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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
A47J37/06 321
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019516371
(86)(22)【出願日】2018-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2018014661
(87)【国際公開番号】W WO2018203458
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2017091190
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年2月23日に2016年12月期決算説明会にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】599132007
【氏名又は名称】株式会社ホットランド
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100213746
【弁理士】
【氏名又は名称】川成 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 守男
【審査官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-002614(JP,A)
【文献】実開昭62-076935(JP,U)
【文献】実開昭53-159861(JP,U)
【文献】特開2010-063579(JP,A)
【文献】特開2014-238378(JP,A)
【文献】特開2009-125094(JP,A)
【文献】特開平10-113292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の上面及び下面を有しこれらの上面と下面との間が所定の厚さとなるように形成された鋳鉄製の鉄板部と、この鉄板部の前記下面に伝熱面を密着させるようにして当該鉄板部と結合される電気加熱部とを備えてなり、
前記鉄板部は、球状食品を焼き上げるための凹部が前記上面から凹状に複数形成されており、
前記電気加熱部は、前記伝熱面が前記鉄板部の前記下面に略合致する広がりを有するように形成され
かつ、鋳鉄に比して熱伝導率の大きな素材によって形成された、互いに重ね合わされた状態となる上板部及び下板部と、電気ヒータとを有しており、
前記上板部は、その上側の面が前記伝熱面になっており、
前記電気ヒータは、前記上板部及び下板部の少なくとも一方の合せ面に形成された溝に発熱部が嵌め込まれるようになっている
ことを特徴とする球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置。
【請求項2】
平面状の上面及び下面を有しこれらの上面と下面との間が所定の厚さとなるように形成された鋳鉄製の鉄板部と、この鉄板部の前記下面に伝熱面を密着させるようにして当該鉄板部と結合される電気加熱部とを備えてなり、
前記鉄板部は、球状食品を焼き上げるための凹部が前記上面から凹状に複数形成され
かつ、前記上面における長手方向の一端側の縁部に沿って帯状に延在する、当該上面より一段高く形成された一端帯状枠部と、
当該上面における幅方向の各側縁部に沿って帯状に延在し当該上面より一段高く形成された側縁帯状枠部とを有しており、
前記一端帯状枠部及び前記各側縁帯状枠部には、それぞれの最外縁部に沿って下方に突出する凸条部が設けられており、
前記各凸条部は、下方に向けて漸次薄くなるように形成されており、
前記電気加熱部は、前記伝熱面が前記鉄板部の前記下面に略合致する広がりを有するように形成されていることを特徴とする球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置。
【請求項3】
前記鉄板部は、前記下面が機械加工により平面状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置。
【請求項4】
前記鉄板部は、前記上面が平面視で長方形状に形成されており、
前記凹部は、前記上面の長手方向に所定の間隔をおいて複数設けられていると共に、当該上面の幅方向に所定の間隔をおいて複数設けられており、
前記電気加熱部は、前記鉄板部と結合された状態において、当該鉄板部の前記長手方向に延在し、かつ当該鉄板部の前記幅方向に複数列となるように配置された状態となる発熱部を有する電気ヒータを備えていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置。
【請求項5】
少なくとも前記溝と前記発熱部との間の隙間に熱伝導グリスが充填されていることを特徴とする請求項に記載の球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置。
【請求項6】
前記鉄板部の前記下面と、前記電気加熱部の前記伝熱面との間に熱伝導グリスを介在させたことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置。
【請求項7】
前記鉄板部及び前記電気加熱部は、当該電気加熱部が鉄板部に取り付けられた状態において所定の軸回りの回転振動によって加振されるようになっており、
前記各凹部は、半球未満の球冠状の曲面によって形成された底面部及びこの底面部の上縁から前記鉄板部の上面に向けて拡径するように形成された内周面部を有し、かつ前記鉄板部の前記上面から前記底面部の最下部までの深さが当該底面部の曲率直径の5/10~9/10に形成されていると共に、前記底面部の曲率中心を通り前記鉄板部の前記上面と
平行な面における直径が前記底面部の曲率直径より大きく形成されていることを特徴とする請求項1~の何れかに記載の球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状食品を焼き上げるための鉄板部を有する球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置としては、例えば平板部及びその平板部に対して湾曲形成された複数の凹状板部を有し、これらの平板部及び凹状板部の全体が一定の厚さ(例えば凹状板部内の深さの1/5程度の厚さ)に形成された鉄板と、その鉄板の下方に所定の間隔をおいて設置された電気ヒータとを有し、この電気ヒータによって鉄板を下方から加熱することによって、各凹状板部内に挿入した球状食品としてのたこ焼を焼き上げるように構成されたものが知られている(例えば引用文献1)。
【0003】
上記のように構成された球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置においては、電気ヒータによって鉄板を加熱し、当該鉄板が球状食品の焼き上げに適した温度に達した後に、各凹状板部内にその球状食品のタネを挿入することになる。この場合、各凹状板部の周囲がその深さに比べて極めて薄い一定の厚さのもので形成されていることから、その各凹状板部を焼け上げに適した温度まで比較的短時間で上昇させることができる。
【0004】
しかしながら、上記球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置においては、凹状板部の板厚が薄いことから、当該凹状板部の熱容量が小さなものとなっているという欠点がある。このため、各凹状板部内に球状食品のタネとして例えばたこ焼のタネ(薄力粉等を水に溶かした生地及びタコ等の具を有するもの)を入れると、当該鉄板部の温度が急激に下がることになる。特に、たこ焼の場合には、薄力粉のグルテンの成長を抑えることで外周部のサクサク感を高めることが好ましいことから、そのタネを低温で保存しておくことになるので、焼き上げの初期において凹状板部の温度が著しく低下することになる。
【0005】
このため、球状食品の焼き上げに多くの時間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-253868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、球状食品の焼き上げ時間の短縮を図ることのできる球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、平面状の上面及び下面を有しこれらの上面と下面との間が所定の厚さとなるように形成された鋳鉄製の鉄板部と、この鉄板部の前記下面に伝熱面を密着させるようにして当該鉄板部と結合される電気加熱部とを備えてなり、前記鉄板部は、球状食品を焼き上げるための凹部が前記上面から凹状に複数形成されており、前記電気加熱部は、前記伝熱面が前記鉄板部の前記下面に略合致する広がりを有するように形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記鉄板部は、前記下面が機械加工により平面状に形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記鉄板部は、前記上面が平面視で長方形状に形成されており、前記凹部は、前記上面の長手方向に所定の間隔をおいて複数設けられていると共に、当該上面の幅方向に所定の間隔をおいて複数設けられており、前記電気加熱部は、前記鉄板部と結合された状態において、当該鉄板部の前記長手方向に延在し、かつ当該鉄板部の前記幅方向に複数列となるように配置された状態となる発熱部を有する電気ヒータを備えていることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3の何れかに記載の発明において、前記電気加熱部は、鋳鉄に比して熱伝導率の大きな素材によって形成され互いに重ね合わされた状態となる上板部及び下板部を有すると共に、電気ヒータを有しており、前記上板部は、その上側の面が前記伝熱面になっており、前記電気ヒータは、前記上板部及び下板部の少なくとも一方の合せ面に形成された溝に発熱部が嵌め込まれるようになっていることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、少なくとも前記溝と前記発熱部との間の隙間に熱伝導グリスが充填されていることを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5の何れかに記載の発明において、前記鉄板部の前記下面と、前記電気加熱部の前記伝熱面との間に熱伝導グリスを介在させたことを特徴としている。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1~6の何れかに記載の発明において、前記鉄板部は、前記上面における長手方向の一端側の縁部に沿って帯状に延在し当該上面より一段高く形成された一端帯状枠部を有していると共に、当該上面における幅方向の各側縁部に沿って帯状に延在し当該上面より一段高く形成された側縁帯状枠部を有しており、前記一端帯状枠部及び前記各側縁帯状枠部には、それぞれの最外縁部に沿って下方に突出する凸条部が設けられており、前記各凸条部は、下方に向けて漸次薄くなるように形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7の何れかに記載の発明において、前記鉄板部及び前記電気加熱部は、当該電気加熱部が鉄板部に取り付けられた状態において所定の軸回りの回転振動によって加振されるようになっており、前記各凹部は、半球未満の球冠状の曲面によって形成された底面部及びこの底面部の上縁から前記鉄板部の上面に向けて拡径するように形成された内周面部を有し、かつ前記鉄板部の前記上面から前記底面部の最下部までの深さが当該底面部の曲率直径の5/10~9/10に形成されていると共に、前記底面部の曲率中心を通り前記鉄板部の前記上面と平行な面における直径が前記底面部の曲率直径より大きく形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、上面から下面までの厚さが所定の厚さに形成された鋳鉄製の鉄板部を備え、鉄板部の上面に球状食品を焼き上げるための複数の凹部が形成されているので、各凹部の周囲には鋳鉄が隙間なく存在することになる。このため、凹部の周囲の重量が増大し、当該凹部の周囲の熱容量が大きな状態になる。因みに、熱容量は、比熱×重量によって表すことができ、温度を1℃上昇させるための熱量に相当する。このため、凹部の周囲の部分は、熱容量の増大により、温度が上昇しにくくなるが、一旦温度が上昇した場合にはその温度が低下しにくくなる。
【0017】
従って、球状食品の焼き上げの初期において、当該凹部の周囲における鉄板部の温度の低下を抑えることができるので、球状食品の焼き上げ時間の短縮を図ることができる。特に、球状食品のタネとして例えば水分を多く含みかつ低温で保持することが要求されるたこ焼のタネを凹部に入れた場合でも、当該凹部の周囲の温度低下を極力抑えることができ、そのたこ焼の焼き上げ時間の短縮を図ることができる。
【0018】
しかも、鉄板部の下面には伝熱面を密着させるようにして電気加熱部が結合されており、当該電気加熱部で発生した熱を鋳鉄の熱伝導を利用して凹部に直接的に伝達することができ、温度が低下した凹部を元の温度まで短時間で上昇させることができるので、この点からも球状食品の焼き上げ時間の短縮を図ることができる。
【0019】
そして、このように焼き上げ時間の短縮を図ることができることから、グルテンの成長を抑えることができ、球状食品としての例えばたこ焼等について、外周部のサクサク感の優れたものを得ることができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、鉄板部は鋳鉄による鋳肌面を有するものであるが、下面が機械加工により平面状に形成されているので、その下面と電気加熱部の伝熱面との接触面積の向上を図ることができる。即ち、電気加熱部から鉄板部へ移動する熱量の増大を図ることができるので、凹部の周囲を効率よく加熱することができる。従って、焼き上げの初期に低下した凹部の周囲温度を短時間で上昇させることができる。よって、この点からも球状食品の焼き上げ時間の短縮を図ることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、各凹部が鉄板部の上面の長手方向に所定の間隔をおいて複数設けられ、かつ当該上面の幅方向に所定の間隔をおいて複数設けられており、電気加熱部には鉄板部の上面の長手方向に延在し、かつ当該鉄板部の上面の幅方向に複数列となるように配置された状態となる発熱部を有する電気ヒータを備えているので、鉄板部における各凹部に対応する部分をより均等に効率よく加熱することができる。従って、球状食品を短時間で焼き上げることができると共に、各凹部で焼き上げられる球状食品の品質の安定化を図ることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、鋳鉄に比して熱伝導率の大きな素材によって形成された上板部及び下板部の少なくとも一方の合せ面に形成された溝に電気ヒータの発熱部が嵌め込まれるようになっているので、当該電気ヒータで発生した熱の全てを上板部及び下板部に確実に伝達することができると共に、当該熱を鉄板部に熱伝導により伝達することができる。従って、電気ヒータで発生した熱を効率よく利用することができるので、鉄板部の凹部の周囲を短時間で加熱することができる。
【0023】
また、互いに重ね合わされた状態の上板部と下板部とを分割することにより、溝に嵌め込まれた電気ヒータを目視等で容易に確認することができると共に、当該溝に対して電気ヒータを脱着することにより容易に当該電気ヒータの交換を行うことができる。従って、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、少なくとも溝と発熱部との間の隙間に熱伝導グリスが充填されているので、電気ヒータの熱をより効率よく上板部及び下板部に伝達することができる。従って、鉄板部の凹部の周囲を更に効率よく短時間で加熱することができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、鉄板部の下面と、電気加熱部の伝熱面との間に熱伝導グリスを介在させているので、電気加熱部から鉄板部への熱伝導効率の向上を図ることができる。即ち、鉄板部の凹部の周囲を更に効率よく短時間で加熱することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、鉄板部の上面における長手方向の一端側の縁部に沿って帯状に延在し当該上面より一段高く形成された一端帯状枠部を有し、当該鉄板部の上面における幅方向の各側縁部に沿って帯状に延在し当該上面より一段高く形成された側縁帯状枠部を有しているので、球状食品のタネが各凹部から上面に溢れ出たような状態となっても、当該球状食品のタネが鉄板部の上面からその長手方向の一端側や、幅方向の各側縁側にこぼれ落ちるのを防止することができる。
【0027】
しかも、鉄板部の上面における長手方向の一端側とは反対の他端側からは、球状食品の焼き上げの際に生じた粕を当該上面に沿ってスムーズに排出することができる。この場合、鉄板部の上面から各側縁帯状枠部が立ち上がった状態になるので、その立上り部をガイドにしてヘラ等を移動することにより、球状食品の粕を当該上面からその外方にきれいに掃き出すように排出することができる。
【0028】
また、球状食品の焼き上げの際に凹部や上面にひかれた油が次第に一端帯状枠部や、各側縁帯状枠部を乗り越えてそれらの外方に浸み出すように移動することがあるが、当該一端帯状枠部及び各側縁帯状枠部のそれぞれの最外縁部に沿って下方に突出する凸条部が設けられているので、上記油が鉄板部や電気加熱部の側方の外周面に回り込むように移動するのを防止することができる。従って、鉄板部及び電気加熱部の側方の外周面等が油で汚れるのを防止することができる。
【0029】
しかも、各凸条部が下方に向けて漸次薄くなるように形成されているので、各凸条部の下縁に回り込んだ油を当該縁部から比較的容易に切り離して、当該各凸条部の直下位置に落下させることができる。このため、各凸条部の直下位置に例えば油受けを設けておくことにより、その落下した油を確実に回収することができ、当該落下した油によって周囲が汚れるのを防止することができる。
【0030】
請求項8に記載の発明によれば、鉄板部及び電気加熱部が一体的に結合された状態で所定の軸回りの回転振動によって加振されるようになっており、各凹部は、半球未満の球冠状の曲面によって形成された底面部及びこの底面部の上縁から鉄板部の上面に向けて拡径するように形成された内周面部を有し、かつ鉄板部の上面から底面部の最下部までの深さが当該底面部の曲率直径の6/10~9/10に形成されていると共に、当該底面部の曲率中心を通り鉄板部の上面に平行な面における直径が底面部の曲率直径より大きく形成されているので、凹部内に挿入された球状食品のタネはその外周部が徐々に焼き固まるのに応じて、底面部の曲率中心回りに回転し始めることになる。
【0031】
即ち、鉄板部が所定の軸回りの回転振動を受けることにより、各凹部もその底面部の曲率中心回りの振動変位を受けることになるので、当該凹部に挿入された球状食品のタネには底面部の曲率中心を中心として回転するような力を受けることになる。このため、球状食品のタネはその外周部が徐々に焼き固まるに連れて、底面部の曲率中心回りに回転し、当該底面部の曲率直径に対応するような径の球形状に焼き上げられることになる。
【0032】
この場合、凹部における鉄板部の上面から底面部の最下部までの深さが当該底面部の曲率直径の6/10~9/10に形成されているので、焼き上げられたたこ焼の1/10~4/10程度が鉄板部の上面から突出した状態になる。このため、その突出した部分を串で刺す等により、焼き上げ後の球状食品を凹部から容易に取り出すことができる。
【0033】
しかも、底面部の曲率中心を通り鉄板部の上面と平行な面における凹部の直径が底面部の曲率直径より大きく形成されていると共に、当該底面部の上側の内周面部が鉄板部の上面に向かって拡径するように形成されているので、球状食品を凹部から容易に取り出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態として示した球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置であって、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は右側面図である。
図2】同球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置における鉄板部を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は底面図である。
図3】同球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置における鉄板部を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は左側面図であり、(c)は右側面図であり、(d)は凹部の拡大断面図であり、(e)は温度センサの取付部を示す拡大断面図であり、(f)は(e)のf矢視図であり、(g)は(c)のg部を示す拡大図である。
図4】同球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置における電気加熱部を示す図であって、(a)は上板部の平面図であり、(b)は(a)のb-b線に沿う断面図であり、(c)は下板部の平面図であり、(d)は(c)のd-d線に沿う断面図である。
図5】同球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置における電気加熱部を示す図であって、(a)はシーズヒータの正面図であり、(b)は同シーズヒータの底面図であり、(c)は下板部の各溝にシーズヒータを組み込んだ状態を示す平面図であり、(d)は(c)のd-d線に沿う断面図である。
図6】同球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置の電気加熱部の他の例を示す図であって、(a)は上板部の底面図であり、(b)は下板部の平面図であり、(c)は上板部の溝にシーズヒータを組み込んで、当該上板部の下側に下板部を取り付けた状態を示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態における球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置を稼働させる球状食品焼き上げ機本体を左側から側面視した状態を概念的に示す図である。
図8】上記球状食品焼き上げ機本体及びその内部を正面視した状態を概念的に示す図である。
図9】上記球状食品焼き上げ機本体及びその内部を平面視した状態を概念的に示す図である。
図10】上記球状食品焼き上げ機本体及びその内部を右側から側面視した状態を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の一実施形態として示した球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
この実施形態で示す球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置1は、図1図5に示すように、鉄板部2と、電気加熱部3とをボルトBで一体的に結合したもので構成されている。
【0037】
鉄板部2は、図1図3に示すように、平面状に形成された上面2aから同じく平面状に形成された下面2bまでの厚さが所定の寸法(例えば40~60mm)の鋳鉄(普通鋳鉄としてのねずみ鋳鉄例えばJIS FD200)製のもので形成されている。上面2aは、図1(a)及び図2(a)に示すように、平面視で長方形の平面状に形成されており、その所定の位置に、球状食品としてのたこ焼W(図1(b)参照)を焼き上げるための複数の凹部21が形成されている。上面2a及び凹部21は、鋳肌面によって形成されており、その表面粗さはRa10程度となっている。但し、下面2bは、機械加工により上面2aと平行な平面状に形成されている。
【0038】
凹部21は、上面2aの長手方向に所定の間隔をおいて一列をなすように複数(この例では8個)設けられていると共に、当該上面2aの幅方向に所定の間隔をおいて複数列(この例では4列)設けられている。
【0039】
一方、電気加熱部3は、その上側の伝熱面3aを鉄板部2の下面2bに密着させるようにして、当該鉄板部2にボルトBで結合されるようになっている。伝熱面3aは、図4に示すように、鉄板部2の下面2b(図2(b)参照)に合致するような広がりを有し、かつ当該下面2bと密接するように平面状に形成されている。
【0040】
また、電気加熱部3は、図1図4及び図5に示すように、当該鉄板部2を加熱する電気ヒータ31を有するものとなっている。また、電気加熱部3は、互いに重ね合わされた状態で結合される上板部32及び下板部33を有しており、その上板部32の上面が伝熱面3aになっている。
【0041】
上板部32及び下板部33は、鋳鉄に比して熱伝導率の大きな素材としてのアルミニウムの冷間圧延板を用いることで、平面度及び表面粗さが優れ、かつ熱伝導性の優れたものとなっている。そして、上板部32の下面及び下板部33の上面は、それぞれ互いに重ね合わされた状態で密接する平面状の合せ面32a、33aとなっている。
【0042】
この場合、下板部33の合せ面33aには、電気ヒータ31を嵌め込むための溝331が複数(この例では3つ)設けられている。各溝331は、断面が矩形状の凹状に形成されており、下板部33の長手方向(電気加熱部3が鉄板部2に取り付けられた状態における当該鉄板部2の上面2aの長手方向と同じ方向)に長い形状の環状のもので形成されている。
【0043】
即ち、各溝331は、図4(c)に示すように、下板部33の長手方向に延在する互いに平行な直線溝部331aと、これらの直線溝部331aの長手方向の各端部を接続する半円状の曲線溝部331b、331bとによって長環状に形成されている。このように形成された各溝331は、下板部33の幅方向に一定の間隔をおいて3つ設けられている。これにより、下板部33の長手方向に延在する6本の直線溝部331aが当該下板部33の幅方向に所定の間隔をおいて平行に配置された状態になっている。
【0044】
また、下板部33には、各溝331における一方の直線溝部331aの長手方向の中央部分に、当該各溝331に嵌め込まれた電気ヒータ31の各電気端子部31c(図5(a)参照)を当該溝331から下板部33の下方に導くための一対の貫通孔33b、33bが形成されている。各貫通孔33bは、直線溝部331aと同一の幅で、かつ当該直線溝部331aの延在する方向に長い長円形状に形成されている。
【0045】
電気ヒータ31は、図5に示すように、丸棒状のもの形成されており、その発熱部31aが溝331に嵌るように長円形状に延在するように形成され、両端部における非発熱部31b、31bが溝331から各貫通孔33bを介して下板部33の下方に突出するように形成され、非発熱部31b、31bの先端部に電気端子部31c、31cが設けられている。非発熱部31b、31bは、発熱部31aに対して直角に屈曲形成されている。なお、電気ヒータ31は、発熱部31a及び各非発熱部31bの外周部をステンレス鋼管で構成したシーズヒータが用いられている。
【0046】
また、上板部32と下板部33とは、皿ネジ(図示せず)によって互いに結合されるようになっている。即ち、上板部32には、図4(a)及び(b)に示すように、その伝熱面3a側から皿ネジを挿入するための皿ネジ挿入孔32bが複数(この例では9個)所定の間隔をおいて形成されている。皿ネジ挿入孔32bは、伝熱面3a側に加工された皿穴に、皿ネジの頭部を収容することにより、当該頭部が伝熱面3aから突出するのを防止するようになっている。
【0047】
一方、下板部33には、図4(c)及び(d)に示すように、上板部32の各皿ネジ挿入孔32bに対応する位置に、皿ネジをねじ込むためのネジ孔33cが形成されている。なお、皿ネジ挿入孔32b及びネジ孔33cが、各溝331から外れた位置に形成されていることはいうまでもない。
【0048】
このように構成された上板部32と下板部33とは、溝331とこれに嵌合した電気ヒータ31の発熱部31aとの間の隙間部分や、上板部32の合せ面32aと発熱部31aとの間の隙間部分に、熱伝導グリスを充填した状態で、上記各皿ネジによって、結合されるようになっている。
【0049】
上記のように電気ヒータ31を有する電気加熱部3は、図1(b)、(c)に示すように、ボルトBで鉄板部2に固定されるようになっている。
【0050】
この場合、上板部32及び下板部33には、図4に示すように、当該上板部32及び下板部33における同一の位置を貫通するように、ボルトBの挿入孔32c、33dが複数(この例では上板部32及び下板部33のそれぞれにおいて20個)形成されている。これらの挿入孔32c、33dについても、各溝331、各皿ネジ挿入孔32b及び各ネジ孔33cから外れた位置に形成されていることはいうまでもない。
【0051】
また、鉄板部2の下面2bには、図2に示すように、電気加熱部3における各ボルトBの挿入孔32b、33dに対応する位置に、当該ボルトBをねじ込むためのネジ孔2cが形成されている。
【0052】
このように構成された鉄板部2と電気加熱部3とは、図1に示すように、その鉄板部2の下面2bと、電気加熱部3の伝熱面3aとの間に熱伝導グリスを介在させた上で、ボルトBによって、結合されるようになっている。
【0053】
また、鉄板部2は、図1~3に示すように、上面2aにおける長手方向の一端側の縁部に沿って帯状に延在し当該上面2aより一段高く形成された一端帯状枠部22aを有していると共に、当該上面2aにおける幅方向の各側縁部に沿って帯状に延在し当該上面2aより一段高く形成された側縁帯状枠部22b、22bを有している。
【0054】
一端帯状枠部22a及び各側縁帯状枠部22bには、図3(g)に示すように、それぞれの最外縁部に沿って下方に突出する凸条部22cが設けられている。各凸条部22cは、下方に向けて漸次薄くなるように形成されている。これらの一端帯状枠部22a、各側縁帯状枠部22b及び突出する凸条部22cについても、鉄板部2として鋳鉄によって一体的に形成されており、その表面がRa10程度の表面粗さの鋳肌面によって形成されている。
【0055】
更に、鉄板部2及び電気加熱部3は、ボルトBによって一体的に結合された状態において、所定の軸回りの回転振動を受けることで加振されるようになっている。即ち、鉄板部2及び電気加熱部3は、図3(d)に示すように、例えば偏荷重41を電動モータ(図示せず)で所定の軸42回りに回転駆動することで回転振動を発生させる加振装置4によって、その軸42回りの回転振動を受けるようになっている。
【0056】
また、各凹部21は、同じく図3(d)に示すように、半球未満の球冠状の曲面によって形成された底面部21aと、この底面部21aの上縁から鉄板部2の上面2aに向けて所定の角度で漸次拡径するテーパ面状の第1の内周面部21bと、この第1の内周面部21bの上縁から鉄板部2の上面2aに向けて更に大きな角度で漸次拡径するテーパ面状の第2の内周面部21cとを有するように形成されている。
【0057】
更に、各凹部21は、鉄板部2の上面2aから底面部21aの最下部までの深さHが当該底面部21aの曲率直径D1の6/10~9/10に形成されていると共に、底面部21aの曲率中心Cを通り鉄板部2の上面2aと平行な面Pにおける直径D2が底面部21aの曲率直径D1より大きなもので形成されている。
【0058】
また更に、鉄板部2には、図1図3に示すように、温度測定孔23が形成されている。温度測定孔23は、鉄板部2における長手方向の一端側の外周面における当該鉄板部2の幅方向の中央部であって、中央寄りの二つの凹部21の底面部21a間の中央部に位置するように設けられている。この温度測定孔23は、図3(e)、(f)に示すように、内方に向かって漸次縮径されたテーパ状の内周面を有するように形成されている。
【0059】
温度測定孔23には、そのテーパ状の内周面に対応するテーパ状の外周面を有する温度測定駒24が嵌め込まれるようになっている。温度測定駒24は、熱伝導性の良好な金属である銅製のもので構成されており、その軸心部には図示しない温度センサ(例えば熱電対やサーミスタ)の温度測定部をねじ込んで固定するためのネジ孔24aが形成されている。なお、温度測定駒24には、その外周面に平行な一対の面取部24bが形成されている。
【0060】
上記のように構成された球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置1においては、上面2aから下面2bまでの厚さが所定の厚さに形成された鋳鉄製の鉄板部2を備え、鉄板部2の上面2aにたこ焼Wを焼き上げるための複数の凹部21が形成されているので、各凹部21の周囲には鋳鉄が密に充填された状態になっている。このため、凹部21の周囲の重量が増大し、当該凹部21の周囲の熱容量が大きな状態になる。因みに、熱容量は、比熱×重量によって表すことができ、温度を1℃上昇させるための熱量に相当する。このため、凹部21の周囲の部分は、熱容量の増大により、温度が上昇しにくくなるが、一旦温度が上昇した場合にはその温度が低下しにくくなる。
【0061】
従って、たこ焼Wの焼き上げの初期において、当該凹部21の周囲における鉄板部2の温度の低下を抑えることができるので、当該たこ焼Wの焼き上げ時間の短縮を図ることができる。即ち、水分を多く含みかつ低温で保持することが要求されるたこ焼Wのタネを凹部21に入れた際にも、当該凹部21の周囲の温度低下を極力抑えることができるので、そのたこ焼Wの焼き上げ時間の短縮を図ることができる。
【0062】
しかも、鉄板部2の下面2bには伝熱面3aを密着させるようにして電気加熱部3が結合されており、当該電気加熱部3で発生した熱を鋳鉄の熱伝導を利用して凹部21に直接的に伝達することができ、温度が低下した凹部21を元の温度まで短時間で上昇させることができるので、この点からもたこ焼Wの焼き上げ時間の短縮を図ることができる。
【0063】
そして、このように焼き上げ時間の短縮を図ることができることから、焼き上げ過程におけるグルテンの成長を抑えることができ、外周部のサクサク感に優れたたこ焼Wを得ることができる。
【0064】
また、鉄板部2は鋳鉄製であり、表面が鋳肌面によって形成されたものであるが、下面2bが機械加工により平面状に形成されているので、その下面2bと電気加熱部3の伝熱面3aとの接触面積(熱伝達面積)の向上を図ることができる。即ち、電気加熱部3から鉄板部2へ伝達する熱量の増大を図ることができるので、凹部21の周囲を効率よく加熱することができる。従って、焼き上げの初期に低下した凹部21の周囲温度を短時間で上昇させることができる。よって、この点からもたこ焼Wの焼き上げ時間の短縮を図ることができる。
【0065】
更に、各凹部21が鉄板部2における長手方向に所定の間隔をおいて複数設けられ、かつ当該鉄板部2における幅方向に所定の間隔をおいて複数設けられており、電気加熱部3には鉄板部2の長手方向に延在し、かつ当該鉄板部2の幅方向に複数列となるように配置された状態となる発熱部31aを有する電気ヒータ31を備えているので、鉄板部2における各凹部21に対応する部分をより均等に効率よく加熱することができる。従って、たこ焼Wを短時間で焼き上げることができると共に、各凹部21で焼き上げられるたこ焼Wの品質がばらつくのを防止することができる。
【0066】
更にまた、鋳鉄に比して熱伝導率の大きな上板部32及び下板部33のうち下板部33の合せ面33aに形成された溝331に電気ヒータ31の発熱部31aが嵌め込まれるようになっているので、当該電気ヒータ31で発生した熱のほぼ全てを上板部32及び下板部33に確実に伝達することができると共に、当該熱を鉄板部2に熱伝導により直接的に伝達することができる。従って、電気ヒータ31で発生した熱を効率よく利用して、鉄板部2の凹部21の周囲を短時間で加熱することができる。
【0067】
また、互いに重ね合わされた状態の上板部32と下板部33とを分割することにより、溝331に嵌め込まれた電気ヒータ31を目視等で容易に確認することができると共に、当該溝331に対して電気ヒータ31を脱着することにより容易に当該電気ヒータ31の交換を行うことができる。従って、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0068】
しかも、溝331と発熱部31aとの間の隙間に熱伝導グリスが充填されているので、電気ヒータ31の熱をより効率よく上板部32及び下板部33に伝達することができる。従って、鉄板部2の凹部21の周囲をより効率よく短時間で加熱することができる。
【0069】
更に、鉄板部2の下面2bと、電気加熱部3の伝熱面3aとの間に熱伝導グリスを介在させているので、電気加熱部3から鉄板部2への熱伝導効率の向上を図ることができる。即ち、鉄板部2の凹部21の周囲を更に効率よく短時間で加熱することができる。
【0070】
また、鉄板部2の上面2aにおける長手方向の一端側の縁部に沿って帯状に延在し当該上面2aより一段高く形成された一端帯状枠部22aを有し、当該鉄板部2の上面2aにおける幅方向の各側縁部に沿って帯状に延在し当該上面2aより一段高く形成された側縁帯状枠部22bを有しているので、たこ焼Wのタネが各凹部21から上面2aに溢れ出たような状態となっても、当該たこ焼Wのタネが鉄板部2の上面2aからその長手方向の一端側や、幅方向の各側縁側にこぼれ落ちるのを防止することができる。
【0071】
しかも、鉄板部2の上面2aにおける長手方向の一端側とは反対の他端側からは、たこ焼Wの焼き上げの際に生じた粕を当該上面2aに沿ってスムーズに排出することができる。この場合、鉄板部2の上面2aから各側縁帯状枠部22bが立ち上がった状態になるので、その立上り部をガイドにしてヘラ等を移動することにより、たこ焼Wの粕を当該上面2aからその外方にきれいに掃き出すように排出することができる。
【0072】
また、たこ焼Wの焼き上げの際に凹部21や上面2aにひかれた油が次第に一端帯状枠部22a及び各側縁帯状枠部22bを乗り越えてそれらの外方に浸み出すように移動することがあるが、当該一端帯状枠部22a及び各側縁帯状枠部22bのそれぞれの最外縁部に沿って下方に突出する凸条部22cが設けられているので、上記油が鉄板部2や電気加熱部3の側方の外周面に回り込むように移動するのを防止することができる。従って、鉄板部2及び電気加熱部3の外周面等が油で汚れるのを防止することができる。
【0073】
しかも、各凸条部22cが下方に向けて漸次薄くなるように形成されているので、各凸条部22cの下縁に回り込んだ油を当該縁部から比較的容易に切り離して、当該各凸条部22cの直下位置に落下させることができる。このため、各凸条部22cの直下位置に例えば油受けを設けておくことにより、その落下した油を確実に回収することができ、当該落下した油によって周囲が汚れるのを防止することができる。
【0074】
また、鉄板部2及び電気加熱部3が一体的に結合された状態で所定の軸42回りの回転振動によって加振されるようになっており、各凹部21は、半球未満の球冠状の曲面によって形成された底面部21a及びこの底面部21aの上縁から鉄板部2の上面2aに向けて拡径するように形成された第1の内周面部21b及びその上側の第2の内周面部21cを有し、かつ鉄板部2の上面2aから底面部21aの最下部までの深さHが当該底面部21aの曲率直径D1の6/10~9/10に形成されていると共に、当該底面部21aの曲率中心Cを通り鉄板部2の上面2aに平行な面Pにおける直径D2が底面部21aの曲率直径D1より大きく形成されているので、凹部21内に挿入されたたこ焼Wのタネはその外周部が徐々に焼き固まるのに連れて、底面部21aの曲率中心C回りに回転し始めることになる。
【0075】
即ち、鉄板部2が所定の軸回りの回転振動を受けることにより、各凹部21もその底面部21aの曲率中心C回りとなるような振動変位を受けることになるので、当該凹部21に挿入されたたこ焼Wのタネには底面部21aの曲率中心Cを中心とする回転駆動力が作用することになる。このため、たこ焼Wのタネは、その外周部が徐々に焼き固まるに連れて、底面部21aの曲率中心C回りに回転し、当該底面部21aの曲率直径D1に対応するような径の球形状に焼き上げられることになる。
【0076】
この場合、凹部21における鉄板部2の上面2aから底面部21aの最下部までの深さHが当該底面部21aの曲率直径D1の6/10~9/10に形成されているので、焼き上げられたたこ焼Wの直径のうち1/10~4/10程度の部分が鉄板部2の上面2aから突出した状態になる。このため、その突出した部分を串で刺す等により、焼き上げ後のたこ焼Wを凹部21から容易に取り出すことができる。
【0077】
しかも、底面部21aの曲率中心Cを通り鉄板部2の上面2aと平行な面Pにおける凹部21の直径D2が底面部21aの曲率直径D1より大きく形成されていると共に、当該底面部21aの上側の第1及び第2の内周面部21b、21cが鉄板部2の上面2aに向かって拡径するように形成されているので、たこ焼Wを凹部21から容易に取り出することができる。
【0078】
なお、上記実施形態においては、下板部33の合せ面33aに溝331を形成した例を示したが、図6に示すように、上板部32の合せ面32aに溝331を形成するように構成してもよい。但し、この場合でも、図6(b)、(c)に示すように、下板部33に、貫通孔33bを設けることになる。また、上板部32については、溝331の形成が可能な厚さの厚いものを用いることが必要になり、下板部33については、溝331を形成しないことから厚さの薄いものを用いることが可能になる。
【0079】
また、溝331については、上板部32及び下板部33の双方の合せ面32a、32bに設けるように構成してもよい。但し、貫通孔33bについては、下板部33に設けることになる。
【0080】
更に、上記実施形態や図6等で示す下板部33の下面については、断熱板で覆うように構成してもよい。この場合には、当該下板部33の下面から放射等により、熱が逃げるのを防止することができるので、鉄板部2をより効率よく加熱することができる。
【0081】
次に、図1図7図10を参照しつつ、本発明の一実施形態における球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置を稼働させる球状食品焼き上げ機本体の概要を説明する。図9及び図10では、球状食品焼き上げ機本体を形成する外枠の一部を除いて内部の構造が見えるように描写している。
なお、これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに番号を付しているところもある。説明の便宜上、所定の部位やこの引き出し線を、破線や想像線(二点鎖線)で示しているところもある。
【0082】
図7に示すとおり、球状食品焼き上げ機本体Bは、図1に示す球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置1を用いて食品を焼き上げるための機器が搭載されている箱状の装置で、球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置1を搭載するために設けられた本体上部B1と、球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置を稼働させるために本体上部B1の下方に一体的に設けられた本体下部B2とを備えている。
【0083】
図7及び図8に示すとおり、本体下部B2には、図1に示す状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置1の加熱や振動を制御する電装部5と、球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置1に備えた鉄板部2を振動させる振動部6とが設けられている。電装部5と振動部6とは、本体下部B2で区分けされた領域にそれぞれ設置されている。
【0084】
図7に示すとおり、電装部5は、球状食品焼き上げ機本体Bを稼働させる電源スイッチ51と、図1に示す鉄板部2の温度を設定する温度調節器52と、振動部6を稼働させる振動スイッチ53とを有する。
温度調節器52は、鉄板部2に備えた電気ヒータ31に電気を送ったり、設定した温度を維持したりするものである。温度調節器52は、鉄板部2の所定の個所に接続された温度センサー(図示しない)で測定した鉄板部2の温度に基づいて電気ヒータ31の温度を制御している。
振動スイッチ53は、振動部6の振動数及び振動時間、並びに振動数6を振動させるタイミングをシーケンサ(図示しない)で制御している。
なお、電源スイッチ51・温度調節器52・振動スイッチ53の設置位置や詳細な仕様に限定はない。
【0085】
図8図10に示すとおり、振動部6は、図1に示す鉄板部2を振動させる振動装置61(上述した加振動装置4と同等)と、振動装置61を本体下部B2に搭載するために設けられた振動装置外枠62と、振動装置外枠62の裏面に設けられた振動補助部63と、振動補助部63の下方に敷かれた所定の板材を介して設けられた振動防止部64とを有する。
振動装置61は、例えば、振動モータが該当し、振動スイッチ53から振動の開始・終了、振動数、振動時間、及び振動のタイミングを制御されるものである。
振動装置外枠62は、板材にて振動装置61を外側から囲うように箱状に形成されたものである。振動装置外枠62の上端は、図1に示す球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置1と連結するために本体上部B1から突き出ている。振動装置外枠62の裏面は、平面状である。
振動補助部63は、振動装置61の振動に伴う振動装置外枠62の振動が図1に示す鉄板部2に伝わるように振動伝達効率を向上させるもので、例えば、バネ、ゴム、又はダンパが該当し、振動装置外枠62の裏面の四隅にそれぞれ設けられている。
振動防止部64は、振動装置外枠62の振動に伴う振動補助部63の振動が電装部5を含む本体下部B2に伝わらないように振動伝達効率を減退させるもので、例えば、バネ、ゴム、又はダンパが該当し、振動補助部63の下方に敷かれた所定の板材と本体下部B2の底面との間かつ四隅にそれぞれ設けられている。
【0086】
球状食品焼き上げ機本体Bの使用方法としては、例えば以下の流れである。
まず、図1に示す球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置1を本体上部B1に設置すると共に、電装部5で鉄板部及び振動部6を制御可能な状態にする。
次に、電装部5の電源スイッチ51で温度調節器52及び振動部6を稼働可能な状態にし、温度調節器52で鉄板部2を食品の焼き上げに必要な温度に調節する。その後、食品の具材等を鉄板部に流し込み、所定の時間焼き上げる。
そして、食品のうち鉄板部2に接している部分が焼き上がった時点で、電装部5の振動スイッチ53にて振動装置61の振動数及び振動時間を設定する。振動装置外枠62を介して鉄板部2を振動させると、食品が鉄板部2内で振動しながら回転し、設定した振動装置61の振動時間経過後、所望の状態に焼きあがる。
【0087】
このような球状食品焼き上げ機本体Bの構成及び球状食品焼き上げ機本体Bの使用方法により、図1に示す鉄板部2の熱及び振動が食品全体に均等に伝わるため、食品の焼き上げ時間の短縮が実現する。
【符号の説明】
【0088】
1 球状食品焼き上げ用電気加熱式鉄板装置
2 鉄板部
2a 上面
2b 下面
3 電気加熱部
3a 伝熱面
21 凹部
21a 底面部
21b 第1の内周面部(内周面部)
21c 第2の内周面部(内周面部)
22a 一端帯状枠部
22b 側縁帯状枠部
22c 凸条部
31 電気ヒータ
31a 発熱部
32 上板部
32a、33a 合せ面
33 下板部
42 所定の軸
331 溝
C 底面部の曲率中心
D1 底面部の曲率直径
D2 上面と平行な面における直径
H 深さ
P 上面と平行な面
W 球状食品(たこ焼)
B 球状食品焼き上げ機本体
5 電装部
6 振動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10