(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】充填製品充填プラントにおいて流体媒体を気化させるための装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20230106BHJP
F17C 9/02 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
A61L2/20 106
F17C9/02
(21)【出願番号】P 2018563608
(86)(22)【出願日】2017-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2017074772
(87)【国際公開番号】W WO2018060422
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-08-03
(31)【優先権主張番号】102016118475.6
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508120916
【氏名又は名称】クロネス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ゼルナー ユルゲン
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-065882(JP,A)
【文献】特開平09-294805(JP,A)
【文献】米国特許第05112442(US,A)
【文献】特表2014-531258(JP,A)
【文献】特開平10-118171(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0050503(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/20
F17C 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填製品充填プラントにおいて流体媒体を気化させるための装置(1)であって、傾斜気化器面(40)と、気化させる前記流体媒体を前記気化器面(40)に適用するための媒体供給管路(5)と、前記流体媒体を伝導するための前記気化器面(40)における
複数の溝(44)とを備えており、前記気化器面(40)に沿
って螺旋形態でかつ互いに交わることなく延在する前記複数の溝(44)は前記気化器面(40)の最上部領域から最下部領域まで延在していることを特徴とする、装置(1)。
【請求項2】
前記気化器面(40)は気化器ハウジング(3)に収容されており、前記気化器ハウジング(3)の内壁の輪郭は、少なくとも前記傾斜気化器面(40)の領域において、前記気化器面(40)の前記輪郭にほぼ追従することを特徴とする、請求項
1に記載の装置(1)。
【請求項3】
キャリアガスを前記気化器面(40)上に伝導するキャリアガス供給管路(60)が設けられていることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記キャリアガス供給管路(60)は、円錐形及び/又は角錐形の、及び/又はコノイド状の前記気化器面(40)の周囲に配置され、前記キャリアガスをキャリアガス放出口(602)によって前記気化器面(40)上に出力する、キャリアガス流路(600)を備えることを特徴とする、請求項
3に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記気化器面(40)は円錐形及び/又はコノイド状及び/又は角錐形の気化器本体(4)によって形成されることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記媒体供給管路(5)から流れる前記流体媒体を前記気化器面(40)の周囲に均一に分配するとき、前記気化器面(40)の上部領域はドーム形設計を有する媒体分配装置が上方向に隣接していることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記媒体分配装置は、前記媒体供給管路(5)によって前記流体媒体が適用されるドーム(42)を有することを特徴とする、請求項
6に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記媒体供給管路(5)から流れる前記流体媒体を前記気化器面(40)の周囲に均一に分配するとき、流体媒体を収容するための樋状部が前記ドーム(42)と前記気化器面(40)との間に配設されており、前記気化器面(40)に沿って延在する前記溝(44)は前記樋状部と流体連通していることを特徴とする、請求項
7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記気化器面(40)の作業温度を超える沸騰温度を有する加熱媒体により動作するように構成された、前記気化器面(40)の加熱装置を設けていることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記媒体供給管路(5)は一定の断面の管によって形成されることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば飲料充填プラントにおいて消毒媒体を気化させて、充填製品と接触する飲料充填プラントの領域を消毒する消毒ガスを供給するための、充填製品充填プラントにおいて流体媒体を気化させるための装置に関する。本装置は例えば、飲料充填プラントにおける消毒工程で使用するための過酸化水素を気化させるために役立つ。
【背景技術】
【0002】
流体媒体を気化させるための様々な形式及び形態の気化器が知られている。これらは例えば、製品と接触するプラント構成要素の消毒のための過酸化水素ガスを供給するために飲料充填プラントにおいて使用できる。気化器は通常、加熱した気化器面を有しており、その上に、いまだ流体である気化させる媒体が噴霧される。流体媒体はその後、気化器面で気化する。気化器面は、例えば高温蒸気によって、又は電気加熱ロッドによって加熱されて、気化させる流体媒体の沸騰温度を超える所要の温度を気化器面にもたらす。
【0003】
例えば、特許文献1からは、気化器の傾斜気化器面上に噴霧される過酸化水素水溶液を気化させて、過酸化水素溶液の気化を可能にする気化器が知られている。気化器面は、環境から気化器面を閉鎖する箱形ハウジングによって画成される気化器室に配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特許出願公開第2005/065882号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既知の技術的現状から進めて、本発明の目的は、装置の信頼できる設計とともに高水準の気化性能を可能にする、流体媒体を気化させるための装置を提起することである。
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を備えた装置によって達成される。有利な更なる開発成果は従属請求項、図面及び本明細書から生まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、充填製品充填プラントにおいて流体媒体を気化させるための装置であって、傾斜気化器面と、気化させる流体媒体を気化器面に適用するための媒体供給管路と、流体媒体を伝導するための気化器面における溝とを備える装置を提起する。本発明によれば、気化器面に沿った溝は非直線状設計を有する。
【0008】
気化させる流体媒体を伝導するために気化器面に設けられている溝が非直線状設計を有するという事実によって、気化させる流体媒体はこれらの溝に沿って気化器面上でより緩徐に流動でき、それにより気化させる流体媒体の均一な分配が気化器面においてもたらされ得る。従って、気化器面は、気化器面全体にわたって、気化させる流体媒体を一様に当てられ得る。それゆえに、全気化性能は、より大きな有効気化器面の結果として増大し得る。
【0009】
さらに、溝の設計によって、気化させる流体媒体を気化器面に適用するために噴霧ノズルを使用する必要がない。代わりに、媒体はただ単に媒体供給管路によって気化器面に適用され、溝によって均一に分配され得る。噴霧ノズルがないことにより、噴霧ノズルの閉塞がまったく起きないことになり、結果として、特に信頼でき低保守の装置が提起できる。
【0010】
溝の「非直線状設計」とは、詳しくは、適用可能な気化器面の溝がそれらの全長にわたり直線状に延在しないことを意味するものと理解しなければならない。代わりに、それらは方向の変化を受ける。これは例えば、湾曲を伴う溝、螺旋状の溝、急激な方向の変化を伴うジグザク状の溝及び、適用可能な気化器面上で直線状に延在しない他の溝形状によって達成できる。溝は特に、気化器面に沿って螺旋及び/又は湾曲及び/又は屈曲形態で延在し得る。
【0011】
このように溝の形状の設計によって、気化させる流体媒体を誘導された様態で気化器面で分配することが達成でき、それにより気化させる媒体による気化器面のほぼ完全な濡れが保証され、それによって高水準の気化性能が実現する。
【0012】
上述の目的はさらに、請求項4の特徴を備えた装置によっても達成される。有利な更なる開発成果は従属請求項、図面及び本明細書から生まれる。
【0013】
従って、傾斜気化器面と、気化させる流体媒体を気化器面に供給するための媒体供給管路とを備えており、気化器面は気化器ハウジングに収容されている、充填製品充填プラントにおいて流体媒体を気化させるための装置を提起する。本発明によれば、気化器ハウジングの内壁の輪郭は、少なくとも傾斜気化器面の領域において、気化器面の輪郭にほぼ追従する
【0014】
このように、気化器面及び気化器ハウジングはともに気化器室を形成し、気化が生じる容積は気化器面と気化器ハウジングの内面との間の空隙によって画成される。面が互いに平行に延びるという事実によって、ほぼ一定の間隔による流路形状の構造が形成される。従って少なくとも、気化器ハウジングが気化器面に対向しその輪郭に追従している領域において、気化器室の断面は形態がほぼ環状である。
【0015】
このようにして、気化器室の容積は制御できる。すなわち、気化器室の設計が、それゆえ気化器室の容積が小さくとどまるように、十分に低く保つことができる。これは特に圧力機器指令97/23/ECの規定に関して重要であって、なぜなら、圧力と容積の積(すなわち圧力室の容積と容器の圧力定格との積)が50未満である場合、圧力容器は最終評価を受けなくてよいからである。気化器室の容積を低く保つことができれば、最終評価を受けなくてよい低保守の気化器を提供することがこれによって可能である。これはプラントの費用及び効率両方の理由で有利である。
【0016】
気化器面は好ましくは、円錐形、角錐形又はコノイド状、又は別様に凸状の気化器本体に設けられる。気化器本体は特に円錐台としても設計でき、その上面で、媒体供給管路から流れた気化させる流体媒体は、個々の溝に、さらに全体として気化器面上に分配される。
【0017】
気化器ハウジングの内部輪郭が気化器面のそれに追従する場合、環状空隙だけが、又は円錐の表面の形状の空隙が気化器面と気化器ハウジングの内面との間に形成される。この空隙に沿って、キャリアガス(すなわちキャリア空気)は気化器面にわたって流動できる。流体媒体の気化に起因して生じ得る高圧力時でさえ、圧力と容積の積は制御し続けることができ、それにより圧力機器指令に指定された限界値を気化器内部で上回ることがなく、従って、効率的で低保守の装置が提供され得る。
【0018】
好ましくは、気化器面の上部領域には、好ましくはドーム形設計を有する媒体分配装置が上方向に隣接している。特に好ましくは、媒体分配装置はドームを有しており、そこに流体媒体が媒体供給管路によって適用される。更なる開発成果において、流体媒体を収容するための樋状部がドームと気化器面との間に配設されており、特に好ましくは気化器面に沿って延在する溝は樋状部と流体連通している。
【0019】
気化器本体が円錐又は円錐台の形状である場合、気化器面に沿って延在する溝は好ましくは、円錐の軸に沿って見て、形態が螺旋である。
【0020】
媒体供給管路が好ましくは設けられ、それにより気化させる流体媒体は傾斜気化器面に、一例では傾斜気化器面の最上部領域に供給されることが可能になる。溝のために、媒体の供給は、気化させる流体媒体の気化器面上への分配が非直線状の溝によって行われるので、噴霧ノズルを用いずに行うことが可能である。
【0021】
また、気化器面への媒体の噴霧が省けるという事実によって、従来の気化器において知られるような噴霧ノズルの閉塞に起因する混乱も回避できる。代わりに、例えば所定の断面の管の形態による媒体供給管路によって、気化させる流体媒体は、媒体供給管の断面のいかなる変更も伴うことなく、気化器面の頂点、又は最上部領域に適用できる。
【0022】
媒体を供給するための管の断面は好ましくは、気化させる流体媒体がやはり装置によって直接気化可能な量で不断に供給され得るように選択される。言い換えると、供給される媒体は直ちに気化し、媒体供給管路は連続的に動作できる。
【0023】
キャリアガスは好ましくは、キャリアガス供給管路によって気化器室に供給され、その後、気化した媒体で濃縮されたキャリアガスを放出するためのガス放出口によって気化器室から放出される。
【0024】
好ましい実施形態において、キャリアガス供給管路は、キャリアガスを衝撃により気化器面に誘導し、このようにしてさらに効率的な気化を促進するように構成されている。気化器面の周辺又はその上でのキャリアガスの流れによって、気化した流体媒体はキャリアガスとともに効率的に搬送され得る。
【0025】
キャリアガスの供給は好ましくは、気化した媒体を効率的に搬送するために、気化器面に沿って乱れた渦を巻く流れが生成されるようにノズルによって気化器室に吹き込まれ得る。
【0026】
更なる好ましい実施形態において、キャリアガス供給管路は、円錐形及び/又は角錐形の、及び/又はコノイド状の気化器面の周囲に配置されキャリアガスをキャリアガス放出口によって気化器面上に出力する、キャリアガス流路を備える。この手段によって、気化器面にわたりキャリアガスの一様な流れが実現でき、その結果、気化器面全体の効率的な利用が達成される。
【0027】
好ましくは、気化装置の更なる実施形態において、キャリアガス(すなわち気化した流体媒体により濃縮される空気)の吹き込みは、複数の供給開口又は供給スロットによって実行され、それによってキャリアガスによる気化器面のほぼ均一な衝突が実現される。このようにして、気化の効率が増大できると同時に、気化した流体媒体が確実且つ一様に搬送されることが保証され得る。
【0028】
気化器面に沿ったガス流は好ましくは、気化生成物の搬送及び/又は、キャリアガスへの気化した流体媒体の混入を助けるために、乱流となるように設計される。しかしまた、エネルギー効率の理由で、気化室内部に存在する抵抗を低減するために、流れは層流となるように設計してもよい。
【0029】
更なる好ましい実施形態において、気化器面の作業温度を超える沸騰温度を有する加熱媒体により動作するように構成された、気化器面の加熱装置が設けられる。この加熱装置の設計によって、装置が圧力機器指令に起因する更なる規制を受けることなく加熱を行い得る。効率的な加熱媒体としては、低圧で気化器本体に供給可能な、例えばサーマルオイルを使用することが可能である。
【0030】
本発明の好ましい更なる実施形態は、図面の以下の説明によって、より完全に解説される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】過酸化水素水溶液の形態での流体媒体を気化させるための装置の略断面図である。
【
図3】気化器室を通過する気流を略示した、
図1及び2の装置の略断面図である。
【
図4】更なる実施形態における流体媒体を気化させるための装置の略部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好ましい実施形態の実施例を、図を用いて以下に説明する。図中、同一又は類似であるか、又は同一の効果を有する要素は、同一の参照符号により示されている。冗長を避けるために、これらの要素の繰り返しとなる説明は、以下の説明では部分的に省略する。
【0033】
図1から3は、流体媒体を気化させるための装置1の略図を表示す。流体媒体として、例えば過酸化水素35%水溶液は、装置1において気化して、キャリアガス(例えば空気)を濃縮するために使用される。気化した流体媒体で濃縮された後、キャリアガスは例えばその後、充填製品充填プラントにおいて消毒工程において使用されて、例えばプラントの予定された消毒を実行するか、又は改装又は休止時間後にプラントを衛生的に許容できる状態に回復させ、それにより充填製品(例えば飲料又は別の食品)の次の充填を衛生的に許容できる様態で行い得る。
【0034】
流体媒体を気化させるための装置1は、気化器ハウジング3によって画成される気化器室2を備える。気化器ハウジング3において、それゆえ気化器室2には、気化器面40を形成する気化器本体4が設けられている。気化器面40は傾斜した配向を有しており、そのため、適用された流体媒体は基本的に下方に流れる。
【0035】
気化させる流体媒体は、媒体供給管路5を通じて気化器本体4の気化器面40に適用され、従って気化器面40で気化し、それにより気化した媒体が気化器室2に入る。
【0036】
気化器面40で気化し気化器室2に存在している気化した媒体を搬送し、その後例えば消毒のために充填製品充填プラントにおいて使用することが可能となるために、キャリアガスがキャリアガス供給管路60によって気化器室2に導入される。キャリアガスはその後、気化器面40で気化した媒体とともに、ガス放出口62を通じて放出される。これによってガス放出口62は、気化した媒体をキャリアガスとともに以降の処理ステップに移すのに役立つ。キャリアガスは例えば空気であってよい。
【0037】
図示された例示実施形態において、気化器本体4はほぼ円錐形設計を有する。従って、気化器面40は円錐の表面の形態で設計されている。気化器本体4の円錐形設計により、相対的に小さい底部領域において相対的に大きい気化器面40を設けることが可能になり、従って凹部がなく清掃が容易な装置1の装備が可能になる。
【0038】
図示された例示実施形態において過酸化水素溶液を気化器面40に適用するための供給管の形態で設計されている媒体供給管路5によって供給される流体媒体は、気化器本体4の上部領域に設けられ、媒体供給管路5から流れる媒体を気化器面40の周囲に均一に分配するドーム42によって、気化器面40上に一様に流れることが可能になる。
【0039】
この目的で、ドーム42と気化器面40との間に樋状部が配設されている。樋状部は、流体媒体をあふれるまで保持し、それにより気化器面40での流体媒体の均一な分配に、特に周囲での均一な分配につながる。
【0040】
加えて、気化器面40には溝44が設けられている。気化させる媒体はこれらに沿って伝導され、それによって気化器面40に分配され得る。気化器本体4の気化器面40に配設された溝44は、気化器面に非直線様態で、すなわち、例えば
図2で特に良好に見られるように、湾曲又は屈曲して配置される。溝44は特に好ましくは樋状部と流体連通しており、そして好ましい更なる開発成果では、それらは樋状部から発する。
【0041】
図1から3に図示された特定の実施形態において、溝44は気化器面40の螺旋形部分に配置される。溝44の非直線状、特に螺旋状配置により、流体でありまだ気化していない媒体の気化器面40全体にわたる効率的な搬送が可能になる。同時に、螺旋状設計により、流体でありまだ気化していない媒体がすぐに下方に流れ、単に下部領域で回収されるのを防ぐ。代わりに、溝44の非直線状、すなわち螺旋状設計によって、流体でありまだ気化していない(しかし依然として気化されるはずの)媒体がより緩徐に流れ、それ自体気化器面40にわたり一様に拡がることが達成できる。従って、気化器面40の全表面積が一様に且つ連続的に流体媒体を衝突させられ得ることから、気化させる流体媒体の特に効率的な気化を実現することが可能である。
【0042】
特に好ましくは、溝44は気化器面40の最上部領域から最下部領域まで延在しており、それにより気化器面40全体にわたる流体媒体の均一な分配が達成できる。
【0043】
図示された例示実施形態において、媒体供給管路5は管の形態で設計されており、まったく先細りされておらず、その放出口端50にはノズルもない。言い換えると、気化させる流体媒体は、気化器本体4のドーム42上に直接流れ、ドーム42によって気化器面40で分配されるだけである。このように、媒体供給管路5は、気化させる媒体を噴霧するためのノズルを備えていない。それゆえ、気化させる媒体を供給するためのノズルの詰まり又は閉塞がまったく起こらず、さらに当該ノズルを再調整する必要がまったくないという事実によって、信頼できる運転及び、装置1内部の媒体供給管路5の要求される保守の削減を実現することが可能である。
【0044】
気化器本体4は加熱回路を有しており、それは円錐形気化器本体4内部に中心孔の形態の加熱媒体供給管路70を備える。気化器本体4には複数の孔の形態で加熱媒体戻り管路72が設けられており、それらは気化器面40と平行に加熱媒体供給管路70の上部領域から径方向に延在している。従って、加熱媒体は、気化器本体4の中心を通り加熱媒体供給管路70によって上方に移送された後、気化器本体4内部で気化器面40に沿って加熱媒体戻り管路72によって移送されて戻り、それにより熱が気化器本体4内部で気化器面40に一様且つ効率的に伝達され得る。気化器本体4の下端で、気化器面40と平行に延在する孔の形態の加熱媒体戻り管路72は、引き続き加熱媒体を外部熱交換器に移送して戻すための戻り流路74に流入する。
【0045】
使用される加熱媒体は好ましくは、装置1の作業温度よりも上の、すなわち気化器面40の所要の作業温度を超える沸騰温度を有する。図示された実施形態では、この目的で、その沸騰温度が気化器面40の作業温度を著しく超えるサーマルオイルを使用することが好ましい。このようにして、戻り流路74とともに、加熱媒体供給管路70及び加熱媒体戻り管路72による加熱回路は、低圧で動作することができ、加熱回路内部での加熱媒体の気化による圧力ピークの発生は回避できる。このようにして、気化器面40の加熱は特に問題なく行い得る。
【0046】
気化器面40の作業温度を超える沸騰温度のサーマルオイル又は別の熱伝達媒体による上述したような気化器本体4の加熱の代替策として、気化器本体4及び、特に気化器面40はまた、電気加熱ロッド又は既知の別の方法で加熱して、高水準の操業安全性を提供すると同時に、他方で気化器面40の信頼できる均一な加熱を実現できる。
【0047】
媒体供給管路5によって、特に媒体供給管路5の放出口端50によって供給されたが、気化器面40で気化しない流体媒体の部分は、気化器室2の下部領域に配設されている媒体放出口52によって定期的に又は必要に応じて気化器室2から排出され、これによって除去できる。
【0048】
例えば
図3の図示からわかるように、キャリアガスはキャリアガス供給管路60によって気化器室2に吹き込まれる。キャリアガス供給管路60は偏向領域64を有しており、それによってキャリアガスは、例えば
図3で気化器室2内部に略示された矢線によって示されたように、気化器本体4の気化器面40上に直接吹きつけられ得る。このようにして、キャリアガス供給管路60によって供給されたキャリアガスの流れが渦を巻いた乱流として気化器面40に衝突し、気化した流体媒体の効率的な搬送をこのようにして可能にすることが実現できる。
【0049】
乱流の発生は気化器本体4の気化器面40に設けられた溝44によってさらに助けられ、それにより多層且つ多様な渦巻き運動に起因して、気化の生成物の特に効率的な搬送も溝44において実現される。
【0050】
図4の略部分断面斜視図に示された代替実施形態において、流体媒体を気化させるための装置1は、円錐形気化器本体4が設けられている気化器ハウジング3によって形成される気化器室2をやはり備えている。その円錐形態による気化器本体4の、従って円錐の表面の形状の気化器面40の設計は、前述した実施形態のものとほぼ一致する。
【0051】
しかし
図4の例示実施形態において、気化器ハウジング3は、気化器ハウジング3の内面の輪郭が気化器本体4の気化器面40の輪郭にほぼ追従するように設計されている。従って、気化器ハウジング3もまたほぼ円錐形設計を有しており、それにより気化器面40と気化器ハウジング3の内面との間に形成される気化器室2の空洞は、その断面が環状流路と一致する。こうして気化器面40と気化器ハウジング3の内面とはほぼ互いに平行に延びる。
【0052】
このようにして、気化器ハウジング3の内壁によって画成され気化器本体4の容積変位によって減じられる気化器室2の容積は、気化器室2がもっぱら相対的に少ない容積を形成するように制御され得ることが実現できる。従って、圧力機器指令97/23/ECの規定に関して、流体媒体を気化させるための装置1の圧力と容積の積は、圧力機器指令に従って最終評価から圧力容器を免除するのに十分に小さく保つことができる。
【0053】
「圧力と容積の積」又は「圧力と内容の積」は、圧力室の容積と容器の圧力定格との乗算から得られる値として理解される。圧力機器指令によれば、この値は、容器が最終評価を受けなくてよいためには50bar*l未満でなければならず、例えば、気化器室2が8リットルの容積である場合、この値は6バールの作業圧力になる。この実施例において、48bar*lの圧力と容積の積になる。
【0054】
従って、気化器室2が可能な限り小さい容積であるような、気化器本体4の寸法設定及び、気化器本体4を包囲する気化器ハウジング3の幾何学的構成によって、気化器は、高い圧力用に設計されているにもかかわらず、その低い圧力と容積の積のために最終評価を免除されることが実現できる。その結果、設置及び保守費用は、時間の消費と同様に、低減できる。
【0055】
図4に図示された例示実施形態において、キャリアガスの気流の誘導は、気化器本体4の下部円周に延在するキャリアガス流路600にキャリアガスを吹き込むキャリアガス供給管路60が設けられていることによって、また、キャリアガスが気化器室2内に流入するのを可能にする複数のキャリアガス放出口602が、この場合円錐の形態で設計されている気化器本体4の周囲に設けられていることによって、達成される。このように、キャリアガス供給管路60によって供給され、その底部領域において気化器室2の周囲でキャリアガス流路600によって分配されるキャリアガスは、キャリアガス放出口602によって気化器室2に吹き込まれる。このように、気化器室2へのキャリアガスの一様な供給が行われ、それによりキャリアガスは気化器本体4の気化器面40にわたって流動し、その後、気化の生成物とともにガス放出口62から出力され得る。
【0056】
図示された例示実施形態において、気化器室2の円錐状テーパリングに起因して、その頂部に向けて、すなわちガス放出口62方向に気化器室2の断面は縮小している。これにより、気化器室2内部でのキャリアガスの流速の増大がもたらされる。これは、加熱媒体供給管路70及び加熱媒体戻り管路72での加熱媒体の流れの移送に起因する気化器面40における温度分布と相関し、そのため気化器面40はその下部領域よりもその上部領域でわずかに高温である。加えて、気化器面40の大きさはその上部領域において低減し、そのため、より大きい流速及び高い温度のために、高水準の気化性能がそれにもかかわらず維持され得る。
【0057】
そのような圧力勾配及び、気化器室2内部でのキャリアガスの流速の勾配が要求されない場合、その内壁の傾斜が気化器面40の傾斜と同一である気化器ハウジング3の設計の代わりに、気化器本体4の円錐の頂点の方向に上がるにつれて気化器ハウジング3が外方に拡大して、気化器室2の大きさ全体にわたって均一な流れ断面をもたらす気化器室2が設計できる。
【0058】
個々の例示実施形態で記載された全部の個々の特徴は、適用可能な範囲まで、本発明の分野を逸脱することなく、互いに組み合わせ、且つ/又は交換できる。
【符号の説明】
【0059】
1 流体媒体を気化させるための装置
2 気化器室
3 気化器ハウジング
4 気化器本体
5 媒体供給管路
40 気化器面
42 ドーム
44 溝
50 放出口端
52 媒体放出口
60 キャリアガス供給管路
62 ガス放出口
64 偏向領域
70 加熱媒体供給管路
72 加熱媒体戻り管路
74 戻り流路
600 キャリアガス流路
602 キャリアガス放出口