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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】窩状イメージインバータ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/06 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
G02B6/06 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018537829
(86)(22)【出願日】2017-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 US2017014313
(87)【国際公開番号】W WO2017127665
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2019-12-25
(31)【優先権主張番号】62/281,168
(32)【優先日】2016-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/441,491
(32)【優先日】2017-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/410,727
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507359579
【氏名又は名称】ショット コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2 International Drive,Suite 105,Rye Brook,NY 10573,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン テイバー
(72)【発明者】
【氏名】ペイジ ヒグビー
(72)【発明者】
【氏名】ポーレット アイ.ケイ. オノラト
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101819295(CN,A)
【文献】特開2000-241634(JP,A)
【文献】特開平02-118502(JP,A)
【文献】米国特許第07305166(US,B1)
【文献】米国特許第03977855(US,A)
【文献】実開昭60-019005(JP,U)
【文献】特公昭44-014157(JP,B1)
【文献】特開2012-181303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02 - 6/10
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像入力端部と画像出力端部とを有する、画像を伝達する剛性の光ファイババンドルにおいて、該バンドルは、
融着された構成要素である複数の光ファイバであって、各光ファイバが、画像入力端部と一致する第1の端部と、画像出力端部と一致する第2の端部とを有する光ファイバ
を含み、ここで、
(i)前記バンドルは、バンドルの中心軸線に沿って長手方向に延在し;
(ii)前記バンドルは、少なくとも第1のファイバ帯域および第2のファイバ帯域を含む少なくとも2つのファイバ帯域を複数含み、前記第1および第2のファイバ帯域は、
前記バンドルの中心軸線周りに同心円状に配列されているとともに、
(a)前記第1のファイバ帯域が前記第2のファイバ帯域よりも前記バンドルの中心軸線の近くにあり、かつ
(b)前記第1のファイバ帯域内の構成要素である光ファイバの全ファイバ直径の平均が、前記第2のファイバ帯域内の構成要素である光ファイバの全ファイバ直径の平均よりも小さくなる
ように画定され、かつ
(iii)前記バンドルは、その長さの一部にわたってねじられており、その結果、前記画像入力端部に入力された画像が、前記画像出力端部を通じて出力される前に前記バンドルの中心軸線周りの角変位を生じる
光ファイババンドル。
【請求項2】
前記バンドルは、その長さにわたって前記バンドルの中心軸線周りに180度ねじられており、その結果、前記画像出力端部を通じて出力された画像が、前記画像入力端部に入力された相応する画像に対して反転され、それによってイメージインバータが画定される、請求項1記載の光ファイババンドル。
【請求項3】
(i)前記構成要素である各光ファイバは、コア直径を有するコアとクラッド直径を有するクラッドとを含み、前記クラッド直径に対する前記コア直径の比によって、該ファイバについてのコア対クラッド直径比が定められ、かつ(ii)前記構成要素である複数の光ファイバのコア対クラッド直径比がファイバ帯域に応じて変化しないように構成されている、請求項2記載のイメージインバータ。
【請求項4】
(i)前記構成要素である各光ファイバは、コア直径を有するコアとクラッド直径を有するクラッドとを含み、前記クラッド直径に対する前記コア直径の比によって、該ファイバについてのコア対クラッド直径比が定められ、かつ(ii)前記構成要素である複数の光ファイバのコア対クラッド直径比がファイバ帯域に応じて変化しないように構成されている、請求項1記載の光ファイババンドル。
【請求項5】
前記コアおよび前記クラッドのうちの少なくとも一方は、高分子材料を含む、請求項4記載の光ファイババンドル。
【請求項6】
画像入力端部と画像出力端部との間でバンドルの中心軸線に沿って長手方向に延在し、かつその長さの一部にわたってねじられており、その結果、画像入力端部に入力された画像が、画像出力端部を通じて出力される前に前記バンドルの中心軸線周りの角変位を生じる、画像を伝達する剛性の光ファイババンドルにおいて、該バンドルは、
融着された構成要素である複数の光ファイバであって、各光ファイバが、画像入力端部と一致する第1の端部と、画像出力端部と一致する第2の端部とを有する光ファイバ
を含み、ここで、該光ファイババンドルの選択された横断面で見た場合に、
(i)前記構成要素である光ファイバのファイバ直径は、前記バンドルの中心軸線からの半径方向の変位に応じて増大すること;および
(ii)前記構成要素である各光ファイバは、該ファイバのファイバ直径と一致するクラッド直径を有するクラッドと、コア直径を有するコアとを含み、前記クラッド直径に対する前記コア直径の比によって、該ファイバについてのコア対クラッド直径比が定められ、かつ前記構成要素である複数の光ファイバのコア対クラッド直径比は、前記バンドルの中心軸線からの半径方向の変位に応じて減少すること
の少なくとも1つが成り立つ、前記光ファイババンドル。
【請求項7】
横断面で見た場合に、前記構成要素である複数の光ファイバのコア対クラッド直径比が、前記バンドルの中心軸線からの半径方向の変位に応じて減少するように構成されている、請求項6記載の光ファイババンドル。
【請求項8】
横断面で見た場合に、前記構成要素である光ファイバのファイバ直径が、前記バンドルの中心軸線からの半径方向の変位に対して一定であるように構成されている、請求項7記載の光ファイババンドル、ただし前記条件(i)は除外する
【請求項9】
横断面で見た場合に、前記構成要素である光ファイバのファイバ直径が、前記バンドルの中心軸線からの半径方向の変位に対して一定であるように構成されている、請求項6記載の光ファイババンドル、ただし前記条件(i)は除外する
【請求項10】
前記コアおよび前記クラッドのうちの少なくとも一方は、高分子材料を含む、請求項9記載の光ファイババンドル。
【請求項11】
前記コアおよび前記クラッドのうちの少なくとも一方は、高分子材料を含む、請求項6記載の光ファイババンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
融着された光ファイバから構成されるバンドルを通じた、画像の、より全般的には電磁波の伝送は、確立された技術である。イメージコンジット、例えばインバータ(すなわちイメージインバータ)、テーパおよび「ストレートスルー」は、光ファイバ技術の当業者に知られている。溶融型光ファイバのイメージコンジットは、非限定的な例として、暗視ゴーグル、ライフルスコープ、X線検出器および医療用撮像装置などの装置における構成部品として幅広く適用されている。
【0002】
上記で挙げた各例の基本的な製造技術は、共通の方法工程を有する。例えば、溶融型光ファイバのイメージコンジットの最も基本的なものは、入力(例えば画像を受ける)端部と出力(例えば画像を出す)端部とを有する1対1の線形コンジットである。入力端部に隣接する物体から反射された光が、画像として入力端部に入射する。この画像がコンジットを通じて伝達されて出力端部から出て、この出力端部から検出装置または人間の目によってその画像が検知される。単純な1対1のコンジットでは、画像は意図的に変更されることなく出力端部から出る。例えば、画像は拡大も縮小もされず、またコンジットの長手軸線周りの角変位を生じることもない。
【0003】
図1Aおよび図1Bに示すように、当技術分野で知られている通り、基本的な1対1のイメージコンジット(図1A)は、インバータ(図1B)の製造における中間製品である。インバータを製造するために、1対1のコンジットを適切な温度に加熱する。次いで、コンジットの一方の端部について、反対側の端部に対してコンジットの長手軸線周りの角変位を生じさせる(すなわち、ねじる)。インバータの場合、一方の端部を、もう一方の端部に対して180度ねじる。適切に制御して実行される場合、この方法によって、入出力の各端部の面の元の構成は維持されているが、一方の端部がもう一方の端部に対して反転されている、というインバータが製造される。それに応じて、画像を受信する端部に入る画像が回転する。なぜならば、この画像が溶融型バンドル内の構成要素であるファイバを通じて伝達され、そして反転された状態で画像を出す端部から出るためである。
【0004】
加熱されたバンドルは、コンジットの一方の端部が反対側の端部に対して長手軸線周りの角変位を生じるようにねじられる。そのため、バンドル内の構成要素であるファイバが長さ方向に延伸されることが容易に理解されよう。さらに、バンドルのうちより周辺部に近いファイバは、より中心部の近くに位置するファイバよりも大幅に延伸される。その結果、より周辺部に近い方のファイバは、より中心部の近くにあるファイバ、特に中心領域におけるファイバよりも、その長さにわたって直径が大幅に減少する。従来の製造方法によれば、バンドルの構成要素であるファイバは断面寸法がすべて同一であり、周辺部のファイバは時として、その効率的な光伝送能力に悪影響が及ぶほどに延伸されて細くなり、それによって、口径食などの望ましくない画像効果が生じることになる。周辺部のファイバが細くなることで画像が劣化するが、これを回避するための1つの方法は、比較的長いバンドル長にわたって所望の角度数にバンドルをねじることである。しかしその結果、バンドルが、目的の環境または用途で使用するには過度に長く、重くかつ扱いにくいものとなる。
【0005】
したがって、比較的短いバンドル長での画像の反転を促進するとともに、従来の溶融型バンドルのイメージインバータに伴う望ましくない周辺部の画像の劣化を防ぐ、溶融型ファイバのバンドル、および該バンドルからインバータを形成する方法が求められている。
【0006】
概要
画像入力端部と画像出力端部との間のバンドルの中心軸線に沿って長手方向に延在する、画像を伝達する光ファイババンドルの例示的な一実施形態。向かい合う画像入力端部と出力端部との間には、互いに融着された構成要素である複数の光ファイバが延在する。構成要素である各光ファイバは、画像入力端部と一致する第1の端部と、画像出力端部と一致する第2の端部とを有する。様々な実施形態において、構成要素である各光ファイバは、画像入力端部と画像出力端部との間で入力画像の微小部分を伝達できる撮像ファイバとして構成されている。さらに、光ファイババンドルはバンドルの中心軸線周りでその長さの一部にわたってねじられており、その結果、画像入力端部に入力された画像は、画像出力端部を通じて出力される前にバンドルの中心軸線周りの角変位を生じている。
【0007】
一般的な従来技術の通り、構成要素である各光ファイバは、光学的な伝送が可能なコアを含み、その周辺には、コラプス処理して溶融させた光クラッドが存在し、これらのコアおよびクラッドが相対的屈折率を有することで、コアを通じた内部全反射による電磁波の伝播が促進される。クラッドが、ファイバ直径に相当するクラッド直径によって定められるのに対して、コアは、コア直径により定められる。このコア直径とクラッド直径との比によって、各ファイバについてのコア対クラッド直径比が定められる。
【0008】
いくつかの変形形態において、構成要素である光ファイバのファイバ直径は、バンドルの中心軸線からの半径方向の変位に応じて増加する。すなわち、バンドルの中心軸線に直交する、バンドルの選択された横断面で見た場合に、バンドルのうち、より外側境界に近い光ファイバは、よりバンドルの中心軸線に近い光ファイバよりも、ファイバ直径が大きい。
【0009】
いくつかの他の各実施形態において、構成要素である光ファイバのコア対クラッド直径比は、バンドルの中心軸線からの半径方向の変位に応じて変化する。すなわち、よりバンドルの中心軸線に近い光ファイバは、バンドルの中心軸線から半径方向により離れた位置にある光ファイバのコア対クラッド直径比と意図的に異なるコア対クラッド直径比を示す。少なくとも1つの変形形態において、バンドルの中心軸線に直交するバンドルの横断面で見た場合に、構成要素である複数の光ファイバのコア対クラッド直径比は、バンドルの中心軸線からの半径方向の変位に応じて減少するように構成されている。さらなる他の特定の変形形態では、コア対クラッド直径比がバンドルの中心軸線に対する半径方向の位置に応じて変化するとともに、あるケースでは、構成要素である光ファイバのファイバ直径がバンドルの中心軸線からの半径方向の変位に対して一定のままとなるように構成されてよく、また他のケースでは、構成要素である光ファイバのファイバ直径がバンドルの中心軸線からの半径方向の変位に応じて変化するように構成されてよい。
【0010】
代表的な実施形態について、以下の詳細な説明および付属の図面においてより完全に記載および図示する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aに、「ストレートスルー」とも呼ばれる、従来技術の線形の溶融型イメージコンジットを示す。
図1B図1Bに、従来技術の、画像を反転させる溶融型光ファイバコンジットを示す。
図2図2に、光ファイババンドル(画像を反転させる光ファイババンドルを含む)の横断面を模式的に示す。これは、ファイバ直径がバンドルの中心軸線からの半径方向の変位に応じて変化する本発明の態様の実施形態である。
図2A図2Aは、本発明により製造される、画像を反転させる光ファイババンドルの側面斜視図である。
図3図3は、画像を反転させる光ファイババンドルであって、ファイバ直径は一定であるが、コア直径がバンドルの中心軸線からの半径方向の変位に応じて変化するものの模式断面図である。
図4図4は、画像を反転させる光ファイババンドルであって、ファイバ直径は一定であるが、コア直径がバンドルの中心軸線からの半径方向の変位に応じて変化する、上記のものとは異なるバンドルの模式断面図である。
【0012】
詳細な説明
様々に実施される窩状(foveal)イメージインバータおよびその製造方法についての以下の説明は、例示であって、本発明またはその使用用途を限定するものではない。それに応じて、概要および詳細な説明に記載された様々な実装形態、態様、変形形態および実施形態は、付属の特許請求の範囲に包含される非限定的な例であって、これにより特許請求の範囲の最も広い範囲が定められるものではない。
【0013】
標準的な溶融型光ファイババンドル(溶融型バンドルイメージインバータの特定のケースを含む)の製造に関連する工程の多くを、本発明の範囲および企図の範囲に包含される光ファイババンドルおよびイメージインバータの製造に適用することができる。これらの工程については、背景(これとともに図1Aおよび図1Bが参照される)に概要を述べた。それに応じて、標準的な溶融型光ファイババンドル(標準的な溶融型バンドルイメージインバータを含む)と、本明細書に付属する特許請求の範囲で定められる本発明の範囲および企図に包含される窩状光ファイババンドルおよびイメージインバータとの根本的な相違を説明する目的で、主に図2を参照する。図1Aおよび図1Bの標準的な光ファイババンドルが、本発明の範囲に包含される実施形態と共通する要素を含む限り、こうした要素が参照されることで、これに関する開示がサポートされ得る。
【0014】
図2に、画像を伝達する剛性の光ファイババンドル10の横断面を模式的に図示する。この光ファイババンドル10は、構成要素である複数の光ファイバ20を含むとともに、画像入力端部16と画像出力端部18との間でバンドルの中心軸線ACBに沿って長さ方向に延在する。各光ファイバ20はコア22およびクラッド24を含み、これらは、ファイバの第1の端部26とファイバの第2の端部28との間に延在する。このファイバの第1の端部26とファイバの第2の端部28とはそれぞれ、光ファイババンドル10の画像入力端部26と画像出力端部28とに一致する。
【0015】
様々な態様において、コア22およびクラッド24は、光学的な伝送が可能である屈折率の異なる材料を含んでおり、それによって、当技術分野で知られている通り内部反射が促進される。その他の変形形態では、コア22およびクラッド24のうちの少なくとも一方は、ガラスを含む。しかし、コア22およびクラッド24のうちの少なくとも一方が高分子材料(例えばプラスチック)を含む実施形態も、本発明の範囲および企図に包含される。他の、コア22およびクラッド24のうちの少なくとも一方がポリマーから製造される変法においては、各光ファイバ20のクラッド24とコア22とを、例えばガラスファイバの典型である熱溶融や光学用エポキシなどの他の手段によって、互いに結合または「融合」させることができる。他の類似の手段によって、光ファイババンドル10内の複数の光ファイバ20を互いに結合させてもよい。さらに別の変形形態では、ガラスおよびポリマーのうちの少なくとも一方を含む各光ファイバ20を、クラッド24の形成材料とは無関係のマトリックス30によって、光ファイババンドル10全体の中で該各ファイバの各位置に保持することもできる。マトリックス30は、例えばポリマー、ガラスおよび/または光学用エポキシを含み得る。
【0016】
模式断面図が考慮されるため、光ファイババンドル10は、ストレートスルーであってもイメージインバータであってもよいことが容易に理解されよう。なぜならば、これらの種類の溶融型バンドルの平面断面は、区別がつかない場合があるためである。さらに、図2の光ファイババンドル10の構成要素である光ファイバ20は六角形状に充填されてはいるが、本発明の包括的な概念には、非限定的な例として、円形/円柱形、正方形、長方形など他の多数のファイバ充填配列が包含されること、そして、この充填配列が新規性の中心的役割を担うわけではないことが理解されるべきである。構成要素である光ファイバ20自体の断面形状についても、同様のことが該当する。実際には、少なくとも1つの実施形態では、円形/円柱形、正方形、長方形、六角形などに加えて五角形のファイバ20の使用が想定され、これによって、バンドル10内の各光ファイバ20の間に介在性のEMA(extramural absorption)ファイバを含めることが、ある程度可能となる。それに応じて、そして重要なことは、光ファイバ20もバンドル10も様々な断面形状であってよいため、「直径」という用語が用いられても、それは円形の断面形状が示唆されていることにはならない、ということである。より具体的には「直径」とはしばしば、狭義には円を画定する曲線内に嵌まり得る最長の弦のことであるが、その用語のより技術的かつ数学的な定義を本明細書および付属の特許請求の範囲に適用することができる。例えば、正方形、長方形、六角形、さらには不規則な形における弦も直径である。それに応じて、上記の説明、詳細な説明、付属の特許請求の範囲または図面のいずれにおいても、「直径」という用語は、考えられる一般的な語法や技術的かつ数学的な語法よりも狭義なものと解釈されるべきではない。さらに、「半径」とは、いずれの場合にも、特に明記されない限り所与の直径の長さの半分である。
【0017】
本発明の概念の典型例は、光ファイババンドル10に、バンドルの中心軸線ACB周りに同心円状に配列された複数のファイバ帯域Z1~Zxを含めることであり、ここで、Z1は、バンドルの中心軸線ACBの最も近くに位置しかつ/またはバンドルの中心軸線ACBを含むファイバ帯域であり、Zxは、「最も外側の」ファイバ帯域である(すなわち、このファイバ帯域は、バンドルの中心軸線ACBから半径方向に最も離れている)。さらに、ファイバ帯域Z1~Zxを光ファイバ20が占めており、該ファイバ20のファイバ直径DFは、帯域によって異なる。さらに具体的に言えば、第1のファイバ帯域Z1内の構成要素である光ファイバ20の全ファイバ直径の平均DFは、この第1のファイバ帯域よりもACBから半径方向に離れている各ファイバ帯域内の構成要素である光ファイバ20の全ファイバ直径の平均DFよりも小さい。さらに総じて、各ファイバ帯域内の光ファイバ20の全ファイバ直径の平均DFは、該ファイバ帯域よりもバンドルの中心軸線ACBに近い各ファイバ帯域内の光ファイバ20の全ファイバ直径の平均DFよりも大きく、また該ファイバ帯域よりもバンドルの中心軸線ACBから半径方向に離れている各ファイバ帯域内の光ファイバ20の全ファイバ直径の平均DFよりも小さい。
【0018】
非限定的な具体例として、図2に図示した光ファイババンドル10は、Z1、Z2、Z3およびZ4(この場合x=4である)として参照される4つの「ファイバ帯域」を含む。ファイバ帯域Z1(最も内側の「中心帯域」)は、最小のファイバ直径DF(例えば2.0ミクロン~3.0ミクロン)を有する光ファイバ20を含む。このファイバ帯域Z1の周りに同心円状に配列されている最初の帯域がファイバ帯域Z2であり、このファイバ帯域Z2は、ファイバ帯域Z1の光ファイバ20よりもファイバ直径DFがわずかに大きい(例えば3.0ミクロン~6.0ミクロン)光ファイバ20を含む。このファイバ帯域Z2の周りに同心円状に配列されているのがファイバ帯域Z3であり、このファイバ帯域Z3は、ファイバ直径DFがさらに大きい(例えば6.0ミクロン~10.0ミクロン)光ファイバ20から構成される。このファイバ帯域Z3の周りに同心円状に配列されているのが、最も外側の帯域であるファイバ帯域Z4であり、このファイバ帯域Z4は、全ファイバ直径DFがバンドル10内で最も大きい(例えば10.0ミクロン~12.0ミクロン)光ファイバ20を含む。
【0019】
さらに、図2の断面図に関して、特に構成要素である光ファイバ20の拡大図に関して、各光ファイバ20は、該ファイバがファイバ帯域Z1~Zxのいずれに属していても、コア直径Dcoreを有するコア22と、クラッド直径Dcladを有するクラッドとを有する。少なくともいくつかの実施形態において、該当するクラッド24の「外径」はクラッド直径Dcladと表されるため、このクラッド直径Dcladを、様々な態様においてファイバ直径DFと同義と見ることができる。いずれの場合も、ファイバ直径DF自体は、ファイバ帯域Zおよびバンドル半径RBに応じて増加するが、様々な実施形態では、Dcore/Dcladとして定められるコア対クラッド直径比Rccがファイバ帯域Z1~Zx全体で一定に保たれるように構成される。
【0020】
コア対クラッド直径比Rccを概念的に説明するもう1つの方法は、構成要素である光ファイバ20のコア22とクラッド24とのそれぞれが表す該光ファイバの断面積に関するものである。例えば、クラッド直径Dcladが同一である第1の光ファイバ20と第2の光ファイバ20とについて考えることにする。第1の光ファイバ20のコア直径Dcoreが、第2の光ファイバ20のコア直径Dcoreよりも小さい場合、第1の光ファイバ20のコア対クラッド直径比Rccは、第2の光ファイバ20に比べて小さい。別の観点で表すと、所与のクラッド直径Dcladの光ファイバ20について、コア直径Dcoreが増加するということは、コア22が光ファイバ20の全断面積に対するパーセンテージの増加を示し、かつそれに応じてクラッド24が光ファイバ20の断面積に対するパーセンテージの減少を示すことに相当する。
【0021】
出力画像が入力画像に対して角変位する光ファイババンドル10の形成に関して、図2および図2Aのような各光ファイバ20の配列によりファイババンドル10を形成することで、「ねじれ率」が大きくなることが理解されよう。なぜならば、ファイバ帯域内の比較的直径が大きい光ファイバ20は、バンドルの中心軸線ACBから比較的離れているが、こうした光ファイバ20は、ねじる際に最も延伸されはするものの、こうしたファイバの光伝送能力に悪影響が及ぶほどにファイバ直径DFが小さくなるまで、該ファイバが細くなることがないためである。この解決手段によって「ねじれ率」をさらに大きくすることができるため、画像を反転させる光ファイババンドル10の全長をはるかに短くすることが可能となる。さらに、反転画像の解像度をバンドル直径DBにわたって一定にし、解像度がバンドルの中心軸線ACBからの半径方向の変位に応じて大幅に低下しないようにすることができる。
【0022】
他の一構成によれば、ファイバ直径DFがファイバ帯域Z1~Zx全体で一定に保たれるのに対して、コア対クラッド直径比Rccはファイバ帯域Zに応じて変化する。一変形形態においては、最も内側の第1のファイバ帯域Z1は、比較的高いコア対クラッド直径比Rccを有する光ファイバ20を含み、最も外側の第3のファイバ帯域Z3は、比較的低いコア対クラッド直径比Rccを有する光ファイバ20を含み、少なくとも1つの中間の第2のファイバ帯域Z2は、最も内側のファイバ帯域Z1と最も外側のファイバ帯域Z3との間に位置するとともに、第1のファイバ帯域Z1のコア対クラッド直径比Rccと、第3のファイバ帯域Z3のコア対クラッド直径比Rccとの間のコア対クラッド直径比Rccを有する光ファイバ20を含む。いくつかのこうした変形形態では、各ファイバ帯域Z内の光ファイバ20は、均一な仕様にしたがって、帯域Z全体にわたってコア対クラッド直径比Rccが同一となるように構成される。しかし他の変法では、少なくとも1つのファイバ帯域Z内に、コア対クラッド直径比Rccが異なる光ファイバ20が混在している。以下に、ファイバ帯域Z全体でコア対クラッド直径比Rccが可変であるバンドル10の他の2つの構成例について、図3および図4に示す模式的に表されたバンドル断面を併せて参照して、より詳細に論じる。
【0023】
ここで図3を参照すると、この図3には、全体として、第1のファイバ帯域Z1、第2のファイバ帯域Z2および第3のファイバ帯域Z3に位置する構成要素である複数の光ファイバ20を含む、画像を伝達する剛性の光ファイババンドル10の横断面を示す。各ファイバ帯域Z1、Z2およびZ3内ではコア対クラッド直径比Rccは一定であるが、このRccは、各ファイバ帯域Z間では異なる。より具体的には、第1のファイバ帯域Z1、第2のファイバ帯域Z2および第3のファイバ帯域Z3内では、コア対クラッド直径比Rccは、それぞれRcc1、Rcc2およびRcc3である。この特定のケースでは、ファイバ直径DFは、バンドル10全体にわたって一定である。すなわち、クラッド直径Dcladは、第1のファイバ帯域Z1、第2のファイバ帯域Z2および第3のファイバ帯域Z3の間では一定であるため、コア対クラッド直径比Rcc1、Rcc2およびRcc3における差異は、第1のファイバ帯域Z1、第2のファイバ帯域Z2および第3のファイバ帯域Z3の間でのコア直径Dcoreの差異に起因する。より具体的には、おおむね図3に示す通り、特定の縮尺に厳密に拘束されるものではないが、第1のファイバ帯域Z1における光ファイバ20のコア22は、最大のコア直径Dcoreで構成されており、第2のファイバ帯域Z2における光ファイバ20のコア22は、二番目に大きいコア直径Dcoreを有し、かつ第3のファイバ帯域Z3における光ファイバ20のコア22は、最小のコア直径Dcoreを有する。すべてのファイバ帯域Zにわたってクラッド直径Dcladが一定であると仮定した場合、Rcc1>Rcc2>Rcc3が成り立ち、これは図3に示されている。
【0024】
図4を参照すると、この図4には、コア対クラッド直径比Rccが異なる一実施形態の他の変法を簡潔に示す。本発明の全体の範囲および企図において多くの置換が可能であるが、図4の考察を通じて、より広い包括的概念をより単純化した形で示した。図3の実例と同様に、図4の例は、全体として、第1のファイバ帯域Z1、第2のファイバ帯域Z2および第3のファイバ帯域Z3を含む。さらに、図3の例と同様に、本例を扱いやすくかつ単純なままとするため、クラッド直径Dcladを、第1のファイバ帯域Z1、第2のファイバ帯域Z2および第3のファイバ帯域Z3全体で一定とする。そのため、各光ファイバ20間でのコア対クラッド直径比Rccの差異は、各コア直径Dcore間の差異に起因する。
【0025】
図4の例と図3の例との重要な相違点は、図4の例では、少なくとも1つの中間帯域(例えばこのケースではファイバ帯域Z2)内のコア対クラッド直径比Rccに、意図的に差異がつけられているという点にある。各ファイバ帯域Z内またはある程度の半径に応じた勾配にわたってコア対クラッド直径比Rccにある程度の差異がある場合もあるが、話を簡単にするために、ファイバ帯域Z2内のみの差異を考えることにする。第1のファイバ帯域Z1は、第1のコア対クラッド直径比Rcc1を有する光ファイバ20のみを含み、第3のファイバ帯域Z3は、第1のコア対クラッド直径比Rcc1よりも小さい第3のコア対クラッド直径比Rcc3を有する光ファイバ20のみを含み、第2のファイバ帯域Z2には、複数のコア対クラッド直径比Rccが混在している。この特定のケースでは、「Z2における変数Rcc」と表示された括弧のすぐ上に例示された3つファイバ断面で示される通り、ファイバ帯域Z2内には、第1のコア対クラッド直径比Rcc1、第2のコア対クラッド直径比Rcc2および第3のコア対クラッド直径比Rcc3を特徴とする複数の光ファイバ20が存在する。前述の通り、この構成では、第2のコア対クラッド直径比Rcc2が第2のファイバ帯域Z2に固有のものであるのに対して、第1のファイバ帯域Z1はすべて第1のコア対クラッド直径比Rcc1の光ファイバ20で占められており、第3のファイバ帯域Z3はすべて第3のコア対クラッド直径比Rcc3の光ファイバ20で占められている。
【0026】
特定の実施形態の第2のファイバ帯域Z2が、この第2のファイバ帯域Z2に固有の第2のコア対クラッド直径比Rcc2のファイバ20を含むか否かにかかわらず、第1のコア対クラッド直径比Rcc1と第3のコア対クラッド直径比Rcc3との双方を示す光ファイバ20の混合体を第2のファイバ帯域Z2内に含ませることによって、第1のファイバ帯域Z1のファイバ20と第3のファイバ帯域Z3のファイバ20との間の移行がよりスムーズで目立ちにくいものとなる。第2のファイバ帯域Z2には、コア対クラッド直径比Rccが異なる各光ファイバ20をランダムに分配してもよいし、十分に規則的に分配してもよい。少なくとも1つの構成において、第1のコア対クラッド直径比Rcc1の光ファイバ20の第2のファイバ帯域Z2への包含は、第1のファイバ帯域Z1に近いほどより密であり、一方で第3のコア対クラッド直径比Rcc3の光ファイバ20の第2のファイバ帯域Z2への包含は、第3のファイバ帯域Z3に近いほどより密であり、それによって、バンドル10内での異なるコア対クラッド直径比Rccの、ある種の半径方向に応じた包含の勾配が定められる。各ファイバ帯域Zの間での視認可能な「段差」を回避することに加えて、コア対クラッド直径比Rccが異なる各光ファイバ20を、半径方向の勾配にしたがってバンドル10の断面全体に様々な密度で包含させることによって、加熱工程、延伸工程およびねじり工程や、異なるファイバ種に対して熱膨張の効果が異なることに伴って生じる構造応力が緩和される。
【0027】
各ファイバ帯域Z内であってもコア対クラッド直径比Rccの差異が想定されるため、いずれかの特定のファイバ帯域Z内のコア対クラッド直径比Rccを、その帯域に適用できる平均コア対クラッド直径比Rccの典型例として概念化することが有用であると考えられ、その平均は、いずれのファイバ帯域Zにおいても、バンドルの中心軸線ACBからの半径方向の変位に伴って低下する。この概念化にしたがって、図4に、「平均Rcc1>平均Rcc2>平均Rcc3」であることを示す。微積分法の積分と同様に、環状のファイバ帯域Zの数がきわめて大きくなり、かつ各ファイバ帯域Zの環状の厚さがきわめて小さくなるにつれて、個々のファイバ帯域Zの呼称はより自由裁量に任されたものとなり、また半径方向に応じた勾配状のファイバの包含がますます「スムーズ」なものとなる。
【0028】
前述のこと以外に、所与のいずれの構成の範囲においても、全ファイバ直径DFの差異とコア対クラッド直径比Rccの差異とは、互いに排他的なものではないことが理解されるべきである。より具体的には、ここまでの説明では、ファイバ直径DFがバンドルの中心軸線ACBからの半径方向の変位に応じて変化し、コア対クラッド直径比Rccがバンドル10全体で一定であるというある択一的な構成と、ファイバ直径DFがバンドル10全体で一定であり、コア対クラッド直径比Rccがバンドルの中心軸線ACBからの半径方向の変位に応じて変化するという択一的な構成とについて考えてきたが、ファイバ直径DFとコア対クラッド直径比Rccとの双方がバンドルの中心軸線ACBからの半径方向の変位に応じて変化するというバンドル構成も、本発明の範囲および企図に明示的に包含される。
【0029】
前述の記載は、本発明の原理の例示と考えられるべきである。さらに、当業者であれば、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、種々な態様および実装形態に対する修正および変更を行うものと考えられるため、前述の記載は、付属の特許請求の範囲に記載される本発明を、図示および記載された通りの構造、実装形態および変形形態に限定するものではないことが理解されるべきである。
図1A
図1B
図2
図2A
図3
図4