(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】エンジンの吸気装置
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20230106BHJP
F02F 1/42 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
F02M35/10 311Z
F02F1/42 F
F02M35/10 301K
(21)【出願番号】P 2019025301
(22)【出願日】2019-02-15
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 良太
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-089527(JP,A)
【文献】実開昭52-156810(JP,U)
【文献】特開2007-315343(JP,A)
【文献】特開2007-071163(JP,A)
【文献】実開平02-119963(JP,U)
【文献】特開2017-089511(JP,A)
【文献】特開2007-239703(JP,A)
【文献】特開平04-001404(JP,A)
【文献】特開平09-166064(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03100343(DE,A1)
【文献】国際公開第98/022701(WO,A1)
【文献】特開平09-166065(JP,A)
【文献】特開2014-008855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるエンジンの吸気装置であって、
燃焼室へ向けて吸気を行う吸気ポートを有するシリンダーヘッドと、
前記シリンダーヘッドに移動可能に支持され前記吸気ポートを開閉する吸気弁と、
前記吸気ポートを含む空気の吸気通路に配置された吸気制御筒とを備え、
前記吸気ポートの周面と前記吸気制御筒の外周面との間に空気流動路が形成され
、
前記吸気制御筒に前記吸気制御筒の内部空間と前記空気流動路とを連通する流動孔が形成された
エンジンの吸気装置。
【請求項2】
前記空気流動路は、空気の流動方向に直交する断面において、流動面積が前記吸気制御筒における内部空間の流動面積よりも小さい
請求項1に記載のエンジンの吸気装置。
【請求項3】
前記吸気制御筒には、前記燃焼室側に位置される小径部と、前記小径部より径が大きくされた大径部と、前記小径部と前記大径部の間に位置された中間部とが設けられ、
前記吸気制御筒に前記吸気制御筒の内部空間と前記空気流動路とを連通する流動孔が形成された
請求項1又は請求項2に記載のエンジンの吸気装置。
【請求項4】
前記大径部に前記流動孔が形成された
請求項3に記載のエンジンの吸気装置。
【請求項5】
前記中間部に前記流動孔が形成された
請求項3に記載のエンジンの吸気装置。
【請求項6】
前記流動孔が内側から外側へ行くに従って前記燃焼室に近付く方向へ傾斜された
請求項3、請求項4又は請求項5に記載のエンジンの吸気装置。
【請求項7】
前記中間部が前記吸気制御筒の軸方向に対して傾斜された
請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6に記載のエンジンの吸気装置。
【請求項8】
前記流動孔が前記吸気制御筒の周方向に離隔して複数形成された
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6又は請求項7に記載のエンジンの吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸気ポートや吸気弁に対するデポジットの堆積を抑制するエンジンの吸気装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車両にはエンジンを有する内燃機関が設けられており、エンジンにおいては、吸気ポートから燃焼室に吸気が行われるときに燃焼室への燃料の噴射が行われ、燃焼室における空気と燃料の混合気が点火プラグの点火によって燃焼され、ピストンに動力が生じる。燃焼された混合気は排気ポートから排気される。
【0003】
このようにエンジンにおいては、燃料の噴射や混合気の燃焼が行われるが、不完全燃焼生成物としてデポジットが生成される。デポジットは、特に、吸気ポートの周面や吸気弁の外周部に堆積し易く、エンジンの燃焼効率の低下を来す一因とされている。
【0004】
そこで、従来より、デポジットの各部への堆積を抑制するために、各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1には、吸気弁の移動時に空気路から吸気弁の外周部と弁座へ向けて空気が吐出され吸気弁と弁座へのデポジットの堆積を抑制する技術が記載されている。
【0006】
特許文献2には、吸気通路であるマニホールドの内部に回動可能な吸気制御弁を配置し、吸気制御弁に形成された貫通孔を通って燃焼室側へ流動される空気によってデポジットを吹き飛ばして堆積を抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平4-1404号公報
【文献】特開2007-239703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、不完全燃焼生成物として生成されるデポジットは、吸気弁の他に吸気ポートの周面(壁面)にも堆積されるため、燃焼効率の向上を図るためには、吸気弁のみならず吸気ポートの周面へのデポジットの堆積も抑制する必要がある。
【0009】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された技術にあっては、吸気弁と弁座へのデポジットの堆積を抑制することは可能であるが、吸気ポートの周面へのデポジットの堆積を抑制することに関しては不十分である。
【0010】
また、特許文献2に記載された技術にあっては、マニホールドの内部に配置された吸気制御弁の貫通孔を通って燃焼室側へ流動される空気によってデポジットを吹き飛ばす構成にされているが、デポジットが堆積し易い部分を狙って空気を吹き付ける構成ではないため、デポジットの堆積を抑制することに関して十分な効果が得られない可能性がある。
【0011】
そこで、本発明は、デポジットの堆積を効率的に抑制して燃焼効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るエンジンの吸気装置は、車両におけるエンジンの吸気装置であって、燃焼室へ向けて吸気を行う吸気ポートを有するシリンダーヘッドと、前記シリンダーヘッドに移動可能に支持され前記吸気ポートを開閉する吸気弁と、前記吸気ポートを含む空気の吸気通路に配置された吸気制御筒とを備え、前記吸気ポートの周面と前記吸気制御筒の外周面との間に空気流動路が形成され、前記吸気制御筒に前記吸気制御筒の内部空間と前記空気流動路とを連通する流動孔が形成されたものである。
【0013】
これにより、吸気ポートの周面と吸気制御筒の外周面との間に形成された空気流動路を流動される空気の流速が吸気制御筒の内部空間を流動される空気の流速より速くなり、高い風圧の空気が吸気ポートの周面に沿って流動される。また、吸気制御筒の内部空間を流動される空気が流動孔から空気流動路へ向けて流動され易くなる。
【0014】
第2に、上記した本発明に係るエンジンの吸気装置においては、前記空気流動路は、空気の流動方向に直交する断面において、流動面積が前記吸気制御筒における内部空間の流動面積よりも小さいことが望ましい。
【0015】
これにより、空気流動路を流動される空気の流速が内部空間を流動される空気の流速より速くなる。
【0018】
第3に、上記した本発明に係るエンジンの吸気装置においては、前記吸気制御筒には、前記燃焼室側に位置される小径部と、前記小径部より径が大きくされた大径部と、前記小径部と前記大径部の間に位置された中間部とが設けられ、前記吸気制御筒に前記吸気制御筒の内部空間と前記空気流動路とを連通する流動孔が形成されることが望ましい。
【0019】
これにより、ベンチュリー効果によって流動孔における圧力が負圧になり、吸気制御筒の内部空間を流動される空気が流動孔から空気流動路へ向けて流動され易くなる。
【0020】
第4に、上記した本発明に係るエンジンの吸気装置においては、前記大径部に前記流動孔が形成されることが望ましい。
【0021】
これにより、大径部の外周側と内周側の流速の差が大きく、流速の差が大きな領域において負圧が発生するため、吸気制御筒の内部空間から空気流動路へ向けて流動される空気の量が多くなる。
【0022】
第5に、上記した本発明に係るエンジンの吸気装置においては、前記中間部に前記流動孔が形成されることが望ましい。
【0023】
これにより、大径部に対して内周側に屈曲する部分に流動孔が位置するため、大径部の内周面に沿って流動される空気が流動孔に直進的に流入され、吸気制御筒の内部空間を燃焼室へ向けて流動する空気が空気流動路に流動され易くなる。
【0024】
第6に、上記した本発明に係るエンジンの吸気装置においては、前記流動孔が内側から外側へ行くに従って前記燃焼室に近付く方向へ傾斜されることが望ましい。
【0025】
これにより、吸気制御筒の内部空間から空気流動路へ向けて空気が流動され易くなるため、空気流動路を流動される空気の流量がより多くなり、吸気ポートの周面に沿ってより大流量の空気が流動される。
【0026】
第7に、上記した本発明に係るエンジンの吸気装置においては、前記中間部が前記吸気制御筒の軸方向に対して傾斜されることが望ましい。
【0027】
これにより、空気流動路を流動される空気の流速を低下させることなく空気が大径部側から小径部側へ円滑に流動される。
【0028】
第8に、上記した本発明に係るエンジンの吸気装置においては、前記流動孔が前記吸気制御筒の周方向に離隔して複数形成されることが望ましい。
【0029】
これにより、周方向に離隔して位置される複数の流動孔から空気流動路に空気が流動され、吸気ポートの周面における全体に沿って空気が流動される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、吸気ポートの周面と吸気制御筒の外周面との間に形成された空気流動路を流動される空気の流速が吸気制御筒の内部空間を流動される空気の流速より速くなり、高い風圧の空気が吸気ポートの周面に沿って流動されるため、デポジットが堆積し易い吸気ポートの周面や吸気弁の外周部に高い風圧の空気が吹き付けられ、デポジットの堆積を効率的に抑制して燃焼効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図2乃至
図9と共に本発明エンジンの吸気装置の実施の形態を示すものであり、本図は、エンジンの断面図である。
【
図3】吸気制御筒が吸気ポートに配置された状態を示す断面図である。
【
図4】吸気が行われたときの吸気制御筒の作用を説明するための断面図である。
【
図5】吸気ポートが堆積された状態を示す断面図である。
【
図6】吸気が行われたときの第1の変形例に係る吸気制御筒の作用を説明するための断面図である。
【
図7】傾斜されている流動孔が形成された第1の変形例に係る吸気制御筒の例を示す断面図である。
【
図8】吸気が行われたときの第2の変形例に係る吸気制御筒の作用を説明するための断面図である。
【
図9】中間部に流動孔が形成された第2の変形例に係る吸気制御筒の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明のエンジンの吸気装置を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。
【0033】
エンジン1は多気筒であり、例えば、四つの気筒を有する多気筒エンジンとして構成されている。これらの気筒は同様の構成にされており、以下には、一つの気筒の構成について説明する。
【0034】
エンジン1の気筒はシリンダーブロック2とシリンダーヘッド3を有し、シリンダーブロック2とシリンダーヘッド3に所要の各部が支持されている(
図1参照)。
【0035】
シリンダーブロック2にはピストン4が移動可能に支持され、シリンダーブロック2におけるピストン4が支持された空間は移動空間2aとして形成されている。ピストン4には連結支点部4aが設けられている。シリンダーブロック2はピストン4の一方の移動方向においてシリンダーヘッド3と結合されている。
【0036】
ピストン4の連結支点部4aにはコンロッド5の一端部が回動可能に連結され、コンロッドの他端部は図示しないクランクシャフトに回動可能な状態で連結されている。従って、ピストン4がシリンダーブロック2に対して移動されると、ピストン4の駆動力がコンロッド5を介してクランクシャフトに伝達され、直進運動が回転運動に変換される。
【0037】
シリンダーヘッド3には吸気ポート6と排気ポート7が形成されている。シリンダーヘッド3には、吸気ポート6における開口部6aに弁座8が固定され、排気ポート7における開口部7aに弁座9が固定されている。シリンダーヘッド3には吸気ポート6側に吸気側マニホールド10が連結され、吸気側マニホールド10の内部の空間10aが吸気ポート6に連通されている。シリンダーヘッド3には排気ポート7側に排気側マニホールド11が連結され、排気側マニホールド11の内部の空間11aが排気ポート7に連通されている。
【0038】
シリンダーヘッド3に吸気側マニホールド10が連結されることにより、吸気側マニホールド10の空間10aと吸気ポート6とによって吸気通路12が形成される。また、シリンダーヘッド3に排気側マニホールド11が連結されることにより、排気側マニホールド11の空間11aと排気ポート7とによって排気通路13が形成される。
【0039】
シリンダーブロック2とシリンダーヘッド3が結合されて形成された空間は燃焼室14とされ、燃焼室14は吸気ポート6と排気ポート7が連通される空間である。また、燃焼室14はシリンダーブロック2の移動空間2aとも連通される空間である。
【0040】
シリンダーヘッド3にはインジェクター15と点火プラグ16が取り付けられている。インジェクター15は一端部が燃料噴射部15aとして設けられ、図示しない燃料ギャラリーに貯留されている燃料が燃料噴射部15aから燃焼室14に噴射される。
【0041】
燃料噴射部15aから燃焼室14に噴射された燃料は、燃焼室14に吸気ポート6から供給された空気と混合され、燃料と空気が混合されることにより混合気が生成される。生成された混合気は点火プラグ16によって点火されることにより燃焼し、混合気の燃焼によって燃焼室14において爆発圧力が生じる。爆発圧力が生じることにより、ピストン4がシリンダーブロック2に対して往復運動され、ピストン4の駆動力がコンロッド5を介してクランクシャフトに伝達される。
【0042】
シリンダーヘッド3には吸気ポート6の開口部6aを開閉する吸気弁17が移動可能に支持されている。
【0043】
吸気弁17はシリンダーヘッド3に支持されるバルブステム18とバルブステム18の一端に連続するバルブヘッド19とバルブステム18の他端に連続するバルブエンド20とを有している。バルブヘッド19はバルブステム18から離隔するに従って径が大きくされ、バルブエンド20はバルブステム18より径が大きくされている。
【0044】
バルブステム18にはバルブエンド20側にスプリング21が支持され、吸気弁17はスプリング21によってバルブヘッド19が吸気ポート6の開口部6aを閉塞する方向へ付勢されている。従って、吸気弁17に燃焼室14側への移動力が付与されていない状態においては、吸気弁17はスプリング21の付勢力によってバルブヘッド19の外周部19aが弁座8に押し付けられ、開口部6aが閉塞されている。
【0045】
吸気弁17は図示しない吸気用駆動カムによってバルブエンド20がバルブヘッド19側に押圧される。バルブエンド20がバルブヘッド19側に押圧されると、スプリング21の付勢力に反して吸気弁17がシリンダーヘッド3に対して移動され、吸気ポート6の開口部6aが開放される。このとき、吸気側マニホールド10を介して吸気ポート6に空気が流動され、流動された空気が吸気ポート6から燃焼室14に流入されて吸気が行われる。
【0046】
燃焼室4に対する吸気が行われると、吸気用駆動カムによるバルブエンド20への押圧状態が解除され、吸気弁17がスプリング21の付勢力によってシリンダーヘッド3に対して移動され、吸気ポート6の開口部6aが閉塞される。
【0047】
燃焼室14に対する吸気が行われたときには、上記したように、燃料噴射部15aから燃焼室14に燃料が噴射され、生成された混合気が点火プラグ16によって点火されることにより燃焼し、燃焼室14において爆発圧力が生じる。
【0048】
シリンダーヘッド3には排気ポート7の開口部7aを開閉する排気弁22が移動可能に支持されている。
【0049】
排気弁22はシリンダーヘッド3に支持されるバルブステム23とバルブステム23の一端に連続するバルブヘッド24とバルブステム23の他端に連続するバルブエンド25とを有している。バルブヘッド24はバルブステム23から離隔するに従って径が大きくされ、バルブエンド25はバルブステム23より径が大きくされている。
【0050】
バルブステム23にはバルブエンド25側にスプリング26が支持され、排気弁22はスプリング26によってバルブヘッド24が排気ポート7の開口部7aを閉塞する方向へ付勢されている。従って、排気弁22に燃焼室14側への移動力が付与されていない状態においては、排気弁22はスプリング26の付勢力によってバルブヘッド24の外周部が弁座9に押し付けられ、開口部7aが閉塞されている。
【0051】
排気弁22は図示しない排気用駆動カムによってバルブエンド25がバルブヘッド24側に押圧される。バルブエンド25がバルブヘッド24側に押圧されると、スプリング26の付勢力に反して排気弁22がシリンダーヘッド3に対して移動され、排気ポート7の開口部7aが開放される。このとき、燃焼した混合気が排気ポート7に流入され、流入された混合気が排気側マニホールド11を介して車両の外部へ向けて流動され、燃焼した混合気の排気が行われる。
【0052】
エンジン1は図示しないエンジン制御部によって制御される。エンジン制御部は電子的な制御を行う電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)であり、マイクロコンピューターの他に、入出力インターフェースや周辺回路を備えている。
【0053】
エンジン制御部によってエンジン1におけるインジェクター15の燃料噴射制御や点火プラグ16の点火時期制御や吸気弁17と排気弁18の駆動制御等が行われる。
【0054】
尚、吸気通路12の上流側には図示しないエアークリーナーが設けられており、エアークリーナーによって清浄化された空気が吸気通路12から燃焼室14へ向けて流動される。また、排気通路13の下流側には図示しない触媒装置が設けられており、触媒装置によって燃焼された混合気が浄化され車両の外部へ排出される。
【0055】
吸気通路12には金属材料又は樹脂材料によって形成された吸気制御筒27が配置されている。吸気制御筒27は吸気通路12における、例えば、吸気ポート6に配置されている。吸気制御筒27は吸気ポート6の形状に沿って湾曲された筒状に形成されている。尚、以下においては、説明を容易にするために、吸気制御筒27が湾曲されていない形状において説明を行う。
【0056】
吸気制御筒27は径が一定の筒状に形成された本体部28と本体部28の外周面28aから反対側に突出された取付用突部29、29とを有している(
図2参照)。本体部28の外周面28aは吸気ポート6の周面6bより径が小さくされている。
【0057】
シリンダーヘッド3には吸気ポート6の周面6bに開口する一対の溝部3a、3aが形成され、一対の溝部3a、3aは周面6bの180度反対側に位置されている(
図3参照)。
【0058】
吸気制御筒27は、例えば、吸気側マニホールド10側から吸気ポート6に挿入され、取付用突部29、29がそれぞれ溝部3a、3aに挿入されることにより吸気通路12に配置される。
【0059】
尚、上記には、シリンダーヘッド3に一対の溝部3a、3aが形成され取付用突部29、29がそれぞれ溝部3a、3aに挿入されることにより吸気制御筒27が吸気通路12に配置される例を示したが、例えば、吸気側マニホールド10に一対の溝部が形成され取付用突部29、29がこれらの溝部に挿入されることにより吸気制御筒27が吸気通路12に配置されてもよい。また、吸気ポート6と吸気側マニホールド10に筒状の隔壁が設けられ、隔壁の内周面側に一対の溝部が形成され取付用突部29、29がこれらの溝部に挿入されることにより吸気制御筒27が吸気通路12に配置されてもよい。
【0060】
吸気制御筒27は外周面28aが吸気ポート6の周面6bより径が小さくされているため、吸気制御筒27が吸気通路12に配置された状態においては、外周面28aと周面6bの間に空間が形成され、この空間が空気流動路30とされる(
図4参照)。空気流動路30は、空気の流動方向に直交する断面において、流動面積が吸気制御筒27における内部空間27aの流動面積より小さくされている。
【0061】
上記のように構成されたエンジン1において、吸気ポート6を有するシリンダーヘッド3とシリンダーヘッド3に移動可能に支持され吸気ポート6を開閉する吸気弁17と吸気ポート6に配置された吸気制御筒27とは吸気装置50の構成要素とされている(
図1参照)。
【0062】
エンジン1においては、上記のような燃料の噴射や混合気の燃焼が行われるが、不完全燃焼生成物としてデポジットPが生成される可能性がある(
図5参照)。デポジットPは、特に、吸気ポート6の周面6bや吸気弁17におけるバルブヘッド19の外周部19aに堆積し易く、エンジンの燃焼効率の低下を来す一因とされている。
【0063】
エンジン1において、吸気通路12から燃焼室14へ向けて吸気が行われるときには、空気が吸気制御筒27の内部空間27aと空気流動路30を通って燃焼室14へ向かう(
図4参照)。このとき空気流動路30の流動面積が内部空間27aの流動面積より小さくされているため、空気流動路30を流動される空気Aの流速が内部空間27aを流動される空気Bの流速より速くなる。
【0064】
従って、流速が速くされた空気が吸気ポート6の周面6bに沿って流動されるため、周面6bと吸気弁17におけるバルブヘッド19の外周部19aとにデポジットPが堆積し難く、また、デポジットPが周面6bとバルブヘッド19の外周部19aとに付着していたとしてもデポジットPが流速の速くされた空気によって燃焼室14側へ吹き飛ばされる。
【0065】
このように、吸気ポート6の周面6bと吸気制御筒27の外周面27aとの間に形成された空気流動路30を流動される空気の流速が吸気制御筒27の内部空間27aを流動される空気の流速より速くなり、高い風圧の空気が吸気ポート6の周面6bに沿って流動されるため、吸気ポート6の周面6bと吸気弁17のバルブヘッド19とにデポジットPが堆積し難く、デポジットPの堆積を効率的に抑制して燃焼効率の向上を図ることができる。
【0066】
次に、吸気制御筒の変形例について説明する(
図6乃至
図9参照)。
【0067】
第1の変形例に係る吸気制御筒27Aは周方向に離隔する流動孔31、31、・・・を有している(
図6参照)。
【0068】
吸気制御筒27Aが用いられた場合において、空気流動路30の流動面積が内部空間27aの流動面積より小さくされているため、吸気通路12から燃焼室14へ向けて吸気が行われたときに、空気流動路30を流動される空気Aの流速が内部空間27aを流動される空気Bの流速より速くなる。
【0069】
また、吸気制御筒27Aには流動孔31が形成されているため、ベンチュリー効果によって流動孔31における圧力が負圧になり、内部空間27aを流動される空気が流動孔31から空気流動路30へ向けて流動され易くなる。従って、流速が速くされた大流量の空気が空気流動路30から吸気ポート6の周面6bに沿って流動されるため、周面6bと吸気弁17におけるバルブヘッド19とにデポジットPが堆積し難く、また、デポジットPが周面6bとバルブヘッド19とに付着していたとしてもデポジットPが流速の速くされた大流量の空気によって燃焼室14側へ吹き飛ばされる。
【0070】
このように、大流量で高い風圧の空気が吸気ポート6の周面6bに沿って流動されるため、吸気ポート6の周面6bと吸気弁17のバルブヘッド19とにデポジットPが堆積し難く、デポジットPの堆積を一層効率的に抑制して燃焼効率の一層の向上を図ることができる。
【0071】
また、吸気制御筒27Aには複数の流動孔31が周方向に離隔して形成されているため、周方向に離隔して位置される複数の流動孔31から空気流動路30に空気が流動され、吸気ポート6の周面6bにおける全体に沿って空気が流動され、吸気ポート6の周面6bや吸気弁17へのデポジットPの堆積を吸気ポート6とバルブヘッド19の全周において効率的に抑制することができる。
【0072】
尚、流動孔31は吸気制御筒27Aの軸方向に対して内側から外側へ行くに従って燃焼室14に近付く方向へ傾斜されていてもよい(
図7参照)。
【0073】
このように、流動孔31が内側から外側へ行くに従って燃焼室14に近付く方向へ傾斜される形状に形成されることにより、内部空間27aから空気流動路30へ向けて空気が流動され易くなるため、空気流動路30を流動される空気の流量がより多くなり、吸気ポート6の周面6bに沿ってより大流量の空気が流動され、吸気ポート6の周面6bや吸気弁17のバルブヘッド19へのデポジットPの堆積をより一層効率的に抑制することができる。
【0074】
第2の変形例に係る吸気制御筒27Bは、燃焼室14側に位置される小径部32と、小径部32より径が大きくされた大径部33と、小径部32と大径部33の間に位置された中間部34とを有し、中間部34が吸気制御筒27Bの軸方向に対して傾斜されている(
図8参照)。吸気制御筒27Bには、大径部33における中間部34側に位置する部分に流動孔31、31、・・・が周方向に離隔して形成されている。
【0075】
吸気制御筒27Bが用いられた場合において、空気流動路30の流動面積が内部空間27aの流動面積より小さくされているため、吸気通路12から燃焼室14へ向けて吸気が行われたときに、空気流動路30を流動される空気Aの流速が内部空間27aを流動される空気Bの流速より速くなる。
【0076】
また、吸気制御筒27Bには流動孔31が形成されているため、ベンチュリー効果によって流動孔31における圧力が負圧になり、内部空間27aを流動される空気が流動孔31から空気流動路30へ向けて流動され易くなる。このとき、吸気制御筒27Bにはマニホールド14側に大径部33より径が小さくされた小径部32が設けられており、空気流動路30において小径部32の外周側の流動面積が大径部33の外周側の流動面積より大きいため、内部空間27aを流動される多くの空気が流動孔31から空気流動路30へ向けて流動され易くなる。
【0077】
従って、流速が速くされたより大流量の空気が空気流動路30から吸気ポート6の周面6bに沿って流動されるため、周面6bと吸気弁17のバルブヘッド19とにデポジットPが堆積し難く、また、デポジットPが周面6bとバルブヘッド19に付着していたとしてもデポジットPが流速の速くされた空気によって燃焼室14側へ吹き飛ばされる。
【0078】
このように、より大流量で高い風圧の空気が吸気ポート6の周面6bに沿って流動されるため、吸気ポート6の周面6bと吸気弁17とにデポジットPが堆積し難く、デポジットPの堆積をより一層効率的に抑制して燃焼効率のより一層の向上を図ることができる。
【0079】
また、吸気制御筒27Bは大径部33に流動孔31が形成されているため、大径部33の外周側と内周側の流速の差が大きく、流速の差が大きな領域において負圧が発生するため、内部空間27aから空気流動路30へ向けて流動される空気の量が多くなり、吸気ポート6の周面6bや吸気弁17へのデポジットPの堆積の抑制をより効率的に行うことができる。
【0080】
さらに、吸気制御筒27Bは中間部34が吸気制御筒27Bの軸方向に対して傾斜されており、空気流動路30を流動される空気の流速を低下させることなく空気が大径部33側から小径部32側へ円滑に流動されるため、吸気ポート6の周面6bや吸気弁17へのデポジットPの堆積をより一層効率的に抑制することができる。
【0081】
尚、吸気制御筒27Bにおいても吸気制御筒27Aと同様に、流動孔31が吸気制御筒27Bの軸方向に対して内側から外側へ行くに従って燃焼室14に近付く方向へ傾斜されていてもよい。
【0082】
また、上記には、吸気制御筒27Bにおいて流動孔31が大径部33に形成された例を示したが、流動孔31が中間部34に形成されていてもよい(
図9参照)。
【0083】
このように、中間部34に流動孔31が形成されることにより、大径部33に対して内周側に屈曲する部分に流動孔31が位置するため、大径部33の内周面に沿って流動される空気が流動孔31に直進的に流入され、内部空間27aを燃焼室14へ向けて流動する空気が空気流動路30に流動され易くなり、吸気ポート6の周面6bや吸気弁17へのデポジットPの堆積を一層効率的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0084】
1…エンジン、3…シリンダーヘッド、6…吸気ポート、6b…周面、12…吸気通路、14…燃焼室、17…吸気弁、27…吸気制御筒、27a…内部空間、28a…外周面、30…空気流動路、27A…吸気制御筒、31…流動孔、27B…吸気制御筒、32…小径部、33…大径部、34…中間部、50…吸気装置