(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】換気装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20230106BHJP
E21D 9/12 20060101ALI20230106BHJP
E21D 11/40 20060101ALI20230106BHJP
F24F 13/08 20060101ALI20230106BHJP
F24F 7/013 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
F24F7/007 D
E21D9/12 D
E21D11/40 B
F24F13/08 B
F24F13/08 A
F24F7/013 101Z
(21)【出願番号】P 2019072723
(22)【出願日】2019-04-05
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591167898
【氏名又は名称】ヤクモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯島 陽介
(72)【発明者】
【氏名】高盛 佐恵子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 由美子
(72)【発明者】
【氏名】木村 英樹
(72)【発明者】
【氏名】小泉 皓嵩
(72)【発明者】
【氏名】前関 純
(72)【発明者】
【氏名】小堀 孝之
(72)【発明者】
【氏名】木島 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 学
(72)【発明者】
【氏名】岩井 義雄
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-179338(JP,A)
【文献】実開昭57-005868(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
E21D 9/12
E21D 11/40
F24F 13/08
F24F 7/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁
と天井とを有する建屋内の作業領域から発生する被換気媒体を換気するための換気装置であって、
前記側壁に設けられた排風機と、
前記排風機に対して送気可能な送風機と、
前記送風機から前記排風機への換気流をガイドするガイド壁と、を備え、
前記ガイド壁は、前記排風機が設けられた前記側壁側から前記送風機側に向かう方向に伸縮可能であ
って、前記ガイド壁の上端部は前記天井から離間して設けられている
ことを特徴とする換気装置。
【請求項2】
側壁
と天井とを有する建屋内の作業領域から発生する被換気媒体を換気するための換気装置であって、
前記作業領域は、前記側壁に沿った方向で複数に設定された設定作業領域を備えており、
前記側壁に沿って前記設定作業領域にわたって複数設けられた排風機と、
前記排風機に対して送気可能な送風機と、
前記送風機から前記排風機への換気流をガイドするガイド壁と、を備え、
前記ガイド壁は、各々の前記設定作業領域の前記側壁側と前記送風機側とにわたった辺に沿って設けられ、前記排風機が設けられた前記側壁側から前記送風機側に向かう方向に伸縮可能であ
って、前記ガイド壁の上端部は前記天井から離間して設けられている
ことを特徴とする換気装置。
【請求項3】
前記作業領域は、セグメントシール貼り作業領域であって、
前記ガイド壁の前記側壁側及び前記送風機側の少なくとも一方の伸縮に際して移動する端部は、前記セグメントシール貼り作業領域に配置されたセグメントのボルト穴に取り付け可能である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の換気装置。
【請求項4】
側壁を有する建屋内の作業領域から発生する被換気媒体を換気するための換気装置であって、
前記作業領域は、前記側壁に沿った方向で複数に設定された設定作業領域を備えており、
前記側壁に沿って前記設定作業領域にわたって複数設けられた排風機と、
前記排風機に対して送気可能な送風機と、
前記送風機から前記排風機への換気流をガイドするガイド壁と、を備え、
前記ガイド壁は、各々の前記設定作業領域の前記側壁側と前記送風機側とにわたった辺に沿って設けられ、前記排風機が設けられた前記側壁側から前記送風機側に向かう方向に伸縮可能であり、
前記作業領域は、セグメントシール貼り作業領域であって、
前記ガイド壁の前記側壁側及び前記送風機側の少なくとも一方の伸縮に際して移動する端部は、前記セグメントシール貼り作業領域に配置されたセグメントのボルト穴に取り付け可能である
ことを特徴とする換気装置。
【請求項5】
前記ガイド壁は、前記作業領域の上方を覆わない
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法の発進立坑などの地上部に設けられる防音ハウスなどをはじめとする建屋内で行われる作業によって発生する被換気媒体の換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法の発進立坑などの地上部に設けられる防音ハウスなどをはじめとする建屋内では、様々な作業が行われる。これらの作業の中には、換気が必要な被換気媒体が発生する作業がある。これらの作業の具体的なものとしては、セグメントのシール貼り作業、掘削土砂や資器材の搬出入作業、掘削土砂の改質作業などである。
作業によって発生する被換気媒体として、セグメントのシール貼り作業では、接着剤に含まれる有機溶剤による有機ガス、掘削土砂の搬出作業や資器材の搬出入作業による排気ガス、掘削土砂の改質作業による改質材の粉塵などが挙げられる。
【0003】
このような建屋内での作業によって発生する被換気媒体を換気する従来技術として、特許文献1のようなものがある。この従来技術は、建屋内の作業から発生する被換気媒体を効率的に換気する換気装置を提供することを目的としたもので、建屋の側壁に沿って排風機と複数設け、側壁の方向に沿って移動可能に送風機を設けて、換気が必要な作業領域に応じて換気することが可能な換気装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来技術では、建屋内の作業から発生する被換気媒体を効率的に換気することができるが、以下のようにより確実な換気が求められている。
セグメントのシール貼り作業のような場合では、有機ガスを適切に換気することは安全上非常に重要である。セグメントストックヤード内でシール貼り作業をする箇所は移動し、かつストックヤード内の一部であるところ、どの場所においても所定の換気流を確保する必要があり、そのような設計を行う。しかしながら、実際に作業が行われた場合には、建屋内のさまざまな状況が影響することもあり、すべての箇所で所定の換気流を安定して確保できないケースもある。
【0006】
また、例えば、大断面のトンネル工事にシールド工法を適用する場合には、セグメントをはじめとする資器材も大型化し、それを置くために建屋の容積も大型化するので、より所定の換気流が安定して確保できない箇所が発生しやすくなるとともに、送風機と排風機との距離が長くなりやすく所定の換気流とするためには、設備が大型化してしまう。
これらの問題は、掘削土砂の搬出作業、資器材の搬出入作業、掘削土砂の改質作業においても同様である。
そこで、本発明の目的は、換気流を安定して確保し、建屋内の作業から発生する被換気媒体を効率的に換気する換気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、側壁と天井とを有する建屋内の作業領域から発生する被換気媒体を換気するための換気装置であって、前記側壁に設けられた排風機と、前記排風機に対して送気可能な送風機と、前記送風機から前記排風機への換気流をガイドするガイド壁と、を備え、前記ガイド壁は、前記排風機が設けられた前記側壁側から前記送風機側に向かう方向に伸縮可能であって、前記ガイド壁の上端部は前記天井から離間して設けられていることを特徴とする換気装置である。
請求項2に係る発明は、側壁と天井とを有する建屋内の作業領域から発生する被換気媒体を換気するための換気装置であって、前記作業領域は、前記側壁に沿った方向で複数に設定された設定作業領域を備えており、前記側壁に沿って前記設定作業領域にわたって複数設けられた排風機と、前記排風機に対して送気可能な送風機と、前記送風機から前記排風機への換気流をガイドするガイド壁と、を備え、前記ガイド壁は、各々の前記設定作業領域の前記側壁側と前記送風機側とにわたった辺に沿って設けられ、前記排風機が設けられた前記側壁側から前記送風機側に向かう方向に伸縮可能であって、前記ガイド壁の上端部は前記天井から離間して設けられていることを特徴とする換気装置である。
請求項3に係る発明は、前記作業領域は、セグメントシール貼り作業領域であって、前記ガイド壁の前記側壁側及び前記送風機側の少なくとも一方の伸縮に際して移動する端部は、前記セグメントシール貼り作業領域に配置されたセグメントのボルト穴に取り付け可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の換気装置である。
請求項4に係る発明は、側壁を有する建屋内の作業領域から発生する被換気媒体を換気するための換気装置であって、前記作業領域は、前記側壁に沿った方向で複数に設定された設定作業領域を備えており、前記側壁に沿って前記設定作業領域にわたって複数設けられた排風機と、前記排風機に対して送気可能な送風機と、前記送風機から前記排風機への換気流をガイドするガイド壁と、を備え、前記ガイド壁は、各々の前記設定作業領域の前記側壁側と前記送風機側とにわたった辺に沿って設けられ、前記排風機が設けられた前記側壁側から前記送風機側に向かう方向に伸縮可能であり、前記作業領域は、セグメントシール貼り作業領域であって、前記ガイド壁の前記側壁側及び前記送風機側の少なくとも一方の伸縮に際して移動する端部は、前記セグメントシール貼り作業領域に配置されたセグメントのボルト穴に取り付け可能であることを特徴とする換気装置である。
請求項5に係る発明は、前記ガイド壁は、前記作業領域の上方を覆わないことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の換気装置である。
また、別発明として、以下のものでもよい。
手段1は、側壁を有する建屋内の作業領域から発生する被換気媒体を換気するための換気装置であって、前記側壁に設けられた排風機と、前記排風機に対して送気可能な送風機と、前記送風機から前記排風機への換気流をガイドするガイド壁と、を備え、前記ガイド壁は、前記排風機が設けられた前記側壁側から前記送風機側に向かう方向に伸縮可能であることを特徴とする換気装置である。
【0008】
手段2は、側壁を有する建屋内の作業領域から発生する被換気媒体を換気するための換気装置であって、前記作業領域は、前記側壁に沿った方向で複数に設定された設定作業領域を備えており、前記側壁に沿って前記設定作業領域にわたって複数設けられた排風機と、前記排風機に対して送気可能な送風機と、前記送風機から前記排風機への換気流をガイドするガイド壁と、を備え、前記ガイド壁は、各々の前記設定作業領域の前記側壁側と前記送風機側とにわたった辺に沿って設けられ、前記排風機が設けられた前記側壁側から前記送風機側に向かう方向に伸縮可能であることを特徴とする換気装置である。
【0009】
手段3は、前記作業領域は、セグメントシール貼り作業領域であって、前記ガイド壁の前記側壁側及び前記送風機側の少なくとも一方の伸縮に際して移動する端部は、前記セグメントシール貼り作業領域に配置されたセグメントのボルト穴に取り付け可能であることを特徴とする手段1又は手段2に記載の換気装置である。
【0010】
手段4は、前記ガイド壁は、前記作業領域の上方を覆わないことを特徴とする手段1乃至手段3のうちいずれか1項に記載の換気装置である。
【発明の効果】
【0011】
上記に係る構成により、換気流を安定して確保し、建屋内の作業から発生する被換気媒体を効率的に換気することができる。
また、ガイド壁は伸縮可能であるので、換気が必要なときのみ使用し、換気が不要なときは縮小させることができるので、建屋内の作業の支障にならない。
【0012】
加えて、作業領域は、側壁に沿った方向で複数に設定された設定作業領域を備えており、側壁に沿って設定作業領域にわたって複数設けられた排風機と、排風機に対して送気可能な送風機と、送風機から排風機への換気流をガイドするガイド壁と、を備え、ガイド壁は、各々の前記設定作業領域の前記側壁側と前記送風機側とにわたった辺に沿って設けられるので、必要な設定作業領域の換気を行うこともできる。
【0013】
加えて、作業領域は、セグメントシール貼り作業領域であって、ガイド壁の側壁側及び送風機側の少なくとも一方の伸縮に際して移動する端部は、セグメントシール貼り作業領域に位置するセグメントのボルト穴に取り付け可能であるので、ガイド壁の端部の固定を任意の場所で行うことができ、配置されたセグメント間にガイド壁の端部の固定のための部材をセグメント以外に別途設置しなくて済み、セグメントシール貼り作業などにも支障が生じない。
【0014】
加えて、ガイド壁は、作業領域の上方を覆わないので、建屋内での作業の支障にならない。特に、セグメントシール貼り作業領域の場合には、クレーンによるセグメントの搬入搬出作業に支障が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る換気装置を適用した建屋の全体平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る換気装置の(A)平面配置図と(B)側面配置図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る換気装置のガイド壁の平面配置図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る換気装置のガイド壁の(A)平面配置図の拡大図および(B)側面配置図である。
【
図5】本発明の実施形態の係る換気装置のガイド壁の端部の説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る換気装置の運転説明図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る換気装置の運転説明図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る換気装置の運転説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態〕
以下、本発明に係る実施形態について図面の
図1乃至
図8と共に説明する。
本実施形態は、本発明に係る換気装置をシールド工法の発進立坑基地におけるセグメントのシール貼り作業に適用したものである。
図1は、泥土圧シールド工法の発進立坑基地の平面図で、発進立坑基地は、防音ハウスである建屋1に覆われている。建屋1は、右側壁1a、左側壁1b、後側壁1c、前側壁1dおよび図示しない天井を備えている。前側壁1dは、車両出入部1eを備えている。
本実施形態では、建屋1は防音機能を備えたものとしているが、建屋は防音機能を備えていないものであっても良い。
【0017】
図1に示すように、建屋1内には発進立坑開口部2が開口しており、天井走行クレーン3によってセグメント4をはじめとする資器材などがトンネルに搬入される。天井走行クレーン3は、前側壁1dおよび後側壁1cの上部で左右方向に設けられた走行レール3aを走行する。
セグメント4は、セグメント搬入車両5によって建屋1内に搬入され、天井走行クレーン3によって、
図1に示すように右側壁1a寄りのセグメントストックヤード6にストックされる。セグメントストックヤード6にて、シールが貼り作業が行われる。シールが貼られたセグメント4は、発進立坑開口部2から搬入される。
【0018】
トンネル掘削により発生した掘削土砂は、図示しないズリ鋼車ごと発進立坑開口部2から天井走行クレーン3によって引き上げられる。ズリ鋼車内の掘削土砂は、土砂ピット7で貯留され、バックホウ8で土砂搬出車両9に積み込まれて搬出される。
図1に示すように、土砂ピット7の左方には、泥土圧シールド工法に用いられる掘削添加材を配合して供給する添加材設備10が配置されている。添加材設備10のさらに左方には、裏込注入設備11が配置されている。添加材設備10の前方には、濁水処理設備12が配置されている。裏込注入設備11の前方には、中央管理室13が配置されている。セグメントストックヤード6の前方には、資材置場14が配置されている。
【0019】
図1に示すように、セグメントストックヤード6の左側には、送風機20が配置されている。送風機20は、左側から右側に向けて送気するものであり、矢印Y1、Y2で示す前後方向に向って、すなわち右側壁1aに沿って移動可能なものである。
セグメントストックヤード6の前後方向にわたった右側壁1aには、排風機30が複数(30a~30iの9機)設けられている。排風機30a~30iは、建屋1内の気体を建屋1外に排気する。排風機30a~30iは、それぞれ独立して運転できるようになっている。
【0020】
セグメントストックヤード6では、セグメント4は、
図2(B)に示すように1リング分である5ピースが重ねられ、平面的に複数個所にストックされる。本実施形態では、
図1に示すように、前後方向に9列、左右方向に3列で27リング分(135ピース)がストックされる。
このようにストックされた状態で、各セグメント4にシールを貼る作業が行われる。シール貼り作業は、作業員がセグメント4に接着剤を塗布しシール材を貼る作業である。作業員は1リングごとに移動してシール貼り作業を行う。塗布する際には、小分けされた接着剤が入った容器と接着剤と塗布する刷毛が使用される。接着剤には、トルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサンなど成分が含まれたクロロプレンゴム系溶剤形接着剤が用いられる。シール貼り作業では、これらの成分が蒸気となって有機ガス(被換気媒体)が発生する。
【0021】
シール貼り作業による有機ガスを安全に効率的に換気するために、セグメントストックヤード6での作業領域を区分けして設定し、当該設定作業領域を換気する。本実施形態では、
図2(A)の破線で示すように、右側壁1aに沿った方向で作業領域を設定作業領域A、B、Cとして3つに区分けしている。そして、シール貼り作業が行われている設定作業領域に送風機20を移動して送気し、当該送風に対応する排風機30によって排気する。
図2(A)では、設定作業領域B内でシール貼り作業が行われており、その左側に送風機20が配置されて送気し、排風機30d~30fを斜線にてハッチングして、当該排風機30d~30fが作動し排気していることが示されている。
この換気は、開放式プッシュプル型換気となるように設定される。
【0022】
シール貼り作業で発生する有機ガスに含まれるトルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサンなどの蒸気比重は空気より重いので、より安全で効率的な換気装置の配置を行っている。
具体的には、
図2(B)に示すように、送風機20の送風の中心線20Lは、地表面に平行に向けられている。そして、排風機30a~30iは、右側壁1aの中心線20Lより低い位置に設けられている。このようにすることで斜め下に向かう換気流を発生させ、安全で効率的な換気を行っている。
図2(B)の1fは、建屋1の基礎である。
【0023】
図3に示すように、各々の設定作業領域の右側壁1a側と送風機側とにわたった辺に沿って、ガイド壁15a~15dが設けられている。各々の設定作業領域の前記右側壁1a側と前記送風機側とにわたった辺とは、
図3における各設定作業領域の左右方向に延びる辺(長辺)である。
具体的には、設定作業領域Aの後側の長辺に沿って、ガイド壁15aが設けられており、設定作業領域Aの前側の長辺及び設定作業領域Bの後側の長辺に沿って、ガイド壁15bが設けられており、設定作業領域Bの前側の長辺及び設定作業領域Cの後側の長辺に沿って、ガイド壁15cが設けられており、設定作業領域Cの前側の長辺に沿って、ガイド壁15dが設けられている。
【0024】
後述するが、ガイド壁15a~15dは、排風機30a~30iが設けられた右側壁1a側から送風機20側に向かう方向(左右方向)に伸縮可能である。
図3においては、ガイド壁15a~15dは、送風機20側の端部が伸長して展開した状態を示している。ガイド壁15a~15dは、右側壁1a側の端部が右側壁1aに近接して設置されており、送風機20側の端部が
図3の左右方向の中央のセグメント4の付近に設置されている。換言すると、ガイド壁15a~15dは、各々の設定作業領域の右側壁1a側と送風機20側とにわたった辺の一部に沿って、かつ右側壁1a側に設けられている。
【0025】
図4(A)は、設定作業領域Bを換気するときの状態を示したものである。送風機20は、設定作業領域Bに送気する位置に配置され、左側から右側に向って送気している。設定作業領域Bに対応する排風機30d~30fは、左側から右側に向って排気している。
ガイド壁15b、15cは、送風機20側の端部が伸長して展開している。ガイド壁15b、15cは、右側壁1a側の端部が右側壁1aに近接して固定して設置されており、送風機20側の端部が左右方向の中央のセグメント4の付近に設置されている。換言すると、設定作業領域Bの前後側の長辺の右側の略半分にわたって、ガイド壁15b、15cが設置されていることになる。
【0026】
図4(B)に示すように、ガイド壁15cは、1リング分で重ねてストックされたセグメント4の高さ程度の高さのものである。シール貼り作業で発生する有機ガスに含まれるトルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサンなどの蒸気比重が空気より重いことに対応するために必要十分なものとしている。
ガイド壁15b、15cは、互いにその上端部を連結して形成される屋根のようなものはなく、設定作業領域Bの上方を覆うものではない。このため、天井走行クレーン3によるセグメント4の搬出入の作業の支障にならない。
【0027】
ガイド壁15b、15cが、設定作業領域Bの前後側の長辺にわたって設置されているので、設定作業領域を区画することになり、換気流が広がることを抑制し、部分的に風量が不足する箇所をなくして安定した換気流を確保することができる。
ガイド壁15b、15cの一端を排風機30d~30fが設けられた右側壁1aに近接して設けるので、右側壁1aに送気が当たって設定作業領域A又は設定作業領域B側に流れてしまうことを防止することができる。また、排風機30d~30fの排気能力も確保される。
【0028】
ガイド壁15b、15cは、ワイヤー16、ワイヤー16に吊られるカーテン17、ワイヤー16及びカーテン17を送り出しかつ巻き取り可能な巻取機18を備えている。
カーテン17は、換気流をガイドするものであれば、材質は限定されない。ワイヤー16とカーテン17の上部は、展開方向に間隔を空けて連結されている。ワイヤー16の右側の端部は、巻取機18に固定されている。カーテン17の右側の端部も巻取機18に固定されるようにしても良い。ワイヤー16の左側の端部は、後述するようにセグメント4に固定されている。換気流によってカーテン17の下部が揺らされてガイド機能が失われるようであれば、下部にもワイヤーを設けても良い。巻取機18は、右側壁1aに近接して設けられている。ガイド壁15bの巻取機18は、排風機30cと排風機30dとの間に、ガイド壁15cの巻取機18は、排風機30fと排風機30gとの間に配置されている。
【0029】
巻取機18が、ワイヤー16及びカーテン17を送り出しかつ巻き取り可能としているので、ガイド壁15b、15cは、排風機30d~30fが設けられた右側壁1a側から送風機20側に向かう方向(
図4における矢印X1、X2方向)に伸縮可能となっている。ガイド壁15b、15cの伸縮は、ガイド壁15b、15cの送風機20側の端部が左右方向の中央のセグメント4付近に位置する展開状態から、ガイド壁15b、15cの送風機20側の端部が右側壁1a付近に位置する収納状態まで行うことが可能である。
このように、ガイド壁15b、15cが伸縮可能であるので、換気に必要なときに伸長させた展開状態とし、不要なときには縮小させた収納状態として、他の作業に支障が生じないようにすることができる。
【0030】
図5は、ガイド壁15の送風機20側の端部をシール貼り作業領域にストックされたセグメント4に固定した状態を示すものである。
カーテン17の上端に設けられた連結片17aが通されたワイヤー16の端部をリング状部16aとして、セグメント4のボルト穴4aに螺合したフック形状のダミーボルト19に掛けることで、ガイド壁15の端部がセグメント4に固定される。
【0031】
ストックされたセグメント4のボルト穴4aを利用して、ガイド壁15の端部を固定することで、ガイド壁15の展開状態の左右方向の端部の位置を任意に設定することができる。
例えば、ガイド壁15を右側壁1aから左右方向の3列のセグメント4のうち左側のセグメント4まで展開させたい場合には、左側のセグメント4のボルト穴4aにダミーボルト19を設けてリング状部16aを掛ける。ガイド壁15を右側壁1aから左右方向の3列のセグメント4のうち中央のセグメント4まで展開させたい場合には、中央のセグメント4のボルト穴4aにダミーボルト19を設けてリング状部16aを掛ける。ガイド壁15を右側壁1aから左右方向の3列のセグメント4のうち右側のセグメント4まで展開させたい場合には、右側のセグメント4のボルト穴4aにダミーボルト19を設けてリング状部16aを掛ける。
【0032】
また、ストックされたセグメント4のボルト穴4aを利用して、ガイド壁15の端部を固定することで、ガイド壁15の展開状態の端部の高さも任意に設定することができる。 ストックされたセグメント4は、
図2(B)に示すように、5ピースが重ねられているので、これらのいずれかのセグメント4のボルト穴4aを用いれば、任意の高さに設定することができる。
【0033】
例えば、ガイド壁15を右側壁1aから左右方向の3列のセグメント4のうち左側のセグメント4まで展開させる場合において、送風機20側ではそれほどガイド機能が求められず、寧ろ作業員の通行の支障になる場合も想定される。このような場合には、最下段のセグメント4のボルト穴4aを用いてダミーボルト19を設けてリング状部16aを掛ければ、この部分においてガイド壁15の高さを抑えることができる。そして、さほど支障にならない右側壁1a側は所定の高さを確保できる。この場合では、ガイド壁の高さは送風機20側が低く、右側壁1a側が高くなっている。
【0034】
ガイド壁15の端部をセグメント4に固定する場合には、換気する対象となる設定作業領域の外にストックされているセグメント4に固定する方が、当該設定作業領域でのセグメントシール貼り作業の支障にならないので望ましい。
【0035】
例えば、設定作業領域Bを換気する場合には、設定作業領域Aにストックされたセグメント4にガイド壁15bの端部を固定し、設定作業領域Cにストックされたセグメント4にガイド壁15cの端部を固定する。設定作業領域Aを換気する場合には、設定作業領域Bにストックされたセグメント4にガイド壁15bの端部を固定する。設定作業領域Aの後ろ側には設定作業領域が存在しないので、ガイド壁15aの端部は、設定作業領域Aにストックされたセグメント4に固定する。設定作業領域Cを換気する場合には、設定作業領域Bにストックされたセグメント4にガイド壁15cの端部を固定する。設定作業領域Cの前側には設定作業領域が存在しないので、ガイド壁15dの端部は、設定作業領域Cにストックされたセグメント4に固定する。
【0036】
各設定作業領域A、B、Cにわたって、換気を行う場合のガイド壁15a~15dの使用方法を
図6乃至
図8に用いて説明する。
換気は、送風機20を各設定作業領域A、B、Cに移動させて送気し、各設定作業領域A、B、Cに対応して、排風機30a~30iを稼働させて排気し行う。具体的には、設定作業領域Aには排風機30a~30cを、設定作業領域Bには排風機30d~30fを、設定作業領域Cには排風機30g~30iを対応させる。
なお、各設定作業領域にわたっての送風機と排風機の運転制御は、任意の方法で連動運転するようにしても良いし、手動で運転するようにしても良い。
【0037】
図6は、シール貼り作業が設定作業領域Aで行われるときの換気装置の稼働状態を示したものである。送風機20を設定作業領域Aに移動させた後に、送風機20と排風機30a~30cを稼働させ換気を行う。
図6では、稼働する排風機30a~30cを斜線にてハッチングして示している。
【0038】
設定作業領域Aでの換気をガイドするために、ガイド壁15a、15bが、展開状態に配置されている。具体的には、巻取機からワイヤーとカーテンが送り出されて、ガイド壁15a、15bの送風機20側の端部が左右方向の中央のセグメント4の位置に固定されている。
一方、設定作業領域Aに対応しないガイド壁15c、15dは、他の作業などにも支障にならないよう収納状態となっている。具体的には、巻取機にワイヤーとカーテンが巻き取られて、ガイド壁15c、15dの送風機20側の端部は、右側壁1aの付近であって他の作業などにも支障にならない位置に移動させている。
【0039】
図7は、シール貼り作業が設定作業領域Bで行われるときの換気装置の稼働状態を示したものである。送風機20を設定作業領域Bに移動させた後に、送風機20と排風機30d~30fを稼働させ換気を行う。
図7では、稼働する排風機30d~30fを斜線にてハッチングして示している。
【0040】
設定作業領域Bでの換気をガイドするために、ガイド壁15b、15cが、展開状態に配置されている。具体的には、巻取機からワイヤーとカーテンが送り出されて、ガイド壁15b、15cの送風機20側の端部が左右方向の中央のセグメント4の位置に固定されている。
一方、設定作業領域Bに対応しないガイド壁15a、15dは、他の作業などにも支障にならないよう収納状態となっている。具体的には、巻取機にワイヤーとカーテンが巻き取られて、ガイド壁15a、15dの送風機20側の端部は、右側壁1aの付近であって他の作業などにも支障にならない位置に移動させている。
【0041】
図8は、シール貼り作業が設定作業領域Cで行われるときの換気装置の稼働状態を示したものである。送風機20を設定作業領域Cに移動させた後に、送風機20と排風機30g~30iを稼働させ換気を行う。
図8では、稼働する排風機30g~30iを斜線にてハッチングして示している。
【0042】
設定作業領域Cでの換気をガイドするために、ガイド壁15c、15dが、展開状態に配置されている。具体的には、巻取機からワイヤーとカーテンが送り出されて、ガイド壁15c、15dの送風機20側の端部が左右方向の中央のセグメント4の位置に固定されている。
一方、設定作業領域Cに対応しないガイド壁15a、15bは、他の作業などにも支障にならないよう収納状態となっている。具体的には、巻取機にワイヤーとカーテンが巻き取られて、ガイド壁15a、15bの送風機20側の端部は、右側壁1aの付近であって他の作業などにも支障にならない位置に移動させている。
【0043】
以上のようにすることで、換気流を安定して確保し、建屋内でのシール貼り作業から発生する有機ガスを安全に効率的に換気することができる。
また、ガイド壁は伸縮可能であるので、換気が必要なときのみ使用し、換気が不要なときは縮小させることができるので、建屋内の作業の支障にならない。
【0044】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0045】
本願の実施形態では、シールド工法のセグメントのシール貼り作業で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、推進工法における推進管のシール貼り作業などで有機ガスが発生する作業にも適用しても良い。
【0046】
本願の実施形態では、送風機20は複数の設定作業領域にわたって移動可能なもので説明したが、これに限られるものではなく、複数の送風機を各設定作業領域に固定的に配置するものでも良い。また、設定作業領域を複数設定して換気するものであったが、これにも限られず、1つの設定作業領域のものでも良い。
【0047】
本願の実施形態では、ガイド壁15a~15dは、展開した際に、設定作業領域の前後側の長辺の右側(排風機側)の略半分にわたって設置されるようになっていたが、これに限られるものではない。設定作業領域の前後側の長辺の左側(送風機側)の略半分にわたって設置されるようにしても良い。この場合には、より送気が安定することになる。また、設定作業領域の前後側の長辺の全長にわたって設置されるようにしても良い。この場合には、送気及び排気がどちらもより安定することになる。
【0048】
本願の実施形態では、セグメント4のボルト穴4aにダミーボルト19を螺合させて設けてリング状部16aを掛ける例で説明したが、これに限られない。ダミーボルト19を螺合させるボルト穴を持たないようなスチールセグメントの場合では、ボルト穴に開閉可能なリング状部を直接通して、ガイド壁の端部をセグメントに固定しても良い。
【0049】
本願の実施形態では、ガイド壁15の端部をセグメントに固定する例で説明したが、これに限られない。他の方法でガイド壁の端部を固定しても良い。例えば、支柱が立設された台車にガイド壁の端部を固定し、当該台車を作業領域上で移動させることでガイド壁を展開縮小可能として、台車の車輪をロックするなどして、ガイド壁の端部を固定するようにしても良い。
【0050】
本願の実施形態では、シール貼り作業で説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、掘削土砂の搬出作業や資器材の搬出入作業による排気ガス、掘削土砂の改質作業による改質材の粉塵などの換気に適用してもよい。
土砂ピットから土砂搬出車両に掘削土砂を積み込むバックホウや土砂搬出車両は、移動することも多く、ガイド壁がその移動にも支障にならないように伸縮可能とすることで、特に、効果的である。また、排気ガスも一般的には空気よりも重いので、ガイド壁をセグメントストックヤードに適用したように下方に設けることも効果的である。この場合の排気ガスは、本発明の被換気媒体に相当する。
【0051】
また、掘削土砂の改質作業による改質材の粉塵も土砂ピット内の異なる場所で攪拌されるので、その発生は移動することも多く、そのような場合にも、同様にガイド壁の伸縮可能な構成は発生箇所に応じて適切に適用できるので、特に、効果的である。この場合の粉塵は、本発明の被換気媒体に相当する。
【0052】
本願の実施形態では、開放式プッシュプル型換気となるように風量が設定されるのが理想的ではあるが、被換気媒体が法令基準内など作業の支障にならないようなものとなるのであれば、それに限られるものではない。また、ガイド壁を設けることで、送風機と排風機の効率的な選択が望める。
また、換気流も必ず斜め下の方向にする必要はない。
【0053】
本願の実施形態では、設定作業領域を三つに区分して設定したが、これに限られず、各設定作業領域がそれぞれ重なるようにしてもよい。また、本願の実施形態では、一つの設定作業領域で建屋1内の前後方向に3列のセグメント4が含まれるように三つの設定作業領域が設定されていたが、これにも限られず、例えば1列のセグメントだけが含まれるように設定作業領域、すなわち九つの設定作業領域を設定するようにしてもよい。このようにすると、より作業に合わせた換気とすることができる。この場合には、各設定作業領域ごとにガイド壁を設けることになり、九つの設定作業領域では10個のガイド壁を設けることになる。
【0054】
本願の実施形態では、ガイド壁の伸縮は、手動によって行っていたが、機械動作によって伸縮されるようにしても良い。また、送風機と排風機との作動に連動してガイド壁を伸縮させるようにしても良い。
また、ガイド壁の右側壁側の固定部には巻取機を設けたが、これに限定されず、カーテンを折り畳んで縮小させるような構成にしても良い。
【0055】
本願の実施形態では、ガイド壁の伸縮は、側壁の排風機側を固定端とし、送風機側を移動端として説明したが、これに限らない。例えば、送風機側を固定端として、排風機側を移動端としても良い。また、送風機側及び排風機側の双方を移動端としても良い。すなわち、本願発明のガイド壁の伸縮に係る「側壁側から前記送風機側に向かう方向」とは、両方向を含んだものであって、一方向だけを示すものではない。
【0056】
いずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 建屋
2 発進立坑開口部
3 天井走行クレーン
4 セグメント
5 セグメント搬入車両
6 セグメントストックヤード
7 土砂ピット
8 バックホウ
9 土砂搬出車両
10 添加材設備
11 裏込注入設備
12 濁水処理設備
13 中央管理室
14 資材置場
15 ガイド壁
16 ワイヤー
17 カーテン
18 巻取機
19 ダミーボルト
20 送風機
30 排風機