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特許7204634主要有害心血管事象を低減するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】主要有害心血管事象を低減するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/485 20060101AFI20230106BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20230106BHJP
   A61K 9/22 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230106BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
A61K31/485
A61K31/135
A61K9/22
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/06
A61P9/10
A61P43/00 121
A61K45/00
【請求項の数】 35
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019220444
(22)【出願日】2019-12-05
(62)【分割の表示】P 2016536659の分割
【原出願日】2014-12-04
(65)【公開番号】P2020037593
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2019-12-20
(31)【優先権主張番号】61/913,216
(32)【優先日】2013-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/914,938
(32)【優先日】2013-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/984,580
(32)【優先日】2014-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/322,810
(32)【優先日】2014-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505401698
【氏名又は名称】オレキシジェン・セラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】プレストン・クラッセン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン・テイラー
【審査官】吉川 阿佳里
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-516493(JP,A)
【文献】特許第6665094(JP,B2)
【文献】ClinicalTrials.gov archive,2013年05月,https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT01601704?V_28=View
【文献】Physicians' Academy for Cardiovascular Education,2013年11月,https://pace-cme.org/browse/?k=CALENDAR&s=DATE_ASC
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00-9/72
A61K 45/00-45/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1週間の期間、徐放性製剤における4~50mgの一日投与量のナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩、及び、50~400mgの一日投与量のブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩を主要有害心血管事象(MACE)の高い危険がある対象に投与するための、
前記対象において心血管死のリスクを低減するための組成物であって、
前記投与が、プラセボの投与と比較して心血管死のリスクを低減し、
前記リスクにおける低減が、ハザード比1.0未満を参照並びに、
MACEの高い危険がある前記対象が、処置の時点で、次の特徴:II型糖尿病;既存の心血管疾患;うっ血性心不全;心血管疾患の家族歴;現在の喫煙者;心不整脈を有する若しくは有したことがある;心房細動、心室細動若しくは頻脈性不整脈を有する若しくは有したことがある;洞性不整脈を有さない;不安定アンギナを有する;高血圧を有する;脳卒中を有したことがある;動脈瘤を有する;又はトリグリセリドの上昇、LDLの上昇及び/又は低HDLを有する、の1つ又は複数を有するように定義される、
組成物。
【請求項2】
対象が2型糖尿病、又は心血管疾患の確定診断を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
対象が心血管疾患の確定診断をする及び/又は、前記対象が、同定より前の3ヵ月超の確認された心筋梗塞の病歴;冠血行再建の病歴;頸動脈若しくは末梢血行再建の病歴;虚血性変化を伴うアンギナ;段階的運動試験でのECG変化;心臓画像検査陽性;同定より前の2年以内の足関節上腕血圧指数<0.9;又は、処置前の2年以内の冠動脈、頸動脈若しくは下肢動脈の50%超狭窄の少なくとも1つを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
対象が2型糖尿病及び:145/95mmHg超の高血圧、薬物療法を必要とする脂質異常症、12ヵ月前以内の確認された低HDLの1つのみを有する又は現在タバコ使用者である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
対象が心房細動の病歴を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
対象が肥満又は体重過多である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
対象が肥満又は体重過多ではない、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
対象が心血管系状態、糖尿病、高血圧、脂質異常症又は血糖状態から選択される1つ又は複数の状態の管理のための投薬療法を同時に受けている、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
対象が抑うつの管理のための投薬療法を同時に受けている、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記投薬療法が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害剤、セロトニンアンタゴニスト及び再取り込み阻害剤、TAAR1アゴニスト、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬又はモノアミンオキシダーゼ阻害剤から選択される抗うつ薬化合物である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
対象がスタチンを同時に受けていない、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記投与する工程が前記対象での主要有害心血管事象の危険を低減する、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
MACE、四点拡張MACE、五点拡張MACE、CV死、非致死性MI、脳卒中、致死性脳卒中、非致死性脳卒中、非致死性HUSA(不安定アンギナのための入院)、冠血行再建手順及び/又は全死因死亡からなる群から選択される1つ又は複数の事象の最初の発生までの時間を増加させる、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
有害心血管事象の予測重症度を低減する、又は有害心血管事象からの予測死亡率を減少させる、又は心血管疾患の進行を減少させる、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
対象の予測平均余命、有害心血管事象間の予測期間又は対象での心血管系介入治療の有効性を増加させる、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記主要有害心血管事象が心血管死、非致死性心筋梗塞、心不整脈又は非致死性脳卒中である、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記主要有害心血管事象が心血管死である、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記心血管死が致死性心筋梗塞及び脳卒中に起因する死亡を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記主要有害心血管事象が非致死性脳卒中である、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記主要有害心血管事象が非致死性心筋梗塞である、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記主要有害心血管事象が致死性及び非致死性脳卒中の両方を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記主要有害心血管事象が心不整脈を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記主要有害心血管事象が致死性及び非致死性心筋梗塞の両方を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記主要有害心血管事象が不安定アンギナから心筋梗塞又は死亡への進行を更に含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物の投与が前記対象の体重の5%、4%、3%、2%又は1%より多くの体重減少をもたらす、請求項1から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
MACEの危険における低減が達成され、対象が、対象の体重の5%、4%、3%、2%又は1%より多くを失わない、請求項1から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
ナルトレキソン及びブプロピオンの1つ若しくは両方又は薬学的に許容されるそれらの塩が、徐放性製剤で投与される、請求項1から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
ナルトレキソン及びブプロピオンの前記量が徐放性製剤におけるナルトレキソン32mg及び徐放性製剤におけるブプロピオン360mg又は薬学的に許容されるそれらの塩の一日量である、請求項1から27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記ナルトレキソン及びブプロピオンが単一の経口投与形態で投与される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記対象が少なくとも12週間、20週間、26週間又は52週間処置される、請求項1から29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
対象のバイタルサインが治療の経過の際に10%又は5%を超えて変化せず、バイタルサインが安静時血圧、収縮期血圧、拡張期血圧及び/又は心拍数の群から選択される、請求項1から30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
対象が、
処置の第1週に毎日、徐放性製剤における前記ナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩約8mg及び徐放性製剤における前記ブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩約90mg;
処置の第2週に毎日、徐放性製剤における前記ナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩約16mg及び徐放性製剤における前記ブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩約180mg;
処置の第3週に毎日、徐放性製剤における前記ナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩約24mg及び徐放性製剤における前記ブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩約270mg;並びに
処置の第4週及び処置の任意の続く週に毎日、徐放性製剤における前記ナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩約32mg及び徐放性製剤における前記ブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩約360mg、
を投与される、請求項1から30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
対象が次の特徴:(a)方法での処置の3ヵ月前以内の心筋梗塞;(b)カナダ循環器学会等級付け計画による狭心症グレードIII又はグレードIVの病歴;(c)脳血管性疾患の病歴;(d)脳卒中の病歴;(e)洞性不整脈以外の頻脈の病歴;(f)計画肥満外科手術、心臓手術若しくは冠動脈再建術;(g)発作、若しくは、頭部外傷の病歴;(h)躁病の病歴、活動性精神病の現在の診断、活動性過食症の現在の診断、若しくは神経性食欲不振の現在の診断;又は(i)4年未満の平均余命を有する状態、の1つ又は複数を有したことがある、請求項1から32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
ナルトレキソン及びブプロピオンが1日1回、2回、3回又は4回投与される、請求項1から33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
少なくとも1週間の期間、徐放性製剤における4~50mgの一日投与量のナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩、及び、50~400mgの一日投与量のブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩を主要有害心血管事象(MACE)の高い危険がある対象に投与するための、
前記対象において心血管死のリスクを低減するための薬剤の調製のためのナルトレキソン及びブプロピオンの使用であって、
前記投与が、プラセボの投与と比較して心血管死のリスクを低減し、
前記リスクにおける低減が、ハザード比1.0未満を参照し、並びに、
MACEの高い危険がある前記対象が、処置の時点で、次の特徴:II型糖尿病;既存の心血管疾患;うっ血性心不全;心血管疾患の家族歴;現在の喫煙者;心不整脈を有する若しくは有したことがある;心房細動、心室細動若しくは頻脈性不整脈を有する若しくは有したことがある;洞性不整脈を有さない;不安定アンギナを有する;高血圧を有する;脳卒中を有したことがある;動脈瘤を有する;又はトリグリセリドの上昇、LDLの上昇及び/又は低HDLを有する、の1つ又は複数を有するように定義され、
前記薬剤が請求項1から34のいずれか一項に記載の組成物を含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による関連出願への組み込み
本出願は、米国出願第61/913,216号、2013年12月6日出願;第61/914,938号、2013年12月11日出願;第61/984,580号、2014年4月25日出願及び第14/322,810号、2014年7月2日出願に優先権を主張し、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
心臓疾患を含む心血管疾患(「CVD」)は、心臓、血管(動脈、毛細血管及び静脈)又は両方に関連する疾患の種類である。心血管疾患は、心血管系に影響を与える任意の疾患、主に心疾患、脳及び腎臓の血管疾患並びに末梢動脈疾患を指す。心血管疾患の原因は様々であるが、最も一般的なのは粥状動脈硬化及び/又は高血圧である。
【0003】
心血管疾患は、世界の死亡原因の第1位である。WHO、2013年3月ファクトシートN317によると、2008年に推定1730万人がCVDで死亡しており、これは全世界の死亡の30%に相当する。これらの死亡の内推定730万人が冠動脈心疾患のため、620万人が脳卒中のためであった。CVD、主として心臓疾患及び脳卒中のために死亡する人の数は、2030年までに2330万人に達するまでに増加すると予想される。CVDは、ただ1つの主要な死亡原因であり続けると予測されている。したがって新たなCVD処置を開発する必要性が存在する。
【0004】
主要有害心血管事象(「MACE」)は、3つの主な測定:非致死性心筋梗塞(「MI」)、非致死性脳卒中及び心血管死を含む。これらの主要有害心血管事象は重度の虚血性事象を表し、心血管系転帰試験において広く使用されている評価項目である。
【0005】
前述の内容を考慮して、MACEの高い危険がある患者におけるMACEの危険を低減するのに有効な処置を開発する必要がある。
【0006】
肥満は、肥満度指数(BMI)で定義される。BMIは体重(kg)/[身長(m)]2として算出される。米国疾病管理予防センター(CDC)及び世界保健機関(WHO)の指針により、20歳を超える成人について、BMIは次のとおり分類される:18.5未満は過少体重と見なされ、18.5~24.9は正常と見なされ、25.0~29.9は体重過多と見なされ、30.0以上は肥満と見なされる(World Health Organization. Physical status: The use and interpretation of anthropometry. Geneva、Switzerland: World Health Organization 1995. WHO Technical Report Series)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許公開第2008/0113026号
【文献】米国特許公開第2007/0281021号
【文献】米国特許第7,375,111号
【文献】米国特許第7,462,626号
【文献】米国特許公開第2008/0110792号
【非特許文献】
【0008】
【文献】World Health Organization. Physical status: The use and interpretation of anthropometry. Geneva、Switzerland: World Health Organization 1995. WHO Technical Report Series
【文献】"Remington's Pharmaceutical Sciences," Mack Publishing Co., Easton, PA, 第18版, 1990
【文献】連邦規則集第21巻201.57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
大部分の抗肥満剤臨床研究では、1又は2型糖尿病及び主要有害心血管事象(MACE)の高い危険等の他の深刻な医学的状態を有する人々は排除される。そのように、これらの危険のある患者集団において有効な抗肥満処置を開発する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に開示のいくつかの実施形態は、ナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩を含む、主要有害心血管事象(MACE)の危険を低減するための組成物、キット、使用、系及び方法に関する。一実施形態は、主要有害心血管事象(MACE)の高い危険がある対象を処置する方法であって、MACEの高い危険がある対象を同定する工程;並びに高い危険を低減するのに有効な量のナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩を対象に投与する工程を含む、方法である。
【0011】
一実施形態は、対象を処置する方法であって、不安定アンギナを有する又はその危険がある対象を同定する工程;並びに高い危険を低減するのに有効な量のナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩を対象に投与することによって心筋梗塞の危険又は心血管系事象からの死亡の危険を低減する工程を含む、方法である。
【0012】
一実施形態は、対象を処置する方法であって、少なくとも10日間を超える期間のナルトレキソン及びブプロピオンの反復投与を含む一連の処置を対象に処方する工程;並びに化合物での処置が主要有害心血管事象の危険を低減できることを対象に助言する又は対象に情報を提供する工程を含む、方法である。
【0013】
一実施形態は、対象を処置する方法であって、1つ又は複数の有害心血管事象の危険にある対象を同定する工程;並びに1つ又は複数の有害心血管事象の危険が低減されるプロトコールの下で対象にナルトレキソン及びブプロピオンを反復して投与する工程を含む、方法である。
【0014】
一実施形態は、対象を処置する方法であって、同様の年齢、人種又は性別の他の対象と比較して主要有害心血管事象(MACE)の高い危険があることがわかっていないが、対象のMACEの危険を低減することを望んでいる対象を同定する工程;並びにMACEの危険が低減されるプロトコールの下で対象にナルトレキソン及びブプロピオンを反復して投与する工程を含む、方法である。
【0015】
一実施形態は、対象を処置する方法であって、心血管疾患又は糖尿病の少なくとも1つのための標準的薬剤介入治療ケアを受けている対象を同定する工程、並びに標準的薬剤介入治療ケアへの補助として、対象におけるMACEの危険を低下させるのに有効な量のナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩を対象に投与する工程を含む、方法である。
【0016】
一実施形態は、対象を処置する方法であって、抑うつのための標準的薬剤介入治療ケアを受けている対象を同定する工程、並びに標準的薬剤介入治療ケアへの補助として、対象におけるMACEの危険を低下させるのに有効な量のナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩及び抗うつ薬を対象に投与する工程を含む、方法である。
【0017】
一実施形態は、薬物を提供する方法であって、ナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩の複数の個別の投与単位を対象に処方する工程;並びに化合物又は塩での一連の処置が主要有害心血管事象の危険を低減することを対象に助言する工程を含む、方法である。
【0018】
一実施形態は、薬物を提供する方法であって、業者、薬局、医療供給者(care provider)又は患者に容器を提供する工程であり、容器はナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩の複数の個別の投与単位を含む、工程;業者、薬局、医療供給者又は患者に化合物又はその塩での一連の処置が主要有害心血管事象の危険を低減できることの書面情報を提供する工程を含む、方法である。
【0019】
一実施形態は、化合物を販売するための方法であって、ナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩の潜在的処方者に化合物又はその塩での一連の療法が主要有害心血管事象の危険を低減することを助言する工程;並びに処方者が化合物又はその塩を処方する患者に販売するために化合物又はその塩の単位投与形態を供給する工程を含む、方法である。
【0020】
本開示のいくつかの実施形態は、主要有害心血管事象の発症を予防する又は遅延させるための方法であって、現在MACEの高い危険がない対象を、処置のために選択する工程;並びに所定量のナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩及びブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩を前記対象に投与する工程を含む、方法に関する。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態は、有害心血管転帰の高い危険がある又はMACEの高い危険がある対象において、ナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩を使用して体重過多及び肥満を処置するための方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法によって処置される対象(例えば、患者又は患者集団)は、体重過多又は肥満であり、有害心血管事象の高い危険がある。いくつかの実施形態では対象は、処置の時点で、Table 8(表8)に記載の亜集団から選択される1つ又は複数の特徴を有する。いくつかの実施形態では対象は6年未満2型糖尿病を有したことがある。いくつかの実施形態では対象は現在喫煙者であり、任意選択で2型糖尿病を有さない。いくつかの実施形態では対象は有害心血管転帰の危険があるが2型糖尿病を有さない。いくつかの実施形態では対象は65歳超である。いくつかの実施形態では対象は男性である。いくつかの実施形態では対象は、コーカサス人種ではない。いくつかの実施形態では対象は≧35kg/m2及び40kg/m2未満のBMI分類を有する。いくつかの実施形態では対象は2型糖尿病を有さない又はいかなる抗糖尿病剤投薬療法、例えばインスリン、メトホルミン又はチアゾリジンジオンも受けていない。いくつかの実施形態では対象はGFR≧90mL/分によって特徴付けられる腎機能障害を有する。いくつかの実施形態では対象は現在1つ又は複数のベータ遮断薬を使用している。いくつかの実施形態では対象は現在1つ又は複数の利尿剤を使用している。いくつかの実施形態では対象は1つ若しくは複数のアンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)又はアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEi)の併用投薬療法を使用していない。いくつかの実施形態では対象は現在1つ若しくは複数のカルシウムチャネル遮断薬を使用している。いくつかの実施形態では対象は現在GLP-1受容体アゴニスト、DPP-4阻害剤又はスルホニル尿素から選択される1つ又は複数の投薬療法を使用している。いくつかの実施形態では対象は現在1つ又は複数のセロトニン再取り込み阻害剤を使用している。いくつかの実施形態では対象は抑うつを有さず、又は現在いかなる抗うつ薬投薬療法も使用していない。
【0022】
いくつかの実施形態では本明細書に記載の方法は、有害心血管事象の危険を低減する。いくつかの実施形態では本明細書に記載の方法は、MACEの危険を低減する。いくつかの実施形態では方法は、有害心血管事象の予測重症度を低減する。いくつかの実施形態では方法は、有害心血管事象由来の予測死亡率を減少させる。いくつかの実施形態では方法は、対象の予測平均余命を増加させる。いくつかの実施形態では方法は、有害心血管事象間の予測期間を増加させる。いくつかの実施形態では方法は、対象での心血管系介入治療の有効性を増加させる。いくつかの実施形態では方法は、主要有害心血管事象の予測となる診断指標を有利に調節する。いくつかの実施形態では方法は、心血管疾患の進行を減少させる。
【0023】
いくつかの実施形態では対象は、II型糖尿病(T2DM)を有する。いくつかの実施形態では対象は、既存の心血管疾患を有する。いくつかの実施形態では対象は、うっ血性心不全を有する。いくつかの実施形態では対象は、心血管疾患の家族歴を有する。いくつかの実施形態では対象は喫煙者である。いくつかの実施形態では対象は、心血管疾患に遺伝的に罹患しやすい。いくつかの実施形態では対象は、心不整脈を有する又は有したことがある。いくつかの実施形態では対象は、心房細動、心室細動又は頻脈性不整脈を有する又は有したことがある。いくつかの実施形態では対象は洞性不整脈を有さない。いくつかの実施形態では対象は不安定アンギナを有する。いくつかの実施形態では対象は高血圧を有する。いくつかの実施形態では対象は体重過多である。いくつかの実施形態では対象は肥満である。いくつかの実施形態では対象は脳卒中を有したことがある。いくつかの実施形態では対象は動脈瘤を有する。いくつかの実施形態では対象は脳卒中の危険が高い。いくつかの実施形態では対象は、トリグリセリドの上昇、LDLの上昇及び/又は低HDLを有する。
【0024】
いくつかの実施形態では対象は、スタチンを同時に受けていない。いくつかの実施形態では対象は、Table 5(表5)、6(表6)及び/又は8(表8)に列挙した特徴を有することに関して選択される。いくつかの実施形態では対象は、現在喫煙者ではない。
【0025】
いくつかの実施形態では有害心血管事象は、心血管死、非致死性心筋梗塞、心不整脈又は非致死性脳卒中である。いくつかの実施形態では主要有害心血管事象は、心血管死である。いくつかの実施形態では心血管死は、致死性心筋梗塞及び脳卒中に起因する死亡を含む。いくつかの実施形態では主要有害心血管事象は、非致死性脳卒中である。いくつかの実施形態では主要有害心血管事象は、非致死性心筋梗塞である。いくつかの実施形態では主要有害心血管事象は、致死性及び非致死性脳卒中の両方を含む。いくつかの実施形態では主要有害心血管事象は、心不整脈を含む。いくつかの実施形態では主要有害心血管事象は、致死性及び非致死性心筋梗塞の両方を含む。いくつかの実施形態では主要有害心血管事象は、不安定アンギナから心筋梗塞又は死亡への進行を更に含む。
【0026】
いくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンの1つ若しくは両方又は薬学的に許容されるそれらの塩は、徐放性製剤中で投与される。
【0027】
いくつかの実施形態では対象は少なくとも12週間処置される。いくつかの実施形態では対象は少なくとも20週間処置される。いくつかの実施形態では対象は少なくとも26週間処置される。いくつかの実施形態では対象は少なくとも52週間処置される。いくつかの実施形態では対象は少なくとも78週間処置される。いくつかの実施形態では対象は少なくとも104週間処置される。
【0028】
いくつかの実施形態では対象のバイタルサインは、処置の経過の際に10%又は5%を超えて変化しない。いくつかの実施形態ではバイタルサインは、血圧、収縮期血圧、拡張期血圧及び/又は心拍数の群から選択される。
【0029】
本明細書に示されるいくつかの実施形態は、糖尿病、脂質異常症及び高血圧を処置するための投薬療法を含んで、対象が既存の投薬療法での標準的ケアに従って処置される方法を含む。したがって本明細書に示される実施形態は、ナルトレキソンSR/ブプロピオンSRをMACEの危険があり、糖尿病、脂質異常症又は高血圧投薬療法での標準的ケアに従って処置されている対象に投与することを含む。本明細書に示される実施形態は、糖尿病、脂質異常症又は高血圧投薬療法を受けている対象にナルトレキソンSR/ブプロピオンSRを投与することも含む。いくつかの実施形態では対象は、心血管系状態又は糖尿病の1つ又は複数の管理のための投薬療法を同時に受けている。いくつかの実施形態では対象は、高血圧、脂質異常症又は血糖状態の1つ又は複数の管理のための1つ又は複数の投薬療法を同時に受けている。いくつかの実施形態では対象は、抑うつの管理のための投薬療法を同時に受けている。いくつかの実施形態では対象は、ナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩及び1つ又は複数の追加的薬学的化合物を投与され、ここで組合せはTable 1~3(表1~3)に列挙する組合せから選択される。いくつかの実施形態では方法は抗うつ薬化合物の有効量を投与することを更に含む。いくつかの実施形態では抗うつ薬化合物は、薬物の安全性及び効能を決定する行政機関によって抗うつ薬使用について承認されている。いくつかの実施形態では方法は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、セロトニンアンタゴニスト及び再取り込み阻害剤、TAAR1アゴニスト、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬又はモノアミンオキシダーゼ阻害剤から選択される抗うつ薬化合物の有効量を同時投与することを更に含む。いくつかの実施形態では方法は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤の有効量を同時投与することを更に含む。
【0030】
いくつかの実施形態では対象同定は、次の患者の特徴の1つ又は複数とは無関係に行われる:体重;腹囲;性別;45歳未満の年齢;血圧;同定より前の3ヵ月超の確認された心筋梗塞の病歴;冠血行再建の病歴;頸動脈若しくは末梢血行再建の病歴;虚血性変化を伴うアンギナ;段階的運動試験でのECG変化;心臓画像検査陽性;同定より前の2年以内の足関節上腕血圧指数<0.9;又は、同定より前の2年以内の冠動脈、頸動脈若しくは下肢動脈の50%超の狭窄。
【0031】
いくつかの実施形態では対象は非肥満である。いくつかの実施形態では対象は非体重過多である。いくつかの実施形態では対象は、処置の際に体重管理プログラムに参加していない。いくつかの実施形態では対象の体重は、投与の経過の際にモニターされていない。いくつかの実施形態では対象は、処置の際に体重管理プログラムに参加している。いくつかの実施形態では対象の体重は、投与の経過の際にモニターされる。
【0032】
いくつかの実施形態では対象は、18から44歳の間である。いくつかの実施形態では対象は、44歳を超えている。いくつかの実施形態では対象は、18から49歳の女性ではない。いくつかの実施形態では対象は18から49歳の女性である。いくつかの実施形態では対象は、<27kg/m2の肥満度指数を有する。いくつかの実施形態では対象は、少なくとも27kg/m2の肥満度指数を有する。いくつかの実施形態では対象は、腹囲<88cmを有する女性である。いくつかの実施形態では対象は、少なくとも88cmの腹囲を有する女性である。いくつかの実施形態では対象は、腹囲<102cmを有する男性である。いくつかの実施形態では対象は、少なくとも102cmの腹囲を有する男性である。
【0033】
いくつかの実施形態では対象は、2型糖尿病又は心血管疾患の確定診断を有する。いくつかの実施形態では対象は、2型糖尿病又は心血管疾患の確定診断を有さない。いくつかの実施形態では対象は、心血管疾患の確定診断又は心血管疾患の高い可能性のいずれかを有し、ここで対象は、同定より前の3ヵ月超の確認された心筋梗塞の病歴;冠血行再建の病歴;頸動脈若しくは末梢血行再建の病歴;虚血性変化を伴うアンギナ;段階的運動試験でのECG変化;心臓画像検査陽性;同定より前の2年以内の足関節上腕血圧指数<0.9;又は、処置前の2年以内の冠動脈、頸動脈若しくは下肢動脈の50%超の狭窄の少なくとも1つを有する。いくつかの実施形態では対象は、心血管疾患の確定診断又は心血管疾患の高い可能性のいずれかを有し、ここで対象は、同定より前の3ヵ月超の確認された心筋梗塞の病歴;冠血行再建の病歴;頸動脈若しくは末梢血行再建の病歴;虚血性変化を伴うアンギナ;段階的運動試験でのECG変化;心臓画像検査陽性;同定より前の2年以内の足関節上腕血圧指数<0.9;又は、処置前の2年以内の冠動脈、頸動脈若しくは下肢動脈の50%超の狭窄の少なくとも1つを有さない。いくつかの実施形態では対象は、2型糖尿病及び:145/95mmHg超の高血圧、薬物療法(pharmacotherapy)を必要とする脂質異常症、12ヵ月前以内の確認された低HDLの1つのみを有する又は現在タバコ使用者である。
【0034】
いくつかの実施形態では対象は、心房細動の病歴を有する。いくつかの実施形態では対象は、方法での処置の3ヵ月前以内に心筋梗塞を有したことがある。いくつかの実施形態では対象は、カナダ循環器学会等級付け計画による狭心症グレードIII又はグレードIVの病歴を有する。いくつかの実施形態では対象は脳血管性疾患の病歴を有する。いくつかの実施形態では対象は脳卒中の病歴を有する。いくつかの実施形態では対象は、洞性不整脈以外の頻脈の病歴を有する。いくつかの実施形態では対象は、洞性不整脈の病歴を有する。いくつかの実施形態では対象は、計画肥満外科手術、心臓手術若しくは冠動脈再建術を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では対象は、発作の病歴、頭部外傷又は対象を発作になりやすくする状態を有さない。いくつかの実施形態では対象は、発作の病歴、頭部外傷又は対象を発作になりやすくする状態を有する。いくつかの実施形態では対象は、躁病の病歴、活動性(active)精神病の現在の診断、活動性過食症の現在の診断又は神経性食欲不振の現在の診断を有する。いくつかの実施形態では対象は、躁病の病歴、活動性精神病の現在の診断、活動性過食症の現在の診断又は神経性食欲不振の現在の診断を有さない。
【0036】
いくつかの実施形態では対象は、4年未満の平均余命を有する。いくつかの実施形態では対象は、少なくとも4年間の平均余命を有する。
【0037】
いくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンの両方又は薬学的に許容されるそれらの塩は、徐放性形態である。いくつかの実施形態では対象は、血圧がある値だけ上昇した場合にナルトレキソン及びブプロピオンを中止するように指示されておらず、ここで値は10mmHg以上である。いくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンは、1日1回、2回、3回又は4回投与される。いくつかの実施形態ではナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩は4~50mgの一日投与量で投与される。いくつかの実施形態ではブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩は、50~400mgの一日投与量で投与される。
【0038】
いくつかの実施形態では方法は、対象における1つ又は複数の主要有害心血管事象(MACE)の危険;有害心血管事象の予測重症度;有害心血管事象からの予測死亡率及びこれらの組合せの少なくとも1つを低減し、ここで危険、予測重症度又は予測死亡率における低減は、MACEの危険、有害心血管事象の予測重症度又は有害心血管事象からの予測死亡率の同じレベルにあるが、ナルトレキソン及びブプロピオンの投与による処置を受けていない対象と比較して、少なくとも又は少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%又は90%の低減である。
【0039】
いくつかの実施形態では方法は、対象における心血管疾患の進行を減少させることに有効であり、ここで心血管疾患の進行における減少は、同じレベルの心血管疾患の進行にあるが、ナルトレキソン及びブプロピオンの投与による処置を受けていない対象と比較して、心血管疾患の進行における少なくとも又は少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%又は90%の減少である。
【0040】
いくつかの実施形態では方法は、対象の予測平均余命を増加させるために、又は有害心血管事象間の次の発生までの予測期間を増加させるために有効であり、ここで増加は同じレベルのMACEの危険があるが、ナルトレキソン及びブプロピオンの投与による処置を受けていない対象と比較して少なくとも又は少なくとも約1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、12ヵ月、14ヵ月、16ヵ月、18ヵ月、20ヵ月又は24ヵ月である。
【0041】
いくつかの実施形態では方法は、対象における心血管系介入治療の有効性を増加させ、ここで増加は、同じ心血管系介入治療を受けているが、ナルトレキソン及びブプロピオンの投与による処置を受けていない、同じレベルのMACEの危険がある対象での心血管系介入治療の期待される有効性と比較して少なくとも又は少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%又は90%である。
【0042】
いくつかの実施形態では方法は、主要有害心血管事象の予測となる診断指標を有利に調節し、ここで有利な調節は、同じレベルのMACEの危険があるが、ナルトレキソン及びブプロピオンの投与による処置を受けていない対象における主要有害心血管事象の予測となる診断指標と比較して、少なくとも又は少なくとも約少なくとも又は少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%又は90%である。
【0043】
いくつかの実施形態では危険の低減又は転帰における改善は、処置の16週間未満で、処置の16週間後、処置の20週間未満で、処置の24週間未満で、処置の28週間未満で又は処置の52週間未満で達成される。
【0044】
いくつかの実施形態では対象は、対象の体重の5%、4%、3%、2%、1%より多くを失わない。いくつかの実施形態ではMACEの危険の低減又は転帰における改善は達成され、対象は、対象の体重の5%、4%、3%、2%、1%より多くを失っていない。
【0045】
いくつかの実施形態では対象の血圧は、5%、4%、3%、2%、1%又は0.5%を超えて変化しない。いくつかの実施形態では対象の血圧は、0.5%、1%、2%、3%、4%又は5%まで上昇する。いくつかの実施形態では血圧は収縮期血圧、拡張期血圧又は両方である。いくつかの実施形態では血圧は、処置の2、8、16、20、24、26、28、30又は52週間後に測定される。いくつかの実施形態では血圧における変化は、処置前ベースラインと比較して測定される。
【0046】
いくつかの実施形態では方法は、MACE、四点拡張(Four-point Expanded)MACE、五点拡張(Five-point Expanded)MACE、CV死、非致死性MI、脳卒中、致死性脳卒中、非致死性脳卒中、非致死性HUSA(不安定アンギナのための入院)、冠血行再建手順及び/又は全死因死亡率からなる群から選択される1つ又は複数の事象の最初の発生までの時間を増加させ得る。
【0047】
いくつかの実施形態では有害転帰は、MACE、四点拡張MACE、五点拡張MACE、CV死、非致死性MI、脳卒中、致死性脳卒中、非致死性脳卒中、非致死性HUSA(不安定アンギナのための入院)、冠血行再建手順及び/又は全死因死亡率からなる群から選択される1つ又は複数の事象である。
【0048】
一実施形態は、前述の方法のいずれかにおける使用のためのナルトレキソン及びブプロピオンである。一実施形態は、主要有害心血管事象の危険を低減するためのナルトレキソン及びブプロピオンの使用である。一実施形態は、主要有害心血管事象の危険を低減するための薬剤の調製のためのナルトレキソン及びブプロピオンの使用である。一実施形態は、主要有害心血管事象の危険を低減するための薬剤の調製のためのナルトレキソン及びブプロピオンの使用であって、ここで化合物は前述の特許請求の範囲のいずれか一項に記載の方法による使用のためである。いくつかの実施形態では、ナルトレキソン及び/若しくはブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩は、徐放性又は持続放出形態である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】実施例1及び2の研究設計をグラフ描写する図である。
図2】一実施形態においてナルトレキソン及びブプロピオン(NB32)並びにプラセボを受けている患者についての最初の主要有害心血管事象(MACE)までの時間を例示するグラフである。
図3】一実施形態においてナルトレキソン及びブプロピオン(NB32)又はプラセボを受けている患者についてのベースラインからの経時的な体重における百分率変化を例示するグラフである。
図4】一実施形態においてナルトレキソン及びブプロピオン(NB32)又はプラセボを受けている患者についての最初の四点拡張主要有害心血管事象(MACE)までの時間を例示するグラフである。
図5】一実施形態においてナルトレキソン及びブプロピオン(NB32)又はプラセボを受けている患者についての心血管死までの時間を例示するグラフである。
図6】一実施形態においてナルトレキソン及びブプロピオン(NB32)又はプラセボを受けている患者についての最初の心筋梗塞までの時間を例示するグラフである。
図7】一実施形態においてナルトレキソン及びブプロピオン(NB32)又はプラセボを受けている患者についての最初の脳卒中までの時間を例示するグラフである。
図8】一実施形態においてナルトレキソン及びブプロピオン(NB32)又はプラセボを受けている患者についての全死因死亡までの時間を例示するグラフである。
図9】一実施形態においてナルトレキソン及びブプロピオン(NB32)又はプラセボを受けている患者についての最初の五点拡張主要有害心血管事象(MACE)までの時間を例示するグラフである。
図10】一実施形態においてナルトレキソン及びブプロピオン(NB32)又はプラセボを受けている患者についてのベースラインからの経時的な収縮期血圧における平均変化を例示するグラフである。
図11】一実施形態においてナルトレキソン及びブプロピオン(NB32)又はプラセボを受けている患者についてのベースラインからの経時的な拡張期血圧における平均変化を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
ナルトレキソンSR及びブプロピオンSR[Contrave(登録商標)又はNB]の組合せは、体重過多及び肥満個体における体重減少及び体重減少の維持のためにOrexigen Therapeutics, Inc社によって開発された。ナルトレキソン及びブプロピオンで処置される体重過多及び肥満の対象におけるMACEの危険を調査するために、有害CV転帰の高い危険がある体重過多及び肥満の対象における過剰な心血管系(CV)危険を除外するために設計された二重盲検、無作為、プラセボ対照研究が実行された。この研究は、実施例1に記載され、Contrave中の活性成分、具体的にはブプロピオンが、血圧を上昇させることが公知であったことから、Contraveの承認より先にFDAによって要求された。FDAは、血圧の上昇が一般集団においては許容される一方で、体重過多/肥満患者集団においては有害心血管転帰における容認できない上昇を導くことを憂慮した。したがってContraveが有害心血管転帰において容認できない上昇を導くかどうかを決定するためにMACEのより高い危険がある患者がContrave又はプラセボで処置された。
【0051】
下の実施例2は、この臨床研究のいくつかの結果を要約しており、ナルトレキソンSR/ブプロピオンSRでの処置が心血管系危険因子を有する体重過多及び肥満の対象におけるMACEの発生を減少させることを実証している。簡潔に述べると、プラセボと比較してナルトレキソンSR/ブプロピオンSR処置群においてより少ない対象がMACE事象を経験した。
【0052】
例えば有利な結果が心不整脈を有するMACEの危険がある体重過多/肥満患者集団及び、抑うつを有するとして特徴付けられたMACEの危険がある体重過多/肥満患者集団において観察され、そのような対象のいくらかは、抗うつ薬投薬療法、例えば選択的セリン再取り込み阻害剤(SSRI)を抑うつを処置するための標準的ケアに従って受けていた。有利な結果は、そのいくらかは糖尿病、脂質異常症及び高血圧を処置するための投薬療法を含んでMACEの危険を低下させることが公知である既存の投薬療法での標準的ケアに従って十分に処置された、MACEの危険がある体重過多/肥満患者集団においても観察された。
【0053】
対象
用語「対象」は、個体、好ましくは医学的状態を有する又は医学的処置を受けている若しくは受けるための候補であるヒトを指す。ヒト対象では用語は、用語「患者」と同意語としてしばしば使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法によって処置されている対象は、体重過多又は肥満及び主要有害心血管事象(MACE)の高い危険がある。いくつかの実施形態ではMACEは、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中である。いくつかの実施形態では、MACEの高い危険がある体重過多又は肥満の対象は、心血管疾患(CVD)の病歴;CVDの現在の確定診断又は高い可能性;1型糖尿病;2型糖尿病;脂質異常症、例えばトリグリセリドの上昇、LDLの上昇又は低HDL;高血圧;過去の又は現在の喫煙者;CVDの家族歴;CVDの遺伝的素因;不安定アンギナ;心不整脈;心房細動;うっ血性心不全;及び脳卒中、の1つ又は複数の特徴を有する又は1つ又は複数に罹患している。
【0054】
いくつかの実施形態では、MACEの高い危険がある対象は、BMI≧27kg/m2及び≦50kg/m2を有する。いくつかの実施形態ではMACEの高い危険がある対象は、少なくとも50歳で腹囲≧102cmを有する男性である。いくつかの実施形態ではMACEの高い危険がある対象は、少なくとも45歳で腹囲≧88cmを有する女性である。
【0055】
いくつかの実施形態では有害心血管(CV)事象又はMACEの高い危険がある体重過多又は肥満の対象は次の状態:
(a)心血管疾患(CVD)(確定診断若しくはCVDの高い危険がある)、任意選択で次の少なくとも1つを伴う:スクリーニング若しくは同定より前の3ヵ月超の確認された心筋梗塞の病歴;冠血行再建の病歴(例えば、冠動脈バイパス移植手術、ステント留置、経皮経管冠動脈形成術若しくはレーザー粥腫切除術);頸動脈若しくは末梢血行再建の病歴(例えば、頸動脈動脈内膜切除術、下肢動脈硬化性疾患粥腫切除術、腹部大動脈瘤の修復、大腿若しくは膝窩バイパス);虚血性変化を伴うアンギナ(安静時ECG)、段階的運動試験(GXT)でのECG変化又は心臓画像検査陽性;2年前以内に足関節上腕血圧指数<0.9(簡単な触診による);及び2年前以内に冠動脈、頸動脈若しくは下肢動脈の≧50%狭窄;並びに/又は
(b)2型糖尿病(T2DM)、任意選択で次の少なくとも2つを伴う:高血圧(薬物療法で管理されて又はされずに<145/95mmHg);薬物療法を必要とする脂質異常症;12ヵ月前以内の確認された低HDLコレステロール(女性において<50mg/dL若しくは男性において<40mg/dL);及び現在喫煙者
の1つ又は複数を有する対象を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、処置される対象は次の特徴:(a)処置の3ヵ月前以内の心筋梗塞;(b)カナダ循環器学会等級付け計画による狭心症グレードIII又はグレードIVの病歴;(c)脳血管性疾患の病歴;(d)脳卒中の病歴;(e)洞性不整脈以外の頻脈の病歴;(f)計画肥満外科手術、心臓手術若しくは冠動脈再建術;(g)発作、頭部外傷若しくは対象を発作になりやすくする状態の病歴;(h)躁病の病歴、活動性精神病の現在の診断、活動性過食症の現在の診断、若しくは神経性食欲不振の現在の診断;又は(i)4年未満の平均余命を有する状態
の1つ若しくは複数又は全てを有さない(すなわち、欠いている)。
【0057】
いくつかの実施形態では有害心血管転帰の高い危険がある対象は、有害心血管転帰、いくつかの実施形態では具体的にMACE、の可能性が、全人口又は同年齢及び/若しくは同じ性別の集団における有害心血管転帰又はMACEの可能性よりも、少なくとも又は少なくとも約、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%大きい対象として特徴付けられる。
【0058】
いくつかの実施形態では対象は、心不整脈を有する。例えば対象は、MACEの高い危険があり、心不整脈を有する場合がある。いくつかの実施形態では不整脈は、心房細動、心室細動又は頻脈性不整脈である。いくつかの実施形態では不整脈は、洞性不整脈ではない。いくつかの実施形態では対象は、抑うつを有するとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では抑うつは、慢性であり、急性又は最近発症のものではない。例えば対象は、抑うつを有し、MACEの高い危険があるとして特徴付けられる場合がある。いくつかの実施形態ではうつ状態の対象は、抗うつ薬、例えば選択的セリン再取り込み阻害剤(SSRI)を抑うつを処置するための標準的ケアに従って受けている。いくつかの実施形態では、糖尿病、脂質異常症及び高血圧を処置するための投薬療法を含んで、そのいくつかがMACEの危険を低下させることが公知である既存の投薬療法での標準的ケアに従って対象は処置される。例えば対象は、MACEの高い危険がある場合があり、糖尿病、脂質異常症又は高血圧を処置するための標準的ケア投薬療法を受けてよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、対象又は患者集団は、Table 5(表5)、6(表6)及び/又は8(表8)に列挙する特徴を有することについて選択される。いくつかのそのような実施形態では、対象は、処置の時点で、Table 8(表8)に記載の亜集団から選択される1つ又は複数の特徴を有し、好ましい実施形態では亜集団についての点推定値ハザード比は、約0.85未満、約0.8未満、約0.75未満、約0.70未満又は約0.65未満から選択され;より好ましくはハザード比は約0.60未満、約0.55未満、約0.50未満、約0.45未満、約0.40未満、約0.35未満、約0.30未満、0.25未満、0.20未満、0.15未満又は0.10未満から選択される。いくつかの実施形態では、対象又は患者集団は、次の特徴:CV疾患に罹患している;T2DMを伴わずにCV疾患に罹患している;T2DMを伴ってCV疾患に罹患している;T2DMに罹患している;CV疾患を伴わずにT2DMに罹患している;現在の喫煙者;現在の非喫煙者;高血圧に罹患している;脂質異常症に罹患している;高血圧に罹患していない;脂質異常症に罹患していない;BMI<35kg/m2;BMI≧35kg/m2及び<40kg/m2;BMI≧40kg/m2;現在、降圧薬(これらに限定されないが、ベータ遮断薬、利尿剤、ACEI/ARB、カルシウムチャネル遮断薬を含む);脂質改変投薬療法(これらに限定されないがスタチン、非スタチンを含む);抗糖尿病剤投薬療法(これらに限定されないがインスリン、チアゾリジンジオン、メトホルミン、GLP-1/DDP-IV、スルホニル尿素を含む);抗うつ薬投薬療法(これらに限定されないがSSRI、非SSRIを含む)から選択される1つ又は複数の投薬療法を受けている;T2DM持続期間<6年間;T2DM持続期間≧6年間、の1つ又は複数を有する。いくつかの実施形態では、対象又は患者集団は、現在スタチンを受けていない。いくつかの実施形態では、対象又は患者集団は現在喫煙者である。いくつかの実施形態では、対象又は患者集団はT2DM<6年間の持続期間を有する。いくつかの実施形態では、対象又は患者集団はBMI<40kg/m2を有する。
【0060】
いくつかのそのような実施形態では対象は現在喫煙者であり、任意選択で2型糖尿病を有さない。いくつかのそのような実施形態では対象は、6年未満で2型糖尿病を有したことがある。いくつかのそのような実施形態では対象は、GLP-1受容体アゴニスト又はDPP-4阻害剤から選択される1つ又は複数の投薬療法を現在使用している。いくつかのそのような実施形態では対象は、≧35kg/m2及び40kg/m2未満のBMI分類を有する。いくつかのそのような実施形態では、対象はいかなる抗糖尿病剤投薬療法も受けていない。いくつかのそのような実施形態では対象は、男性である。いくつかのそのような実施形態では対象は、メトホルミンを使用していない。いくつかのそのような実施形態では対象は、65歳を超えている。いくつかの実施形態では上の特徴は、体重過多又は肥満であり、好ましくは有害心血管事象の高い危険がある又はMACEの高い危険がある患者集団の対象に加えられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、次の特徴の1つ又は複数を有する対象は排除される:現在いかなる脂質改変投薬療法も受けていない、現在メトホルミンを受けている、7%未満のHbA1c分類を有する、処置の時点で6年間以上糖尿病を有したことがある及びBMI>40kg/m2を有する。
【0062】
方法
本明細書に示される実施形態は、対象における有害心血管事象の予測可能性を減少させる方法を含み、ここで方法は対象(又は対象の集団)における有害心血管事象の予測可能性を減少させるのに有効な量のナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩を対象(又は対象の集団)に投与することを含む。本明細書に示される実施形態は、好ましくはMACEを含む有害心血管転帰又は事象の高い危険がある体重過多又は肥満の対象を選択することを含む、対象を体重過多又は肥満について処置する方法も含む。本明細書に示されるとおり、有害心血管事象の危険は、ナルトレキソン及びブプロピオンを対象又は集団に投与することによって対象又は集団において低減できることが見出された。これは、有害心血管事象の高い危険があるとして同定されている対象に特に当てはまる。しかし更に、高い危険を有することがわかっていない「正常な」対象でさえ、処置することができ、MACEの予測可能性を低減することの利益を受けることができる。
【0063】
危険の低減又は減少が処置対象の集団を観察する場合に最も容易に見られることに注目されたい。したがって例えば、処置集団における実際のMACEを同等の未処置集団と比較することによって、集団における予測可能性又はMACEの危険の減少を観察できる。本明細書において使用されるとおり、n=1である場合に厳密な統計的相関が実証できない場合でも、危険がある又は高い危険があるという分類に該当する個体又は対象の処置に関しても同じ結論を出すことができる。それにもかかわらず、個々の対象についてのMACEの可能性は、個体が属する対象の任意の集団についてそれが統計的に減少している場合に、減少していると考えられる。対象におけるMACEの可能性を低減又は減少させることを本明細書で言及することは、内容が他を明確に示す場合を除いて、個々の対象についての減少及び/又は対象集団についての危険の減少を包含すると解釈されるべきである。
【0064】
本明細書に示されるいくつかの実施形態は、対象が心不整脈を有する方法を含む。心不整脈は、心臓の電気的活動が不整である又は正常より速い若しくは遅い状態である。いくつかの実施形態では不整脈は頻脈である(例えば、少なくとも1分間あたり100拍動);いくつかの実施形態、不整脈は徐脈である(例えば、1分間あたり60拍動未満)。いくつかの実施形態では不整脈は、不整な心拍動である。いくつかの実施形態では不整脈は、心房細動又は心室細動等の細動である。いくつかの実施形態では不整脈は、洞性不整脈ではない。いくつかの実施態では心不整脈は、心停止を生じる場合がある又は対象に脳卒中を生じやすくする場合がある。下の実施例2は、ナルトレキソンSR/ブプロピオンSRでの処置が心血管系危険因子を有する体重過多及び肥満の対象におけるMACEの発生を減少させることを実証している臨床研究のいくつかの結果を要約しており、ここでこれらの対象のいくらかは心不整脈を有する。簡潔に述べると、心不整脈を有するプラセボと比較して、心不整脈を有するナルトレキソンSR/ブプロピオンSR処置群においてはより少ない対象がMACE事象を経験した。本明細書に示される実施形態は、MACEの危険がある心不整脈を有する対象にナルトレキソン及びブプロピオンを投与することを含む。
【0065】
本明細書に示されるいくつかの実施形態は対象が抑うつを有するとして特徴付けられる方法を含む。例えば対象は、臨床的抑うつ(大うつ障害若しくは抑うつの別の形態)を有するとして診断される場合がある又は臨床的抑うつに一致する症状を有する場合がある。いくつかの実施形態では抑うつを有する対象は、抗うつ薬を受けている。いくつかの実施形態では抗うつ薬は、抑うつを処置するための標準的ケアに従って投与される選択的セリン再取り込み阻害剤(SSRI)である。抗うつ薬は、Table 3(表3)に列挙する化合物の1つ又は複数であってよい。下の実施例2は、ナルトレキソンSR/ブプロピオンSRでの処置が心血管系危険因子を有する体重過多及び肥満の対象におけるMACEの発生を減少させることを実証する臨床研究のいくつかの結果を要約しており、ここでこれらの対象の数名は抑うつを有する。簡潔に述べると、抑うつを有するプラセボ群と比較して、抑うつを有するナルトレキソンSR/ブプロピオンSR処置群においてはより少ない対象がMACE事象を経験した。本明細書に示される実施形態は、抑うつを有するMACEの危険がある対象にナルトレキソン及びブプロピオンを投与することを含む。本明細書に示される実施形態は、抗うつ薬、好ましくはSSRI、Table 3(表3)に列挙されている抗うつ薬等を受けている対象にナルトレキソン及びブプロピオンを投与することも含む(対象が抑うつを有するかどうかに関わらず)。
【0066】
本明細書に示されるいくつかの実施形態は、糖尿病、脂質異常症及び高血圧を処置するための投薬療法を含んで、そのいくつかがMACEの危険又は可能性を低下させることが公知である既存の投薬療法での標準的ケアに従って対象が処置されている方法を含む。例えば対象はTable 1(表1)及び2(表2)に列挙する糖尿病、脂質異常症又は高血圧投薬療法で処置されている。下の実施例2は、ナルトレキソンSR/ブプロピオンSRでの処置が心血管系危険因子を有する体重過多及び肥満の対象におけるMACEの発生を減少させることを実証している臨床研究のいくつかの結果を要約しており、ここでこれらの対象のいくらかは糖尿病、脂質異常症又は高血圧投薬療法の標準的ケアに従って処置されていた。簡潔に述べると、同じ投薬療法で処置されたプラセボと比較して、そのような投薬療法で処置されたナルトレキソンSR/ブプロピオンSR処置群においてより少ない対象がMACE事象を経験した。本明細書に示される実施形態は、MACEの危険があり、糖尿病、脂質異常症又は高血圧投薬療法での標準的ケアに従って処置されている対象にナルトレキソン及びブプロピオンを投与することを含む。本明細書に示される実施形態は、Table 1(表1)及び2(表2)における投薬療法等の糖尿病、脂質異常症又は高血圧投薬療法を受けている対象にナルトレキソン及びブプロピオンを投与することも含む。
【0067】
本明細書に示されるいくつかの実施形態は、主要有害心血管事象の発症を予防する又は遅延させるための方法を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書に示される方法は、対象における1つ又は複数の主要有害心血管事象(MACE)の危険を低減するために、有害心血管事象の予測重症度を低減するために、有害心血管事象からの予測死亡率を減少させるために、及びこれらの組合せのために有効であり得る。危険、予測重症度又は予測死亡率におけるそのような低減又は減少は、同じレベルのMACEの危険、有害心血管事象の予測重症度又は有害心血管事象からの予測死亡率にあるが、本明細書に示される方法によるナルトレキソン及びブプロピオンの投与による処置を受けていない対象と比較して、MACEの危険、有害心血管事象の予測重症度又は有害心血管事象からの予測死亡率の少なくとも又は少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%又は90%の低減であり得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に示される方法は、対象における心血管疾患の進行を減少させるために有効であり得る。心血管疾患の進行におけるそのような減少は、同じレベルの心血管疾患進行だが、本明細書に示される方法によるナルトレキソン及びブプロピオンの投与による処置を受けていない対象と比較して、心血管疾患の進行における少なくとも又は少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%又は90%の減少であり得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に示される方法は、対象の予測平均余命を増加させるために又は有害心血管事象の発生までの予測期間を増加させるために有効であり得る。対象の予測平均余命又は有害心血管事象の発生までの予測期間におけるそのような増加は、同じレベルのMACEの危険があるが、本明細書に示される方法によるナルトレキソン及びブプロピオンの投与による処置を受けていない対象と比較して、少なくとも又は少なくとも約1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、12ヵ月、14ヵ月、16ヵ月、18ヵ月、20ヵ月又は24ヵ月であり得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に示される方法は、対象での心血管系介入治療の有効性を増加させるために有効であり得る。対象での心血管系介入治療の有効性におけるそのような増加は、同じレベルのMACEの危険で同じ心血管系介入治療を受けているが、本明細書に示される方法によるナルトレキソン及びブプロピオンの投与による処置を受けていない対象での心血管系介入治療の期待される有効性と比較して、少なくとも又は少なくとも約少なくとも又は少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%又は90%であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書に示される方法は、主要有害心血管事象の予測となる診断指標を有利に調節するために有効であり得る。例えば、血圧、トレッドミル負荷試験、トロポニン試験、液量、心拍出量、駆出率、心筋症、心肥大、ECG異常、外部酸素依存、利尿剤所要量、心不全のための入院、不安定プラーク、アンギナ、不整脈、Q-T間隔、トリグリセリドの上昇、LDLの上昇又は低HDL等を含む、多数のそのような診断指標がある。対象における主要有害心血管事象の予測となる診断指標のそのような有利な調節は、同じレベルのMACEの危険があるが、本明細書に示される方法によるナルトレキソン及びブプロピオンの投与による処置を受けていない対象における主要有害心血管事象の予測となる診断指標と比較して、少なくとも又は少なくとも約少なくとも又は少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%又は90%の調節であり得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、本明細書に示される方法は、具体的な有害転帰、例えばMACE(例えば心血管死、非致死性心筋梗塞又は非致死性脳卒中の1つ又は複数)、四点拡張MACE、五点拡張MACE、CV死、非致死性MI、脳卒中、致死性脳卒中、非致死性脳卒中、非致死性HUSA(不安定アンギナのための入院)、冠血行再建手順及び/又は全死因死亡率は、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1より少ない及び好ましくは1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.08、0.06、0.04、0.02若しくは0.01より少ない対象のハザード比(HR)(業界基準あたりの処置群における危険対プラセボ群における危険を比較する)をもたらし得る。開示の実施形態のいずれにおいてもハザード比は、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、より好ましくは0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.08、0.06、0.04、0.02若しくは0.01又は前述の値の任意の2つによって定義される範囲であり得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に示される方法は、0.01から0.1、0.1から1.9、0.2から1.8、0.3から1.7、0.4から1.6、0.5から1.5、0.6から1.4、0.7から1.3、0.8から1.2、0.9から1.1、0.1から1.0、0.2から1.1、0.3から1.2、0.4から1.3、0.5から1.4、0.6から1.5、0.7から1.6、0.8から1.7、0.9から1.8又は1.0から1.9である具体的な有害転帰の対象のハザード比をもたらし得る。いくつかの実施形態ではHRは、0.1から0.7である。いくつかの実施形態ではHRは0.1から0.8である。いくつかの実施形態ではHRは、0.2から0.7である。いくつかの実施形態ではHRは、0.2から1.6である。いくつかの実施形態ではHRは、0.2から1.9である。いくつかの実施形態ではHRは、0.3から1.8である。いくつかの実施形態ではHRは、0.4から0.9である。いくつかの実施形態ではHRは、0.4から1.2である。いくつかの実施形態ではHRは、0.4から1.6である。いくつかの実施形態ではHRは、0.6から1.1である。
【0075】
開示の実施形態のいずれでも開示の方法によって提供される1つ又は複数の改善(例えば、1つ又は複数のMACEの危険の低減、有害心血管事象の予測重症度の低減、有害心血管事象からの予測死亡率の減少、対象における心血管疾患の進行の減少、対象の予測平均余命における増加又は、有害心血管事象間の次の発生までの予測期間の増加、対象での心血管系介入治療の有効性の増加又は主要有害心血管事象の予測となる診断指標の有利な調節)は、ナルトレキソン及びブプロピオンの投与の中断後の一定期間継続する場合がある。いくつかの実施形態ではこの期間は、1、2、3、4、5若しくは6ヵ月又は0.5、1、2、3、4若しくは5年間又は、1~6ヵ月、1ヵ月から1年間、4ヵ月から2年間又は6ヵ月から5年間であり、又は少なくともその期間である。
【0076】
いくつかの実施形態では対象は、処置の際に血圧における変化を経験する。いくつかの実施形態ではベースラインレベルと比較する対象の血圧変化は、2、8、16、20、24、26、30又は52週間の処置から選択される処置期間で測定される。いくつかの実施形態では、対象の血圧、収縮期及び/又は拡張期血圧は、1つ又は複数の処置期間で基本的に変化しない。いくつかの実施形態では、対象の血圧、収縮期及び/又は拡張期血圧は、1つ又は複数の処置期間で低下する。いくつかの実施形態では、対象の血圧、収縮期及び/又は拡張期血圧は、1つ又は複数の処置期間で上昇する。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の処置期間での血圧、収縮期及び/又は拡張期血圧における上昇又は低下は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%9%若しくは10%、又は前述の値の任意の2つによって定義される範囲であり、又はおよそその範囲である。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の処置期間での血圧、収縮期及び/又は拡張期血圧における上昇又は低下は、0.25mmHg、0.5mmHg、0.75mmHg、1mmHg、1.25mmHg、1.5mmHg、1.75mmHg、2mmHg、3mmHg、4mmHg、5mmHg、6mmHg、7mmHg、8mmHg、9mmHg、10mmHg、11mmHg、12mmHg、13mmHg、14mmHg若しくは15mmHg、又は前述の値の任意の2つによって定義される範囲であり、又はおよそその範囲である。いくつかの実施形態では、血圧における変化は、プラセボ処置集団と比較して処置患者の集団での血圧における平均変化の少なくとも二乗である。いくつかの実施形態では対象は、1つ又は複数の処置期間で血圧における上昇を経験する一方で、開示の方法によって提供される1つ又は複数の改善を経験する(例えば、1つ又は複数のMACEの危険の低減、有害心血管事象の予測重症度における低減、有害心血管事象からの予測死亡率における減少、対象での心血管疾患の進行における減少、対象の予測平均余命における増加又は有害心血管事象間の次の発生までの予測期間における増加、対象での心血管系介入治療の有効性における増加又は主要有害心血管事象の予測となる診断指標における有利な調節)。いくつかの実施形態では血圧における上昇は、拡張期血圧における上昇であり、ここで上昇は0.25から1.5mmHgである。いくつかの実施形態では対象は、1つ又は複数の処置期間で血圧における上昇を経験する一方で、開示された方法によって提供された1つ又は複数の改善よりむしろ悪化を経験する。
【0077】
いくつかの実施形態では、開示された方法によって提供される1つ又は複数の改善は、絶対量で又はナルトレキソン及びブプロピオン(例えばプラセボ対照)を受けていない対照集団と比較して、対象が顕著に体重を失うことなく生じ得る。いくつかの実施形態では、開示された方法によって提供される1つ又は複数の改善は、対象が体重を失っていない又は絶対量で若しくは対照と比較して対象の体重の5%、4%、3%、2%又は1%未満を失った場合に生じ得る。いくつかの実施形態では1つ又は複数の改善は、処置の16週間、20週間、24週間若しくは30週間後及び/又は対象が体重をいくらか失う前に測定又は評価され得る。いくつかの実施形態では1つ又は複数の改善は、対象が絶対量で又は対照と比較して対象の体重の5%、4%、3%、2%又は1%未満を失う前に測定又は評価され得る。いくつかの実施形態では、MACEの可能性における低減は体重減少と無関係である。
【0078】
いくつかの実施形態では、開示された方法によって提供される1つ又は複数の改善(例えば、1つ若しくは複数のMACEの危険における低減、有害心血管事象の予測重症度における低減、有害心血管事象からの予測死亡率における減少、対象における心血管疾患の進行の減少、対象の予測平均余命における増加又は有害心血管事象間の次の発生までの予測期間における増加、対象での心血管系介入治療の有効性における増加又は主要有害心血管事象の予測となる診断指標における有利な調節)が、対照集団と比較して処置された患者集団において、例えばナルトレキソン及びブプロピオンを受けている患者とプラセボを受けている患者との間で見られる。いくつかの実施形態では改善は、2つの患者集団間で12週間、16週間、18週間、20週間、22週間、24週間、26週間、30週間若しくは52週間において又はわずかこの間に観察され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では改善は、:MACE、四点拡張MACE、五点拡張MACE、CV死、非致死性MI、脳卒中、致死性脳卒中、非致死性脳卒中、非致死性HUSA(不安定アンギナのための入院)、冠血行再建手順及び/又は全死因死亡率に関するハザード比における低減、又はそれらの最初の発生までの時間における増加である。開示の実施形態のいずれでもMACE、四点拡張MACE、五点拡張MACE、CV死、非致死性MI、脳卒中、致死性脳卒中、非致死性脳卒中、非致死性HUSA(不安定アンギナのための入院)、冠血行再建手順及び/又は全死因死亡率の1つ若しくは複数の最初の発生までの時間は増加している。いくつかの実施形態では時間は、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50週間若しくは前述の値の任意の2つによって定義される範囲まで又は少なくともそれまで増加する。いくつかの実施形態では時間は、8から50週間、16から30週間、8から14週間若しくは18から50週間まで又は少なくともそれまで増加する。
【0080】
いくつかの実施形態は、本明細書で同定する危険における低減又は危険の発生の遅延を含む、開示された組成物、キット、使用、系及び方法の利益及び/又は危険について対象に助言するための方法に関する。対象は、書面の若しくは電子的材料を患者に提供する又は規制機関によって承認された薬物表示における情報の全て又は一部を提供することを含んで、薬物を対象に処方する、受ける又は投与することと合わせて書面の情報を彼らに提供する又は利用可能にすることによって助言される場合がある。代替的に助言するステップは、次に情報を対象に提供する医師又は薬剤師を含む介護人又は医療専門家に助言することによって行われてよい。
【0081】
いくつかの実施形態は、本明細書に開示の方法又は処置を対象又は患者集団に同定する及び/又は処方する方法に関する。いくつかの実施形態は、本明細書に開示の1つ又は複数の利益及び/又は危険について対象又は患者集団をモニタリングする方法に関する。対象又は患者集団は、Table 5(表5)、6(表6)及び8(表8)において同定する対象、患者集団及び/又は亜集団を含んで、本明細書に開示の任意の対象又は患者集団を含む。本明細書に開示の方法によって提供される利益及び/又は評価される危険は、これらに限定されないが本明細書に開示の種々の図及び表において開示のものを含む。改善又は危険の評価は、処置群間で所与のパラメーターに関する値、例えば心血管事象で死亡した対象の数、を比較する任意の一般的方法を含む。本明細書で開示の処置群に関して測定された任意のパラメーター(プラセボ及びナルトレキソン/ブプロピオン)は、利益又は危険についての基礎であり得る。前記助言する、処方する及びモニタリングする又はこれらの組合せは、任意の他の開示の実施形態に付加的、例えばこれらに限定されないが処置の方法を開示している実施形態に付加的であってよい。
【0082】
投与
いくつかの実施形態ではナルトレキソン及び/又はブプロピオンは、1日1回投与される。いくつかの実施形態ではナルトレキソン及び/又はブプロピオンは、2つ以上の用量、好ましくは均等な用量に分割され、1日1回を超えて投与される。いくつかの実施形態ではナルトレキソン及び/又はブプロピオンは、不均等な用量に分割され、1日1回を超えて投与される。いくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンは、異なる数の用量に分割され、1日あたり異なる回数で投与される。いくつかの実施形態では、ナルトレキソン又はブプロピオンの1つの用量が分割される一方で他方の用量はされない。
【0083】
いくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンの1つ又は両方は、1日あたり1回、2回、3回、4回又はそれより多くの回数、投与される。化合物のいずれか又は両方は、1日1回未満で、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13若しくは14日ごと又は1若しくは2週間ごと又は前述の値の任意の2つによって定義される範囲ごとに1回で投与されてよい。いくつかの実施形態では1日あたりの投与の回数は一定である(例えば1日1回)。他の実施形態では投与の回数は変動する。投与の回数は、投与形態の有効性、観察された副作用、望ましい投与量まで漸増する要求、外因子(例えば別の投薬療法での変化)又は投与形態が投与されている期間の長さに応じて変化する場合がある。
【0084】
いくつかの実施形態ではナルトレキソンの一日量は、約4mgから約50mg、又は約4mgから約32mg、又は約8mgから約32mg、又は約8mgから約16mgの範囲であってよい。いくつかの実施形態では一日量は、ナルトレキソン約4mg、約8mg、約12mg、約16mg、約32mg、若しくは約48mg又は前述の値の任意の2つによって定義される範囲である。具体的な投与量の選択は、患者の体重に基づく場合がある。具体的な投与量の選択は、同時投与される別の化合物の同一性、投与量及び/又は投薬予定に基づく場合がある。しかし、いくつかの実施形態では、これらの範囲外の投与量を使用する必要がある場合がある。いくつかの実施形態では一日量は、単一の経口投与形態中で投与される。いくつかの実施形態ではナルトレキソンの一日量は同じであり、いくつかの実施形態では一日量は異なっている。
【0085】
いくつかの実施形態ではブプロピオンの一日量は、約30mgから約500mg又は約30mgから約360mg又は約90mgから約360mgの範囲であってよい。いくつかの実施形態では一日量は、ブプロピオン約30mg、約90mg、約180mg、約360mg、若しくは約450mg又は前述の値の任意の2つによって定義される範囲である。具体的な投与量の選択は、患者の体重に基づく場合がある。具体的な投与量の選択は、同時投与される別の化合物の同一性、投与量及び/又は投薬予定に基づく場合がある。しかし、いくつかの実施形態では、これらの範囲外の投与量を使用する必要がある場合がある。いくつかの実施形態では一日量は、単一の経口投与形態中で投与される。いくつかの実施形態ではブプロピオンの一日量は同じであり、いくつかの実施形態では一日量は異なっている。
【0086】
本明細書に記載の組成物は、自己投与又は個体への投与のために患者に流通、提供されてよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、ナルトレキソン及び/又はブプロピオンは経口投与形態として提供される又は投与される。いくつかの実施形態では経口投与形態は、丸剤、錠剤、コア、カプセル、カプレット、ルースパウダー、溶液又は懸濁物の形態である。好ましい実施形態では経口投与形態は、丸剤、錠剤又はカプセルの形態である。いくつかの実施形態ではナルトレキソン/ブプロピオンの併用療法は、単一の経口投与形態で提供される。いくつかの実施形態では経口投与形態は、三層錠剤、三層錠剤を作る及び製剤する方法並びにそれらを投与する方法を記載する目的を非限定的に含んで、参照によりその全体が全ての目的について本明細書に組み込まれる米国特許公開第2008/0113026号に記載の三層錠剤の形態である。
【0088】
いくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンの少なくとも1つは、処置の際に変動する頻度で投与される。これらの実施形態のいくつかでは変動する頻度は、経時的に減少する頻度を含む。例えばナルトレキソン及びブプロピオンの1つ又は両方は、最初は1日1回を超えて投与され、後の処置の時点では1日1回だけの投与が続く場合がある。いくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンの少なくとも1つの一日投与量は一定である一方で、投与の頻度は変動する。例えばいくつかの実施形態では、最初はナルトレキソン及びブプロピオンそれぞれの錠剤2個が1日2回投与される一方で、ナルトレキソン及びブプロピオンそれぞれの錠剤4個が後の処置の時点では1日1回投与される。代替的にいくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンのそれぞれの錠剤1個又は2個は、後の処置の時点で投与され、ここで錠剤1個又は2個は、最初に1日2回投与されたナルトレキソン及びブプロピオンそれぞれの錠剤2個としての総一日投与量と等量である。いくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンの用量を、漸増させる様式で投与される。一実施形態ではナルトレキソン8mg及びブプロピオン90mgが第1週は毎日投与され、ナルトレキソン16mg及びブプロピオン180mgが第2週は毎日投与され、ナルトレキソン24mg及びブプロピオン270mgが第3週は毎日投与され、ナルトレキソン32mg及びブプロピオン360mgがその後毎日投与される。
【0089】
いくつかの実施形態ではナルトレキソン又はブプロピオンの少なくとも1つは、徐放性又は放出制御製剤中にある。例えばナルトレキソンの徐放性形態は、ナルトレキソン及びブプロピオンの徐放性形態を記載する目的、好適な投与形態にそれらを作る及び製剤する方法、並びにそれらを投与する方法を非限定的に含んで、参照によりその全体が全ての目的について本明細書に組み込まれる米国特許公開第2007/0281021号に記載されている。ナルトレキソン及びブプロピオンの1つ又は両方が放出制御又は徐放性(SR)製剤中で1日1回未満で投与されるいくつかの実施形態では、用量は、本明細書に記載の一日量とほとんど同じである一日量を患者が受けるように選択される。
【0090】
いくつかの実施形態ではナルトレキソンは、ナルトレキソンの封鎖された(sequestered)形態ではない。例えばいくつかの実施形態では、ナルトレキソンは封鎖されていない、放出制御製剤である。いくつかの実施形態ではナルトレキソンは、封鎖されていない、徐放性製剤である。好ましい実施形態では、ナルトレキソンの少なくとも50%は投与の24時間以内に放出される。
【0091】
いくつかの実施形態では、ナルトレキソン及びブプロピオンは個々に投与される。いくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンは、ナルトレキソン及びブプロピオンを含む単一の医薬組成物中で投与される。いくつかの実施形態ではナルトレキソン又はブプロピオンの少なくとも1つは、生理学的に許容される担体、希釈剤若しくは賦形剤又はこれらの組合せと共に投与される。ナルトレキソン/ブプロピオンの組合せ、その製剤及びそれらを投与する方法の非限定的な例は、ナルトレキソン及びブプロピオンの組合せを記載する目的、それらを好適な投与形態に作る及び製剤する方法及びそれらを投与する方法を非限定的に含んで、両方が参照によりそれら全体が全ての目的について本明細書に組み込まれる米国特許第7,375,111号及び第7,462,626号に開示されている。ナルトレキソン及びナルトレキソン/ブプロピオンの組合せの使用又は投与を参照することは、非限定的に別々の投与、単一投与形態中での投与、塩及び/若しくは代謝物の形態での投与、並びに/又は徐放性形態での投与を含む、本明細書で開示する又は参照する全ての様式の投与を含むことは理解される。本出願の化合物の製剤及び投与のための技術は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる"Remington's Pharmaceutical Sciences," Mack Publishing Co., Easton, PA, 第18版, 1990に見出され得る。
【0092】
いくつかの実施形態ではナルトレキソンは、ブプロピオンに先行して投与される。いくつかの実施形態ではナルトレキソンは、ブプロピオンに続いて投与される。いくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンは、同時投与される。本明細書において使用される同時投与は、単一投与形態、又は同じ時若しくはほとんど同じ時に投与される別々の投与形態での投与を含む。
【0093】
いくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンの投与は、1、2、3、4、6、8、10、12、16、20、24、36、48若しくは52週間又は前述の値の任意の2つによって定義される範囲又はおよそその範囲の期間継続される。いくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンの投与は、疾患、障害又は状態の症状における低減が1、2、3、4、5、6週間以上の又は前述の値の任意の2つによって定義される範囲について又はおよそその範囲の期間安定化するまで継続される。いくつかの実施形態ではナルトレキソン及びブプロピオンの投与は、個体がもはや処置を必要としなくなるまで継続される。
【0094】
いくつかの実施形態では、薬物を「投与すること」は、薬物を自身で得て受けている個体を含む。例えばいくつかの実施形態では、個体は薬物を薬局から得て、本明細書に示される方法に従って薬物を自己投与する。
【0095】
いくつかの実施形態では本発明は、キットに関する。キットは、ナルトレキソン、ブプロピオン又はナルトレキソン及びブプロピオンを含む1つ又は複数の単位投与形態を含み得る。単位投与形態は、経口製剤であってよい。例えば単位投与形態は、丸剤、錠剤又はカプセルを含み得る。キットは、複数の単位投与形態を含んでよい。いくつかの実施形態では単位投与形態は、容器中にある。いくつかの実施形態では投与形態は、ナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩を含む単一の経口投与形態である。
【0096】
本明細書に開示する方法、組成物及びキットは、情報を含む場合がある。情報は、医薬品の製造、使用又は販売を規制する行政機関によって定められた形式である場合があり、その通知はヒト又は動物への投与のための薬物の形態の機関による承認を反映している。そのような情報は、例えば、処方薬物又は承認された製品挿入物について米国食品医薬品局によって承認された表示であってよい。情報は、用量及び投与形態、投与予定及び投与の経路、有害事象、禁忌、警告及び注意、薬物相互作用、並びに具体的な集団における使用(例えば参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、連邦規則集第21巻201.57を参照されたい)に関する要求される情報を含む場合があり、いくつかの実施形態では、薬物の販売のために薬物に存在する、又は伴っていることが要求される。適合性の医薬用担体中に製剤された徐放性ナルトレキソン製剤を含む投与形態も調製され、好適な容器に入れられ、示された状態の処置のために表示されてよい。いくつかの実施形態では、処方薬物の販売のためのキットは、米国食品医薬品局等の行政機関の承認とその規制に従うことを必要とする。いくつかの実施形態ではキットは、例えば合衆国での消費者へのキット販売のために、FDA等の機関によって要求されるラベル又は製品挿入物を含む。
【0097】
情報は、ナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩の約4mg、約8mg、約12mg、約16mg、約32mg又は約48mgの投与量で単位投与形態を投与するための説明書を含み得る。情報は、ブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩の約30mg、約90mg、約180mg、約360mg又は約450mgの投与量で単位投与形態を投与するための説明書を含み得る。これらの説明書は、種々の方法で提供されてよい。情報は、単位投与形態をいつ投与するかについての説明書を含み得る。例えば情報は、別の投薬療法又は食品の投与に対して単位投与形態をいつ投与するかについての説明書を含み得る。好ましい実施形態では情報は、食品好ましくは食事と共にナルトレキソン又はナルトレキソン及びブプロピオンを受けることを個体に指示する。
【0098】
いくつかの実施形態は、ナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩を食品と共に受けることが、同じ量のナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩を食品と伴わずに受けることと比較して、ナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩の生物学的利用率の増加を生じることの情報、好ましくは印刷されたものを含む。いくつかの実施形態は、ブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩を食品と共に受けることが、同じ量のブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩を食品と伴わずに受けることと比較して、ブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩の生物学的利用率の増加を生じることの情報、好ましくは印刷されたものを含む。いくつかの実施形態は、ナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩を食品と共に受けることが、同じ量のナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩を食品と伴わずに受けることと比較して、ナルトレキソン及び/若しくはブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩の生物学的利用率の増加を生じることの情報、好ましくは印刷されたものを含む。いくつかの実施形態は、ナルトレキソン及び/若しくはブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩を食品と共に受けることが、同じ量のナルトレキソン及びブプロピオン又は薬学的に許容されるそれらの塩を食品と伴わずに受けるよりもより少ない又は重症度が低い薬物関連有害事象を生じることの情報、好ましくは印刷されたものを含む。いくつかの実施形態では有害事象は、胃腸管系の事象である。いくつかの実施形態では、生物学的利用率、有害事象又は投与計画についての説明書に関する情報は対象に提供され、情報に記載されている投薬療法を含む投与形態は対象に提供され、投与形態は情報に従って投与される。いくつかの実施形態では対象は、投薬療法が必要である患者である。いくつかの実施形態では投薬療法は、本明細書に記載の疾患に対する療法として投与される。
【0099】
いくつかの実施形態は、好ましくは印刷されたもの又は電子媒体で、直接又は医療専門家を通じて、ブプロピオン及びナルトレキソンでの処置がMACEの危険若しくは可能性若しくは発症又はMACEを作る状態の任意の1つを低減できることを示している情報を提供することによって対象に知らせることを含む。
【0100】
説明書及び/又は情報は、好適な媒体又は基質(例えば、情報が印刷された1つ又は複数の紙片)に印刷された情報、コンピューターで読み取り可能な媒体(例えば情報が記録されたディスケット、CD等)又はインターネットを介して接続可能なウェブサイトアドレスを含む種々の形態で存在してよい。印刷された情報は、例えば薬物製品に伴うラベルに、薬物製品の容器に提供されてよく、薬物製品と共に包装されてよく又は薬物製品とは別に患者に別に与えられてもよく又は患者が自主的に情報を得ることができる様式(例えばウェブサイト)で提供されてもよい。印刷された情報は、患者の処置又は投薬療法の供給に関与する医学的介護者又は他の医療専門家にも提供されてよい。いくつかの実施形態では情報は、人に口頭で提供される。
【0101】
いくつかの実施形態は、商業的販売に好適な治療用包装を含む。包装及び分配(dispenser)並びに経口投与形態の非限定的な例は、ナルトレキソン及びブプロピオンの組合せ、好適な投与形態にそれらを作る及び製剤する方法、それらを包装及び分配する方法並びにそれらを投与する方法を記載する目的を非限定的に含む、全ての目的について参照によりその両方の全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2008/0110792号及び第2008/0113026号に開示されている。
【0102】
情報は、容器に伴っていてよい、例えば本明細書に記載の投与形態を含むビンに接着して添付されるラベル(例えば処方ラベル又は別のラベル)に記載することによって;印刷された添付文書包として容器内に含まれて、単位投与包を含む箱の内等;箱面に印刷される等容器に直接適用されて;又は結ばれる又はテープで貼られる等によって付着されて、例えばひも、コード又は他の糸、ランヤード又はテザー型デバイスを介してビンの首に添付された説明カードとして。情報は、単位投与包装又はブリスターパック又はブリスターカードに直接印刷されてよい。
【0103】
いくつかの実施形態では本明細書で開示される方法、処置及び療法は、ナルトレキソン及びブプロピオンに加えて1つ又は複数の追加的医薬用化合物の投与を含む。いくつかの実施形態では、Table 1(表1)、2(表2)又は3(表3)の1つから選択される組合せが対象又は患者集団に投与される。
【0104】
【表1A】
【0105】
【表1B】
【0106】
【表1C】
【0107】
【表1D】
【0108】
【表2A】
【0109】
【表2B】
【0110】
【表3】
【0111】
用語「ブプロピオン」は、ブプロピオンの遊離塩基、薬学的に許容されるブプロピオン塩(無水物形態、例えばブプロピオン無水物を含む)、ブプロピオン代謝物(例えば、ヒドロキシブプロピオン、スレオヒドロブプロピオン(threohydrobupropion)及びエリスロヒドロブプロピオン)、ブプロピオン異性体又はそれらの混合物を指して本明細書において一般的方法で使用される。
【0112】
用語「ナルトレキソン」は、ナルトレキソンの遊離塩基、薬学的に許容されるナルトレキソン塩(水和物及び無水物形態、例えば、ナルトレキソンヒドロクロリド二水和物及びナルトレキソンヒドロクロリド無水物を含む)、ナルトレキソン代謝物、ナルトレキソン異性体又はこれらの混合物を指して本明細書において一般的方法で使用される。
【0113】
本明細書において使用される用語「薬学的に許容される塩」は、投与される生物に顕著な刺激を生じず、生物学的活性及び化合物の特性を抑制しない化合物の製剤を指す。薬学的塩は、日常的実験によって得ることができる。薬学的に許容される塩の非限定的な例は、ブプロピオンヒドロクロリド、ラダファキシンヒドロクロリド、ナルトレキソンヒドロクロリド及び6-βナルトレキソールヒドロクロリドを含む。
【0114】
本開示全体を通じて具体的な化合物が、例えばブプロピオン又はナルトレキソン名称によって述べられる場合、本開示の範囲が薬学的に許容される塩、エステル、アミド又は指名された化合物の代謝物を包含することは理解される。例えば本明細書のいずれの実施形態でも、ナルトレキソンの活性代謝物(例えば、6-βナルトレキソール)はナルトレキソンと組み合わせて又は代わりに使用され得る。本明細書のいずれの実施形態でもS,S-ヒドロキシブプロピオン(すなわちラダファキシン)を含むブプロピオンの活性代謝物は、ブプロピオンと組み合わせて又は代わりに使用され得る。
【0115】
本明細書において使用される用語「徐放性」は、当業者によって理解されるその通常の意味を有し、それにより非限定的な例として、投与形態からの薬物の長期間にわたる放出制御を含む。例えば、いくつかの実施形態では徐放性投与形態は、同等の速効型形態のものよりも遅い放出速度、例えば速効型投与形態の放出速度の80%未満を有するものである。
【0116】
参照基準としての使用のために適する速効型ナルトレキソン製剤は、速効型ナルトレキソン製剤であり、ナルトレキソンヒドロクロリドのREVIA(登録商標)ブランド又はその等価物として広く商業的に入手可能である。参照基準としての使用のために適する速効型ブプロピオン製剤は、速効型ブプロピオン製剤であり、ブプロピオンのWELLBUTRIN(登録商標)ブランド又はその等価物として広く商業的に入手可能である。米国政府は、処方薬物が表示され得る様式を規制しており、それによりナルトレキソンヒドロクロリドのREVIA(登録商標)ブランド及びブプロピオンのWELLBUTRIN(登録商標)ブランドを本明細書で参照することは、当業者に周知の一定の明確な意味を有する。
【0117】
本明細書において使用される用語「経口投与形態」は、当業者によって理解されるその通常の意味を有し、したがって非限定的な例として、丸剤、錠剤、コア、カプセル、カプレット、ルースパウダー、溶液及び懸濁物を含むヒトに投与可能な形態である1つ又は複数の薬物の製剤を含む。
【0118】
本明細書に記載の実施形態のいずれでも処置の方法は、使用クレーム、スイスタイプの使用クレーム等、又は使用クレームのための組成物として代替的に表現又は保護され得る。例えば組成物でMACEの危険を低減する方法は、MACEの危険を低減するための薬剤の製造における組成物の使用、MACEを低減するための組成物の使用、又はMACEの低減における使用のための組成物それ自体を代替的に必要とし得る。
【0119】
体重管理プログラム
いくつかの実施形態では、本明細書に示される方法は、ウェブに基づく及び/又は電話に基づく体重管理プログラムを含む。いくつかの実施形態では、各対象は、オンラインで又は電話で彼らに助言する健康及びフィットネスの専門家に割り当てた。追加的な教育ツールは、定期的に提示されるビデオレッスンによって補われる毎週のウェブに基づく情報、教育及び動機付けの援助(motivational resource)を含む場合がある。いくつかの実施形態では、プログラムの内容は、一週間の目標を知らせ、動機付けをし、継続的な参加を勧める毎週のeメール;各週のテーマと協調し、詳細な説明及びこれらの目標を達成するための戦略、プログラム対象ページに置かれる毎週の目標(eメールから);対象が彼らの毎週の目標に達することを助けるために使用者ページに(チップ及び教育的情報)送信される追加的な毎週の内容3つ;参加者ページに1週間を通じて送信される動機付けメッセージ;挙動(すなわち、プログラム活動、ロギングの成功の欠損)に基づいて使用者に送信される誘発事象のeメール;参加者が閲覧するためにプログラムサイトに提供され、更に将来のアクセスのために保管されるビデオレッスン:最初の16週間は毎週、次の12週間は隔週、研究の残りの期間は毎月、治験の3及び4年目に各年4週間セッションを含む2回の再教育キャンペーン(refresher campaign)からなる。ビデオレッスンは、関連する話題に注目し、主題専門家によって開発される。
【0120】
多数の及び種々の変更が本発明の精神から逸脱することなくなされ得ることは、当業者によって理解される。したがって本明細書で開示の本発明の実施形態が、例示のみであり、本発明の範囲を限定することを意図しないことは明確に理解されるべきである。本明細書に引用する任意の参考文献は、本明細書で考察の材料及びその全体について参照により組み込まれる。
【実施例
【0121】
下の実施例は、非限定的であり、本発明の種々の態様の単なる代表である。
【0122】
実施例1は、ナルトレキソンSR/ブプロピオンSRでの処置が心血管系危険因子を有する体重過多及び肥満の対象において主要有害心血管事象(MACE)の発生を増加又は減少させないことを実証する臨床研究のためのプロトコールを要約する。
【0123】
(実施例1)
心血管系危険因子を有し、ナルトレキソンSR32mg/ブプロピオンSR360mg(「NB」又は「NB32」)を受けている体重過多及び肥満の対象での主要有害心血管事象(MACE)の発生を評価する多施設、無作為、二重盲検、プラセボ対照研究。
【0124】
対象およそ9,880名を低用量NBでの処置を十分に許容できない、又はコンプライアンスの欠如の予測となる他の特徴を呈する対象を同定するために二重盲検導入期に登録する。導入期の開始時に、対象を無作為に1:1比で2つの処置配列:1週間の活性研究投薬療法(1日あたり錠剤1個)に続く1週間のプラセボ(1日あたり錠剤1個)又は1週間のプラセボに続く1週間の活性研究投薬療法、の1つに割り当てる。適格対象は、次にNB32又はプラセボのいずれかでの処置に1:1比で無作為化する。無作為化処置期間の継続期間(又は研究投薬療法を初期に中断するものについては対象追跡期間)は、大部分の対象について2~4年間と推定される。
【0125】
対象登録は、中間分析のために無作為化された対象における十分な事象の発生を支持するために登録された対象およそ6,850名及び研究を完了するために続いて登録された対象およそ3,030名を含んで2段階で行われてよい。登録の両方の段階からの無作為化された対象における事象は、最終分析を支持する。追加的対象は、導入期の際の撤退率が予想より大きい場合に補充される場合がある。
【0126】
研究は、3期からなる(図1を参照されたい):
1)スクリーニング期(来院1で開始、スクリーニング、インフォームドコンセントを含む):導入期における研究投薬療法の初回投与の前に適格性を確認するために2週間まで。
2)導入期(来院2で開始、-2週):二重盲検、2週間、対象は2つの配列の内1つに従って処置を受ける:1週間の活性研究投薬療法(ナルトレキソンSR8mg/ブプロピオンSR[NB32]90mg)1日1回に続いて1週間プラセボ1日1回;又は、1週間のプラセボに続いて1週間の活性研究投薬療法。対象は導入期のためにNB又はプラセボに無作為に割り当てられる。
3)処置期間(来院3で開始、1日目):二重盲検、無作為期間、その際導入期を完了し、組み入れ/排除基準を満たした対象は、活性研究投薬療法又はプラセボを受ける。処置期間は、来院3(1日目)での無作為化で開始する。
a)来院6(16週)、ベースライン観察と比較した体重減少及び血圧変化の評価がある。標的体重減少は≧5%であり、16週間での予測の最少体重減少は≧2%である。対象は、
16週で対象が対象の体重の少なくとも2%を失っていない、又は
対象が血圧(収縮期又は拡張期)における≧10mmHgの持続性(例えば、2回以上の来院)の上昇を経験した場合に研究投薬療法を中止されるべきである。研究者が血圧測定値の上昇が誤っている可能性があると疑わしく考える場合、対象は4週間以内に測定値の上昇が確認されるまで中止されるべきではない。
b)全ての対象は、上に詳述の包括的なウェブに基づく体重管理プログラムに参加する。対象は、彼らが研究投薬療法を受けているかどうかに関わらず、研究手順の完了を通じて体重管理プログラムに参加する。
c)来院7(26週)を過ぎた隔月での来院間に、対象は、インターネット又は電話に基づくデータ回収システムを使用する、コンプライアンス及び入院(潜在的MACE又は重度の有害事象[SAE])に関する具体的な質問への回答を依頼される。
d)初期に研究投薬療法を中止する全ての無作為化対象は、処置終了来院手順を完了し、MACEデータの回収のために治験の残りについて研究に参加を継続する。対象は、彼らの予定来院時に研究施設に来ることを依頼され、来院7(26週)を過ぎた隔月での来院間に、彼らがもはや研究投薬療法を受けていなくてもインターネット又は電話に基づくデータ回収を完了する。
【0127】
対象は、この研究に参加するために適格であるための次の全ての組み入れ基準に合致しなければならない。
1.年齢≧50歳(女性)又は≧45歳(男性);
2.肥満度指数(BMI)≧27kg/m2及び≦50kg/m2;
3.腹囲≧88cm(女性)又は≧102cm(男性);
4.有害心血管転帰の高い危険がある:
(a)心血管疾患(確定診断若しくは心血管疾患の可能性が高い)で次の少なくとも1つを伴う:スクリーニングより前の3ヵ月超の確認された心筋梗塞の病歴;冠血行再建の病歴(すなわち、冠動脈バイパス移植手術、ステント留置、経皮経管冠動脈形成術若しくはレーザー粥腫切除術);頸動脈若しくは末梢血行再建の病歴(すなわち、頸動脈動脈内膜切除術、下肢動脈硬化性疾患粥腫切除術、腹部大動脈瘤の修復、大腿若しくは膝窩バイパス);虚血性変化を伴うアンギナ(安静時ECG)、段階的運動試験(GXT)でのECG変化又は心臓画像検査陽性;2年前以内に足関節上腕血圧指数<0.9(簡単な触診による);及び2年前以内に冠動脈、頸動脈若しくは下肢動脈の≧50%狭窄;並びに/又は
(b)次の:高血圧(薬物療法で管理されて又はされずに<145/95mmHg);薬物療法を必要とする脂質異常症;12ヵ月前以内の確認された低HDLコレステロール(女性において<50mg/dL若しくは男性において<40mg/dL);現在喫煙者、の少なくとも2つを伴う2型糖尿病。
【0128】
次の特徴を有する対象は排除される:スクリーニング前3ヵ月以内の心筋梗塞;カナダ循環器学会等級付け計画による狭心症グレードIII又はIV;脳血管性疾患(脳卒中)の臨床病歴;洞性不整脈以外の頻脈の病歴;血圧≧145/95mmHg、降圧剤での処置を問わない;スクリーニング前3ヵ月以内の不安定な体重(例えば、3%超の体重増加又は減少);計画肥満外科手術、心臓手術若しくは冠動脈再建術;推定GFR<30mL/分によって定義される重度の腎機能障害;肝不全の臨床病歴又は正常の上限(ULN)の3倍を超える確認されたALT若しくはAST;HIV又は肝炎での既知の感染;オピオイドの慢性使用又はスクリーニング陽性;スクリーニング前6ヵ月以内の最近の薬物又はアルコール乱用又は依存(ニコチン依存を除く);発作の病歴(熱性発作を含む)、頭部外傷又は対象を発作になりやすくする他の状態;躁病の病歴又は活動性精神病の現在の診断、活動性過食症又は神経性食欲不振(過食性障害は除外されない);研究者の判断に基づく自殺企図の危険;抑うつの新規発症又は症状の急性増悪を含む急性うつ病性障害(抑うつに対する慢性処置にある安定対象は排除されない);4年未満の平均余命が予測される任意の状態(例えば、うっ血性心不全NYHAクラス3又は4);5年前以内の悪性腫瘍の病歴、非メラノーマ皮膚がん又は外科的に治癒された子宮頸がんの例外を伴う;他のブプロピオン又はナルトレキソン含有製品の現在の使用;ナルトレキソン若しくはブプロピオンへの過敏症又は不寛容の病歴;スクリーニング前14日以内のモノアミンオキシダーゼ阻害剤の使用;スクリーニング前30日以内の任意の調査用薬物、デバイス又は手順の使用;妊娠中又は授乳中又は妊娠を試みている又は妊娠の可能性がある(1年以内に月経期を有した閉経期前後の女性を含む)及び妊娠調節の意志がない女性;ブロードバンドインターネットに連続して接続できない;出資者若しくは研究施設による雇用又は本研究に登録している別の個人との同居。
【0129】
研究投薬療法(NB及びプラセボ)は、錠剤として提供する。各活性錠剤は、ナルトレキソンSR 8mg/ブプロピオンSR 90mgを含有する(8/90)。プラセボを含む全ての錠剤は、盲検を維持するために外観が同一である。下のTable 4(表4)に示すとおり用量の増加が処置期間の最初の4週間の際にある。用量は食品と共に受けてもよいし又は伴わずに受けてもよい。
【0130】
【表4】
【0131】
(実施例2)
実施例2は、ナルトレキソン徐放性32mg(SR)/ブプロピオンSR 360mg(NB又はNB32)での処置が、心血管系危険因子を有する体重過多及び肥満の対象において主要有害心血管事象(MACE)の発生を増加又は減少させないことを実証しているContrave心血管系(CV)転帰臨床研究結果を要約する。一般研究患者組み入れ基準を実施例1及び下により詳細に記載する。処置期間は継続中であり、報告された結果は中間結果である。
【0132】
16週で、ベースライン観察と比較した体重減少及び血圧変化の評価があった。対象は、16週で対象が対象の体重の少なくとも2%を失っていない又は彼らが血圧(収縮期又は拡張期)における≧10mmHgの継続的、持続性の上昇を経験した場合に研究投薬療法を中止された。
【0133】
研究薬物を二重盲検で、3から4年間(導入期2週間及び処置期間3から4年間)で投与する。中間分析の時点で、研究薬物への曝露の平均継続期間は、プラセボ群について26.84週間及びNB群について30.47週間であった。プラセボ及びNB群に関する研究投薬療法についての合計対象-年は、それぞれ2289及び2602であった。
【0134】
主要評価項目は、CV死(致死性MI及び致死性脳卒中を含む)、非致死性MI及び非致死性脳卒中として定義されるMACEの無作為化から最初に確認された発生までの処置期間の時間を含む。副次的評価項目は、CV死(致死性MI、致死性脳卒中及び致死性HUSAを含む)、非致死性MI、非致死性脳卒中又は非致死性HUSAとして定義される四点拡張MACEの無作為化から最初に確認された発生までの処置期間の時間;無作為化から確認されたCV死(致死性MI、致死性脳卒中を含む)の発生までの処置期間の時間;無作為化から最初に確認されたMI(非致死性又は致死性)の発生までの処置期間の時間;無作為化から最初に確認された脳卒中(非致死性又は致死性)の発生までの処置期間の時間を含む;他の評価項目は、無作為化からいずれかの原因による確認された死亡の発生までの処置期間の時間;無作為化から最初に確認されたHUSA(非致死性又は致死性)の発生までの処置期間の時間;無作為化から最初の冠血行再建手順の発生までの処置期間の時間;ベースラインから52週までの体重における百分率変化;ベースラインから52週で≧10%の体重減少を達成した対象の割合;ベースラインから52週までの血圧における変化を含む。
【0135】
全体として対象13,192名を適格性についてスクリーニングし、その内10,504名を導入期に登録した。導入期を完了した合計対象8910名は次に処置期間のために無作為化し、処置期間研究投薬療法の少なくとも1用量を受けた(プラセボに4450名及びNBに4454名)。2013年11月6日の中間分析のためのデータ期限日に、対象1201名(プラセボ)及び1708名(NB)は研究投薬療法での処置を継続していた。ITT集団中の大多数の対象(95.2%)は、MACEについての追跡を継続した一方で4.8%は、彼らがその承諾を取り消した又は追跡できなくなったことから、MACE追跡について保持不可能と分類した。重要なことに、MACE追跡について保持不可能と分類した全ての対象について公文書を使用する生命状態確認を実施した。MACE追跡について保持不可能と分類した対象428名の生命状態は、この中間分析時点で生命状態を有さなかった(得られなかった又は保留のいずれか)対象69名(ITT集団の0.8%)を残して、対象359名について得られた。NBについて処置期間の際の研究投薬療法の中断についての最も一般的な理由は、AE(7.4%プラセボ、26.7%NB)であり、プラセボについては16週処置基準の継続に合致しなかった(40.7%プラセボ、14.2%NB)。研究投薬療法の中断についての全ての他の理由は処置群間で均衡していた。
【0136】
人口統計及びベースラインのボディマスの特徴
ITT集団における対象についての人口統計及びベースライン特徴をTable 5(表5)に示す。大部分の対象は、女性(54.5%)、白人(83.5%)であり、ヒスパニック又はラテンアメリカ人ではなかった(93.5%)。平均年齢は61.0歳であった。平均ベースライン体重(106.0kg)、BMI(37.3kg/m2)及び腹囲(119.5cm)は体重過多及び肥満についての基準と一致した。
【0137】
大部分の対象は、より少ない割合がCV疾患(CVD、32.1%)の病歴を有して、T2DM(85.2%)を有した。処置割り当ては、T2DMのみ、CVDのみ又はCVDを伴うT2DMそれぞれについて67.8%、14.8%及び17.3%の全体分布を有して初期ベースライン危険群内で均衡させた。
【0138】
T2DMを有する対象の内、T2DMの持続期間中央値は、58.9%が≧6年間の持続期間を報告して7.7年間であった。平均ベースラインHbA1cは7.4%であり、52.7%がHbA1c≧7%を有した。ベースラインでの抗糖尿病剤投薬療法使用は、ITT集団中の全ての対象内で78.7%であり、主にメトホルミン使用(63.9%)を反映していた。T2DMを有する対象は、研究での組み入れのために具体的な範囲内のHbA1c値を有することを求められず、抗糖尿病剤投薬療法に制限はなかった。
【0139】
ベースラインで高血圧を有する対象の発症は92.9%であった。ベースラインでの降圧剤投薬療法使用は93.4%であり、主にアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)/アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)使用(78.0%)を反映していた。同様に対象の91.8%がベースラインでの脂質異常症を報告した。ベースラインでの脂質改変投薬療法使用は88.4%であり、大部分がスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害剤)使用(80.4%)に起因した。スクリーニング時に現在タバコ喫煙者である対象の発症は9.2%であり、処置群間で同等であった。臨床検査値及び関連する投薬療法使用を含むCV関連ベースライン状態は処置群間で同等であり、対象はCVの高い危険を示す一方で、標準的ケアに従って関連する共存疾患についても処置されたことを示している。
【0140】
ベースラインでの抑うつは、集団の23.0%によって経験された。抗うつ薬投薬療法使用は、ITT集団中の全ての対象の内24.4%であり、大部分がSSRI使用(15.6%)に起因した。ベースラインで腎機能障害(eGFR<90mL/分)を有する対象の発症率は26.9%であった。
【0141】
人口統計及びベースライン特徴を処置群間で均衡させた。CV危険群内における人口統計及びベースライン特徴の発生及びパターンに予測外の差異はなかった。
【0142】
【表5A】
【0143】
【表5B】
【0144】
【表5C】
【0145】
【表5D】
【0146】
病歴
研究への参加を制限するために、実施例1に記載のプロトコールの組み入れ基準4に定義のとおりCV疾患、T2DMのいずれか又は両方を有することによって、対象はCV転帰の高い危険があるとされた。プロトコールの組み入れ基準4に記載の必須項目に基づくITT集団についてのCV病歴の要約をTable 6(表6)に提供する。CV疾患危険群「CV疾患」に含まれるために、対象は次の:スクリーニング前の3ヵ月超のMIの病歴(13.3%);冠動脈、頸動脈又は末梢血行再建(それぞれ25.9%、0.9%及び0.7%);虚血性変化を伴うアンギナ、段階的運動試験でのECG変化又は心臓画像検査陽性(3.8%);2年前以内に足関節上腕血圧指数<0.9(0.6%);又は、2年前以内に冠動脈、頸動脈若しくは下肢動脈の≧50%狭窄(それぞれ3.6%、0.7%及び0.2%)、の少なくとも1つを有した。
【0147】
CV疾患危険群「T2DM」に含まれるために対象は、次の:高血圧の病歴(92.9%)、薬物療法を必要とする脂質異常症(91.8%)、12ヵ月前以内の確認された低HDL(29.4%)又は現在喫煙者である(9.2%)、の少なくとも2つを伴ってT2DMを有した(85.2%)。
【0148】
CV病歴は処置群間で均衡させた。各CV危険群についてのCV病歴の発生及びパターンをCV疾患、T2DM又は両方を有する集団について予測した。
【0149】
【表6】
【0150】
体重及び血圧の分析
全体として平均体重減少はプラセボよりもNBについて一貫して2%から3%大きかった(図3)。臨床的に及び統計的に意味がある体重減少をベースラインから52週で≧10%の体重減少を達成している対象のより高い割合によってNB(12.3%)でプラセボ(3.3%)と比較して更に実証した;オッズ比4.13(p<0.0001)。この研究で観察された体重減少は、以前のNB研究においてT2DMを有する対象での体重減少と一致するが、絶対及びプラセボ補正体重減少は、NBでの以前の研究での非糖尿病集団について観察されたものより少ない。
【0151】
NB群では血圧値は、ほとんどの時点においてプラセボよりもおよそ0.5mmHg高く、およそ1mmHgの処置差異を伴って8週で最大になり、16週までに解消された。
【0152】
安全性結果:
バイタルサイン
ベースラインからの持続的な収縮期血圧上昇を有するわずかに高い割合の対象がNB群にあった。≧160mmHg及び≧180mmHg分類において持続的収縮期血圧を有するわずかな対象の内、わずかに高い割合の対象がNBにおり、外れ値が16週の前後両方に観察された。NB群中の比較的少ない割合の対象は、ベースラインからの拡張期血圧における持続的上昇を有した。持続的拡張期外れ値血圧≧100mmHgを有するわずかな対象の内、わずかに高い割合が16週後に最も明らかな処置間の差異を有してNB群にあった。ベースライン血圧分類によって評価した場合に、処置間の最大変化の範囲に意味がある差はなかった。
【0153】
心拍数における持続的上昇≧10bpmにわずかな傾向が16週前に(わずかに高いNB)及び16週後に(わずかに高いプラセボ)観察されたが、全体の結果は処置間で同様であった。心拍数外れ値≧100bpm又は≧110bpmを有する対象の全体の割合に差異はなかった。ベースライン心拍数分類によって評価する場合、処置間の最大変化の範囲に意味がある差異はなかった。
【0154】
個々の対象データの研究転帰結果及び作表
MACE及び他の転帰測定値の分析
主な(Primary)MACE分析
ITT集団についての最初のMACEの発生をTable 7(表7)に示す。危険での合計対象-年間は処置群間で同様であった。バックグラウンドMACE率は1.3%(プラセボ群)であり、バックグラウンドMACE率1~1.5%を有する登録対象の目的とする標的と一致した。
【0155】
プラセボ(59、1.3%)と比較してNB(35、0.8%)で処置したよりわずかな対象が主要評価項目事象を経験した;HR(95%CI)0.59(0.39~0.90)。CV死及び非致死性MIの個々のMACE構成要素の発生は、プラセボよりもNB群について低く、MACE構成要素非致死性脳卒中の発生は群間で同様であった。
【0156】
これらの結果は、2.0のHRを除外するFDAによって記載された事前指示必須項目に明確に合致した。更に、有利な点推定値及び1.0未満の95%CIの上限は、NBでMACEの危険がプラセボと比較して上昇しないことを示している。
【0157】
処置による主要評価項目結果の分離は初期に生じ、評価期間を通じてNBに有利であった(図2)。
【0158】
【表7】
【0159】
主なMACEサブグループ分析
主な転帰変動(最初のMACEまでの時間)を次の人口統計変動及びベースライン特徴によって評価した:CV危険群、年齢分類、性別、人種グループ、民族、BMI分類、喫煙状態、HbA1c分類、研究投薬療法クラス、T2DM分類の持続期間及び腎機能障害分類。これらの分析は処置効果における潜在的変動を探索するために実施された。
【0160】
サブグループによる最初のMACEの発生についてのHRをITT集団に関してTable 8(表8)に示す。サブグループによりプラセボと比較するNBでのMACEについての危険は、PP集団について概して同様であった。
【0161】
【表8A】
【0162】
【表8B】
【0163】
【表8C】
【0164】
【表8D】
【0165】
二次MACE測定値
四点拡張MACE、CV死、MI及び脳卒中の副次的評価項目の結果は、主要評価項目と一致した;それぞれHR<1.0及び95%CIの上限<2.0を有した。二次MACE測定値は、次のサブセクションにおいてより詳細に記載する。
【0166】
最初の四点拡張MACEまでの時間
四点拡張MACEは、CV死、非致死性MI、非致死性脳卒中及び非致死性HUSAの判定された転帰を含む。ITT集団についての最初の四点拡張MACEの発生をTable 9(表9)に示す。HR(95%CI)は、ITT及びPP集団についてそれぞれ0.80(0.57、1.11)及び1.02(0.66、1.58)であり、四点拡張MACEの過剰な危険が分析の時点で排除されていることを示している。主要評価項目に含まれていない唯一の項目、HUSAの発生は、両方の集団についてNB処置群で数字的により高いが、冠血行再建手順における増加とは関連していない。下に考察のHUSAの最初の発生(他の心血管系及び全死因死亡率評価項目)。ITT集団についての処置による四点拡張MACE評価項目結果の分離は、24週までに生じ、評価期間の残りについてNBに有利であった(図4)。四点拡張MACEを有する対象の割合は処置期間を通じてPP集団について群間で同様であった。
【0167】
【表9】
【0168】
心血管死までの時間
CV死評価項目は、突然の心臓性死亡、致死性MI、致死性脳卒中、及び他の致死性CV原因の判定された転帰を含む。ITT集団についてのCV死の発生をTable 10(表10)に示す。ITT及びPP集団についてのHR(95%CI)は、それぞれ0.26(0.10、0.70)及び0.56(0.16、1.94)であり、CV死の過剰な危険が分析の時点で排除されたことを示している。突然の心臓性死亡及び他の致死性CV原因は、主に評価項目に寄与する。ITT及びPP集団についての処置によるCV死評価項目結果の分離は、20週までに生じ、評価期間の残りについてNBに有利であった(図5)。
【0169】
【表10】
【0170】
最初の心筋梗塞までの時間
MI評価項目は、致死性及び非致死性MIの判定された転帰を含む。ITT集団についての最初のMIの発生をTable 11(表11)に示す。HR(95%CI)はITT及びPP集団についてそれぞれ0.70(0.42、1.19)及び0.83(0.40、1.71)であり、MIの過剰な危険が分析の時点で排除されたことを示している。研究を通じて、NBでのMIの危険は、ITT及びPP集団について有利であった又はプラセボに類似していた(図6)。
【0171】
【表11】
【0172】
最初の脳卒中までの時間
脳卒中評価項目は、致死性及び非致死性脳卒中の判定された転帰を含む。ITT集団についての最初の脳卒中の発生をTable 12(表12)に示す。HR(95%CI)はITT集団について0.63(0.25、1.64)であり、脳卒中の過剰な危険がこの集団について分析の時点で排除されたことを示している。ITT集団に対する処置によって脳卒中評価項目結果の分離が20週後に生じ、評価期間の残りについてNBに有利であった(図7);PP集団において脳卒中を有する対象の割合は、概して研究を通じて処置群間で同様であった。
【0173】
【表12】
【0174】
全死因死亡率評価項目及び他の心血管系評価項目
ITT集団についての全死因死亡率評価項目及び他のCV評価項目測定値の概要をTable 13(表13)に示す。全死因死亡率についてのHR(95%CI)は、NBに有利な点推定値を有した(0.45[0.22、0.96])。予測されるとおり所与の集団及び研究設計で、CV死は全死因死亡率評価項目への主な原因であった。ITT集団について処置による全死因死亡率評価項目結果の分離は、16週後に生じ、評価期間の残りについてNBに有利であった(図8)。HUSAの評価項目事象をNB(29、0.7%)で処置したより多い対象がプラセボ(23、0.5%)と比較して経験した;HR(95%CI)1.26(0.73、2.18)。ITT集団についての処置によるHUSA評価項目結果の分離は、初期に生じ、プラセボに有利であった。重要なことにこの観察は、冠血行再建事象の増加と関連していなかった(1.00[0.71、1.41]のHR[95%CI])。冠血行再建手順の評価項目事象は、各処置群において対象65(1.5%)名によって経験された。研究を通じて、NBでの冠血行再建事象の危険は、ITT集団についてプラセボと同様であった。
【0175】
最初の五点拡張MACEについてのHR(95%CI)は、NBに有利な点推定値を有した(0.87[0.65、1.15])。五点拡張MACEは、CV死、非致死性MI、非致死性脳卒中、非致死性HUSA及び冠血行再建手順の判定された転帰を含む。四点拡張MACEに含まれない唯一の項目、最初の冠血行再建手順の発生は、両処置群について同様であった(各0.7%)。ITT集団についての処置による五点拡張MACE評価項目結果の分離は、24週までに生じ、評価期間の残りについてNBに有利であった(図9)。全死因死亡率評価項目及び他のCV評価項目測定値をCV危険群、年齢分類、性別、人種グループ、民族及びBMI分類によってITT集団についても評価した。
【0176】
【表13】
【0177】
ベースラインからの体重における変化
ベースラインから26週及び52週までの体重における百分率変化についての要約統計量をITT(LOCFを有する)及びPP集団についてTable 14(表14)に提供する。ITT(LOCFを有する)集団について、平均体重はベースラインで処置群にわたって同様であった(106.30kgプラセボ;105.65kg NB)。26週で、ベースラインからの体重におけるLS平均百分率変化は、プラセボ(0.00%;p<0.0001)と比較してNB(-2.62%)で統計的に有意に大きかった;LS平均処置差異(NB引くプラセボ)は、-2.63%であった。52週で、ベースラインからの体重におけるLS平均百分率変化は、プラセボ(0.03%;p<0.0001)と比較して、NB(-2.74%)で統計的に有意に大きいままであった;LS平均処置差異は-2.78%であった。
【0178】
ベースラインからの体重における百分率変化におけるLS平均処置差異についてのPP集団からの結果は、26週(-2.63%;p<0.0001)及び52週(-3.18%;p<0.0001)でプラセボよりもNBで統計的に有意に大きかった(Table 14[表14])。
【0179】
【表14A】
【0180】
【表14B】
【0181】
ITT(LOCFを有する)及びPP集団について検討した各サブグループについてベースラインから52週までの体重におけるLS平均百分率変化についてNBは、プラセボより統計的に有意に優れていた(p<0.05)。検討したサブグループは、CV危険群、年齢分類、性別、人種グループ、民族及びBMI分類を含んだ。
【0182】
対象の44.8%だけが中間分析期限日前の52週来院を完了したことに注目されたい。したがって、期限日の時点で取られた最後の観察を投薬療法を受けている52週にまだ達していない対象について52週に繰り越した。ITT(LOCFを有する)についてのベースラインからの経時的な体重における平均百分率変化を図4に示す。ITT(LOCFを有する)集団についての体重における平均百分率変化は、最初の評価時点(2週)でNBについてプラセボを超えるベースラインからのより大きな減少を示し、処置の最初の16週間を通じてプラセボから分離し続けた。処置群間の体重における平均百分率変化における差異は、概して16週後に一致した。全体として平均体重減少は、プラセボよりもNBについて体重復帰の証拠を伴わずに一貫して2%から3%大きかった。
【0183】
不十分な体重減少(又は血圧における持続的上昇)のために継続の処置基準に合致しなかった対象は、処置を中止し、ITT集団と比較したPP集団について両処置群に関する16週後の体重減少の増加率に反映される。16週での継続の処置基準の適用は、その時点でNB対象よりも大きな割合のプラセボ対象が研究投薬療法から外れることから、NBよりもプラセボについて更に明白な効果を有しそれにより処置群間の体重減少における差異が減少する。
【0184】
収縮期血圧における変化
ITT(LOCFを有する)集団についてのベースラインから来院までの収縮期血圧における平均変化を図10に示す。対象の44.8%だけが中間分析期限日前の52週来院を完了したことに注目されたい。したがって、期限日の時点で取られた最後の観察を投薬療法を受けている52週にまだ達していない対象について52週に繰り越した。血圧変化は、各時点でNBよりもプラセボでわずかに有利であった。プラセボ群では平均収縮期血圧は2週でベースラインより下に下降し、次いで52週を通じて定常的に上昇した。NB群では収縮期血圧値は、ほとんどの時点でプラセボよりもおよそ0.5mmHg高く、16週までに解消したおよそ1mmHgの処置間の差異を有して8週でピークに達した。
【0185】
血圧における持続的上昇(又は不十分な体重減少)のために継続の処置基準に合致しなかった対象は、処置を中止し、ITT集団(LOCFを有する)と比較したPP集団について両処置群に関する16週後の収縮期血圧の激減に反映される。追加的にNB群の全ての対象は、PP集団定義ごとに各時点で処置され、ブプロピオンの交感神経様作用効果の下にあり、ITT集団(LOCFを有する)と比較して16週後に処置間の差異の大きさに寄与した。
【0186】
拡張期血圧における変化
ベースラインから来院までのITT(LOCFを伴う)集団についての拡張期血圧における平均変化を図11に示す。対象の44.8%だけが中間分析期限日前の52週来院を完了したことに注目されたい。したがって、期限日の時点で取られた最後の観察を投薬療法を受けている52週にまだ達していない対象について52週に繰り越した。血圧変化は、各時点でNBよりもプラセボでより有利であった。プラセボ群では平均拡張期血圧は52週を通じて各時点でベースラインから1mmHg以内であった。NB群では拡張期血圧値は、ほとんどの時点でプラセボよりもおよそ0.5mmHg高く、16週までに解消したおよそ1mmHgの処置間の差異を有して8週でピークに達した。
【0187】
血圧における持続的上昇(又は不十分な体重減少)のために継続の処置基準に合致しなかった対象は、処置を中止し、ITT集団(LOCFを有する)と比較したPP集団について両処置群に関する16週後の拡張期血圧の激減に反映される。追加的にNB群の全ての対象は、PP集団定義ごとに各時点で処置され、ブプロピオンの交感神経様作用効果の下にあり、ITT集団(LOCFを有する)と比較して16週後に処置間の差異の大きさに寄与した。
【0188】
全体として、NB-CVOTにおいて、プラセボと比較してNB処置での拡張期血圧におけるわずかな相対な増加は、第3相プログラムにおいて観察されたものと一致する。
【0189】
結論
結論では、ハザード比(HR)及びこの中間分析時点での1.0未満の95%CIの上限についての有利な点推定値は、NBで処置された体重過多及び肥満の対象におけるMACEの危険は、プラセボを受けている者と比較して増大していないことを示している。注目すべきことにこれらの有利な結果は、糖尿病、脂質異常症及び高血圧を処置するための投薬療法を含む標準的ケアに従って十分に処置された集団において観察された。主なMACEについての点推定値がこの研究で観察され(HR[95%CI]:0.59[0.39、0.90])、NBでの処置がFDAによって予測されたMACEの危険を増大させるより、むしろ低減することを示唆している。以前の治験でも観察されたNB処置での血圧における小さな相対的増加にもかかわらず、中間分析の時点でのMACE評価項目の結果は、NBの穏やかな交感神経様作用に関連する害がないことを明らかに示唆している。
【0190】
NBを受けている患者集団全体がMACEについてのHRの低減を有する一方で、いくつかのNB患者亜集団は、これらの患者群におけるMACEの危険の変化から特に興味深い。例えば喫煙状態及びT2DMの持続期間。現在の喫煙者(HR[95%CI]:0.10[0.01、0.77])及び6年未満のT2DMを有する患者(HR[95%CI]:0.24[0.08、0.70])は、非喫煙者(HR[95% CI]:0.69[0.44、1.07])及び6年間以上T2DMを有する患者(HR[95%CI]:0.93(0.53、1.64])と比較してMACEの危険におけるより大きな低減を示した。これらの結果に基づいて、現在喫煙者である又は6年未満のT2DMを有する、有害心血管事象の高い危険がある体重過多又は肥満患者は、有害心血管事象の高い危険がある体重過多又は肥満患者の一般集団と比較して、彼らのMACEの危険を低減することによってNBでの処置から利益を得る。
【0191】
付加的に、GLP-1受容体アゴニスト又はDPP-4阻害剤を現在使用している患者は、これらの投薬療法にない患者と比較してMACEの危険における良好な低減を実証した(HR=0.33[0.11、1.02])。抗糖尿病剤投薬療法又はメトホルミンを現在受けていない患者もMACEの危険における良好な低減を示した(それぞれHR=0.37、0.44)。≧35kg/m2及び<40kg/m2のBMIを有する患者、男性患者、65歳超の患者も全体のHR0.59と比較してそれぞれHR0.35、0.43及び0.46を有してMACEの危険の低減の改善を示した。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10
図11