(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】対象物確認装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
G01B11/00 H
(21)【出願番号】P 2019012788
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】迫 匠一郎
(72)【発明者】
【氏名】菊池 麿介
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-235504(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068470(WO,A1)
【文献】特開2002-369812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G06T 7/00- 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を撮像した撮像データから抽出された特徴部に基づいて、前記対象物の3Dモデルデータのうち、前記撮像データに対応する領域を特定する領域特定部と、
前記3Dモデルデータから、特定された前記領域の画像データを生成する画像生成部と、
前記撮像データと前記画像データとの間で差異がある箇所を特定
し、前記差異がある箇所に対応する対象部品の位置が、前記対象部品の公差データに示される公差の範囲内であるか否かの判定を行う差異特定部と、
を備える対象物確認装置。
【請求項2】
前記差異がある箇所を特定可能となる態様に前記撮像データまたは前記画像データを加工する差異加工部
を備える請求項1に記載の対象物確認装置。
【請求項3】
前記3Dモデルデータのうち、対応する前記撮像データがある領域と、対応する前記撮像データがない領域とを特定できるように、前記3Dモデルデータを加工するモデル加工部
を備える請求項1または2に記載の対象物確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置で撮像された撮像データにより、対象物の検査を行う場合がある。例えば、特許文献1には、航空機のエンジンの周囲にフレームを配し、フレームに沿って撮像装置を移動させてエンジンを撮像する技術が開示されている。撮像データは、撮像装置の位置や向きと共に記憶される。検査対象となるエンジンの撮像の前に、基準となるエンジンが撮像されてマスタ画像が生成される。同一の位置や向きで撮像された撮像データとマスタ画像との比較により、検査が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、マスタ画像が設計データと同一とは限らない。基準となるエンジンが設計データ通りでないと、検査が不正確となってしまう。そのため、例えば、製品検査のように対象物の確認を行う処理を、正確に行う技術の開発が希求されている。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、対象物の確認を正確に行うことが可能な対象物確認装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の対象物確認装置は、対象物を撮像した撮像データから抽出された特徴部に基づいて、対象物の3Dモデルデータのうち、撮像データに対応する領域を特定する領域特定部と、3Dモデルデータから、特定された領域の画像データを生成する画像生成部と、撮像データと画像データとの間で差異がある箇所を特定し、差異がある箇所に対応する対象部品の位置が、対象部品の公差データに示される公差の範囲内であるか否かの判定を行う差異特定部と、を備える。
【0007】
差異がある箇所を特定可能となる態様に撮像データまたは画像データを加工する差異加工部を備えてもよい。
【0008】
3Dモデルデータのうち、対応する撮像データがある領域と、対応する撮像データがない領域とを特定できるように、3Dモデルデータを加工するモデル加工部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対象物の確認を正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】対象物確認装置の概略を示す機能ブロック図である。
【
図2】対象物の撮像の様子を説明するための図である。
【
図3】
図3(a)は、画像生成部が生成した画像データの一例である。
図3(b)は、撮像装置が生成した撮像データの一例である。
【
図4】加工された撮像データの一例を示す図である。
【
図5】加工された3Dモデルデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、対象物確認装置10の概略を示す機能ブロック図である。対象物確認装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーションなどのコンピュータで構成される。
図1に示すように、対象物確認装置10は、記憶部11と、操作部12と、表示部13と、制御部20とを含んで構成される。
【0013】
記憶部11は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成される。記憶部11には、後述する対象物の設計データである3Dモデルデータが記憶される。操作部12は、例えば、キーボードや表示部13に重畳されるタッチパネルで構成される。操作部12は、管理者の操作入力を受け付ける。表示部13は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成される。
【0014】
制御部20は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、対象物確認装置10全体を管理および制御する。また、制御部20は、領域特定部21、画像生成部22、差異特定部23、差異加工部24、モデル加工部25としても機能する。
【0015】
領域特定部21は、対象物を撮像した撮像データを撮像装置30から取得する。撮像装置30は、例えば、デジタルカメラ、カメラ機能付きのスマートホンなどで構成される。ただし、撮像装置30は、対象物を撮像して撮像データを生成できれば、他のどのような装置で構成されてもよい。
【0016】
図2は、対象物Pの撮像の様子を説明するための図である。ここでは、対象物Pとして、航空機の翼に用いられる部品(ウェブ、スティフナ)を例に挙げて説明する。ただし、対象物Pは、これに限定されず、航空機の他の部品であってもよいし、航空機以外の部品であってもよい。また、対象物Pは、物品(品物)であればよく、製品(完成品)であってもよいし、製品の一部(未完成の製品)であってもよい。
【0017】
作業者は、撮像装置30を携帯し、対象物Pを撮像する。撮像者は、対象物Pのうち、撮像されていない箇所がなくなるまで、複数回に亘って、様々な画角(位置、向き、光学ズーム機能があれば光学倍率)で対象物Pを撮像する。ただし、撮像装置30は、携帯されずに撮影場所に設置されたものであってもよい。撮像装置30は、通信により撮像データを対象物確認装置10に出力する。
【0018】
領域特定部21は、撮像データから特徴部(特徴点)を抽出する。特徴部は、エッジ抽出、ブロブ解析などにより抽出される。特徴部には、例えば、鋭角部などの特徴的な輪郭(エッジ)が含まれる。そして、領域特定部21は、抽出された複数の特徴部と、記憶部11に記憶された3Dモデルデータとのパターンマッチングを行う。具体的に、領域特定部21は、3Dモデルデータの任意の領域を抽出し、特徴部の色、形状、位置関係などとの類似度を導出する。領域特定部21は、類似度が最も高い3Dモデルデータの領域を、対象物Pの3Dモデルデータのうち、撮像データに対応する領域(画角)として特定する。
【0019】
領域特定部21による特徴部の抽出、および、パターンマッチングによる領域特定処理は、上記の処理に限らず、AR(拡張現実)技術に用いられる任意の処理が用いられてもよい。
【0020】
画像生成部22は、3Dモデルデータから、特定された領域の画像データ(2Dデータ)を生成する。生成される画像データは、撮像データの画角と大凡同じ画角となっている。
【0021】
図3(a)は、画像生成部22が生成した画像データ40の一例である。
図3(b)は、撮像装置30が生成した撮像データ41の一例である。画像データ40は、撮像データ41に対応する領域のものとなっている。
【0022】
差異特定部23は、撮像データ41と画像データ40との間で差異がある箇所を特定する。
図3(a)、
図3(b)に示す例では、画像データ40にある部品Aが、撮像データ41にない。また、画像データ40の部品Bと、撮像データ41の部品Bの配置が異なる。
【0023】
差異特定部23は、例えば、パターンマッチングによる類似度の低さ、または、二値化した画像間の差分値などにより、撮像データ41と画像データ40との間で差異がある箇所を抽出する(差異がある箇所として仮判定する)。
【0024】
そして、差異特定部23は、3Dモデルデータに基づいて、抽出された箇所に対応する部品(以下、対象部品という)を特定する。差異特定部23は、対象部品を特定すると、3Dモデルデータに設定された対象部品の公差データを取得する。そして、差異特定部23は、撮像データ41における対象部品の位置が、公差データに示される公差の範囲内であるか否かを判定する。
【0025】
差異特定部23は、公差の範囲内にない対象部品を、差異がある箇所と特定する(差異がある箇所として本判定する)。例えば、部品Aについては、そもそも、撮像データ41にないため、確実に公差の範囲外となる。また、部品Bについては、部品Bの位置によって、公差の範囲内か範囲外かが定まる。例えば、部品Bも公差の範囲外であったものとする。
【0026】
ここでは、部品A、Bを例に挙げて説明した。ただし、差異特定部23は、例えば、一部品の一部に加工が施されているか否か、および、一部品の一部の寸法や形状が正しいか否かを判定してもよい。この場合、差異特定部23は、差異があるとして抽出された箇所に対応する部位(以下、対象部位という)の公差データを取得し、撮像データ41における対象部位の形状が、公差データに示される公差の範囲内であるか否かを判定する。
【0027】
差異加工部24は、差異がある箇所を特定可能となる態様に撮像データ41または画像データ40を加工する。ここでは、差異加工部24が撮像データ41を加工する場合を例に挙げて説明する。
【0028】
図4は、加工された撮像データ41の一例を示す図である。
図4に示すように、差異加工部24は、撮像データ41に対し、部品A、Bの画像を、部品A、Bが設けられるはずの位置に、例えば、原色など、周囲と識別可能な態様で重畳する。また、撮像データ41は、撮像データ41のうち、元々写っていた(位置がずれていた)部品Bを、周囲と識別可能な態様となるように加工してもよい。
【0029】
また、差異加工部24は、差異がある箇所のうち、公差の範囲内であってもずれが閾値以上大きいものを黄色に加工してもよい。この場合、差異加工部24は、差異がある箇所のうち、公差の範囲外となっているものを、より目立つ色(例えば、赤色)に加工する。
【0030】
差異加工部24は、表示部13に、加工された撮像データ41を表示させる。作業者は、撮像データ41によって、対象物Pのうち、設計通りになっていない箇所を認識できる。作業者は、例えば、部品A、Bが設計通りになるように対象物Pに対する作業を行う。
【0031】
このように、対象物確認装置10では、作業者が携帯した撮像装置30で対象物Pを撮像すれば対象物Pの検査を行うことができる。そのため、検査の作業負荷を軽減することが可能となる。また、3Dモデルデータが用いられているため、実際の対象物Pを撮像してマスタデータとする場合に比べ、より正確な検査が可能となる。
【0032】
また、3Dモデルデータに設けられた公差データが用いられている。そのため、公差の範囲内であるにもかかわらずエラーとして表示されてしまうことがない。その結果、公差の範囲内であるかの確認のために無駄な作業が生じる事態を回避できる。
【0033】
モデル加工部25は、3Dモデルデータのうち、対応する撮像データ41がある領域と、対応する撮像データ41がない領域とを特定できるように、3Dモデルデータを加工する。すなわち、モデル加工部25は、3Dモデルデータのうち、撮像装置30により生成された撮像データ41がある領域と、撮像データ41が未生成の領域とを特定できるように、3Dモデルデータを加工する。
【0034】
図5は、加工された3Dモデルデータ42の一例を示す図である。
図5にクロスハッチングで示すように、モデル加工部25は、3Dモデルデータ42のうち、すでに対応する撮像データ41がある領域に対し、周囲と識別可能な態様となるように、原色などの色を付加する。モデル加工部25は、加工した3Dモデルデータ42を表示部13に表示させる。
【0035】
ここでは、モデル加工部25が、3Dモデルデータ42のうち、すでに対応する撮像データ41がある領域に対し色を付加する場合について説明した。ただし、モデル加工部25は、3Dモデルデータ42のうち、対応する撮像データ41がまだない領域に対し、周囲と識別可能な態様となるように、原色などの色を付加してもよい。
【0036】
3Dモデルデータ42を加工することで、作業者は、対象物Pのうち、撮像すべき領域を容易に把握できる。また、対象物Pの一部を撮像し忘れるといった可能性を低減することが可能となる。
【0037】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0038】
上述した実施形態では、差異加工部24が設けられる場合について説明した。この場合、作業者は、撮像データ41と画像データ40との間で差異がある箇所を容易に把握できる。ただし、差異加工部24は必須の構成ではない。対象物確認装置10は、例えば、スピーカを備え、部品A、Bの名称などをスピーカから出力(報知)して、差異がある旨が作業者に伝えられてもよい。
【0039】
また、上述した実施形態では、モデル加工部25が設けられる場合について説明した。ただし、モデル加工部25は必須の構成ではない。
【0040】
また、上述した実施形態では、対象物確認装置10が対象物Pの検査に用いられる場合について説明した。しかし、対象物確認装置10は、例えば、検査(検査工程)に限らず、対象物Pの製造作業中における自主的な確認作業(部品取付の有無、位置などの確認作業)で用いられてもよい。
【0041】
また、コンピュータを対象物確認装置10として機能させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、対象物確認装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
P 対象物
10 対象物確認装置
21 領域特定部
22 画像生成部
23 差異特定部
24 差異加工部
25 モデル加工部
40 画像データ
41 撮像データ
42 3Dモデルデータ