(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】磁気装置
(51)【国際特許分類】
H10B 61/00 20230101AFI20230106BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20230106BHJP
H10N 52/85 20230101ALI20230106BHJP
【FI】
H01L27/105 447
H01L43/08 P
H01L43/08 Z
H01L43/10
(21)【出願番号】P 2019049603
(22)【出願日】2019-03-18
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】上田 公二
(72)【発明者】
【氏名】李 永ミン
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/212895(WO,A1)
【文献】特表2014-530503(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0076262(US,A1)
【文献】国際公開第2013/069091(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8239
H01L 43/08
H01L 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗効果素子を備え、
前記磁気抵抗効果素子は、
第1非磁性体と、
第2非磁性体と、
前記第1非磁性体及び前記第2非磁性体の間の第1強磁性体と、
前記第2非磁性体に対して前記第1強磁性体と反対側において、希土類酸化物を含む第3非磁性体と、
前記第2非磁性体と前記第3非磁性体の間において金属を含む第4非磁性体と、
を含
み、
前記第4非磁性体は、
前記第2非磁性体及び前記第3非磁性体と接し、
ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、及びニオブ(Nb)から選択される少なくとも1つの元素を含む、
磁気装置。
【請求項2】
前記第4非磁性体は、ボロン(B)を更に含む、
請求項
1記載の磁気装置。
【請求項3】
前記第4非磁性体の膜厚は、2ナノメートル以下である、
請求項1記載の磁気装置。
【請求項4】
前記第4非磁性体の抵抗値は、前記第1非磁性体の抵抗値の10%以下である、
請求項1記載の磁気装置。
【請求項5】
前記第1非磁性体及び前記第2非磁性体は、酸化マグネシウム(MgO)を含む、
請求項1記載の磁気装置。
【請求項6】
前記第2非磁性体は、ボロン(B)を更に含む、
請求項
5記載の磁気装置。
【請求項7】
前記第2非磁性体の膜厚は、前記第1非磁性体の膜厚より薄い、
請求項
5記載の磁気装置。
【請求項8】
前記第2非磁性体の膜厚は、1ナノメートル以下である、
請求項
7記載の磁気装置。
【請求項9】
前記第3非磁性体は、
スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から選択される少なくとも1つの元素を含む、
請求項1記載の磁気装置。
【請求項10】
前記第1強磁性体は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1つの元素を含む、
請求項1記載の磁気装置。
【請求項11】
前記磁気抵抗効果素子は、前記第1非磁性体に対して、前記第1強磁性体と反対側の第2強磁性体を更に含み、
前記第1強磁性体は、
前記第1強磁性体から前記第2強磁性体への第1電流に応じて第1抵抗値となり、
前記第2強磁性体から前記第1強磁性体への第2電流に応じて第2抵抗値となる、
請求項
10記載の磁気装置。
【請求項12】
前記第2強磁性体は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1つの元素を含む、
請求項
11記載の磁気装置。
【請求項13】
前記第1抵抗値は、前記第2抵抗値より小さい、
請求項
11記載の磁気装置。
【請求項14】
前記第1強磁性体は、前記第2強磁性体の上方に設けられた、
請求項
11記載の磁気装置。
【請求項15】
前記第2非磁性体は、前記第4非磁性体の下方に設けられた、
請求項
14記載の磁気装置。
【請求項16】
前記磁気装置は、
前記磁気抵抗効果素子と、
前記磁気抵抗効果素子と直列に接続されたスイッチング素子と、
を含むメモリセルを備えた、
請求項
11記載の磁気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、磁気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気素子を有する磁気装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
寄生抵抗の増加を抑制しつつ、垂直磁気異方性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の磁気装置は、磁気抵抗効果素子を備える。上記磁気抵抗効果素子は、第1非磁性体と、第2非磁性体と、上記第1非磁性体及び上記第2非磁性体の間の第1強磁性体と、上記第2非磁性体に対して上記第1強磁性体と反対側において、希土類酸化物を含む第3非磁性体と、上記第2非磁性体と上記第3非磁性体の間において金属を含む第4非磁性体と、を含む。上記第4非磁性体は、上記第2非磁性体及び上記第3非磁性体を接し、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、及びニオブ(Nb)から選択される少なくとも1つの元素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る磁気記憶装置の構成を説明するためのブロック図。
【
図2】第1実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を説明するための回路図。
【
図3】第1実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を説明するための断面図。
【
図4】第1実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を説明するための断面図。
【
図5】第1実施形態に係る磁気記憶装置の磁気抵抗効果素子の構成を説明するための断面図。
【
図6】第1実施形態に係る磁気記憶装置における磁気抵抗効果素子の製造方法を説明するための模式図。
【
図7】第1実施形態に係る磁気記憶装置における磁気抵抗効果素子の製造方法を説明するための模式図。
【
図8】第1実施形態に係る効果を説明するための模式図。
【
図9】第1実施形態の変形例に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を説明するための模式図。
【
図10】第1実施形態の変形例に係る磁気記憶装置のメモリセルの構成を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、共通する参照符号を付す。また、共通する参照符号を有する複数の構成要素を区別する場合、当該共通する参照符号に添え字を付して区別する。なお、複数の構成要素について特に区別を要さない場合、当該複数の構成要素には、共通する参照符号のみが付され、添え字は付さない。ここで、添え字は、下付き文字や上付き文字に限らず、例えば、参照符号の末尾に添加される小文字のアルファベット、及び配列を意味するインデックス等を含む。
【0008】
1.第1実施形態
第1実施形態に係る磁気装置について説明する。第1実施形態に係る磁気装置は、例えば、磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)によって磁気抵抗効果(Magnetoresistive effect)を有する素子(MTJ素子、又はmagnetoresistive effect elementとも言う。)を抵抗変化素子として用いた、垂直磁化方式による磁気記憶装置を含む。
【0009】
以下の説明では、磁気装置の一例として、上述の磁気記憶装置について説明する。
【0010】
1.1 構成
まず、第1実施形態に係る磁気記憶装置の構成について説明する。
【0011】
1.1.1 磁気記憶装置の構成
図1は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、磁気記憶装置1は、メモリセルアレイ10、ロウ選択回路11、カラム選択回路12、デコード回路13、書込み回路14、読出し回路15、電圧生成回路16、入出力回路17、及び制御回路18を備えている。
【0012】
メモリセルアレイ10は、各々が行(row)、及び列(column)の組に対応付けられた複数のメモリセルMCを備えている。具体的には、同一行にあるメモリセルMCは、同一のワード線WLに接続され、同一列にあるメモリセルMCは、同一のビット線BLに接続される。
【0013】
ロウ選択回路11は、ワード線WLを介してメモリセルアレイ10と接続される。ロウ選択回路11には、デコード回路13からのアドレスADDのデコード結果(ロウアドレス)が供給される。ロウ選択回路11は、アドレスADDのデコード結果に基づいた行に対応するワード線WLを選択状態に設定する。以下において、選択状態に設定されたワード線WLは、選択ワード線WLと言う。また、選択ワード線WL以外のワード線WLは、非選択ワード線WLと言う。
【0014】
カラム選択回路12は、ビット線BLを介してメモリセルアレイ10と接続される。カラム選択回路12には、デコード回路13からのアドレスADDのデコード結果(カラムアドレス)が供給される。カラム選択回路12は、アドレスADDのデコード結果に基づいた列を選択状態に設定する。以下において、選択状態に設定されたビット線BLは、選択ビット線BLと言う。また、選択ビット線BL以外のビット線BLは、非選択ビット線BLと言う。
【0015】
デコード回路13は、入出力回路17からのアドレスADDをデコードする。デコード回路13は、アドレスADDのデコード結果を、ロウ選択回路11、及びカラム選択回路12に供給する。アドレスADDは、選択されるカラムアドレス、及びロウアドレスを含む。
【0016】
書込み回路14は、メモリセルMCへのデータの書込みを行う。書込み回路14は、例えば、書込みドライバ(図示せず)を含む。
【0017】
読出し回路15は、メモリセルMCからのデータの読出しを行う。読出し回路15は、例えば、センスアンプ(図示せず)を含む。
【0018】
電圧生成回路16は、磁気記憶装置1の外部(図示せず)から提供された電源電圧を用いて、メモリセルアレイ10の各種の動作のための電圧を生成する。例えば、電圧生成回路16は、書込み動作の際に必要な種々の電圧を生成し、書込み回路14に出力する。また、例えば、電圧生成回路16は、読出し動作の際に必要な種々の電圧を生成し、読出し回路15に出力する。
【0019】
入出力回路17は、磁気記憶装置1の外部からのアドレスADDを、デコード回路13に転送する。入出力回路17は、磁気記憶装置1の外部からのコマンドCMDを、制御回路18に転送する。入出力回路17は、種々の制御信号CNTを、磁気記憶装置1の外部と、制御回路18と、の間で送受信する。入出力回路17は、磁気記憶装置1の外部からのデータDATを書込み回路14に転送し、読出し回路15から転送されたデータDATを磁気記憶装置1の外部に出力する。
【0020】
制御回路18は、制御信号CNT及びコマンドCMDに基づいて、磁気記憶装置1内のロウ選択回路11、カラム選択回路12、デコード回路13、書込み回路14、読出し回路15、電圧生成回路16、及び入出力回路17の動作を制御する。
【0021】
1.1.2 メモリセルアレイの構成
次に、第1実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成について
図2を用いて説明する。
図2は、第1実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を示す回路図である。
図2では、ワード線WLが2つの小文字のアルファベット(“u”及び“d”)と、インデックス(“<>”)と、を含む添え字によって分類されて示されている。
【0022】
図2に示すように、メモリセルMC(MCu及びMCd)は、メモリセルアレイ10内でマトリクス状に配置され、複数のビット線BL(BL<0>、BL<1>、…、BL<N>))のうちの1本と、複数のワード線WLd(WLd<0>、WLd<1>、…、WLd<M>)及びWLu(WLu<0>、WLu<1>、…、WLu<M>)のうちの1本と、の組に対応付けられる(M及びNは、任意の整数)。すなわち、メモリセルMCd<i、j>(0≦i≦M、0≦j≦N)は、ワード線WLd<i>とビット線BL<j>との間に接続され、メモリセルMCu<i、j>は、ワード線WLu<i>とビット線BL<j>との間に接続される。
【0023】
なお、添え字の“d”及び“u”はそれぞれ、複数のメモリセルMCのうちの、(例えば、ビット線BLに対して)下方に設けられたもの、及び上方に設けられたもの、を便宜的に識別するものである。メモリセルアレイ10の立体的な構造の例については、後述する。
【0024】
メモリセルMCd<i、j>は、直列に接続されたスイッチング素子SELd<i、j>及び磁気抵抗効果素子MTJd<i、j>を含む。メモリセルMCu<i、j>は、直列に接続されたスイッチング素子SELu<i、j>及び磁気抵抗効果素子MTJu<i、j>を含む。
【0025】
スイッチング素子SELは、対応する磁気抵抗効果素子MTJへのデータ書込み及び読出し時において、磁気抵抗効果素子MTJへの電流の供給を制御するスイッチとしての機能を有する。より具体的には、例えば、或るメモリセルMC内のスイッチング素子SELは、当該メモリセルMCに印加される電圧が閾値電圧Vthを下回る場合、抵抗値の大きい絶縁体として電流を遮断し(オフ状態となり)、閾値電圧Vthを上回る場合、抵抗値の小さい導電体として電流を流す(オン状態となる)。すなわち、スイッチング素子SELは、流れる電流の方向に依らず、メモリセルMCに印加される電圧の大きさに応じて、電流を流すか遮断するかを切替え可能な機能を有する。
【0026】
スイッチング素子SELは、例えば2端子型のスイッチング素子であってもよい。2端子間に印加する電圧が閾値以下の場合、そのスイッチング素子は”高抵抗”状態、例えば電気的に非導通状態である。2端子間に印加する電圧が閾値以上の場合、スイッチング素子は”低抵抗”状態、例えば電気的に導通状態に変わる。スイッチング素子は、電圧がどちらの極性でもこの機能を有していてもよい。例えば、このスイッチング素子には、Te(テルル)、Se(セレン)及びS(硫黄)からなる群より選択された少なくとも1種以上のカルコゲン元素を含んでもよい。または、上記カルコゲン元素を含む化合物であるカルコゲナイドを含んでいてもよい。このスイッチング素子は他にも、B(ボロン)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、C(炭素)、Si(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)、Sn(スズ)、As(ヒ素)、P(リン)、Sb(アンチモン)、チタン(Ti)、及びビスマス(Bi)からなる群より選択された少なくとも1種以上の元素を含んでもよい。より具体的には、このスイッチング素子は、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、チタン(Ti)、ヒ素(As)、インジウム(In)、及びビスマス(Bi)から選択される少なくとも2つの元素を含んでいてもよい。更に、このスイッチング素子は他にも、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、及びタングステン(W)から選択された少なくとも1種の元素の酸化物を含んでいてもよい。
【0027】
磁気抵抗効果素子MTJは、スイッチング素子SELによって供給を制御された電流により、抵抗値を低抵抗状態と高抵抗状態とに切替わることができる。磁気抵抗効果素子MTJは、その抵抗状態の変化によってデータを書込み可能であり、書込まれたデータを不揮発に保持し、読出し可能である記憶素子として機能する。
【0028】
次に、メモリセルアレイ10の断面構造について
図3及び
図4を用いて説明する。
図3及び
図4は、第1実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を説明するための断面図の一例を示している。
図3及び
図4はそれぞれ、メモリセルアレイ10を互いに交差する異なる方向から見た断面図である。
【0029】
図3及び
図4に示すように、メモリセルアレイ10は、半導体基板20上に設けられている。以下の説明では、半導体基板20の表面と平行な面をXY平面とし、XY平面に垂直な方向をZ方向とする。また、ワード線WLに沿う方向をX方向とし、ビット線BLに沿う方向をY方向とする。すなわち、
図3及び
図4はそれぞれ、メモリセルアレイ10を、Y方向及びX方向から見た断面図である。
【0030】
半導体基板20の上面上には、例えば、複数の導電体21が設けられる。複数の導電体21は、導電性を有し、ワード線WLdとして機能する。複数の導電体21は、例えば、Y方向に沿って並んで設けられ、各々がX方向に沿って延びる。なお、
図3及び
図4では、複数の導電体21が半導体基板20上に設けられる場合について説明したが、これに限られない。例えば、複数の導電体21は、半導体基板20に接することなく、上方に離れて設けられてもよい。
【0031】
1つの導電体21の上面上には、各々が磁気抵抗効果素子MTJdとして機能する複数の素子22が設けられる。1つの導電体21の上面上に設けられる複数の素子22は、例えば、X方向に沿って並んで設けられる。すなわち、1つの導電体21の上面には、X方向に沿って並ぶ複数の素子22が共通して接続される。なお、素子22の構成の詳細については、後述する。
【0032】
複数の素子22の各々の上面上には、スイッチング素子SELdとして機能する素子23が設けられる。複数の素子23の各々の上面は、複数の導電体24のいずれか1つに接続される。複数の導電体24は、導電性を有し、ビット線BLとして機能する。複数の導電体24は、例えば、X方向に沿って並んで設けられ、各々がY方向に沿って延びる。すなわち、1つの導電体24には、Y方向に沿って並ぶ複数の素子23が共通して接続される。なお、
図3及び
図4では、複数の素子23の各々が素子22上、及び導電体24上に設けられる場合について説明したが、これに限られない。例えば、複数の素子23の各々は、導電性のコンタクトプラグ(図示せず)を介して、素子22、及び導電体24と接続されていてもよい。
【0033】
1つの導電体24の上面上には各々が磁気抵抗効果素子MTJuとして機能する複数の素子25が設けられる。1つの導電体24の上面上に設けられる複数の素子25は、例えば、X方向に沿って並んで設けられる。すなわち、1つの導電体24の上面には、Y方向に沿って並ぶ複数の素子25が共通して接続される。なお、素子25は、例えば、素子22と同等の構成を有する。
【0034】
複数の素子25の各々の上面上には、スイッチング素子SELuとして機能する素子26が設けられる。複数の素子26の各々の上面は、複数の導電体27のいずれか1つに接続される。複数の導電体27は、導電性を有し、ワード線WLuとして機能する。複数の導電体27は、例えば、Y方向に沿って並んで設けられ、各々がX方向に沿って延びる。すなわち、1つの導電体27には、X方向に沿って並ぶ複数の素子26が共通して接続される。なお、
図3及び
図4では、複数の素子26の各々が素子25上、及び導電体27上に設けられる場合について説明したが、これに限られない。例えば、複数の素子26の各々は、導電性のコンタクトプラグ(図示せず)を介して、素子25、及び導電体27と接続されていてもよい。
【0035】
以上のように構成されることにより、メモリセルアレイ10は、1本のビット線BLに対して、2本のワード線WLd及びWLuの組が対応する構造となる。そして、メモリセルアレイ10は、ワード線WLdとビット線BLとの間にメモリセルMCdが設けられ、ビット線BLとワード線WLuとの間にメモリセルMCuが設けられるZ方向の異なる高さに複数のメモリセルMCを有する構造を有する。
図3及び
図4において示されたセル構造においては、メモリセルMCdが下層に対応付けられ、メモリセルMCuが上層に対応付けられる。すなわち、1つのビット線BLに共通に接続される2つのメモリセルMCのうち、ビット線BLの上層に設けられるメモリセルMCは添え字“u”が付されたメモリセルMCuに対応し、下層に設けられるメモリセルMCは添え字“d”が付されたメモリセルMCdに対応する。
【0036】
1.1.3 磁気抵抗効果素子
次に、第1実施形態に係る磁気装置の磁気抵抗効果素子の構成について
図5を用いて説明する。
図5は、第1実施形態に係る磁気装置の磁気抵抗効果素子の構成を示す断面図である。
図5では、例えば、
図3及び
図4に示された磁気抵抗効果素子MTJdをZ方向に垂直な平面(例えば、XZ平面)に沿って切った断面の一例が示される。なお、磁気抵抗効果素子MTJuは、磁気抵抗効果素子MTJdと同等の構成を有するため、その図示が省略される。
【0037】
図5に示すように、磁気抵抗効果素子MTJは、例えば、トップ層TOP(Top layer)として機能する非磁性体31、キャップ層CAPa(Capping layer)として機能する非磁性体32、キャップ層CAPbとして機能する非磁性体33、記憶層SL(Storage layer)として機能する強磁性体34、トンネルバリア層TB(Tunnel barrier layer)として機能する非磁性体35、参照層RL(Reference layer)として機能する強磁性体36、スペーサ層SP(Spacer layer)として機能する非磁性体37、シフトキャンセル層SCL(Shift cancelling layer)として機能する強磁性体38、及び下地層UL(Under layer)として機能する非磁性体39を含む。
【0038】
磁気抵抗効果素子MTJdは、例えば、ワード線WLd側からビット線BL側に向けて(Z軸方向に)、非磁性体39、強磁性体38、非磁性体37、強磁性体36、非磁性体35、強磁性体34、非磁性体33、非磁性体32、及び非磁性体31の順に、複数の膜が積層される。磁気抵抗効果素子MTJuは、例えば、ビット線BL側からワード線WLu側に向けて(Z軸方向に)、非磁性体39、強磁性体38、非磁性体37、強磁性体36、非磁性体35、強磁性体34、非磁性体33、非磁性体32、及び非磁性体31の順に、複数の膜が積層される。磁気抵抗効果素子MTJd及びMTJuは、例えば、磁気抵抗効果素子MTJd及びMTJuを構成する磁性体の磁化方向がそれぞれ膜面に対して垂直方向を向く、垂直磁化型のMTJ素子として機能する。なお、磁気抵抗効果素子MTJは、上述の各層31~39の間に、図示しない更なる層を含んでいてもよい。
【0039】
非磁性体31は、非磁性の希土類酸化物(Rare-earth oxide)であり、磁気抵抗効果素子MTJの製造の過程において、強磁性体34から拡散するボロン(B)等の元素を吸収する機能を有する。非磁性体31は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、スカンジウム(Sc)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から選択される少なくとも1つの希土類元素の酸化物を含む。また、非磁性体31は、上述したように、強磁性体34内から吸収した元素として、ボロン(B)を更に含んでいてもよい。
【0040】
非磁性体32は、非磁性金属の導電膜であり、磁気抵抗効果素子MTJの寄生抵抗の増加を抑制する機能を有する。非磁性体32の抵抗値は、寄生抵抗の増加を抑制する観点から、例えば、非磁性体35の抵抗値の1割以下であることが望ましい。また、非磁性体31は、強磁性体34からボロン(B)を引き抜く効果を弱めないために、強磁性体34に近接して設けられることが望ましい。これに伴い、非磁性体32は、強磁性体34と非磁性体31との間の距離を短くする観点から、例えば、2nm(ナノメートル)以下であることが望ましい。
【0041】
また、非磁性体32は、非磁性体31が強磁性体34内のボロン(B)を吸収する機能を阻害しないことが望ましい。すなわち、非磁性体32は、ホウ化物(boride)となりやすい材料であることが望ましい。
【0042】
以上の要件を満たす材料として、非磁性体32は、例えば、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、及びニオブ(Nb)から選択される少なくとも1つの金属を含み得る。
【0043】
非磁性体33は、非磁性の絶縁膜であり、例えば酸化マグネシウム(MgO)を含む。非磁性体33は、体心立方(bcc:Body-centered cubic)系の結晶構造(膜面が(001)面に配向したNaCl結晶構造)を有し得る。非磁性体33は、隣り合う強磁性体34の結晶化処理において、強磁性体34との界面から結晶質の膜を成長させるための核となるシード材として機能する。
【0044】
非磁性体33は、例えば、希土類元素の酸化物よりも格子間隔が小さい。このため、非磁性体33は、共有結合半径が比較的小さい元素(例えば、強磁性体34内のボロン(B)等)については強磁性体34から非磁性体31への拡散を妨げない。一方、非磁性体33は、共有結合半径が比較的大きい元素(例えば、強磁性体34内の鉄(Fe)等)については、その拡散を防止する機能を有する。
【0045】
非磁性体33の膜厚は、寄生抵抗の増加を抑制する観点、及び非磁性体31と強磁性体34との間の距離を短くする観点から、例えば、非磁性体35より薄いことが望ましく、より具体的には、1nm(ナノメートル)以下であることが望ましい。
【0046】
強磁性体34は、強磁性を有し、膜面に垂直な方向に磁化容易軸方向を有する。強磁性体34は、ビット線BL側、ワード線WL側のいずれかの方向に向かう磁化方向を有する。強磁性体34は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)の少なくともいずれか1つを含む。また、強磁性層34は、ボロン(B)、リン(P)、炭素(C)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)、及びチタン(Ti)の少なくともいずれか1つを更に含んでいてもよい。より具体的には、例えば、強磁性体34は、コバルト鉄ボロン(CoFeB)又はホウ化鉄(FeB)を含み、体心立方系の結晶構造を有し得る。
【0047】
非磁性体35は、非磁性の絶縁膜であり、例えば酸化マグネシウム(MgO)を含む。非磁性体35は、体心立方系の結晶構造(膜面が(001)面に配向したNaCl結晶構造)を有し得る。また、非磁性体35は、非磁性体33と同様、隣り合う強磁性体34の結晶化処理において、強磁性体34との界面から結晶質の膜を成長させるための核となるシード材として機能する。非磁性体35は、強磁性体34と強磁性体36との間に設けられて、これら2つの強磁性体と共に磁気トンネル接合を形成する。
【0048】
強磁性体36は、強磁性を有し、膜面に垂直な方向に磁化容易軸方向を有する。強磁性体36は、ビット線BL側、ワード線WL側のいずれかの方向に向かう磁化方向を有する。強磁性体36は、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)の少なくともいずれか1つを含む。また、強磁性層36は、ボロン(B)、リン(P)、炭素(C)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)、及びチタン(Ti)の少なくともいずれか1つを更に含んでいてもよい。より具体的には、例えば、強磁性体36は、コバルト鉄ボロン(CoFeB)又はホウ化鉄(FeB)を含み、体心立方系の結晶構造を有し得る。強磁性体36の磁化方向は、固定されており、
図5の例では、強磁性体38の方向を向いている。なお、「磁化方向が固定されている」とは、強磁性体34の磁化方向を反転させ得る大きさの電流(スピントルク)によって、磁化方向が変化しないことを意味する。
【0049】
なお、
図5では図示を省略しているが、強磁性体36は、複数の層からなる積層体であってもよい。具体的には例えば、強磁性体36を構成する積層体は、上述のコバルト鉄ボロン(CoFeB)又はホウ化鉄(FeB)を含む界面層の強磁性体38側の面上に、非磁性の導電体を介して、更なる強磁性体が積層される構造であってもよい。強磁性体36を構成する積層体内の非磁性の導電体は、例えば、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、及びチタン(Ti)から選択される少なくとも1つの金属を含み得る。強磁性体36を構成する積層体内の更なる強磁性体は、例えば、コバルト(Co)と白金(Pt)との多層膜(Co/Pt多層膜)、コバルト(Co)とニッケル(Ni)との多層膜(Co/Ni多層膜)、及びコバルト(Co)とパラジウム(Pd)との多層膜(Co/Pd多層膜)から選択される少なくとも1つの人工格子を含み得る。
【0050】
非磁性体37は、非磁性の導電膜であり、例えばルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、バナジウム(V)、及びクロム(Cr)から選択される少なくとも1つの元素を含む。
【0051】
強磁性体38は、強磁性を有し、膜面に垂直な方向に磁化容易軸方向を有する。強磁性体38は、例えばコバルト白金(CoPt)、コバルトニッケル(CoNi)、及びコバルトパラジウム(CoPd)から選択される少なくとも1つの合金を含む。強磁性体38は、強磁性体36と同様、複数の層からなる積層体であってもよい。その場合、強磁性体38は、例えば、コバルト(Co)と白金(Pt)との多層膜(Co/Pt多層膜)、コバルト(Co)とニッケル(Ni)との多層膜(Co/Ni多層膜)、及びコバルト(Co)とパラジウム(Pd)との多層膜(Co/Pd多層膜)から選択される少なくとも1つの人工格子を含み得る。
【0052】
強磁性体38は、ビット線BL側、ワード線WL側のいずれかの方向に向かう磁化方向を有する。強磁性体38の磁化方向は、強磁性体36と同様に固定されており、
図5の例では、強磁性体36の方向を向いている。
【0053】
強磁性体36及び38は、非磁性体37によって反強磁性的に結合される。すなわち、強磁性体36及び38は、互いに反平行な磁化方向を有するように結合される。このため、
図5の例では、強磁性体36及び38の磁化方向は、互いに向かい合う方向を向いている。このような強磁性体36、非磁性体37、及び強磁性体38の結合構造を、SAF(Synthetic Anti-Ferromagnetic)構造という。これにより、強磁性体38は、強磁性体36の漏れ磁場が強磁性体34の磁化方向に与える影響を相殺することができる。このため、強磁性体36の漏れ磁場等に起因する外的要因によって強磁性体34の磁化の反転し易さに非対称性が発生すること(すなわち、強磁性体34の磁化の方向の反転する際の反転し易さが、一方から他方に反転する場合と、その逆方向に反転する場合とで異なること)が抑制される。
【0054】
非磁性体39は、非磁性の導電膜であり、ビット線BLやワード線WLとの電気的な接続性を向上させる電極としての機能を有する。また、非磁性体39は、例えば、高融点金属を含む。高融点金属とは、例えば、鉄(Fe)及びコバルト(Co)より融点が高い材料を示し、例えば、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ルテニウム(Ru)、及び白金(Pt)から選択される少なくとも1つの元素を含む。
【0055】
第1実施形態では、このような磁気抵抗効果素子MTJに直接書込み電流を流し、この書込み電流によって記憶層SL及び参照層RLにスピントルクを注入し、記憶層SLの磁化方向及び参照層RLの磁化方向を制御するスピン注入書込み方式を採用する。磁気抵抗効果素子MTJは、記憶層SL及び参照層RLの磁化方向の相対関係が平行か反平行かによって、低抵抗状態及び高抵抗状態のいずれかを取ることが出来る。
【0056】
磁気抵抗効果素子MTJに、
図5における矢印A1の方向、即ち記憶層SLから参照層RLに向かう方向に、或る大きさの書込み電流Iw0を流すと、記憶層SL及び参照層RLの磁化方向の相対関係は、平行になる。この平行状態の場合、磁気抵抗効果素子MTJの抵抗値は最も低くなり、磁気抵抗効果素子MTJは低抵抗状態に設定される。この低抵抗状態は、「P(Parallel)状態」と呼ばれ、例えばデータ“0”の状態と規定される。
【0057】
また、磁気抵抗効果素子MTJに、
図5における矢印A2の方向、即ち参照層RLから記憶層SLに向かう方向(矢印A1と反対方向)に、書込み電流Iw0より大きい書込み電流Iw1を流すと、記憶層SL及び参照層RLの磁化方向の相対関係は、反平行になる。この反平行状態の場合、磁気抵抗効果素子MTJの抵抗値は最も高くなり、磁気抵抗効果素子MTJは高抵抗状態に設定される。この高抵抗状態は、「AP(Anti-Parallel)状態」と呼ばれ、例えばデータ“1”の状態と規定される。
【0058】
なお、以下の説明では、上述したデータの規定方法に従って説明するが、データ“1”及びデータ“0”の規定の仕方は、上述した例に限られない。例えば、P状態をデータ“1”と規定し、AP状態をデータ“0”と規定してもよい。
【0059】
1.2. 磁気抵抗効果素子の製造方法
次に、第1実施形態に係る磁気記憶装置の磁気抵抗効果素子の製造方法について説明する。以下の説明では、磁気抵抗効果素子MTJ内の各構成要素のうち、強磁性体34(記憶層SL)の製造方法について特に説明するものとし、その他の構成要素(参照層RL、シフトキャンセル層SCL等)については、その説明を省略する。
【0060】
図6及び
図7は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の磁気抵抗効果素子の製造方法を説明するための模式図である。
図6及び
図7では、強磁性体34がアニーリング処理によってアモルファス状態から結晶状態となる過程が示される。なお、非磁性体35より下層に積層される強磁性体36、非磁性体37、強磁性体38、及び非磁性体39については、説明の便宜上、図示を省略している。
【0061】
図6に示すように、非磁性体35、強磁性体34、非磁性体33、非磁性体32、及び非磁性体31が半導体基板20からこの順に積層される。
【0062】
非磁性体35及び33は、膜面が(001)面に配向したNaCl結晶構造を有する。これにより、強磁性体34との界面において、非磁性体35及び33は、マグネシウム(Mg)と酸素(O)とが交互に配列する。
【0063】
強磁性体34は、例えば、鉄(Fe)とボロン(B)とを含むアモルファス状態で積層される。
【0064】
次に、
図7に示すように、
図6において積層された各層に対して、アニーリング処理が行われる。具体的には、各層に対して外部から熱が加えられることにより、強磁性体34が非晶質から結晶質へ変換される。ここで、非磁性体35及び33は、強磁性体34の結晶構造の配向を制御する役割を果たす。すなわち、強磁性体34は、非磁性体35及び33をシード材として結晶構造を成長させる(結晶化処理)。強磁性体34内の鉄(Fe)は、酸化マグネシウム(MgO)の格子間隔とのミスマッチが小さいため、強磁性体34は、非磁性体35及び33の結晶面と同じ結晶面に配向される。これにより、強磁性体34の結晶配向性が向上し、より大きなトンネル磁気抵抗比(TMR:Tunnel mangetoresistive ratio)を得ることができる。
【0065】
また、強磁性体34と非磁性体35及び33との界面において、強磁性体34内の鉄(Fe)と、非磁性体35及び33内の酸素(O)とが結合し、sp混成軌道が形成される。これにより、強磁性体34は、両側の界面のいずれからも、垂直方向の磁気異方性を発現させることができる。
【0066】
なお、アニーリング処理において、非磁性体31は、強磁性体34内のボロン(B)を吸収する。これにより、強磁性体34の結晶化が促進される。上述の通り、非磁性体32の膜厚は2nm(ナノメートル)以下に設定され、非磁性体33の膜厚は1nm(ナノメートル)以下に設定される。このため、非磁性体31と強磁性体34との間の距離を短くすることができ、非磁性体31は、強磁性体34からボロン(B)を吸収することができ、強磁性体34の結晶化の促進に寄与することができる。
【0067】
また、非磁性体32は、ホウ化物となりやすい材料が選択される。このため、非磁性体32は、非磁性体31と共に、強磁性体34からのボロン(B)の吸収を促進することができる。
【0068】
以上で、磁気抵抗効果素子MTJの製造が終了する。
【0069】
1.3. 本実施形態に係る効果について
第1実施形態によれば、磁気抵抗効果素子は、寄生抵抗の増加を抑制しつつ、垂直磁気異方性を向上させることができる。本効果につき、以下に説明する。
【0070】
第1実施形態では、磁気抵抗効果素子MTJは、非磁性体35、強磁性体34、非磁性体33、非磁性体32、及び非磁性体31がこの順に半導体基板20の上方に積層される。非磁性体31は、希土類酸化物を含む。これにより、強磁性体34内に含まれるボロン(B)は、アニーリング処理の際に、非磁性体31によって吸収される。このため、強磁性体34を良質に結晶化させることができる。
【0071】
また、非磁性体33及び35は、酸化マグネシウム(MgO)を含む。このため、強磁性体34は、非磁性体33との界面と、非磁性体35との界面と、のいずれからも結晶構造が成長する。このため、両界面において、磁気異方性を高める鉄(Fe)-酸素(O)間の結合を発生させることができる。
【0072】
図8は、第1実施形態に係る効果を説明するための模式図である。
図8では、横軸に磁化(Ms×t)の大きさを取り、縦軸に異方性磁界(Hk)の大きさを取ることにより、強磁性体の垂直磁気異方性の大きさが示される。なお、Ms及びtはそれぞれ、対象である強磁性体の飽和磁化、及び膜厚を示し、磁化(Ms×t)は、当該飽和磁化及び膜厚の積で表される。また、垂直磁気異方性は、磁化及び異方性磁界の積に相関する。このため、
図8の例では、線が右上に移動すればするほど、垂直磁気異方性が大きいことを示す。
【0073】
図8では、比較例の強磁性体の垂直磁気異方性を示す大きさを示す線L1と、強磁性体34の垂直磁気異方性の大きさを示す線L2と、が示される。比較例の強磁性体は、例えば、強磁性体34の上面上又は下面上のうちの一方にのみ酸化マグネシウム(MgO)を含む非磁性体が設けられた場合である。
図8に示すように、第1実施形態に係る強磁性体34は、比較例に係る強磁性体よりも、垂直磁気異方性が大きくなる。これは、比較例に係る強磁性体では、鉄(Fe)-酸素(O)間の結合が、上下面のうちの一方にのみ発生しているのに対し、第1実施形態に係る強磁性体34では、上下面のいずれでも発生していることに起因する。このように、第1実施形態に係る強磁性体34は、比較例に係る強磁性体よりも、理論上、約2倍の垂直磁気異方性を得ることができ得る。
【0074】
また、非磁性体32及び33の膜厚はそれぞれ、2nm(ナノメートル)以下、及び1nm(ナノメートル)以下に抑えられる。これにより、非磁性体31と強磁性体34との間の距離が大きくなることを抑制することができる。したがって、アニーリング処理の際に強磁性体34からボロン(B)を引き抜く効果を維持しつつ、高い垂直磁気異方性を得ることができる。
【0075】
また、非磁性体32は、ボロン(B)化しやすい材料が選択される。これにより、非磁性体31と強磁性体34との間に非磁性体32が設けられることによるボロン(B)の引き抜き効果の低下を抑制することができる。
【0076】
また、非磁性体32には、非磁性体35の1割以下の抵抗値を有する材料が選択される。これにより、抵抗値が比較的大きい酸化マグネシウム(MgO)を含む非磁性体33を積層させたことによる寄生抵抗の増加を抑制することができる。このため、磁気抵抗効果素子MTJの抵抗値の増加を抑制でき、ひいては、書込み電流Iw0及びIw1の増加を抑制することができる。このため、磁気抵抗効果素子MTJを磁気記憶装置に適用し易くすることが出来る。
【0077】
また、強磁性体34は、強磁性体36よりも上方に設けられる。これに伴い、非磁性体33は、非磁性体32よりも下方に設けられる。このため、磁気抵抗効果素子MTJは、強磁性体34の上面上に非磁性体33が積層される構造となり、ひいては、非磁性体33がbccの結晶構造となるように製膜することができる。
【0078】
補足すると、強磁性体34が強磁性体36よりも下方に設けられる場合、非磁性体33は、非磁性体32よりも上方に設けられる。より具体的には、非磁性体33は、非磁性体32の上面上に設けられる。この場合、非磁性体32は、製膜時においてボロン(B)を含まないため、非磁性体33がbccの結晶構造となることを阻害し得る。このように、非磁性体33は、非磁性体32の下方に設けられることが望ましい。第1実施形態によれば、磁気抵抗効果素子MTJは、トップフリーの構造をとるため、非磁性体33が非磁性体32の下方に設けられる構造となり、非磁性体33がシード材としての機能を有するように製膜することができる。
【0079】
2. 変形例等
なお、上述の第1実施形態に限らず、種々の変形が適用可能である。以下では、上述の第1実施形態に適用可能ないくつかの変形例について説明する。なお、説明の便宜上、第1実施形態との差異点について主に説明する。
【0080】
上述の第1実施形態で述べたメモリセルMCは、スイッチング素子SELとして、2端子型のスイッチング素子が適用される場合について説明したが、スイッチング素子SELとして、MOS(Metal oxide semiconductor)トランジスタが適用されてもよい。すなわち、メモリセルアレイは、Z方向の異なる高さに複数のメモリセルMCを有する構造に限らず、任意のアレイ構造が適用可能である。
【0081】
図9は、変形例に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を説明するための回路図である。
図9は、第1実施形態の
図1において説明した磁気記憶装置1のうちのメモリセルアレイ10に対応する。
【0082】
図9に示すように、メモリセルアレイ10Aは、各々が行及び列に対応付けられた複数のメモリセルMCを備えている。そして、同一行にあるメモリセルMCは、同一のワード線WLに接続され、同一列にあるメモリセルMCの両端は、同一のビット線BL及び同一のソース線/BLに接続される。
【0083】
図10は、変形例に係る磁気記憶装置のメモリセルの構成を説明するための断面図である。
図10は、第1実施形態の
図3及び
図4において説明したメモリセルMCに対応する。なお、
図10の例では、メモリセルMCは、半導体基板に対して積層されないため、“u”及び“d”等の添え字は付されない。
【0084】
図10に示すように、メモリセルMCは、半導体基板40上に設けられ、選択トランジスタ41(Tr)及び磁気抵抗効果素子42(MTJ)を含む。選択トランジスタ41は、磁気抵抗効果素子42へのデータ書込み及び読出し時において、電流の供給及び停止を制御するスイッチとして設けられる。磁気抵抗効果素子42の構成は、第1実施形態の
図5に示された磁気抵抗効果素子MTJと同等である。
【0085】
選択トランジスタ41は、ワード線WLとして機能するゲート(導電体43)と、当該ゲートのx方向に沿う両端において半導体基板40上に設けられた1対のソース領域又はドレイン領域(拡散領域44)と、を備えている。導電体43は、半導体基板40上に設けられたゲート絶縁膜として機能する絶縁体45上に設けられる。導電体43は、例えば、y方向に沿って延び、y方向に沿って並ぶ他のメモリセルMCの選択トランジスタ(図示せず)のゲートに共通接続される。導電体43は、例えばx方向に並ぶ。選択トランジスタ41の第1端に設けられた拡散領域44上には、コンタクトプラグ46が設けられる。コンタクトプラグ46は、磁気抵抗効果素子42の下面(第1端)上に接続される。磁気抵抗効果素子42の上面(第2端)上にはコンタクトプラグ47が設けられ、コンタクトプラグ47の上面上には、ビット線BLとして機能する導電体48に接続される。導電体48は、例えば、x方向に延び、x方向に並ぶ他のメモリセルの磁気抵抗効果素子(図示せず)の第2端に共通接続される。選択トランジスタ41の第2端に設けられた拡散領域44上には、コンタクトプラグ49が設けられる。コンタクトプラグ49は、ソース線/BLとして機能する導電体50の下面上に接続される。導電体50は、例えば、x方向に延び、例えばx方向に並ぶ他のメモリセルの選択トランジスタ(図示せず)の第2端に共通接続される。導電体48及び50は、例えばy方向に並ぶ。導電体48は、例えば導電体50の上方に位置する。なお、
図10では省略されているが、導電体48及び50は、互いに物理的及び電気的な干渉を避けて配置される。選択トランジスタ41、磁気抵抗効果素子42、導電体43、48、及び50、並びに及びコンタクトプラグ46、47、及び49は、層間絶縁膜51によって被覆される。なお、磁気抵抗効果素子42に対してx方向又はy方向に沿って並ぶ他の磁気抵抗効果素子(図示せず)は、例えば同一の階層上に設けられる。すなわち、メモリセルアレイ10A内において、複数の磁気抵抗効果素子42は、例えばXY平面上に配置される。
【0086】
以上のように構成することにより、スイッチング素子SELに2端子型のスイッチング素子ではなく、3端子型のスイッチング素子であるMOSトランジスタが適用される場合についても、第1実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0087】
また、上述の実施形態及び変形例で述べたメモリセルMCは、磁気抵抗効果素子MTJがスイッチング素子SELの下方に設けられる場合について説明したが、磁気抵抗効果素子MTJがスイッチング素子SELの上方に設けられてもよい。
【0088】
更に、上述の第1実施形態及び各変形例では、磁気抵抗効果素子を備える磁気装置の一例として、MTJ素子を備える磁気記憶装置について説明したが、これに限られない。例えば、磁気装置は、センサやメディア等の垂直磁気異方性を有する磁気素子を必要とする他のデバイスを含む。当該磁気素子は、例えば、
図5において説明した非磁性体31、非磁性体32、非磁性体33、強磁性体34、及び非磁性体35を少なくとも含む素子である。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1…磁気記憶装置、10,10A…メモリセルアレイ、11…ロウ選択回路、12…カラム選択回路、13…デコード回路、14…書込み回路、15…読出し回路、16…電圧生成回路、17…入出力回路、18…制御回路、21,24,27,43,48,50…導電体、22,23,25,26…素子、31,32,33,35,37…非磁性体、34,36,38…強磁性体、20,40…半導体基板、41…選択トランジスタ、42…磁気抵抗効果素子、44…ソース領域又はドレイン領域、45…絶縁層、46,47,49…コンタクトプラグ、51…層間絶縁膜。