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  • -カバンの取っ手及びそれを有するカバン 図1
  • -カバンの取っ手及びそれを有するカバン 図2
  • -カバンの取っ手及びそれを有するカバン 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】カバンの取っ手及びそれを有するカバン
(51)【国際特許分類】
   A45C 13/26 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
A45C13/26 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018077511
(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公開番号】P2019180961
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000114606
【氏名又は名称】モリト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】松村 光
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-027134(JP,U)
【文献】特開2002-104489(JP,A)
【文献】米国特許第06715449(US,B1)
【文献】実開昭62-162497(JP,U)
【文献】特開2010-259627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 13/26-13/30
A45F 3/00-3/04
A44B 11/00-11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取っ手本体と、
前記取っ手本体の少なくとも一端に取り付けられた鋸歯を有するレール(3)と、
前記レール(3)の長さを制御する制御部(4)を有するカバンの取っ手(2)であって、
前記制御部(4)は、前記レール(3)と係合可能な爪(63)と、操作用摘み(64)とを備えた操作レバー(61)を有しており、
前記レール(3)の鋸歯(31)においては、「前記爪(63)と接触するが係合しない形状を有する歯(32)」と「前記爪(63)と係合する形状を有する歯(33)」が混在しており、
前記鋸歯を有するレール(3)において、「前記爪(63)と接触するが係合しない形状を有する歯(32)」の3~8個ごとに「前記爪(63)と係合する形状を有する歯(33)」が1個設けられており、
「前記爪(63)と接触するが係合しない形状を有する歯(32)」が前記爪(63)と接触するときに接触音を発する
ことを特徴とするカバンの取っ手(2)。
【請求項2】
「前記爪と接触するが係合しない形状を有する歯(32)」がなだらかな山型歯であり、「前記爪と係合する形状を有する歯(33)」が垂直壁と斜面を有する歯である請求項1記載の取っ手。
【請求項3】
前記制御部(4)は、下部のレール通路(5)と上部の操作部(6)を組み合わせてなるものである請求項1又は2に記載の取っ手。
【請求項4】
前記レール通路(5)は下部の樋状部分(7)と、上部の架橋部分(8)からなり、相互に分離可能である請求項3記載の取っ手。
【請求項5】
前記操作部(6)は、前記架橋部分(8)に対してこれと直角に設けられており、前記操作レバー(61)と静止部(62)を有する請求項記載の取っ手。
【請求項6】
前記操作レバー(61)は前記レール(3)と係合する前記爪(63)と前記操作用摘み(64)を先端に有するレバーであって、ピン(65)を支点として回動可能であり、前記操作レバー(61)と前記静止部(62)の間にはバネ(66)が収容されている請求項5記載の取っ手。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の取っ手を取り付けたカバン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバンの取っ手に関し、特に長さ調節が可能である取っ手に関する。本発明はまたその取っ手を有するカバンに関する。
【背景技術】
【0002】
手提げカバンの中に高さ方向に長い物を収容すると、その内容物がカバンからはみ出してしまい、手と干渉して持ちにくいことがある。このようなときは取っ手は長い方がよい。しかし、取っ手が長すぎると、地面の障害物にあたって邪魔になることがある。このときは取っ手は短い方がよい。このように、場合によって取っ手の長さは調節変更できることが望ましい。
【0003】
手提げカバンの取っ手の長さを変更するには、例えば実開昭60―86132(特許文献1)のように、長さ調節金具を介在させることにより行うのが一般的である。
【0004】
この従来技術の考案は、取っ手ベルトを折り畳んだり、調節金具に通したりして長さ調節をするので、時間がかかると共に煩わしい。
【0005】
そこで、本発明者は、取っ手に鋸歯式のレールと、そのレールを移動させる制御部を設けることにより、前記目的を達成することを考えた。このような方法はズボンのウエスト調節具などで既に用いられている(例えば、特許第4975852号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭60―86132
【文献】特許第4975852号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、鋸歯式のレールというのは、歯1個分動かしても通常0.5~1cmの単位で移動するに過ぎない。ズボンのウエスト調節ではそれでちょうどよいが、カバンの取っ手では、「長め」、「普通」、「短め」程度の大まかな基準で簡略に調節できる方が便利である。そうかといって歯の間隔を単に広げただけでは歯を通過するときの「カチカチ」という音がしないので物足りない。音がしないと故障したのかと勘違いする人もいるかもしれない。
【0008】
本発明の目的は、鋸歯式のレールを使用しつつ、鋸歯の歯を何個か飛ばして停止し、停止しない飛ばされた歯では「カチカチ」という音だけ発するような鋸歯式のレールを有するカバンの取っ手長さ調節具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、取っ手本体と、前記取っ手本体の少なくとも一端に取り付けられた鋸歯を有するレール3と、前記レール3の長さを制御する制御部4を有するカバンの取っ手2の長さ調節具であって、前記制御部4は、前記レール3と係合可能な爪63と操作用摘み64を備えた操作レバー61を有し、前記鋸歯31を有するレールの鋸歯は、「前記爪63と接触するが係合しない形状を有する歯32」と「前記爪63と係合する形状を有する歯33」が混在してており、前記鋸歯を有するレール3において、「前記爪63と接触するが係合しない形状を有する歯32」の3~8個ごとに「前記爪63と係合する形状を有する歯33」が1個設けられており、「前記爪63と接触するが係合しない形状を有する歯32」が前記爪63と接触するときに接触音を発することを特徴とする。
【0010】
好ましくは、鋸歯を有するレール3において、「前記爪63と接触するが係合しない形状を有する歯32」の3~8個ごとに「前記爪63と係合する形状を有する歯33」が1個設けられている。2個以下では従来の鋸歯とあまり変わらないし、9個以上では調節幅が大き過ぎる。
【0011】
好ましくは、「前記爪と接触するが係合しない形状を有する歯32」が両側が斜面のなだらかな山型歯であり、「前記爪と係合する形状を有する歯33」が垂直壁と斜面を有する歯である。「爪と接触するが係合しない形状を有する歯」としては、他にも単純波形、高低差のある波形など様々な形状やそれらを組み合わせた形状を採用することができる。それにより、音程や音色の異なるカチカチ音を生じさせることができる。
【0012】
好ましくは、前記制御部4は、下部のレール通路5と上部の操作部6を組み合わせてなるものである。
【0013】
前記レール通路5は下部の樋状部分7と、上部の架橋部分8からなり、相互に分離可能であることが好ましい。
【0014】
前記操作部6は、前記架橋部分8に対してこれと直角に設けられており、操作レバー61と静止部62を有することが好ましい。
【0015】
前記操作レバー61はレール3と係合する爪63と操作用摘み64を先端に有するレバーであって、ピン65を支点として回動可能であり、前記操作レバー61と前記静止部62の間にはバネ66が収容されていることが好ましい。
【0016】
長さ調節が可能なレール3は取っ手2の一端部に取り付ければ目的は達するが、取っ手の両端に取り付けることにより、調節ストロークを倍増させることができる。
【0017】
本発明はまた、上記したような取っ手を取り付けたカバンでもある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、取っ手を長くするとき、鋸歯の歯を何個か飛ばして停止し、停止しない飛ばされた歯では「カチカチ」という音だけ発するような鋸歯式のレールを有するカバンの取っ手長さ調節具が得られる。この調節具によれば、取っ手の大まかな長さ調節がワンタッチで可能であり、しかも停止しないで飛ばされる鋸歯においても「カチカチ」という歯切れの良い音がするので満足感が得られる。
【0019】
以下、添付の図面に基づき本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例1に係る取っ手を有するカバンの正面図であり、(a)取っ手を伸ばしたとき、(b)取っ手を縮めたときを表している。
図2】取っ手部分の拡大正面図であり、(a)取っ手を伸ばしたとき、(b)取っ手を縮めたときを表している。
図3】レール制御部の、(a)正面図、(b)背面図、(c)平面図、(d)底面図、(e)左側面図、(f)右側面図である。
図4】レールの、(a)正面図、(b)背面図、(c)右側面図、(d)縦断面図である。
図5】レールと制御部の係合状態を示す断面図であり、(a)は係合状態、(b)は係合を脱した状態を表している。
図6】本発明の実施例2に係る取っ手を有するカバンの正面図であり、(a)取っ手を伸ばしたとき、(b)取っ手を縮めたときを表している。
図7】本発明の取っ手の断面図であり、(a)は実施例3、(b)は実施例4、(c)実施例5である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0022】
図1~5は実施例1を示す。これらの図に示すように、この手提げカバン1の取っ手2の長さは調節可能である。図1の(a)は取っ手2を伸ばしたとき、(b)は取っ手2を縮めたときを表している。長さ調節は、取っ手2の本体の一端21をカバン1に固定しておき、他端22をカバン内部のポケット(図示せず)に収納したり、そこから引き出したりすることによって行われる。
【0023】
調節側の取っ手端部22には、図2に示すように、レール3が取り付けられている。レール3は、図4(a)~(d)に示すように、表側に鋸歯31を有する。この鋸歯31はすべて同じ形ではなく、両側が斜面のなだらかな山型歯32が6個続いた後で、垂直壁と斜面を有する歯33が1個現れる。図4では、垂直壁を有する歯33が全部で4個設けられている。後述するように、この垂直壁を有する歯33のところで制御部の爪と係合が起こり位置決めされるので、図示のレール3は4か所で位置決めされることになる。レール3の裏側には鉄板などの薄く細長い金属板34が貼り付けられており、簡単に曲げられないようにしてある。
【0024】
制御部4は、図3に示すように、下部のレール通路5と上部の操作部6を組み合わせたものである。
【0025】
レール通路5は下部の樋状部分7と、上部の架橋部分8からなる。樋状部分7と架橋部分8により形成される枠の中をレール3が移動可能である(図3(c)~(f)参照)。樋状部分7は大きな2つの窓711を備えた底部71と、左右の低い壁72を有する。架橋部分8は、板状部分81とその板状部分81の左右から垂れさがる腕82を有する。左右の腕82が樋状部分7の壁72に対してネジ83などにより固定される。このネジ83を外すことにより、樋状部分7と架橋部分8は分離可能である。
【0026】
制御部4の操作部6は、架橋部分8に対してこれと直角に設けられている。そのため、制御部4を正面から見ると十字架のようである(図3(a))が、カバン1に取り付けられたときには操作部6だけが外部から見えるように取り付けられる(図1参照)。操作レバー61として機能するのは図3(a)の下側部分であり、上側部分は静止部62である。
【0027】
操作レバー61は、図5に示すように、レール3と係合する爪63と操作用摘み64を先端に有し、固定ピン65を支点として回動可能である。操作レバー61と静止部62の間にはバネ66が収容されているので、通常、図5(a)のように爪63が押し下げられ、レール3と接触する。操作用摘み64の自由端を指で持ち上げれば、爪63とレール3の接触や係合が外れてレール3は自由に移動可能となる。
【0028】
このカバンのレール3の鋸歯31は前記したとおり、多数の、両側が斜面のなだらかな山型歯32と、少数の、垂直壁と斜面を有する歯33からなる。爪63は、レール3のなだらかな山型歯32のところでは接触して「カチカチ」音を立てるだけで係合しないので(図5(b)参照)、レール3は使用者が引っ張ることにより移動可能である。取っ手を長くするとき、レール3は、垂直壁を有する歯33のところで初めて係合して移動できなくなり(図5(a)参照)、その場所で位置決めされる。
【0029】
この制御部4は、図1に示すように、カバンに対する取っ手2の取り付け部11に対して、操作部6のみが見えるような形で、架橋部分81の孔84を利用してネジ12やかしめなどにより取り付けられる。このとき、操作用摘み61はカバン表面に露出するので指をかけるのに支障はない。
【0030】
取っ手2の長さを長くするときには、操作用摘み61を指で持ち上げ、今までの位置決め状態をいったん解除する。その後、指を離し、取っ手2を手で引き上げればよい。操作レバー61の爪63は、なだらかな山型歯32のところでは接触して「カチカチ」と音を立てるだけで係合せず、レール3は移動を続ける。レール3が垂直壁を有する歯33のところに来るとそこで初めて係合し、位置決めされる。この実施例では6回カチカチ音がした後で1回止まる。最後にすっぽり抜けてしまわないようにレール3の端部にはストッパ35が設けられている。
【0031】
取っ手2の長さを短くするときには、操作用摘み61を指で持ち上げ、今までの位置決め状態をいったん解除する。その後、指を離して取っ手を押し下げると、すべての歯において「カチカチ」と音を立てながら、レール3はカバン内側のポケット内に移動を続ける。取っ手2の長さを長くするときと異なり、垂直壁を有する歯33のところでも垂直壁と反対側の斜面を駆け下りるだけなので停止しない。
【0032】
この実施例では、取っ手を長くするとき、1回の操作で4~7cmの長さ調節が可能である。すなわち、「長め」、「普通」、「短め」程度の大まかな基準で調節できる。
【0033】
操作つまみを待ちあげたり、取っ手をカバン内に押し込んだり、引っ張り出したりするのは、慣れれば目をつぶっていてもできるようになり、ワンタッチで速やかに取っ手の長さを調節することができる。
【0034】
上記説明では、片側の取っ手について述べてきたが、いうまでもなく、反対側の取っ手にも同じ機構を設ける必要がある。
【実施例2】
【0035】
図6は本発明の実施例2を表している。実施例1との相違点は、レール3A及びレールの制御部4Aが取っ手2Aの両端に設けられていることである。この構成を取ることにより、合計ストロークを長くすることができ、取っ手2Aの長さをさらに伸ばすことができる。
[実施例3~5]
【0036】
図7(a)(b)(c)は本発明の実施例3~5を表している。実施例1との相違点は、レールの鋸歯の形状にある。
【実施例3】
【0037】
図7(a)の実施例3はなだらかな波形歯32A及び垂直壁と斜面を有する歯33Aの組み合わせである。このときは、山形歯のときよりもマイルドなカチカチ音を発生させる。
【実施例4】
【0038】
図7(b)の実施例4は高さの異なる波形歯321B,322B及び垂直壁と斜面を有する歯33Bの組み合わせである。このときは、単純な波形歯のときと比べ、カチカチ音に高低差が表れる。
【実施例5】
【0039】
図7(c)の実施例5はなだらかな山型歯321Cとなだらかな波形歯322C及び垂直壁と斜面を有する歯33Cの組み合わせである。このときは、途中で音程が変化する。
【0040】
このように歯の形状を組み合わせたり変化させたりすることにより、異なる音程や音色のカチカチ音を生じさせることができる。カバンの使用者に興味深く使用してもらえるであろう。
【符号の説明】
【0041】
1 カバン
11 取り付け部
2 取っ手
21 取っ手の一端
22 取っ手の他端
3 レール
31 鋸歯
32 両側が斜面のなだらかな山型歯(爪と接触するが係合しない形状を有する歯)
32A なだらかな波形歯(爪と接触するが係合しない形状を有する歯)
321B,322B 高さの異なる波形歯(爪と接触するが係合しない形状を有する歯)
321C なだらかな山型歯(爪と接触するが係合しない形状を有する歯)
322C なだらかな波形歯(爪と接触するが係合しない形状を有する歯)
33 垂直壁と斜面を有する歯(爪と係合する形状を有する歯)
33A 垂直壁と斜面を有する歯(爪と係合する形状を有する歯)
33B 垂直壁と斜面を有する歯(爪と係合する形状を有する歯)
33C 垂直壁と斜面を有する歯(爪と係合する形状を有する歯)
34 金属板
35 ストッパ
4 制御部
5 レール通路
6 操作部
61 操作レバー
62 静止部
63 爪
65 ピン
66 バネ
7 樋状部分
71 底部
711 窓
72 壁
8 架橋部分
81 板状部分
82 腕
83 ネジ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7