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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】L形鋼用ボルト
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/00 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
F16B35/00 S
F16B35/00 T
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022085176
(22)【出願日】2022-05-25
【審査請求日】2022-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597138106
【氏名又は名称】太新産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】小田 昌司
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-023308(JP,U)
【文献】中国実用新案第211202575(CN,U)
【文献】特開平07-208431(JP,A)
【文献】中国実用新案第205064467(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部の先端にねじ部を有する直立する第1のボルト軸と、脚部の先端にねじ部を有する第2のボルト軸を備え、第2のボルト軸の脚部が第1のボルト軸の脚部の下端に向かって傾斜し、第1のボルト軸の脚部の下端と第2のボルト軸の脚部下端とが折り返し部を介して連接された、L形鋼用ボルトであって、
第1のボルト軸のねじ部と第2のボルト軸のねじ部は、互いに内幅だけ離れ、かつ同じ長さで先端が同じ高さに位置し、第2のボルト軸の脚部は、折り返し部側に第1のボルト軸の脚部と隙間Sをおいて直立する直立部と、この直立部の上端と第2のボルト軸のねじ部の下端との間に位置する水平部とを有する屈曲形状に形成され、第1のボルト軸の脚部と第2のボルト軸の直立部との間の隙間Sは、L形鋼の垂直板部の厚みよりも広く、L形鋼の垂直板部の下端が前記折り返し部の内底に位置するように収容可能な寸法に設定され、第1のボルト軸のねじ部と第2のボルト軸のねじ部の上端は、L形鋼の垂直板部を前記折り返し部の内底に位置するよう収容した状態で、L形鋼の水平板部よりも高い位置にあり、第1のボルト軸のねじ部と第2のボルト軸のねじ部の下端は、L形鋼の垂直板部の下端を前記折り返し部の内底に位置するよう収容した状態で、L形鋼の垂直板部の外面に到達する位置にあり、第1のボルト軸のねじ部と第2のボルト軸のねじ部との間の内幅は、L形鋼の水平板部のよりも長く設定され、前記折り返し部の内底から第2のボルト軸の脚部の水平部の上側面までの高さが、L形鋼の水平板部の下側面までの高さよりも低く設定されていることを特徴とするL形鋼用ボルト。
【請求項2】
前記第2のボルト軸のねじ部の軸心が、前記第1のボルト軸のねじ部の軸心に対し外側に広がるように傾斜している請求項1記載のL形鋼用ボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、L形鋼に各種機器・器具を設置する際に、各種機器・器具の取付け板をL形鋼に固定するために使用するL形鋼用ボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
工場やその他の建造物の横架材としてのL形鋼に、各種機器・器具を設置する場合、各種機器・器具の取付け板を、Vボルトと呼ばれるL形鋼用ボルトを使用してL形鋼に固定することが行われている(特許文献1の図6図8)。
【0003】
このVボルトは、図6に示すように、脚部1Aの先端にねじ部1Bを有する第1のボルト軸1と、脚部2Aの先端にねじ部2Bを有する第2のボルト軸2とを備え、第2のボルト軸2の脚部2Aが第1のボルト軸1の脚部1Aの下端に向かって傾斜し、第1のボルト軸1の脚部1Aの下端と第2のボルト軸2の脚部2Aとを折り返し部3を介して連接したものであり、その形状からVボルトと呼ばれている。
【0004】
このVボルトを使用してL形鋼4に各種機器・器具の取付け板5を固定するには、図6に示すように、下向きのL形鋼4の垂直板部4Aに、Vボルトの第1のボルト軸1の脚部1Aに沿わせ、L形鋼4の水平板部4Bが、第1のボルト軸1の脚部1Aの上端と、第2のボルト軸2の脚部2Aの上端との間に位置するように、L形鋼4をVボルトで囲み、取付け板5に設けた一対の穴5Aに、第1のボルト軸1のねじ部1Bと第2のボルト軸2のねじ部2Bを挿通し、第1のボルト軸1のねじ部1Bと第2のボルト軸2のねじ部2Bとにナット6を螺合し、このナット6を締め付けることにより、取付け板5をL形鋼4の水平板部4Bに押し付けることによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-120617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記従来のVボルトにおける第1のボルト軸1の脚部1Aの長さ、および第1のボルト軸1の脚部1Aの上端と第2のボルト軸2の脚部2Aとの間隔は、L形鋼4の垂直板部4Aと水平板部4Bの幅寸法に設定されている。
【0007】
ところが、L形鋼4のサイズは、垂直板部4Aと水平板部4Bの板幅が小さいものから大きいものまで多種多様であり、例えば、図7に示すように、L形鋼4の幅寸法が大きくなると、大きなL形鋼4の垂直板部4Aと水平板部4Bの幅寸法に適応した大きいサイズのVボルトが必要になる。
【0008】
したがって、従来のVボルトは、L形鋼4のサイズ毎に大きさの異なるものを用意しなければならず、在庫管理が面倒であると共に、現場でも複数種類を使い分ける必要があり、作業効率が悪いという問題がある。
【0009】
そこで、この発明は、サイズの異なる複数種類のL形鋼に適応可能なL形鋼用ボルトを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、この発明に係るL形鋼用ボルトは、脚部の先端にねじ部を有する直立する第1のボルト軸と、脚部の先端にねじ部を有する第2のボルト軸とを備え、第2のボルト軸の脚部が第1のボルト軸の脚部の下端に向かって傾斜し、第1のボルト軸の脚部の下端と第2のボルト軸の脚部下端とが折り返し部を介して連接され、下記の構成により、サイズの異なる複数種類のL形鋼に適応可能にしたものである。即ち、この発明に係るL形鋼用ボルトにおける第1のボルト軸のねじ部と第2のボルト軸のねじ部は、互いに内幅だけ離れ、かつ同じ長さで先端が同じ高さに位置し、第2のボルト軸の脚部は、折り返し部側に第1のボルト軸の脚部と隙間Sをおいて直立する直立部と、この直立部の上端と第2のボルト軸のねじ部の下端との間に位置する水平部とを有する屈曲形状に形成され、第1のボルト軸の脚部と第2のボルト軸の直立部との間の隙間Sは、L形鋼の垂直板部の厚みよりも広くて、L形鋼の垂直板部の下端が前記折り返し部の内底に位置するように収容可能な寸法に設定され、第1のボルト軸のねじ部と第2のボルト軸のねじ部の上端は、L形鋼の垂直板部を前記折り返し部の内底に位置するよう収容した状態で、L形鋼の水平板部よりも高い位置にあり、第1のボルト軸のねじ部と第2のボルト軸のねじ部の下端は、L形鋼の垂直板部の下端を前記折り返し部の内底に位置するよう収容した状態で、L形鋼の垂直板部の外面に到達する位置にあり、第1のボルト軸のねじ部と第2のボルト軸のねじ部との間の内幅は、L形鋼の水平板部のよりも長く設定され、前記折り返し部の内底から第2のボルト軸の脚部の水平部の上側面までの高さが、L形鋼の水平板部の下側面までの高さよりも低く設定されている。
【0011】
また、第2のボルト軸のねじ部の軸心は、第1のボルト軸のねじ部の軸心に対し外側に広がるように傾斜させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明のL形鋼用ボルトは、L形鋼の垂直板部を、第1のボルト軸の脚部と第2のボルト軸の直立部との間の隙間Sに、折り返し部の内底に位置するように収容し、各種機器・器具の取付け板に設けた一対の穴に、第1のボルト軸のねじ部と第2のボルト軸のねじ部とを挿通し、第1のボルト軸のねじ部と第2のボルト軸のねじ部とにナットを螺合してL形鋼の水平板部を取付け板によって押し付けることにより、サイズの異なる複数種類のL形鋼に各種機器・器具の取付け板を固定することができる。
【0013】
したがって、この発明のL形鋼用ボルトは、L形鋼のサイズ毎に大きさの異なるものを用意する必要がなく、サイズの異なる複数種類のL形鋼に対応できるので、在庫管理が少なくて済み、現場での作業効率も良好である。
【0014】
また、第2のボルト軸のねじ部の軸心を、第1のボルト軸のねじ部の軸心に対し外側に広がるように傾斜させることにより、ナットの締め付け力によって、第2のボルト軸のねじ部の軸心が内側に倒れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明に係るL形鋼用ボルトの正面図である。
図2】この発明に係るL形鋼用ボルトの使用状態を示す正面図である。
図3】この発明に係るL形鋼用ボルトの他の使用状態を示す正面図である。
図4】この発明に係るL形鋼用ボルトの他の使用状態を示す正面図である。
図5】この発明に係るL形鋼用ボルトの他の実施形態の正面図である。
図6】従来のL形鋼用ボルトの正面図である。
図7】サイズの異なる従来のL形鋼用ボルトの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態に係るL形鋼用ボルトを添付図面に基づき説明する。
【0017】
図1に示すL形鋼用ボルトは、サイズの異なる3種類のL形鋼41,42,43に適応可能なものである。
【0018】
L形鋼41,42,43は、垂直板部4Aと水平板部4Bとを有し、最もサイズの小さいL形鋼41の垂直板部4Aと水平板部4Bの幅寸法がW2、中間サイズのL形鋼42の垂直板部4Aと水平板部4Bの幅寸法がW3、最もサイズの大きいL形鋼43の垂直板部4Aと水平板部4Bの幅寸法がW4である。
【0019】
なお、この発明における垂直、水平及び上下は、図1を上下方向に見たときの説明上の方向をいうものである。
【0020】
図1に示すこの発明に係るL形鋼用ボルトは、脚部11Aの先端にねじ部11Bを有する直立する第1のボルト軸11と、脚部12Aの先端にねじ部12Bを有する第2のボルト軸12とを備えている。
【0021】
第2のボルト軸12の脚部12Aは、第1のボルト軸11の脚部12Aの下端に向かう屈曲形状であり、第2のボルト軸12の脚部12Aの下端が、第1のボルト軸11の脚部11Aの下端に折り返し部13を介して連接されている。
【0022】
第1のボルト軸11のねじ部11Bと第2のボルト軸12のねじ部12Bは、互いに内幅W1だけ離れ、かつ同じ長さで先端が同じ高さに位置している。即ち、第1のボルト軸11のねじ部11Bと第2のボルト軸12のねじ部12Bは、同一長さH1に設定されている。
【0023】
第2のボルト軸12の脚部12Aは、折り返し部13側に第1のボルト軸11の脚部11Aと隙間Sをおいて直立する直立部12A1と、この直立部12A1の上端と第2のボルト軸12のねじ部12Bの下端との間に位置する水平部12A2とを有する屈曲形状に形成されている。
【0024】
第1のボルト軸11の脚部11Aと第2のボルト軸12の直立部12A1との間の隙間Sは、L形鋼41,42,43の垂直板部4Aの厚みよりも広くて、L形鋼41,42,43の垂直板部4Aの先端が前記折り返し部13の内底に位置するように収容可能な寸法に設定されている。
【0025】
第1のボルト軸11のねじ部11Bと第2のボルト軸12のねじ部12Bの上端は、サイズの異なる3種類のL形鋼41,42,43のうち、サイズの最も大きなL形鋼43の垂直板部4Aを前記折り返し部13の内底に位置するよう収容した状態で、サイズの最も大きなL形鋼43の水平板部4Bの上面よりも高い位置にあり、第1のボルト軸11のねじ部11Bと第2のボルト軸12のねじ部12Bの下端は、サイズの異なる3種類のL形鋼41,42,43のうち、サイズの最も小さなL形鋼41の垂直板部4Aを前記折り返し部13の内底に位置するよう収容した状態で、L形鋼41の垂直板部4Aの外面、即ち、L形鋼41の垂直板部4Aの上端面に到達する位置にあり、第1のボルト軸11の脚部11Aの長さ、即ち、高さH2は、サイズの最も小さなL形鋼41の垂直板部4Aの幅と同一に設定している。
【0026】
第1のボルト軸11のねじ部11Bと第2のボルト軸12のねじ部と12Bの間の内幅W1は、サイズの異なる3種類のL形鋼41,42,43のうち、サイズの最も大きなL形鋼43の水平板部4Bの幅W4よりも長く設定され、前記折り返し部13の内底から第2のボルト軸12の脚部12Aの水平部12A2の上側側面までの高さH3が、サイズの最も小さなL形鋼41の水平板部4Bの下側側面までの高さH4よりも低く設定されている。
【0027】
この発明に係るL形鋼用ボルトは、以上のような構成であり、図2図5に示すように、サイズの異なる3種類のL形鋼41,42,43に、各種機器・器具の取付け板5を固定することができる。
【0028】
図2は、最もサイズの小さなL形鋼41に取付け板5を固定した状態、図3は、中間サイズの小さなL形鋼42に取付け板5を固定した状態、図4は、最もサイズの大きなL形鋼43に取付け板5を固定した状態を示している。
【0029】
この発明に係るL形鋼用ボルトを使用してサイズの異なるL形鋼41,42,43に、各種機器・器具の取付け板5を固定するには、図2~4に示すように、いずれのサイズも下向きのL形鋼41,42,43の垂直板部4Aに、第1のボルト軸11の脚部11Aに沿わせて、取付け板5に設けた一対の穴5Aに、第1のボルト軸11のねじ部11Bと第2のボルト軸12のねじ部12Bとを挿通し、第1のボルト軸11のねじ部11Bと第2のボルト軸12のねじ部12Bとにナット6を螺合してL形鋼41,42,43の水平板部4Bを取付け板5によって押し付けると、L形鋼41,42,43に取付け板5が固定される。
【0030】
次に、図5は、この発明に係るL形鋼用ボルトの第2の実施形態を示している。この第2の実施形態のL形鋼用ボルトは、第2のボルト軸12のねじ部12Bの軸心を、第1のボルト軸11のねじ部12の軸心に対し外側に広がるように傾斜させている。その傾斜角度αは、5度程度である。その他の構成は、図1に示す実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0031】
第1のボルト軸11のねじ部11Bと第2のボルト軸12のねじ部12Bとにナット6を螺合してL形鋼41,42,43の水平板部4Bを取付け板5によって押し付けると、ナット6の締め付け力によって、第2のボルト軸12のねじ部12Bの軸心が内側に倒れることがあるので、第2のボルト軸12のねじ部12Bの軸心を、予め第1のボルト軸11のねじ部12の軸心に対し外側に広がるように傾斜させておくことによって、第2のボルト軸12のねじ部12Bの軸心が内側に倒れることを防止することができる。
【0032】
この発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内の全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0033】
11 第1のボルト軸
11A 脚部
11B ねじ部
12 第2のボルト軸
12A 脚部
12A1 直立部
12A2 水平部
12B ねじ部
13 折り返し部
4,41,42,43 L形鋼
4A 垂直板部
4B 水平板部
【要約】      (修正有)
【課題】サイズの異なる複数種類のL形鋼に適応可能なL形鋼用ボルトを提供する。
【解決手段】第1のボルト軸11のねじ部11Bと第2のボルト軸12のねじ部12Bの間隔をサイズの異なる複数種類のL形鋼41,42,43のうちのサイズの最も大きなL形鋼43の板幅よりも広くし、第1のボルト軸11の脚部11Aの下端に折り返し部13を介して連接された第2のボルト軸12の脚部12Aを、折り返し部13側に第1のボルト軸11の脚部12Aと隙間Sをおいて直立する直立部12A1と、この直立部12A1の上端と第2のボルト軸12のねじ部12Bの下端との間に位置する水平部12A2とを有する屈曲形状に形成したことを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7