IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 ミックウェアの特許一覧 ▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図1
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図2
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図3
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図4
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図5
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図6
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図7
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図8
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図9
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図10
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図11
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図12
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図13
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図14
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図15
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図16
  • 特許-情報処理装置および情報処理システム 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20230106BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20230106BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
G01C21/30
G08G1/0969
G08G1/01 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018172779
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020046219
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】504050275
【氏名又は名称】株式会社 ミックウェア
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100118681
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】志甫谷 加織里
(72)【発明者】
【氏名】北川 弘之
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-071442(JP,A)
【文献】特開平08-068656(JP,A)
【文献】特開2006-071627(JP,A)
【文献】特開2016-138812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26 ~ 21/36
G08G 1/00 ~ 1/16
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の位置座標に関する情報処理を行う制御部を備えた情報処理装置であって、
前記制御部は、
前記移動体の走行履歴を示す一連の位置座標を含む走行履歴情報に基づき、前記走行履歴情報における所定の区間毎に、地図情報の道路ネットワーク上に前記位置座標を補正するマップマッチングを行って、前記マップマッチング結果の位置座標が並んだ複数の候補座標列を算出し、
前記複数の候補座標列に基づいて、前記移動体の走行位置を示す位置データを生成し、
前記区間毎の走行履歴情報における位置座標の列と前記各候補座標列との間の偏差に基づいて、前記偏差が最も小さい前記候補座標列を前記区間毎の座標列として決定し、前記移動体の走行位置を示す位置データを生成することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
移動体の位置座標に関する情報処理を行う制御部を備えた情報処理装置であって、
前記制御部は、
前記移動体の走行履歴を示す一連の位置座標を含む走行履歴情報に基づき、前記走行履歴情報における所定の区間毎に、地図情報の道路ネットワーク上に前記位置座標を補正するマップマッチングを行って、前記マップマッチング結果の位置座標が並んだ複数の候補座標列を算出し、
互いに隣接する2区間のうちの一方に含まれる候補座標列と、他方に含まれる候補座標列との位置関係に基づいて区間毎に座標列を決定し、決定した前記区間毎の座標列を繋いで、前記移動体の走行位置を示す位置データを生成することを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
前記位置関係は、前記2区間のうちの一方に含まれる候補座標列と、他方に含まれる候補座標列とにおいて互いに隣接する位置座標の間の距離を含む請求項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記位置関係は、前記2区間のうちの一方に含まれる候補座標列と、他方に含まれる候補座標列とにおいて互いに隣接する位置座標の間の方位差を含む請求項2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記位置関係に応じて、前記複数の候補座標列において前記座標列の候補となる候補座標列を制限し、
前記移動体の自律航法測位による方位を示す情報に基づいて、制限された候補座標列の中から前記座標列を決定する請求項3又は4に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の走行に関する情報処理を行う情報処理装置および情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のプローブ情報をサーバに記憶し、記憶されたプローブ情報を種々のビッグデータ分析、例えば道路区間ごとの所要時間の分析、或いは渋滞状況の分析などに活用する情報処理システムが考えられている。情報処理システムは、全地球測位システム及びマップマッチング技術を用いて、より精度の高い車両の位置情報が得られるように構成されている。
【0003】
この種の情報処理システムとしては、不要なプローブ情報をサーバに記憶することなく、信頼性の高いプローブ情報だけを活用するナビゲーション情報システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のナビゲーション情報システムによると、交通情報センタにおいて、車両からの信頼性の高いプローブ情報に基づいて道路特性評価を含む地図情報を作成できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2007-179373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サーバには、車両に搭載される様々な機種の装置でプローブ情報が記憶されることから、機種等に依っては位置精度が低い情報も含まれ得る。このことから、従来の情報処理システムでは、例えば上記のようなデータ分析の対象として、充分に高い位置精度のデータを得ることが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、マップマッチングされたプローブ情報などの走行履歴情報から、より位置精度が高いデータを得ることが可能な情報処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る情報処理装置は、移動体の位置座標に関する情報処理を行う。情報処理装置は、記憶部と、制御部とを備える。記憶部は、移動体の走行履歴を示す一連の位置座標を含む走行履歴情報を記憶する。制御部は、地図情報の道路ネットワーク上に位置座標を補正するマップマッチングを行う。制御部は、記憶部に記憶された走行履歴情報に基づいて、マップマッチング結果の位置座標が並んだ複数の候補座標列を算出する。その後、制御部は、算出された複数の候補座標列に基づいて、移動体の走行位置を示す位置データを生成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る情報処理装置によると、対象とする走行履歴情報に対する複数の候補座標列に基づいて、より高い信頼性を有する位置データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る情報処理システムの概要を説明するための図
図2】情報処理システムの構成を示す図
図3】情報処理システムにおけるサーバ装置による位置データ処理を説明するためのフローチャート
図4】サーバ装置による位置データ処理を例示するための図
図5】位置データ処理におけるマップマッチングの候補算出を説明するためのフローチャート
図6】マップマッチングの候補算出を説明するための図
図7】マップマッチングの候補算出により生成されるインデックスファイルのデータ構造を説明するための図
図8】マップマッチングの候補算出により生成される候補座標列ファイルのデータ構造を説明するための図
図9】実施形態1に係る後処理マップマッチングを説明するためのフローチャート
図10】実施形態1に係る後処理マップマッチングを説明するための図
図11】実施形態2に係る後処理マップマッチングを説明するためのフローチャート
図12】後処理マップマッチングにおける距離に基づいて候補座標列を順次に削除する処理を説明するためのフローチャート
図13】距離に基づいて候補座標列を順次に削除する処理を説明するための図
図14】後処理マップマッチングにおける、2点間方位を用いて候補座標列を削除する処理を説明するためのフローチャート
図15】2点間方位を用いて候補座標列を削除する処理を説明するための図
図16】後処理マップマッチングにおける、DR方位を用いて候補座標列を決定する処理を説明するためのフローチャート
図17】DR方位を用いて候補座標列を決定する処理を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して実施の形態に係る情報端末を説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0011】
<実施形態1>
実施形態1では、図1から図10を参照して、走行履歴情報から、より高い位置精度の信頼性を有する位置データを生成する情報処理システムについて説明する。
【0012】
図1は、実施形態1に係る情報処理システムの概要を説明するための図である。実施形態1の情報処理システムは、複数の情報端末10A~10Cと、サーバ装置20とを備える。サーバ装置20は、情報処理装置の一例である。例えば、情報端末10A~10Cは、ナビゲーション装置であり、サーバ装置20は、クラウドサーバ装置である。情報端末10A~10Cは、車両1A~1Cにそれぞれ搭載されている。車両1A~1Cは、移動体の一例である。以下、情報端末10A~10Cを総称して「情報端末10」ともいう。また、車両1A~1Cを総称して「移動体1」ともいう。情報端末10は、インターネット等のネットワーク3を介して、サーバ装置20と情報通信を行う。図1では、ネットワーク3を介する情報通信の流れを矢印で示している。
【0013】
各情報端末10A~10Cは、各車両1A~1Cの走行履歴情報100A~100Cを取得する。走行履歴情報100A~100Cは、各車両1A~1Cが走行した位置や方向等を経時的に示す情報である。以下、走行履歴情報100A~100Cを総称して「走行履歴情報100」ともいう。
【0014】
各情報端末10は、取得した走行履歴情報100を、サーバ装置20に送信する。サーバ装置20は、各情報端末10から受信した走行履歴情報100を随時、記憶する。サーバ装置20に記憶された走行履歴情報100等の各種データは、例えばビッグデータとして種々の分析に利用可能である。
【0015】
各情報端末10は、GPS(Global Positioning System)を利用して、各移動体1の走行位置を検出する。このとき、各移動体1の位置を示す位置座標は、マップマッチング技術を用いて、道路ネットワーク上に補正される場合がある。しかし、補正後の位置座標の正確さは、各情報端末10の性能に依存する。したがって、サーバ装置20が、性能が低い情報端末10からの走行履歴情報100を記憶した場合に、ビッグデータの分析対象としての信頼性が損なわれる虞がある。また、特にマップマッチング技術の補正をしない生データとして、GPSや情報端末10の各種センサによる情報のみを受信する場合もある。このような場合、GPS精度が悪い場所について、同移動体1が走行した位置を特定できないという問題もある。そこで、本実施形態の情報処理システムは、記憶した走行履歴情報100に基づいて、事後的にマップマッチングを行うことにより、より位置精度の信頼性が高い位置データ223を生成する。以上のような情報処理システムの構成を以下に説明する。
【0016】
図2は、本実施形態に係る情報処理システムの構成を示す図である。情報処理システムは、前述の通り、情報端末10と、サーバ装置20と、を備える。
【0017】
(情報端末)
情報処理システムにおける情報端末10について、図2を参照して説明する。
【0018】
情報端末10は、端末制御部11と、移動体1に搭載された各種のセンサ群12と、位置情報取得部14と、を備える。情報端末10は、端末記憶部15と、端末通信部16と、操作部17と、表示部18と、を備える。
【0019】
端末制御部11は、例えば、ソフトウェアと協働して所定の機能を実現するCPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。端末制御部11は、情報端末10の動作を制御する。端末制御部11は、端末記憶部15に記憶されたデータやプログラムを読み出して種々の演算処理を行い、所定の機能を実現する。
【0020】
なお、端末制御部11は、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路、或いは再構成可能な電子回路等のハードウェア回路で構成されてもよい。端末制御部11は、CPU、GPU、MPU、マイコン、DSP、FPGA、ASIC等の種々の半導体集積回路で構成されてもよい。
【0021】
センサ群12は、移動体1の走行速度、又は移動体1に加わる加速度若しくは角速度等の移動情報を取得する。センサ群12は、例えば、速度センサ121、加速度センサ122、又はジャイロセンサ123等を含む。速度センサ121は、情報端末10が搭載される移動体1の走行速度を検出する。加速度センサ122は、移動体1に加わる加速度を検出する。ジャイロセンサ123は、移動体1に加わる角速度を検出する。本実施形態のセンサ群12は、200msの周期で移動情報を取得する。なお、センサ群12は、移動体1中の各種ECU(Electronic Control Unit)から移動体1に関する種々の情報を取得する取得部を備えてもよい。
【0022】
位置情報取得部14は、情報端末10の現在位置を示す位置情報を取得する。本実施形態において、位置情報取得部14は、GPS衛星からの電波を受信して、受信した地点の緯度及び経度を測位するGPSモジュールである。本実施形態の位置情報取得部14は、1000msの周期でGPS情報を取得する。
【0023】
端末記憶部15は、情報端末10の機能を実現するために必要なプログラム及びデータを記憶する記憶媒体である。端末記憶部15は、例えば、情報端末10内でマップマッチングを行うための地図情報151を有する。なお、情報端末10では、特にマップマッチングが行われなくてもよい。端末記憶部15における地図情報151は適宜、省略可能である。
【0024】
端末通信部16は、所定の通信規格にしたがって、情報端末10をネットワーク3に接続するためのモジュールである。所定の通信規格には、例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.3,IEEE802.11a/11b/11g/11ac、携帯通信の3G又は4Gの通信規格が含まれる。端末通信部16は、情報端末10が取得した走行履歴情報100を、サーバ装置20に送信する。
【0025】
ここで、走行履歴情報100は、GPS情報、移動情報、マッチング座標情報、及びこれらの情報を取得した日時についての情報等を含む。GPS情報は、GPSを用いて測定された、情報端末10の位置座標等の情報である。移動情報は、情報端末10に搭載されたセンサ群12を用いて測定した、車両等の移動体1の速度、角速度、加速度等の情報である。マッチング座標情報は、マップマッチング技術を用いて補正された移動体1の位置座標情報である。
【0026】
操作部17は、ユーザによる種々の操作を情報端末10に入力するユーザインタフェースである。操作部17は、スイッチ等で構成される。あるいは、操作部17は、後述する表示部18と共にタッチパネルを構成し、操作部17は、ユーザによる表示部18の種々のセグメントへのタッチ操作を、情報端末10に入力してもよい。
【0027】
表示部18は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイで構成される。表示部18は、端末記憶部15に記憶されている地図情報151に重畳させて、情報端末10の現在位置情報を表示する。
【0028】
(サーバ装置)
情報処理システムにおけるサーバ装置20について、図2を参照して説明する。
【0029】
図2において、サーバ装置20は、サーバ制御部21と、サーバ記憶部22と、サーバ通信部23と、を備える。ここで、サーバ制御部21は制御部の一例であり、サーバ記憶部22は記憶部の一例であり、サーバ通信部23は通信部の一例である。
【0030】
サーバ制御部21は、例えば、ソフトウェアと協働して所定の機能を実現するCPUを含んで構成される。サーバ制御部21は、サーバ装置20の動作を制御する。サーバ制御部21は、サーバ記憶部22に記憶されたデータやプログラムを読み出して種々の演算処理を行い、所定の機能を実現する。例えば、サーバ制御部21は、サーバ記憶部22に予め記憶された地図情報222を参照して、移動体1の位置座標を示す情報を補正するマップマッチングの機能を実現する。
【0031】
なお、サーバ制御部21は、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路、或いは再構成可能な電子回路等のハードウェア回路で構成されてもよい。サーバ制御部21は、CPU、GPU、MPU、マイコン、DSP、FPGA、ASIC等の種々の半導体集積回路で構成されてもよい。
【0032】
サーバ記憶部22は、サーバ装置20の機能を実現するために必要なプログラム及びデータを記憶する記憶媒体である。サーバ記憶部22は、走行履歴データベース221や、地図情報222を有する。走行履歴データベース221には、複数の情報端末10から取得された走行履歴情報100が記憶される。地図情報222は、例えばノード及びリンクで構成される道路ネットワークを含み、マップマッチングに使用される。以下、データベースを「DB」と略記する場合がある。走行履歴情報100は、サーバ通信部23により受信されて、サーバ制御部21によってサーバ記憶部22に記憶される。
【0033】
サーバ通信部23は、所定の通信規格にしたがって、サーバ装置20をネットワーク3に接続するためのモジュールである。所定の通信規格には、例えば、IEEE802.3,IEEE802.11a/11b/11g/11ac、携帯通信の3G又は4Gの通信規格が含まれる。サーバ通信部23は、情報端末10が取得した走行履歴情報100を受信する。
【0034】
以上のように構成される情報処理システムの動作を以下に説明する。
【0035】
本実施形態の情報処理システムにおいて、各情報端末10は、移動時の走行履歴情報100を取得してサーバ装置20に送信する。サーバ装置20は、移動時の走行履歴情報100を受信して、走行履歴DB221に記憶する。その後、サーバ装置20は、走行履歴DB221から、処理対象の走行履歴情報100を取得して、当該走行履歴情報100について後述する位置データ処理を行って、より信頼性の高い情報として位置データ223を生成する。ここで処理対象の走行履歴情報100は、1台の移動体1から取得された走行履歴情報100のうち、所定の領域における情報である。
【0036】
(位置データ処理)
図3は、実施形態1に係る情報処理システムの位置データ処理を説明するためのフローチャートである。図4は、位置データ処理を例示するための図である。以下、図3のフローチャートに即して、サーバ装置20による位置データ処理を説明する。
【0037】
まず、図3の位置データ処理において、サーバ制御部21は、サーバ記憶部22に記憶された地図情報222を参照して、処理対象の走行履歴情報100についてマップマッチングにおける候補座標を算出する(S1)。候補座標は、走行履歴情報100のGPS座標に対する、正解の位置座標の候補となる座標である。マップマッチングの候補算出(S1)の一例を図4(A),(B)に示す。
【0038】
図4(A)は、地図情報222における道路ネットワーク700と、走行履歴情報100におけるGPS座標30を例示する。図4(B)は、図4(A)の各種情報に基づくステップS1の処理結果を例示する。
【0039】
ステップS1の処理は、図4(A)に示すように、所定数のGPS座標30を含んだチェック区間200-1,200-2毎に行われる。所定数は、例えば20点又は30点である。図4の例では、1つ目のチェック区間200-1におけるGPS座標30の列300-1に対して、3つの候補座標列500-1,500-2,500-3が生成される。また、次のチェック区間200-2において、GPS座標列300-2に対して、2つの候補座標列500-4,500-5が生成される。各候補座標列500-1~500-5は、それぞれGPS座標30に対応する複数の候補座標50を含む。ステップS1の処理の詳細については後述する。
【0040】
次に、サーバ制御部21は、ステップS1の処理結果に基づいて、後処理マップマッチングを実行する(S2)。後処理マップマッチングは、複数の候補座標列からの絞り込みにより、走行履歴情報100の補正結果の位置データ223を生成するための処理である。ステップS2において、サーバ制御部21は、マップマッチングの候補算出で得られた候補座標列に基づいて、チェック区間毎に、1つの候補座標列を、最適な座標列として決定するように、後処理マップマッチングを行う。図4(C)は、図4(B)に対する後処理マップマッチング(S2)の一例を示す。
【0041】
図4の例では、1つのチェック区間200-1において、3つの候補座標列500-1,500-2,500-3から、1つの候補座標列500-2が正解として選出され、次のチェック区間200-2において、2つの候補座標列500-4,500-5から、座標列500-2に続く候補座標列500-5が選出されることにより、マップマッチングが為されている。ステップS2の処理の詳細については後述する。
【0042】
サーバ制御部21は、以上の後処理マップマッチング(S2)によって決定した、チェック区間毎に1つの候補座標列を連結して位置データ223を生成し、位置データ223をサーバ記憶部22に記憶して(S3)、図3の位置データ処理を終了する。
【0043】
以上の位置データ処理によると、対象とする走行履歴情報100に対して複数の候補座標列を生成し(S1)、生成した複数の候補座標列から座標列を選出することによって(S2)、より高い信頼性を有する位置データ223を得ることができる。以上の位置データ処理の詳細を、以下に説明する。
【0044】
(マップマッチングの候補算出(S1))
図3のステップS1の処理の詳細を以下に説明する。図5は、マップマッチングの候補算出(S1)を説明するためのフローチャートである。図6は、マップマッチングにおける候補座標を算出する方法を説明するための図である。以下、図5のフローチャートに即して説明する。
【0045】
本処理において、サーバ制御部21は、走行履歴DB221において処理対象とする走行履歴情報100を、例えば移動体1の進行方向における先頭から末尾まで順次に読み込んで、複数の候補座標列を生成する。
【0046】
まず、サーバ制御部21は、走行履歴DB221から、マップマッチングを行う処理対象の走行履歴情報100を取得する(S101)。処理対象の走行履歴情報100には、1台の車両1A等の特定の移動体1が過去に走行した際の履歴に対応して、多数のチェック区間分のGPS情報及び移動情報が含まれる。
【0047】
次に、サーバ制御部21は、取得した走行履歴情報100において、1つのチェック区間を選択する(S102)。本実施形態のチェック区間は、取得した走行履歴情報100における先頭から末尾まで順次に選択される。サーバ制御部21は、選択したチェック区間分の走行履歴情報100におけるGPS情報と移動情報とを読み込む。本実施形態の情報端末10は、例えば、1000msの周期でGPS情報を取得し、200msの周期で移動情報を取得するので、GPS座標1点分の走行履歴情報100には、5回更新された移動情報が含まれる。
【0048】
次に、サーバ制御部21は、読み込んだ走行履歴情報100の移動情報から、自律航法に基づく方位を算出する(S103)。以下、自律航法に基づく方位を「DR(Dead Reckoning)方位」ともいう。
【0049】
次に、サーバ制御部21は、読み込んだGPS座標及び算出したDR方位を関連付けて、インデックスファイルに記録する(S104)。インデックスファイルは、処理対象として取得した走行履歴情報100を管理するためのファイルである。図7は、インデックスファイルのデータ構造を説明するための図である。
【0050】
インデックスファイルには、例えば図7に示すように、GPS情報のインデックス番号、移動情報のインデックス番号、GPS情報から読み込まれたGPS座標、及び移動情報から算出されたDR方位が入力される。サーバ制御部21は、座標1点分のGPS情報毎に、昇順で、GPS情報のインデックス番号を割り当て、個々の移動情報毎に、昇順で、移動情報のインデックス番号を割り当てる。
【0051】
サーバ制御部21は、走行履歴情報100及び地図情報222に基づいて、選択したチェック区間中の候補座標を算出する(S105)。例えば、サーバ制御部21は、GPS座標1点に対して少なくとも1つの候補座標を算出する。ステップS105で算出される候補座標を図6に例示する。
【0052】
ステップS105において、サーバ制御部21は、走行履歴情報100におけるGPS座標等の基準位置を移動情報により補正して、図6に示すように推定位置40を作成する。推定位置40は、チェック区間において移動体1が通過したことが推定される位置である。サーバ制御部21は、推定位置40から所定領域600の範囲内の道路ネットワーク700を探索することにより、候補座標を生成する。所定領域600は、想定される各種に応じた推定位置40の近傍を示す領域である。
【0053】
図6の例では、サーバ制御部21は、所定領域600AにおいてGPS座標30Aと隣接する各道路ネットワーク700-2,700-5上にそれぞれ候補座標50A-1,50A-2,50A-3を生成する。また、サーバ制御部21は、所定領域600BにおいてGPS座標30Bと隣接する各道路ネットワーク700-4,700-5上にそれぞれ候補座標50B-1,50B-2を生成する。
【0054】
上記のように、ステップS105の処理では、各点に対して複数の候補座標が算出され得る。このため、例えば図4(B)に示すように、同じチェック区間200において複数の候補座標列500が構成され得る。サーバ制御部21は、例えば道路ネットワーク700に基づいて、算出した複数の候補座標を候補座標列毎に管理して、サーバ記憶部22の保持領域に保持する。
【0055】
図5に戻り、サーバ制御部21は、保持した候補座標列のうちの1つの候補座標列を選択する(S106)。サーバ制御部21は、保持した候補座標列のうち1つの候補座標列について、候補座標列に含まれる候補座標の個数が、所定のしきい値以上か否かを判断する(S107)。当該しきい値は、例えばチェック区間中のGPS座標の個数20点に設定される。
【0056】
選択した候補座標列に含まれる候補座標の数が所定のしきい値以上である場合(S107においてYes)、サーバ制御部21は、当該候補座標列について候補座標列ファイルを生成する(S108)。一方、選択した候補座標列に含まれる候補座標の数が所定のしきい値より小さい場合(107においてNo)、サーバ制御部21は、当該候補座標列について候補座標列ファイルを生成しない。
【0057】
次に、候補座標列と並列する別の候補座標列がある場合(S109においてYes)、サーバ制御部21は、別の候補座標列を選択して(S106)、以降の処理を行う。サーバ制御部21は、サーバ記憶部22の保持領域から、選択した候補座標列を削除し、保持領域に残る情報に基づき、ステップS106の判断を行う。
【0058】
一方、選択した候補座標列と並列する別の候補座標列がない場合(S109においてNo)、走行履歴情報100の末尾まで到達していなければ(S110においてNo)、サーバ制御部21は、次のチェック区間を選択して(S102)以降の処理を行う。サーバ制御部21は、走行履歴情報100の末尾まで到達していれば(S110においてYes)、図3のステップS1の処理を終了し、ステップS2に進む。
【0059】
以上の処理によると、処理対象の走行履歴情報100について、複数の候補座標列ファイルが生成される。候補座標列ファイルの一例を図8に示す。
【0060】
図8は、マップマッチングにより生成される候補座標列ファイルのデータ構造を説明するための図である。候補座標列ファイルには、左の欄から順に、GPS情報のインデックス番号、移動情報のインデックス番号、及び算出された候補座標が入力されている。候補座標列ファイルは、チェック区間毎に、少なくとも1つ生成される(S108)。例えば、図4(B)の場合、チェック区間200-1において、3つの候補座標列ファイルとして候補座標列500-1,500-2,500-3のファイルが生成される。また、チェック区間200-2において、2つの候補座標列ファイルとして候補座標列500-4,500-5のファイルが生成される。
【0061】
以上のように生成される候補座標列から、チェック区間毎に、1つの座標列を決定する、後処理マップマッチング(図3のS2)を以下に説明する。
【0062】
(後処理マップマッチング(S2))
本実施形態における後処理マップマッチング(図3のS2)では、GPS情報を基準として座標列が決定される。図9は、後処理マップマッチングを説明するためのフローチャートである。図10は、後処理マップマッチングを説明するための図である。以下、図9のフローチャートに即して、後処理マップマッチングを説明する。
【0063】
まず、サーバ制御部21は、例えば図3のステップS1で得られたインデックスファイルを参照して、走行履歴情報100における1つのチェック区間を選択する(S201)。サーバ制御部21は、例えば、先頭の区間から末尾の区間まで順次に1つのチェック区間を選択する。
【0064】
次に、サーバ制御部21は、マップマッチングの候補算出(図3のS1)によって生成された候補座標列ファイルの中から、チェック区間の全ての候補座標列ファイルを収集する(S202)。以下、チェック区間の候補座標列ファイルの個数を「N」とする。個数Nの値は、チェック区間毎に変化し得る。
【0065】
次に、サーバ制御部21は、インデックスファイルから、選択したチェック区間のGPS情報を取得する(S203)。取得したGPS情報は、当該区間分のGPS座標を含む。
【0066】
次に、サーバ制御部21は、取得したGPS情報に基づいて、各GPS座標の間を直線で結んで形成されるGPS基準線を算出する(S204)。GPS基準線は、本実施形態において候補座標列の中から座標列を決定するための基準となる線である。
【0067】
その後、サーバ制御部21は、収集した各候補座標列と、GPS基準線との間の偏差に基づいて、選択中のチェック区間における座標列を決定する(S205~S207)。例えば、サーバ制御部21は、N個のうちのn番目の候補座標列ファイルについて、GPS基準線に対する候補座標列の候補座標毎の偏差を算出する(S205)。ステップS204,S205の具体例を、図10を用いて説明する。
【0068】
図10の例では、サーバ制御部21は、1つの区間に含まれる20点のGPS座標の間を線形補間してGPS基準線800を算出する(S204)。図10の例では、候補座標列500-6を構成する20点の候補座標のそれぞれからGPS基準線800まで垂線が定義できる。サーバ制御部21は、垂線の長さX~X20をそれぞれ算出し、各垂線の長さX~X20を合計する。当該合計値を候補座標数20で除算することによって、平均値が得られる。サーバ制御部21は、当該平均値を、GPS基準線800に対する候補座標列500-6の偏差として算出する。
【0069】
図9に戻り、サーバ制御部21は、例えば1番目からN番目まで昇順で候補座標列ファイルについて偏差を算出する(S205、S206においてNo)。N個の候補座標列ファイルに対して偏差を算出すると(S206においてYes)、サーバ制御部21は、算出した偏差に基づいて、選択中のチェック区間における座標列を決定する(S207)。具体的には、サーバ制御部21は、選択中のチェック区間において偏差が最も小さい候補座標列を、当該区間における座標列として決定する。
【0070】
サーバ制御部21は、チェック区間の選択が処理対象の走行履歴情報100の末尾に到達するまで(S208においてNo)、ステップS201~S208の処理を繰り返す。
【0071】
サーバ制御部21は、チェック区間が走行履歴情報100の末尾まで到達すると(S208においてYes)、図3のステップS2の処理を終了し、ステップS3に進む。
【0072】
以上の処理によると、チェック区間毎に偏差が最も小さい候補座標列が座標列として決定され、より高い信頼性を有する位置データ223をステップS3において作成することができる。
【0073】
以上のように、本実施形態に係るサーバ装置20は、移動体1の位置座標に関する情報処理を行う。サーバ装置20は、サーバ記憶部22と、サーバ制御部21とを備える。サーバ記憶部22は、移動体1の走行履歴を示す一連の位置座標を含む走行履歴情報100を記憶する。サーバ制御部21は、地図情報222の道路ネットワーク上に位置座標を補正するマップマッチングを行う。サーバ制御部21は、サーバ記憶部22に記憶された走行履歴情報100に基づいて、マップマッチング結果の位置座標が並んだ複数の候補座標列を算出する。次に、サーバ制御部21は、算出された複数の候補座標列に基づいて、走行履歴情報100の補正結果として、移動体1の走行位置を示す位置データ223を生成する。
【0074】
これにより、サーバ装置20は、対象とする走行履歴情報100に対して複数の候補座標列を生成して、生成した複数の候補座標列から座標列を選出することによって、より高い信頼性を有する位置データ223を得ることができる。
【0075】
本実施形態において、サーバ制御部21は、走行履歴情報100における、チェック区間のような所定の区間毎にマップマッチングを行い、複数の候補座標列から所定の区間毎に座標列を決定して、走行履歴情報100の補正結果の位置データ223を生成してもよい。これにより、サーバ制御部21は、個々の区間中で複数の候補座標が並んだ候補座標列を生成するので、個々の候補座標同士を比較するよりも位置精度が高い候補座標列から座標列を選出することができる。
【0076】
本実施形態において、サーバ制御部21は、所定の区間毎の走行履歴情報100における位置座標の列と各候補座標列との間の偏差に基づいて、座標列を決定してもよい。
【0077】
本実施形態において、サーバ制御部21は、移動体1に搭載される情報端末10と通信を行って、走行履歴情報100を取得するサーバ通信部23をさらに備えてもよい。これにより、サーバ制御部21は、移動体1から、走行履歴情報100を取得することができる。
【0078】
本実施形態において、情報処理システムは、情報端末10と、サーバ装置20とを備える。サーバ装置20は、移動体1の位置座標に関する情報処理を行う。情報端末10は、移動体に搭載され、走行履歴情報を情報処理装置に送信してもよい。これにより、情報処理システムは、移動体1からの走行履歴情報100を、サーバ装置20に記憶し、記憶した走行履歴情報100に基づいて、位置データ223を生成することができる。
【0079】
<実施形態2>
実施形態2では、図11から図18を参照して、候補座標列同士の繋がりを考慮した処理により、さらに高い信頼性のデータ生成を行う情報処理システムについて説明する。
【0080】
実施形態1のサーバ装置20は、後処理マップマッチング(図3のS2)において、GPS基準線に対する各候補座標列の偏差に基づいて、候補座標列から座標列を決定した。これに対して、本実施の形態のサーバ装置20は、互いに隣接するチェック区間に含まれる候補座標列の間の位置関係に基づいて、候補座標列から座標列を決定する。
【0081】
図11は、実施形態2に係る、後処理マップマッチング(図3のS2)を説明するためのフローチャートである。
【0082】
本実施形態のサーバ制御部21は、チェック区間を順次に選択して、選択したチェック区間に含まれる候補座標列を、直前区間に含まれる候補座標列との間の距離に基づいて削除する(S301)。ここで、直前区間は、チェック区間と隣接し、かつ、チェック区間の1つ前に位置する区間である。
【0083】
次に、サーバ制御部21は、チェック区間を逆方向に選択して、選択したチェック区間に含まれる候補座標列を、1つ後のチェック区間に含まれる候補座標列との間の距離に基づいて削除する(S302)。ステップS301,S302の処理によると、隣接するチェック区間の間で繋がる可能性が低いほど離れた距離にある候補座標列が、座標列の候補から除外される。
【0084】
次に、サーバ制御部21は、1つのチェック区間を選択して(S303)、選択したチェック区間の候補座標列を、後述する2点間方位を用いて削除する(S304)。ステップ304の処理によると、隣接するチェック区間の間で繋がる可能性が低いほど外れた方位差を有する候補座標列が、座標列の候補から除外される。
【0085】
次に、サーバ制御部21は、選択したチェック区間に含まれる候補座標列が1つでなければ(S305においてNo)、選択したチェック区間の候補座標列から、後述するDR方位を用いて座標列を決定する(S306)。一方、サーバ制御部21は、選択したチェック区間に含まれる候補座標列が1つである場合は(S305においてYes)、選択したチェック区間の候補座標列を特に削除せず、座標列として決定する。
【0086】
サーバ制御部21は、チェック区間の選択が走行履歴情報100の末尾に到達するまで(S307においてNo)、ステップS303~S306の処理を繰り返す。
【0087】
サーバ制御部21は、チェック区間が走行履歴情報100の末尾まで到達すると(S307)、図3のステップS2の処理を終了し、ステップS3に進む。
【0088】
以上の処理によると、位置が近い候補座標列同士を連結させて、より長く続く候補座標列の繋がりを導き出すことができる。例えば一時的なGPS精度の低下があったとしても、最終的な位置データ223においてはGPS精度の影響を抑制し易い。また、地図データのリンクの繋がりのような情報を用いずとも、候補座標列同士の繋がりを反映でき、例えば高速道路から突如、並行する一般道路に移動するような候補座標列を選出しないようにし易い。以上の後処理マップマッチングの詳細を、以下に説明する。
【0089】
(距離に基づいて候補座標列を順次に削除(S301))
図12は、距離に基づいて候補座標列を順次に削除する処理(図11のS301)を説明するためのフローチャートである。図13は、当該処理を説明するための図である。以下、図12のフローチャートに即して、サーバ装置20による当該処理を説明する。
【0090】
まず、サーバ制御部21は、例えば図3のステップS1で得られたインデックスファイルを参照して、走行履歴情報100における1つのチェック区間を選択する(S401)。サーバ制御部21は、例えば、先頭の次の区間から末尾の区間まで順次に1つのチェック区間を選択する。
【0091】
次に、サーバ制御部21は、選択したチェック区間の各候補座標列の始点座標と、当該チェック区間の直前区間の各候補座標列の終点座標との間の距離を算出する(S402)。
【0092】
次に、サーバ制御部21は、選択したチェック区間において、ステップS402において算出した距離のうち、少なくとも1つの距離がしきい値未満であるか否かを判断する(S403)。サーバ制御部21は、全ての距離がしきい値以上である場合(S403においてNo)、候補座標列を削除対象リストに入力する(S404)。一方、サーバ制御部21は、少なくとも1つの距離がしきい値未満である場合(S403においてYes)、候補座標列を削除対象リストに入力しない。図13(A)は、ステップ402~S405の処理を例示する。
【0093】
サーバ制御部21は、選択したチェック区間200A-2において、候補座標列500-10の始点座標と、1つ前のチェック区間200A-1の各候補座標列500-7,500-8,500-9の終点座標との間の距離を算出する(S402)。サーバ制御部21は、全ての距離が所定のしきい値以上であることを判断して(S403においてNo)、候補座標列500-10を削除対象リストに入力する(S404)。ここで、図13において、算出した距離がしきい値以上である箇所を「×」で、算出した距離がしきい値以下である箇所を「○」で示している。
【0094】
サーバ制御部21は、選択したチェック区間において、全ての候補座標列を選択するまで(S405においてNo)、ステップS402~S405の処理を繰り返す。図13(B),(C)はそれぞれ、選択したチェック区間において、候補座標列500-10とは別の候補座標列500-11,500-12についての、ステップS402~S405の処理を例示する。
【0095】
図13(B)に示すように、サーバ制御部21は、候補座標列500-11の始点座標と、候補座標列500-8との間の距離が所定のしきい値より小さいことを判断して(S403においてYes)、候補座標列500-11を削除対象リストに入力しない。
【0096】
図13(C)に示すように、サーバ制御部21は、候補座標列500-12の始点座標と、候補座標列500-9との間の距離が所定のしきい値より小さいことを判断して(S403においてYes)、候補座標列500-12を削除対象リストに入力しない。
【0097】
サーバ制御部21は、選択したチェック区間において、全ての候補座標列を選択すると(S405においてYes)、削除対象リストの候補座標列を削除する(S406)。図13(D)は、選択したチェック区間200A-2において、全ての候補座標列が選択された後の処理を例示する。図13(D)に示すように、選択したチェック区間200A-2において、削除対象リストに入力された、候補座標列500-10のみが削除される。
【0098】
サーバ制御部21は、チェック区間の選択が処理対象の走行履歴情報100の末尾に到達するまで(S407においてNo)、ステップS401~S408の処理を繰り返す。
【0099】
図13(D)において、サーバ制御部21は、次のチェック区間200A-3を選択して(S401)、「チェック区間200A-3のn番目の候補座標列始点」と、「直前区間200A-2の各候補座標列の終点」との間の距離を算出して(S402)、以降の処理を行う。
【0100】
サーバ制御部21は、チェック区間の選択が走行履歴情報100の末尾に到達すると(S407においてYes)、図11のステップS301の処理を終了し、ステップS302に進む。
【0101】
(距離に基づいて候補座標列を逆方向に削除(S302))
ステップS301において、サーバ制御部21は、選択したチェック区間において、n番目の候補座標列の始点座標が、直前区間の全て候補座標列の終点座標から所定の距離以上離れている場合に、当該候補座標列を削除した。一方、ステップS302において、サーバ制御部21は、選択したチェック区間において、n番目の候補座標列の終点座標が、直後区間の全ての候補座標列の始点座標から所定の距離以上離れている場合に、当該候補座標列を削除する。ここで、直後区間は、チェック区間と隣接し、かつ、チェック区間の1つ後に位置する区間である。サーバ制御部21は、例えば、走行履歴情報100の末尾の1つ前の区間から先頭の区間まで逆方向に1つのチェック区間を選択する。サーバ制御部21は、チェック区間が先頭まで到達すると、図11のステップS302の処理を終了し、ステップS303に進む。
【0102】
(2点間方位を用いて候補座標列を削除(S304))
図14は、2点間方位を用いて候補座標列を削除する処理(図11のS304)を説明するためのフローチャートである。図15は、当該処理を説明するための図である。以下、図14のフローチャートに即して、当該処理を説明する。なお、図14においては、上述した直後区間の候補座標列の個数が1つである場合の処理を説明する。本処理の前に、1つのチェック区間が、サーバ制御部21により選択されている(図11のS303)。
【0103】
まず、サーバ制御部21は、チェック区間のn番目の候補座標列について、n番目の候補座標列の終点座標から、直後区間の候補座標列の始点座標への方位を算出する(S501)。以下、ステップS501において算出される方位を「方位1」という。方位は、北を「0°」として時計回りに増加する角度である。この場合、方位「90°」は東を示し、「180°」は南を示し、「270°」は西を示す。
【0104】
図15(A)は、チェック区間200B-1の候補座標列500-16,500-17についての、ステップS501及び後述するステップS502の処理を例示する。
【0105】
サーバ制御部21は、候補座標列500-16の終点座標50-2から、直後区間200B-2の候補座標列500-18の始点座標50-5への方位1として「80°」を算出する。
【0106】
次に、サーバ制御部21は、チェック区間において、終点座標の前の座標から、n番目の候補座標列の終点座標への方位を算出する(S502)。以下、ステップS502において算出される方位を「方位2」という。
【0107】
図15(A)の例では、サーバ制御部21は、終点座標の前の座標50-1から、終点座標50-2への方位2として「105°」を算出する。
【0108】
次に、サーバ制御部21は、方位1から方位2を減算した方位差の絶対値を算出する(S503)。図15(A)の例では、サーバ制御部21は、方位1の「80°」から方位2の「105°」を減算した方位差の絶対値「25°」を算出する。
【0109】
サーバ制御部21は、チェック区間のN個全ての候補座標列について方位差を算出するまで(S504においてNo)、ステップS501~S503の処理を繰り返す。図15(A)において、サーバ制御部21は、候補座標列500-16とは別の候補座標列500-17について、候補座標列500-17の終点座標50-4から、始点座標50-5への方位1として「120°」を算出する(S501)。次に、サーバ制御部21は、終点座標50-4の前の座標50-3から、終点座標50-4への方位2として「105°」を算出する(S502)。次に、サーバ制御部21は、方位1の「120°」から方位2の「105°」を減算した方位差の絶対値「15°」を算出する。
【0110】
サーバ制御部21は、チェック区間のN個全ての候補座標列について方位差を算出すると(S504においてYes)、チェック区間における、全ての方位差の絶対値の平均値を算出する(S505)。図15(A)において、サーバ制御部21は、候補座標列500-16についての方位差の絶対値「25°」と、候補座標列500-17についての方位差の絶対値「15°」を合計して、候補座標列数2で除算することによって、平均値「20°」を算出する。
【0111】
次に、サーバ制御部21は、チェック区間の候補座標列の数が1つであるか否かを判断する(S506)。チェック区間の候補座標列の数が1つでない場合(S506においてNo)、サーバ制御部21は、n番目の候補座標列の方位差が平均値以上であるときは(S507においてYes)、n番目の候補座標列を削除する(S508)。サーバ制御部21は、n番目の候補座標列の方位差が平均値未満であるときは(S507においてNo)、n番目の候補座標列を削除しない。サーバ制御部21は、例えば1番目からN番目まで昇順で、ステップS507,S508の処理を繰り返す(S509においてNo)。
【0112】
一方、選択したチェック区間の候補座標列の数が1つである場合(S506においてYes)、サーバ制御部21は、ステップS507~S509の処理を実行しない。
【0113】
図15(B)は、図15(A)のチェック区間200B-1における、ステップS507~S509の処理を例示する。選択したチェック区間200B-1には2つの候補座標列があるので(S506においてNo)、サーバ制御部21は、方位差が平均値以上である候補座標列を削除する(S507)。具体的には、候補座標列500-16の方位差の絶対値は「25°」であり、候補座標列500-17の方位差の絶対値は「15°」である。一方、平均値は「20°」であるので、サーバ制御部21は、方位差の絶対値が平均値よりも大きい候補座標列500-16を削除する。
【0114】
その後、サーバ制御部21は、図11のステップS304の処理を終了し、ステップS305に進む。
【0115】
以上のステップS301~S304によると、チェック区間を含んだ隣接する2区間における候補座標列同士の距離および方位差といった位置関係に応じて、座標列の候補となる候補座標列を、互いに繋がる可能性が高くなるように制限することができる。
【0116】
(DR方位を用いて候補座標列を決定(S306))
図16は、DR方位に基づいて候補座標列を決定する処理(図11のS306)を説明するためのフローチャートである。図17は、当該処理を説明するための図である。以下、図16のフローチャートに即して、当該処理を説明する。本処理は、選択したチェック区間において、2点間方位を用いて候補座標列を削除(図11のS304)してもなお、複数の候補座標列が存在する場合に(図11のS305においてNo)実行される。なお、図16においては、直後区間の候補座標列の個数が1つである場合の処理を説明する。
【0117】
まず、サーバ制御部21は、チェック区間のn番目の候補座標列について、当該n番目の候補座標列の終点座標から、直後区間の候補座標列の始点座標への2点間方位を算出する(S601)。以下、ステップS601において算出される方位を「方位3」という。図17(A)は、チェック区間200C-1の候補座標列500-19,500-20についての、ステップS601~S608の処理を例示する。
【0118】
サーバ制御部21は、候補座標列500-19の終点座標50-8から、直後区間200C-2の候補座標列500-21の始点座標50-12への方位3として「80°」を算出する。
【0119】
次に、サーバ制御部21は、直後区間の候補座標列の始点座標のDR方位を、インデックスファイルから取得する(S602)。以下、ステップS602において取得されるDR方位を「方位4」という。図17(A)において、サーバ制御部21は、始点座標50-12のDR方位「95°」をインデックスファイルから取得する。
【0120】
次に、サーバ制御部21は、n番目の候補座標列において、方位3と方位4との差分値を算出して、その絶対値を保持する(S603)。図17(A)において、サーバ制御部21は、n番目の候補座標列500-19において、方位3の「80°」から方位4の「95°」を減算した値の絶対値「15°」を差分値として保持する。
【0121】
次に、サーバ制御部21は、n番目の候補座標列において、1点の候補座標を選択し(S604)、選択した候補座標の直前の候補座標から、選択した候補座標への2点間方位を算出する(S605)。以下、ステップS605で算出される方位を「方位5」という。
【0122】
図17(A)において、サーバ制御部21は、候補座標列500-19において、終点座標50-8の直前の候補座標50-7から、終点座標50-8への方位5として「105°」を算出する。
【0123】
次に、サーバ制御部21は、n番目の候補座標列において、選択した候補座標のDR方位を、インデックスファイルから取得する(S606)。以下、ステップS606で算出される方位を「方位6」という。図17(A)の例では、サーバ制御部21は、候補座標列500-19において、候補座標50-8の方位6として「100°」をインデックスファイルから取得する。
【0124】
次に、サーバ制御部21は、方位5と方位6との差分値を算出して、その絶対値を、n番目の候補座標列の差分値に合算する(S607)。図17(A)において、サーバ制御部21は、方位5の「105°」から方位6の「100°」を減算した値の絶対値「5°」を、差分値「15°」に加算して、「20°」を得る。
【0125】
サーバ制御部21は、n番目の候補座標列の始点の次の座標まで到達するまで(S608においてNo)、ステップS604~S607の処理を繰り返す。図17(A)において、サーバ制御部21は、候補座標50-7の前の候補座標50-6から候補座標50-7への方位5として「80°」を算出して(S605)、候補座標50-7の方位6として「100°」をインデックスファイルから取得する(S606)。サーバ制御部21は、方位5の「80°」から方位6の「100°」を減算した値の絶対値「20°」を、差分値「20°」に合算して、終点の候補座標50-9までの差分値「40°」を得る(S607)。
【0126】
次に、サーバ制御部21は、nが1であるか否かを判断する(S609)。nが1である場合、すなわち、直前の処理(ステップS601~S608)で差分値を算出した候補座標列が、選択したチェック区間の1番目の候補座標列である場合(S609においてYes)、サーバ制御部21は、1番目の候補座標列を、暫定の座標列として保持する。
【0127】
図17(A)において、候補座標列500-19が1番目の候補座標列であるとすると、1番目の候補座標列を暫定の座標列として保持する。
【0128】
一方、nが1でない場合(S609においてNo)、サーバ制御部21は、これまで算出した候補座標列の差分値のうち、n番目の候補座標列の差分値が最小か否かを判断する(S611)。サーバ制御部21は、n番目の候補座標列の差分値が最小である場合(S611においてYes)、n番目の候補座標列を、暫定の座標列として保持する(S612)。サーバ制御部21は、n番目の候補座標列の差分値が最小でない場合(S611においてNo)、n番目の候補座標列を、暫定の座標列として保持しない。
【0129】
その後、サーバ制御部21は、チェック区間において座標列が決定するまで(S615においてNo)、ステップS601~S612の処理を繰り返す。
【0130】
図17(A)において、サーバ制御部21は、候補座標列500-19とは別の候補座標列500-20について、同様に、差分値「35°」を算出する(S601~608)。候補座標列500-20が2番目の候補座標列とすると、nが1でないので(S609においてNo)、サーバ制御部21は、候補座標列500-19の差分値「40°」と、候補座標列500-20の差分値「35°」とを比較して(S611)、差分値が最小である候補座標列500-20を暫定の座標列として保持する(S612)。その後、チェック区間200C-1において、座標列が決定しているので(S613においてYes)、サーバ制御部21は、図11のS306の処理を終了して、ステップS307に進む。
【0131】
以上の処理によると、誤差を含み得るGPS座標を基準とすることなく候補座標列から座標列を決定され、実施形態1よりもさらに高い信頼性を有する位置データ223をステップS3において作成することができる。
【0132】
以上のように、本実施形態において、サーバ制御部21は、互いに隣接する2区間のうちの一方に含まれる候補座標列と、他方に含まれる候補座標列との位置関係に基づいて、座標列を決定する。これにより、サーバ制御部21は、誤差を含み得るGPS座標を基準とすることなく候補座標列から座標列を決定し、実施形態1よりもさらに高い信頼性を有する位置データ223をステップS3において作成することができる。
【0133】
本実施形態において、互いに隣接する2区間のうちの一方に含まれる候補座標列と、他方に含まれる候補座標列との位置関係は、当該2区間のうちの一方に含まれる候補座標列と、他方に含まれる候補座標列とにおいて互いに隣接する位置座標の間の距離を含んでもよい。これにより、サーバ制御部21は、チェック区間を含んだ隣接する2区間における候補座標列同士の距離に応じて、座標列の候補となる候補座標列を、互いに繋がる可能性が高くなるように制限することができる。
【0134】
本実施形態において、互いに隣接する2区間のうちの一方に含まれる候補座標列と、他方に含まれる候補座標列との位置関係は、当該2区間のうちの一方に含まれる候補座標列と、他方に含まれる候補座標列とにおいて互いに隣接する位置座標の間の方位差を含んでもよい。これにより、サーバ制御部21は、チェック区間を含んだ隣接する2区間における候補座標列同士の方位差に応じて、座標列の候補となる候補座標列を、互いに繋がる可能性が高くなるように制限することができる。
【0135】
本実施形態において、サーバ制御部21は、位置関係に応じて、複数の候補座標列において座標列の候補となる候補座標列を制限し、移動体1の自律航法測位による方位を示す情報に基づいて、制限された候補座標列の中から座標列を決定してもよい。これにより、サーバ制御部21は、候補座標列の方位と、移動体1の自律航法測位による方位との差分に応じて、座標列を決定することにより、信頼性が高い位置データを生成することができる。
【0136】
2点間方位を用いて候補座標列を削除する処理(図11のステップS304)について、図14では、直前区間の候補座標列の個数が1つである場合を説明したが、直前区間の候補座標列数が複数であってもよい。この場合、例えば、サーバ制御部21は、n番目の候補座標列について、直前区間の各候補座標列の終点座標から、チェック区間のn番目の候補座標列の始点座標への方位を、差分値に合算してもよい。
【0137】
2点間方位を用いて候補座標列を削除する処理(図11のステップS304)について、図14では、直後区間の始点座標と、チェック区間の終点座標と、当該終点座標の前の座標を用いて方位差を算出している。直後区間の始点座標と、チェック区間の終点座標と、当該終点座標の前の座標を用いて方位差を算出する逆方向チェックを行うことで、明らかに不要な分岐する候補座標列の削除を比較的簡単に行うことができる。なお、2点間方位を用いて候補座標列を削除する処理は、直後区間の始点座標と、チェック区間の終点座標と、当該終点座標の前の座標を用いて方位差を算出する場合だけに限られない。2点間方位を用いて候補座標列を削除する処理は、例えば、直後区間の全ての座標と、チェック区間の終点座標と、当該終点座標の前の座標を用いて方位差を算出してもよい。直後区間の全ての座標と、チェック区間の終点座標と、当該終点座標の前の座標を用いて方位差を算出する順方向チェックを行うことで、合流する候補座標列が多く残っている場合、合流する候補座標列の削除を比較的簡単に行うことができる。2点間方位を用いて候補座標列を削除する処理は、逆方向チェックと順方向チェックとをそれぞれ行うことで、より正確に候補の絞り込みを行うことができる。
【0138】
DR方位を用いて座標列を決定する処理(図11のステップS306)について、図16では、直前区間の候補座標列の個数が1つである場合を説明したが、直前区間の候補座標列数が複数であってもよい。この場合、例えば、サーバ制御部21は、n番目の候補座標列について、直前区間の各候補座標列の終点座標から、チェック区間のn番目の候補座標列の始点への方位と、当該終点座標のDR方位との差分を、差分値に合算してもよい。
【0139】
2点間方位を用いて候補座標列を削除して、DR方位を用いて座標列を決定する処理(図11のステップS303からS307まで)は、逆方向に実行されるが、順次に実行してもよい。
【0140】
以上の各実施形態では、位置データ処理を実行する情報処理装置の一例として、サーバ装置20を説明した。情報処理装置は、サーバ装置20に限らず、例えば、情報端末10のような、移動体1に搭載されるナビゲーション装置であってもよい。すなわち、本願の発明は、実施形態1と実施形態2との構成の一部を適宜に適用して構成されてもよい。また、本願の発明は、ネットワークを介して、各実施形態の構成の一部を適宜に処理可能な構成としてもよい。言い換えれば、本願の発明において、各処理又は各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよいし、或いは複数の装置又は複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0141】
1 移動体
10 情報端末
11 端末制御部
20 サーバ装置
21 サーバ制御部
22 サーバ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17