(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】オイル供給システム
(51)【国際特許分類】
F01M 11/03 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
F01M11/03 G
F01M11/03 Z
(21)【出願番号】P 2018232177
(22)【出願日】2018-12-12
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 良彦
(72)【発明者】
【氏名】味▲噌▼作 裕
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 治朗
(72)【発明者】
【氏名】石澤 雄馬
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-109011(JP,A)
【文献】特開2009-030576(JP,A)
【文献】特開2018-118532(JP,A)
【文献】実開昭58-177508(JP,U)
【文献】特開2013-108380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成され、オイルが貯留されるオイルパン内において開口する吸込口が先端に形成されたストレーナと、
自車両にかかる加速度の将来値を予測する加速度予測部と、
前記加速度予測部で予測された加速度の将来値に基づいて前記吸込口の開口方向を変化させるストレーナ制御部と、
を備え
、
前記ストレーナ制御部は、前記吸込口の開口方向を、加速度の将来値から予測される所定時間後の前記オイルパン内の油面の法線方向に等しくなるように変化させるオイル供給システム。
【請求項2】
自車両の横方向の加速度および前後方向の加速度のいずれか一方または双方を検出する加速度センサを備え、
前記加速度予測部は、現在以前の所定期間分の前記加速度センサの検出結果に基づいて加速度の将来値を予測する請求項
1に記載のオイル供給システム。
【請求項3】
自車両の速度を検出する速度センサと、
自車両の進行方向の車外環境を認識する車外環境認識装置と、
を備え、
前記加速度予測部は、前記車外環境認識装置で認識された進行方向の車外環境と前記速度センサの検出結果とに基づいて加速度の将来値を予測する請求項
1に記載のオイル供給システム。
【請求項4】
自車両の横方向および鉛直方向に交差する第1中心軸周りに前記吸込口を揺動させる第1モータと、
自車両の前後方向および鉛直方向に交差する第2中心軸周りに前記吸込口を揺動させる第2モータと、
を備え、
前記ストレーナ制御部は、加速度の将来値に基づいて前記第1モータおよび前記第2モータを制御する請求項1から
3のいずれか1項に記載のオイル供給システム。
【請求項5】
筒状に形成され、オイルが貯留されるオイルパン内において開口する吸込口が先端に形成されたストレーナと、
自車両にかかる加速度の将来値を予測する加速度予測部と、
前記加速度予測部で予測された加速度の将来値に基づいて前記吸込口の開口方向を変化させるストレーナ制御部と、
自車両の横方向および鉛直方向に交差する第1中心軸周りに前記吸込口を揺動させる第1モータと、
自車両の前後方向および鉛直方向に交差する第2中心軸周りに前記吸込口を揺動させる第2モータと、
を備え
、
前記ストレーナ制御部は、加速度の将来値に基づいて前記第1モータおよび前記第2モータを制御するオイル供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半球面状に形成されたオイルの吸入口を、オイルパンの底面に揺動可能に設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オイルを吸入するストレーナは、一般的に、鉛直方向に延在しており、ストレーナの先端に形成された吸入口は、オイルパン内において鉛直下方に向けて開口している。ここで、車両が加速、減速および旋回すると、オイルパン内のオイルの表面(油面)が傾く。そうすると、吸込口が油面から露出し、ストレーナが空気を吸い込んでしまう場合がある。
【0005】
特許文献1の技術では、油面の変動に対して吸込口の揺動が遅延するおそれがあり、空気の吸込みを抑制することができないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、空気の吸込みを抑制することが可能なオイル供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のオイル供給システムは、筒状に形成され、オイルが貯留されるオイルパン内において開口する吸込口が先端に形成されたストレーナと、自車両にかかる加速度の将来値を予測する加速度予測部と、加速度予測部で予測された加速度の将来値に基づいて吸込口の開口方向を変化させるストレーナ制御部と、を備え、ストレーナ制御部は、吸込口の開口方向を、加速度の将来値から予測される所定時間後のオイルパン内の油面の法線方向に等しくなるように変化させる。
また、上記課題を解決するために、本発明のオイル供給システムは、筒状に形成され、オイルが貯留されるオイルパン内において開口する吸込口が先端に形成されたストレーナと、自車両にかかる加速度の将来値を予測する加速度予測部と、加速度予測部で予測された加速度の将来値に基づいて吸込口の開口方向を変化させるストレーナ制御部と、自車両の横方向および鉛直方向に交差する第1中心軸周りに吸込口を揺動させる第1モータと、自車両の前後方向および鉛直方向に交差する第2中心軸周りに吸込口を揺動させる第2モータと、を備え、ストレーナ制御部は、加速度の将来値に基づいて第1モータおよび第2モータを制御する。
【0009】
また、オイル供給システムは、自車両の横方向の加速度および前後方向の加速度のいずれか一方または双方を検出する加速度センサを備え、加速度予測部は、現在以前の所定期間分の加速度センサの検出結果に基づいて加速度の将来値を予測してもよい。
【0010】
また、オイル供給システムは、自車両の速度を検出する速度センサと、自車両の進行方向の車外環境を認識する車外環境認識装置と、を備え、加速度予測部は、車外環境認識装置で認識された進行方向の車外環境と速度センサの検出結果とに基づいて加速度の将来値を予測してもよい。
【0011】
オイル供給システムは、自車両の横方向および鉛直方向に交差する第1中心軸周りに吸込口を揺動させる第1モータと、自車両の前後方向および鉛直方向に交差する第2中心軸周りに吸込口を揺動させる第2モータと、を備え、ストレーナ制御部は、加速度の将来値に基づいて第1モータおよび第2モータを制御してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空気の吸込みを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態によるオイル供給システムの構成を示す概略図である。
【
図6】ストレーナの動作を説明するための透視正面図である。
【
図7】ストレーナの動作を説明するための透視側面図である。
【
図8】ストレーナの動作を説明するための概略平面図である。
【
図9】加速度の将来値の予測について説明する説明図である。
【
図10】ストレーナ制御部による制御を説明する説明図である。
【
図11】第1マップおよび第2マップの一例を示す図である。
【
図12】オイル供給システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図13】第2実施形態によるオイル供給システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態の一態様について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態によるオイル供給システム100の構成を示す概略図である。オイル供給システム100は、車両1に適用される。車両1は、エンジンを駆動源とした自動車である。なお、車両1は、駆動源として機能するモータジェネレータがエンジンと並行して設けられたハイブリッド電気自動車であってもよい。以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
【0016】
オイル供給システム100は、加速度センサ110、ストレーナ112、制御装置114を含む。以下、オイル供給システム100が適用された車両1自身を自車両と呼ぶことがある。
【0017】
加速度センサ110は、車両1(自車両)にかかる前後方向の加速度および横方向の加速度を各々検出する。なお、加速度センサ110は、車両1の前後方向の加速度および横方向の加速度の双方を検出する態様に限らず、例えば、車両1の前後方向の加速度および横方向の加速度のいずれか一方を検出するものであってもよい。
【0018】
図2は、エンジン120の構成を示す概略図である。エンジン120は、シリンダブロック122を含む。シリンダブロック122には、水平方向に延在するシリンダ124が4気筒形成される。また、シリンダブロック122には、クランクシャフト126が収容されるクランク室が形成される。エンジン120では、例えば、2気筒のシリンダ124がクランクシャフト126を挟んで水平に対向配置され、対向配置されたシリンダ124がクランクシャフト126の軸方向に2組並べられる。シリンダ124には、ピストン128が摺動可能に収容される。ピストン128は、クランクシャフト126に連結される。クランクシャフト126は、ピストン128の摺動にしたがって回転する。
【0019】
シリンダブロック122の鉛直下方には、オイルパン130が設けられる。オイルパン130は、例えば、中空の台形状の容器である。オイルパン130は、オイルパン130内の空間がクランク室に連通するように、シリンダブロック122に連結される。オイルパン130は、オイル132を貯留する。
【0020】
ストレーナ112は、筒状に形成され、鉛直方向に延在する。ストレーナ112の先端には、オイルパン130内において開口する吸込口134が形成される。吸込口134は、オイルパン130の底面から離隔しており、オイルパン130の底面に対向する。吸込口134は、油面136(オイルパン130内に貯留されたオイル132の表面)よりも鉛直下方に位置する。
【0021】
ストレーナ112は、ポンプ(図示略)に接続される。ポンプは、ストレーナ112の吸込口134を通じてオイルパン130からオイル132を吸い込んでレギュレータ(図示略)に供給する。レギュレータは、オイル132の圧力を所定の圧力に調整し、圧力を調整したオイル132をエンジン120の各部に供給する。また、エンジン120の各部で利用されたオイル132は、オイルパン130に回収される。
【0022】
図3は、ストレーナ112の構成を示す透視正面図であり、
図4は、ストレーナ112の構成を示す透視側面図であり、
図5は、ストレーナ112の構成を示す透視斜視図である。
図3の左右方向は、車両1の横方向に対応する。
図4の左右方向は、車両1の前後方向に対応する。
【0023】
ストレーナ112は、第1筒部140、第2筒部142、可動機構144を含む。第1筒部140は、中空の円筒状に形成されており、ポンプに接続される。第1筒部140は、例えば、シリンダブロック122などに支持されており、位置が固定されている。
【0024】
第1筒部140の端部には、第1筒部140の中心軸C1方向に突出する突出部146が形成される。突出部146は、第1筒部140の中心軸C1周りに等間隔に2個設けられる。このため、第1筒部140の端部は、中心軸C1周りにおける2個の突出部146の間において、窪みを有する。
【0025】
第2筒部142は、中空の円筒状に形成されており、第1筒部140の延長方向に配置される。第2筒部142の内径は、第1筒部140の内径に等しい。吸込口134は、第2筒部142における第1筒部140と反対側端に形成される。
【0026】
第2筒部142における第1筒部140側端には、第2筒部142の中心軸C2方向に突出する突出部148が形成される。突出部148は、第2筒部142の中心軸C2周りに等間隔に2個設けられる。このため、第2筒部142の端部は、中心軸C2周りにおける2個の突出部148の間において、窪みを有する。
【0027】
第2筒部142は、第1筒部140における2個の突出部146の間に突出部148が収容されるように、第1筒部140に対して中心軸C2(中心軸C1)周りに90度変位して配置される。第1筒部140および第2筒部142は、互いに所定間隔を空けて配置される。また、第2筒部142の中心軸C2は、
図3~
図5に示す初期状態において、第1筒部140の中心軸C1に重なる。
【0028】
可動機構144は、第1筒部140に対して第2筒部142を揺動させることで、吸込口134の開口方向を変化させる。吸込口134は、
図3~
図5に示す初期状態において、鉛直下方に向けて開口する。
【0029】
可動機構144は、第1支持軸150、第1固定ギヤ152、第1回転ギヤ154、第1回転軸156、第1モータ158、第2支持軸160、第2固定ギヤ162、第2回転ギヤ164、第2回転軸166、第2モータ168を含む。なお、
図3~
図5では、第1固定ギヤ152、第1回転ギヤ154、第2固定ギヤ162および第2回転ギヤ164の歯の表記を省略している。
【0030】
第1支持軸150は、棒状に形成されている。第1支持軸150の一端は、第2筒部142の一方の突出部148に回転可能に支持され、第1支持軸150の他端は、第2筒部142の他方の突出部148に回転可能に支持される。
【0031】
第1固定ギヤ152は、半円盤状に形成されており、円弧面に歯が形成されている。第1固定ギヤ152は、歯を第1筒部140側に向けて、第1支持軸150の第1筒部140側面に固定される。第1固定ギヤ152は、第1筒部140内に位置する。
【0032】
第1回転ギヤ154は、円盤状に形成されており、円周面に歯が形成されている。第1回転ギヤ154の半径は、第1固定ギヤ152の半径よりも小さい。第1回転ギヤ154は、中心に棒状の第1回転軸156が挿通されており、第1回転軸156に固定されている。
【0033】
第1回転軸156は、第1固定ギヤ152に対して第2筒部142と反対側に位置する。第1回転軸156の両端は、第1筒部140に各々回転可能に支持される。第1回転軸156は、第1支持軸150および第1固定ギヤ152に対して第1筒部140の中心軸C1周りに90度変位している。第1回転ギヤ154は、第1筒部140内に位置する。第1回転ギヤ154は、第1固定ギヤ152に噛み合わされている。
【0034】
第1回転軸156は、第1モータ158に接続される。第1モータ158は、例えば、ステッピングモータなどの小型モータである。第1モータ158は、第1回転軸156を中心軸C10周りに回転させる。その結果、第1モータ158は、第1固定ギヤ152に対する第1回転ギヤ154の噛み合わせ位置を変化させる。
【0035】
第2支持軸160は、棒状に形成されている。第2支持軸160の一端は、第1筒部140の一方の突出部146に回転可能に支持され、第2支持軸160の他端は、第1筒部140の他方の突出部146に回転可能に支持される。また、第2支持軸160の中央は、第1支持軸150の中央に接続されている。第2支持軸160の中心軸C22は、第1支持軸150の中心軸C12に直交している。
【0036】
第2固定ギヤ162は、半円盤状に形成されており、円弧面に歯が形成されている。第2固定ギヤ162は、歯を第2筒部142側に向けて、第2支持軸160の第2筒部142側面に固定される。第2固定ギヤ162は、第2筒部142内に位置する。
【0037】
第2回転ギヤ164は、円盤状に形成されており、円周面に歯が形成されている。第2回転ギヤ164の半径は、第2固定ギヤ162の半径よりも小さい。第2回転ギヤ164は、中心に棒状の第2回転軸166が挿通されており、第2回転軸166に固定されている。
【0038】
第2回転軸166は、第2固定ギヤ162に対して第1筒部140と反対側に位置する。第2回転軸166の両端は、第2筒部142に各々回転可能に支持される。第2回転軸166は、第2支持軸160および第2固定ギヤ162に対して第2筒部142の中心軸C2周りに90度変位している。第2回転ギヤ164は、第2筒部142内に位置する。第2回転ギヤ164は、第2固定ギヤ162に噛み合わされる。
【0039】
第2回転軸166は、第2モータ168に接続される。第2モータ168は、例えば、ステッピングモータなどの小型モータである。第2モータ168は、第2回転軸166を中心軸C20周りに回転させる。その結果、第2モータ168は、第2固定ギヤ162に対する第2回転ギヤ164の噛み合わせ位置を変化させる。
【0040】
第2支持軸160の中心軸C22は、車両1の横方向(第1支持軸150の中心軸C12方向)および鉛直方向(第1筒部140の中心軸C1方向)に交差する。また、第1支持軸150の中心軸C12は、車両1の前後方向(第2支持軸160の中心軸C22方向)および鉛直方向(第1筒部140の中心軸C1方向)に交差する。
【0041】
第1筒部140および第2筒部142は、伸縮性を有する材料から構成される連結部170によって連結される。連結部170は、例えば、シリコンで構成される。連結部170は、第1筒部140と第2筒部142との隙間を塞ぐ。なお、
図5では、連結部170の表記を省略している。
【0042】
図6は、ストレーナ112の動作を説明するための透視正面図であり、
図7は、ストレーナ112の動作を説明するための透視側面図であり、
図8は、ストレーナ112の動作を説明するための概略平面図である。
図6の左右方向は、車両1の横方向に対応し、
図7の左右方向は、車両1の前後方向に対応する。また、
図8の左右方向は、車両1の横方向に対応し、
図8の上下方向は、車両1の前後方向に対応する。
【0043】
例えば、第1モータ158は、
図6に示すように、第1回転軸156を反時計回りに回転させたとする。第1回転軸156の回転にしたがって、第1回転ギヤ154は、第1回転軸156の回転方向と同方向に回転する。これにより、第1回転ギヤ154は、第1固定ギヤ152における噛み合わせ位置を反時計回り方向に変位させる。
【0044】
そうすると、第1筒部140の位置が固定されているため、第2筒部142は、中心軸C12を回転中心として反時計回りに揺動(回転)する。この際、第2筒部142は、第1筒部140の中心軸C1に対して、車両1の横方向に所定の第1角度θ1だけ揺動(回転)する。第1角度θ1は、第1回転軸156の回転量、および、第1回転ギヤ154と第1固定ギヤ152とのギヤ比に基づいた角度となる。つまり、ストレーナ112では、第1モータ158の駆動にしたがって、吸込口134の開口方向が車両1の横方向に第1角度θ1だけ変位する。
【0045】
また、例えば、第2モータ168は、
図7に示すように、第2回転軸166を時計回りに回転させたとする。第2回転軸166の回転にしたがって、第2回転ギヤ164は、第2回転軸166の回転方向と同方向に回転する。これにより、第2回転ギヤ164は、第2固定ギヤ162における噛み合わせ位置を反時計回り方向に変位させる。
【0046】
そうすると、第2支持軸160を通じて第2固定ギヤ162に連結される第1筒部140は、第2支持軸160に接続される第1支持軸150の中心軸C12を回転中心として時計回りに揺動(回転)する。この際、第1筒部140の位置が固定されているため、第2筒部142は、第1筒部140の中心軸C1に対して、車両1の前後方向に所定の第2角度θ2だけ揺動(回転)する。第2角度θ2は、第2回転軸166の回転量、および、第2回転ギヤ164と第2固定ギヤ162とのギヤ比に基づいた角度となる。つまり、ストレーナ112では、第2モータ168の駆動にしたがって、吸込口134の開口方向が車両1の前後方向に第2角度θ2だけ変位する。
【0047】
第2筒部142は、中心軸C1に対して左横方向に45度および右横方向に45度の合計90度の範囲で揺動可能となっている。つまり、第1角度θ1は、中心軸C1を基準として±45度の範囲を取り得る。また、第2筒部142は、中心軸C1に対して前方向に45度および後方向に45度の合計90度の範囲で揺動可能となっている。つまり、第2角度θ2は、中心軸C1を基準として±45度の範囲を取り得る。
【0048】
第1筒部140および第2筒部142は、第2筒部142が横方向および前後方向に揺動する際に、第2筒部142の揺動を妨げないような間隔で配置される。また、連結部170は、伸縮することで第2筒部142の揺動を許容するとともに、第1筒部140および第2筒部142の間の閉塞を維持する。
【0049】
図8では、第1モータ158の駆動にしたがって吸込口134が横方向に第1角度θ1分だけ移動した場合の一例を破線の閉曲線で示しており、第2モータ168の駆動にしたがって吸込口134が前後方向に第2角度θ2分だけ移動した場合の一例を一点鎖線の閉曲線で示している。例えば、第2筒部142が横方向に第1角度θ1だけ揺動し、かつ、前後方向に第2角度θ2だけ揺動した場合、吸込口134は、二点鎖線の閉曲線で示すように斜め方向に移動する。
【0050】
このように、第1モータ158は、中心軸C22(第1中心軸)周りに吸込口134を揺動させ、第2モータ168は、中心軸C12(第2中心軸)周りに吸込口134を揺動させる。これにより、ストレーナ112は、中心軸C12と中心軸C22との交点を頂点として下方に錘状に広がる各方向に、吸込口134の開口方向を向けることができる。
【0051】
図1に戻って、制御装置114は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成される。制御装置114は、加速度予測部180およびストレーナ制御部182として機能する。
【0052】
加速度予測部180は、加速度センサ110の検出結果に基づいて、車両1にかかる加速度の将来値を予測する(先読みする)。ストレーナ制御部182は、加速度予測部180で予測された加速度の将来値に基づいて、ストレーナ112の吸込口134の開口方向を変化させる。
【0053】
図9は、加速度の将来値の予測について説明する説明図である。
図9(a)は、横方向の加速度について示し、
図9(b)は、前後方向の加速度について示す。加速度予測部180は、加速度センサ110の検出結果、すなわち、横方向の加速度および前後方向の加速度を所定時間間隔毎(所定ロギング周期毎)に取得する。所定時間間隔は、例えば、32ms(ミリ秒)である。
【0054】
加速度予測部180は、取得した検出結果を記憶し、少なくとも現在から所定期間保持する。所定期間は、例えば、5秒以上に設定される。つまり、加速度予測部180では、現在以前の所定期間分の横方向の加速度および前後方向の加速度が蓄積される。加速度予測部180は、蓄積された現在以前の所定期間(例えば、5秒)分の加速度センサ110の検出結果に基づいて加速度の将来値を予測する。
【0055】
例えば、
図9(a)に示すように、現在時刻T11では、5秒前の時刻T10から現在時刻T11までの期間Taにおける横方向の加速度が、約150個蓄積されている。加速度予測部180は、期間Taにおける約150個の横方向の加速度に基づいて、時間と横方向の加速度との関係を示す第1近似曲線A10を導出する。第1近似曲線A10は、例えば、最小二乗法により2次関数として求める。なお、第1近似曲線A10の導出方法は、この例に限らず、他の方法であってもよい。加速度予測部180は、第1近似曲線A10に基づいて、現在時刻T11から所定時間後(例えば、1秒後)の時刻T12における横方向の加速度を予測する。
【0056】
同様に、
図9(b)に示すように、現在時刻T11では、5秒前の時刻T10から現在時刻T11までの期間Taにおける前後方向の加速度が、約150個蓄積されている。加速度予測部180は、期間Taにおける約150個の前後方向の加速度に基づいて、時間と前後方向の加速度との関係を示す第2近似曲線A20を導出する。第2近似曲線A20は、例えば、最小二乗法により2次関数として求める。なお、第2近似曲線A20の導出方法は、この例に限らず、他の方法であってもよい。加速度予測部180は、第2近似曲線A20に基づいて、現在時刻T11から所定時間後(例えば、1秒後)の時刻T12における前後方向の加速度を予測する。
【0057】
予測された横方向の加速度は、所定時間後(例えば、1秒後)に車両1にかかると予測される加速度の横方向成分に相当する。また、予測された前後方向の加速度は、所定時間後(例えば、1秒後)に車両1にかかると予測される加速度の前後方向成分に相当する。
【0058】
図10は、ストレーナ制御部182による制御を説明する説明図である。
図10(a)に示すように、車両1がカーブを走行する場合、車両1には、加速または減速による前後方向の加速度、および、旋回による横方向の加速度がかかる。
【0059】
この際、
図10(b)および
図10(c)に示すように、オイルパン130内のオイル132には、鉛直下方に向かう重力加速度の他、車両1にかかる横方向の加速度と同様の横方向の加速度、および、車両1にかかる前後方向の加速度と同様の前後方向の加速度がかかる。
図10(b)では、重力加速度を矢印D1で示し、オイル132にかかる横方向の加速度を矢印D10で示し、重力加速度と横方向の加速度とを合成した横方向の見かけの重力加速度を矢印D31で示している。また、
図10(c)では、重力加速度を矢印D1で示し、オイル132にかかる前後方向の加速度を矢印D20で示し、重力加速度と前後方向の加速度とを合成した前後方向の見かけの重力加速度を矢印D32で示している。
【0060】
オイル132に横方向の加速度および前後方向の加速度がかかると、オイル132は、オイルパン130内において偏り、油面136は、水平面に対して傾く。具体的には、油面136の法線は、
図10(b)に示すように、横方向について見ると、横方向の見かけの重力加速度(矢印D31)方向に延びる。また、油面136の法線は、
図10(c)に示すように、前後方向について見ると、前後方向の見かけの重力加速度(矢印D32)方向に延びる。このため、油面136の法線は、実際には、横方向の見かけの重力加速度(矢印D31)と前後方向の見かけの重力加速度(矢印D32)とを合成した方向に延びる。
【0061】
ストレーナ制御部182は、ストレーナ112の吸込口134の開口方向を、所定時間後(例えば、1秒後)のオイルパン130内の油面136の法線方向に等しくなるように変化させる。所定時間後の油面136の法線方向は、加速度予測部180で予測された加速度の将来値と、重力加速度とから予測することができる。
【0062】
具体的に説明すると、ストレーナ制御部182には、第1マップと第2マップとが予め記憶されている。
図11は、第1マップおよび第2マップの一例を示す図である。
【0063】
図11(a)に示すように、第1マップでは、横方向の加速度と、横方向の見かけの重力加速度と、ストレーナ112の第1角度θ1(横方向の角度)とが関連付けられている。横方向の加速度および横方向の見かけの重力加速度は、重力加速度(9.8m/s
2)を基準とした重力加速度単位(G)で表されている。
【0064】
第1角度θ1の余弦(cosθ1)は、重力加速度を横方向の見かけの重力加速度で除した値に相当する。このため、第1角度θ1は、cosθ1の逆関数(arccosθ1)から導出される。なお、第1角度θ1は、単位がラジアンから度に変換されている。例えば、0.3Gの横方向の加速度がオイル132にかかると、横方向の見かけの重力加速度の大きさは、1.04Gとなり、第1角度θ1は、16.7度となる。
【0065】
図11(b)に示すように、第2マップでは、前後方向の加速度と、前後方向の見かけの重力加速度と、ストレーナ112の第2角度θ2(前後方向の角度)とが関連付けられている。前後方向の加速度および前後方向の見かけの重力加速度は、重力加速度(9.8m/s
2)を基準とした重力加速度単位(G)で表されている。
【0066】
第2角度θ2の余弦(cosθ2)は、重力加速度を前後方向の見かけの重力加速度で除した値に相当する。このため、第2角度θ2は、cosθ2の逆関数(arccosθ2)から導出される。なお、第2角度θ2は、単位がラジアンから度に変換されている。例えば、0.3Gの前後方向の加速度がオイル132にかかると、前後方向の見かけの重力加速度の大きさは、1.04Gとなり、第2角度θ2は、16.7度となる。
【0067】
なお、第1マップにおいて、第1角度θ1は、横方向の加速度が0.1G漸増するごとに設定されている。しかし、第1角度θ1の設定間隔は、この態様に限らず、0.1Gより大きくてもよいし、0.1Gより小さくてもよい。また、第2マップにおける第2角度θ2の設定間隔についても、第1角度θ1の設定間隔と同様に、0.1Gより大きくてもよいし、0.1Gより小さくてもよい。
【0068】
ストレーナ制御部182は、予測された横方向の加速度を第1マップに適用して第1角度θ1を導出する。この際、予測された横方向の加速度が、第1マップにおける設定値の間となる場合、ストレーナ制御部182は、例えば、横方向の加速度と第1角度θ1とが関連付けられた曲線に基づいて第1角度θ1を補間して導出してもよい。これにより、所定時間後(例えば、1秒後)の第1角度θ1(油面136の法線方向における横方向の角度)が予測される。
【0069】
また、ストレーナ制御部182は、予測された前後方向の加速度を第2マップに適用して第2角度θ2を導出する。この際、予測された前後方向の加速度が、第2マップにおける設定値の間となる場合、ストレーナ制御部182は、例えば、前後方向の加速度と第2角度θ2とが関連付けられた曲線に基づいて第2角度θ2を補間して導出してもよい。これにより、所定時間後(例えば、1秒後)の第2角度θ2(油面136の法線方向における前後方向の角度)が予測される。
【0070】
なお、ストレーナ制御部182は、例えば、左横方向の加速度が予測された場合、第1角度θ1を正値で導出し、右横方向の加速度が予測された場合、第1角度θ1を負値で導出してもよい。また、ストレーナ制御部182は、例えば、後方向の加速度が予測された場合、第2角度θ2を正値で導出し、前方向の加速度が予測された場合、第2角度θ2を負値で導出してもよい。
【0071】
第1角度θ1および第2角度θ2の導出後、ストレーナ制御部182は、第2筒部142の横方向の角度が、導出された第1角度θ1となるように、第1モータ158を駆動させる。また、ストレーナ制御部182は、第2筒部142の前後方向の角度が、導出された第2角度θ2となるように、第2モータ168を駆動させる。これにより、吸込口134の開口方向が油面136の法線方向に等しくなる。換言すると、第2筒部142は、油面136に垂直に挿入された状態となる。
【0072】
なお、ストレーナ制御部182は、例えば、第1角度θ1が正値で導出された場合、第1モータ158を正転させ、第1角度θ1が負値で導出された場合、第1モータ158を逆転させてもよい。また、ストレーナ制御部182は、例えば、第2角度θ2が正値で導出された場合、第2モータ168を正転させ、第2角度θ2が負値で導出された場合、第2モータ168を逆転させてもよい。
【0073】
図12は、オイル供給システム100の動作を説明するフローチャートである。オイル供給システム100では、加速度センサ110から加速度が取得される周期以上の制御周期で(例えば、1秒毎に)、フローチャートの一連の処理が行われる。
【0074】
まず、加速度予測部180は、記憶された現在以前の所定期間分の加速度(横方向の加速度および前後方向の加速度)を読み出す(S100)。次に、加速度予測部180は、読み出された所定期間分の横方向の加速度に基づいて1秒後の横方向の加速度を予測する(S110)。次に、加速度予測部180は、読み出された所定期間分の前後方向の加速度に基づいて1秒後の前後方向の加速度を予測する(S120)。
【0075】
次に、ストレーナ制御部182は、予測された1秒後の横方向の加速度に基づいて、第1角度θ1を導出する(S130)。例えば、ストレーナ制御部182は、1秒後の横方向の加速度を第1マップに適用して第1角度θ1を導出する。
【0076】
次に、ストレーナ制御部182は、予測された1秒後の前後方向の加速度に基づいて、第2角度θ2を導出する(S140)。例えば、ストレーナ制御部182は、1秒後の前後方向の加速度を第2マップに適用して第2角度θ2を導出する。
【0077】
次に、ストレーナ制御部182は、導出された第1角度θ1を示す角度指令を第1モータ158に送信する(S150)。次に、ストレーナ制御部182は、導出された第2角度θ2を示す角度指令を第2モータ168に送信し(S160)、一連の処理を終了する。
【0078】
第1モータ158は、第1角度θ1を示す角度指令にしたがって第1回転軸156を回転させる。同様に、第2モータ168は、第2角度θ2を示す角度指令にしたがって第2回転軸166を回転させる。これにより、第2筒部142(吸込口134)が揺動し、吸込口134の開口角度は、第1角度θ1と第2角度θ2とを合成した角度に一致する。
【0079】
以上のように、第1実施形態のオイル供給システム100では、自車両にかかる加速度の将来値が予測され、その加速度の将来値に基づいてストレーナ112の吸込口134の開口方向が変化する。
【0080】
車両1にかかる加速度によってオイル132の油面136が傾く速度は、一般的に、ストレーナ112の吸込口134の揺動時間より早い。しかし、第1実施形態のオイル供給システム100では、加速度の将来値に基づいて吸込口134を揺動させることで、油面136が変動し始める直前に吸込口134の揺動を開始させる。これにより、第1実施形態のオイル供給システム100では、油面136の変動に対して吸込口134の揺動が遅延することを抑制できる。このため、第1実施形態のオイル供給システム100では、油面136の変動によって吸込口134が油面136から露出することを抑制できる。
【0081】
したがって、第1実施形態のオイル供給システム100によれば、空気の吸込みを抑制することが可能となる。その結果、第1実施形態のオイル供給システム100では、油圧回路における油圧の低下を防止することができる。
【0082】
また、第1実施形態のオイル供給システム100では、オイルパン130内のオイル132の貯留量を減らして油面136の位置を下げることができる。これにより、第1実施形態のオイル供給システム100では、クランク室内における空気が移動可能な容積を大きくすることができ、ピストン128のフリクションを低減することが可能となる。
【0083】
また、ストレーナ制御部182は、吸込口134の開口方向を、加速度の将来値から予測される所定時間後のオイルパン130内の油面136の法線方向に等しくなるように変化させている。このため、第1実施形態のオイル供給システム100では、より確実に空気の吸込みを抑制することが可能となる。
【0084】
また、加速度予測部180は、現在以前の所定期間分の加速度センサ110の検出結果に基づいて加速度の将来値を予測している。このため、第1実施形態のオイル供給システム100では、加速度の将来値を精度よく予測することができる。その結果、第1実施形態のオイル供給システム100では、空気の吸込みを精度よく抑制することが可能となる。
【0085】
また、加速度予測部180は、加速度の将来値を横方向成分と前後方向成分とで分けて予測している。そして、ストレーナ制御部182は、加速度の将来値の横方向成分(1秒後の横方向の加速度)に基づいて第1モータ158を制御し、加速度の将来値の前後方向成分(1秒後の前後方向の加速度)に基づいて第2モータ168を制御している。このため、第1実施形態のオイル供給システム100では、吸込口134の開口方向を確実に制御することができる。
【0086】
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態によるオイル供給システム200の構成を示す概略図である。第2実施形態のオイル供給システム200は、加速度センサ110に代えて速度センサ210を有し、車外環境認識装置220および撮像装置222をさらに有する点について第1実施形態と異なる。また、第2実施形態の制御装置114は、加速度予測部180に代えて加速度予測部280として機能する。したがって、第1実施形態と機能が等しい構成要素については、詳細な説明を省略し、機能が異なる構成要素について詳述する。
【0087】
速度センサ210は、車両1の速度を検出する。車両1には、2個の撮像装置222が、略水平方向に互いに離隔して設けられる。撮像装置222は、車両1の進行方向の車外環境を撮像する。具体的には、撮像装置222は、自車両の前方の検出領域に存在する対象物(例えば、道路など)を撮像し、少なくとも輝度情報が含まれる輝度画像を連続して生成する。
【0088】
車外環境認識装置220は、撮像装置222で生成された輝度画像に基づいて視差情報を導出し、視差情報が含まれる距離画像を生成する。車外環境認識装置220は、輝度画像および距離画像に基づいて、検出領域における対象物がいずれの種類の対象物(例えば、道路など)に対応するかを特定する。このようにして、車外環境認識装置220は、車両1の進行方向の車外環境を認識する。この際、車外環境認識装置220は、例えば、道路の白線を認識する。
【0089】
また、車外環境認識装置220は、例えば、道路の白線と特定した対象物に基づいて、進行方向にカーブがあるか否かを判定する。カーブがある場合、車外環境認識装置220は、カーブまでの距離およびカーブの半径(または直径)を導出する。
【0090】
加速度予測部280は、所定の制御周期毎(例えば、1秒毎)に以下の処理を繰り返す。まず、加速度予測部280は、速度センサ210から速度を取得する。次に、加速度予測部280は、車外環境認識装置220からカーブの有無、カーブまでの距離およびカーブの半径を取得する。
【0091】
次に、加速度予測部280は、車外環境認識装置220で認識された進行方向の車外環境と速度センサ210の検出結果とに基づいて、加速度の将来値(例えば、1秒後の横方向の加速度および前後方向の加速度)を予測する。
【0092】
加速度予測部280は、例えば、カーブの有無、カーブまでの距離、および、車両1の現在の速度から、1秒後の車両1の位置を予測する。加速度予測部280は、1秒後に車両1がカーブに進入しないと予測した場合、現在の速度が維持されるとみなして、1秒後の横方向の加速度および前後方向の加速度を予測する。
【0093】
一方、加速度予測部280は、1秒後に車両1がカーブに進入すると予測した場合、現在の速度およびカーブの半径に基づいて、1秒後の横方向の加速度を予測する。また、加速度予測部280は、現在の速度を微分して加速度を導出し、導出された加速度およびカーブの半径に基づいて1秒後の前後方向の加速度を予測する。なお、オイル供給システム200に加速度センサ110を設け、加速度予測部280は、加速度センサ110で検出された加速度およびカーブの半径に基づいて1秒後の前後方向の加速度を予測してもよい。
【0094】
次に、ストレーナ制御部182は、加速度予測部280で予測された1秒後の横方向の加速度に基づいて第1角度θ1を導出し、加速度予測部280で予測された1秒後の前後方向の加速度に基づいて第2角度θ2を導出する。そして、ストレーナ制御部182は、第1角度θ1および第2角度θ2にしたがって、第1モータ158および第2モータ168を制御する。
【0095】
以上のように、第2実施形態のオイル供給システム200では、車外環境認識装置220で認識された進行方向の車外環境と速度センサ210の検出結果とに基づいて、加速度の将来値が予測される。そして、第2実施形態のオイル供給システム200では、予測された加速度の将来値に基づいてストレーナ112の吸込口134の開口方向が変化する。
【0096】
したがって、第2実施形態のオイル供給システム200によれば、第1実施形態と同様に、空気の吸込みを抑制することができる。
【0097】
また、第2実施形態のオイル供給システム200では、車両1の過去の情報を蓄積せずに加速度の将来値を予測することができる。
【0098】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0099】
例えば、各実施形態のストレーナ制御部182は、第1マップおよび第2マップを用いて第1角度θ1および第2角度θ2を導出していた。しかし、ストレーナ制御部182は、予測された横方向の加速度および前後方向の加速度から、逆関数などの計算式を用いて、直接的に第1角度θ1および第2角度θ2を導出してもよい。
【0100】
また、各実施形態のストレーナ制御部182は、制御周期(1秒)毎に毎回、吸込口134を揺動させていた。しかし、ストレーナ制御部182は、加速度の将来値が所定閾値以下の場合に、吸込口134の揺動を行わず、加速度の将来値が所定閾値を超えた場合に、吸込口134を揺動させてもよい。例えば、ストレーナ制御部182は、予測された横方向の加速度および前後方向の加速度のいずれか一方または双方が所定閾値を超えた場合に、第1モータ158および第2モータ168を回転させる。所定閾値は、横方向および前後方向で共通の値に設定されてもよいし、異なる値に設定されてもよい。この態様によれば、効率よく空気の吸込みを抑制することができる。
【0101】
また、各実施形態のストレーナ112は、可動機構144によって吸込口134を揺動させていた。しかし、可動機構144の具体的な構成は、第1実施形態で例示した構成に限らない。
【0102】
また、各実施形態の加速度予測部180、280は、加速度の将来値を横方向成分と前後方向成分とで分けて予測していた。しかし、加速度予測部180、280は、加速度の将来値を横方向成分と前後方向成分の合成値で予測してもよい。
【0103】
また、各実施形態の可動機構144およびストレーナ制御部182は、吸込口134を横方向および前後方向に揺動させていた。しかし、可動機構144およびストレーナ制御部182は、横方向および前後方向のいずれか一方のみに吸込口134を揺動可能な構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、オイル供給システムに利用できる。
【符号の説明】
【0105】
1 車両
100、200 オイル供給システム
110 加速度センサ
112 ストレーナ
130 オイルパン
132 オイル
134 吸込口
136 油面
158 第1モータ
168 第2モータ
180、280 加速度予測部
182 ストレーナ制御部
210 速度センサ
220 車外環境認識装置
C12 第1中心軸
C22 第2中心軸