(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/08 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
D06F39/08 311A
D06F39/08 321
(21)【出願番号】P 2018213952
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲島 崇博
(72)【発明者】
【氏名】森 一志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕一
(72)【発明者】
【氏名】西岡 由行
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0276657(US,A1)
【文献】特開2000-018197(JP,A)
【文献】特開2001-321596(JP,A)
【文献】特開2011-217966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0104158(US,A1)
【文献】中国実用新案第203729116(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00~51/02
D06F 58/02~58/08
D06F 58/20~58/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯槽に貯まる水を吸引して吐出する送水装置を備えた洗濯機であって、
前記送水装置は、
前記洗濯槽の下方に配置されていて、
フィルタを収容するフィルタケースと、
前記洗濯槽から前記フィルタケースに水を導入する水導入路と、
インペラを収容し、前記フィルタケースから水を吸引するポンプケースと、
回転方向が不定の状態で前記インペラを回転させるモータと、
前記フィルタケースの内部と前記ポンプケースの内部とを連通させる吸入口と、
前記ポンプケースの内部を送水路に連通させる吐出口と、
を備え、
前記吸入口
は、前記インペラの中心部と対向した状態で前記ポンプケースの側部に開口し、
前記吐出口
が前記ポンプケースの最下部に開口し
て前記送水路が前記ポンプケースの真下から横方向に延びており、前記フィルタケースの中心線が前記ポンプケースの中心線と前記送水路の中心線との間の高さに位置するように構成されている、洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記吸入口が、前記フィルタケースの側部の上方に開口している、洗濯機。
【請求項3】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記吸入口の下側に、前記フィルタケースの内部と前記ポンプケースの内部とを連通させるスリットが形成されている、洗濯機。
【請求項4】
請求項3に記載の洗濯機において、
前記吸入口、前記吐出口、および前記スリットが、前記インペラの中心を通る鉛直線に対して対称状に形成されている、洗濯機。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の洗濯機において、
前記水導入路が前記フィルタケースから横方向に延びている、洗濯機。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の洗濯機において、
前記フィルタケースの上部に、前記洗濯槽に連通する開口が設けられ
ている、洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、洗濯機に関し、その中でも特に、洗濯機に付設されているフィルタ付き送水装置の騒音抑制技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、フィルタ付き排水装置(ケース部材60)が開示されている。そのケース部材60は、水槽から洗濯水を吸い込むケース流入路61、ケース部材60から洗濯機の外に洗濯水を排出するケース排出路62、排水ポンプ67が取り付けられる排水ポンプ接続部64、フィルタ部材を収容するフィルタ部収容空間66を有している。
【0003】
ケース流入路61は、フィルタ部収容空間66の側部に接続されている。ケース排出路62は、排水ポンプ接続部64の上部に接続されている。
【0004】
水槽に水が流入すると、ケース流入路61を通じてケース部材60の内部に水が充満する。排水ポンプの作動により、洗濯水は、ケース排出路62を通じて外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の排水装置では、ケース部材60の内部に充満した洗濯水を、排水ポンプ接続部64の上部に接続されているケース排出路62を通じて外部に排出する。
【0007】
ケース部材60の内部に洗濯水が充満している状態では、それほど騒音は発生しない。ところが、洗濯水が減少して空気が混入するようになると、エア噛みが発生して大きな騒音が発生する。この騒音は、ユーザに不快な印象を与え得る。
【0008】
騒音を低減するために、吸音材や防音材などを増設したり、高性能なポンプに変更したりすることも考えられるが、コストが増加する。一般家電である洗濯機は、価格競争が激しいため、コストは重要な問題であり、このような対応は、現実的には難しい。
【0009】
排水装置は、通常、洗濯機の底方の狭く限られたスペースに配置される。そのため、高さの制約も受ける。
【0010】
そこで開示する技術の主な目的は、極めて安価でありながら、送水時の騒音が効果的に低減できる洗濯機を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示する技術は、洗濯槽に貯まる水を吸引して吐出する送水装置を備えた洗濯機に関する。
【0012】
前記送水装置は、前記洗濯槽の下方に配置されていて、フィルタを収容するフィルタケースと、前記洗濯槽から前記フィルタケースに水を導入する水導入路と、インペラを収容し、前記フィルタケースから水を吸引するポンプケースと、回転方向が不定の状態で前記インペラを回転させるモータと、前記フィルタケースの内部と前記ポンプケースの内部とを連通させる吸入口と、前記ポンプケースの内部を送水路に連通させる吐出口と、
を備える。前記吸入口が、前記インペラの中心部と対向した状態で前記ポンプケースの側部に開口し、前記吐出口が、前記ポンプケースの最下部に開口している。
【0013】
すなわち、この洗濯機によれば、まず、モータは、インペラを回転方向が不定の状態で回転させる。回転方向を制御する必要がないので、極めて安価なモータを用いることができる。
【0014】
そして、インペラを収容するポンプケースを備えていて、そのポンプケースの内部とフィルタケースの内部とを連通させる吸入口が、インペラの中心部と対向した状態でポンプケースの側部に開口している。従って、ポンプケースの内部に、インペラが回転する軸方向の中心部から水を吸入するので、水を効率よく吸入できる。
【0015】
そして、ポンプケースから水を吐出する吐出口が、インペラの回転に対する遠心方向であるポンプケースの最下部に開口しているので、強い吐出力が得られ、かつ、インペラがいずれの方向に回転しても、同じ吐出力が得られる。
【0016】
更に、ポンプケースの内部に空気が入ってきても、空気抜けおよび水抜けが良くなって吐出口に空気が入り込み難くなり、エア噛みの発生を効果的に抑制できる。従って、不快な騒音を低減できる。
【0017】
前記送水路は、前記ポンプケースの下側から横方向に延びている、としてもよい。
【0018】
そうすれば、送水装置の全高が低くなるので、高さが狭く限られた場所でも設置できる。
【0019】
前記吸入口は、前記フィルタケースの側部の上方に開口している、としてもよい。
【0020】
そうすれば、よりいっそう送水装置の全高を低くできる。
【0021】
その場合、前記吸入口の下側に、前記フィルタケースの内部と前記ポンプケースの内部とを連通させるスリットを形成するのが好ましい。
【0022】
そうすれば、詳細は後述するが、吸入口をフィルタケースの側部の上方に配置しても、ポンプの吐出力の低下を抑制しながら、フィルタケースの内部に残水を発生させることなく、ほとんど送水することができる。送水性も向上するので、騒音の低減も促進できる。
【0023】
特に、前記吸入口、前記吐出口、および前記スリットは、前記インペラの中心を通る鉛直線に対して対称状に形成するのが好ましい。
【0024】
そうすれば、インペラがいずれの方向に回転しても、吐出力に差を生じることが無くなるので、常に安定した送水が行える。
【0025】
前記水導入路は、前記フィルタケースから横方向に延びているようにするとよい。
【0026】
そうすれば、よりいっそう送水装置の全高を低くできる。
【0027】
前記洗濯機はまた、前記送水装置は、前記洗濯槽の下方に配置されていて、フィルタを収容するフィルタケースと、インペラを収容し、前記フィルタケースから水を吸引するポンプケースと、回転方向が不定の状態で前記インペラを回転させるモータと、を備え、前記フィルタケースの上部に、前記洗濯槽に連通する開口が設けられ、前記ポンプケースに、インペラと、送水路とが設けられている、としてもよい。
【0028】
フィルタケースの上部に洗濯槽に連通する開口が設けられていると、フィルタケースの内部に貯まる空気を洗濯槽に排出できる。その一方で、洗濯槽からその開口を通じて水がフィルタケースに流入する。インペラが、そのような開口と同じ空間にあると、インペラで巻き上げられる水と流入する水とが干渉して、水の流れが阻害されたり騒音が生じたりする。
【0029】
それに対し、上述した構成であれば、開口とインペラとが別空間に位置するので、そのような水流の阻害や騒音を抑制できる。
【発明の効果】
【0030】
開示する技術によれば、送水時の騒音が効果的に低減できる洗濯機を、安価で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】開示する技術を適用した洗濯機の一例を示す概略断面図である。
【
図4】
図3における矢印A1の方向から見た送水ユニットの概略図である。
【
図5】
図3における矢印線A2-A2での概略断面概略図である。
【
図6】
図3における矢印線A3-A3での概略断面概略図である。
【
図7】
図6における矢印線A4-A4での概略断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。各図において、説明で用いる上下、左右、および前後の方向を矢印で示す。
【0033】
<洗濯機の全体構成>
図1に、開示する技術を適用した洗濯機の一例を示す。この洗濯機1は、いわゆるドラム式の洗濯機である。また、この洗濯機1は、いわゆる全自動式洗濯機であり、洗い、すすぎ、脱水などの工程からなる一連の洗濯処理が、自動的に実行できるように構成されている。
【0034】
洗濯機1は、主に、筐体2、タブ3(洗濯槽)、ドラム4、駆動装置5、制御装置6、送水ユニット7(送水装置)などで構成されている。送水ユニット7は、排水装置としての機能と、循環装置としての機能とを有している。
【0035】
なお、送水ユニット7は、排水装置の機能のみであってもよく、循環装置としての機能のみであってもよい。以下の説明では、主に排水装置としての機能を例に説明する。
【0036】
筐体2は、パネルやフレームで構成された箱形の容器であり、洗濯機1の外郭を構成している。筐体2の前面には、洗濯物を出し入れするために、円形の投入口2aが形成されている。投入口2aには透明な窓を有するドア2bが取り付けられている。投入口2aは、ドア2bによって開閉される。筐体2における投入口2aの上側には、ユーザが操作するスイッチ等を有する操作部2cが設置されている。
【0037】
筐体2の内部には、投入口2aに連通するタブ3が収容されている。タブ3は、有底円筒状の貯水可能な容器からなり、その開口が投入口2aと接続されている。タブ3は、その中心軸Jを前方に向かって上向きに僅かに傾斜させた姿勢で安定するように、筐体2の内部に設けられたダンパ(図示せず)によって支持されている。
【0038】
タブ3の上部には、給水配管8a、給水弁8b、薬剤投入装置8cなどで構成された給水装置8が設けられている。給水配管8aの上流側の端部は、洗濯機1の外部に突出し、図外の給水源に接続されている。給水配管8aの下流側の端部はタブ3の上部に開口する給水口3aに接続されている。
【0039】
薬剤投入装置8cは、洗剤や柔軟剤等の薬剤を収容し、これら薬剤を、給水される水に混合することによってタブ3に投入する。タブ3の下部には、主排水口3bおよび副排水口3cが設けられている。主排水口3bおよび副排水口3cは、送水ユニット7に接続されている(送水ユニット7の詳細は後述)。
【0040】
ドラム4は、タブ3よりも僅かに小径の円筒状の容器からなり、タブ3と中心軸Jを一致させた状態で、タブ3の内部に収容されている。ドラム4の前部には、投入口2aに臨む円形開口4aが形成されている。洗濯物は、投入口2aおよび円形開口4aを通じて、ドラム4の内部に投入される。
【0041】
ドラム4の側部には、多数の脱水孔4bが全周にわたって形成されている(
図2では一部のみ表示)。また、その側部の内側の複数箇所には、撹拌用のリフター4cが取り付けられている。ドラム4の前部は、投入口2aに回転可能な状態で支持されている。
【0042】
駆動装置5は、タブ3の後部に設置されている。駆動装置5は、駆動モータ51、インバータ52などで構成されている。駆動モータ51のシャフト51aは、タブ3の後部を貫通し、タブ3の内部に突出している。シャフト51aの先端は、ドラム4の底部の中心に固定されている。すなわち、ドラム4の後部はシャフト51aで軸支されていて、駆動装置5は、ドラム4を直接的に駆動する(いわゆるダイレクトドライブ方式)。それにより、ドラム4は、駆動モータ51の駆動によって中心軸Jを中心に回転する。
【0043】
制御装置6は、筐体2の上部に設置されている。制御装置6は、洗濯機1の動作を総合的に制御する。制御装置6は、CPU、メモリなどのハードウエアと、制御プログラムや各種データなどのソフトウエアとで構成されている。制御装置6は、操作部2cで入力される指示に従って、駆動装置5、給水弁8b、送水ユニット7などを制御する。それにより、洗濯機1は、洗い工程、濯ぎ工程、および脱水工程を含む一連の洗濯処理を実行する。
【0044】
<送水ユニット7>
図1に示すように、送水ユニット7は、タブ3の下方に配置されている。すなわち、タブ3の底面と筐体2の底面との間の、限られた狭いスペースに送水ユニット7は配置されている。従って、送水ユニット7の高さには制約があり、できる限り低い構造であるのが好ましい。
【0045】
送水ユニット7は、タブ3の下部(最下部)に設けられた主排水口3bおよび副排水口3cに、上流側主排水管7aおよび上流側副排水管7bを介して接続されている。送水ユニット7はまた、筐体2の背面(送水ユニット7よりも上方の位置)から外部に引き出された下流側排水管7cに接続されている。送水ユニット7は、タブ3に貯まる不要になった水を、これら上流側主排水管7a、上流側副排水管7b、および下流側排水管7cを通じて排出する。なお、送水ユニット7はまた、後述するようにタブ3に水を循環供給する場合もある。
【0046】
図2~
図4に、送水ユニット7を具体的に示す。送水ユニット7は、フィルタケース71、水導入路72、排水ポンプ80、排水路74、循環ポンプ90、循環路92などで構成されている。送水ユニット7は、これらが一体化されており、1つの装置を構成している。
【0047】
送水ユニット7のうち、特に、フィルタケース71、水導入路72、排水路74、および後述するポンプケース81,91は、合成樹脂によって一体に成形されている(ユニットケース)。排水ポンプ80および循環ポンプ90は、ユニットケースに着脱可能な状態で一体に組み付けられている。
【0048】
フィルタケース71は、ユニットケースのうち、比較的大径な略円筒状の部分を構成している。フィルタケース71は、その中心線C2が略水平方向に延びるように、タブ3の下方に横置きされる。フィルタケース71の内部には、円筒状のフィルタ室71aが形成されている。
【0049】
図3に示すように、フィルタケース71に、円筒状のフィルタ75が着脱可能な状態で収容されている。フィルタ75は、蓋材75aと一体に構成されており、フィルタケース71の一方の端部に開口する装着口71bからフィルタ室71aに挿入される。フィルタケース71にフィルタ75を装着することにより、フィルタケース71の装着口71bは、蓋材75aによって密閉される。
【0050】
フィルタケース71に導入された水は、フィルタ75を通過する。排水がフィルタ75を通過することにより、排水に含まれるリント(糸屑)や異物(ボタンやクリップ等)が除去される。なお、フィルタ75の形状は、特許文献1等に開示されているものと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0051】
水導入路72は、ユニットケースのうち、比較的小径な円筒状の部分を構成している。水導入路72は、フィルタケース71の他方の端部からフィルタケース71と直列に延出するように設けられている。すなわち、水導入路72はフィルタケース71から横方向に延びている。水導入路72の内部は、フィルタ室71aに連通している。水導入路72は、上流側主排水管7aと接続されており、タブ3からフィルタケース71に排水を導入する。
【0052】
フィルタケース71の上部(最上部)には、タブ3に連通する開口を有するエア抜き配管76が設けられている。エア抜き配管76は、フィルタケース71の上部から上方に向かって小さく延びており、上流側副排水管7bに接続されている。エア抜き配管76も水導入路72と同様に、タブ3からフィルタケース71に排水を導入するが、水導入路72と異なり、フィルタケース71に貯まる空気を排出する機能を有している。
【0053】
排水ポンプ80は、フィルタケース71の側方に組み付けられており、制御装置の制御に従って、フィルタケース71から水を吸引する。排水ポンプ80は、ポンプケース81、ACモータ82、インペラ83などで構成されている。
【0054】
図3、
図4から明らかなように、ポンプケース81は、ユニットケースのうち、比較的大径な略円盤状の部分を構成している。ポンプケース81は、その中心線C1がフィルタケース71の中心線C2と垂直になるように、接続部84を介してフィルタケース71の側部に近接した状態で一体化されている。
【0055】
図5、
図7に示すように、ポンプケース81の内部には、円形断面の内周面を有するポンプ室81aが形成されている。ポンプ室81aには、インペラ83が収容されている。インペラ83は、円板状のベース部83a、ベース部83aの中央に設けられた円柱状のボス部83b、ボス部83bから放射状に延びるようにベース部83aに立設された複数(このインペラ83では4つ)の羽根部83c、などで構成されている。
【0056】
各羽根部83cは、半径方向に真っ直ぐ延びる矩形板状に形成されていて、周方向に等間隔で配置されている。すなわち、インペラ83は、その中心に対して点対称に形成されている。インペラ83は、ポンプケース81の中心線C1と一致する軸(横軸)を中心に回転可能となっている。
【0057】
ポンプケース81の側方に、インペラ83を回転させるACモータ82が組み付けられている。ACモータ82の出力軸82aの先端にボス部83bが固定されている。ACモータ82は、商用電源の電力をそのまま入力することにより、その周波数に応じた回転数で回転駆動できる交流モータである。ACモータ82の上部には、商用電源を所定電圧の交流に変換するコンバータ82bが設置されている。
【0058】
従って、ACモータ82は、制御装置6がオンオフ制御によって回転駆動するシンプルな構造となっており、極めて安価なタイプのモータが採用されている。そのため、出力軸82aがどちらの方向に回転するかは、駆動開始時の状態によって決定され、インペラ83の回転方向は不定となっている(一定の方向には回転しない)。
【0059】
排水路74は、ユニットケースのうち、比較的小径な円筒状の部分を構成している。排水路74の一端は、ポンプケース81の下部と一体化されており、排水路74は、ポンプケース81の真下から水導入路72と同じ方向に向かって横方向に延びている。
【0060】
排水路74が、水導入路72と同じ方向に向かって横方向に延びているので、送水ユニット7の全高を低くできる。配管の接続等の作業が容易になるので、作業性も向上する。
【0061】
排水路74の他端には、下流側排水管7cが接続されている。排水ポンプ80が吐出する排水は、排水路74および下流側排水管7cを通じて、洗濯機1の外に排出される。
【0062】
図5、
図7に示すように、ポンプケース81の最下部には、ポンプ室81aと排水路74の内部とを連通させる吐出口85が開口している。吐出口85は、ポンプ室81aの径方向外側を切り欠くように形成されている。それにより、吐出口85は、ポンプ室81aおよびインペラ83に対し、これらの中心を通る鉛直線Yに対して線対称状に配置されている。
【0063】
吐出口85がポンプケース81の最下部に開口しているので、ポンプ室81aに空気が入ってきても、水抜けが良くなって吐出口85に空気が入り込み難くなり、エア噛みの発生を効果的に抑制できる。従って、不快な騒音を低減できる。
【0064】
しかも、吐出口85はポンプ室81aの径方向外側に位置しているので、インペラ83の回転により、ポンプ室81aから効率的に排水できる。更に、吐出口85は、ポンプケース81の最下部に開口し、かつ、ポンプ室81aおよびインペラ83の中心を通る鉛直線Yに対して線対称状に配置されているので、インペラ83がいずれの方向に回転しても、同じ吐出力を得ることができ、安定した排水が行える。
【0065】
図6、
図7に示すように、ポンプ室81aは、フィルタケース71の側部に開口した吸入口86を介してフィルタ室71aと連通しており、ACモータ82が駆動することで、フィルタ室71aから水を吸入する。
【0066】
吸入口86は、ポンプケース81の側部のうち、インペラ83と対向している部位の略中央に円形に開口している。吸入口86もまた、吐出口85と同様に、鉛直線Yに対して線対称状に形成されている。
【0067】
すなわち、吸入口86は、インペラ83の中心部に位置するボス部83bと対向し、インペラ83の羽根部83cおよびベース部83aは、吸入口86の周囲に拡がるポンプ室81aの環状面と対向している。従って、ポンプ室81aに排水を効率よく吸入し、インペラ83による遠心力で効率よく吐出できる。インペラ83がいずれの方向に回転しても、吐出力に差を生じることもない。
【0068】
ところが、ポンプケース81の最下部に吐出口85を配置し、それに伴って、排水路74をポンプ室81aの下側に配置したので、フィルタケース71の側方に位置するポンプケース81と、排水路74とが上下に並ぶ状態となる。それにより、送水ユニット7の全高が高くなり、送水ユニット7をタブ3の下方に適切に設置できなくなるおそれが発生した。
【0069】
そこで、この洗濯機1では、吸入口86を、フィルタケース71の側部の上方に配置し、ポンプケース81をフィルタケース71に対して相対的に高く配置することで、そのような不具合を回避した。
【0070】
具体的には、
図6に示すように、上下方向において、ポンプケース81の上端と、排水路74の下端との間に、フィルタケース71が配置されている。換言すれば、フィルタケース71の中心線C2が、ポンプケース81の中心線C1(横軸)と、排水路74の中心線C3との間の高さに位置するように構成されている。それにより、送水ユニット7は、全体的にコンパクトになっている。
【0071】
ところが、そうした場合、吸入口86はポンプケース81の側部の略中央に位置しているため、フィルタ室71aに残水が発生してしまう。
【0072】
そこで、この洗濯機1では、
図6、
図8に示すように、吸入口86の下側に、フィルタ室71aとポンプ室81aとを連通させるスリット87が形成されている。スリット87は、吸入口86の下端から下方に真っ直ぐ延びており、直線状の横断面を有している。スリット87の下端は、フィルタ室71aの底部近傍に達している。スリット87は、吐出口85と同様に、鉛直線Yに対して線対称状に形成されている。
【0073】
開口面積が小さいので、羽根部83cと対向する部位に開口していても、排水ポンプ80の吐出力の低下を抑制できる。スリット87が、鉛直線Yに対して線対称状に形成されているので、インペラ83がいずれの方向に回転しても、吐出力に差を生じることもない。
【0074】
吸入口86から下方に延びていて、その下端がフィルタ室71aの底面に達しているので、フィルタ室71aに残水を発生させることなく、ほとんど排水することができる。排水性も向上するので、騒音の低減も促進される。
【0075】
循環ポンプ90は、排水ポンプ80とは、反対側のフィルタケース71の側方に組み付けられている。循環ポンプ90も、インペラを収容したポンプケース91などを有し、排水ポンプ80とほぼ同様に構成されている。例えば、ポンプケース91にも、スリット87と同様のスリット97(
図7にのみ表示)が設けられている。
【0076】
循環ポンプ90は、制御装置の制御に従って、フィルタケース71から水を吸引する。循環ポンプ90の場合、そのポンプケース91の上部に、上方に延びる循環路92が設けられていて、循環ポンプ90が吐出する水は、循環路92および循環配管7d(
図2にのみ表示)を通じてタブ3に戻される。
【0077】
<送水ユニット7の動作>
タブ3に給水されると、その水は、上流側主排水管7aおよび上流側副排水管7bを通じて送水ユニット7に流入する。フィルタ室71aの空気は、エア抜き配管76を通じて排除されるので、フィルタ室71aは水で満たされた状態になる。
【0078】
一方、フィルタ室71aの上部にタブ3に連通するエア抜き配管76が設けられていると、タブ3からエア抜き配管76を通じて水がフィルタ室71aに流入する。インペラ83が、そのようなエア抜き配管76と同じ空間にあると、インペラ83で巻き上げられる水と、エア抜き配管76から流入する水とが干渉して、水の流れが阻害されたり騒音が生じたりする。
【0079】
それに対し、送水ユニット7では、エア抜き配管76とインペラ83とが別空間に位置しているので、そのような水流の阻害や騒音を抑制できる。
【0080】
制御装置6がACモータ82を駆動すると、インペラ83が回転し、フィルタ室71aからポンプ室81aに水が吸い込まれ、吐出口85から吐出される。その際、インペラ83の回転方向は不定であるが、いずれの方向に回転しても同じ吐出力が得られるので、安定的かつ効果的に排水できる。
【0081】
排水が進むと水位が下がり、フィルタ室71aに空気が混入するようになる。吸入口86の下方にスリット87が形成されていて、吐出口85がポンプケース81の最下部に開口しているので、フィルタ室71aの内部の水が少量になっても、円滑に排水できる。従って、エア噛みによる騒音を効果的に低減できる。
【0082】
循環ポンプ90で水を循環する場合も、排水ポンプ80と同様の効果が得られる。
【0083】
なお、開示する技術にかかる洗濯機は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0084】
洗濯機はドラム式洗濯機に限らない。例えば、縦型洗濯機であってもよい。
【0085】
スリット87の形状は一例である。例えば、スリット87の形状は、吸入口86から独立した細長い孔であってもよく、先窄まりの形状(V状)であってよい。
【符号の説明】
【0086】
1 洗濯機
2 筐体
3 タブ(洗濯槽)
4 ドラム
5 駆動装置
6 制御装置
7 送水ユニット(送水装置)
7a 上流側主排水管
7b 上流側副排水管
7c 下流側排水管
51 駆動モータ
71 フィルタケース
71a フィルタ室
71b 装着口
72 水導入路
74 排水路
75 フィルタ
75a 蓋材
76 エア抜き配管
80 ポンプ
81 ポンプケース
81a ポンプ室
82 ACモータ
83 インペラ
85 吐出口
86 吸入口
87 スリット
90 循環ポンプ
91 ポンプケース
92 循環路