化、及びスポーツや荷重による反復的な骨へのストレスなどがある。また、骨折状態は、骨折線(骨の切断によって発生した骨端に沿う線)に基づき、亀裂骨折、若木(greenstick)骨折、横骨折、斜骨折、螺旋骨折、分節骨折、粉砕骨折、裂離骨折、圧迫骨折、陥没骨折などに分類される。
【0047】
前記「パジェット病」は、骨再形成が過度に亢進して広範囲な部位の骨格系が侵犯される局所性骨疾患を意味する。パジェット病の病理学的な機転は、骨を掃除する機能を持つ破骨細胞による骨吸収の過多な増加とこれによる補償作用として骨を作る機能を持つ造骨細胞による新しい骨形成の増加とが結合したものと知らされており、また、骨パジェット病で新しく形成された骨は構造的に無秩序で、骨変形と骨折に非常に弱い状態であると知られている。
【0048】
本発明における「更年期症状」は、顔面紅潮、頻脈、発汗又は頭痛のような血管性変化による症状と、筋肉痛、関節痛及び腰痛のような筋骨格系の変化による症状を含む。また、頻尿又は尿失禁のような泌尿生殖器の変化による症状があり、記憶力減退、鬱病、集中力減退及び目眩のような脳神経系変化による症状があり、その他にも、視力減退と皮膚及び毛髪の変化といった症状があり、ホルモン変化による更年期性骨多孔症又は心血管系疾患などの女性の健康に致命的な疾患などを含む。
【0049】
後述の実施例から立証された通り、本発明の葛根及び桔梗の複合抽出物は、マウス大食細胞株にRANKLを処理した破骨細胞分化実験において、TRAPの活性を陰性対照群及び葛根及び桔梗の個別抽出物処理群に比べて大きく減少させ、破骨細胞分化抑制による骨多孔症の治療及び改善効能が確認された。
【0050】
また、本発明の葛根及び桔梗の複合抽出物は、胸部大動脈血管切片を用いた心血管系疾患モデルにおいて、陰性対照群及び葛根及び桔梗の個別抽出物処理群に比べて非常に高い血管弛緩効果を示し、更年期心血管系疾患に対する治療及び改善効能が確認された。
【0051】
また、本発明の葛根及び桔梗の複合抽出物は、卵巣切除骨多孔症マウスモデルにおいて、陰性対照群及び個別抽出物に比べてALP、Ca、MMP-9、及びオステオカルシン(Osteocalcin)のような骨多孔症に対する生化学的指標を大きく改善させるところ、骨多孔症の治療及び改善効能が確認された。
【0052】
前記葛根及び桔梗の複合抽出物の効果は、葛根、桔梗の個別抽出物と比較して、各指標に対して相乗的効果(synergistic)を示す。
【0053】
本発明の他の態様によれば、本発明は、葛根及び桔梗の複合抽出物を有効成分として含む代謝性骨疾患又は更年期症状予防又は改善用の食品組成物を提供する。
【0054】
本発明において、用語「改善」とは、本発明に係る葛根及び桔梗複合抽出物を有効成分として含む組成物の投与によって代謝性骨疾患又は更年期症状の程度を少なくとも減少させるあらゆる行為のことを指す。
【0055】
本発明の組成物が食品組成物として製造される場合、食品製造時に一般に添加される成分を含み、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。前記炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロース、オリゴ糖など;及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。香味剤として天然香味剤及び合成香味剤を使用することができる。例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤として製造される場合には、本発明の有効成分の他に、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁などをさらに含めることができる。
【0056】
本発明の食品組成物は、上述した本発明の一態様である薬剤学的組成物に含まれた葛根及び桔梗の複合抽出物をそのまま利用可能であり、本明細書記載の過度な複雑性を避けるために、重複する内容の記載は省略する。
【0057】
また、本発明の他の態様によれば、本発明は、上述した本発明の葛根及び桔梗の複合抽出物を有効成分として含む薬剤学的組成物又は食品組成物を対象体(subject)に投与する段階を含む、代謝性骨疾患又は更年期症状の予防、治療又は改善方法を提供する。
【0058】
本発明の治療方法、又は改善方法の対象疾病である代謝性骨疾患と更年期症状は、前記薬剤学的組成物又は食品組成物の対象疾病と関連して定義した通りである。
【0059】
本明細書で使われる用語「投与」又は「投与する」とは、本発明の組成物の治療的又は改善的有効量を、前記対象疾患に悩む対象体(個体)に直接投与し、対象体の体内で同量を形成させることを指す。
【0060】
前記組成物の「治療的有効量」は、組成物を投与しようとする対象体に治療的又は予防的効果を提供するのに十分な組成物の含有量を意味し、よって、「予防的有効量」を含む意味である。また、本明細書で使われる用語「対象体」は、ヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、チンパンジー、ヒヒ及びアカゲザルなどを含む哺乳類である。最も具体的には、本発明の対象体はヒトである。
【0061】
本発明の前記代謝性骨疾患又は更年期症状の予防、改善又は治療方法は、本発明の一態様である薬剤学的組成物、又は食品組成物を投与する段階を含む方法であるので、重複する内容については、本明細書の過度な重複性を避けるためにその記載を省略する。
【発明の効果】
【0062】
本発明の特徴及び利点を要約すれば次の通りである:
【0063】
(a)本発明は、代謝性骨疾患又は更年期症状予防又は治療用の薬剤学的組成物を提供する。
【0064】
(b)本発明は、代謝性骨疾患又は更年期症状予防又は改善用の食品組成物を提供する。
【0065】
(c)本発明は、代謝性骨疾患又は更年期症状の予防、改善又は治療方法を提供する。
【0066】
(d)本発明の薬剤学的組成物又は食品組成物を用いる場合、代謝性骨疾患又は更年期症状を副作用無しで効果的に予防、改善又は治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】実験例1による分化した破骨細胞に対する葛根及び桔梗複合抽出物のTRAP活性減少効果を示す。### P<0.001対葛根グループ;*** P<0.001対桔梗グループ(one-way ANOVA,with Bonferroni’s multiple comparison test)。
図2】実験例1による分化した破骨細胞に対する各熱水及びエタノール濃度別複合抽出物のTRAP活性減少効果を示す。*** P<0.001対陰性対照群グループ(one-way ANOVA,with Bonferroni’s multiple comparison test)。
図3】実験例2による胸部大動脈切片に対する葛根及び桔梗複合抽出物の血管弛緩効果を示す。### P<0.001対葛根グループ;* P<0.05対桔梗グループ(one-way ANOVA,with Bonferroni’s multiple comparison test)。
図4】実験例3による卵巣切除群(OVX+Vehicle)に対比して、各血中ALP(図4)、Ca(図5)、MMP-9(図6)、及びオステオカルシン(図7)濃度に及ぼす葛根、桔梗個別及び複合抽出物の効果を示す。* P<0.05対陰性対照群(OVX+Vehicle)グループ(one-way ANOVA,with Dunnett’s multiple comparison test)。
図5】同上
図6】同上
図7】同上
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【実施例
【0069】
製造例1:葛根(Pueraria lobata)及び桔梗(Platycodon grandiflorum)の複合抽出物の製造
洗浄及び乾燥した葛根(Pueraria lobata)及び桔梗(Platycodon grandiflorum)を1:1、2:1、4:1、8:1、1:2、1:4及び1:8の重量比(w/w)で混合し、10倍の70%エタノール水溶液を加えて20℃の温度で72時間よく撹拌しつつ抽出した後に濾過し、これを45~50℃で減圧濃縮した後に凍結乾燥させ、複合抽出物粉末を得た。その収率は、次表1に示す通りであった。
【0070】
【表1】
【0071】
比較例1:単一抽出物の製造
洗浄及び乾燥した葛根及び桔梗を各生薬の重量に10倍の70%エタノール水溶液を加えて20℃の温度で72時間よく撹拌しつつ抽出した後に濾過し、これを45~50℃で減圧濃縮した後に凍結乾燥させ、総2種の単一抽出物粉末を得た。その収率は、次表2に示す通りであった。
【0072】
【表2】
【0073】
製造例2:葛根(Pueraria lobata)及び桔梗(Platycodon grandiflorum)の抽出溶媒を個別にした複合抽出物の製造
洗浄及び乾燥した葛根(Pueraria lobata)及び桔梗(Platycodon grandiflorum)を1:1の重量比(w/w)で混合した後、熱水抽出物は90±5℃で3時間還流抽出し、エタノール抽出物は各10倍の0%、25%、50%、75%、95%のエタノール水溶液を加えて20℃の温度で72時間よく撹拌しつつ抽出した後に濾過し、これを45~50℃で減圧濃縮した後に凍結乾燥させ、複合抽出物粉末を得た。その収率は、次表3に示す通りであった。
【0074】
【表3】
【0075】
実験例1:RANKL(receptor activator of NF- kappaB ligand,Sigma- Aldrich,US)によって誘導された破骨細胞分化に対する複合抽出物の抑制効能
TRAP(Tartrate-resistant acid phosphatase)は、破骨細胞分化過程の指標として用いられる酵素であり、TRAP活性の減少は、破骨細胞分化の抑制を表す。本実験では、マウス大食細胞株RAW264.7細胞からRANKL(receptor activator of NF-kappaB ligand,Sigma-Aldrich,US)によって誘導及び分化した破骨細胞を用いてTRAP活性測定を行い、個別及び複合抽出物が破骨細胞分化に及ぼす影響と抽出溶媒別複合抽出物の破骨細胞分化に及ぼす影響を確認した。
【0076】
1-1.細胞株の培養
まず、RAW264.7細胞を、10%のチャコール処理ウシ胎児血清(charcoal-stripped fetal bovine serum,GIBCO)が添加されたフェノールレッド不含α-MEM(phenol-red free α-MEM)(GIBCO,US)培地を用いて37℃の5% CO培養器で培養した。RAW264.7細胞をウェル当たり1×10細胞数となるように96ウェルプレート(well-plate)に分注し、24時間安定化させた後、50ng/mlのRANKLと葛根、桔梗個別抽出物及び複合抽出物を600ug/mlとなるように処理したり、又は600ug/ml濃度の葛根、桔梗熱水複合抽出物及びエタノール濃度別複合抽出物を処理し、72時間培養後にTRAP活性分析を行った。
【0077】
1-2.TRAP活性測定
具体的に、30ulのTRAP活性評価溶液(酢酸ナトリウム600mM、pH5.5、L-アスコルビン酸17.6mg/ml、酒石酸水素化ナトリウム(sodium-tartrate dehydrate)9.2mg/ml、4-ニトロフェニルリン酸ナトリウム(4-nitrophenylphosphate Na)3.6mg/ml、Triton X-1000.3%、EDTA 6mM、NaCl 600mM)を処理して30分間37℃培養器で反応させた。反応後、300mM NaOHで反応を中止し、450nm波長で吸光度を測定した。
【0078】
TRAP活性はRANKL処理群(陰性対照群)に対比した比率で示した。
【0079】
個別抽出物と複合抽出物との比較実験では、次表4及び図1に示すように、RAW264.7細胞にRANKLを処理した結果、TRAPの活性が無処理群に比べて高く示されており、これは、全ての抽出物処理群で減少した。特に、葛根、桔梗個別抽出物処理群に比べて複合抽出物を処理した実験群においてTRAP活性の減少が多いことから、破骨細胞分化抑制に対して個別抽出物よりも複合抽出物が優れた効能を有することを確認した。
【0080】
【表4】
【0081】
次表5及び図2に示すように、熱水抽出物(製造例1-8)及びエタノール濃度別冷浸抽出物(製造例1-9、1-10、1-11、1-12、1-13)を処理した全ての実験群においてTRAP活性が大きく減少することを確認した。
【0082】
【表5】
【0083】
また、前記表4及び表5の結果値を補正した結果、表4の製造例1-1と表5の製造例1-12は、類似のTRAP活性を有することを確認した。
【0084】
実験例2:葛根及び桔梗の複合抽出物の血管弛緩効能の測定
エストロゲン欠乏は、血管収縮を誘発して閉経期女性の血圧上昇の原因となり、また脳血管の収縮は脳卒中を誘発するので、血管弛緩効能は、更年期性心血管系疾患に対する予防及び治療剤候補物質の発掘における主要評価指標として用いられている。本発明者らは、前記製造例1で抽出した葛根及び桔梗複合抽出物の血管弛緩効能を確認するために、反応槽(Organ Bath)試験を用いてフェニレフリン(Phenylephrine,PE)で収縮を誘導した白ネズミの胸部大動脈切片の弛緩反応性を評価した。
【0085】
2-1.胸部大動脈血管切片の作製
実験動物としてSD(Sprague Dawley)ラット8週齢雄を使用し、SDラットをエチルエーテル(Ethylether)で吸引麻酔させた後、直ちに胸部を切開して胸部大動脈を摘出した。直ちに、摘出した血管は、95%のOと5% COで混合されたガスが供給され、37℃に維持されているKrebs-Henseleit溶液(K-H溶液、構成、mM:NaCl、118.0;KCl、4.7;MgSO、1.2;KHPO4、1.2;CaCl、2.5;NaHCO、25.0;及びグルコース、11.1;pH7.4)に入れ、血管周囲組織と脂肪を除去した後、約2mm長の環状に切って血管切片を作製した。
【0086】
2-2.等張性収縮測定
作製した血管切片は、両端をタングステン(Tungsten)リングに掛けた後、下側は10ml容量の反応槽(organ bath)の底に装置されたリングに連結し、上側は、生体信号記録機(physiograph,AD Instrument Co.,Australia)に連結された等張性力変換機(isometric force transducer,AD Instrument Co.,Australia)に連結し、等張性収縮の変化をパワーラボ(PowerLab,AD Instrument Co.,Australia)プログラムで連続記録した。血管切片は15分間反応槽(organ bath)で安定させた後、被動張力1gをかけ、さらに1時間安定させた後、実験を行った。安定させる間に、反応槽(organ bath)内のKrebs-Henseleit溶液は毎20分ごとに新鮮な溶液に入れ換えた。
【0087】
血管切片の血管弛緩活性を確認するために、フェニレフリン1μMを、血管切片の位置している反応槽(organ bath)に処置した後、40分間血管切片の収縮を誘導した。十分に収縮した血管に、Krebs-Henseleit溶液に溶かした葛根、桔梗の個別抽出物及びこれらの複合抽出物を1mg/mlとなるように反応槽(organ bath)で処理し、血管弛緩活性を比較した。陰性対照群は、Krebs-Henseleit溶液だけを処理した。血管弛緩率(%)は、下の式を用いて算出した。
【0088】
【0089】
【数2】
【0090】
次表6及び図3に示すように、血管切片にフェニレフリンを処理した結果、血管切片の収縮が誘導され、血管弛緩率が約19.92%と現れた。陰性対照群に対比して、葛根個別抽出物は血管弛緩に影響を及ぼさなかったが、桔梗個別抽出物処理時に血管弛緩率が約31.35%増加し、複合抽出物処理時に血管弛緩率が約46.26%増加した。したがって、本発明の複合抽出物は、血管弛緩効能が、陰性対照群及び個別抽出物に比べて優れていることを確認した。
【0091】
【表6】
【0092】
実験例3:葛根及び桔梗の複合抽出物の骨消失指標改善効能の測定
更年期女性に特徴的に見られるエストロゲン欠乏は、骨を分解する破骨細胞の分化を誘導することによって、結果的に骨減少による骨多孔症を誘発する。現在、更年期女性におけるエストロゲン欠乏による骨減少症状を最もよく反映する動物モデルは、卵巣切除(OVX,ovariectomy)ラットモデルである。卵巣切除ラットモデルでは、卵巣の切除時に、骨を構成するカルシウム(Ca)と無機リン酸塩(Pi)の血中濃度が減少し、骨を分解する主要酵素であるMMP-9(Matrix metallopeptidase-9)及び骨転換(bone turnover)マーカーであるALP(Alkaline phosphatase)とオステオカルシンの量が増加することが明らかにされており、これらのマーカーが骨消失評価のための主要指標として用いられている。本発明者らは、前記製造例1で抽出した葛根及び桔梗複合抽出物の骨消失マーカーに対する改善効果を確認するために、卵巣を切除した雌ラットで血液の生化学的分析を進行した。
【0093】
3-1.卵巣切除(OVX)ラットモデル作製
SD(Sprague Dawley)ラット雌6週齢(体重約160g±20%)をオリエント(オリエントバイオ、韓国カピョングン)から入庫後、14日間馴化後に実験に使用した。卵巣切除手術のためにZoletil 50(VIRBAC,France)及びキシラジン(xylazine)(Rompun,Bayer AG,Germany)を用いて動物を麻酔した。両側腹部を除毛し、手術部位を消毒した後、筋肉と腹膜を切開し、子宮及び卵巣を露出させて卵巣の位置を確認し、卵管及び卵巣動静脈を露出させた後、焼灼器を用いて卵巣を切除した後、創傷縫合を行った。試験物質投薬の場合、各葛根(比較例1-1)、桔梗(比較例1-2)個別抽出物、及び葛根、桔梗複合抽出物(製造例1-1)を200mg/kg濃度で1回/日、7日/週、12週間、毎日経口投与した。正常群及び陰性対照群は、蒸留水を投薬した。
【0094】
3-2.血液生化学的検査
12週間の投薬が完了した後、後大静脈から採血して分離した血清で、血液生化学分析機(7180Hitachi,Japan)及び電解質自動分析機を用いてアルカリフォスファターゼ(ALP)、カルシウムの項目を分析し、また骨分解指標であるMMP(Matrix metallopeptidase)-9とオステオカルシンをELISAで測定した。
【0095】
次表7及び図4図7に示すように、卵巣切除時に、造骨細胞のマーカーとして骨消失の際に増加するALPとオステオカルシン、及び骨を直接分解するMMP-9の血中濃度が増加し、骨を構成する無機成分であるCaの血中濃度も減少した。試験物質の投与時に、ALP及びCa濃度で個別薬剤抽出物投与群では有意な変化が見られなかったが、複合抽出物投与群は、有意な改善効能があった。また、MMP-9とオステオカルシン指標に対して複合抽出物投与群において改善される傾向を示した。したがって、前記結果から、本発明の複合抽出物は、骨消失と関連した指標の改善効能が陰性対照群及び個別抽出物に比べて優れていることを確認した。
【0096】
【表7】

(付記)
本開示は以下の態様を含む。
項1:
(a)有効成分としての葛根(Pueraria lobata)及び桔梗(Platycodon grandiflorum)複合抽出物;及び
(b)薬剤学的に許容される担体を含む、代謝性骨疾患又は更年期症状予防又は治療用の薬剤学的組成物。
項2:
前記葛根及び桔梗の配合重量比(w/w)は、1:20~20:1である、項1に記載の組成物。
項3:
前記抽出物は、極性有機溶媒抽出物である、項1に記載の組成物。
項4:
前記極性有機溶媒は、水、炭素数1~4の無水又は含水低級アルコール、酢酸、又はこれらの混合物である、項3に記載の組成物。
項5:
葛根及び桔梗複合抽出物を有効成分として含む、代謝性骨疾患又は更年期症状予防又は改善用の食品組成物。
項6:
前記葛根及び桔梗の配合重量比(w/w)は、1:20~20:1である、項5に記載の組成物。
項7:
前記抽出物は、極性有機溶媒抽出物である、項5に記載の組成物。
項8:
前記極性有機溶媒は、水、炭素数1~4の無水又は含水低級アルコール、酢酸、又はこれらの混合物である、項7に記載の組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7