(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】バルーンにより膨らませることができる内部人工器官
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20230106BHJP
A61F 2/07 20130101ALI20230106BHJP
【FI】
A61M25/10 540
A61F2/07
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019025848
(22)【出願日】2019-02-15
(62)【分割の表示】P 2017528199の分割
【原出願日】2015-11-25
【審査請求日】2019-03-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-19
(32)【優先日】2014-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ジェーン ケー.ボーン
(72)【発明者】
【氏名】コーディ エル.ハートマン
(72)【発明者】
【氏名】ディーヌ ジー.カンジッカル
(72)【発明者】
【氏名】ブレット ジェイ.キルグロー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ ビー.ケーニッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ジェイ.ニッカーソン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ジー.トリーベス
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】村上 聡
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-520632(JP,A)
【文献】特表2010-500107(JP,A)
【文献】特表2005-535414(JP,A)
【文献】国際公開第2013/162685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントグラフトと、カテーテル組立体とを含む医療機器であって、
前記ステントグラフトは、グラフト部と、前記グラフト部の周囲に配置されて前記グラフト部に連結された、複数の分離した環状ステント要素とを含み、第1の自由端、第2の自由端、及び前記第1の自由端と前記第2の自由端との間の中央部を有すると共に、未展開直径及び前記第1の自由端と前記第2の自由端の間の未展開長手方向長さを有する未展開状態、並びに、展開直径及び前記第1の自由端と前記第2の自由端の間の展開長手方向長さを有する展開状態を有し、
前記ステントグラフトは、ステント部とグラフト部とを含むと共に、前記未展開状態で前記カテーテル組立体に組み立てられており、
前記カテーテル組立体は、バルーンと、前記バルーンを同心円状に囲むカバーとを含み、
前記カバーは、第1の端部及び第2の端部と、前記第1及び第2の端部の間に位置する中央部とを含むと共に、前記カバーの前記第1及び第2の端部が前記バルーンの膨脹に対して付与する抵抗が、前記カバーの前記中央部が前記バルーンの膨脹に対して付与する抵抗よりも大きくなるように、前記カバーが前記バルーンを同心円状に包囲し、
前記ステントグラフトの前記中央部が前記カバーと協働して、前記バルーンの膨脹に対して
付与する抵抗が、前記カバーの前記第1及び第2の端部が前記バルーンに対して付与する抵抗を超えるように、前記ステントグラフトが前記カバー及び前記バルーンの周囲に配置され、
前記ステントグラフトの前記中央部における前記バルーンの膨脹率に対する、前記ステントグラフトの前記第1及び第2の自由端における前記バルーンの膨脹率の差が低減され、前記バルーンが前記ステントグラフトを前記未展開状態から前記展開状態に膨らませる際に、前記ステントグラフトの長手方向の圧縮が低減される、医療機器。
【請求項2】
前記ステントグラフトの前記展開長手方向長さは、前記ステントグラフトの前記未展開長手方向長さの少なくとも85%である、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記バルーンが前記ステントグラフトを前記未展開状態から前記展開状態に膨らませる際に前記ステントグラフトの長手方向の圧縮を低減するように、前記カバーの前記第1及び第2の端は各々、前記バルーンの対応する肩部の膨脹に抵抗するように構成される補強部を含む、請求項1に記載の医療機器。
【請求項4】
前記ステントグラフトの前記ステント部は、前記ステントグラフトの前記グラフト部によって接続される別個の部品である複数の環状ステント要素を含む、請求項1に記載の医療機器。
【請求項5】
前記グラフト部は、前記未展開状態の前記ステントグラフトを長手方向に亘って収容するように構成される、請求項1に記載の医療機器。
【請求項6】
前記ステントグラフトの前記グラフト部はePTFEで形成される、請求項1に記載の医療機器。
【請求項7】
前記バルーンが第1の端及び第2の端を有し、前記カバーが前記バルーンを同心円状に包囲すると共に、前記バルーンの前記第1及び第2の端の各々を超えて延在する、請求項1に記載の医療機器。
【請求項8】
ステントグラフトと、カテーテル組立体とを含む医療機器であって、
前記ステントグラフトは、第1の自由端、第2の自由端、及び前記第1の自由端と前記第2の自由端との間の中央部を有し、前記第1の自由端と前記第2の自由端との間の未展開長手方向長さを有する未展開状態及び前記第1の自由端と前記第2の自由端との間の展開長手方向長さを有する展開状態を有すると共に、前記ステントグラフトは、グラフト部、前記グラフト部の周囲に配置されて前記グラフト部に連結された、複数の分離した環状ステント要素とを含み、
前記ステントグラフトは、前記未展開状態で前記カテーテル組立体に組み立てられていると共に、前記カテーテル組立体は、バルーンと、前記バルーンを同心円状に囲むカバーとを含み、
前記カバーは、第1の端部及び第2の端部と、前記第1及び第2の端部の間に位置する中央部とを含むと共に、前記カバーの前記第1及び第2の端部が前記バルーンの膨脹に対して付与する抵抗が、前記カバーの前記中央部が前記バルーンの膨脹に対して付与する抵抗よりも大きくなるように、前記カバーが前記バルーンを同心円状に包囲し、
前記ステントグラフトの前記中央部が前記カバーと協働して、前記バルーンの膨脹に対して
付与する抵抗が、前記カバーの前記第1及び第2の端部が前記バルーンに対して付与する抵抗を超えるように、前記ステントグラフトが前記カバー及び前記バルーンの周囲に配置され、
ここで前記ステントグラフトの前記展開長手方向長さが、前記ステントグラフトの前記未展開長手方向長さの少なくとも85%である、医療機器。
【請求項9】
前記ステントグラフトの前記グラフト部がePTFEにより形成される、請求項8に記載の医療機器。
【請求項10】
前記バルーンが第1の端及び第2の端を有し、前記カバーが前記バルーンを同心円状に包囲すると共に、前記バルーンの前記第1及び第2の端の各々を超えて延在する、請求項8に記載の医療機器。
【請求項11】
ステントグラフトと、カテーテル組立体とを含む医療機器であって、
前記ステントグラフトは、内側ePTFEグラフト要素、外側ePTFEグラフト要素、及び、前記内側ePTFEグラフト要素と前記外側ePTFEグラフト要素との間に位置する複数の環状ステント要素を含むと共に、前記ステントグラフトは、未展開直径を有する未展開状態と前記未展開直径よりも大きな展開直径を有する展開状態を有し、
前記カテーテル組立体は、カバーにより同心円状に囲まれるバルーンを含み、
前記カバーは、2つの補強部と、前記補強部の間に位置する中央部とを有し、前記補強部は、前記バルーンの対応する肩部の膨脹に抵抗するように構成され、
前記カバーの前記補強部が前記バルーンの対応する肩部の膨脹に対して
付与する抵抗が、前記カバーの前記中央部が前記バルーンの膨脹に対して付与する抵抗を超えるように構成され、
前記カバーの前記補強部により前記バルーンの前記円錐状端部の膨脹に対して
付与される抵抗を、前記ステントグラフトの周囲で前記バルーンの膨脹に対して
付与される抵抗が超えるように、前記ステントグラフトが前記カバーの一部の周囲に配置され、
前記バルーンが前記ステントグラフトを前記未展開状態から前記展開状態に膨らませる際に、前記ステントグラフトの長手方向の圧縮が低減される、医療機器。
【請求項12】
前記カバーの前記補強部は、前記バルーンを膨らませる際に前記バルーンの中央部に対する前記バルーンの前記肩部の半径方向の膨脹量を減少させる前記バルーンの膨脹輪郭を維持する、請求項11に記載の医療機器。
【請求項13】
前記複数の環状ステント要素は、前記ステントグラフトが前記未展開状態にあるときに長手方向の長さを収容するように構成される、請求項11に記載の医療機器。
【請求項14】
前記ステントグラフトは、前記未展開状態で未展開長さを有し、前記展開状態で展開長さを有し、前記展開長さは前記未展開長さの85%~99%の間である、請求項11に記載の医療機器。
【請求項15】
前記複数の環状ステント要素は相互接続されたワイヤフレームを含む、請求項11に記載の医療機器。
【請求項16】
前記複数の環状ステント要素は、一列の相互接続された菱形のワイヤフレームを含む、請求項11に記載の医療機器。
【請求項17】
第1の環状ステント要素の頂点と第2の環状ステント要素の隣接する頂点は長手方向軸に沿って位相がずれている、請求項11に記載の医療機器。
【請求項18】
前記バルーンが第1の端及び第2の端を有し、ここで前記カバーが前記バルーンを同心円状に包囲すると共に、前記バルーンの前記第1及び第2の端の各々を超えて延在する、請求項11に記載の医療機器。
【請求項19】
ステントグラフトと、カテーテル組立体とを含む医療機器であって、
前記ステントグラフトは、未展開直径及び未展開長さを有する未展開状態、並びに展開直径及び展開長さを有する展開状態を有すると共に、前記ステントグラフトは、内側グラフト要素、外側グラフト要素、及び、前記内側グラフト要素と前記外側グラフト要素との間に位置し、かつそれらに取り付けられた複数の環状ステント要素を含み、
前記カテーテル組立体は、円錐状端部を有するバルーンと、前記バルーンを同心円状に囲むカバーとを含み、
前記カバーは、前記バルーンの前記円錐状端部を同心円状に囲む補強部、及び中央部を有し、
前記カバーの前記補強部が前記バルーンの円錐状端部の膨脹に対して付与する抵抗が、前記カバーの前記中央部が前記バルーンの膨脹に対して付与する抵抗よりも大きくなるように、前記カバーの前記補強部は、前記カバーの前記中央部の密度よりも高い密度を有し、
前記カバーの前記補強部により前記バルーンの前記円錐状端部の膨脹に対して
付与される抵抗を、前記ステントグラフトの周囲で前記バルーンの膨脹に対して
付与される抵抗が超えるように、前記ステントグラフトが前記カバーの一部の周囲に配置され、
前記ステントグラフトの長手方向の圧縮を低減する膨脹輪郭が維持される、医療機器。
【請求項20】
前記ステントグラフトが前記未展開状態にあるときの前記複数の環状ステント要素のうちの少なくとも一部の間隔は、前記展開状態にある前記ステントグラフトによって回復される長手方向の長さを収容する、請求項19に記載の医療機器。
【請求項21】
前記展開長さは、前記未展開長さに比べて1%未満の短縮率を示す、請求項19に記載の医療機器。
【請求項22】
前記カバーの前記補強部は、前記中央部の半径方向強度よりも大きな半径方向強度を有する、請求項19に記載の医療機器。
【請求項23】
前記カバーの前記補強部は、前記バルーンが膨脹する間、前記バルーンの前記円錐状端部の膨脹を制限する、請求項19に記載の医療機器。
【請求項24】
前記カバーの前記補強部は、前記カバーの軸方向に圧縮された部分を含む、請求項19に記載の医療機器。
【請求項25】
前記カバーの前記補強部は、前記カバーのひだ付き部分を含む、請求項19に記載の医療機器。
【請求項26】
前記カバーの前記ひだ付き部分のひだは、前記バルーンのひだ付き部分のひだと対応する、請求項25に記載の医療機器。
【請求項27】
展開システムを作製する方法であって、ステントグラフトを展開機器に組み付けることを含み、
前記ステントグラフトは、グラフト部と、前記グラフト部の周囲に配置されて前記グラフト部に連結された、複数の分離した環状ステント要素とを含み、第1の自由端、第2の自由端、前記第1の自由端と前記第2の自由端との間の中央部を有すると共に、未展開状態で第1の直径を有し、
前記展開機器は、バルーンと、前記バルーンを囲むカバーとを有し、
前記カバーは、第1の端部及び第2の端部と、前記第1及び第2の端部の間に位置する中央部とを含むと共に、前記カバーの前記第1及び第2の端部が前記バルーンの膨脹に対して付与する抵抗が、前記カバーの前記中央部が前記バルーンの膨脹に対して付与する抵抗よりも大きくなるように構成され、
前記ステントグラフトが前記カバーの前記中央部及び前記バルーンを包囲するように、前記ステントグラフトが前記展開デバイスに取り付けられ、
前記ステントグラフトの前記中央部が前記カバーと協働して、前記バルーンの膨脹に対して
付与する抵抗が、前記カバーの前記第1及び第2の端部が前記バルーンに対して付与する抵抗を超えるように構成され、
前記ステントグラフトの前記中央部における前記バルーンの膨脹率に対する、前記ステントグラフトの前記第1及び第2の自由端における前記バルーンの膨脹率の差が低減され、前記バルーンが膨脹して前記ステントグラフトを前記未展開状態から前記展開状態へと移行させる際に、前記ステントグラフトの長手方向の圧縮が低減される、方法。
【請求項28】
前記バルーンが第1の端及び第2の端を有し、ここで前記カバーが前記バルーンを同心円状に包囲すると共に、前記バルーンの前記第1及び第2の端の各々を超えて延在する、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的に、脈管構造を治療する内部人工器官に関し、より具体的には、バルーンにより膨らませることのできる内部人工器官に関する。
【背景技術】
【0002】
内部人工器官は、救命のための貴重な道具である。多くの例では、内部人工器官は脈管構造に「未展開」状態で挿入されて、「展開」状態に拡張されなくてはならない。内部人工器官をこれら2つの状態の間で移行させるために、バルーンを未展開状態で内部人工器官内に配置して膨らませることがあり、バルーンが膨張すると内部人工器官を展開状態に押し込む。しかしながら、多くの例では、バルーンは内部人工器官の長手方向の長さを越えて伸びている。結果として、内部人工器官によって拘束されていないバルーンの部分が内部人工器官内にあるバルーンの部分に比べて急速に膨張し、これによりバルーンが内部人工器官に長手方向の力を作用させるようになり、この力により内部人工器官の長手方向の長さが減少するようになる。本開示の態様は、改善された内部人工器官を作製するために、以下でより詳細に考察される他の特徴及び利点の中で、上記の影響を低減する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態では、医療機器は、第1の自由端、第2の自由端、及び第1の自由端と第2の自由端との間の中間部を規定するステントグラフトを含み、このステントグラフトは、未展開直径及び第1の自由端と第2の自由端との間の長手方向の未展開長さを有する未展開状態ならびに展開直径及び第1の自由端と第2の自由端との間の長手方向の展開長さを有する展開状態を有する。ステントグラフトは、ステント部及びグラフト部を含む。この医療機器は、カテーテル組立体を更に含み、その上にステントグラフトが未展開状態で組み立てられる。このカテーテル組立体は、バルーンと、バルーンを同心円状に囲むカバーとを含む。ステントグラフトの中間部は、ステントグラフトの中間部でのバルーンの膨張に抵抗を付与し、カバーもバルーンの膨張に抵抗を付与して、ステントグラフトの中間部でのバルーンの膨張率とステントグラフトの自由端でのバルーンの膨張率との差を低減し、その結果、バルーンがステントグラフトを未展開状態から展開状態に膨らませる際に、ステントグラフトの長手方向の圧縮を低減する。
【0004】
一変形例では、ステントグラフトの展開長さは、ステントグラフトの未展開長さの少なくとも85%である。
【0005】
一変形例では、カバーは、バルーンがステントグラフトを未展開状態から展開状態に膨らませる際にステントグラフトの長手方向の圧縮を低減するように、バルーンの対応する肩部の膨張に抵抗するように構成される補強部を含む。
【0006】
一変形例では、ステントグラフトのステント部は、ステントグラフトのグラフト部によって接続される別個の部品である、複数の環状ステント要素を含む。
【0007】
一変形例では、グラフト部は、ステントグラフトが未展開状態であるときにステントグラフトの長手方向の長さを収容するように構成される。
【0008】
一変形例では、ステントグラフトのグラフト部はePTFEから形成される。
【0009】
別の実施形態では、医療機器は、第1の自由端、第2の自由端、及び第1の自由端と第2の自由端との間の中間部を規定するステントグラフトを含み、このステントグラフトは、第1の自由端と第2の自由端との間の長手方向の未展開長さを有する未展開状態及び第1の自由端と第2の自由端との間の長手方向の展開長さを有する展開状態を有する。ステントグラフトは、ステント部及びグラフト部を含む。カテーテル組立体は、その上にステントグラフトが未展開状態で組み立てられるが、バルーンとバルーンを同心円状に囲むカバーとを含み、ステントグラフトの展開長さがステントグラフトの未展開長さの少なくとも85%になるように、ステントグラフトの中間部がステントグラフトの中間部でのバルーンの膨張に抵抗を付与し、カバーもバルーンの膨張に抵抗を付与する。
【0010】
一変形例では、ステントグラフトのグラフト部はePTFEから形成される。
【0011】
一実施形態では、医療機器がステントグラフトを含み、このステントグラフトは、内側ePTFEグラフト要素、外側ePTFEグラフト要素、及び内側ePTFEグラフト要素と外側ePTFEグラフト要素との間に配置された複数の環状ステント要素を含み、このステントグラフトは、未展開直径を有する未展開状態及び未展開直径よりも大きな展開直径を有する展開状態を有し、またこの医療機器はカバーにより同心円状に囲まれるバルーンを含むカテーテル組立体を含み、このカバーは、バルーンがステントグラフトを未展開状態から展開状態に膨らませる際にステントグラフトの長手方向の圧縮を低減するように、バルーンの対応する肩部の膨張に抵抗するように構成される補強部を含む。
【0012】
一変形例では、カバーの補強部は、バルーンを膨らませる際にバルーンの中央部に対してバルーンの肩部の半径方向の膨張量を減少させる、バルーンの膨張輪郭を維持する。
【0013】
一変形例では、複数の環状ステント要素は、ステントグラフトが未展開状態のときに長手方向の長さを収容するように構成される。
【0014】
一変形例では、ステントグラフトは未展開状態で未展開長さを有し、展開状態で展開長さを有し、展開長さは未展開長さの85%~99%の間である。
【0015】
一変形例では、展開直径は約10mmであり、ステントグラフトは、展開状態にあるときに捻じれることなく、約8mm未満の曲げ半径に耐えるのに十分な可撓性を有する。
【0016】
一変形例では、展開直径は約10mmであり、ステントグラフトは、展開状態にあるときに約11psi~約12psiの間の半径方向の強度を有する。
【0017】
一変形例では、ステントグラフトが展開状態にあるとき、少なくとも1つの環状ステント要素が、隣接する環状ステント要素から約0.5mm~約2.0mmの間で離間している。
【0018】
一変形例では、ステントグラフトが未展開状態にあるとき、少なくとも1つの環状ステント要素は、隣接する環状ステント要素から約0.0mm~約0.2mmの間で離間している。
【0019】
一変形例では、複数の環状ステント要素は相互接続されたワイヤフレームを備える。
【0020】
一変形例では、ステントグラフトが展開状態にあるとき、相互接続されたワイヤフレームのうちの1つの内角は約90度である。
【0021】
一変形例では、複数の環状ステント要素は、一列の相互接続された菱形のワイヤフレームを含む。
【0022】
一変形例では、複数の環状ステント要素はステンレス鋼を含む。
【0023】
一変形例では、第1の環状ステント要素の頂点は、第2の環状ステント要素の隣接する頂点とは、長手方向軸に沿って位相がずれている。
【0024】
別の実施形態では、医療機器は、未展開直径及び未展開長さを有する未展開状態と、展開直径及び展開長さを有する展開状態とを有するステントグラフトを含み、このステントグラフトは、内側グラフト要素、外側グラフト要素、及び内側グラフト要素と外側グラフト要素との間に配置されこれらに取り付けられた複数の環状ステント要素を含み、またこの医療機器はカテーテル組立体を含み、このカテーテル組立体は、円錐状端部を有するバルーンと、バルーンを同心円状に囲むカバーとを含み、このカバーは中央部とバルーンの円錐状端部を同心円状に囲む補強部とを有し、このカバーの補強部は、グラフトステントの長手方向の圧縮を低減する膨張輪郭を維持するために、カバーの中央部の密度よりも高い密度を有する。
【0025】
一変形例では、ステントグラフトが未展開状態にあるときの複数の環状ステント要素の少なくとも一部の間隔は、展開状態にあるときにステントグラフトによって回復される長手方向の長さを収容する。
【0026】
一変形例では、展開長さは、未展開長さに比べて1%未満の短縮率を示す。
【0027】
一変形例では、ステントグラフトは、展開に先立って、バルーンに対してステントグラフトが動かないように、カバーの上に圧縮される。
【0028】
一変形例では、カバーの補強部は、中央部の半径方向強度よりも大きな半径方向強度を有する。
【0029】
一変形例では、外側グラフト要素は、カバーの内側表面と接触するePTFEを含む外側表面を含み、カバーの内側表面はePTFEを含む。
【0030】
一変形例では、バルーンはナイロンを含む。
【0031】
一変形例では、内側グラフト要素の内腔表面は、抗血栓性のコーティングを含む。
【0032】
一変形例では、カバーの補強部は、バルーンが膨張する間、バルーンの円錐状端部の膨張を制限する。
【0033】
一変形例では、カバーの補強部は、カバーの軸方向に圧縮された部分を含む。
【0034】
一変形例では、カバーの補強部は、カバーのひだ付き部分を含む。
【0035】
一変形例では、カバーのひだ付き部分のひだは、バルーンのひだ付き部分のひだと対応する。
【0036】
別の実施形態では、ステントグラフトを作製する方法は、複数の環状ステント要素を長手方向軸に沿って内側グラフト要素と外側グラフト要素との間に配置する工程、複数の環状ステント要素、内側グラフト要素、及び外側グラフト要素を圧縮された形態に圧縮する工程、および複数の環状ステント要素のうちの少なくとも2つを互いに近づけるように動かし長手方向の長さを収容する工程であって、これにより、ステントグラフトが展開された形態に膨らんだ際に、収容された長手方向の長さを回復する工程を含む。
【0037】
別の実施形態では、展開システムを作成する方法は、ステントグラフトを展開機器に組み付ける工程を含み、このステントグラフトは第1の自由端、第2の自由端、第1の自由端と第2の自由端との間の中間部、及び未展開状態で第1の直径を有し、展開機器はバルーンとバルーンを囲むカバーを有し、ステントグラフトはステントグラフトがカバー及びバルーンを囲むように展開機器に組み付けられ、ステントグラフトの中間部はバルーンの膨張に抵抗を付与し、カバーもバルーンの膨張に抵抗を付与してステントグラフトの第1の自由端及び第2の自由端でのバルーンの膨張率とステントグラフトの中間部でのバルーンの膨張率との差を低減し、その結果、バルーンが膨張してステントグラフトを未展開状態から展開状態に移行させる際のステントグラフトの長手方向の圧縮を低減する。
【0038】
一変形例では、複数の環状ステント要素のうちの少なくとも2つを互いに近づけるように動かす工程は、複数の環状ステント要素のうちの少なくとも2つを、約0.5mm~約2.0mmの間の分離距離から、約0.0mm~約0.2mmの間の分離距離まで動かす工程を含む。
【0039】
一変形例では、この方法は、バルーンの上にカバーを配置する工程を更に含み、このカバーはバルーンの肩に重なる少なくとも1つの補強部を有し、この少なくとも1つの補強部はカバーの中央部よりも膨張に対してより強い抵抗をもたらし、またこの方法はカバーの中央部の上にステントグラフトを配置する工程を更に含み、その結果、バルーンが膨張する間、カバーの補強部がステントグラフトに作用する長手方向の圧縮力を低減する。
【0040】
一変形例では、ステントグラフトは、ステントグラフトが圧縮された形態から展開された形態に膨らむ際に、99%超の長手方向の効率を示す。
【0041】
別の実施形態では、患者を治療するための方法は、患者の脈管にステントグラフトを挿入する工程を含み、ステントグラフトは第1の長さ及び第1の直径を有し、ステントグラフトはバルーンを同心円状に囲むカバーの中央部を囲み、カバー及びバルーンはそれぞれステントグラフトの第1の長さよりも長い長さを有し、その結果バルーンの少なくとも1つの肩及びカバーの対応する部分がステントグラフトの外側になり、カバーの対応する部分は補強されてカバーの中央部がバルーンの中央部にもたらす抵抗よりもより強いバルーンの肩の膨張への抵抗をもたらし、またこの方法はバルーンに圧力を印加する工程を含み、これによりステントグラフトを第1の直径よりも大きな第2の直径に膨らませ、かつステントグラフトを第2の長さに膨らませ、カバーの補強部分はバルーンの肩の膨張を制限して、ステントグラフト上の長手方向の圧縮力を制限する。
【0042】
一変形例では、ステントグラフトの第2の長さは、ステントグラフトの第1の長さの少なくとも85%である。
【0043】
一変形例では、カバーの補強部は、カバーの押しつぶされた部分を含む。
【0044】
一変形例では、カバーの補強部は、カバーのひだ付き部分を含む。
【0045】
一変形例では、カバーのひだ付き部分のひだは、バルーンのひだ付き部分のひだと対応する。
【0046】
別の実施形態では、患者を治療する方法は、患者の脈管にステントグラフトを挿入する工程を含み、ステントグラフトは第1の長さ及び第1の直径を有し、ステントグラフトはバルーンを囲むカバーを囲み、ステントグラフトは長手方向の長さを収容するように配置される複数のステント要素を含み、またこの方法はバルーンに圧力を印加する工程を含み、これにより第1の直径よりも大きな第2の直径及び第2の長さにステントグラフトを膨らませ、ステントグラフトを膨らませることにより収容された長手方向の長さを回復させる。
【0047】
一変形例では、ステントグラフトの第2の長さは、ステントグラフトの第1の長さの85%~99%の間である。
【0048】
一変形例では、ステントグラフトの第2の長さは、ステントグラフトの第1の長さの少なくとも85%である。
【0049】
一変形例では、ステントグラフトの第2の長さは、ステントグラフトの第1の長さの少なくとも99%である。
【0050】
別の実施形態では、患者を治療するための方法は、患者の脈管にステントグラフトを挿入する工程を含み、ステントグラフトは第1の自由端、第2の自由端、第1の自由端と第2の自由端との間の中間部、及び第1の直径を有し、ステントグラフトはバルーンを囲むカバーを囲み、ステントグラフトは複数のステント要素を含み、またこの方法はバルーンに圧力を印加する工程を含み、これによりステントグラフトを未展開状態から第1の直径よりも大きな第2の直径を有する展開状態に膨らませ、ステントグラフトの中間部はバルーンの膨張に抵抗し、カバーもバルーンの膨張に抵抗してステントグラフトの第1の自由端及び第2の自由端でのバルーンの膨張率とステントグラフトの中間部でのバルーンの膨張率との差を低減し、その結果、バルーンがステントグラフトを未展開状態から展開状態に膨らませる際にステントグラフトの長手方向の圧縮を低減する。
【0051】
一変形例では、ステントグラフトの第2の長さは、ステントグラフトの第1の長さの85%~99%の間である。
【0052】
一変形例では、ステントグラフトは、未展開状態での第1の長さと、第1の長さの少なくとも85%である展開状態での第2の長さとを規定する。
【0053】
一変形例では、ステントグラフトは、未展開状態での第1の長さと、第1の長さの少なくとも99%である展開状態での第2の長さとを規定する。
【0054】
本開示の特徴及び利点が、図面と併せて、以下に記載される詳細な説明から、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1A】
図1A及び1Bは、本開示の実施形態による内部人工器官の側面図を示す。
【
図2A】
図2A及び2Bは、本開示の実施形態による内部人工器官送達システムの側面図を示す。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態による医療機器送達システムの斜視図を示す。
【
図4A】
図4A及び4Bは、本開示の実施形態による、未展開のバルーン及びカバーの断面図を示す。
【
図5】
図5A~5Fは、展開のいくつかの段階のうちの一段階での、本開示の実施形態による内部人工器官送達システムの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本開示のいくつかの態様が意図された機能を実施するように構成される任意の数の方法及び装置により実現され得ることを、当業者は容易に理解することができる。言い換えれば、意図された機能を実施するために、他の方法及び装置を本明細書に組み込むことができる。なお、本明細書で参照される添付の図面は、完全に正確な縮尺では描かれてはおらず、本開示のいくつかの態様を図示するために誇張されていることがあり、その点で、図面は限定目的で解釈されるべきではない。最後に、本開示はいくつかの原理及び考えと関連して記述されることがあるが、本開示は理論による制約を受けるべきではない。
【0057】
「内部人工器官機器」「内部人工器官」「脈管機器」などの用語は、本明細書及び特許請求の範囲を通して、体内管腔内に移植及び/又は展開することができる任意の医療機器を指すことができる。いくつかの実施形態では、内部人工器官は、ステント、ステントグラフト、グラフト、フィルタ、閉塞器、バルーン、リード、エネルギー伝達機器、展開可能パッチ、留置カテーテル等を含むことができる。
【0058】
更に、本明細書及び特許請求の範囲を通して、本明細書に記述する送達システムは、一般的に、「カバー部材」又は「覆い」により束縛される内部人工器官を含むことができる。カバー部材又は覆いは、いくつかの実施形態で、内部人工器官に適合された材料シートを含むことができる。本明細書及び特許請求の範囲を通して使用される場合、「細長い部材」という用語は、カテーテル、ガイドワイヤ、導入さや(introducer theath)等のシャフト状構造物を指すことができる。いくつかの実施形態で、内部人工器官は、本明細書では内側シャフトとも呼ばれるカテーテルに装着又は装填されることができ、また、制約のある直径で、本明細書では外側シャフトとも呼ばれる導入さや内部に取り付けられることができる。
【0059】
更に、「遠位」という用語は、医療機器が導入される身体の位置からさらに遠くの相対的位置を指す。同様に、「遠位に」という用語は、医療機器が導入される身体の位置から離れる方向を指す。
【0060】
「近位」という用語は、医療機器が導入される身体の位置により近い相対的位置を指す。同様に、「近位に」という用語は、医療機器が導入される身体の位置に向かう方向を指す。
【0061】
引き続き近位及び遠位という用語に関して、本開示はこれらの用語に関して狭義に解釈されるべきではない。むしろ、本明細書で記述する機器及び方法は、患者の精密な分析に対して変更及び/又は調節されることができる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「束縛する」という用語は、(1)膨張可能な移植物の直径が、自己膨張若しくは機器に補助される膨張で膨らむのを制限すること、又は(2)膨張可能な移植物を(例えば、保管若しくは生体適合性上の理由のため、かつ/又は、膨張可能な移植物及び/若しくは脈管構造を保護するため)、制限するのでなく、覆う又は囲むこと、を意味することがある。
【0063】
本明細書で使用される場合、「脈管」という用語は、体内の任意の管腔構造又は管状構造を指し、これらの構造物は身体に対して利用されることができる。これには、血管、動静脈奇形や動脈瘤若しくはその他などの血管障害、リンパ系の脈管、食道、腸管の解剖学的構造、曲がりくねった空洞、必尿生殖器系、又は他のそのような系若しくは解剖学的特徴構造を含むが、これらに限定はされない。本発明の実施形態は、脈管内部の又は脈管に関連した悪性疾患(例えば、癌)の治療にも適している。
【0064】
まず
図1A及び
図1Bを参照すると、内部人工器官100が示されている。内部人工器官100は、例えば、膨張可能なステントグラフトを含むことがある。いくつかの実施形態で、内部人工器官100は、バルーンにより膨張可能なステントグラフトを含む。内部人工器官100は本明細書ではバルーンにより膨張可能なステントグラフトとして記述されるが、内部人工器官100は、自己膨張可能なステントグラフトを含め、他の移植可能で膨張可能な医療機器を含んでもよい。
【0065】
いくつかの実施形態で、ステントグラフト100はステント部材102を含む。例えば、ステント部材102は、1つ以上の環状ステント要素104を含むことができる。より詳細に考察されるように、環状ステント要素104は、ステントグラフト100の長手方向軸192に沿って、互いに隣接して配置されることができる。いくつかの実施形態では、環状ステント要素104は、互いに均等に間隔をあけている(即ち、長手方向軸に沿って均一に分布している)。他の実施形態では、1つ以上の環状ステント要素104は、長手方向軸192に沿って異なる間隔で互いに離れて(即ち、長手方向軸に沿って不均一に分布する)いてもよい。環状ステント要素104の任意の配置が、本開示の範囲内である。
【0066】
環状ステント要素104は、例えば、円形パターンに配置された相互接続されたワイヤフレーム106を含むことができる。例えば、環状ステント要素104は、一列の相互接続されたワイヤフレーム106を含むことができる。ワイヤフレーム106の1つ以上のポイント118は、隣接するワイヤフレーム106のポイント118と接触しかつ接続されることができる。いくつかの実施形態では、環状ステント要素104は、互いに独立して形成されかつ1つ以上のポイント118で互いに接続される複数の個々のワイヤフレーム106を含むことができる。他の実施形態では、ワイヤフレーム106は、単一の相互接続されたステント要素104として、一緒に形成される。
【0067】
いくつかの実施形態では、環状ステント要素104は、互いに剛性が異なることができる。例えば、強められた剛性を有する1つ以上の環状ステント要素104を、ステントグラフト100の遠位端及び/又は近位端に配置することができる。更に、弱められた剛性を有する1つ以上の環状ステント要素104を、ステントグラフト100の遠位端及び/又は近位端から離して配置することができる。互いに異なる剛性を備える複数の要素を含む、環状ステント要素104の任意の組み合わせが、本開示の範囲内である。
【0068】
ワイヤフレーム106は、例えば平行四辺形などの多角形を含むことができる。いくつかの実施形態では、ワイヤフレーム106は菱形を含む。他の実施形態では、ワイヤフレーム106は、正方形又は長方形の形状を含むことができる。多角形ではない形状(卵形又は丸みを帯びた形状など)又はうねり若しくは湾曲部を含む形状を含めて、ワイヤフレーム106の任意の形状が、本開示の範囲内である。
【0069】
いくつかの実施形態では、ワイヤフレーム106は金属材料を含む。例えば、ワイヤフレーム106は、ステンレス鋼又は他の合金などの鋼を含むことができる。他の実施形態では、ワイヤフレーム106は、例えばニチノールなどの形状記憶合金を含むことができる。更に他の実施形態では、ワイヤフレーム106は、重合体材料などの非金属材料を含む。更に、ワイヤフレーム106の材料は、恒久的(即ち、非生体吸収性)であるか又は生体吸収性であることができる。十分な強度を有するワイヤフレーム106の任意の材料が、本開示の範囲内である。
【0070】
例えば、環状ステント要素104は、例えば、単一の金属管から切断することができる。いくつかの実施形態では、環状ステント要素104は、ステンレス鋼管からレーザ切断される。しかしながら、環状ステント要素104及び/又はワイヤフレーム106を形成する任意の態様が、本開示の範囲内である。
【0071】
内部人工器官100は、グラフト部材114を更に含むことができる。グラフト部材114は、例えば、血液が一方の端から他方の端へ流れることができる管腔を提供することができる。更に、より詳細に考察するように、グラフト部材114は、一緒に固定された複数の層又は要素を含んで単一のグラフト部材114を形成することができる。
【0072】
グラフト部材114は、例えば、内側グラフト要素108を含むことができる。いくつかの実施形態では、ステント部材102は、内側グラフト要素108の周りに同心円状に配置される。例えば、内側グラフト要素108は、脈管内部で血流と接触する内腔表面110を有する重合体材料の層を含むことができる。ステント部材102は、内側グラフト要素108を囲み、これと接触し、これに支持を提供することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、内側グラフト要素108は、脈管損傷又は動脈瘤などの異常を回避するために迂回経路を提供することができる、重合体膜を含む。内側グラフト要素108は、例えば、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエステル、ポリウレタン、パーフルオロエラストマーなどのフッ素重合体類、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン類、ウレタン類、超高分子量ポリエチレン、アラミド繊維、及びそれらの組み合わせを含むことができる。グラフト部材材料についての他の実施形態には、超高分子量ポリエチレン繊維(例えば、Spectra(登録商標)、Dyneema Purity(登録商標)等)、又はアラミド繊維(例えば、Technora(登録商標)等)などの高強度重合体繊維を含むことができる。患者の体内で流体が流れるための管腔を提供することができる任意のグラフト部材が、本開示の範囲内である。
【0074】
内側グラフト要素108は、例えば、重合体材料の1つ以上の層を含むことができる。いくつかの実施形態では、内側グラフト要素108は、ほぼ管状の部材を形成するために、基材またはマンドレルの周囲に連続的に巻かれた重合体材料を含む。例えば、内側グラフト要素108は、重合体材料の円周方向、らせん方向、又は軸方向の向きに構築されることができる。本明細書で使用される場合、「向き」とは一般的に、多くの場合は長手方向軸192に対する、構成要素又は材料(例えば、重合体材料)の方向特性を指す。向きは、例えば、材料の強度の向きなど、特定の特徴の方向特性を指すために使用されることもある。
【0075】
上記で考察された実施形態では、重合体材料をマンドレル又は基材の長手方向軸にほぼ垂直に巻く、即ち、円周方向に巻くことができる。他の実施形態では、材料をマンドレル又は基材の長手方向軸に対して0度よりも大きく90度未満の角度で巻く、即ち、らせん状に巻くことができる。更に他の実施形態では、重合体材料をマンドレル又は基材の長手方向軸とほぼ平行に巻く、即ち、軸方向に(即ち長手方向に)巻くことができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、内側グラフト要素108は、内腔表面110上のコーティングを含んでいてもよい。例えば、抗血栓性コーティングなどの治療剤を、内腔表面110に塗布してもよい。いくつかの実施形態では、ヘパリンコーティングが内腔表面110に施される。
【0077】
グラフト部材114は、例えば、外側グラフト要素112を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、外側グラフト要素112は、ステント部材102の少なくとも一部を同心円状に囲む。例えば、外側グラフト要素112は、ステント部材102及び内側グラフト要素108を同心円状に囲むことができ、ステント部材102の環状ステント要素104を2つのグラフト要素108と112との間に実質的に挟み込むことができる。
【0078】
内側グラフト要素108と同様に、外側グラフト要素112は、例えば、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエステル、ポリウレタン、パーフルオロエラストマーなどのフッ素重合体類、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン類、ウレタン類、超高分子量ポリエチレン、アラミド繊維、及びそれらの組み合わせを含むことができる。外側グラフト要素112は、超高分子量ポリエチレン繊維(例えば、Spectra(登録商標)、Dyneema Purity(登録商標)等)、又はアラミド繊維(例えば、Technora(登録商標)等)などの高強度重合体繊維を含むことができる。更に、外側グラフト要素112は、重合体材料の1つ以上の層を含むことができ、内側グラフト要素108に関連して記述したように、管又は巻かれた要素であることがある。いくつかの実施形態では、内側グラフト要素108及び外側グラフト要素112は、同一の重合体材料を含む。他の実施形態では、内側グラフト要素108及び外側グラフト要素112は、異なる重合体材料を含む。
【0079】
そのような実施形態では、内側グラフト要素108及び外側グラフト要素112は、複数の環状ステント要素104の各々の向きを定めて位置を維持することができる。例えば、ステント部材102の環状ステント要素104の各々は、内側グラフト要素108に沿って所望の位置に配置され、次いで外側グラフト要素112によって囲まれることができる。いくつかの実施形態では、環状ステント要素104が内側グラフト要素108に沿って適切に配置された後で、内側グラフト要素108及び外側グラフト要素112が互いに結合される。例えば、熱を印加して内側グラフト要素108及び外側グラフト要素112を互いに結合することができ、それによって、グラフト部材114に対して環状ステント要素104の位置を維持する。
【0080】
いくつかの実施形態では、環状ステント要素104は、互いに所望の距離だけ離れている。例えば、環状ステント要素104の各々を、互いに約0mm(即ち、1つの環状ステント要素104が別のものに当接している)~約4mmの間で離して配置することができる。いくつかの実施形態では、環状ステント要素104の各々は互いに約1.0mm~約2.0mmの間で離れていることができ、特別な実施形態では、互いに約1.1mm~1.5mmの間で離れている。特定の実施形態に関して記述したが、ステント部材102の環状ステント要素104は、同一のステント部材102内の複数の異なる間隔を含めて、任意の距離だけ離すことができる。
【0081】
更に、ステント部材102が、離れている環状ステント要素104を含む実施形態では、ステントグラフト100は、1つ以上の環内グラフト区域120を含むことができる。例えば、環内グラフト区域120は、隣接する環状ステント要素104同士の間に位置する内側グラフト要素108及び外側グラフト要素112の一部を含むことができる。更に考察するように、環内グラフト区域120の特性は、区域120の長さを含めて、ステントグラフト100に所望の特性をもたらすように操作することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、第1の環状ステント要素106aは第1の頂点120aを含み、第2の環状ステント要素106bは第2の頂点120bを含む。第1の頂点120a及び第2の頂点120bは、互いに隣接することができる。例えば、第1の環状ステント要素106a及び第2の環状ステント要素106bは、第1の頂点120a及び第2の頂点120bが長手方向軸192に直交する共通平面190内にあるように、互いに対向することができる。別の言い方をすると、第1の頂点120a及び第2の頂点120bは、互いに一致している。他の実施形態では、第1の頂点120a及び第2の頂点120bは、長手方向軸192に直交する共通平面内にはない(即ち、頂点120a及び120bは一致していない、あるいは互いに同一平面上にはない)。特定の実施形態に関して説明したが、同一の医療機器(即ち、ステントグラフト)との複数の異なる向きを含めて、環状ステント要素104の任意の向きが、本開示の範囲内である。
【0083】
ステントグラフト100を、患者の治療領域に送達し、かつ治療領域内で展開することができる。例えば、まず
図2A及び
図2Bを参照すると、ステントグラフト100を用意し、連続的な管腔264を有するカテーテル管262を備えるカテーテル組立体260に取り付けることができる。カバー266は、カテーテル管262の遠位端で又はその近傍でカテーテル管262及び連続的な管腔264に結合されるバルーン268を、同軸上で囲むことができる。カテーテル管262へのカバー266の取り付けは、例えば、シアノアクリレート接着剤などの接着剤を使用してカテーテル管262にカバー266の近位端及び遠位端を接着することを含めて、いくつかの態様で達成することができる。更に、重合体テープ及び/又はフィルムを使用して、カバー266の近位端及び遠位端をカテーテル管262に固定することができる。
【0084】
バルーン268は、例えば、加圧時に患者の脈管構造内で膨張することができるほぼ管状のバルーンを含むことができる。例えば、水又は生理食塩水などの生体適合性の流体をカテーテル管262に導き、連続的な管腔264とバルーン268の内部に位置するカテーテル管262の膨張ポート(図示せず)とを通過させて、バルーン268を加圧することができる。バルーン268への圧力が増加すると、バルーン268の直径も増加する。
【0085】
バルーン268は、例えば、柔軟性のない、ほぼ弾性のないバルーンを含むことができる。そのような実施形態では、バルーン268は、十分な加圧時にバルーン268を選択された直径に膨らませ、破裂圧力に達するまで更なる加圧下で選択された直径又はそれに近い直径を維持することができるように構成された材料、例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカプロラクタム、ポリエステル類、ポリエーテル類、ポリアミド類、ポリウレタン類、ポリイミド類、ABS共重合体類、ポリエステル/ポリ-エーテルブロック共重合体類、アイオノマー樹脂類、液晶重合体類、及び剛性棒状重合体類などを含むことができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、バルーン268は、柔軟な、比較的に弾性を有するバルーンを含むことができる。そのような実施形態では、バルーン268は、バルーン268への圧力が増加するにつれてバルーン268の直径が連続的に増加できるように構成された材料、例えば、ポリウレタン類、ラテックス、及びポリシロキサン類などのエラストマー・オルガノシリコーン重合体類などを含むことができる。膨張限界に達すると、バルーン268は破裂することがある。
【0087】
更に他の実施形態では、バルーン268はやや柔軟性のあるバルーンを含む。そのような実施形態では、バルーン268は、柔軟性のある属性と柔軟性のない属性とを組み合わせた挙動を示す。柔軟性のある実施形態及び柔軟性のない実施形態に関連して説明したが、柔軟性のある挙動と柔軟性のない挙動の組み合わせを含めて、患者の体内でバルーン268が予測可能な態様で膨張できるようにする任意の材料又は構成が、本開示の範囲内である。
【0088】
図3を参照すると、いくつかの実施形態で、バルーン268は複数のひだ370を含むことができる。ひだ370は、例えば、長手方向軸192の少なくとも一部にほぼ沿って延びるバルーン268の材料中の折りたたみ又は変曲点を含むことができる。そのような実施形態では、バルーン268は、1つ以上のひだ370を有するほぼ管状の形状を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、バルーン268を、カバー266で同軸上に囲まむことができる。カバー266は、バルーン268が収縮しているときを含めて、バルーン268とカバー266の両方が実質的に同じ形状を有するように、バルーン268の外側表面と実質的に一致することができる内側表面を含むことができる。しかしながら、他の実施形態では、カバー266はバルーン268とは異なる形状又は構成を含むことができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、カバー266は複数のひだ372を含むことができる。バルーン268と同様に、ひだ372は、例えば、長手方向軸の少なくとも一部にほぼ沿って延びるカバー266の材料中の折りたたみ又は変曲点を含むことができる。そのような実施形態では、カバー266は2つ以上のひだ372を有するほぼ管状の形状を含む。いくつかの実施形態では、カバー266はバルーン268と同数のひだ372を含む。いくつかの実施形態では、バルーンカバー266の少なくとも一部又は実効長さ全体に沿って、バルーンカバー266の内側表面はバルーン268の外側表面とひだ付きの折り畳まれた形態及びひだのとれた膨張した形態の両方で接する。換言すると、
図3に示すように、カバー266のひだ付き部分はバルーン268の対応するひだ付き部分と構成が実質的に対応し、カバー266のひだのない部分はバルーン268の対応するひだのない部分と構成が実質的に対応する。
【0091】
ひだ370及び372を、カバー266及びバルーン268に同時に形成することができる。例えば、バルーン268をカバー266で同軸上に囲むことができ、次いでバルーン268及びカバー266の両方に、ひだ370及び372をそれぞれ形成することができる。
【0092】
他の実施形態では、バルーン268にひだ370を形成した後に、ひだ372をカバー266に形成することができる。例えば、予めひだを付けたバルーン268を、カバー266で同軸上に囲むことができる。そのような実施形態では、カバー266と予めひだを付けたバルーン268の両方を一緒に実効圧力で膨らませることができ、その後、例えば、予めひだを付けたバルーン268と同じ数及び構成のひだをカバー266に形成することができる機械的ひだ形成工程にカバー266及びバルーン268をかける。カバー266にひだ372を形成する間、カバー266とバルーン268の両方を収縮させて、患者の体内に送達するように圧縮することができる。特定の実施形態に関して記述したが、カバー266にひだを形成する任意の態様が本開示の範囲内である。
【0093】
更に他の実施形態では、バルーン268は複数のひだ370を含むことがあり、カバー266はひだ372を全く含まないことがある。そのような実施形態では、ひだ370をバルーン268に形成することができ、続いてその後、カバー266をバルーン268の外側表面の周りに同軸上に配置する。特定の例(即ち、バルーン268とカバー266の両方がひだを含むか、又はバルーン268若しくはカバー266のいずれかのみがひだを含む)に関して記述したが、バルーン268及び/又はカバー266が複数のひだを含む任意の構成が本開示の範囲内である。
【0094】
カバー266は、例えば、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、変性(例えば、高密度化)ePTFE、及びPTFEの発泡共重合体、などの発泡フッ素重合体などの重合体を含むことができる。いくつかの実施形態では、重合体は、節及び小繊維微細構造を含むことができる。いくつかの実施形態では、重合体を大幅に小繊維(即ち、融合された小繊維の不織物)にすることができる。特定の重合体に関して記述したが、患者の体内で予測可能な態様でカバー266が膨張できるようにする任意の材料又は構成が本開示の範囲内である。
【0095】
いくつかの実施形態では、カバー266は重合体材料の複数の層を含むことができる。例えば、カバー266は、ほぼ管状の部材を形成するために、基材またはマンドレルの周囲に連続的に巻かれた重合体材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、カバー266を、円周方向、らせん方向、又は軸方向の向きの重合体材料で構築することができる。そのような実施形態では、重合体材料をマンドレル又は基材の長手方向軸にほぼ垂直に巻く、即ち、円周方向に巻くことができる。他の実施形態では、材料をマンドレル又は基材の長手方向軸に対して0度よりも大きく90度未満の角度で巻く、即ち、らせん状に巻くことができる。更に他の実施形態では、重合体材料をマンドレル又は基材の長手方向軸とほぼ平行に巻く、即ち、軸方向に(即ち長手方向に)巻くことができる。
【0096】
図2Bを参照すると、カバー266は、例えば、バルーン268の長さ280よりも長い長さ282を有することができる。いくつかの実施形態では、カバー266を、第1のカバー端部270及び第2のカバー端部272が第1のバルーン端部274及び第2のバルーン端部276を超えて延びているように、バルーン268の周りに配置する。そのような実施形態では、第1のカバー端部270又は第2のカバー端部272に位置するカバー266の材料の区域284を、長手方向軸192に沿って圧縮する(即ち、軸方向に圧縮する)ことができる。例えば、
図4A及び
図4Bを参照すると、カバー266の材料の区域284を第1のカバー端部270で軸方向に圧縮する(例えば、押しつぶす)ことができ、区域286を第2のカバー端部272で軸方向に圧縮することができる。
【0097】
図4A及び
図4Bに示すように、区域284及び/又は区域286は、第1のバルーン肩部290及び/又は第2のバルーン肩部292と位置合わせされている。他の実施形態では、区域284及び/又は286は、バルーン268の異なる部分と位置合わせされる。
図4A及び
図4Bでは、第1のバルーン肩部290及び/又は第2のバルーン肩部292は、円錐状の肩部である。特定の実施形態を参照して記述したが、任意の形状のバルーン肩部が本開示の範囲内である。
【0098】
区域284は、例えば、第1のバルーン肩部290の少なくとも一部を囲むように配置することができ、区域284は、第2のバルーン肩部292の少なくとも一部を囲むように配置することができる。(バルーン肩部290及び292などの)バルーン肩部の周りに軸方向に圧縮した(例えば、押しつぶした)追加の材料を設けることにより、バルーン肩部領域全般でカバー266の厚さ及び/又は密度を増加させることができる。更に、バルーン肩部の周りにカバー266の軸方向に圧縮した材料を追加することにより、膨張の間、バルーンの軸方向の圧縮を制限しながら、バルーン268の半径方向の膨張が可能になる。例えば、これらの圧縮部分無しでは、バルーン肩部はバルーン本体よりも前に膨張し、バルーン及び内部人工器官の軸方向の圧縮を引き起こす。しかし、軸方向に圧縮した材料を用いると、バルーン肩部は、バルーン内部の全体的な圧力が、バルーン本体を囲むカバー及び内部人工器官をより完全に膨らませるのに十分になるまで、(例えば、バルーンの膨張した部分と、バルーンの膨張していない又はあまり膨張していない部分との間の角度の変化に起因する)内部人工器官の軸方向の圧縮を低減するような態様で、膨らむことができる。更に、バルーン肩部290及び292の領域全般での厚さ及び/又は密度の増加により、バルーン肩部に追加の半径方向の強度が提供されて、同様の効果が達成され得る。
【0099】
上述したように、バルーン268は、バルーン268に加圧された流体を供給することにより膨らませることができる。
図5A~
図5Fは、バルーン268が膨張する際にバルーン268の膨張を1つの所望の膨張輪郭に制限するカバー266の一例を示す。ステントグラフト100の中間部200は、ステントグラフト100の中間部200に加えて自由端196、198で又はその近傍で、バルーン268の膨張に抵抗を付与する。カバー266もバルーンの膨張に抵抗を付与して、ステントグラフト100の中間部200でのバルーン268の膨張率とステントグラフト100の自由端196、198でのバルーン268の膨張率との差を低減し、その結果、バルーン268がステントグラフト100を未展開状態(
図5A)から展開状態(
図5F)に膨らませる際にステントグラフト100の長手方向の圧縮を低減する。実施形態によっては、カバー266は、ステントの中間部200でのバルーン268の膨張率を、自由端196、198での又はその近傍での(例えば、肩部での又はその近傍での)バルーンの膨張率と等しくするように作用する。
【0100】
参考までに、「膨張率」という用語は、圧力に対する直径の変化、時間に対する直径の変化、又はそれら両方を含むことを意味する。例えば、中間部及び自由端でのバルーンの膨張率を等しくすることは、所与の圧力で、バルーンが中間部及び自由端で実質的に同じ直径を(実質的に同時に、又は、中間部若しくは自由端がその直径を達成する時点の間に幾らかの遅延を伴って)達成することを含む。従って、実施形態によっては、膨張率の差を低減することは、例えば、中間部及び自由端で実質的に同じ膨張直径を達成するのに必要とされる圧力の差を低減することを含む。
【0101】
例えば、実施形態によっては、軸方向に圧縮された区域284及び/又は286はバルーン肩部290及び292の膨張に抵抗を追加するように構成され、バルーン268の中央部294がそのような区域284及び286が無い場合よりも容易に膨張するようにし、これにより、バルーン肩部の膨張を制限してバルーン268の中央部294の膨張とより一層一致させる。軸方向に圧縮された区域284及び/又は286は、バルーン肩部290及び/又は292の膨張を実質的に妨げることができる。いくつかの実施形態では、これは、これらの領域でバルーンの膨張程度を制御する効果があり、次いでこれは、バルーン268及び/又はステントグラフト100の膨張輪郭を制御する。
【0102】
いくつかの実施形態では、バルーン268の膨張は、ステントグラフト100の望ましくない膨張特性を低減し得るような態様で、覆われた区域284及び/又は286により制御することができる。例えば、覆われた区域284及び/又は286は、膨張の間、ステントグラフト100の短縮度合いを低減することができる。特に、区域284及び/又は286は、例えば、バルーンの肩部とバルーン又はステントグラフトの中央部との間の角度の減少に起因して、膨張するバルーン肩部から生じる軸方向の力を大幅に低減する特定の膨張輪郭にバルーンを押しやるように構成されてもよい。更に、覆われた区域284及び/又は286は、ステントグラフト100の積み重なり(例えば、膨張する間の環状ステント要素106同士の間隔の減少)を低減又は防止することができる。
【0103】
図2A及び
図2Bを参照すると、バルーン268をカバー266により囲んだ後で、ステントグラフト100をバルーン268及びカバー266に装填することができる。例えば、ステントグラフト100を、バルーン268及びカバー266の一部を同心円状に囲むように配置することができる。いくつかの実施形態では、ステントグラフト100を一旦バルーン268及びカバー266の周りに適切に配置すると、ステントグラフト100を未展開直径242まで半径方向に圧縮する。例えば、ステントグラフト100を未展開直径242まで圧縮して、治療領域内で移植する間、ステントグラフト100の輪郭を低減することができる。更に、ステントグラフト100を、展開に先立ちバルーン268上でステントグラフトが動かないように、バルーン268及びカバー266上に圧縮することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、圧縮時に、ステントグラフト100はそれ自体をカバー266に埋め込むことができる。例えば、それ自体をカバー266に埋め込むことにより、ステントグラフト100は改善されたステント保持力を示すことがある。そのような改善されたステント保持力は、例えば、患者の治療領域への展開中に、カバー266及び/又はバルーン268に対してステントグラフト100の適切な配置を維持するのを助けることができる。
【0105】
圧縮形態と膨張形態との間で内部人工器官の長さ(例えば、一方の自由端196と反対側の自由端198との間で測定される)のいかなる減少も制限する別の方法は、ステント部材102の環状ステント要素104の位置及び/又は向きを変更することによるものである。特に、実施形態によっては、ステント部材102の1つ以上の環状ステント要素104の位置及び/又は向きを、ステントグラフト100の圧縮に先立って変更することができる。例えば、2つ以上の隣接する環状ステント要素104同士の距離を、ステントグラフト100の圧縮に先立って低減してもよい。より具体的な例としては、1つ以上の環状ステント要素104を、それらが互いに約1mm未満だけ離れているように、又は更にそれらが互いに接触している(即ち、互いに0mm離れている)ように、移動させることができる。
【0106】
他の実施形態では、環状ステント要素104の位置及び/又は向きを、ステントグラフト100の圧縮の後で変更することがある。例えば、
図2Aを参照すると、ステントグラフト100は、2つ以上の環状ステント要素104の長手方向の間隔を低減することにより変更可能な長さを有する。隣接する環状ステント要素104同士の長手方向の間隔を低減することにより、例えば、ステント要素104を展開状態に膨らませたときに回復される、収容された長手方向の長さを作り出すことができる。例えば、収容された長手方向の長さは、ステントグラフト100の膨張及び展開時に回復する(即ち、軸方向に膨らむ)、隣接する環状ステント要素104の間で軸方向に圧縮された環内グラフト区域120のグラフト材料の長さ又は区域として規定されてもよい。ステントグラフト100の「未展開長さ」とは、一般的に、送達に先立ち圧縮状態にあるステントグラフト100を指し、ステントグラフト100の「展開長さ」とは、一般的に、膨張状態にあるステントグラフト100を指す。実施形態によっては、環状ステント要素104の間隔を変更することにより、未展開長さと呼ばれることがある新規の長さ(例えば、
図2Aの長さ240)が作り出される。
【0107】
別の言い方をすると、隣接するステント要素104間の間隔を低減にすることにより、環内グラフト区域120を軸方向に圧縮する又は押しつぶすことができる。軸方向に圧縮することで収容された長さを作り出すことによっては、ステントグラフト100の外径は増加しない。収容された長さを作り出す一方で機器の直径を増加させないことにより、機器の横断面は最小を維持し、従って、脈管構造を通してステントグラフトを送達するのに悪影響を及ぼさない。同時に、収容された長さを回復することにより、例えば、バルーンの膨張からの軸方向の圧縮力に起因して長さが損なわれるのを低減する又は相殺するステントグラフトの能力が高まる。
【0108】
患者の治療領域へステントグラフト100を送達すると、ステントグラフト100を展開することができる。いくつかの実施形態では、ステントグラフト100は、バルーン268を所望の直径に膨らませることにより展開され、それによって、ステントグラフト100の直径が未展開直径242から展開直径146に増加する。この工程は、ステントグラフトの長さを未展開長さ240から展開長さ148に更に増加させる。バルーン268が十分に膨らみ展開直径146が達成された後で、バルーン268を収縮させることができ、患者の体内からカテーテル組立体260を取り除くことが可能になる。
【0109】
展開長さ148は、例えば、未展開長さ240よりも短いことがある。例えば、展開長さ148は、未展開長さ240の約60%~約95%であってもよく、更に、未展開長さ240の約80%~約90%であってもよい。試験により、特定の実施形態では、未展開長さの99%よりも長い展開長さ148が達成されることが示され、従って、1%未満の短縮長さが示された。ステントグラフトが未展開長さの高い百分率を達成する能力は、本明細書では、長手方向効率とも呼ばれる。
【0110】
ステントグラフト100を未展開形態から展開形態に膨らませることにより、例えば、環状ステント要素104の1つ以上のワイヤフレーム106の内角を増加させることができる。例えば、ステントグラフト100が展開形態にあるとき、環状ステント要素104のワイヤフレーム106の内角188は、約70度~110度の間であることがあり、更には、約80度~100度の間であることがある。
【実施例】
【0111】
実施例1-曲げ半径
【0112】
本開示によるいくつかのステントグラフトを試験して、展開形態でのそれらの可撓性を評価した。具体的には、ステントグラフトを試験して、ステントグラフトが捻じれることなく順応することができ、かつ試験後に元の寸法及び形状を回復することができる曲げ半径を決定した。捻じれは、ステントグラフトが50%超の直径の減少を示す点で、又は、試験後に元の寸法及び形状を回復することができない点で、発生した。
【0113】
ステントグラフトを、以下の点を除いて、ISO25539-2(2009)、節D.5.3.6、方法Aに従って試験した。1)試験は、最小公称表示された脈管直径又は最大表示された脈管直径の管では実施しなかった。2)重複条件試験は実施しなかった。ステントグラフトは、約0.5mm~1.5mm互いに離れたステンレス鋼の環状ステント要素を含んでいた。ステントは、約59mmの長さであった。内側グラフト要素及び外側グラフト要素はePTFEを含み、ステントグラフトは、押しつぶされた近位端及び遠位端を有するePTFEカバーによって囲まれたナイロンのバルーン上に取り付けられた。曲げ半径試験の結果を、以下の表1に纏める。
【表1】
実施例2-半径方向強度
【0114】
本開示によるいくつかのステントグラフトを試験して、展開形態でのそれらの半径方向の強度を評価した。具体的には、ステントグラフトを試験して、ステントグラフトが回復不能に変形するようになる半径方向の圧縮圧力を決定した。
【0115】
ステントグラフトを、以下の点を除いて、ISO25539-2:2009、節D.5.3.4に従って試験した。1)圧力は、平方インチ当たりポンドで記録した。2)公称機器直径の50%の低減が達成されるまで、試験を行った。
【0116】
ステントグラフトは、約0.5mm~1.5mm互いに離れたステンレス鋼の環状ステント要素を含んでいた。ステントは、約59mmの長さであった。内側グラフト要素及び外側グラフト要素はePTFEを含み、ステントグラフトは、押しつぶされた近位端及び遠位端を有するePTFEカバーによって囲まれたナイロンのバルーン上に取り付けられた。半径方向強度試験の結果を、以下の表2に纏める。
【表2】
【0117】
本明細書では本発明の特定の実施形態を図示して記述したが、本発明はそのような図及び記載に限定されるべきではない。変更及び修正を、以下の特許請求の範囲内で本発明の一部として組み込み、具現化してもよいことは、明らかである。
【0118】
前述の記載には、機器及び/又は方法の構造及び機能の詳細と共にいくつかの代替例を含めて、多数の特徴及び利点を記述した。本開示は、例示のみを意図しており、そのため、網羅的であることを意図してはいない。とりわけ、構造、材料、要素、構成部品、形状、寸法、及び本発明の原理内の組み合わせを含む部品の構成などの事項に関して、添付の請求項を表現する用語の広範で一般的な意味によって示される範囲全体に渡って、様々な変更をなし得ることが、当業者には明らかであろう。これらの様々な変更が添付の請求項の趣旨及び範囲から逸脱しない限りは、それらは請求項に包含されることが意図されている。