(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】DC・AC変換装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230106BHJP
【FI】
H02M7/48 Y
(21)【出願番号】P 2019000842
(22)【出願日】2019-01-07
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】居安 誠二
(72)【発明者】
【氏名】半田 祐一
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/106701(WO,A1)
【文献】特開2017-34982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアクトル(13)と、駆動スイッチ(SW5)とを有し、入力端子(TD1,TD2)を通じて供給される直流電圧を交流電圧に変換し、変換した前記交流電圧を出力端子(TA1,TA2)に接続された交流電源に供給するDC・AC変換装置(100)に適用されるDC・AC変換装置の制御装置(30)であって、
前記リアクトルに流れる電流値であるリアクトル電流を取得する電流取得部と、
前記交流電源の電圧値である交流電圧を取得する交流電圧取得部と、
取得された前記リアクトル電流を、取得された前記交流電圧に基づいて生成された電流指令値に制御すべく、ピーク電流モード制御により、1スイッチング周期における前記駆動スイッチのオン操作期間の比率である第1時比率を設定する第1設定部(50,51,52)と、
取得された前記リアクトル電流の平均値を前記電流指令値に制御すべく、平均電流モード制御により、1スイッチング周期における前記駆動スイッチのオン操作期間の比率である第2時比率を設定する第2設定部(80)と、
取得された前記交流電圧の絶対値が、取得された前記交流電圧の振幅よりも小さい電圧閾値以上の場合に、前記第1設定部により設定された前記第1時比率により前記駆動スイッチを操作し、取得された前記交流電圧の絶対値が前記電圧閾値よりも小さい場合に、前記第2設定部により設定された前記第2時比率により前記駆動スイッチを操作する操作部(70)と、を備えるDC・AC変換装置の制御装置。
【請求項2】
前記操作部は、取得された前記交流電圧の絶対値が前記電圧閾値よりも小さい期間において、前記第1時比率及び前記第2時比率のうち、小さい方に基づいて前記駆動スイッチをオンオフ操作し、
取得された前記交流電圧の絶対値が前記電圧閾値よりも小さい期間において、前記操作部で用いられる前記第1時比率を前記第2時比率よりも大きくするピーク側変更部(40,61)を備える請求項1に記載のDC・AC変換装置の制御装置。
【請求項3】
前記ピーク側変更部(40)は、取得された前記交流電圧の絶対値が前記電圧閾値よりも小さい期間において、前記第1設定部で用いられる前記電流指令値を、前記第2設定部で用いられる前記電流指令値よりも大きくすることにより、前記第1時比率を前記第2時比率よりも大きくする請求項2に記載のDC・AC変換装置の制御装置。
【請求項4】
前記ピーク側変更部(61)は、
前記第1時比率に基づいて定まる前記オン操作期間の最小時間を定めるマスク時間を可変設定し、
取得された前記交流電圧の絶対値が前記電圧閾値よりも小さい期間において、取得された前記交流電圧の絶対値が前記電圧閾値以上となる期間よりも前記マスク時間を長くすることにより、前記第1時比率を前記第2時比率よりも大きくする請求項2又は3に記載のDC・AC変換装置の制御装置。
【請求項5】
取得された前記交流電圧の絶対値が前記電圧閾値以上となる期間において、前記第2時比率を前記第1時比率よりも大きくする平均側変更部(75,90)を備える請求項2~4のいずれか一項に記載のDC・AC変換装置の制御装置。
【請求項6】
前記平均側変更部(75)は、取得された前記交流電圧の絶対値が前記電圧閾値以上となる期間において、前記第2設定部で用いられる前記電流指令値を、前記第1設定部で用いられる前記電流指令値よりも大きくすることにより、前記第2時比率を前記第1時比率よりも大きくする請求項5に記載のDC・AC変換装置の制御装置。
【請求項7】
前記電圧閾値は、前記交流電圧がゼロとなるゼロクロスタイミングの近傍の前記交流電圧である請求項1~6のいずれか一項に記載のDC・AC変換装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を交流電圧に変換するDC・AC変換装置に適用される制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、AC・DC変換装置のリアクトルに流れるリアクトル電流を電流指令値に制御すべく、周知のピーク電流モード制御により、AC・DC変換装置の駆動スイッチを操作する制御装置が開示されている。この制御装置は、交流電圧の位相に応じて変化する補正値を電流指令値に加算することにより、出力電流の歪みを低減している。補正値は、リアクトル電流の平均値と指令値との間の乖離幅に基づいて算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、直流電圧を交流電圧に変換するDC・AC電力変換装置においても、出力電圧の歪みを改善することにより、交流電源に供給する交流電力の力率を改善することが望まれる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、DC・AC変換装置の制御装置において、出力電流の歪みを抑制することができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、リアクトルと、駆動スイッチとを有し、入力端子を通じて供給される直流電圧を交流電圧に変換し、変換した前記交流電圧を出力端子に接続された交流電源に供給するDC・AC変換装置に適用されるDC・AC変換装置の制御装置に関する。制御装置は、前記リアクトルに流れる電流値であるリアクトル電流を取得する電流取得部と、前記交流電源の電圧値である交流電圧を取得する交流電圧取得部と、取得された前記リアクトル電流を、取得された前記交流電圧に基づいて生成された電流指令値に制御すべく、ピーク電流モード制御により、1スイッチング周期における前記駆動スイッチのオン操作期間の比率である第1時比率を設定する第1設定部と、取得された前記リアクトル電流の平均値を、前記電流指令値に制御すべく、平均電流モード制御により、1スイッチング周期における前記駆動スイッチのオン操作期間の比率である第2時比率を設定する第2設定部と、取得された前記交流電圧の絶対値が、前記交流電圧の振幅よりも小さい電圧閾値以上の場合に、前記第1設定部により設定された前記第1時比率により前記駆動スイッチを操作し、前記交流電圧の絶対値が前記電圧閾値よりも小さい場合に、前記第2設定部により設定された前記第2時比率により前記駆動スイッチを操作する操作部と、を備える。
【0007】
ピーク電流モード制御を用いるDC・AC変換装置では、交流電源に供給する交流電力の力率を改善するために、交流電圧に基づいてリアクトルに流れるリアクトル電流の電流指令値を設定する。そのため、交流電圧のゼロクロスタイミング近傍において、リアクトル電流をゼロ付近の値とすべく、1スイッチング周期におけるオン操作期間の比率を示す時比率が最も小さな値となる。ここで、ピーク電流モード制御において、交流電圧のゼロクロスタイミング近傍で検出されたリアクトル電流にノイズが重畳することにより、リアクトル電流が電流指令値に達し、駆動スイッチが意図しないタイミングでオフ操作される誤ターンオフが生じる場合がある。駆動スイッチの誤ターンオフは、出力電流の歪みを生じさせる要因となる。
【0008】
平均電流モード制御は、リアクトル電流の平均値を電流指令値に制御するため、ピーク電流モード制御と比べてリアクトル電流に重畳したノイズの影響を受けにくい。そのため、平均電流モード制御を用いて、駆動スイッチを操作することが考えられる。しかし、平均電流モード制御は、ピーク電流モード制御よりも電流指令値に対する応答性が悪い。このため、DC・AC変換装置において、全ての期間で平均電流モード制御により駆動スイッチを操作すると、電流指令値に対する応答性が低下する。
【0009】
そこで、本発明では、取得されたリアクトル電流を、取得された交流電圧に基づいて生成された電流指令値に制御すべく、ピーク電流モード制御により1スイッチング周期における駆動スイッチのオン操作期間の比率である第1時比率を設定する第1設定部と、取得されたリアクトル電流の平均値を、電流指令値に制御すべく、平均電流モード制御により1スイッチング周期における駆動スイッチのオン操作期間の比率である第2時比率を設定する第2設定部と、を備えている。取得された交流電圧の絶対値が所定の電圧閾値以上の場合に、第1設定部により設定された第1時比率により駆動スイッチがオンオフ操作され、交流電圧の絶対値が電圧閾値よりも小さい場合に、第2設定部により設定された第2時比率により駆動スイッチがオンオフ操作される。これにより、誤ターンオフが生じにくい期間では、ピーク電流モード制御により駆動スイッチがオンオフ操作され、誤ターンオフが生じ易い期間では、平均電流モード制御により駆動スイッチがオンオフ操作される。このため、電流指令値に対するリアクトル電流の応答性の低下を抑制しつつ、誤ターンオフの発生を抑制して出力電流の歪みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】電力変換装置の動作を説明するタイミングチャート。
【
図7】電力変換装置の動作を説明するタイミングチャート。
【
図10】第2実施形態に係る制御装置の機能ブロック図。
【
図11】マスク時間の推移を説明するタイミングチャート。
【
図12】電力変換装置の動作を説明するタイミングチャート。
【
図13】第3実施形態に係る制御装置の機能ブロック図。
【
図14】フィードフォワード制御部の機能ブロック図。
【
図15】第4実施形態に係る電力変換装置の構成図。
【
図17】電力変換装置の動作を説明するタイミングチャート。
【
図18】第5実施形態に係る電力変換装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
本実施形態に係るDC・AC変換装置(以下、電力変換装置という)について説明する。電力変換装置は、直流端子を通じて供給される直流電力を交流電力へ変換して交流電源に供給する。
【0012】
図1に示す電力変換装置100の第1,第2直流端子TD1、TD2には、不図示の直流電源が接続されており、第1,第2交流端子TA1,TA2には、交流電源200が接続されている。交流電源200は、例えば、商用電源であり、直流電源はバッテリやDC・DC変換回路である。
【0013】
電力変換装置100は、コンデンサ16と、ハーフブリッジ回路15と、リアクトル13と、フルブリッジ回路12と、第1~第6配線LP1~LP6とを備えている。
【0014】
第1直流端子TD1には、第1配線LP1の第1端が接続されており、第2直流端子TD2には第2配線LP2の第1端が接続されている。第1配線LP1と第2配線LP2とは、コンデンサ16により接続されている。
【0015】
第1,第2配線LP1,LP2の第2端には、ハーフブリッジ回路15が接続されている。ハーフブリッジ回路15は、第5スイッチSW5と、第6スイッチSW6とを備えている。第5,第6スイッチSW5,SW6は、電圧駆動型のスイッチであり、本実施形態では、NチャネルMOSFETである。第5スイッチSW5のソースと、第6スイッチSW6のドレインとが接続されている。第5スイッチSW5のドレインが第1配線LP1に接続されており、第6スイッチSW6のソースが第2配線LP2に接続されている。第5,第6スイッチSW5,SW6それぞれは、逆並列接続された寄生ダイオードを備えている。本実施形態では、第5スイッチSW5が駆動スイッチに相当する。
【0016】
ハーフブリッジ回路15とフルブリッジ回路12とは、第3配線LP3及び第4配線LP4により接続されている。第3配線LP3の第1端は、第5スイッチSW5のソースと、第6スイッチSW6のドレインとの間の第1接続点K1に接続されている。第3配線LP3には、リアクトル13が設けられている。また、第4配線LP4の第1端は、第6スイッチSW6のソースに接続されている。第3,4配線LP3,LP4それぞれの第2端は、フルブリッジ回路12に接続されている。
【0017】
フルブリッジ回路12は、第1~第4スイッチSW1~SW4を備えている。第1~第4スイッチSW1~SW4は、電圧駆動型のスイッチであり、本実施形態では、NチャネルMOSFETである。第3スイッチSW3のソースと、第4スイッチSW4のドレインとが接続されている。第1スイッチSW1のソースと、第2スイッチSW2のドレインとが接続されている。第1,第3スイッチSW1,SW3の各ドレインが第3配線LP3に接続され、第2,第4スイッチSW2,SW4の各ソースが第4配線LP4に接続されている。
【0018】
第3スイッチSW3のソースと第4スイッチSW4のドレインとの間の第2接続点K2は、第6配線LP6の第1端に接続されており、第6配線LP6の第2端は第2交流端子TA2に接続されている。第1スイッチSW1と第2スイッチSW2との第3接続点K3は、第5配線LP5の第1端に接続されており、第5配線LP5の第2端は第1交流端子TA1に接続されている。
【0019】
電力変換装置100は、第1電圧センサ31と、電流センサ32と、第2電圧センサ33とを備えている。第1電圧センサ31は、第1,第2直流端子TD1,TD2を通じて入力される直流電源の電圧値を入力電圧Vdcとして検出する。電流センサ32は、第4配線LP4に設けられており、リアクトル13に流れる電流値をリアクトル電流ILrとして検出する。第2電圧センサ33は、交流電源200の電圧値を交流電圧Vacとして検出する。
【0020】
電力変換装置100は、制御装置30を備えている。制御装置30は、第1~第6スイッチSW1~SW6をオンオフ操作する。なお、制御装置30が提供する各機能は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。
【0021】
図2は、制御装置30の機能ブロック図である。制御装置30は、周知のピーク電流モード制御により、第5,第6スイッチSW5,SW6をオンオフ操作する。制御装置30は、波形生成部34、乗算器35、絶対値算出部36、加算器37、電流補正部40、第1設定部50、Duty制限部70、及び極性切替部55を備えている。本実施形態では、制御装置30が、電流取得部と、交流電圧取得部とを含む。
【0022】
波形生成部34は、交流電圧Vacの基準波形sinθを生成する。基準波形sinθは、交流電圧Vacの半周期(T/2)における電圧変化を示す値であり、振幅が1であり、交流電圧Vacと同じ周期で変動する。本実施形態では、基準波形sinθは、交流電圧Vacと同位相となる。波形生成部34は、第2電圧センサ33により検出された交流電圧Vacがゼロとなるタイミングをゼロクロスタイミングとして検出し、交流電圧Vacが、ゼロクロスタイミングから次のゼロクロスタイミングまで変化する期間を、交流電圧Vacの半周期(T/2)として設定する。
【0023】
乗算器35は、リアクトル電流ILrの振幅指令値Ia*と基準波形sinθとを乗算する。振幅指令値Ia*は、リアクトル電流ILrの振幅を定める指令値である。絶対値算出部36は、乗算器35からの出力値の絶対値を、補正前指令電流IL*として設定する。
【0024】
電流補正部40は、出力電流Iacの歪みを抑制すべく、補正前指令電流IL*に加算する第1補正値Ic1を設定する。電流補正部40の詳細については後述する。加算器37は、補正前指令電流IL*に第1補正値Ic1を加算し、加算後の値を電流指令値である第1指令電流ILa1*として設定する。
【0025】
第1設定部50は、電流センサ32により検出されたリアクトル電流ILrと、第1指令電流ILa1*とに基づいて、第5スイッチSW5を操作する第5ゲート信号GS5と、第6スイッチSW6を操作する第6ゲート信号GS6とを出力する。本実施形態では、第1設定部50は、周知のピーク電流モード制御により、第5,第6ゲート信号GS5,GS6を出力する。以下では、第5スイッチSW5の1スイッチング周期Tswにおけるオン操作期間Tonの比率であって、第1設定部50により設定される比率を第1時比率D1と称す。
【0026】
第1設定部50は、DA変換器351と、コンパレータ352と、加算器353と、RSフリップフロップ357と、スロープ補償部60と、マスク時間設定部61とを備えている。第1指令電流ILa1*は、DA変換器351に入力される。DA変換器351は、入力された第1指令電流ILa1*をデジタル値からアナログ値に変換する。アナログ値に変換された第1指令電流ILa1*は、コンパレータ352の反転入力端子に入力される。加算器353は、リアクトル電流ILrとスロープ補償部60により設定されたスロープ補償信号Slopeとを加算し、補償したリアクトル電流ILrを出力する。加算器353からの出力は、コンパレータ352の非反転入力端子に入力される。なお、スロープ補償信号Slopeは、リアクトル13に流れる電流の変動に伴う発振を抑制するものである。
【0027】
コンパレータ352は、第1指令電流ILa1*とリアクトル電流ILrとを比較し、リアクトル電流ILrが第1指令電流ILa1*より小さい期間において、ロー状態の判定信号DSをマスク時間設定部61に入力する。また、コンパレータ352は、リアクトル電流ILrが第1指令電流ILa1*より大きい期間において、ハイ状態の判定信号DSをマスク時間設定部61に入力する。
【0028】
マスク時間設定部61は、第5スイッチSW5の1スイッチング周期Tswにおいて、マスク時間の経過前に判定信号DSがハイ状態となった場合に、マスク時間の経過後にハイ状態のリセット信号REを出力し、マスク時間の経過後に判定信号DSがハイ状態となった場合に、ハイ状態の判定信号DSの入力に合わせてハイ状態のリセット信号REを出力する。マスク時間は、第1時比率D1及び1スイッチング周期Tswから定まるオン操作期間Tonの最小時間である。リセット信号REは、第5スイッチSW5の1スイッチング周期Tswにおけるオン操作期間Tonの終了タイミングを定める信号である。
【0029】
マスク時間設定部61は、パルス生成部62と、AND回路63とを備えている。パルス生成部62は、マスク時間を設定するためのマスク信号MSSを生成する。本実施形態では、マスク信号MSSの1周期のうち、マスク信号MSSがローとなる期間の長さがマスク時間となる。本実施形態において、マスク信号MSSの1周期は、第5スイッチSW5の1スイッチング周期Tswと同じ周期となっている。
【0030】
AND回路63の第1の入力端子には、パルス生成部62からのマスク信号MSSが入力され、第2の入力端子には、コンパレータ352からの判定信号DSが入力される。AND回路63は、マスク信号MSSがハイ状態となる期間に判定信号DSがハイ状態である場合、ハイ状態のリセット信号REを出力する。一方、AND回路63は、マスク信号MSSがロー状態となる期間(即ち、マスク時間TM)では、判定信号DSがハイ状態であっても、ロー状態のリセット信号REを出力する。
【0031】
RSフリップフロップ357のS端子には、クロック354からのセット信号SEが入力される。RSフリップフロップ357のQ端子は、Duty制限部70を介して第5スイッチSW5のゲートに接続されている。Q端子からDuty制限部70を介して第5スイッチSW5のゲートに出力される第1出力信号OUT1が、第5スイッチSW5をオンオフ操作する第5ゲート信号GS5となる。
【0032】
Duty制限部70は、第1設定部50により設定された第1時比率D1が上限値DMよりも大きい場合に、第1出力信号OUT1がハイ状態となる期間を上限値DMに応じた長さに制限する。Duty制限部70から出力された第1出力信号OUT1は、反転器358に入力される。反転器358は、第1出力信号OUT1の論理を反転して出力する。反転器358から第6スイッチSW6のゲートに出力される信号が、第6ゲート信号GS6となる。第6ゲート信号GS6は、第5ゲート信号GS5を反転させた値となる。
【0033】
極性切替部55は、交流電圧Vacの極性に応じて、第2出力信号OUT2を反転させる。極性切替部55は、交流電圧Vacの極性を正の極性と判定した場合に、ハイ状態の第2出力信号OUT2を出力する。一方、極性切替部55は、交流電圧Vacの極性を負の極性と判定した場合に、ロー状態の第2出力信号OUT2を出力する。
【0034】
極性切替部55から出力された第2出力信号OUT2は、第1,第4スイッチSW1,SW4の各ゲートに入力される。極性切替部55の出力端子から第1,第4スイッチSW1,SW4の各ゲートに出力される第2出力信号OUT2が、第1,第4ゲート信号GS1,GS4となる。また、極性切替部55の出力端子は、反転器359を介して、第2,第3スイッチSW2,SW3の各ゲートに接続されている。反転器359により第2出力信号OUT2の論理が反転された信号が第2,第3ゲート信号GS2,GS3となる。第2,第3ゲート信号GS2,GS3は、第1,第4ゲート信号GS1,GS4を反転させた値となる。
【0035】
次に、電力変換装置100の動作を説明する。
図3は電力変換装置100のタイミングチャートである。
図3(a)は交流電圧Vac及び入力電圧Vdcの推移を示している。
図3(b)は第1,第4ゲート信号GS1,GS4、及び第2,第3ゲート信号GS2,GS3を反転させた値の推移を示し、
図3(c)は第5ゲート信号GS5、及び第6ゲート信号GS6を反転させた値の推移を示す。
図3(d)は第1指令電流ILa1*の推移を示し、
図3(e)はリアクトル電流ILrの推移を示す。
図3(f)は出力電流Iacの推移を示す。なお、
図3において、時刻ta,tc,teは、交流電圧Vacの1周期Tにおいて交流電圧Vacがゼロとなるゼロクロスタイミングである。具体的には、時刻ta,teは交流電圧Vacが負から正に切り替わるゼロアップクロスタイミングであり、時刻tcは交流電圧Vacが正から負に切り替わるゼロダウンクロスタイミングである。また、時刻tbは交流電圧Vacの1周期Tにおける正のピークタイミングであり、時刻tdは交流電圧Vacの1周期Tにおける負のピークタイミングである。ピークタイミングは、交流電圧Vacの1周期Tにおいて、交流電圧Vacが正の最大値又は負の最小値を取るタイミングである。
【0036】
制御装置30は、交流電源200に供給する交流電力の力率を改善するために、交流電圧Vacに基づいて、第1指令電流ILa1*を算出する。そのため、第1指令電流ILa1*は、正弦波の正の半波が周期T/2で繰り返される波形となっている。
図3では、第1指令電流ILa1*は、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングta,tcから交流電圧Vacのピークタイミングtb,tdに推移するに従い増加する。また、第1指令電流ILa1*は、交流電圧Vacのピークタイミングtb,tdからゼロクロスタイミングtc,teに推移するに従い減少する。
【0037】
交流電圧Vacの1周期Tにおいて、交流電圧Vacが正となる第1期間P1では、第1,第4ゲート信号GS1,GS4がハイ状態となり、第2,第3ゲート信号GS2,GS3がロー状態となる。これにより、フルブリッジ回路12では、第1,第4スイッチSW1,SW4がオン状態となり、第2,第3スイッチSW2,SW3がオフ状態となる。この第1期間P1において、制御装置30は、第1期間P1で実施するピーク電流モード制御により、リアクトル電流ILrを指令電流に制御するべく、第1時比率D1を設定する。このとき、1スイッチング周期Tswでのリアクトル電流ILrは、第1時比率D1に応じた値となる。そのため、リアクトル電流ILrの平均値Iaveは、第1指令電流ILa1*に近い値となる。
【0038】
交流電圧Vacが負となる第2期間P2では、第1,第4ゲート信号GS1,GS4がロー状態となり、第2,第3ゲート信号GS2,GS3がハイ状態となる。これにより、フルブリッジ回路12では、第1,第4スイッチSW1,SW4がオフ状態となり、第2,第3スイッチSW2,SW3がオン状態となる。制御装置30は、第2期間P2で実施するピーク電流モード制御により、リアクトル電流ILrを第1指令電流ILa1*に制御するべく、第1時比率D1を設定する。
【0039】
制御装置30は、交流電源200に供給する交流電力の力率を改善するために、交流電圧Vacの基準波形sinθに振幅指令値Ia*を乗算した値を補正前指令電流IL*として設定している。そのため、補正前指令電流IL*に第1補正値Ic1が加算された第1指令電流ILa1*は、正弦波の正の半波が周期T/2で繰り返される波形となっている。
図4では、第1指令電流ILa1*は、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングta,tcから交流電圧Vacのピークタイミングtb,tdに推移するに従い増加する。また、第1指令電流ILa1*は、交流電圧Vacのピークタイミングtb,tdからゼロクロスタイミングtc,teに推移するに従い減少する。
【0040】
リアクトル電流ILrの平均値Iaveは、第1指令電流ILa1*と同様、ゼロクロスタイミングta,tc,teにおいてゼロ付近の値を取るように正の半波状に推移する。このため、ピーク電流モード制御において、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングta,tc,te付近で検出されたリアクトル電流ILrにスイッチングノイズ等のノイズが重畳することにより、補償後のリアクトル電流ILrが第1指令電流ILa1*を上回ることがある。その結果、意図したタイミングと異なるタイミングで第5スイッチSW5がオフ操作される誤ターンオフが生じることが懸念される。
【0041】
図4を用いて、誤ターンオフについて説明する。
図4では、第5スイッチSW5の誤ターンオフにより、当初意図したオン操作期間Ton2の終了タイミングよりも前に第5スイッチSW5のオン操作期間Ton1が終了している。そのため、第5スイッチSW5の第1時比率D1が、当初意図した時比率よりも小さくなる。第5スイッチSW5の誤ターンオフに起因する時比率の低下は、交流電圧Vacのゼロクロスタイミング付近での出力電流Iacの落ち込みを生じさせる要因となる。
【0042】
平均電流モード制御は、リアクトル電流ILrの平均値を指令電流に制御するため、ピーク電流モード制御と比べてリアクトル電流ILrに重畳したノイズの影響を受けにくいと考えられる。そのため、平均電流モード制御を用いて、第5スイッチSW5を操作することが考えられる。しかし、平均電流モード制御は、ピーク電流モード制御よりも指令電流に対する応答性が悪いため、電力変換装置100において、全ての期間で平均電流モード制御により第5スイッチSW5を操作すると、指令電流に対する応答性が低下することが懸念される。
【0043】
そこで、本実施形態では、
図2に示すように、制御装置30は、第1設定部50に加えて、リアクトル電流ILrの平均値を、指令電流に制御すべく、平均電流モード制御により第5スイッチSW5の第2時比率D2を設定する第2設定部80を備えている。制御装置30は、交流電圧Vacの絶対値が所定の電圧閾値TH1以上の場合は、第1設定部50が設定した第1時比率D1により第5スイッチSW5を操作する。一方、交流電圧Vacの絶対値が電圧閾値TH1よりも小さい場合は、第2設定部80が設定した第2時比率D2により第5スイッチSW5を操作する。
【0044】
電圧閾値TH1は、交流電圧Vacの振幅よりも小さな値であればよく、例えば、交流電圧Vacのピーク値の10%~20%の値に定められてもよい。より好ましくは、電圧閾値TH1は、交流電圧Vacのピーク値の10%の値に定められてもよい。
【0045】
制御装置30は、上述した第2設定部80に加えて、指令値変更部75と、加算器76とを備えている。
【0046】
指令値変更部75は、交流電圧Vacに基づいて、補正前指令電流IL*に加算する第2補正値Ic2を設定する。
図5に、第2補正値Ic2等の推移を示す。
図5(a)はVacの推移を示し、
図5(b)はIc2の推移を示す。指令値変更部75は、交流電圧Vacの絶対値が電圧閾値TH1よりも大きくなる期間において、第2補正値Ic2をゼロよりも大きな一定値に設定する。以下では、交流電圧Vacの絶対値が電圧閾値TH1以下となる期間を近傍期間CP1と称し、交流電圧Vacの絶対値が電圧閾値TH1よりも大きくなる期間を遠方期間CP2と称す。
【0047】
本実施形態では、指令値変更部75は、交流電圧Vacの遠方期間CP2において、第2補正値Ic2を、リアクトル13の定格電流から補正前指令電流IL*の最大値を引いた値に設定する。また、指令値変更部75は、交流電圧Vacの近傍期間CP1において、第2補正値Ic2をゼロに設定する。
【0048】
加算器76は、補正前指令電流IL*に第2補正値Ic2を加算し、加算後の値を第2指令電流ILa2*として出力する。
図5(c)に示すように、交流電圧Vacの近傍期間CP1では、第2補正値Ic2がゼロであるため、第2指令電流ILa2*は、破線で示す補正前指令電流IL*と同じ値となる。一方、交流電圧Vacの遠方期間CP2では、第2指令電流ILa2*に第2補正値Ic2が加算されるため、第2指令電流ILa2*は、補正前指令電流IL*よりも大きな値となる。本実施形態では、指令値変更部75が平均側変更部に相当する。
【0049】
第2設定部80は、フィルタ部81と、偏差算出器82と、PI制御部83と、リミッタ84とを備えている。電流センサ32により検出されたリアクトル電流ILrは、フィルタ部81に出力される。フィルタ部81は、高周波帯域をカットするローパスフィルタとして機能する。この機能により、フィルタ部81は、1スイッチング周期Tswでのリアクトル電流ILrの平均値を取得し、この平均値を偏差算出器82に出力する。偏差算出器82は、第2指令電流ILa2*と、リアクトル電流ILrの平均値との偏差を算出し、算出した偏差をPI制御部83に出力する。PI制御部83は、偏差算出器82から出力された偏差をゼロにフィードバック制御するための操作量として、第2時比率D2を算出する。本実施形態では、フィードバック制御として、比例積分(PI)制御が用いられている。PI制御部83により算出された第2時比率D2は、リミッタ84により値の上限が制限され、Duty制限部70に出力される。
【0050】
Duty制限部70は、第2設定部80により設定された第2時比率D2を、第1設定部50により出力された第1出力信号OUT1の制限に用いる上限値DMに設定する。これにより、第1出力信号OUT1の第1時比率D1が第2設定部80により設定された第2時比率D2以下の場合、第1出力信号OUT1がそのまま第5ゲート信号GS5となる。一方、第1時比率D1が第2時比率D2よりも大きい場合、時比率が第2時比率D2に制限された第1出力信号OUT1が第5ゲート信号GS5となる。本実施形態では、Duty制限部70が操作部に相当する。
【0051】
次に、
図6を用いて、電流補正部40により出力される第1補正値Ic1について説明する。直流電圧を交流電圧に変換する場合、補正前指令電流IL*と、歪みが生じているリアクトル電流ILrの平均値Iaveとの差を示す乖離幅Δiは、ゼロクロスタイミング付近において最も小さな値となる。ここで、乖離幅Δiは、出力電流Iacの歪みの要因となる。乖離幅Δiは、補正前指令電流IL*からリアクトル電流ILrの平均値Iaveを引いた下記式(1)を用いて演算することができる。
【0052】
【数1】
なお、上記式(1)の導出方法については後述する。
【0053】
上記式(1)により、入力電圧Vdcを交流電圧Vacに変換する場合、乖離幅Δiは、交流電圧Vacがゼロとなるゼロクロスタイミングにおいて最小値を取り、交流電圧Vacが最大となるピークタイミングにおいて最大値を取る。そのため、上記式(1)により算出される乖離幅Δiに応じて、第1補正値Ic1を算出すればよい。本実施形態では、電流補正部40は、第1補正値Ic1が交流電圧Vacのゼロクロスタイミングにおいて最小値を取り、かつ交流電圧Vacのピークタイミングにおいて最大値を取るように、第1補正値Ic1を設定する。
【0054】
電流補正部40は、上記式(1)で示される乖離幅Δiに応じて第1補正値Ic1を設定する。本実施形態では、電流補正部40は、
図6(a),
図6(b)に示すように、交流電圧Vacの近傍期間CP1において、第1補正値Ic1を、交流電圧Vacの遠方期間CP2で設定される第2補正値Ic2よりも小さくて、かつ、ゼロよりも大きな一定値に設定する。具体的には、電流補正部40は、近傍期間CP1において、第1補正値Ic1を、遠方期間CP2で設定される第1補正値Ic1の最小値に設定する。本実施形態では、電流補正部40がピーク側変更部に相当する。
【0055】
電流補正部40は、例えば、交流電圧Vacに基づいて算出される実効値Vrmsと、交流電圧Vacと、入力電圧Vdcとの組合せに応じた第1補正値Ic1が記録された補正値マップを備えている。補正値マップにおいて、交流電源200の実効値Vrmsが大きいほど、第1補正値Ic1の最大値が大きな値となる。
【0056】
次に、電力変換装置100の動作を、
図7を用いて説明する。
図7(a)は交流電圧Vac及び入力電圧Vdcの推移を示し、
図7(b)は第5ゲート信号GS5、及び第6ゲート信号GS6を反転させた値の推移を示す。
図7(c)は第1補正値Ic1の推移を示し、
図7(d)は、第2指令電流ILa2*の推移を示す。
図7(e)は、補正前指令電流IL*の推移を示し、
図7(f)はリアクトル電流ILrの推移を示す。
図7(g)は出力電流Iacの推移を示す。
【0057】
交流電圧Vacが正となる第1期間P1のうち、近傍期間CP1(t11-t12)では、第1補正値Ic1が第2補正値Ic2よりも大きな値になる。このため、第1補正値Ic1に補正前指令電流IL*が加算された第1指令電流ILa1*が、第2補正値Ic2に補正前指令電流IL*が加算された第2指令電流ILa2*よりも大きな値となる。そのため、交流電圧Vacの近傍期間CP1では、第1設定部50が設定した第1時比率D1が、第2設定部80が設定した第2時比率D2(上限値DM)よりも大きくなる。その結果、Duty制限部70からは、時比率が第2時比率D2に制限された第1出力信号OUT1が出力される。出力された第1出力信号OUT1は、第5スイッチSW5に出力され、出力された第1出力信号OUT1の論理を反転させた信号が第6スイッチSW6に出力される。これにより、近傍期間CP1では、第5スイッチSW5は、平均電流モード制御により設定された第2時比率D2で操作され、ひいては出力電流Iacの歪みが抑制される。
【0058】
交流電圧Vacの近傍期間CP1において、リアクトル13に過電流が流れ、リアクトル電流ILrが上昇すると、リアクトル電流ILrの平均値も上昇する。ここで、平均電流モード制御では、ピーク電流モード制御よりも指令電流に対する応答性が悪いため、リアクトル電流ILrの平均値の上昇に伴って、第2時比率D2が増加する。そのため、Duty制限部70の上限値DMが第1設定部50により設定された第1時比率D1よりも大きくなることにより、Duty制限部70から第1出力信号OUT1がそのまま第5スイッチSW5に出力される。これにより、応答性の高いピーク電流モード制御により第5スイッチSW5がオンオフ操作されるため、リアクトル13に過電流が流れる場合であっても、その過電流を迅速に遮断することができる。
【0059】
その後、第2設定部80による平均電流モード制御により、リアクトル電流ILrの平均値が第2指令電流ILa2*に制御されることにより、第2時比率D2が第1時比率D1よりも小さくなる。これにより、Duty制限部70からは、時比率が第2時比率D2に制限された第1出力信号OUT1が第5スイッチSW5に出力される。
【0060】
第1期間P1のうち、交流電圧Vacの遠方期間CP2(t12-t14)では、第2補正値Ic2が第1補正値Ic1よりも大きな値となることにより、第2指令電流ILa2*が第1指令電流ILa1*よりも大きな値となる。そのため、第2設定部80により設定された第2時比率D2(上限値DM)が、第1設定部50により設定された第1時比率D1よりも大きくなる。その結果、Duty制限部70からは、第1出力信号OUT1がそのまま第5スイッチSW5に出力され、この第1出力信号OUT1の論理を反転させた信号が第6スイッチSW6に出力される。これにより、遠方期間CP2では、ピーク電流モード制御により設定された第1時比率D1で第5スイッチSW5がオンオフ操作され、ひいては第1指令電流ILa1*に対する応答性の低下を抑制できる。
【0061】
交流電圧Vacの第2期間P2(t15-t19)においても、近傍期間CP1(t15-t16,t18-t19)では、Duty制限部70からは、時比率が第2時比率D2に制限された第1出力信号OUT1が出力される。また、交流電圧Vacの遠方期間CP2(t16-t18)では、Duty制限部70からは、第1出力信号OUT1がそのまま出力される。これにより、出力電流Iacの落ち込みの抑制と、第1指令電流ILa1*に対する応答性の低下の抑制とを両立できる。
【0062】
交流電圧Vacの遠方期間CP2において、第1設定部50の動作が異常となることにより、リアクトル13に過電流が流れる場合、第1時比率D1が高い値で推移する。この場合、第2設定部80が適正に動作していれば、平均電流モード制御により設定される第2時比率D2が、第1時比率D1よりも小さな値となる。これにより、Duty制限部70からは、時比率が第2時比率D2に制限された第1出力信号OUT1が第5スイッチSW5に出力される。第5スイッチSW5が第2時比率D2で操作されるため、リアクトル13に過剰な電流が流れるのを抑制できる。
【0063】
次に、補正値マップの作成方法について
図8を用いて説明する。
【0064】
本実施形態では、乖離幅Δiを、補正前指令電流IL*からリアクトル電流ILrの平均値Iaveを引いた値としている。なお、
図8において、Dは、第5スイッチSW5におけるオン操作期間の時比率を示す。
【0065】
図8より、乖離幅Δiは、オン操作期間(=D×Tsw)でのスロープ補償信号Slopeの最大増加分Δslopeに、リアクトル電流ILrの最大増加分ΔILの半分の値(ΔIL/2)を加えたものとみなすことができる。そのため、乖離幅Δiは、下記数式(2)により算出される。
【0066】
Δi=IL*-Iave=Δslope+ΔIL/2 … (2)
また、リアクトル電流ILrの最大増加分ΔILは、リアクトル13の両端に生じる電圧と、リアクトル13のインダクタンスLとを用いて、下記式(3)により算出することができる。
【0067】
【数2】
また、スロープ補償信号Slopeの最大増加分Δslopeは、下記式(4)により算出することができる。
Δslope = ms×D×Tsw … (4)
例えば、乖離幅Δiを算出する際のスロープ補償信号Slopeの傾きmsは、傾きmsの平均値を用いればよい。
【0068】
第5スイッチSW5のオン操作期間Tonの時比率Dは、交流電圧Vacの実効値Vrmsを用いて、下記式(5)により算出することができる。
【0069】
【数3】
上記式(2)~(5)により乖離幅Δiは上記式(1)として算出される。本実施形態では、上記式(1)で示される乖離幅Δiを用いて、第1補正値Ic1を算出する。そして、算出した各第1補正値Ic1を、実効値Vrms毎に記録することで、補正値マップを作成することができる。
【0070】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
【0071】
・Duty制限部70は、交流電圧Vacの遠方期間CP2では、第1設定部50により設定された第1時比率D1により第5スイッチSW5をオンオフ操作させ、交流電圧Vacの近傍期間CP1では、第2設定部80により設定された第2時比率D2により第5スイッチSW5をオンオフ操作させる。これにより、第1指令電流ILa1*に対するリアクトル電流ILrの応答性の低下を抑制しつつ、第5スイッチSW5の誤ターンオンに伴う出力電流Iacの歪みを抑制することができる。
【0072】
・Duty制限部70は、交流電圧Vacの近傍期間CP1において、第1時比率D1及び第2時比率D2のうち、小さい方に基づいて第5スイッチSW5をオンオフ操作する。電流補正部40は、交流電圧Vacの近傍期間CP1において、補正前指令電流IL*に加算する第1補正値Ic1を第2補正値Ic2よりも大きくすることにより、第1時比率D1を第2時比率D2よりも大きくする。交流電圧Vacの近傍期間CP1では、第5スイッチSW5が平均電流モード制御によりオンオフ操作され易くなる。また、リアクトル電流ILrが過度に大きくなる場合、リアクトル電流ILrの平均値が上昇することにより第2時比率D2が上昇し、Duty制限部70の上限値DMが第1時比率D1よりも大きくなる。これにより、第5スイッチSW5には、第1出力信号OUT1がそのまま出力されることにより、第5スイッチSW5が第1時比率D1でオンオフ操作され、ひいては、リアクトル電流ILrに過剰な電流が流れるのが抑制される。
【0073】
・指令値変更部75は、交流電圧Vacの遠方期間CP2において、第2補正値Ic2を第1補正値Ic1よりも大きくすることにより、第2時比率D2を第1時比率D1よりも大きくする。これにより、交流電圧Vacの遠方期間CP2では、第5スイッチSW5は、ピーク電流モード制御によりオンオフ操作され易くなる。一方、ピーク電流モード制御が適正に作動しなくなることにより、第1設定部50により設定される第1時比率D1が上昇する場合、第1時比率D1が、第2時比率D2よりも大きくなり易くなる。この場合、第5スイッチSW5は第2時比率D2でオンオフ操作されることにより、リアクトル電流ILrの上昇が抑制される。
【0074】
<第1実施形態の変形例>
第1設定部50により用いられるリアクトル電流を検出する電流センサと、第2設定部80により用いられるリアクトル電流を検出する電流センサと、を別々に設けてもよい。
【0075】
図9は、本実施形態に係る電力変換装置100の構成図である。本実施形態では、第5スイッチSW5のソースと、第1接続点K1との間に、第1電流センサ38が設けられている。第4配線LP4に、第2電流センサ39が設けられている。第1電流センサ38により検出された電流は、第1設定部50によるピーク電流モード制御に用いられる。第2電流センサ39により検出されたリアクトル電流ILrは、第2設定部80による平均電流モード制御に用いられる。
【0076】
以上説明した本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0077】
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号を付した構成は同一の構成を示し、その説明は繰り返さない。
【0078】
本実施形態では、
図10に示すように、マスク時間設定部61には、第2電圧センサ33により検出された交流電圧Vacが入力される。パルス生成部62は、交流電圧Vacの絶対値が電圧閾値TH1よりも小さい期間において、マスク時間TMを増加させることにより、Duty制限部70の上限値DMを変更する。本実施形態では、制御装置30は、指令値変更部75と、加算器76を備えていない。マスク時間設定部61が平均側変更部に相当する。
【0079】
図11を用いて、交流電圧Vacに応じて設定されるマスク時間TMについて説明する。パルス生成部62は、交流電圧Vacの近傍期間CP1において、1スイッチング周期Tswでのマスク時間TMをその最大値に設定する。マスク時間TMの最大値は、例えば、第5スイッチSW5の1スイッチング周期Tswの60%以上の長さであればよく、本実施形態では、マスク時間TMの最大値は、1スイッチング周期Tswの100%の長さに設定されている。
【0080】
パルス生成部62は、交流電圧Vacの遠方期間CP2において、マスク時間TMを最小値に設定する。マスク時間TMの最小値は、0よりも大きな値であり、例えば、ゼロクロスタイミングを含む第5スイッチSW5の操作期間において、第1指令電流ILa1*により意図されるオン操作期間Tonよりも小さな値に設定されればよい。
【0081】
次に、電力変換装置100の動作を、
図12を用いて説明する。
図12(a)は交流電圧Vac及び入力電圧Vdcの推移を示し、
図12(b)は第5ゲート信号GS5、及び第6ゲート信号GS6を反転させた値の推移を示す。
図12(c)はマスク時間TMの推移を示し、
図12(d)は第2指令電流ILa2*の推移を示す。
図12(e)は補正前指令電流IL*の推移を示し、
図12(f)はリアクトル電流ILrの推移を示し、
図13(g)は出力電流Iacの推移を示す。
【0082】
第1期間P1(t21-t25)のうち、交流電圧Vacの近傍期間CP1では、マスク時間TMが最大値となることにより、第1設定部50により設定された第1時比率D1が、第2設定部80により設定された第2時比率D2(上限値DM)よりも大きくなる。その結果、Duty制限部70からは、時比率が第2時比率D2に制限された第1出力信号OUT1が第5スイッチSW5に出力され、時比率が制限された第1出力信号OUT1の論理を反転させた値が第6スイッチSW6に出力される。これにより、交流電圧Vacの近傍期間CP1では、平均電流モード制御により設定された第2時比率D2で第5スイッチSW5がオンオフ操作され、ひいては出力電流Iacの歪みを抑制できる。
【0083】
第1期間P1のうち、交流電圧Vacの近傍期間CP1に続く遠方期間CP2では、補正前指令電流IL*に加算される第2補正値Ic2がゼロよりも大きな値となることにより、第2指令電流ILa2*が第1指令電流ILa1*よりも大きな値となる。そのため、Duty制限部70の上限値DMが、第1設定部50により設定された第1時比率よりも大きくなるため、Duty制限部70からは、第1出力信号OUT1がそのまま第5スイッチSW5に出力され、この第1出力信号OUT1の論理を反転させた値が第6スイッチSW6に出力される。これにより、交流電圧Vacの遠方期間CP2では、ピーク電流モード制御により設定された第1時比率D1で第5スイッチSW5がオンオフ操作され、ひいては第1指令電流ILa1*に対する応答性の低下を抑制できる。
【0084】
交流電圧Vacが負の値となる第2期間P2(t25-t29)において、交流電圧Vacの近傍期間CP1では、Duty制限部70からは、時比率が第2時比率D2に制限された第1出力信号OUT1が第5スイッチSW5に出力される。また、交流電圧Vacの遠方期間CP2では、Duty制限部70から、第1出力信号OUT1がそのまま第5スイッチSW5に出力される。これにより、出力電流Iacの歪みの抑制と、第1指令電流ILa1*に対する応答性の低下の抑制とを両立できる。
【0085】
以上説明した本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0086】
<第2実施形態の変形例>
交流電圧Vacの近傍期間CP1において、電流補正部40は、補正前指令電流IL*に対する第1補正値Ic1を用いた補正を実施しなくともよい。この場合、交流電圧Vacの近傍期間CP1において、マスク時間設定部61がマスク時間TMを増加させることにより、第1時比率D1が第2時比率D2よりも大きな値に設定される。
【0087】
<第3実施形態>
第3実施形態では、第2実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号を付した構成は同一の構成を示し、その説明は繰り返さない。
【0088】
本実施形態では、
図13に示すように、第2設定部80は、フィードフォワード制御部(以下、FF制御部90と称す)を備えており、FF制御部90により、Duty制限部70の上限値DMを変更する。本実施形態では、FF制御部90が平均側変更部に相当する。
【0089】
以下、
図13及び
図14を用いて、FF制御部90について説明する。FF制御部90の加算器91は、リミッタ84から出力された第2時比率D2に、フィードフォワード時比率Dff(=Vac/Vdc)を加算する。フィードフォワード時比率Dffは、リアクトル電流ILrを第2指令電流ILa2*に制御するための値であり、FF算出部92によって算出される。フィードフォワード時比率Dffが加算された第2時比率D2は、Duty加算部93に出力される。Duty加算部93は、交流電圧Vacに応じて正の調整量ΔDを算出し、算出した調整量ΔDを第2時比率D2に加算する。
【0090】
本実施形態では、Duty加算部93は、交流電圧Vacの近傍期間CP1では、調整量ΔDをゼロに設定する。一方、Duty加算部93は、交流電圧Vacの遠方期間CP2では、調整量ΔDをゼロよりも大きな一定値に設定する。これにより、交流電圧Vacの近傍期間CP1では、第1設定部50により設定された第1時比率D1が、第2設定部80により設定された第2時比率D2よりも大きな値となる。一方で、交流電圧Vacの遠方期間CP2では、第2時比率D2が第1時比率D1よりも大きな値となる。
【0091】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0092】
<第4実施形態>
第4実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号を付した構成は同一の構成を示し、その説明は繰り返さない。
【0093】
本実施形態では、第1実施形態に示す電力変換装置100と比べて、回路トポロジーが異なる。具体的には、本実施形態に係る電力変換装置100は、第1実施形態と異なり、ハーフブリッジ回路を備えていない。
【0094】
図15は、本実施形態に係る電力変換装置100の構成図である。第1直流端子TD1とフルブリッジ回路17とは、第1配線LP1により接続されている。第2直流端子TD2とフルブリッジ回路17とは、第2配線LP2により接続されている。
【0095】
フルブリッジ回路17は、第1~第4スイッチSW11~SW14を備えている。第1~第4スイッチSW11~SW14は、第1実施形態のフルブリッジ回路12が備える第1~第4スイッチSW1~SW4と回路構成が同じであるため、説明を省略する。
【0096】
第3スイッチSW13のソースと、第4スイッチSW14のドレインとの間の第4接続点K4と、第4スイッチSW14のドレインとの間には、第1電流センサ130が設けられている。第1電流センサ130は、第1,第4スイッチSW11,SW14に流れる電流を第1リアクトル電流IL1rとして検出する。また、第1スイッチSW11のソースと、第2スイッチSW12のドレインとの間の第5接続点K5と、第2スイッチSW12のドレインとの間には、第2電流センサ131が設けられている。第2電流センサ131は、第2,第3スイッチSW12,SW13に流れる電流を第2リアクトル電流IL2rとして検出する。
【0097】
図16は、本実施形態に係る制御装置30の機能ブロック図である。制御装置30は、第1設定部として、正極側設定部51と負極側設定部52とを備えている。正極側設定部51は、第1電流センサ130により検出された第1リアクトル電流IL1rを第1指令電流ILa1*に制御すべく、ピーク電流モード制御を実施する。負極側設定部52は、第2電流センサ131により検出された第2リアクトル電流IL2rを第1指令電流ILa1*に制御すべく、ピーク電流モード制御を実施する。正極側設定部51及び負極側設定部52の構成は、第1実施形態の第1設定部50の構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0098】
第2設定部80のフィルタ部81には、第2電流センサ131により検出された第2リアクトル電流IL2rが入力される。なお、フィルタ部81には、第1電流センサ130により検出された第1リアクトル電流IL1rが入力されてもよい。
【0099】
正極側設定部51の出力は、Duty制限部71を介して第1AND回路382の一方の入力端子に接続されている。負極側設定部52の出力は、Duty制限部72を介して、第2AND回路383の一方の入力端子に接続されている。Duty制限部71,72には、第2設定部80から第2時比率D2が出力される。本実施形態においても、Duty制限部71,72は、第2時比率D2を上限値DMに設定する。
【0100】
極性切替部55の出力端子は、第2AND回路383の他方の入力端子と、反転器360の入力端子とに接続されている。反転器360の出力端子は、第1AND回路382の他方の入力端子に接続されている。
【0101】
第1AND回路382には、正極側設定部51のRSフリップフロップ357の出力信号と、極性切替部55からの出力信号とが入力される。第1AND回路382の出力端子は、第4スイッチSW14のゲートに接続されている。第1AND回路382から第4スイッチSW14のゲートに出力される信号が、第4ゲート信号GS4となる。また、第1AND回路382の出力端子は、反転器361を介して第3スイッチSW13のゲートに接続されている。第1AND回路382から反転器361を介して第3スイッチSW13のゲートに出力される信号が、第3ゲート信号GS3となる。第3ゲート信号GS3は、第4ゲート信号GS4の論理を反転させたものとなる。
【0102】
第2AND回路383には、負極側設定部52のRSフリップフロップ357の出力信号と、極性切替部55からの出力信号とが入力される。第2AND回路383の出力側は、第2スイッチSW12のゲートに接続されている。第2AND回路383から第2スイッチSW12のゲートに出力される信号が、第2ゲート信号GS2となる。また、第2AND回路383の出力端子は、反転器362を介して第1スイッチSW11のゲートに接続されている。第2AND回路383から反転器362を介して第1スイッチSW11のゲートに出力される信号が、第1ゲート信号GS1となる。第1ゲート信号GS1は、第2ゲート信号GS2の論理を反転させたものとなる。
【0103】
第1AND回路382に、ハイ状態の極性切替部55の出力信号とハイ状態のRSフリップフロップ357の出力信号とが入力されることで、第1AND回路382は、ハイ状態の第4ゲート信号GS4を出力し、ロー状態の第3ゲート信号GS3を出力する。また、第2AND回路383に、ハイ状態の極性切替部55の出力信号とハイ状態のRSフリップフロップ357の出力信号とが入力されることで、第2AND回路383は、ハイ状態の第2ゲート信号GS2と、ロー状態の第1ゲート信号GS1を出力する。
【0104】
図17は、本実施形態に係る電力変換装置100のタイミングチャートである。
図17(a)は、入力電圧Vdc及び交流電圧Vacの推移を示す。
図17(b)は、第1ゲート信号GS1の推移、及び第2ゲート信号GS2の論理を反転させた値の推移を示す。
図17(c)は、第3ゲート信号GS3の推移、及び第4ゲート信号GS4の論理を反転させた値の推移を示す。
図17(d)は第1補正値Ic1の推移を示し、
図17(e)は第2指令電流ILa2*の推移を示す。
図17(f)は補正前指令電流IL*の推移を示し、
図17(g)はリアクトル電流ILrの推移を示し、
図17(h)は出力電流Iacの推移を示す。
【0105】
交流電圧Vacが正となる第1期間P1では、第1ゲート信号GS1がハイ状態となることで第1スイッチSW11がオン状態となり、第2ゲート信号GS2がロー状態となることで第2スイッチSW12がオフ状態となる。
【0106】
交流電圧Vacの近傍期間CP1(t31-t32,t34-t35)では、補正前指令電流IL*に第1補正値Ic1が加算された値が第1指令電流ILa1*となり、補正前指令電流IL*に第2補正値Ic2が加算された値が第2指令電流ILa2*となる。交流電圧Vacの近傍期間CP1では、第1指令電流ILa1*が第2指令電流ILa2*よりも大きくなるため、時比率が第2時比率D2に制限された第1出力信号OUT1が第3スイッチSW3に出力され、時比率が制限された第1出力信号OUT1の論理を反転させた値が、第4スイッチSW4に出力される。
【0107】
第2期間P2では、第3ゲート信号GS3がハイ状態となることで第3スイッチSW13がオン状態となり、第4ゲート信号GS4がロー状態となることで第4スイッチSW14がオフ状態となる。
【0108】
交流電圧Vacの近傍期間CP1(t35-t36,t38-t39)では、第1指令電流ILa1*が、第2指令電流ILa2*よりも大きくなる。これにより、Duty制限部70からは、時比率が第2時比率D2に制限された第2出力信号OUT2が第2スイッチSW2に出力され、時比率が制限された第1出力信号OUT1の論理を反転させた値が、第1スイッチSW1に出力される。
【0109】
以上説明した本実施形態では、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0110】
<第5実施形態>
本実施形態では、交流電圧Vacの絶対値に応じて、第1設定部50から出力される出力信号と、第2設定部80から出力される出力信号とを切り換える操作部を備える。以下では、第2設定部80から出力される出力信号を第3出力信号OUT3と記載する。
【0111】
図18に示すように、操作部170には、第2電圧センサ33により検出された交流電圧Vacが入力される。操作部170は、交流電圧Vacの絶対値が電圧閾値TH1以下である場合に、第1設定部50により算出された第1出力信号OUT1を出力する。この場合、第1出力信号OUT1がそのまま第5ゲート信号GS5として第5スイッチSW5に出力され、第1出力信号OUT1の論理を反転させた値が第6ゲート信号GS6として第6スイッチSW6に出力される。一方、操作部170は、交流電圧Vacの絶対値が電圧閾値TH1よりも大きい場合に、第2設定部80により算出された第3出力信号OUT3を出力する。この場合、第3出力信号OUT3がそのまま第5ゲート信号GS5として第5スイッチSW5に出力され、第3出力信号OUT3の論理を反転させた値が第6ゲート信号GS6として第6スイッチSW6に出力される。
【0112】
以上説明した本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0113】
<その他の実施形態>
・フルブリッジ回路12を構成するスイッチとしては、MOSFETに限らず、例えばIGBTであってもよい。
【符号の説明】
【0114】
13…リアクトル、30…制御装置、50…第1設定部、80…第2設定部、200…交流電源,100…電力変換装置。