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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】線維症治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/713 20060101AFI20230106BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230106BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230106BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230106BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230106BHJP
【FI】
A61K31/713 ZNA
A61K31/7088
A61K48/00
A61K47/54
A61P43/00
A61P43/00 111
C12N15/113 130Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019532895
(86)(22)【出願日】2018-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2018028459
(87)【国際公開番号】W WO2019022257
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2017146957
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001395
【氏名又は名称】杏林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(74)【代理人】
【識別番号】100211199
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】中尾 一久
(72)【発明者】
【氏名】石山 順一
(72)【発明者】
【氏名】市川 航
(72)【発明者】
【氏名】増井 淳
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 ゆにけ
(72)【発明者】
【氏名】豊福 秀一
(72)【発明者】
【氏名】本田 亜弥
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0097441(US,A1)
【文献】国際公開第2012/017919(WO,A1)
【文献】BMB reports,2015年,Vol.48, No.8, pp.473-478
【文献】PloS one,2014年,Vol.9, No.4, e96095
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 48/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸であって、NEK6遺伝子を標的とするsiRNA又はNEK6 mRNAのアンチセンスポリヌクレオチドである核酸を有効成分として含むSMAD2/3タンパク質のリン酸化阻害剤。
【請求項2】
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸であって、NEK6遺伝子を標的とするsiRNA又はNEK6 mRNAのアンチセンスポリヌクレオチドである核酸を有効成分として含む線維症治療剤。
【請求項3】
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)からなる群より選ばれる二本鎖核酸分子である、請求項2に記載の線維症治療剤
(a)5’末端に配列番号1に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端に配列番号6に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)から形成される二本鎖核酸分子
(b)5’末端に配列番号2に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端に配列番号7に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)とから形成される二本鎖核酸分子
(c)5’末端に配列番号3に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端に配列番号8に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)とから形成される二本鎖核酸分子
(d)5’末端に配列番号4に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端に配列番号9に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)とから形成される二本鎖核酸分子
(e)5’末端に配列番号5に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端に配列番号10に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)とから形成される二本鎖核酸分子
【請求項4】
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸が、さらにガイド鎖(アンチセンス鎖)及び/又はパッセンジャー鎖(センス鎖)の3‘末端に1~11塩基のリボヌクレオチド残基及び/又はデオキシリボヌクレオチド残基が付加され、突出端を形成している二本鎖核酸分子である、請求項3に記載の線維症治療剤
【請求項5】
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(a)~(e)のいずれか1つに記載のパッセンジャー鎖(センス鎖)の3’末端とガイド鎖(アンチセンス鎖)の5’末端が、ヌクレオチド残基からなるリンカー配列及び/又は非ヌクレオチド構造からなるリンカーを介して連結されたヘアピン型RNA構造を形成している一本鎖核酸分子であるか、あるいは以下の(a)~(e)のいずれか1つに記載のガイド鎖(アンチセンス鎖)の3’末端とパッセンジャー鎖(センス鎖)の5’末端が、ヌクレオチド残基からなるリンカー配列及び/又は非ヌクレオチド構造からなるリンカーを介して連結されたヘアピン型RNA構造を形成している一本鎖核酸分子である、請求項2に記載の線維症治療剤
(a)5’末端に配列番号1に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端に配列番号6に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)
(b)5’末端に配列番号2に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端に配列番号7に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)
(c)5’末端に配列番号3に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端に配列番号8に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)
(d)5’末端に配列番号4に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端に配列番号9に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)
(e)5’末端に配列番号5に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端に配列番号10に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)
【請求項6】
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸が、配列番号1~5から選ばれるNEK6遺伝子の発現抑制配列を含む、以下の(A)又は(B)の一本鎖核酸分子である、請求項2に記載の線維症治療剤
(A) 領域(X)、リンカー領域(Lx)及び領域(Xc)を含む又はのみからなり、
5’側から3’側にかけて、前記領域(Xc)、前記リンカー領域(Lx)及び前記領域(X)の順で配置され、
前記領域(Xc)が、前記領域(X)と相補的であり、
前記リンカー領域(Lx)が、ピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド構造を有し、
かつ前記領域(X)が、前記発現抑制配列を含む;
(B)領域(Xc)、リンカー領域(Lx)、領域(X)、領域(Y)、リンカー領域(Ly)及び領域(Yc)を、5’側から3’側にかけてこの順序で含み、
前記領域(X)と前記領域(Y)とが連結して、内部領域(Z)を形成し、
前記領域(Xc)が、前記領域(X)と相補的であり、
前記領域(Yc)が、前記領域(Y)と相補的であり、
かつ前記リンカー領域(Lx)及び/又はリンカー領域(Ly)が、ピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド構造を有し、
前記内部領域(Z)が、前記発現抑制配列を含む。
【請求項7】
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸が、前記リンカー領域(Lx)及び/又は(Ly)が、下記式(I)で表わされるリンカーであることを特徴とする一本鎖核酸分子である、請求項6に記載の線維症治療剤
【化1】

前記式中、
及びXは、それぞれ独立して、H、O、S又はNHであり;
及びYは、それぞれ独立して、単結合、CH、NH、O又はSであり;
は、環A上のC-3、C-4、C-5又はC-6に結合する水素原子又は置換基であり;
は、n個の炭素原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR、NH、NHR、NR、SH、もしくはSRで置換されても置換されていなくてもよく、又は、
は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Yが、NH、O又はSの場合、Yに結合するLの原子は炭素であり、ORに結合するLの原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
は、m個の炭素原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR、NH、NHR、NR、SHもしくはSRで置換されても置換されていなくてもよく、又は、
は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Yが、NH、O又はSの場合、Yに結合するLの原子は炭素であり、ORに結合するLの原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
、R、R及びRは、それぞれ独立して、置換基又は保護基であり;
lは、1又は2であり;
mは、0~30の範囲の整数であり;
nは、0~30の範囲の整数であり;
環Aは、前記環A上のC-2以外の1個の炭素原子が、窒素、酸素又は硫黄で置換されてもよく、
前記環A内に、炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素二重結合を含んでもよく、
前記領域(Xc)及び前記領域(X)は、それぞれ、-OR-又はOR-を介して、前記リンカー領域(Lx)に結合し、
前記領域(Yc)及び前記領域(Y)は、それぞれ、-OR-又はOR-を介して、前記リンカー領域(Ly)に結合し、
ここで、R及びRは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、R及びRは、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基又は前記構造(I)である。
【請求項8】
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸が、X又はZが、配列番号11~25からなる群より選ばれる配列を含むことを特徴とする一本鎖核酸分子である、請求項6に記載の線維症治療剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸分子及び当該核酸分子を有効成分とする医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
線維症は、過剰なコラーゲンの蓄積により臓器機能が障害を受け、不可逆的に進行する疾患であり、例えば、その発症臓器としては皮膚、肺、肝臓、膵臓、腎臓、骨髄などが知られている。肺の線維症の一種である特発性肺線維症(IPF)は、人口10万人当たり20人程度の患者数と罹患率は高くはないものの、診断確定後の平均生存期間が2.5~5年と治療後の経過はよくないため、日本において難病指定されている。
【0003】
IPF治療薬としては、これまでにピルフェニドン、ニンテダニブが日本国厚生労働省より承認を受け上市されている。いずれの薬剤も肺活量低下抑制と無増悪期間延長作用を示し、病態の進行を遅延させるものの、治療効果としては十分満足できるものとはいえず、新たなメカニズムに基づく治療薬の開発が望まれている。
【0004】
一方、本発明の標的である「NEK6タンパク質」は、細胞分裂の制御に関わるNIMA-related serine/threonine kinase familyの1つとして知られるが、医薬品開発の研究対象としてはこれまであまり着目されていない。2002年に癌の創薬標的としての可能性が報告されるが、NEK6タンパク質がSMAD2/3タンパク質と相互作用すること、組織の線維化を促進することについて具体的な報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2004/0097441号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規なSMAD2/3タンパク質のリン酸化阻害剤及び線維症治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ブレオマイシン誘発肺線維症モデルを用いた解析から、NEK6(NIMA-related serine/threonine kinase 6)のmRNAレベルの亢進が見られることに着目し研究を進めた結果、NEK6がTGF-β下流で線維化に寄与するSMAD系シグナルを制御することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕 NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸を有効成分として含むSMAD2/3タンパク質のリン酸化阻害剤;
〔2〕 NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸を有効成分として含む線維症治療剤;
〔3〕 肺線維症、肝線維症又は腎線維症を治療対象とする、〔2〕の治療剤;
〔4〕 以下の(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)からなる群より選ばれる二本鎖核酸分子。
(a)5’末端に配列番号1に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端又は5’末端に配列番号6に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)から形成される二本鎖核酸分子
(b)5’末端に配列番号2に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端又は5’末端に配列番号7に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)とから形成される二本鎖核酸分子
(c)5’末端に配列番号3に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端又は5’末端に配列番号8に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)とから形成される二本鎖核酸分子
(d)5’末端に配列番号4に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端又は5’末端に配列番号9に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)とから形成される二本鎖核酸分子
(e)5’末端に配列番号5に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端又は5’末端に配列番号10に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)とから形成される二本鎖核酸分子;
〔5〕 さらにガイド鎖(アンチセンス鎖)及び/又はパッセンジャー鎖(センス鎖)の3’末端に1~11塩基のリボヌクレオチド残基及び/又はデオキシヌクレオチド残基が付加され、突出端を形成している、〔4〕の二本鎖核酸分子;
〔6〕 〔4〕又は〔5〕に示されたパッセンジャー鎖(センス鎖)の3’末端とガイド鎖(アンチセンス鎖)の5’末端が、ヌクレオチド残基からなるリンカー配列及び/又は非ヌクレオチド構造のリンカーを介して連結され、あるいは、〔4〕又は〔5〕に示されたガイド鎖(アンチセンス鎖)の3’末端とパッセンジャー鎖(センス鎖)の5’末端が、ヌクレオチド残基からなるリンカー配列及び/又は非ヌクレオチド構造のリンカーを介して連結されたヘアピン型RNA構造を形成している一本鎖核酸分子;
〔7〕 配列番号1~5から選ばれるNEK6遺伝子の発現抑制配列を含む、以下の(A)又は(B)の一本鎖核酸分子:
(A) 領域(X)、リンカー領域(Lx)及び領域(Xc)を含む又はのみからなり、
5’側から3’側にかけて、前記領域(Xc)、前記リンカー領域(Lx)及び前記領域(X)の順で配置され、
前記領域(Xc)が、前記領域(X)と相補的であり、
前記リンカー領域(Lx)が、ピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド構造を有し、
かつ前記領域(X)が、上記発現抑制配列を含む;
(B)領域(Xc)、リンカー領域(Lx)、領域(X)、領域(Y)、リンカー領域(Ly)及び領域(Yc)を、5’側から3’側にかけてこの順序で含み、
前記領域(X)と前記領域(Y)とが連結して、内部領域(Z)を形成し、
前記領域(Xc)が、前記領域(X)と相補的であり、
前記領域(Yc)が、前記領域(Y)と相補的であり、
かつ前記リンカー領域(Lx)及び/又はリンカー領域(Ly)が、ピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド構造を有し、
前記内部領域(Z)が、上記発現抑制配列を含む。
〔8〕 前記リンカー領域(Lx)及び/又は(Ly)が、下記式(I)で表わされる、〔7〕の一本鎖核酸分子。
【化1】
前記式中、
及びXは、それぞれ独立して、H、O、S又はNHであり;
及びYは、それぞれ独立して、単結合、CH、NH、O又はSであり;
は、環A上のC-3、C-4、C-5又はC-6に結合する水素原子又は置換基であり;
は、n個の炭素原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR、NH、NHR、NR、SH、もしくはSRで置換されても置換されていなくてもよく、又は、
は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Yが、NH、O又はSの場合、Yに結合するLの原子は炭素であり、ORに結合するLの原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
は、m個の炭素原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR、NH、NHR、NR、SHもしくはSRで置換されても置換されていなくてもよく、又は、
は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Yが、NH、O又はSの場合、Yに結合するLの原子は炭素であり、ORに結合するLの原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
、R、R及びRは、それぞれ独立して、置換基又は保護基であり;
lは、1又は2であり;
mは、0~30の範囲の整数であり;
nは、0~30の範囲の整数であり;
環Aは、前記環A上のC-2以外の1個の炭素原子が、窒素、酸素又は硫黄で置換されてもよく、
前記環A内に、炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素二重結合を含んでもよく、
前記領域(Xc)及び前記領域(X)は、それぞれ、-OR-又は-OR-を介して、前記リンカー領域(Lx)に結合し、
前記領域(Yc)及び前記領域(Y)は、それぞれ、-OR-又は-OR-を介して、前記リンカー領域(Ly)に結合し、
ここで、R及びRは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、R及びRは、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基又は前記構造(I)である;
〔9〕 X又はZが、配列番号11~25からなる群より選ばれる配列を含む、〔7〕又は〔8〕の一本鎖核酸分子;
〔10〕 NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸を対象に投与することを含む、SMAD2/3タンパク質のリン酸化を阻害する方法;
〔11〕 NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸を対象に投与することを含む、線維症を治療する方法;
〔12〕 SMAD2/3タンパク質のリン酸化の阻害に使用するNEK6遺伝子の発現を抑制する核酸;
〔13〕 線維症治療に使用するNEK6遺伝子の発現を抑制する核酸;
〔14〕 SMAD2/3タンパク質のリン酸化阻害剤を製造するための、NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸の使用;及び
〔15〕 線維症治療剤を製造するための、NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸の使用。
〔16〕 NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸が、KB-001~011の発現抑制配列(下線部部分)を含む核酸である、〔15〕の使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明により新規なSMAD2/3タンパク質のリン酸化阻害剤及び線維症治療剤の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】NEK6のCoding Sequence領域の配列及び実施例7で作製したssPN分子の標的部位を示す図である。
図2図2は、本発明のSMAD2/3タンパク質リン酸化阻害剤の有効成分となる核酸分子の一例を示す模式図である。(ssPN分子)
図3図3は、本発明のSMAD2/3タンパク質リン酸化阻害剤の有効成分となる核酸分子の一例を示す模式図である。(ssPN分子又はssNc分子)
図4図4は、本発明のSMAD2/3タンパク質リン酸化阻害剤の有効成分となる核酸分子の一例を示す模式図である。(ssPN分子又はssNc分子)
図5図5は、本発明のSMAD2/3タンパク質リン酸化阻害剤の有効成分となる核酸分子の一例を示す模式図である。(ssNc分子)
図6図6は、siRNAを導入した場合のNEK6遺伝子の転写量を示すグラフである。
図7図7aは、NEK6をノックダウンした場合におけるリン酸化SMAD3タンパク質のウェスタンブロットの結果を表す。図7bは、NEK6をノックダウンした場合におけるリン酸化SMAD2タンパク質のウェスタンブロットの結果を表す。
図8図8aは、抗NEK6抗体による共免疫沈降の結果を表す。図8bは、抗FLAG抗体による共免疫沈降の結果を表す。
図9図9は、His融合NEK6タンパク質とGST融合SMAD3タンパク質を反応させた場合におけるリン酸化SMAD3タンパク質のウェスタンブロットの結果を表す。
図10図10aは、NEK6をノックダウンした場合におけるウェスタンブロットの結果を表す。図10bは、NEK6をノックダウンした場合におけるホタルルシフェラーゼの発光量を表す。
図11図11aは、NEK6をノックダウンした場合におけるCol1a1遺伝子の転写量を表す。図11bは、NEK6をノックダウンした場合におけるαSMA遺伝子の転写量を表す。
図12図12aは、NEK6をノックダウンした場合におけるCol1a1遺伝子の転写量を表す。図12bは、NEK6をノックダウンした場合におけるαSMA遺伝子の転写量を表す。
図13図13は、肝星細胞にNEK6 siRNAを導入した場合におけるリン酸化SMAD3タンパク質(pSMAD3)のウェスタンブロットの結果を表す。
図14図14は、肝星細胞に各種NEK6 siRNAを導入した場合におけるリン酸化SMAD3タンパク質(pSMAD3)のウェスタンブロットの結果を表す。
図15図15aは、肝星細胞においてNEK6をノックダウンした場合のNEK6の転写量を表す。図15bは、肝星細胞においてNEK6をノックダウンした場合のFibronectinの転写量を表す。図15cは、肝星細胞においてNEK6をノックダウンした場合のαSMA遺伝子の転写量を表す。
図16図16は、腎臓線維芽細胞においてNEK6をノックダウンした場合のリン酸化SMAD3タンパク質のウェスタンブロッティングの結果を表す。
図17図17aは、CClモデルにおいてNEK6をノックダウンした場合の血清中GPTの測定結果を表す。図17bは、CClモデルにおいてNEK6をノックダウンした場合の血清中GOTの測定結果を表す。
図18図18は、CClモデルにおいてNEK6をノックダウンした場合のリン酸化SMAD3タンパク質のウェスタンブロッティングの結果を表す。
図19図19aは、CClモデルにおいてNEK6をノックダウンした場合のNEK6遺伝子の転写量を表す。図19bは、CClモデルにおいてNEK6をノックダウンした場合のCol1a1遺伝子の転写量を表す。図19cは、CClモデルにおいてNEK6をノックダウンした場合のCol3a1遺伝子の転写量を表す。図19dは、CClモデルにおいてNEK6をノックダウンした場合のTimp1遺伝子の転写量を表す。
図20図20aは、BDLモデルにおいてNEK6をノックダウンした場合のNEK6遺伝子の転写量を表す。図20bは、BDLモデルにおいてNEK6をノックダウンした場合のCol1a1遺伝子の転写量を表す。図20cは、BDLモデルにおいてNEK6をノックダウンした場合のCol3a1遺伝子の転写量を表す。図20dは、BDLモデルにおいてNEK6をノックダウンした場合のTimp1遺伝子の転写量を表す。
図21図21は、CClモデルにおいてNEK6をノックダウンした場合の肝臓の病理解析の結果を表す。図21aはCCl未投与の生理食塩水投与群の結果を表す。図21bはCCl投与の溶媒投与群の結果を表す。図21cはCCl投与の核酸投与群の結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用する用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で用いるものである。また、本発明において、「塩基数」は、例えば、「長さ」を意味し、「塩基長」ということもできる。本発明において、塩基数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものであり、具体例として、「1~4塩基」との記載は、「1、2、3、4塩基」の全ての開示を意味する。
【0012】
本発明は、NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸を有効成分として含むSMAD2/3タンパク質リン酸化阻害剤及び当該核酸を有効成分として含む線維症治療剤を提供するものである。以下、本発明の内容について詳細に説明する。
【0013】
(1)NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸
NEK6タンパク質は、細胞分裂の制御に関わる11個のNIMA-related serine/threonine kinase familyの1つであり、細胞周期のM期においてリン酸化(活性化)される。
【0014】
本発明の標的であるNEK6遺伝子は、哺乳類由来の遺伝子であり、好ましくはヒト由来の遺伝子である。ヒト由来のNEK6遺伝子は、7種のバリアントが報告されているが、その中のアイソフォーム2のCoding Sequence領域の配列を図1に表す(配列番号56)。
【0015】
核酸分子によるNEK6遺伝子の発現の抑制メカニズムは、特に制限されるものではなく、発現をダウンレギュレーションできるものであればよい。NEK6遺伝子の発現抑制は、NEK6遺伝子からの転写産物の生成量の減少、NEK6遺伝子からの翻訳産物の生成量の減少、又は前記翻訳産物の活性の減少等によって確認することができる。
【0016】
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸としては、NEK6 mRNAのアンチセンスポリヌクレオチド、siRNA、ssPN分子、ssNc分子、miRNA、リボザイムなどがあげられる。
【0017】
アンチセンスポリヌクレオチド、siRNA、ssPN分子、ssNc分子、リボザイムは、当業者であれば、上記のヒトNEK6遺伝子のヌクレオチド配列に基づいて容易に取得することができる。好ましくは、NEK6 アイソフォーム2のCoding Sequence領域の配列(配列番号56)に基づいて作製した核酸である。
【0018】
(2)siRNA
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸の1つであるsiRNA(small interfering RNA)を以下に説明する。
siRNAは、標的遺伝子と対合するガイド鎖(アンチセンス鎖)、ガイド鎖と二本鎖を形成しているパッセンジャー鎖(センス鎖)からなる核酸分子である。siRNAは、細胞内においてArgonaute(AGO)タンパク質を中核とする RNA-inducing silencing complex(RISC)と呼ばれる複合体に取り込まれた後、センス鎖はAGOにより分解され、ガイド鎖はRISCに残る。ガイド鎖のシード領域(ガイド鎖の5’末端から2-8塩基の7塩基領域)は、標的配列を認識する上で重要な働きを有していると考えられており、オフターゲット効果を回避する目的から標的遺伝子に特異的なシード領域を選択することが好ましいとされている。したがって、本発明の有効成分である核酸のシード領域についてもNEK6遺伝子に特異的な配列を選択することが好ましい。例えば、NEK6遺伝子に相補的であって、且つ、NEK7遺伝子(RefSeq database:NM_133494.2)に相補的でない、あるいは、領域中1以上(例えば1~3)の塩基がNEK7遺伝子に非相補的(ミスマッチ)である配列をシード領域として含む核酸を選択することがあげられる。また、全長配列についても、例えば、NEK6遺伝子に対しては相補的であり、NEK7遺伝子に対しては非相補的(ミスマッチ)な塩基を増加させる(例えば、4以上、好ましくは5~7)ことは、オフターゲット効果を回避する上で有用である。ガイド鎖に含まれる発現抑制配列の塩基数は、例えば、15~30塩基であり、好ましくは、19~25塩基であり、より好ましくは19~23塩基であり、さらに好ましくは21、22、23塩基であり、特に好ましくは23塩基である。
【0019】
前記発現抑制配列は、3’側に、さらに付加配列を有することで突出端を形成してもよい。前記付加配列の塩基数は、例えば、1~11塩基であり、好ましくは1~4塩基である。付加配列は、リボヌクレオチド残基でもデオキシリボヌクレオチド残基でもよい。
【0020】
ガイド鎖の塩基数は、例えば、19~50塩基であり、好ましくは19~30塩基であり、より好ましくは、19~25塩基であり、さらに好ましくは19~23塩基であり、ことさら好ましくは21、22、23塩基であり、特に好ましくは23塩基である。
【0021】
パッセンジャー鎖の塩基数は、例えば、19~50塩基であり、好ましくは19~30塩基であり、より好ましくは、19~25塩基であり、さらに好ましくは19~23塩基であり、ことさら好ましくは21、22、23塩基であり、特に好ましくは21塩基である。
【0022】
パッセンジャー鎖で、ガイド鎖と相補性を示す領域は、例えば、19~50塩基であり、好ましくは19~30塩基であり、より好ましくは、19~25塩基であり、さらに好ましくは19~23塩基である。前記領域は、3’側に、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列の塩基数は、例えば、1~11塩基であり、好ましくは1~4塩基であり、付加配列は、リボヌクレオチド残基でもデオキシリボヌクレオチド残基でもよい。パッセンジャー鎖は、ガイド鎖の相補性を示す領域に対して、例えば、相補的でもよいし、1もしくは数塩基が非相補的であってもよいが、相補的であることが好ましい。前記1塩基若しくは数塩基は、例えば、1~3塩基、好ましくは1塩基又は2塩基である。
【0023】
NEK6の遺伝子発現を抑制するsiRNAは、NEK6遺伝子のcDNA配列情報に基づいて、例えば、siSNIPER(登録商標)、創薬・診断研究用siDirect(登録商標)等のsiRNA配列設計システムに従って得ることができる。
【0024】
NEK6siRNAは、NEK6に特異的に作用するsiRNAが好ましく、例えば以下のような二本鎖核酸をあげることができる。
(a)5’末端に配列番号1に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端又は5’末端に配列番号6に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)から形成される二本鎖核酸分子
(b)5’末端に配列番号2に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端又は5’末端に配列番号7に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)とから形成される二本鎖核酸分子
(c)5’末端に配列番号3に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端又は5’末端に配列番号8に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)とから形成される二本鎖核酸分子
(d)5’末端に配列番号4に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端又は5’末端に配列番号9に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)とから形成される二本鎖核酸分子
(e)5’末端に配列番号5に示される配列を含む塩基数19~30のガイド鎖(アンチセンス鎖)と3’末端又は5’末端に配列番号10に示される配列を含む塩基数19~30のパッセンジャー鎖(センス鎖)とから形成される二本鎖核酸分子
【0025】
【表1】
【0026】
また、NEK6遺伝子の発現を抑制するsiRNAは、パッセンジャー鎖(センス鎖)の3’末端とガイド鎖(アンチセンス鎖)の5’末端が、ヌクレオチド残基からなるリンカー配列及び/又は非ヌクレオチド構造のリンカーを介して連結され、あるいは、ガイド鎖(アンチセンス鎖)の3’末端とパッセンジャー鎖(センス鎖)の5’末端が、ヌクレオチド残基からなるリンカー配列及び/又は非ヌクレオチド構造のリンカーを介して連結されたヘアピン型RNA構造を形成している一本鎖核酸分子であってもよい。
【0027】
前記ヌクレオチド残基からなるリンカー配列の長さは、特に制限されないが、例えば、前記パッセンジャー鎖と前記ガイド鎖とが二重鎖を形成可能な長さであることが好ましい。前記リンカー配列の塩基数は、その下限が、例えば、1塩基であり、好ましくは2塩基であり、より好ましくは3塩基であり、その上限が、例えば、100塩基であり、好ましくは80塩基であり、より好ましくは50塩基である。前記リンカー配列の塩基数の具体例は、1~100塩基、2~80塩基、3~50塩基である。
【0028】
前記非ヌクレオチド構造のリンカーの例としては、ヘキサエチレングリコールリンカー、ポリ-(オキシホスフィニコ-オキシ-1,3-プロパンジオール)リンカー、アリルリンカー、又はポリエチレングリコールリンカー等の化学リンカー、カルバメート構造を有するアミノリンカー等をあげることができる。前記非ヌクレオチド構造リンカーの長さは、特に制限されないが、例えば、前記パッセンジャー鎖と前記ガイド鎖とが二重鎖を形成可能な長さであることが好ましい。
【0029】
(3)ssPN分子
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸の1つとなるssPN分子について説明する。ssPN分子は、WO2012/017919に開示される生物学的安定性に優れた一本鎖RNA核酸分子を意味し、具体的には以下の通りである。
本発明の有効成分となるssPN分子は、NEK6遺伝子の発現抑制配列を含む一本鎖核酸分子であって、領域(X)、リンカー領域(Lx)及び領域(Xc)を含み、前記領域(X)と前記領域(Xc)との間に、前記リンカー領域(Lx)が連結され、前記領域(X)及び前記領域(Xc)の少なくとも一方が、前記発現抑制配列を含み、前記リンカー領域(Lx)が、ピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド構造を有することを特徴とする。ssPN分子は、その5’末端と3’末端とが未連結であり、線状一本鎖核酸分子ということもできる。
【0030】
ssPN分子において、NEK6遺伝子の発現抑制配列は、例えば、本発明のssPN分子が、in vivo又はin vitroで細胞内に導入された場合に、NEK6遺伝子の発現を抑制する活性を示す配列である。NEK6 mRNAに結合するsiRNA配列は、NEK6遺伝子のcDNA配列情報に基づいて、既存のsiRNA設計システムに従って得ることができ、ssPN分子においても、前記siRNAの発現抑制配列を、ssPN分子の発現抑制配列として使用することができる。
【0031】
前記発現抑制配列は、例えば、NEK6遺伝子の標的領域に対して、80%以上の相補性を有していることが好ましく、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、ことさらに好ましくは98%以上であり、特に好ましくは100%である。
【0032】
特に、siRNAのシード領域に該当する部分については、siRNAの場合と同様にNEK6遺伝子に特異的な配列を選択することが好ましい。
【0033】
ssPN分子によるNEK6遺伝子の発現の抑制は、例えば、RNA干渉が生じることによると推測されるが、このメカニズムにより限定されるものではない。本発明のssPN分子は、例えば、いわゆるsiRNAのように、二本の一本鎖RNAからなるdsRNAとして、細胞等へ導入するものではなく、また、細胞内において、前記発現抑制配列の切り出しは、必ずしも必須ではない。
【0034】
ssPN分子において、前記リンカー領域(Lx)は、例えば、前記ピロリジン骨格を含む非ヌクレオチド構造を有してもよいし、前記ピペリジン骨格を含む非ヌクレオチド構造を有してもよいし、前記ピロリジン骨格を含む非ヌクレオチド構造と、前記ピペリジン骨格を含む非ヌクレオチド構造との両方を有してもよい。
【0035】
ssPN分子において、前記ピロリジン骨格は、例えば、ピロリジンの5員環を構成する炭素が、1個以上、置換されたピロリジン誘導体の骨格でもよく、置換される場合、例えば、5員環の2位の炭素(C-2)以外の炭素原子であることが好ましい。前記炭素は、例えば、窒素、酸素又は硫黄で置換されてもよい。前記ピロリジン骨格は、例えば、ピロリジンの5員環内に、例えば、炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素二重結合を含んでもよい。前記ピロリジン骨格において、ピロリジンの5員環を構成する炭素及び窒素は、例えば、水素が結合してもよいし、後述するような置換基が結合してもよい。前記リンカー領域(Lx)は、例えば、前記ピロリジン骨格のいずれの基を介して、前記領域(X)及び前記領域(Xc)と結合してもよく、好ましくは、前記5員環のいずれか1個の炭素原子と窒素であり、好ましくは、前記5員環の2位の炭素(C-2)と窒素である。前記ピロリジン骨格としては、例えば、プロリン骨格、プロリノール骨格等があげられる。前記プロリン骨格及びプロリノール骨格等は、例えば、生体内物質及びその還元体であるため、安全性にも優れる。
【0036】
ssPN分子において、前記ピペリジン骨格は、例えば、ピペリジンの6員環を構成する炭素が、1個以上、置換されたピペリジン誘導体の骨格でもよく、置換される場合、例えば、6員環の2位の炭素(C-2)以外の炭素原子であることが好ましい。前記炭素は、例えば、窒素、酸素又は硫黄で置換されてもよい。前記ピペリジン骨格は、例えば、ピペリジンの6員環内に、例えば、炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素二重結合を含んでもよい。前記ピペリジン骨格において、ピペリジンの6員環を構成する炭素及び窒素は、例えば、水素基が結合してもよいし、後述するような置換基が結合してもよい。前記リンカー領域(Lx)は、例えば、前記ピペリジン骨格のいずれの基を介して、前記領域(X)及び前記領域(Xc)と結合してもよく、好ましくは、前記6員環のいずれか1個の炭素原子と窒素であり、好ましくは、前記6員環の2位の炭素(C-2)と窒素である。
【0037】
前記リンカー領域は、例えば、前記非ヌクレオチド構造からなる非ヌクレオチド残基のみを含んでもよいし、前記非ヌクレオチド構造からなる非ヌクレオチド残基と、ヌクレオチド残基とを含んでもよい。
【0038】
ssPN分子において、前記リンカー領域は、例えば、下記式(I)で表わされる。
【0039】
【化2】
前記式(I)中、例えば、
及びXは、それぞれ独立して、H、O、S又はNHであり;
及びYは、それぞれ独立して、単結合、CH、NH、O又はSであり;
は、環A上のC-3、C-4、C-5又はC-6に結合する水素原子又は置換基であり、
は、n個の炭素原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR、NH、NHR、NR、SH、もしくはSRで置換されても置換されていなくてもよく、又は、
は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Yが、NH、O又はSの場合、Yに結合するLの原子は炭素であり、ORに結合するLの原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
は、m個の炭素原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR、NH、NHR、NR、SHもしくはSRで置換されても置換れていなくてもよく、又は、
は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Yが、NH、O又はSの場合、Yに結合するLの原子は炭素であり、ORに結合するLの原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
、R、R及びRは、それぞれ独立して、置換基又は保護基であり;
lは、1又は2であり;
mは、0~30の範囲の整数であり;
nは、0~30の範囲の整数であり;
環Aは、前記環A上のC-2以外の1個の炭素原子が、窒素、酸素、硫黄で置換されてもよく、
前記環A内に、炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素二重結合を含んでもよく、
前記領域(Xc)及び前記領域(X)は、それぞれ、-OR-又は-OR-を介して、前記リンカー領域(Lx)に結合し、
ここで、R及びRは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、R及びRは、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基又は前記構造(I)である。
【0040】
前記式(I)中、X及びXは、例えば、それぞれ独立して、H、O、S又はNHである。前記式(I)中において、XがHであるとは、Xが、Xの結合する炭素原子とともに、CH(メチレン基)を形成することを意味する。Xについても同様である。
【0041】
前記式(I)中、Y及びYは、それぞれ独立して、単結合、CH、NH、O又はSである。
【0042】
前記式(I)中、環Aにおいて、lは、1又は2である。l=1の場合、環Aは、5員環であり、例えば、前記ピロリジン骨格である。前記ピロリジン骨格は、例えば、プロリン骨格、プロリノール骨格等があげられ、これらの二価の構造が例示できる。l=2の場合、環Aは、6員環であり、例えば、前記ピペリジン骨格である。環Aは、環A上のC-2以外の1個の炭素原子が、窒素、酸素又は硫黄で置換されてもよい。また、環Aは、環A内に、炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素二重結合を含んでもよい。環Aは、例えば、L型及びD型のいずれでもよい。
【0043】
前記式(I)中、Rは、環A上のC-3、C-4、C-5又はC-6に結合する水素原子又は置換基である。Rが前記置換基の場合、置換基Rは、1でも複数でも、存在しなくてもよく、複数の場合、同一でも異なってもよい。置換基Rは、例えば、ハロゲン、OH、OR、NH、NHR、NR、SH、SR、オキソ基(=O)、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、シリル、シリルオキシアルキル等である。
【0044】
及びRは、例えば、それぞれ独立して、置換基又は保護基であり、同一でも異なってもよい。R及びRとしての置換基は、例えば、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、シリル、シリルオキシアルキル等があげられる。
【0045】
及びRとしての保護基は、例えば、反応性の高い官能基を不活性に変換する官能基であり、公知の保護基等があげられる。前記保護基は、例えば、文献(J.F.W.McOmie,「Protecting Groups in Organic Chemistry」 Prenum Press,London and New York, 1973)の記載を援用できる。前記保護基は、特に制限されず、例えば、tert-ブチルジメチルシリル基(TBDMS)、ビス(2-アセトキシエチルオキシ)メチル基(ACE)、トリイソプロピルシリルオキシメチル基(TOM)、1-(2-シアノエトキシ)エチル基(CEE)、2-シアノエトキシメチル基(CEM)及びトリルスルフォニルエトキシメチル基(TEM)、ジメトキシトリチル基(DMTr)等があげられる。RがORの場合、前記保護基は、特に制限されず、例えば、TBDMS基、ACE基、TOM基、CEE基、CEM基及びTEM基等があげられる。
【0046】
前記式(I)中、Lは、n個の炭素原子からなるアルキレン鎖である。前記アルキレン炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、OR、NH、NHR、NR、SH、もしくはSRで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。又は、Lは、前記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子(例えば、1~3個)が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。前記ポリエーテル鎖は、例えば、ポリエチレングリコールである。なお、Yが、NH、O又はSの場合、Yに結合するLの原子は炭素であり、ORに結合するLの原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。つまり、例えば、YがOの場合、その酸素原子とLの酸素原子は隣接せず、ORの酸素原子とLの酸素原子は隣接しない。
【0047】
前記式(I)中、Lは、m個の炭素原子からなるアルキレン鎖である。前記アルキレン炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、OR、NH、NHR、NR、SHもしくはSRで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。又は、Lは、前記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子(例えば、1~3個)が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。なお、Yが、NH、O又はSの場合、Yに結合するLの原子は炭素であり、ORに結合するLの原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。つまり、例えば、YがOの場合、その酸素原子とLの酸素原子は隣接せず、ORの酸素原子とLの酸素原子は隣接しない。
【0048】
のn及びLのmは、特に制限されず、それぞれ、下限は、例えば、0であり、上限も、特に制限されない。n及びmは、例えば、前記リンカー領域(Lx)の所望の長さに応じて、適宜設定できる。n及びmは、例えば、製造コスト及び収率等の点から、それぞれ、0~30が好ましく、より好ましくは0~20であり、さらに好ましくは0~15である。nとmは、同じでもよいし(n=m)、異なってもよい。n+mは、例えば、0~30であり、好ましくは0~20であり、より好ましくは0~15である。なお、Lのn及びLのmは、それぞれのアルキレン鎖の炭素原子数であるが、L又はLのアルキレン鎖の一つ以上炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖である場合は、n及びmは、炭素原子数と置換された酸素原子数の合計数を意味する。
【0049】
、R、R及びRは、例えば、それぞれ独立して、置換基又は保護基である。R、R、R及びRの置換基及び保護基は、例えば、R及びRの置換基及び保護基と同様である。
【0050】
前記式(I)において、水素原子は、例えば、それぞれ独立して、Cl、Br、F及びI等のハロゲンに置換されてもよい。
【0051】
前記領域(Xc)及び前記領域(X)は、例えば、それぞれ、-OR-又は-OR-を介して、前記リンカー領域(Lx)に結合する。ここで、R及びRは、存在しても存在しなくてもよい。R及びRが存在する場合、R及びRは、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基又は前記式(I)の構造である。R及び/又はRが前記ヌクレオチド残基の場合、前記リンカー領域(Lx)は、例えば、ヌクレオチド残基R及び/又はRを除く前記式(I)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基と、前記ヌクレオチド残基とから形成される。R及び/又はRが前記式(I)の構造の場合、前記リンカー領域(Lx)は、例えば、前記式(I)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基が、2つ以上連結された構造となる。前記式(I)の構造は、例えば、1個、2個、3個又は4個含んでもよい。このように、前記構造を複数含む場合、前記(I)の構造は、例えば、直接連結されてもよいし、前記ヌクレオチド残基を介して結合してもよい。他方、R及びRが存在しない場合、前記リンカー領域(Lx)は、例えば、前記式(I)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基のみから形成される。
【0052】
前記領域(Xc)及び前記領域(X)と、-OR-及び-OR-との結合の組合せは、特に制限されず、例えば、以下のいずれかの条件があげられる。
条件(1)
前記領域(Xc)は、-OR-を介して、前記領域(X)は、-OR-を介して、前記式(I)の構造と結合する。
条件(2)
前記領域(Xc)は、-OR-を介して、前記領域(X)は、-OR-を介して、前記式(I)の構造と結合する。
前記式(I)の構造は、例えば、下記式(I-1)~式(I-9)が例示でき、下記式において、n及びmは、前記式(I)と同じである。下記式において、qは、0~10の整数である。
【0053】
【化3】
【0054】
前記式(I-1)~(I-9)において、n、m及びqは、特に制限されず、前述の通りである。具体例として、前記式(I-1)において、n=8、前記(I-2)において、n=3、前記式(I-3)において、n=4又は8、前記(I-4)において、n=7又は8、前記式(I-5)において、n=3及びm=4、前記(I-6)において、n=8及びm=4、前記式(I-7)において、n=8及びm=4、前記(I-8)において、n=5及びm=4、前記式(I-9)において、q=1及びm=4があげられる。前記式(I-4)の一例(n=8)を、下記式(I-4a)に、前記式(I-8)の一例(n=5、m=4)を、下記式(I-8a)に示す。
【0055】
【化4】
【0056】
ssPN分子において、前記領域(Xc)は、前記領域(X)と相補的である。このため、ssPN分子において、前記領域(Xc)が前記領域(X)に向かって折り返し、前記領域(Xc)と前記領域(X)とが、自己アニーリングによって、二重鎖を形成可能である。
ssPN分子は、例えば、前記領域(Xc)のみが折り返して前記領域(X)と二重鎖を形成してもよいし、さらに、他の領域において新たな二重鎖を形成してもよい。以下、前者のssPN分子、すなわち、二重鎖形成が1カ所である分子を「第1のssPN分子」といい、後者のssPN分子、すなわち、二重鎖形成が2カ所である分子を「第2のssPN分子」という。以下に、前記第1のssPN分子及び前記第2のssPN分子について、例示する。
【0057】
(i)第1のssPN分子
前記第1のssPN分子は、例えば、前記領域(X)、前記領域(Xc)及び前記リンカー領域(Lx)からなる分子である。
前記第1のssPN分子は、例えば、5’側から3’側にかけて、前記領域(Xc)、前記リンカー領域(Lx)及び前記領域(X)を、前記順序で有してもよいし、3’側から5’側にかけて、前記領域(Xc)、前記リンカー領域(Lx)及び前記領域(X)を、前記順序で有してもよい。
【0058】
前記第1のssPN分子において、前記領域(Xc)は、前記領域(X)に相補的である。ここで、前記領域(Xc)は、前記領域(X)の全領域又はその部分領域に対して相補的な配列を有していればよく、好ましくは、前記領域(X)の全領域又はその部分領域に相補的な配列を含む、又は、前記相補的な配列のみからなる。前記領域(Xc)は、前記領域(X)の相補的な前記全領域又は相補的な前記部分領域に対して、例えば、相補的でもよいし、1もしくは数塩基が非相補的であってもよいが、相補的であることが好ましい。前記1塩基若しくは数塩基は、例えば、1~3塩基、好ましくは1塩基又は2塩基である。
【0059】
前記第1のssPN分子において、前記発現抑制配列は、前記領域(Xc)及び前記領域(X)の少なくとも一方に含まれる。前記第1のssPN分子は、前記発現抑制配列を、例えば、1つ有してもよいし、2つ以上有してもよい。後者の場合、前記第1のssPN分子は、例えば、NEK6遺伝子に対する同じ発現抑制配列を2つ以上有してもよいし、NEK6遺伝子に対する異なる発現抑制配列を2つ以上有してもよい。前記第1のssPN分子が、2つ以上の前記発現抑制配列を有する場合、各発現抑制配列の配置箇所は、特に制限されず、前記領域(X)及び前記領域(Xc)のいずれか一領域でもよいし、異なる領域であってもよい。
【0060】
前記第1のssPN分子の一例を、図2の模式図に従って説明する。図2(A)は、一例として、前記ssPN分子について、各領域の順序の概略を示す模式図であり、図2(B)は、前記ssPN分子が、前記分子内において二重鎖を形成している状態を示す模式図である。図2(B)に示すように、前記ssPN分子は、前記領域(Xc)と前記領域(X)との間で、二重鎖が形成され、前記Lx領域が、その長さに応じてループ構造をとる。図2は、あくまでも、前記領域の連結順序及び二重鎖を形成する各領域の位置関係を示すものであり、例えば、各領域の長さ、前記リンカー領域(Lx)の形状等は、これに制限されない。
前記第1のssPN分子において、前記領域(Xc)及び前記領域(X)の塩基数は、特に制限されない。以下に各領域の長さを例示するが、本発明は、これには制限されない。
【0061】
前記領域(Xc)は、例えば、前記領域(X)の全領域に相補的でもよい。この場合、前記領域(Xc)は、例えば、前記領域(X)の5’末端から3’末端の全領域に相補的な塩基配列からなることを意味し、すなわち、前記領域(Xc)と前記領域(X)とが、同じ塩基長であり、且つ、前記領域(Xc)の全ての塩基が、前記領域(X)の全ての塩基と相補的であることを意味する。
【0062】
また、前記領域(Xc)は、例えば、前記領域(X)の部分領域に相補的でもよい。この場合、前記領域(Xc)は、例えば、前記領域(X)の部分領域に相補的な塩基配列からなることを意味し、すなわち、前記領域(Xc)は、前記領域(X)よりも、1塩基以上短い塩基長の塩基配列からなり、前記領域(Xc)の全ての塩基が、前記領域(X)の前記部分領域の全ての塩基と相補的であることを意味する。前記領域(X)の前記部分領域は、例えば、前記領域(X)における、前記領域(Xc)側の末端の塩基(1番目の塩基)から連続する塩基配列からなる領域であることが好ましい。
【0063】
前記第1のssPN分子において、前記領域(X)の塩基数(X)と前記領域(Xc)の塩基数(Xc)との関係は、例えば、下記(3)又は(5)の条件を満たし、前者の場合、具体的には、例えば、下記(11)の条件を満たす。
X>Xc ・・・(3)
X-Xc=1~10、好ましくは1、2又は3、
より好ましくは1又は2 ・・・(11)
X=Xc ・・・(5)
前記領域(X)及び/又は前記領域(Xc)が前記発現抑制配列を含む場合、前記領域は、例えば、前記発現抑制配列のみから構成される領域でもよいし、前記発現抑制配列を含む領域でもよい。
【0064】
前記発現抑制配列の塩基数は、例えば、15~30塩基であり、好ましくは、19~25塩基、より好ましくは19~23塩基であり、さらに好ましくは21、22、23塩基であり、特に好ましくは23塩基である。前記発現抑制配列を含む領域は、例えば、前記発現抑制配列の5’側及び/又は3’側に、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列の塩基数は、例えば、1~31塩基であり、好ましくは、1~21塩基であり、より好ましくは、1~11塩基である。
【0065】
前記領域(X)の塩基数は、特に制限されない。前記領域(X)が、前記発現抑制配列を含む場合、その下限は、例えば、19塩基である。その上限は、例えば、50塩基であり、好ましくは40塩基であり、より好ましくは30塩基であり、さらに好ましくは25塩基である。前記領域(X)の塩基数の具体例は、例えば、19~50塩基であり、好ましくは、19~30塩基、より好ましくは19~25塩基、さらに好ましくは21、22、23塩基であり、特に好ましくは23塩基である。
【0066】
前記領域(Xc)の塩基数は、特に制限されない。その下限は、例えば、19塩基であり、好ましくは20塩基であり、より好ましくは21塩基である。その上限は、例えば、50塩基であり、好ましくは40塩基であり、より好ましくは30塩基であり、さらに好ましくは25塩基である。前記領域(Xc)の塩基数の具体例は、例えば、19~50塩基であり、好ましくは、19~30塩基、より好ましくは19~25塩基、さらに好ましくは21、22、23塩基であり、特に好ましくは21塩基である。
【0067】
前記第1のssPN分子において、前記リンカー領域(Lx)の長さは、特に制限されない。前記リンカー領域(Lx)は、例えば、前記領域(X)と前記領域(Xc)とが二重鎖を形成可能な長さであることが好ましい。前記リンカー領域(Lx)が、前記非ヌクレオチド残基の他に、前記ヌクレオチド残基を含む場合、前記リンカー領域(Lx)の塩基数は、その下限が、例えば、1塩基であり、好ましくは2塩基であり、より好ましくは3塩基であり、その上限が、例えば、100塩基であり、好ましくは80塩基であり、より好ましくは50塩基である。前記リンカー領域(Lx)の塩基数の具体例は、1~100塩基、2~80塩基、3~50塩基である。前記リンカー領域(Lx)、それ自体の領域内部において、自己アニーリングを生じない構造であることが好ましい。
【0068】
前記第1のssPN分子の全長は、特に制限されない。前記第1のssPN分子において、前記塩基数の合計(全長の塩基数)は、下限が、例えば、38塩基であり、好ましくは42塩基であり、より好ましくは44塩基であり、さらに好ましくは48塩基であり、その上限は、例えば、300塩基であり、好ましくは200塩基であり、より好ましくは150塩基であり、さらに好ましくは100塩基であり、特に好ましくは80塩基である。前記第1のssPN分子の全長の塩基数の合計の具体例は、38~300塩基、42~200塩基、44~150塩基、48~100塩基、48~80塩基である。前記第1のssPN分子において、前記リンカー領域(Lx)を除く塩基数の合計は、下限が、例えば、38塩基であり、好ましくは42塩基であり、さらに好ましくは44 塩基であり、上限が、例えば、300塩基であり、好ましくは200塩基であり、より好ましくは150塩基であり、さらに好ましくは100塩基であり、特に好ましくは80塩基である。前記リンカー領域(Lx)を除く塩基数の合計の具体例は、38~300塩基、42~200塩基、42~150塩基、44~100塩基、44~80塩基である。
【0069】
NEK6遺伝子の発現を抑制する第1のssPN分子の具体例として、以下の一本鎖核酸分子をあげることができる。
KB-001
5’-GAGGGAGUUCCAACAACCUCUCC-Lx-GGAGAGGUUGUUGGAACUCCCUCCA-3’(配列番号31)
KB-002
5’-CGAGGCAGGACUGUGUCAAGGCC-Lx-GGCCUUGACACAGUCCUGCCUCGCC-3’(配列番号32)
KB-003
5’-CGUGGAGCACAUGCAUUCACGCC-Lx-GGCGUGAAUGCAUGUGCUCCACGGC-3’(配列番号33)
KB-004
5’-GAUAAGAUGAAUCUCUUCUCCCC-Lx-GGGGAGAAGAGAUUCAUCUUAUCUC-3’(配列番号34)
KB-005
5’-CAGAGACCUGACAUCGGAUACCC-Lx-GGGUAUCCGAUGUCAGGUCUCUGGU-3’(配列番号35)
KB-006
5’-GGAGAUAAGAUGAAUCUCUUCCC-Lx-GGGAAGAGAUUCAUCUUAUCUCCAU-3’(配列番号46)
KB-007
5’-CUAUGGAGAUAAGAUGAAUCUCC-Lx-GGAGAUUCAUCUUAUCUCCAUAGAA-3’(配列番号47)
KB-008
5’-GCGGACUUCCAGAUCGAAAAGCC-Lx-GGCUUUUCGAUCUGGAAGUCCGCCA-3’(配列番号48)
KB-009
5’-CGGACUUCCAGAUCGAAAAGACC-Lx-GGUCUUUUCGAUCUGGAAGUCCGCC-3’(配列番号49)
KB-010
5’-GACUUCCAGAUCGAAAAGAAGCC-Lx-GGCUUCUUUUCGAUCUGGAAGUCCG-3’(配列番号50)
KB-011
5’-GACUCGUUUAUCGAAGACAACCC-Lx-GGGUUGUCUUCGAUAAACGAGUCCA-3’(配列番号61)
【0070】
式中、Lxは、リンカー領域Lxであり、下記構造式のL-プロリンジアミドアミダイトを示す。
【0071】
【化5】
【0072】
また、好ましい第1のssPN分子としては、配列番号1~5から選ばれるNEK6遺伝子の発現を抑制する配列を含み、領域(X)、リンカー領域(Lx)及び領域(Xc)のみからなり、5’側から3’側にかけて、前記領域(Xc)、前記リンカー領域(Lx)及び前記領域(X)の順で配置され、
前記リンカー領域(Lx)が、ピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド構造を有し、
かつ前記領域(X)が、上記発現抑制配列を含む一本鎖核酸分子をあげることができる。
【0073】
さらに好ましくは、前記領域(Xc)が、前記領域(X)の全領域又は部分領域に完全に相補的な上記一本鎖核酸である。特に好ましくは、前記領域(X) が、配列番号11~25からなる群より選ばれる配列を含む上記一本鎖核酸分子である。
【0074】
【表2】
【0075】
(ii)第2のssPN分子
前記第2のssPN分子は、例えば、前記領域(X)、前記リンカー領域(Lx)及び前記領域(Xc)の他に、さらに、領域(Y)及び前記領域(Y)に相補的な領域(Yc)を有する分子である。前記第2のssPN分子において、前記領域(X)と前記領域(Y)とが連結して、内部領域(Z)を形成している。なお、特に示さない限り、前記第2のssPN分子は、前記第1のssPN分子の記載を援用できる。
【0076】
前記第2のssPN分子は、例えば、5’側から3’側にかけて、前記領域(Xc)、前記リンカー領域(Lx)、前記領域(X)、前記領域(Y)及び前記領域(Yc)を、前記順序で有してもよい。この場合、前記領域(Xc)を、5’側領域(Xc)、前記内部領域(Z)中の前記領域(X)を、内部5’側領域(X)、前記内部領域(Z)中の前記領域(Y)を、内部3’領域(Y)、前記領域(Yc)を、3’側領域(Yc)ともいう。また、前記第2のssPN分子は、例えば、3’側から5’側にかけて、前記領域(Xc)、前記リンカー領域(Lx)、前記領域(X)、前記領域(Y)及び前記領域(Yc)を、前記順序で有してもよい。この場合、前記領域(Xc)を、3’側領域(Xc)、前記内部領域(Z)中の前記領域(X)を、内部3’側領域(X)、前記内部領域(Z)中の前記領域(Y)を、内部5’領域(Y)、前記領域(Yc)を、5’側領域(Yc)ともいう。
【0077】
前記内部領域(Z)は、例えば、前記領域(X)と前記領域(Y)とが連結されている。前記領域(X)と前記領域(Y)は、例えば、直接的に連結され、その間に介在配列を有していない。前記内部領域(Z)は、前記領域(Xc)及び前記領域(Yc)との配列関係を示すために、「前記領域(X)と前記領域(Y)が連結して構成される」と定義するものであって、前記内部領域(Z)において、前記領域(X)と前記領域(Y)とが、前記ssPN分子の使用において、別個の独立した領域であることを限定するものではない。すなわち、例えば、前記内部領域(Z)が、前記発現抑制配列を有する場合、前記内部領域(Z)において、前記領域(X)と前記領域(Y)とにわたって、前記発現抑制配列が配置されてもよい。
【0078】
前記第2のssPN分子において、前記領域(Xc)は、前記領域(X)に相補的である。ここで、前記領域(Xc)は、前記領域(X)の全領域又はその部分領域に対して相補的な配列を有していればよく、好ましくは、前記領域(X)の全領域又はその部分領域に相補的な配列を含む、又は、前記相補的な配列からなる。前記領域(Xc)は、前記領域(X)の相補的な前記全領域又は相補的な前記部分領域に対して、例えば、相補的でもよいし、1もしくは数塩基が非相補的であってもよいが、相補的であることが好ましい。前記1塩基若しくは数塩基は、例えば、1~3塩基、好ましくは1塩基又は2塩基である。
【0079】
前記第2のssPN分子において、前記領域(Yc)は、前記領域(Y)に相補的である。ここで、前記領域(Yc)は、前記領域(Y)の全領域又はその部分領域に相補的な配列を有していればよく、好ましくは、前記領域(Y)の全領域又はその部分領域に対して相補的な配列を含む、又は、前記相補的な配列からなる。前記領域(Yc)は、前記領域(Y)の相補的な前記全領域又は相補的な前記部分領域に対して、例えば、相補的でもよいし、1もしくは数塩基が非相補的であってもよいが、相補的であることが好ましい。前記1塩基若しくは数塩基は、例えば、1~3塩基、好ましくは1塩基又は2塩基である。
【0080】
前記第2のssPN分子において、前記発現抑制配列は、例えば、前記領域(X)と前記領域(Y)とから形成される前記内部領域(Z)及び前記領域(Xc)の少なくとも一つに含まれ、さらに、前記領域(Yc)に含まれてもよい。好ましくは、前記内部領域(Z)に前記発現抑制配列が含まれるssPN分子である。前記内部領域(Z)が前記発現抑制配列を有する場合、例えば、前記領域(X)及び前記領域(Y)のいずれに前記発現抑制配列を有してもよく、また、前記領域(X)と前記領域(Y)とにわたって、前記発現抑制配列を有してもよい。前記第2のssPN分子は、前記発現抑制配列を、例えば、1つ有してもよいし、2つ以上有してもよい。
【0081】
前記第2のssPN分子が、2つ以上の前記発現抑制配列を有する場合、各発現抑制配列の配置箇所は、特に制限されず、前記内部領域(Z)及び前記領域(Xc)のいずれか一方でもよいし、前記内部領域(Z)及び前記領域(Xc)のいずれか一方と、さらに他の異なる領域であってもよい。
【0082】
前記第2のssPN分子において、前記領域(Yc)と前記領域(Y)とは、例えば、直接連結してもよいし、間接的に連結してもよい。前者の場合、直接的な連結は、例えば、ホスホジエステル結合による連結等があげられる。後者の場合、例えば、前記領域(Yc)と前記領域(Y)との間に、リンカー領域(Ly)を有し、前記リンカー領域(Ly)を介して、前記領域(Yc)と前記領域(Y)とが連結している形態等があげられる。
【0083】
前記第2のssPN分子が前記リンカー領域(Ly)を有する場合、前記リンカー領域(Ly)は、例えば、前記ヌクレオチド残基からなるリンカーでもよいし、前述した、ピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド構造を有するリンカーでもよい。後者の場合、前記リンカー領域(Ly)は、例えば、前記式(I)で表わすことができ、前記リンカー領域(Lx)における前記式(I)の説明を全て援用できる。
【0084】
前記領域(Yc)及び前記領域(Y)は、例えば、それぞれ、-OR-又は-OR-を介して、前記リンカー領域(Ly)に結合する。ここで、R及びRは、前述のリンカー領域(Lx)と同様に、存在しても存在しなくてもよい。
【0085】
前記領域(Xc)及び前記領域(X)、ならびに、前記領域(Yc)及び前記(Y)と、前記-OR-及び-OR-との結合の組合せは、特に制限されず、例えば、以下のいずれかの条件があげられる。
条件(1)
前記領域(Xc)は、-OR-を介して、前記領域(X)は、-OR-を介して、前記式(I)の構造と結合し、
前記領域(Yc)は、-OR-を介して、前記領域(Y)は、-OR-を介して、前記式(I)の構造と結合する。
条件(2)
前記領域(Xc)は、-OR-を介して、前記領域(X)は、-OR-を介して、前記式(I)の構造と結合し、
前記領域(Yc)は、-OR-を介して、前記領域(Y)は、-OR-を介して、前記式(I)の構造と結合する。
条件(3)
前記領域(Xc)は、-OR-を介して、前記領域(X)は、-OR-を介して、前記式(I)の構造と結合し、
前記領域(Yc)は、-OR-を介して、前記領域(Y)は、-OR-を介して、前記式(I)の構造と結合する。
条件(4)
前記領域(Xc)は、-OR-を介して、前記領域(X)は、-OR-を介して、前記式(I)の構造と結合し、
前記領域(Yc)は、-OR-を介して、前記領域(Y)は、-OR-を介して、前記式(I)の構造と結合する。
【0086】
前記第2のssPN分子について、前記リンカー領域(Ly)を有するssPN分子の一例を、図3の模式図に従って説明する。図3(A)は、一例として、前記ssPN分子について、5’側から3’側に向かって、各領域の順序の概略を示す模式図であり、図3(B)は、前記ssPN分子が、前記分子内において二重鎖を形成している状態を示す模式図である。図3(B)に示すように、前記ssPN分子は、前記領域(Xc)と前記領域(X)との間、前記領域(Y)と前記領域(Yc)との間で、二重鎖が形成され、前記Lx領域及び前記Ly領域が、その長さに応じてループ構造をとる。図3は、あくまでも、各領域の連結順番及び二重鎖を形成する各領域の位置関係を示すものであり、例えば、各領域の長さ、リンカー領域の形状等は、これに制限されない。また、図3は、前記領域(Xc)を5’側に示したが、これには制限されず、前記領域(Xc)が、3’側に位置してもよい。
【0087】
前記第2のssPN分子において、前記領域(Xc)、前記領域(X)、前記領域(Y)及び前記領域(Yc)の塩基数は、特に制限されない。各領域の長さを以下に例示するが、本発明は、これには制限されない。
【0088】
前記領域(Xc)は、例えば、前記領域(X)の全領域に相補的でもよい。この場合、前記領域(Xc)は、例えば、前記領域(X)と同じ塩基長であり、前記領域(X)の全領域に相補的な塩基配列からなることが好ましい。前記領域(Xc)は、より好ましくは、前記領域(X)と同じ塩基長であり、且つ、前記領域(Xc)の全ての塩基が、前記領域(X)の全ての塩基と相補的である。なお、これには制限されず、例えば、1もしくは数塩基が非相補的であってもよい。
【0089】
また、前記領域(Xc)は、例えば、前記領域(X)の部分領域に相補的でもよい。この場合、前記領域(Xc)は、例えば、前記領域(X)の部分領域と同じ塩基長であり、すなわち、前記領域(X)よりも、1塩基以上短い塩基長の塩基配列からなることが好ましい。前記領域(Xc)は、より好ましくは、前記領域(X)の前記部分領域と同じ塩基長であり、且つ、前記領域(Xc)の全ての塩基が、前記領域(X)の前記部分領域の全ての塩基と相補的である。前記領域(X)の前記部分領域は、例えば、前記領域(X)における、前記領域(Xc)側の末端の塩基(1番目の塩基)から連続する塩基配列からなる領域であることが好ましい。
【0090】
前記領域(Yc)は、例えば、前記領域(Y)の全領域に相補的でもよい。この場合、前記領域(Yc)は、例えば、前記領域(Y)と同じ塩基長であり、前記領域(Y)の全領域に相補的な塩基配列からなることが好ましい。前記領域(Yc)は、より好ましくは、前記領域(Y)と同じ塩基長であり、且つ、前記領域(Yc)の全ての塩基が、前記領域(Y)の全ての塩基と相補的である。なお、これには制限されず、例えば、1もしくは数塩基が非相補的であってもよい。
【0091】
また、前記領域(Yc)は、例えば、前記領域(Y)の部分領域に相補的でもよい。この場合、前記領域(Yc)は、例えば、前記領域(Y)の部分領域と同じ塩基長であり、すなわち、前記領域(Y)よりも、1塩基以上短い塩基長の塩基配列からなることが好ましい。前記領域(Yc)は、より好ましくは、前記領域(Y)の前記部分領域と同じ塩基長であり、且つ、前記領域(Yc)の全ての塩基が、前記領域(Y)の前記部分領域の全ての塩基と相補的である。前記領域(Y)の前記部分領域は、例えば、前記領域(Y)における、前記領域(Yc)側の末端の塩基(1番目の塩基)から連続する塩基配列からなる領域であることが好ましい。
【0092】
前記第2のssPN分子において、前記内部領域(Z)の塩基数(Z)と、前記領域(X)の塩基数(X)及び前記領域(Y)の塩基数(Y)との関係、前記内部領域(Z)の塩基数(Z)と、前記領域(Xc)の塩基数(Xc)及び前記領域(Yc)の塩基数(Yc)との関係は、例えば、下記式(1)及び(2)の条件を満たす。
Z=X+Y ・・・(1)
Z≧Xc+Yc ・・・(2)
前記第2のssPN分子において、前記領域(X)の塩基数(X)と前記領域(Y)の塩基数(Y)の関係は、特に制限されず、例えば、下記式のいずれの条件を満たす。
X=Y ・・・(19)
X<Y ・・・(20)
X>Y ・・・(21)
第2のssPN分子において、前記領域(X)の塩基数(X)、前記領域(Xc)の塩基数(Xc)、前記領域(Y)の塩基数(Y)及び前記領域(Yc)の塩基数(Yc)の関係は、例えば、下記(a)~(d)のいずれかの条件を満たす。
(a)下記式(3)及び(4)の条件を満たす。
X>Xc ・・・(3)
Y=Yc ・・・(4)
(b)下記式(5)及び(6)の条件を満たす。
X=Xc ・・・(5)
Y>Yc ・・・(6)
(c)下記式(7)及び(8)の条件を満たす。
X>Xc ・・・(7)
Y>Yc ・・・(8)
(d)下記式(9)及び(10)の条件を満たす。
X=Xc ・・・(9)
Y=Yc ・・・(10)
【0093】
前記(a)~(d)において、前記領域(X)の塩基数(X)と前記領域(Xc)の塩基数(Xc)の差、前記領域(Y)の塩基数(Y)と前記領域(Yc)の塩基数(Yc)の差は、例えば、下記条件を満たすことが好ましい。
(a)下記式(11)及び(12)の条件を満たす。
X-Xc=1~10、好ましくは1、2、3又は4、
より好ましくは1、2又は3 ・・・(11)
Y-Yc=0 ・・・(12)
(b)下記式(13)及び(14)の条件を満たす。
X-Xc=0 ・・・(13)
Y-Yc=1~10、好ましくは1、2、3又は4、
より好ましくは1、2又は3 ・・・(14)
(c)下記式(15)及び(16)の条件を満たす。
X-Xc=1~10、好ましくは、1、2又は3、
より好ましくは1又は2 ・・・(15)
Y-Yc=1~10、好ましくは、1、2又は3、
より好ましくは1又は2 ・・・(16)
(d)下記式(17)及び(18)の条件を満たす。
X-Xc=0 ・・・(17)
Y-Yc=0 ・・・(18)
【0094】
前記(a)~(d)の第2のssPN分子について、それぞれの構造の一例を、図4の模式図に従って説明する。図4は、前記リンカー領域(Lx)及び前記リンカー領域(Ly)を含むssPNであり、(A)は、前記(a)のssPN分子、(B)は、前記(b)のssPN分子、(C)は、前記(c)のssPN分子、(D)は、前記(d)のssPN分子の例である。図4において、点線は、自己アニーリングにより二重鎖を形成している状態を示す。図4のssPN分子は、前記領域(X)の塩基数(X)と前記領域(Y)の塩基数(Y)を、前記式(20)の「X<Y」と表わしたが、これには制限されず、前記式(19)の「X=Y」でも、前記式(21)の「X>Y」でもよい。また、図4は、あくまでも前記領域(X)と前記領域(Xc)との関係、前記領域(Y)と前記領域(Yc)との関係を示す模式図であり、例えば、各領域の長さ、形状、リンカー領域(Ly)の有無等は、これには制限されない。
【0095】
前記(a)~(c)のssPN分子は、例えば、前記領域(Xc)と前記領域(X)、及び、前記領域(Yc)と前記領域(Y)が、それぞれ二重鎖を形成することによって、前記内部領域(Z)において、前記領域(Xc)及び前記領域(Yc)のいずれともアライメントしない塩基を有する構造であり、二重鎖を形成しない塩基を有する構造ともいえる。前記内部領域(Z)において、前記アライメントしない塩基(二重鎖を形成しない塩基ともいう)を、以下、「フリー塩基」という。図4において、前記フリー塩基の領域を、「F」で示す。前記領域(F)の塩基数は、特に制限されない。前記領域(F)の塩基数(F)は、例えば、前記(a)のssPN分子の場合、「X-Xc」の塩基数であり、前記(b)のssPN分子の場合、「Y-Yc」の塩基数であり、前記(c)のssPN分子の場合、「X-Xc」の塩基数と「Y-Yc」の塩基数との合計数である。
【0096】
他方、前記(d)のssPN分子は、例えば、前記内部領域(Z)の全領域が、前記領域(Xc)及び前記領域(Yc)とアライメントする構造であり、前記内部領域(Z)の全領域が二重鎖を形成する構造ともいえる。なお、前記(d)のssPN分子において、前記領域(Xc)の5’末端と前記領域(Yc)の3’末端は、未連結である。
【0097】
前記領域(Xc)、前記領域(Yc)、及び前記内部領域(Z)における前記フリー塩基(F)の塩基数の合計は、前記内部領域(Z)の塩基数となる。このため、前記領域(Xc)及び前記領域(Yc)の長さは、例えば、前記内部領域(Z)の長さ、前記フリー塩基の数及びその位置に応じて、適宜決定できる。
【0098】
前記内部領域(Z)の塩基数は、例えば、19塩基以上である。前記塩基数の下限は、例えば、19塩基であり、好ましくは20塩基であり、より好ましくは21塩基である。前記塩基数の上限は、例えば、50塩基であり、好ましくは40塩基であり、より好ましくは30塩基である。前記内部領域(Z)の塩基数の具体例は、例えば、19~50塩基、20~40塩基、21~30塩基、21~25塩基である。
【0099】
前記内部領域(Z)が前記発現抑制配列を含む場合、前記内部領域(Z)は、例えば、前記発現抑制配列のみから構成される領域でもよいし、前記発現抑制配列を含む領域でもよい。前記発現抑制配列の塩基数は、例えば、15~30塩基であり、好ましくは、19~25塩基であり、より好ましくは19~23塩基であり、さらに好ましくは、21、22、23塩基であり、特に好ましくは23塩基である。前記内部領域(Z)が前記発現抑制配列を含む場合、前記発現抑制配列の5’側及び/又は3’側に、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列の塩基数は、例えば、1~31塩基であり、好ましくは、1~21塩基であり、より好ましくは、1~11塩基であり、さらに好ましくは、1~7塩基であり、ことさらに好ましくは1~3塩基である。
【0100】
前記領域(Xc)の塩基数は、例えば、1~49塩基であり、好ましくは1~39塩基であり、より好ましくは1~29塩基である。 前記領域(Yc)の塩基数は、例えば、1~49塩基であり、好ましくは1~39塩基であり、より好ましくは1~29塩基である。前記領域(Xc)及び(Yc)のいずれか一方の塩基数は、1~4塩基であることが好ましく、さらに好ましくは1塩基、2塩基、3塩基である。
【0101】
前記内部領域(Z)、前記領域(Xc)及び前記領域(Yc)の塩基数は、例えば、前記式(2)の「Z≧Xc+Yc」で表わすことができる。具体例として、「Xc+Yc」の塩基数は、例えば、前記内部領域(Z)と同じ、又は、前記内部領域(Z)より小さい。後者の場合、「Z-(Xc+Yc)」は、例えば、1~10、好ましくは1~4、より好ましくは1、2又は3である。前記「Z-(Xc+Yc)」は、例えば、前記内部領域(Z)におけるフリーの領域(F)の塩基数(F)に相当する。
【0102】
前記第2のssPN分子において、前記リンカー領域(Lx)及び前記リンカー領域(Ly)の長さは、特に制限されない。前記リンカー領域(Lx)は、前述の通りである。前記リンカー領域(Ly)の構成単位が塩基を含む場合、前記リンカー領域(Ly)の塩基数は、その下限が、例えば、1塩基であり、好ましくは2塩基であり、より好ましくは3塩基であり、その上限が、例えば、100塩基であり、好ましくは80塩基であり、より好ましくは50塩基である。前記各リンカー領域の塩基数は、具体例として、例えば、1~50塩基、1~30塩基、1~20塩基、1~10塩基、1~7塩基、1~4塩基等が例示できるが、これには制限されない。前記リンカー領域(Ly)は、それ自体の領域内部において、自己アニーリングを生じない構造であることが好ましい。
【0103】
前記リンカー領域(Ly)は、例えば、前記リンカー領域(Lx)と同じでもよいし、異なってもよい。
【0104】
前記第2のssPN分子の全長は、特に制限されない。前記第2のssPN分子において、前記塩基数の合計(全長の塩基数)は、下限が、例えば、38塩基であり、好ましくは42塩基であり、より好ましくは44塩基であり、さらに好ましくは48塩基であり、特に好ましくは50塩基であり、その上限は、例えば、300塩基であり、好ましくは200塩基であり、より好ましくは150塩基であり、さらに好ましくは100塩基であり、特に好ましくは80塩基である。前記第2のssPN分子の全長の塩基数の合計の具体例は、38~300塩基、42~200塩基、44~150塩基、48~100塩基、50~80塩基である。前記第2のssPN分子において、前記リンカー領域(Lx)及びリンカー領域(Ly)を除く塩基数の合計は、下限が、例えば、38塩基であり、好ましくは42塩基であり、より好ましくは44塩基であり、さらに好ましくは48塩基であり、特に好ましくは50塩基であり、上限が、例えば、300塩基であり、好ましくは200塩基であり、より好ましくは150塩基であり、さらに好ましくは100塩基であり、ことさらに好ましくは80塩基であり、特に好ましくは60塩基である。前記リンカー領域(Lx)を除く塩基数の合計の具体例は、38~300塩基、42~200塩基、44~150塩基、48~100塩基、48~80塩基、50~60塩基である。
【0105】
ssPN分子は、前記リンカー領域(Lx)が、前記非ヌクレオチド構造を有していればよく、その他の構成単位は、特に制限されない。前記構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基等があげられる。前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基及びデオキシリボヌクレオチド残基等があげられる。前記ヌクレオチド残基は、例えば、修飾されていない非修飾ヌクレオチド残基及び修飾された修飾ヌクレオチド残基等があげられる。ssPN分子は、例えば、前記修飾ヌクレオチド残基を含むことによって、ヌクレアーゼ耐性を向上し、安定性を向上可能である。また、ssPN分子は、例えば、前記ヌクレオチド残基の他に、さらに、非ヌクレオチド残基を含んでもよい。
【0106】
前記領域(Xc)、前記領域(X)、前記領域(Y)及び前記領域(Yc)の構成単位は、それぞれ、前記ヌクレオチド残基が好ましい。前記各領域は、例えば、下記(1)~(3)の残基で構成される。
(1)非修飾ヌクレオチド残基
(2)修飾ヌクレオチド残基
(3)非修飾ヌクレオチド残基及び修飾ヌクレオチド残基
前記リンカー領域(Lx)は、例えば、前記非ヌクレオチド残基のみから構成されてもよいし、前記非ヌクレオチドと前記ヌクレオチド残基から構成されてもよい。前記リンカー領域(Lx)は、例えば、下記(4)~(7)の残基で構成される。
(4)非ヌクレオチド残基
(5)非ヌクレオチド残基及び非修飾ヌクレオチド残基
(6)非ヌクレオチド残基及び修飾ヌクレオチド残基
(7)非ヌクレオチド残基、非修飾ヌクレオチド残基及び修飾ヌクレオチド残基
【0107】
前記リンカー領域(Ly)の構成単位は、特に制限されず、例えば、前記ヌクレオチド残基及び前記非ヌクレオチド残基等があげられる。前記リンカー領域は、例えば、前記ヌクレオチド残基のみから構成されてもよいし、前記非ヌクレオチド残基のみから構成されてもよいし、前記ヌクレオチド残基と前記非ヌクレオチド残基から構成されてもよい。前記リンカー領域は、例えば、下記(1)~(7)の残基で構成される。
(1)非修飾ヌクレオチド残基
(2)修飾ヌクレオチド残基
(3)非修飾ヌクレオチド残基及び修飾ヌクレオチド残基
(4)非ヌクレオチド残基
(5)非ヌクレオチド残基及び非修飾ヌクレオチド残基
(6)非ヌクレオチド残基及び修飾ヌクレオチド残基
(7)非ヌクレオチド残基、非修飾ヌクレオチド残基及び修飾ヌクレオチド残基
【0108】
ssPN分子は、例えば、前記リンカー領域(Lx)を除き、前記ヌクレオチド残基のみから構成される分子、前記ヌクレオチド残基の他に前記非ヌクレオチド残基を含む分子等があげられる。ssPN分子において、前記ヌクレオチド残基は、例えば、前記非修飾ヌクレオチド残基のみでもよいし、前記修飾ヌクレオチド残基のみでもよいし、前記非修飾ヌクレオチド残基及び前記修飾ヌクレオチド残基の両方であってもよい。前記ssPN分子が、前記非修飾ヌクレオチド残基と前記修飾ヌクレオチド残基を含む場合、前記修飾ヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、最も好ましくは1又は2個である。ssPN分子が、前記非ヌクレオチド残基を含む場合、前記非ヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1又は2個である。
【0109】
ssPN分子において、前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基が好ましい。この場合、本発明のssPN分子は、例えば、「P-ssRNA分子」ともいう。前記P-ssRNA分子は、例えば、前記リンカー領域(Lx)を除き、前記リボヌクレオチド残基のみから構成される分子、前記リボヌクレオチド残基の他に前記非ヌクレオチド残基を含む分子等があげられる。前記P-ssRNA分子において、前記リボヌクレオチド残基は、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基のみでもよいし、前記修飾リボヌクレオチド残基のみでもよいし、前記非修飾リボヌクレオチド残基及び前記修飾リボヌクレオチド残基の両方を含んでもよい。
【0110】
前記P-ssRNA分子が、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記修飾リボヌクレオチド残基を含む場合、前記修飾リボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、最も好ましくは1又は2個である。前記非修飾リボヌクレオチド残基に対する前記修飾リボヌクレオチド残基は、例えば、リボース残基がデオキシリボース残基に置換された前記デオキシリボヌクレオチド残基等があげられる。前記P-ssRNA分子が、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記デオキシリボヌクレオチド残基を含む場合、前記デオキシリボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、最も好ましくは1又は2個である。
【0111】
NEK6遺伝子の発現を抑制する好ましいssPN分子として、配列番号1~5から選ばれるNEK6遺伝子の発現抑制配列を含み、領域(Xc)、リンカー領域(Lx)、領域(X)、領域(Y)、リンカー領域(Ly)及び領域(Yc)を、5’側から3’側にかけてこの順序で含み、
前記領域(X)と前記領域(Y)とが連結して、内部領域(Z)を形成し、
前記領域(Xc)が、前記領域(X)と相補的であり、
前記領域(Yc)が、前記領域(Y)と相補的であり、
かつ前記リンカー領域(Lx)及びリンカー領域(Ly)が、ピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド構造を有し、
前記内部領域(Z)が、上記発現抑制配列を含む一本鎖核酸分子をあげることができる。
【0112】
(4)ssNc分子
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸の1つであるssNc分子を説明する。
ssNc分子は、WO2012/05368に開示される一本鎖RNA核酸分子を意味し、具体的には以下の通りである。
ssNc分子は、標的遺伝子の発現を抑制する発現抑制配列を含む一本鎖核酸分子であって、
5’側から3’側にかけて、5’側領域(Xc)、内部領域(Z)及び3’側領域(Yc)を、前記順序で含み、
前記内部領域(Z)が、内部5’側領域(X)及び内部3’側領域(Y)が連結して構成され、
前記5’側領域(Xc)が、前記内部5’側領域(X)と相補的であり、
前記3’側領域(Yc)が、前記内部3’側領域(Y)と相補的であり、
前記内部領域(Z)、前記5’側領域(Xc)及び前記3’側領域(Yc)の少なくとも一つが、前記発現抑制配列を含むことを特徴とする。
【0113】
ssNc分子は、その5’末端と3’末端とが未連結であり、線状一本鎖核酸分子ということもできる。本発明のssNc分子は、例えば、前記内部領域(Z)において、前記内部5’領域(X)と前記内部3’領域(Y)が、直接的に連結されている。
【0114】
ssNc分子において、前記5’側領域(Xc)は、前記内部5’側領域(X)と相補的であり、前記3’側領域(Yc)は、前記内部3’側領域(Y)と相補的である。このため、5’側において、前記領域(Xc)が前記領域(X)に向かって折り返し、前記領域(Xc)と前記領域(X)とが、自己アニーリングによって、二重鎖を形成可能であり、また、3’側において、前記領域(Yc)が前記領域(Y)に向かって折り返し、前記領域(Yc)と前記領域(Y)とが、自己アニーリングによって、二重鎖を形成可能である。
【0115】
ssNc分子は、このように、分子内で二重鎖を形成可能であり、例えば、従来のRNA干渉に使用するsiRNAのように、分離した2本の一本鎖RNAがアニーリングによって二本鎖RNAを形成するものとは、明らかに異なる構造である。
【0116】
ssNc分子における前記発現抑制配列は、ssPN分子の説明を援用することができる。
【0117】
ssNc分子によるNEK6遺伝子の発現の抑制は、例えば、前記内部領域(Z)、前記5’側領域(Xc)及び前記3’側領域(Yc)の少なくとも一つに前記発現抑制配列を配置した構造をとることで、RNA干渉又はRNA干渉に類似する現象(RNA干渉様の現象)が生じることによると推測される。なお、ssNc分子のメカニズムもssPN分子のメカニズム同様限定されるものではない。ssNc分子は、例えば、いわゆるsiRNAのように、二本の一本鎖RNAからなるdsRNAとして、細胞等へ導入するものではなく、また、細胞内において、前記発現抑制配列の切り出しは、必ずしも必須ではない。このため、ssNc分子は、例えば、RNA干渉様の機能を有するということもできる。
【0118】
ssNc分子において、前記発現抑制配列は、前記内部領域(Z)、前記5’側領域(Xc)及び前記3’側領域(Yc)の少なくとも一つに含まれる。ssNc分子は、前記発現抑制配列を、例えば、1つ有してもよいし、2つ以上有してもよい。後者の場合、ssNc分子は、例えば、NEK6遺伝子に対する同じ発現抑制配列を2つ以上有してもよいし、NEK6遺伝子に対する異なる発現抑制配列を2つ以上有してもよい。ssNc分子が、2つ以上の前記発現抑制配列を有する場合、各発現抑制配列の配置箇所は、特に制限されず、前記内部領域(Z)、前記5’側領域(Xc)及び前記3’側領域(Yc)のいずれか一領域でもよいし、異なる領域であってもよい。
【0119】
前記内部領域(Z)は、前記内部5’領域(X)と前記内部3’領域(Y)が連結されている。前記領域(X)と前記領域(Y)は、例えば、直接的に連結され、その間に介在配列を有していない。前記内部領域(Z)は、前記5’側領域(Xc)及び前記3’側領域(Yc)との配列関係を示すために、「前記内部5’側領域(X)と前記内部3’側領域(Y)が連結して構成される」と表わすものであって、前記内部領域(Z)において、前記内部5’側領域(X)と前記内部3’側領域(Y)とが、例えば、前記ssNc分子の使用において、別個の独立した領域であることを限定するものではない。すなわち、例えば、前記内部領域(Z)が、前記発現抑制配列を有する場合、前記内部領域(Z)において、前記領域(X)と前記領域(Y)とにわたって、前記発現抑制配列が配置されてもよい。
【0120】
ssNc分子において、前記5’側領域(Xc)は、前記内部5’側領域(X)に相補的である。ここで、前記領域(Xc)は、前記領域(X)の全領域又はその部分領域に対して相補的な配列を有していればよく、具体的には、例えば、前記領域(X)の全領域又はその部分領域に相補的な配列を含む、又は、前記相補的な配列からなることが好ましい。前記領域(Xc)は、前記領域(X)の相補的な前記全領域又は相補的な前記部分領域に対して、例えば、完全に相補的でもよいし、1もしくは数塩基が非相補的であってもよいが、相補的であることが好ましい。ssNc分子において、前記3’側領域(Yc)は、前記内部3’側領域(Y)に相補的である。ここで、前記領域(Yc)は、前記領域(Y)の全領域又はその部分領域に相補的な配列を有していればよく、具体的には、例えば、前記領域(Y)の全領域又はその部分領域に対して相補的な配列を含む、又は、前記相補的な配列からなることが好ましい。前記領域(Yc)は、前記領域(Y)の相補的な前記全領域又は相補的な前記部分領域に対して、例えば、完全に相補的でもよいし、1もしくは数塩基が非相補的であってもよいが、相補的であることが好ましい。前記1塩基若しくは数塩基は、例えば、1~3塩基、好ましくは1塩基又は2塩基である。
【0121】
ssNc分子において、前記5’側領域(Xc)と前記内部5’側領域(X)とは、例えば、直接連結してもよいし、間接的に連結してもよい。前者の場合、直接的な連結は、例えば、ホスホジエステル結合による連結があげられる。後者の場合、例えば、前記領域(Xc)と前記領域(X)との間に、リンカー領域(Lx)を有し、前記リンカー領域(Lx)を介して、前記領域(Xc)と前記領域(X)とが連結している形態があげられる。
【0122】
ssNc分子において、前記3’側領域(Yc)と前記内部3’側領域(Y)とは、例えば、直接連結してもよいし、間接的に連結してもよい。前者の場合、直接的な連結は、例えば、ホスホジエステル結合による連結があげられる。後者の場合、例えば、前記領域(Yc)と前記領域(Y)との間に、リンカー領域(Ly)を有し、前記リンカー領域(Ly)を介して、前記領域(Yc)と前記領域(Y)とが連結している形態があげられる。
【0123】
ssNc分子は、例えば、前記リンカー領域(Lx)及び前記リンカー領域(Ly)の両方を有してもよいし、いずれか一方を有してもよい。後者の場合として、前記5’側領域(Xc)と前記内部5’側領域(X)との間に前記リンカー領域(Lx)を有し、前記3’側領域(Yc)と前記内部3’側領域(Y)との間に前記リンカー領域(Ly)を有さない、つまり、前記領域(Yc)と前記領域(Y)とが直接連結された形態があげられる。また、後者の場合として、前記3’側領域(Yc)と前記内部3’側領域(Y)との間に前記リンカー領域(Ly)を有し、前記5’側領域(Xc)と前記内部5’側領域(X)との間に前記リンカー領域(Lx)を有さない、つまり、前記領域(Xc)と前記領域(X)とが直接連結された形態があげられる。
【0124】
前記リンカー領域(Lx)及び前記リンカー領域(Ly)は、それぞれ、それ自体の領域内部において、自己アニーリングを生じない構造であることが好ましい。
【0125】
ssNc分子について、前記リンカー領域を有さないssNc分子の一例を、図5の模式図に従って説明する。図5(A)は、前記ssNc分子について、5’側から3’側に向かって、各領域の順序の概略を示す模式図であり、図5(B)は、前記ssNc分子が、前記分子内において二重鎖を形成している状態を示す模式図である。図5(B)に示すように、前記ssNc分子は、前記5’側領域(Xc)が折り返し、前記5’側領域(Xc)と前記内部5’側領域(X)との間で二重鎖が形成され、前記3’側領域(Yc)が折り返し、前記3’側領域(Yc)と前記内部3’側領域(Y)との間で二重鎖が形成される。図5は、あくまでも、各領域の連結順番及び二重鎖を形成する各領域の位置関係を示すものであり、例えば、各領域の長さ等は、これに制限されない。
【0126】
ssNc分子について、前記リンカー領域を有するssNc分子の一例を、図3の模式図に従って説明する。図3(A)は、一例として、前記ssNc分子について、5’側から3’側に向かって、各領域の順序の概略を示す模式図であり、図3(B)は、前記ssNc分子が、前記分子内において二重鎖を形成している状態を示す模式図である。図3(B)に示すように、前記ssNc分子は、前記5’側領域(Xc)と前記内部5’側領域(X)との間、前記内部3’側領域(Y)と前記3’側領域(Yc)との間で、二重鎖が形成され、前記Lx領域及び前記Ly領域が、ループ構造をとる。図3は、あくまでも、各領域の連結順番及び二重鎖を形成する各領域の位置関係を示すものであり、例えば、各領域の長さ等は、これに制限されない。
【0127】
ssNc分子において、前記5’側領域(Xc)、前記内部5’側領域(X)、前記内部3’側領域(Y)及び前記3’側領域(Yc)の塩基数は、特に制限されず、例えば、以下の通りである。
前記5’側領域(Xc)は、例えば、前記内部5’側領域(X)の全領域に相補的でもよい。この場合、前記領域(Xc)は、例えば、前記領域(X)と同じ塩基長であり、前記領域(X)の5’末端から3’末端の全領域に相補的な塩基配列からなることが好ましい。前記領域(Xc)は、より好ましくは、前記領域(X)と同じ塩基長であり、且つ、前記領域(Xc)の全ての塩基が、前記領域(X)の全ての塩基と相補的であることが好ましい。なお、これには制限されず、例えば、1もしくは数塩基が非相補的であってもよい。
【0128】
また、前記5’側領域(Xc)は、例えば、前記内部5’側領域(X)の部分領域に相補的でもよい。この場合、前記領域(Xc)は、例えば、前記領域(X)の部分領域と同じ塩基長であり、すなわち、前記領域(X)よりも、1塩基以上短い塩基長の塩基配列からなることが好ましい。前記領域(Xc)は、より好ましくは、前記領域(X)の前記部分領域と同じ塩基長であり、且つ、前記領域(Xc)の全ての塩基が、前記領域(X)の前記部分領域の全ての塩基と相補的であることが好ましい。前記領域(X)の前記部分領域は、例えば、前記領域(X)における、5’末端の塩基(1番目の塩基)から連続する塩基配列からなる領域(セグメント)であることが好ましい。
【0129】
前記3’側領域(Yc)は、例えば、前記内部3’側領域(Y)の全領域に相補的でもよい。この場合、前記領域(Yc)は、例えば、前記領域(Y)と同じ塩基長であり、前記領域(Y)の5’末端から3’末端の全領域に相補的な塩基配列からなることが好ましい。前記領域(Yc)は、より好ましくは、前記領域(Y)と同じ塩基長であり、且つ、前記領域(Yc)の全ての塩基が、前記領域(Y)の全ての塩基と相補的であることが好ましい。なお、これには制限されず、例えば、1もしくは数塩基が非相補的であってもよい。
【0130】
また、前記3’側領域(Yc)は、例えば、前記内部3’側領域(Y)の部分領域に相補的でもよい。この場合、前記領域(Yc)は、例えば、前記領域(Y)の部分領域と同じ塩基長であり、すなわち、前記領域(Y)よりも、1塩基以上短い塩基長の塩基配列からなることが好ましい。前記領域(Yc)は、より好ましくは、前記領域(Y)の前記部分領域と同じ塩基長であり、且つ、前記領域(Yc)の全ての塩基が、前記領域(Y)の前記部分領域の全ての塩基と相補的であることが好ましい。前記領域(Y)の前記部分領域は、例えば、前記領域(Y)における、3’末端の塩基(1番目の塩基)から連続する塩基配列からなる領域(セグメント)であることが好ましい。
【0131】
ssNc分子において、前記内部領域(Z)の塩基数(Z)と、前記内部5’側領域(X)の塩基数(X)及び前記内部3’側領域(Y)の塩基数(Y)との関係、前記内部領域(Z)の塩基数(Z)と、前記内部5’側領域(Xc)の塩基数(Xc)及び前記5’側領域(Yc)の塩基数(Yc)との関係は、例えば、下記式(1)及び(2)の条件を満たす。
Z=X+Y ・・・(1)
Z≧Xc+Yc ・・・(2)
【0132】
ssNc分子において、前記内部5’側領域(X)の塩基数(X)と前記内部3’側領域(Y)の塩基数(Y)の長さの関係は、特に制限されず、例えば、下記式のいずれの条件を満たしてもよい。
X=Y ・・・(19)
X<Y ・・・(20)
X>Y ・・・(21)
【0133】
ssNc分子において、前記内部5’側領域(X)の塩基数(X)、前記5’側領域(Xc)の塩基数(Xc)、前記内部3’側領域(Y)の塩基数(Y)及び前記3’側領域(Yc)の塩基数(Yc)の関係は、例えば、下記(a)~(d)のいずれかの条件を満たす。
(a)下記式(3)及び(4)の条件を満たす。
X>Xc ・・・(3)
Y=Yc ・・・(4)
(b)下記式(5)及び(6)の条件を満たす。
X=Xc ・・・(5)
Y>Yc ・・・(6)
(c)下記式(7)及び(8)の条件を満たす。
X>Xc ・・・(7)
Y>Yc ・・・(8)
(d)下記式(9)及び(10)の条件を満たす。
X=Xc ・・・(9)
Y=Yc ・・・(10)
【0134】
前記(a)~(d)において、前記内部5’側領域(X)の塩基数(X)と前記5’側領域(Xc)の塩基数(Xc)の差、前記内部3’側領域(Y)の塩基数(Y)と前記3’側領域(Yc)の塩基数(Yc)の差は、例えば、下記条件を満たすことが好ましい。
(a)下記式(11)及び(12)の条件を満たす。
X-Xc=1~10、好ましくは1、2、3又は4、
より好ましくは1、2又は3 ・・・(11)
Y-Yc=0 ・・・(12)
(b)下記式(13)及び(14)の条件を満たす。
X-Xc=0 ・・・(13)
Y-Yc=1~10、好ましくは1、2、3又は4、
より好ましくは1、2又は3 ・・・(14)
(c)下記式(15)及び(16)の条件を満たす。
X-Xc=1~10、好ましくは、1、2又は3、
より好ましくは1又は2 ・・・(15)
Y-Yc=1~10、好ましくは、1、2又は3、
より好ましくは1又は2 ・・・(16)
(d)下記式(17)及び(18)の条件を満たす。
X-Xc=0 ・・・(17)
Y-Yc=0 ・・・(18)
【0135】
前記(a)~(d)のssNc分子について、それぞれの構造の一例を、図4の模式図に従って説明する。図4は、前記リンカー領域(Lx)及び前記リンカー領域(Ly)を含むssNcであり、(A)は、前記(a)のssNc分子、(B)は、前記(b)のssNc分子、(C)は、前記(c)のssNc分子、(D)は、前記(d)のssNc分子の例である。図4において、点線は、自己アニーリングにより二重鎖を形成している状態を示す。図4のssNc分子は、前記内部5’側領域(X)の塩基数(X)と前記内部3’側領域(Y)の塩基数(Y)を、前記式(20)の「X<Y」として表わすが、これには制限されず、前記式(19)の「X=Y」でも、前記式(21)の「X>Y」でもよい。また、図4は、あくまでも、前記内部5’側領域(X)と前記5’側領域(Xc)との関係、前記内部3’側領域(Y)と前記3’側領域(Yc)との関係を示す模式図であり、例えば、各領域の長さ、形状等は、これには制限されず、また、リンカー領域(Lx)及びリンカー領域(Ly)の有無も、これには制限されない。
【0136】
前記(a)~(c)のssNc分子は、例えば、前記5’側領域(Xc)と前記内部5’側領域(X)、及び、前記3’側領域(Yc)と前記内部3’側領域(Y)が、それぞれ二重鎖を形成することによって、前記内部領域(Z)において、前記5’側領域(Xc)及び前記3’側領域(Yc)のいずれともアライメントできない塩基を有する構造であり、二重鎖を形成しない塩基を有する構造ともいえる。前記内部領域(Z)において、前記アライメントできない塩基(二重鎖を形成しない塩基ともいう)を、以下、「フリー塩基」という。図4において、前記フリー塩基の領域を、「F」で示す。前記領域(F)の塩基数は、特に制限されない。前記領域(F)の塩基数(F)は、例えば、前記(a)のssNc分子の場合、「X-Xc」の塩基数であり、前記(b)のssNc分子の場合、「Y-Yc」の塩基数であり、前記(c)のssNc分子の場合、「X-Xc」の塩基数と「Y-Yc」の塩基数との合計数である。
【0137】
他方、前記(d)のssNc分子は、例えば、前記内部領域(Z)の全領域が、前記5’側領域(Xc)及び前記3’側領域(Yc)とアライメントする構造であり、前記内部領域(Z)の全領域が二重鎖を形成する構造ともいえる。なお、前記(d)のssNc分子において、前記5’側領域(Xc)の5’末端と前記3’側領域(Yc)の3’末端は、未連結である。
【0138】
前記5’側領域(Xc)、前記3’側領域(Yc)、及び前記内部領域(Z)における前記フリー塩基(F)の塩基数の合計は、例えば、前記内部領域(Z)の塩基数となる。このため、前記5’側領域(Xc)及び前記3’側領域(Yc)の長さは、例えば、前記内部領域(Z)の長さ、前記フリー塩基の数(F)及びその位置に応じて、適宜決定できる。
【0139】
前記内部領域(Z)の塩基数は、例えば、19塩基以上である。前記塩基数の下限は、例えば、19塩基であり、好ましくは20塩基であり、より好ましくは21塩基である。前記塩基数の上限は、例えば、50塩基であり、好ましくは40塩基であり、より好ましくは30塩基である。前記内部領域(Z)の塩基数の具体例は、例えば、19~50塩基、20~40塩基、21~30塩基、21~23塩基である。
【0140】
前記内部領域(Z)が前記発現抑制配列を含む場合、前記内部領域(Z)は、例えば、前記発現抑制配列のみから構成される領域でもよいし、前記発現抑制配列を含む領域でもよい。前記発現抑制配列の塩基数は、例えば、15~30塩基であり、好ましくは、19~25塩基であり、より好ましくは19~23塩基であり、さらに好ましくは21、22、23塩基であり、特に好ましくは23塩基である。前記内部領域(Z)が前記発現抑制配列を含む場合、前記発現抑制配列の5’側及び/又は3’側に、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列の塩基数は、例えば、1~31塩基であり、好ましくは、1~21塩基であり、より好ましくは、1~11塩基であり、さらに好ましくは、1~7塩基であり、ことさらに好ましくは1~3塩基である。
【0141】
前記5’側領域(Xc)の塩基数は、例えば、1~49塩基であり、好ましくは1~39塩基であり、より好ましくは1~29塩基である。前記3’側領域(Yc)の塩基数は、例えば、1~49塩基であり、好ましくは1~39塩基であり、より好ましくは1~29塩基である。前記5’側領域(Xc)及び3’側領域(Yc)のいずれか一方の塩基数は、1~4塩基であることが好ましく、さらに好ましくは1塩基、2塩基、3塩基である。
【0142】
前記内部領域(Z)、前記5’側領域(Xc)及び前記3’側領域(Yc)の塩基数は、例えば、前記式(2)の「Z≧Xc+Yc」で表わすことができる。具体例として、「Xc+Yc」の塩基数は、例えば、前記内部領域(Z)と同じ、又は、前記内部領域(Z)より小さい。後者の場合、「Z-(Xc+Yc)」は、例えば、1~10、好ましくは1~4、より好ましくは1、2又は3である。前記「Z-(Xc+Yc)」は、例えば、前記内部領域(Z)における前記フリー塩基の領域(F)の塩基数(F)に相当する。
【0143】
ssNc分子において、前記リンカー領域(Lx)及び前記リンカー領域(Ly)の長さは、特に制限されない。前記リンカー領域(Lx)は、例えば、前記内部5’側領域(X)と前記5’側領域(Xc)とが二重鎖を形成可能な長さであることが好ましく、前記リンカー領域(Ly)は、例えば、前記内部3’側領域(Y)と前記3’側領域(Yc)とが二重鎖を形成可能な長さであることが好ましい。前記リンカー領域(Lx)及び前記リンカー領域(Ly)の構成単位が塩基を含む場合、前記リンカー領域(Lx)及び前記リンカー領域(Ly)のそれぞれの塩基数は、同じであっても異なってもよく、また、その塩基配列も、同じであっても異なってもよい。前記リンカー領域(Lx)及び前記リンカー領域(Ly)の塩基数は、その下限が、例えば、1塩基であり、好ましくは2塩基であり、より好ましくは3塩基であり、その上限が、例えば、100塩基であり、好ましくは80塩基であり、より好ましくは50塩基である。前記各リンカー領域の塩基数は、具体例として、例えば、1~50塩基、1~30塩基、1~20塩基、1~10塩基、1~7塩基、1~4塩基等が例示できるが、これには制限されない。
【0144】
ssNc分子の全長は、特に制限されない。本発明のssNc分子において、前記塩基数の合計(全長の塩基数)は、下限が、例えば、38塩基であり、好ましくは42塩基であり、より好ましくは50塩基であり、さらに好ましくは51塩基であり、特に好ましくは52塩基であり、その上限は、例えば、300塩基であり、好ましくは200塩基であり、より好ましくは150塩基であり、さらに好ましくは100塩基であり、ことさらに好ましくは80塩基であり、特に好ましくは60塩基である。前記ssNc分子の全長の塩基数の合計の具体例は、38~300塩基、42~200塩基、50~150塩基、51~100塩基、52~80塩基である。ssNc分子において、前記リンカー領域(Lx)及びリンカー領域(Ly)を除く塩基数の合計は、下限が、例えば、38塩基であり、好ましくは42塩基であり、より好ましくは50塩基であり、さらに好ましくは51塩基であり、特に好ましくは52塩基であり、上限が、例えば、300塩基であり、好ましくは200塩基であり、より好ましくは150塩基であり、さらに好ましくは100塩基であり、ことさらに好ましくは80塩基であり、特に好ましくは60塩基である。前記リンカー領域(Lx)を除く塩基数の合計の具体例は、38~300塩基、42~200塩基、50~150塩基、51~100塩基、52~80塩基、52~60塩基である。
【0145】
ssNc分子の主要構成単位である前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基及びデオキシリボヌクレオチド残基があげられる。前記ヌクレオチド残基は、例えば、修飾されていない非修飾ヌクレオチド残基及び修飾された修飾ヌクレオチド残基があげられる。ssNc分子は、例えば、前記修飾ヌクレオチド残基を含むことによって、ヌクレアーゼ耐性を向上し、安定性を向上可能である。また、本発明のssNc分子は、例えば、前記ヌクレオチド残基の他に、さらに、非ヌクレオチド残基を含んでもよい。
【0146】
ssNc分子において、前記内部領域(Z)、前記5’側領域(Xc)及び前記3’側領域(Yc)の構成単位は、それぞれ、前記ヌクレオチド残基が好ましい。前記各領域は、例えば、下記(1)~(3)の残基で構成される。
(1)非修飾ヌクレオチド残基
(2)修飾ヌクレオチド残基
(3)非修飾ヌクレオチド残基及び修飾ヌクレオチド残基
【0147】
ssNc分子において、前記リンカー領域(Lx)及び前記リンカー領域(Ly)の構成単位は、特に制限されず、例えば、前記ヌクレオチド残基及び前記非ヌクレオチド残基があげられる。前記リンカー領域は、例えば、前記ヌクレオチド残基のみから構成されてもよいし、前記非ヌクレオチド残基のみから構成されてもよいし、前記ヌクレオチド残基と前記非ヌクレオチド残基から構成されてもよい。前記リンカー領域は、例えば、下記(1)~(7)の残基で構成される。
(1)非修飾ヌクレオチド残基
(2)修飾ヌクレオチド残基
(3)非修飾ヌクレオチド残基及び修飾ヌクレオチド残基
(4)非ヌクレオチド残基
(5)非ヌクレオチド残基及び非修飾ヌクレオチド残基
(6)非ヌクレオチド残基及び修飾ヌクレオチド残基
(7)非ヌクレオチド残基、非修飾ヌクレオチド残基及び修飾ヌクレオチド残基
【0148】
ssNc分子が、前記リンカー領域(Lx)及び前記リンカー領域(Ly)の両方を有する場合、例えば、両方の構成単位が同じでもよいし、異なってもよい。具体例として、例えば、両方のリンカー領域の構成単位が前記ヌクレオチド残基である形態、両方のリンカー領域の構成単位が前記非ヌクレオチド残基である形態、一方の領域の構成単位が前記ヌクレオチド残基であり、他方のリンカー領域の構成単位が非ヌクレオチド残基である形態等があげられる。
【0149】
ssNc分子は、例えば、前記ヌクレオチド残基のみから構成される分子、前記ヌクレオチド残基の他に前記非ヌクレオチド残基を含む分子等があげられる。本発明のssNc分子において、前記ヌクレオチド残基は、例えば、前記非修飾ヌクレオチド残基のみでもよいし、前記修飾ヌクレオチド残基のみでもよいし、前記非修飾ヌクレオチド残基及び前記修飾ヌクレオチド残基の両方であってもよい。前記ssNc分子が、前記非修飾ヌクレオチド残基と前記修飾ヌクレオチド残基を含む場合、前記修飾ヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、最も好ましくは1又は2個である。ssNc分子が、前記非ヌクレオチド残基を含む場合、前記非ヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1~8個、1~6個、1~4個、1、2又は3個である。
【0150】
ssNc分子において、前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基が好ましい。この場合、本発明のssNc分子は、例えば、「N-ssRNA分子」ともいう。前記N-ssRNA分子は、例えば、前記リボヌクレオチド残基のみから構成される分子、前記リボヌクレオチド残基の他に前記非ヌクレオチド残基を含む分子があげられる。前記N-ssRNA分子において、前記リボヌクレオチド残基は、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基のみでもよいし、前記修飾リボヌクレオチド残基のみでもよいし、前記非修飾リボヌクレオチド残基及び前記修飾リボヌクレオチド残基の両方を含んでもよい。
【0151】
前記N-ssRNA分子が、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記修飾リボヌクレオチド残基を含む場合、前記修飾リボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、最も好ましくは1又は2個である。前記非修飾リボヌクレオチド残基に対する前記修飾リボヌクレオチド残基は、例えば、リボース残基がデオキシリボース残基に置換された前記デオキシリボヌクレオチド残基であってもよい。前記N-ssRNA分子が、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記デオキシリボヌクレオチド残基を含む場合、前記デオキシリボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、最も好ましくは1又は2個である。
【0152】
(5)ssPN分子及びssNc分子の合成方法
ssPN分子及びssNc分子の合成方法は、特に制限されず、従来公知の方法が採用できる。前記合成方法は、例えば、遺伝子工学的手法による合成法、化学合成法等があげられる。遺伝子工学的手法は、例えば、インビトロ転写合成法、ベクターを用いる方法、PCRカセットによる方法等があげられる。前記ベクターは、特に制限されず、プラスミド等の非ウイルスベクター、ウイルスベクター等があげられる。前記化学合成法は、特に制限されず、例えば、ホスホロアミダイト法及びH-ホスホネート法等があげられる。前記化学合成法は、例えば、市販の自動核酸合成機を使用可能である。前記化学合成法は、一般に、アミダイトが使用される。前記アミダイトは、特に制限されず、市販のアミダイトとして、例えば、RNA Phosphoramidites(2’-O-TBDMSi、商品名、三千里製薬)、ACEアミダイト、TOMアミダイト、CEEアミダイト、CEMアミダイト、TEMアミダイト等があげられる。また、本発明のssPN分子及びssNc分子は、WO2012/05368、WO2012/17919、WO2013/27843、WO2016/159374に記載の製造方法に従って製造することができる。
【0153】
(6)アンチセンスポリヌクレオチド
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸の1つであるアンチセンスポリヌクレオチドについて以下に説明する。
アンチセンスポリヌクレオチドは、アンチセンスDNA及び/又はアンチセンスRNAであり、標的とする遺伝子RNAの全長もしくは一部に対するアンチセンス核酸を細胞内に導入することで効果を発揮する。
アンチセンスポリヌクレオチドの発現阻害のメカニズムとしては、
1)mRNAの5’キャップ部位から開始コドンの約25塩基下流までの領域を標的配列とする翻訳開始複合体の立体的阻害
2)標的mRNAと相補的な一本鎖DNAであり、RNaseHを介したmRNA分解
3)pre-mRNAのエキソンとイントロンの境界領域を標的配列とするスプライシング阻害(mRNAの成熟阻害)
があげられるが、NEK6遺伝子の発現を抑制するものであれば、そのメカニズムは特に制限されるものではない。
【0154】
アンチセンスポリヌクレオチドは、RNAとの結合安定性(Tm値など)、ミスマッチ配列認識能、ヌクレアーゼ耐性、RNaseH活性等の点から修飾ヌクレオチド残基を含むことが好ましい。
【0155】
修飾ヌクレオチド残基としては、リボース残基、リン酸骨格への修飾が好ましい。
【0156】
(7)miRNA
NEK6遺伝子の発現を抑制する核酸の1つであるmiRNAについて以下に説明する。
【0157】
miRNAは、mRNAからタンパク質への翻訳の阻害又はmRNAの分解を通して、遺伝子の発現調節に関与する。miRNAは、細胞内に存在する短鎖(20-25塩基)のノンコーディングRNAである。miRNAは、まず、DNAから、miRNAとその相補鎖とを含みヘアピンループ構造を取ることが可能な一本鎖のpri-RNAとして転写される。次にpri-RNAは、核内にあるDroshaと呼ばれる酵素によって一部が切断されpre-RNAとなって核外に輸送される。その後、pre-RNAはさらにDicerによって切断されることにより、miRNAとして機能する。miRNAは、mRNAの3’非翻訳領域へ不完全なハイブリダイゼーション結合を行い、そのmRNAがコードするタンパク質合成を阻害する。
【0158】
NEK6の遺伝子発現を抑制するmiRNAは、標的遺伝子の遺伝子名又はmRNA配列情報に基づいて、例えば、miRDB(http://mirdb.org/miRDB/index.html)等のデータベースに従って得ることができる。
【0159】
(8)核酸に使用されるヌクレオチド残基
本発明の有効成分である核酸に使用されるヌクレオチド残基は、構成要素として、糖、塩基及びリン酸を含む。前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基及びデオキシリボヌクレオチド残基等があげられる。前記リボヌクレオチド残基は、例えば、糖としてリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)を有し、前記デオキシリボース残基は、例えば、糖としてデオキシリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びチミン(T)を有する。
【0160】
前記ヌクレオチド残基は、非修飾ヌクレオチド残基及び修飾ヌクレオチド残基等があげられる。前記非修飾ヌクレオチド残基は、前記各構成要素が、例えば、天然に存在するものと同一又は実質的に同一であり、好ましくは、人体において天然に存在するものと同一又は実質的に同一である。
【0161】
前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記非修飾ヌクレオチド残基を修飾したヌクレオチド残基である。前記修飾ヌクレオチドは、例えば、前記非修飾ヌクレオチド残基の構成要素のいずれが修飾されてもよい。本発明において、「修飾」は、例えば、前記構成要素の置換、付加及び/又は欠失、前記構成要素における原子及び/又は官能基の置換、付加及び/又は欠失であり、「改変」ということができる。前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、天然に存在するヌクレオチド残基、人工的に修飾したヌクレオチド残基等があげられる。前記天然由来の修飾ヌクレオチド残基は、例えば、リンバックら(Limbach et al.1994、Summary:the modified nucleosides of RNA、Nucleic Acids Res.22:2183~2196)を参照できる。また、前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記ヌクレオチドの代替物の残基であってもよい。
【0162】
前記ヌクレオチド残基の修飾は、例えば、リボース-リン酸骨格(以下、リボリン酸骨格)の修飾等があげられる。
前記リボリン酸骨格において、例えば、リボース残基を修飾できる。前記リボース残基は、例えば、2’位炭素を修飾でき、具体的には、例えば、2’位炭素に結合する水酸基を、水素又はフルオロ等に置換できる。前記2’位炭素の水酸基を水素に置換することで、リボース残基をデオキシリボースに置換できる。前記リボース残基は、例えば、立体異性体に置換でき、例えば、アラビノース残基に置換してもよい。
【0163】
前記リボリン酸骨格は、例えば、非リボース残基及び/又は非リン酸を有する非リボリン酸骨格に置換してもよい。前記非リボリン酸骨格は、例えば、前記リボリン酸骨格の非荷電体等があげられる。前記非リボリン酸骨格に置換された、前記ヌクレオチドの代替物は、例えば、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジン等があげられる。前記代替物は、この他に、例えば、人工核酸モノマー残基等があげられる。具体例として、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’-O,4’-C-Ethylenebridged Nucleic Acids)等があげられ、好ましくはPNAである。
【0164】
前記リボリン酸骨格において、例えば、リン酸基を修飾できる。前記リボリン酸骨格において、糖残基に最も近いリン酸基は、αリン酸基と呼ばれる。前記αリン酸基は、負に荷電し、その電荷は、糖残基に非結合の2つの酸素原子にわたって、均一に分布している。前記αリン酸基における4つの酸素原子のうち、ヌクレオチド残基間のホスホジエステル結合において、糖残基と非結合である2つの酸素原子は、以下、「非結合(non-linking)酸素」ともいう。他方、前記ヌクレオチド残基間のホスホジエステル結合において、糖残基と結合している2つの酸素原子は、以下、「結合(linking)酸素」という。前記αリン酸基は、例えば、非荷電となる修飾、又は、前記非結合原子における電荷分布が非対称型となる修飾を行うことが好ましい。
【0165】
前記リン酸基は、例えば、前記非結合酸素を置換してもよい。前記酸素は、例えば、S(硫黄)、Se(セレン)、B(ホウ素)、C(炭素)、H(水素)、N(窒素)及びOR(Rは、例えば、アルキル基又はアリール基)のいずれかの原子で置換でき、好ましくは、Sで置換される。前記非結合酸素は、例えば、両方が置換されていることが好ましく、より好ましくは、両方がSで置換される。前記修飾リン酸基は、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、ホスホネート水素、ホスホロアミデート、アルキル又はアリールホスホネート、及びホスホトリエステル等があげられ、中でも、前記2つの非結合酸素が両方ともSで置換されているホスホロジチオエートが好ましい。
【0166】
前記リン酸基は、例えば、前記結合酸素を置換してもよい。前記酸素は、例えば、S(硫黄)、C(炭素)及びN(窒素)のいずれかの原子で置換でき。前記修飾リン酸基は、例えば、Nで置換した架橋ホスホロアミデート、Sで置換した架橋ホスホロチオエート、及びCで置換した架橋メチレンホスホネート等があげられる。前記結合酸素の置換は、例えば、本発明のssPN分子の5’末端ヌクレオチド残基及び3’末端ヌクレオチド残基の少なくとも一方において行うことが好ましく、5’側の場合、Cによる置換が好ましく、3’側の場合、Nによる置換が好ましい。
【0167】
前記リン酸基は、例えば、前記リン非含有のリンカーに置換してもよい。前記リンカーは、例えば、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキサイドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、及びメチレンオキシメチルイミノ等を含み、好ましくは、メチレンカルボニルアミノ基及びメチレンメチルイミノ基を含む。
【0168】
前記末端のヌクレオチド残基の修飾は、例えば、他の分子の付加等があげられる。前記他の分子は、例えば、前述のような標識物質、保護基等の機能性分子等があげられる。前記保護基は、例えば、S(硫黄)、Si(ケイ素)、B(ホウ素)、エステル含有基等があげられる。
【0169】
前記他の分子は、例えば、前記ヌクレオチド残基のリン酸基に付加してもよいし、スペーサーを介して、前記リン酸基又は前記糖残基に付加してもよい。前記スペーサーの末端原子は、例えば、前記リン酸基の前記結合酸素、又は、糖残基のO、N、SもしくはCに、付加又は置換できる。前記糖残基の結合部位は、例えば、3’位のCもしくは5’位のC、又はこれらに結合する原子が好ましい。前記スペーサーは、例えば、前記PNA等のヌクレオチド代替物の末端原子に、付加又は置換することもできる。
【0170】
前記スペーサーは、特に制限されず、例えば、-(CH-、-(CHN-、-(CHO-、-(CHS-、O(CHCHO)CHCHOH、無塩基糖、アミド、カルボキシ、アミン、オキシアミン、オキシイミン、チオエーテル、ジスルフィド、チオ尿素、スルホンアミド、及びモルホリノ等、ならびに、ビオチン試薬及びフルオレセイン試薬等を含んでもよい。前記式において、nは、正の整数であり、n=3又は6が好ましい。
【0171】
前記末端に付加する分子は、これらの他に、例えば、色素、インターカレート剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サッフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性担体(例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コール酸、ジメトキシトリチル、又はフェノキサジン)及びペプチド複合体(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、リン酸、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射線標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾール複合体、テトラアザマクロ環のEu3+複合体)等があげられる。
【0172】
核酸分子は、前記5’末端が、例えば、リン酸基又はリン酸基アナログで修飾されてもよい。前記リン酸基は、例えば、5’一リン酸((HO)(O)P-O-5’)、5’二リン酸((HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’三リン酸((HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’-グアノシンキャップ(7-メチル化又は非メチル化、7m-G-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’-アデノシンキャップ(Appp)、任意の修飾又は非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’一チオリン酸(ホスホロチオエート:(HO)(S)P-O-5’)、5’一ジチオリン酸(ホスホロジチオエート:(HO)(HS)(S)P-O-5’)、5’-ホスホロチオール酸((HO)(O)P-S-5’)、硫黄置換の一リン酸、二リン酸及び三リン酸(例えば、5’-α-チオ三リン酸、5’-γ-チオ三リン酸等)、5’-ホスホルアミデート((HO)(O)P-NH-5’、(HO)(NH)(O)P-O-5’)、5’-アルキルホスホン酸(例えば、RP(OH)(O)-O-5’、(OH)(O)P-5’-CH、Rはアルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル等))、5’-アルキルエーテルホスホン酸(例えば、RP(OH)(O)-O-5’、Rはアルキルエーテル(例えば、メトキシメチル、エトキシメチル等))等があげられる。
【0173】
前記ヌクレオチド残基において、前記塩基は、特に制限されない。前記塩基は、例えば、天然の塩基でもよいし、非天然の塩基でもよい。前記塩基は、例えば、天然由来でもよいし、合成品でもよい。前記塩基は、例えば、一般的な塩基、その修飾アナログ等が使用できる。
【0174】
前記塩基は、例えば、アデニン及びグアニン等のプリン塩基、シトシン、ウラシル及びチミン等のピリミジン塩基等があげられる。前記塩基は、この他に、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌバラリン(nubularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、ツベルシジン(tubercidine)等があげられる。前記塩基は、例えば、2-アミノアデニン、6-メチル化プリン等のアルキル誘導体;2-プロピル化プリン等のアルキル誘導体;5-ハロウラシル及び5-ハロシトシン;5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシン;6-アゾウラシル、6-アゾシトシン及び6-アゾチミン;5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、5-ハロウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル;8-ハロ化、アミノ化、チオール化、チオアルキル化、ヒドロキシル化及び他の8-置換プリン;5-トリフルオロメチル化及び他の5-置換ピリミジン;7-メチルグアニン;5-置換ピリミジン;6-アザピリミジン;N-2、N-6、及びO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニンを含む);5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシン;ジヒドロウラシル;3-デアザ-5-アザシトシン;2-アミノプリン;5-アルキルウラシル;7-アルキルグアニン;5-アルキルシトシン;7-デアザアデニン;N6,N6-ジメチルアデニン;2,6-ジアミノプリン;5-アミノ-アリル-ウラシル;N3-メチルウラシル;置換1,2,4-トリアゾール;2-ピリジノン;5-ニトロインドール;3-ニトロピロール;5-メトキシウラシル;ウラシル-5-オキシ酢酸;5-メトキシカルボニルメチルウラシル;5-メチル-2-チオウラシル;5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル;5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル;3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウラシル;3-メチルシトシン;5-メチルシトシン;N-アセチルシトシン;2-チオシトシン;N6-メチルアデニン;N6-イソペンチルアデニン;2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン;N-メチルグアニン;O-アルキル化塩基等があげられる。また、プリン及びピリミジンは、例えば、米国特許第3,687,808号、「Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」、858~859頁、クロシュビッツ ジェー アイ(Kroschwitz J.I.)編、John Wiley & Sons、1990、及びイングリッシュら(Englischら)、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30巻、p.613に開示されるものが含まれる。
【0175】
(9)その他の用語の定義
本発明の有効成分である核酸、リンカー等の説明にて使用される用語は、当該技術分野での通常用いられるものであり、例えば、以下のように示すことができる。
【0176】
本発明において、「アルキル」は、例えば、直鎖状又は分枝状のアルキル基を含む。前記アルキルの炭素数は、特に制限されず、例えば、1~30であり、好ましくは、1~6又は1~4である。前記アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ぺンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル等があげられる。好ましくは、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ぺンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル等があげられる。
【0177】
本発明において、「アルケニル」は、例えば、直鎖状又は分枝状のアルケニルを含む。前記アルケニルは、前記アルキルにおいて、1個又は複数の二重結合を有するもの等があげられる。前記アルケニルの炭素数は、特に制限されず、例えば、前記アルキルと同様であり、好ましくは2~8である。前記アルケニルは、例えば、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、3-メチル-2-ブテニル等があげられる。
【0178】
本発明において、「アルキニル」は、例えば、直鎖状又は分枝状のアルキニルを含む。前記アルキニルは、前記アルキルにおいて、1個又は複数の三重結合を有するもの等があげられる。前記アルキニルの炭素数は、特に制限されず、例えば、前記アルキルと同様であり、好ましくは2~8である。前記アルキニルは、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル等があげられる。前記アルキニルは、例えば、さらに、1個又は複数の二重結合を有してもよい。
【0179】
本発明において、「アリール」は、例えば、単環芳香族炭化水素基及び多環芳香族炭化水素基を含む。前記単環芳香族炭化水素基は、例えば、フェニル等があげられる。前記多環芳香族炭化水素基は、例えば、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル等があげられる。好ましくは、例えば、フェニル、1-ナフチル及び2-ナフチル等のナフチル等があげられる。
【0180】
本発明において、「ヘテロアリール」は、例えば、単環芳香族複素環式基及び縮合芳香族複素環式基を含む。前記ヘテロアリールは、例えば、フリル(例:2-フリル、3-フリル)、チエニル(例:2-チエニル、3-チエニル)、ピロリル(例:1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル)、イミダゾリル(例:1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル)、ピラゾリル(例:1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル)、トリアゾリル(例:1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル、1,2,4-トリアゾール-4-イル)、テトラゾリル(例:1-テトラゾリル、2-テトラゾリル、5-テトラゾリル)、オキサゾリル(例:2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、イソキサゾリル(例:3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル)、チアゾリル(例:2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、チアジアゾリル、イソチアゾリル(例:3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル)、ピリジル(例:2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、ピリダジニル(例:3-ピリダジニル、4-ピリダジニル)、ピリミジニル(例:2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル)、フラザニル(例:3-フラザニル)、ピラジニル(例:2-ピラジニル)、オキサジアゾリル(例:1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)、ベンゾフリル(例:2-ベンゾ[b]フリル、-ベンゾ[b]フリル、4-ベンゾ[b]フリル、5-ベンゾ[b]フリル、6-ベンゾ[b]フリル、7-ベンゾ[b]フリル)、ベンゾチエニル(例:2-ベンゾ[b]チエニル、3-ベンゾ[b]チエニル、4-ベンゾ[b]チエニル、5-ベンゾ[b]チエニル、6-ベンゾ[b]チエニル、7-ベンゾ[b]チエニル)、ベンズイミダゾリル(例:1-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ベンゾイミダゾリル、5-ベンゾイミダゾリル)、ジベンゾフリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノキサリル(例:2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、6-キノキサリニル)、シンノリニル(例:3-シンノリニル、4-シンノリニル、5-シンノリニル、6-シンノリニル、7-シンノリニル、8-シンノリニル)、キナゾリル(例:2-キナゾリニル、4-キナゾリニル、5-キナゾリニル、6-キナゾリニル、7-キナゾリニル、8-キナゾリニル)、キノリル(例:2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、6-キノリル、7-キノリル、8-キノリル)、フタラジニル(例:1-フタラジニル、5-フタラジニル、6-フタラジニル)、イソキノリル(例:1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、6-イソキノリル、7-イソキノリル、8-イソキノリル)、プリル、プテリジニル(例:2-プテリジニル、4-プテリジニル、6-プテリジニル、7-プテリジニル)、カルバゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル(例:1-アクリジニル、2-アクリジニル、3-アクリジニル、4-アクリジニル、9-アクリジニル)、インドリル(例:1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル)、イソインドリル、フェナジニル(例:1-フェナジニル、2-フェナジニル)又はフェノチアジニル(例:1-フェノチアジニル、2-フェノチアジニル、3-フェノチアジニル、4-フェノチアジニル)等があげられる。
【0181】
本発明において、「シクロアルキル」は、例えば、環状飽和炭化水素基であり、炭素数は、例えば、3~15である。前記シクロアルキルは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、橋かけ環式炭化水素基、スピロ炭化水素基等があげられ、好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、橋かけ環式炭化水素基等があげられる。
【0182】
本発明において、「橋かけ環式炭化水素基」は、例えば、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル及びビシクロ[3.2.1]オクチル、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプチル、ビシクロ[3.3.1]ノナン、1-アダマンチル、2-アダマンチル等があげられる。
【0183】
本発明において、「スピロ炭化水素基」は、例えば、スピロ[3.4]オクチル等があげられる。
【0184】
本発明において、「シクロアルケニル」は、例えば、環状の不飽和脂肪族炭化水素基を包み、炭素数は、例えば、3~7個である。前記基は、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル等があげられ、好ましくは、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等である。前記シクロアルケニルは、例えば、環中に不飽和結合を有する橋かけ環式炭化水素基及びスピロ炭化水素基も含む。
【0185】
本発明において、「アリールアルキル」は、例えば、ベンジル、2-フェネチル、及びナフタレニルメチル等があげられ、「シクロアルキルアルキル」又は「シクリルアルキル」は、例えば、シクロヘキシルメチル、アダマンチルメチル等があげられ、「ヒドロキシアルキル」は、例えば、例えば、ヒドロキシメチル及び2-ヒドロキシエチル等があげられる。
【0186】
本発明において、「アルコキシ」は、例えば、前記アルキル-O-基を含み、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、及びn-ブトキシ等があげられ、「アルコキシアルキル」は、例えば、メトキシメチル等があげられ、「アミノアルキル」は、例えば、2-アミノエチル等があげられる。
【0187】
本発明において、「ヘテロシクリル」は、例えば、1-ピロリニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル、ピロリジノン、1-イミダゾリニル、2-イミダゾリニル、4-イミダゾリニル、1-イミダゾリジニル、2-イミダゾリジニル、4-イミダゾリジニル、イミダゾリジノン、1-ピラゾリニル、3-ピラゾリニル、4-ピラゾリニル、1-ピラゾリジニル、3-ピラゾリジニル、4-ピラゾリジニル、ピペリジノン、ピペリジノ、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-ピペリジニル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル、ピペラジノン、2-モルホリニル、3-モルホリニル、モルホリノ、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル等があげられる。
【0188】
本発明において、「ヘテロシクリルアルキル」は、例えば、ピペリジニルメチル、ピペラジニルメチル等があげられ、「ヘテロシクリルアルケニル」は、例えば、2-ピペリジニルエテニル等があげられ、「ヘテロアリールアルキル」は、例えば、ピリジルメチル及びキノリン-3-イルメチル等があげられる。
【0189】
本発明において、「シリル」は、式RSi-で表される基を含み、Rは、独立して、前記アルキル、アリール及びシクロアルキルから選択でき、例えば、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等があげられ、「シリルオキシ」は、例えば、トリメチルシリルオキシ基等があげられ、「シリルオキシアルキル」は、例えば、トリメチルシリルオキシメチル等があげられる。
【0190】
本発明において、「アルキレン」は、例えば、メチレン、エチレン、及びプロピレン等があげられる。
【0191】
本発明において、前述した各種基は、置換されてもよい。前記置換基は、例えば、ヒドロキシ、カルボキシ、ハロゲン、ハロゲン化アルキル(例:CF、CHCF、CHCCl)、ニトロ、ニトロソ、シアノ、アルキル(例:メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル)、アルケニル(例:ビニル)、アルキニル(例:エチニル)、シクロアルキル(例:シクロプロピル、アダマンチル)、シクロアルキルアルキル(例:シクロヘキシルメチル、アダマンチルメチル)、シクロアルケニル(例:シクロプロペニル)、アリール(例:フェニル、ナフチル)、アリールアルキル(例:ベンジル、フェネチル)、ヘテロアリール(例:ピリジル、フリル)、ヘテロアリールアルキル(例:ピリジルメチル)、ヘテロシクリル(例:ピペリジル)、ヘテロシクリルアルキル(例:モルホリルメチル)、アルコキシ(例:メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ)、ハロゲン化アルコキシ(例:OCF)、アルケニルオキシ(例:ビニルオキシ、アリルオキシ)、アリールオキシ(例:フェニルオキシ)、アルキルオキシカルボニル(例:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル)、アリールアルキルオキシ(例:ベンジルオキシ)、アミノ[アルキルアミノ(例:メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ)、アシルアミノ(例:アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、アリールアルキルアミノ(例:ベンジルアミノ、トリチルアミノ)、ヒドロキシアミノ]、アルキルアミノアルキル(例:ジエチルアミノメチル)、スルファモイル、オキソ等があげられる。
【0192】
(10)SMAD2/3タンパク質リン酸化阻害剤
SMAD2/3タンパク質のリン酸化阻害とは、TGF-β刺激により促進されるSMAD2及び/又はSMAD3のリン酸化が阻害(制御)されることを意味する。
SMAD2/3は、TGF-βI型レセプターによってリン酸化を受けるR-SMAD(receptor regulated SMAD)の1種であり、TGF-βによる刺激後、リン酸化(活性化)されたSMAD2及びSMAD3は、Co-SMAD(common partner SMAD)であるSMAD4とともに核内へ移行する。実施例4に示すように、本発明者らは、NEK6タンパク質が、細胞内でSMAD2/3タンパク質と相互作用し、SMAD2/3タンパク質のリン酸化を促進することを見出した。リン酸化されたSMAD2/3タンパク質はSMADタンパク質複合体形成し、核内に移行し、α―SMA、α2-コラーゲン、インターフェロンβ、インターロイキン-5、VEGF等の転写を亢進する。
【0193】
したがって、本発明のSMAD2/3タンパク質リン酸化阻害剤によってSMADシグナル系を阻害することで、α―SMA、α2-コラーゲン、インターフェロンβ等の転写制御が可能となり、ひいては創傷治癒過程における、線維芽細胞、肝星細胞等の筋線維芽細胞への分化抑制、線維芽細胞等によるマトリックス合成の制御、炎症・免疫反応の調節等に有用であることが理解できる。
【0194】
(11)線維症治療剤
本発明の線維症治療剤は、肝線維症、肝硬変、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、アルコール性肝疾患、原発性硬化性胆菅炎、ヘモクロマトーシス、ウイルソン病、α1-アンチトリプシン欠損症、非ウイルス性鬱血性肝硬変、薬剤性肝障害、膵炎、膵線維症、網膜線維症、声帯瘢痕化、声帯粘膜線維症、喉頭線維症、肺線維症、間質性肺炎、特発性肺線維症、非特異性間質性肺炎、特発性器質化肺炎、剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎関連間質性肺炎、急性間質性肺炎、リンパ球性間質性肺炎、サルコイドーシス、慢性好酸球性肺炎、急性好酸球性肺炎、リンパ脈管筋腫症、肺胞蛋白症、ヘルマンスキー・パドラック症候群、肺ランゲルハンス細胞組織球症、鉄肺症、アミロイドーシス、肺胞微石症、過敏性肺炎、じん肺、感染性肺疾患、薬剤性肺炎、放射線肺炎、嚢胞性線維症、骨髄線維症、腎線維症、慢性腎不全、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、悪性腎硬化症、多発性嚢胞腎、薬剤性腎障害、後腹膜線維症、膠原病、強皮症、先天性角化不全症、腎性全身性線維症の他、気道の線維化、腸管の線維化、膀胱の線維化、前立腺の線維化、皮膚の線維化を含む広く線維化に関する疾患に対する治療剤である。好ましくは、肝線維症、肝硬変、肺線維症、間質性肺炎、腎線維症、慢性腎不全である。
【0195】
本発明の線維症治療剤の投与方法は、特に制限されるものではないが、吸入、静注、経皮投与などの非経口投与であることが好ましい。本発明の治療方法における本発明の核酸分子の投与量は、前記疾患の治療上有効な量であれば特に制限されず、疾患の種類、重症度、齢、体重、投与経路等によって異なるが、通常、成人1回あたり約0.0001~約100mg/kg体重、例えば約0.001~約10mg/kg体重、好ましくは約0.005~約5mg/kg体重であり得る。当該量を、例えば、1日3回~1ヶ月に1回、好ましくは1日~1週間に1回の間隔で投与することができる。本発明の線維症治療剤は、通常、薬学的に許容される担体とともに適当な医薬組成物として製剤化されて経口又は非経口の形で投与される。
【0196】
以下、実施例等により、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、培養条件は、37℃、5%CO下とした。また、特に記載しない限り、ヒト肺線維芽細胞株LL29細胞に使用した培地は、10% FCS含有F-12K培地(Gibco社)であり、ヒト初代肝星細胞(ScienCell社)に使用した培地は、2% FCS、1% Stellate cell growth supplement(SteCGS、ScienCell社)含有stellate cell培地(ScienCell社)である。
【実施例
【0197】
実施例1: siRNAを用いたNEK6のノックダウン
IPF患者の肺から樹立されたヒト肺線維芽細胞株LL29細胞に、ヒトNEK6に対するsiRNA(ON-TARGET plus SMART pool siRNA,Dharmacon社、或いはStealth RNAi siRNA,Thermo Fisher Scientific社)を、Lipofectamine RNAi MAX(Invitrogen社)を用いてトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後、培地を10% FCS含有F-12K培地(Gibco社)から0.1% BSA含有F-12K培地に交換した。トランスフェクションから72時間後、siRNAをトランスフェクションした細胞から、RNeasy Mini Kit(Qiagen社)を用いてRNAを抽出した。得られたRNAをHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems社)を用いて逆転写を行い、cDNAを得た。得られたcDNAはTaqMan GeneExpression Assays(Applied Biosystems社)を用いてリアルタイムPCRを行い、NEK6のノックダウンによるNEK6遺伝子の転写量に対する影響を調べた。NEK6遺伝子の転写量は、NEK6 Taqman Probe(HS00205221_m1、Applied Biosystems社)での測定値を、18s Probeでの測定値で除することで算出した。18s Probeは下記のカスタム合成18s MGB Probe、カスタム合成18s Primer1、カスタム合成18s Primer2を、それぞれ0.2μM、0.4μM、0.4μMとなるように混合し、リアルタイムPCRを行った。
【0198】
カスタム合成18s MGB Probe(Applied Biosystems社):
5’-ATTGGAGGGCAAGTCTGGTGCCAGC-3’(配列番号57)
カスタム合成18s Primer1(ThermoFisher社):
5’-CGGCTACCACATCCAAGGAAG-3’(配列番号58)
カスタム合成18s Primer2(ThermoFisher社):
5’-GCTGGAATTACCGCGGCT-3’(配列番号59)
【0199】
siRNAの配列は、ON-TARGET plus SMART pool siRNA(配列番号51~54を等量混合)及びStealth RNAi siRNA(配列番号55)を使用した。
【0200】
<ON-TARGET plus SMART pool siRNA>
siNEK6:5’-CUGUCCUCGGCCUAUCUUC-3’(配列番号51)
siNEK6:5’-UAUUUGGGUGGUUCAGUUG-3’(配列番号52)
siNEK6:5’-CAACUCCAGCACAAUGUUC-3’(配列番号53)
siNEK6:5’-UACUUGAUCAUCUGCGAGA-3’(配列番号54)
<Stealth RNAi siRNA>
siNEK6:5’-AAGUACUUCCAUACUGUCCUCUCC-3’(配列番号55)
【0201】
図6aにNEK6に対するON-TARGET plus SMART pool siRNAが導入された場合のNEK6のリアルタイムPCRの結果を、図6bにNEK6に対するStealth RNAi siRNAが導入された場合のNEK6のリアルタイムPCRの結果を示す。NEK6 siRNAの導入は、NEK6遺伝子の転写量を抑制した。したがって、用いられたNEK6 siRNAは、効率的に標的遺伝子の発現を抑制したことが示された。
【0202】
実施例2: NEK6のノックダウンによるSMAD2/3タンパク質リン酸化に対する影響
NEK6タンパク質がTGF-βシグナルを制御する可能性を検討するため、NEK6 siRNAをトランスフェクションした細胞においてリン酸化SMAD2/3の量を解析した。
【0203】
IPF患者の肺から樹立されたヒト肺線維芽細胞株LL29細胞に、ヒトNEK6に対するON-TARGET plus SMART pool siRNA(Dharmacon社)又はStealth RNAi siRNA(Thermo Fisher Scientific社)を、Lipofectamine RNAi MAXを用いてトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後、培地を10% FCS含有F-12K培地から0.1% BSA含有F-12K培地に交換した。トランスフェクション48時間後、ヒトTGF-βタンパク質(Peprotech社)を終濃度5ng/mLとなるように添加した。TGF-β添加2時間後、細胞を2×SDS sample buffer[100mM Tris-HCl pH6.8,4% SDS,6M Urea,12% Glycerol,2% protease inhibitor cocktail(nacalai tesque社),1% phosphatase inhibitor cocktail(nacalai tesque社)]で溶解し、細胞抽出液とした。得られた細胞抽出液にβ-Mercaptoethanol及びBromophenol blueをそれぞれ終濃度5%、0.025%となるように添加した後に、95℃で4分加熱してサンプルとした。得られたサンプルを用いてSDS-PAGEを実施し、サンプルに含まれるタンパク質を大きさにより分離した。その後、分離したタンパク質をPVDFメンブレンに転写し、抗リン酸化SMAD3抗体(Cell Signaling Technology社)、抗リン酸化SMAD2抗体(Cell Signaling Technology社)、抗SMAD2/3抗体(Cell Signaling Technology社)、抗NEK6抗体(Santa Cruz Biotechnology社)、抗β-Actin抗体(Sigma Aldrich社)によりウェスタンブロッティングを行った。
【0204】
図7aにNEK6をノックダウンした場合におけるリン酸化SMAD3タンパク質のウェスタンブロットの結果を示す。NEK6のsiRNAを用いることで、NEK6のタンパク質の量が減少し、TGF-βによって上昇するリン酸化SMAD3の量が減少した。この時、総SMAD3タンパク質の量は変化しなかった。また、図7bにNEK6をノックダウンした場合におけるリン酸化SMAD2タンパク質のウェスタンブロットの結果を示す。NEK6のsiRNAを用いることで、NEK6のタンパク質の量が減少し、TGF-βによって上昇するリン酸化SMAD2の量が減少した。この時、総SMAD2タンパク質の量は変化しなかった。
【0205】
したがって、NEK6のノックダウンによりSMAD2/3タンパク質のリン酸化が抑制されることが示された。
【0206】
実施例3: NEK6タンパク質とSMAD3タンパク質との細胞内における相互作用
NEK6タンパク質が細胞内でSMAD3と相互作用してSMAD3をリン酸化しているかを検討するため、共免疫沈降を行った。
【0207】
IPF患者の肺から樹立されたヒト肺線維芽細胞株LL29細胞に、ヒトNEK6がクローニングされた発現ベクター(pEZ-M02 Nek6,GeneCopoeia社)とFLAGタグで標識されたヒトSMAD3がクローニングされた発現ベクター(pEZ-M11 Flag-hSmad3,GeneCopoeia社)を、X-tremeGENE HP(Roche社)を用いてトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後に培地を交換した。トランスフェクション48時間後、溶解バッファー(175mM NaCl,50mM HEPES pH7.6,0.1% NP40,0.2mM EDTA pH8.0,1.4mM β-Mercaptoethanol,1% protease inhibitor cocktail,1% phosphatase inhibitor cocktail)で細胞を回収し、遠心分離によって上清を得た。上清にTrueBlot Anti-Goat IgIP Beads(Rockland社)を添加し、遠心分離を行い、非特異的な結合を除去した。そこから得られた上清にコントロールとしてnormal goat IgG(Santa Cruz Biotechnology社)、もしくは抗NEK6抗体を加え、オーバーナイト4℃にてインキュベートした後に、TrueBlot Anti-Goat IgIP Beadsを加え4時間、4℃にてインキュベートした。遠心分離を行って上清を除いた後に、TrueBlot Anti-Goat IgIP Beadsを溶解バッファーで洗浄して非特異的な結合を除去した。2×SDS PAGE loading buffer(100mM Tris―HCl pH6.8,4% SDS,20% Glycerol,0.2% Bromophenol blue,50mM DTT)をTrueBlot Anti-Goat IgIP Beadsに添加して95℃で5分間加熱し、上清に含まれる共免疫沈降物を回収した。抗NEK6抗体による共免疫沈降物に対して抗SMAD3抗体(Cell Signaling Technology社)、抗NEK6抗体を用いてウェスタンブロッティングを行い、NEK6タンパク質とSMAD3タンパク質が共沈降されるかを検出した。
【0208】
図8aに、抗NEK6抗体による共免疫沈降の結果を示す。共免疫沈降物から、NEK6タンパク質とSMAD3タンパク質が検出された。
【0209】
SMAD3タンパク質がNEK6と細胞内で相互作用しリン酸化されているかを解析するため、ヒトNEK6発現ベクターとFLAGタグで標識されたヒトSMAD3発現ベクターをLL29細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後に培地を交換した。トランスフェクション48時間後、溶解バッファー(250mM NaCl,50mM HEPES pH7.6,0.1% NP40,0.2mM EDTA pH8.0,1.4mM β-Mercaptoethanol,1% protease inhibitor cocktail,1% phosphatase inhibitor cocktail)で細胞を回収し、遠心分離によって上清を得た。得られた上清にAnti-FLAG M2 Affinity Gel(Sigma-Aldrich社)を添加し、4℃にてオーバーナイトでインキュベートした。その後、遠心分離を行い、上清を除いた。Anti-FLAG M2 Affinity Gelを溶解バッファーで洗浄して非特異的な結合を除去した。2×SDS PAGE loading buffer(100mM Tris―HCl pH6.8,4% SDS,20% Glycerol,0.2% Bromophenol blue,50mM DTT)をAnti-FLAG M2 Affinity Gelに添加して95℃で4分間加熱し、上清に含まれる共免疫沈降物を回収した。得られた共免疫沈降物をSDS-PAGEにより大きさに基づいて分離した後、PVDFメンブレンに転写し、Anti-FLAG M2 Affinity Gelによる共免疫沈降物に対しては抗リン酸化SMAD3抗体、抗FLAG抗体(Sigma-Aldrich社)、抗NEK6抗体を用いてウェスタンブロッティングを行い、NEK6タンパク質とリン酸化SMAD3タンパク質が共沈降されるかを検出した。
【0210】
図8bに、抗FLAG抗体による共免疫沈降の結果を示す。共免疫沈降物から、NEK6タンパク質とFLAG-SMAD3タンパク質が検出された。また、ヒトNEK6の発現ベクターのトランスフェクションによって、リン酸化SMAD3タンパク質の量が上昇した。
【0211】
抗NEK6抗体による共免疫沈降物中にSMAD3タンパク質が検出されたこと、及び逆に抗FLAG抗体による共免疫沈降物中にNEK6が検出されたことから、NEK6タンパク質とSMAD3タンパク質が細胞内で相互作用して複合体を形成することが示された。更に、ヒトNEK6の発現ベクターのトランスフェクションによってリン酸化SMAD3タンパク質の量が上昇したことから、NEK6タンパク質はSMAD3タンパク質を細胞内でリン酸化することが示された。
【0212】
実施例4: NEK6タンパク質によるSMAD3タンパク質リン酸化
NEK6タンパク質がSMAD3タンパク質を基質として直接リン酸化している可能性を、NEK6とSMAD3の精製タンパク質を用いて検討した。
【0213】
His融合NEK6タンパク質(eurofins社)とGST融合SMAD3タンパク質(Sigma-Aldrich社)を反応溶媒(150μM ATP,50mM HEPES,150mM NaCl,0.1% Triton X-100,10mM MgCl,1mM DTT,1% phosphatase inhibitor cocktail)と混合し、30°Cにて45分間インキュベートした。5% β-Mercaptoethanol及び0.025% Bromophenol blue を含む2×SDS sample bufferを、反応液に等量添加して反応を停止させた後に、95℃で5分加熱し、サンプルとした。得られたサンプルを用いてSDS-PAGEを実施し、反応液に含まれるタンパク質を大きさにより分離した。その後、分離したタンパク質をPVDFメンブレンに転写し、抗リン酸化SMAD3抗体及び抗GST抗体(Santa Cruz Biotechnology社)、抗NEK6抗体によりウェスタンブロッティングを行った。
【0214】
図9にHis融合NEK6タンパク質とGST融合SMAD3タンパク質を反応させた場合におけるリン酸化SMAD3タンパク質のウェスタンブロットの結果を示す。NEK6タンパク質を用いることで、リン酸化SMAD3の量が上昇した。したがって、NEK6タンパク質はSMAD3タンパク質を基質として直接リン酸化することが示された。
【0215】
実施例5: NEK6のノックダウンによるSMADタンパク質複合体の転写活性に対する影響
NEK6タンパク質が、SMADタンパク質複合体の核内移行後におこる転写活性も制御しているかを検討するため、SMADタンパク質複合体のDNA結合配列とルシフェラーゼ遺伝子を用いたルシフェラーゼレポーターアッセイを実施した。また、同時に調製したLL29細胞を用いてウェスタンブロッティングを実施し、NEK6のノックダウンについて確認した。
【0216】
IPF患者の肺から樹立されたヒト肺線維芽細胞株LL29細胞に、ヒトNEK6に対するsiRNAである ON-TARGET plus SMART pool siRNA(Dharmacon社)をLipofectamine RNAi MAXを用いてトランスフェクションした。siRNAのトランスフェクション24時間後、培地を10% FCS含有F-12K培地から0.4% FCS含有F-12K培地に交換した。siRNAのトランスフェクション48時間後、SMADタンパク質複合体のDNA結合配列[SMAD biding element(SBE)]とホタルルシフェラーゼ遺伝子がクローニングされた発現ベクター(pTL-SBE-luc:5’-AGTATGTCTAGACTGAAGTATGTCTAGACTGAAGTATGTCTAGACTGA-3’(配列番号60),Panomics社)と野生型ウミシイタケルシフェラーゼを含むレポーターアッセイ補正用のベクター(pRL-TK:Promega社)を、Lipofectamine LTX with PLUS reagent(Thermo Fisher Scientific社)を用いてトランスフェクションした。発現ベクターのトランスフェクション2時間後、ヒトTGF-βタンパク質を終濃度10ng/mLとなるように添加した。TGF-β添加24時間後において、細胞を2×SDS sample buffer(100mM Tris-HCl pH6.8,4% SDS,6M Urea,12% Glycerol,2% protease inhibitor cocktail,1% phosphatase inhibitor cocktail)で溶解した。得られた細胞抽出液に含まれるタンパク質をSDS-PAGEにより分離後、タンパク質をPVDFメンブレンに転写し、抗SMAD3抗体、抗NEK6抗体、抗Vinculin抗体によりウェスタンブロッティングを行った。また、上記と同様に調製したLL29細胞をDual-Luciferase Reporter Assay System(Promega社)に順じて回収し、ホタルルシフェラーゼとウミシイタケルシフェラーゼによる発光を測定した。ホタルルシフェラーゼの発光量をウミシイタケルシフェラーゼによる発光量で補正した。
【0217】
図10aにNEK6をノックダウンした場合におけるウェスタンブロットの結果を示す。NEK6のsiRNAを用いることで、NEK6のタンパク質の量が減少している事が示されたが、SMAD3タンパク質の量は変化しなかった。図10bにNEK6をノックダウンした場合における、ウミシイタケルシフェラーゼで補正したホタルルシフェラーゼの発光量を示す。NEK6のsiRNAを用いることで、TGF-βによって上昇するホタルルシフェラーゼの発光量が減少した。したがって、NEK6のノックダウンによりSMADタンパク質複合体の転写活性が抑制されることが示された。
【0218】
実施例6: NEK6のノックダウンによる線維症関連遺伝子の転写量に対する影響
NEK6のノックダウンが線維症に対して治療的効果を示すことを検討するため、NEK6 siRNAをトランスフェクションした細胞における線維症関連遺伝子の転写量を解析した。
【0219】
IPF患者の肺から樹立されたヒト肺線維芽細胞株LL29細胞にヒトNEK6に対するsiRNA(ON-TARGET plus SMART pool siRNA,Dharmacon社)をLipofectamine RNAi MAXを用いてトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後、培地を10% FCS含有F-12K培地から0.1% BSA含有F-12K培地に交換した。トランスフェクション48時間後、ヒトTGF-βタンパク質を終濃度1ng/mLとなるように添加した。トランスフェクション72時間後、siRNAをトランスフェクションした細胞から、RNeasy Mini Kitを用いてRNAを抽出した。得られたRNAをHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kitを用いて逆転写を行い、cDNAを得た。得られたcDNAはTaqMan GeneExpression Assaysを用いてリアルタイムPCRを行い、NEK6のノックダウンによる遺伝子の転写量に対する影響を検出した。Col1a1遺伝子とαSMA遺伝子の転写量は、Col1a1 Taqman Probe(HS00164004_m1、Applied Biosystems社)での測定値、又はαSMA Taqman Probe(HS00426835_g1、Applied Biosystems社)での測定値を、18s Probeでの測定値で除することで算出した。
【0220】
図11aにNEK6をノックダウンした場合におけるCol1a1の転写量、図11bにNEK6をノックダウンした場合におけるαSMA遺伝子の転写量を示す。NEK6のsiRNAを用いることで、TGF-βによって上昇するCol1a1、αSMA、遺伝子の転写量が減少した。したがって、NEK6のノックダウンは線維症に対して治療的効果を示すことが示された。
【0221】
実施例7: 一本鎖核酸分子の合成
以下に示す核酸分子を、ホスホロアミダイト法に基づき、核酸合成機(商品名ABI3900 DNA Synthesizer、Applied Biosystems)により合成した。固相担体としてCPG(Controlled Pore Glass)を用い、RNAアミダイトとして、EMMアミダイト(国際公開第2013/027843号)を用いた固相合成を行った。固相担体からの切り出し及びリン酸基保護基の脱保護、塩基保護基の脱保護、2’-水酸基保護基の脱保護は、定法に従った。合成した一本鎖核酸分子は、HPLCにより精製した。
【0222】
本発明の下記一本鎖核酸分子において、Lxは、リンカー領域Lxであり、下記構造式のL-プロリンジアミドアミダイトを示す。
【0223】
【化6】
【0224】
また、下記一本鎖核酸分子中の下線部は、NEK6の遺伝子発現抑制配列である。
KB-001
5’-GAGGGAGUUCCAACAACCUCUCC-Lx-GGAGAGGUUGUUGGAACUCCCUCCA-3’(配列番号31)
KB-002
5’-CGAGGCAGGACUGUGUCAAGGCC-Lx-GGCCUUGACACAGUCCUGCCUCGCC-3’(配列番号32)
KB-003
5’-CGUGGAGCACAUGCAUUCACGCC-Lx-GGCGUGAAUGCAUGUGCUCCACGGC-3’(配列番号33)
KB-004
5’-GAUAAGAUGAAUCUCUUCUCCCC-Lx-GGGGAGAAGAGAUUCAUCUUAUCUC-3’(配列番号34)
KB-005
5’-CAGAGACCUGACAUCGGAUACCC-Lx-GGGUAUCCGAUGUCAGGUCUCUGGU-3’(配列番号35)
【0225】
実施例8: ssPN分子(一本鎖核酸分子)のin vitro評価
NEK6に対して設計したssPN分子(一本鎖核酸分子)のin vitroでの評価を実施した。各項目の測定方法は、上述のON-TARGET plus SMART pool siRNAとStealth RNAi siRNAで行った方法(実施例1、2及び6)に従った。KB-001~005のssPN核酸は全てNEK6の転写量を抑制し、標的遺伝子を効率的にノックダウンした。さらに、KB-001~005のssPN核酸を作用させることにより、リン酸化SMAD3のタンパク質量の減少が確認された。
【0226】
また、KB-001とKB-003について線維化関連遺伝子(Col1a1及びαSMA)の転写量に及ぼす影響を調べた結果を図12に示す。図12aにKB-001又はKB-003を作用させた場合におけるCol1a1遺伝子の転写量を、図12bにKB-001又はKB-003を作用させた場合におけるαSMA遺伝子の転写量を示す。KB-001及びKB-003のいずれのssPN分子も線維化関連遺伝子の転写量を抑制していることを確認した。これらの結果から、NEK6に対して設計したssPN分子(一本鎖核酸分子)の線維化抑制作用を確認することができた。
【0227】
実施例9: NEK6のin vivoノックダウンによる抗線維化作用の検証
NEK6のノックダウンが線維症に対して治療的効果を示すことを確認するため、ブレオマイシン肺線維化モデルマウスに、NEK6 siRNAを投与して抗線維化作用を解析する。
【0228】
7週齢のCrl:CD1 (ICR)マウス(日本チャールス・リバー社)に、0.4mg/kg体重の容量でブレオマイシン(日本化薬株式会社)を投与し、肺線維化モデルマウスを作製する。NEK6 siRNAは、2日~7日に1回の頻度で、50mg/kg体重を最大容量として投与する。NEK6 siRNAの投与期間中は、1週間に1回の頻度で実験動物用マイクロCTでの画像診断を行う。NEK6 siRNAの初回投与から14~30日目に解剖し、肺を摘出する。摘出した肺を用いた線維症関連遺伝子の転写量、線維症関連タンパク質の発現量の測定、病理学的解析等を行う。これらによって、NEK6 siRNA未投与群に比べて、NEK6 siRNA投与群で線維化が抑制されていることを確認することができ、NEK6 siRNAの肺線維化モデルマウスでの抗線維化作用を示すことができる。
【0229】
実施例10: 肝星細胞におけるNEK6 siRNAのSMAD3タンパク質リン酸化に対する影響
肝星細胞においてNEK6タンパク質がTGF-βシグナルを制御する可能性を検討するため、NEK6 siRNAをトランスフェクションした細胞においてリン酸化SMAD3の量を解析した。
【0230】
ヒトの肝臓より単離されたヒト初代肝星細胞(ScienCell社)をポリ-L-リジン(PLL)コート細胞培養ディッシュ上にて5日間培養した。その後、ヒトNEK6に対するsiRNA(KB-004)をLipofectamine RNAi MAX(Invitrogen社)を用いてトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、培地を2% FCS、1% Stellate cell growth supplement(SteCGS、ScienCell社)含有stellate cell培地(ScienCell社)から0.2% FCS、1% SteCGS含有stellate cell培地に交換した。トランスフェクション72時間後、リポ多糖(LPS,Sigma Aldrich社)を終濃度100ng/mlとなるように培地に添加した。LPS添加11時間半後、ヒトTGF-βタンパク質(Peprotech社)を終濃度5ng/mlとなるように添加した。TGF-β添加30分後、細胞を2×SDS sample buffer [100mM Tris-HCl pH6.8,4% SDS,6M Urea,12% Glycerol, 2% protease inhibitor cocktail(nacalai tesque社),1% phosphatase inhibitor cocktail(nacalai tesque社)]で溶解し、細胞抽出液とした。
【0231】
得られた細胞抽出液にβ-Mercaptoethanol及びBromophenol blueをそれぞれ終濃度5%、0.025%となるように添加した後に、95℃で4分加熱してサンプルとした。得られたサンプルを用いてSDS-PAGEを実施し、サンプルに含まれるタンパク質を大きさにより分離した。その後、分離したタンパク質をPVDFメンブレンに転写し、抗リン酸化SMAD3抗体(Cell Signaling Technology社)及び抗SMAD3抗体(Cell Signaling Technology社)、抗リン酸化SMAD2抗体(Cell Signaling Technology社)及び抗SMAD2抗体(Cell Signaling Technology社)、抗NEK6抗体(Santa Cruz Biotechnology社)、抗Vinculin抗体 (Sigma Aldrich社)によりウェスタンブロッティングを行った。
【0232】
図13にNEK6 siRNAをトランスフェクションした場合におけるリン酸化SMAD3タンパク質とリン酸化SMAD2タンパク質のウェスタンブロッティングの結果を示す。NEK6 siRNAによりNEK6のタンパク質の量が減少し、TGF-βによって上昇するリン酸化SMAD3とリン酸化SMAD2の量が減少した。したがって、NEK6のノックダウンによりSMAD3タンパク質とSMAD2タンパク質のリン酸化が抑制されることが示された。
【0233】
実施例11: 肝星細胞におけるNEK6 siRNA SMAD3リン酸化抑制作用
NEK6 siRNAもTGF-βシグナルを制御する可能性を検討するため、各NEK6 siRNAをトランスフェクションした細胞においてリン酸化SMAD3の量を解析した。
【0234】
ヒトの肝臓より単離されたヒト初代肝星細胞をPLLコート細胞培養ディッシュ上にて5日間培養した。その後、ヒトNEK6に対する各種siRNA(KB-006、KB-004、KB-011、KB-005、KB-010をLipofectamine RNAi MAXを用いてトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、培地を2% FCS、1% SteCGS含有stellate cell培地から0.2% FCS、1% SteCGS含有stellate cell培地に交換した。トランスフェクション72時間後、LPSを終濃度100ng/mlとなるように培地に添加した。LPS添加11時間半後、ヒトTGF-βタンパク質を終濃度5ng/mlとなるように添加した。TGF-β添加30分後、細胞を2×SDS sample buffer(100mM Tris-HCl pH6.8,4% SDS,6M Urea,12% Glycerol,2% protease inhibitor cocktail,1% phosphatase inhibitor cocktail)で溶解し、細胞抽出液とした。得られた細胞抽出液にβ-Mercaptoethanol及びBromophenol blueをそれぞれ終濃度5%、0.025%となるように添加した後に、95℃で4分加熱してサンプルとした。得られたサンプルを用いてSDS-PAGEを実施し、サンプルに含まれるタンパク質を大きさにより分離した。その後、分離したタンパク質をPVDFメンブレンに転写し、抗リン酸化SMAD3抗体及び抗SMAD3抗体、抗NEK6抗体、抗Vinculinによりウェスタンブロッティングを行った。
【0235】
図14に各種NEK6 siRNAによりNEK6をノックダウンした場合におけるリン酸化SMAD3のタンパク質のウェスタンブロッティング結果を示す。各種NEK6のsiRNAの導入により、NEK6のタンパク質の量が減少し、TGF-βにより上昇するリン酸化SMAD3の量が減少した。したがって、NEK6のノックダウンによりSMAD3タンパク質のリン酸化が抑制されることが複数のNEK6 siRNA配列を用いる事で示された。
【0236】
実施例12: 肝星細胞におけるNEK6 siRNAの線維症関連遺伝子に対する影響
NEK6のノックダウンが線維症に対して有効性を示すことを検討するため、NEK6 siRNAをトランスフェクションした細胞における線維症関連遺伝子の転写量を解析した。
【0237】
ヒトの肝臓より単離されたヒト初代肝星細胞をPLLコート細胞培養ディッシュ上にて5日間培養した。その後、ヒトNEK6に対するsiRNA(KB-004)をLipofectamine RNAi MAXを用いてトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、培地を2% FCS、1% Stellate cell growth supplement含有stellate cell培地から0.2% FCS、1% SteCGS含有stellate cell培地に交換した。トランスフェクション72時間後、LPSを終濃度100ng/mlとなるように培地に添加した。LPS添加11時間半後、ヒトTGF-βタンパク質を終濃度5ng/mlとなるように添加した。TGF-β添加24時間後、KB-004をトランスフェクションした細胞から、RNeasy Mini Kitを用いてRNAを抽出した。得られたRNAをHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kitを用いて逆転写を行い、cDNAを得た。得られたcDNAはTaqMan GeneExpression Assaysを用いてリアルタイムPCRを行い、NEK6のノックダウンによる遺伝子の転写量に対する影響を検出した。NEK6遺伝子、Fibronectin遺伝子とαSMA遺伝子の転写量は、NEK6 Taqman Probe(HS00205221_m1、Applid Biosystems社)での測定値、Fibronectin Taqman Probe(HS01549976_m1、Applid Biosystems社)での測定値、又はαSMA Taqman Probe(HS00426835_g1、Applid Biosystems社)での測定値を、18s Probeでの測定値で除することで算出した。
【0238】
図15aにNEK6をノックダウンした場合におけるNEK6の転写量、図15bにNEK6をノックダウンした場合におけるFibronectinの転写量、図15cにNEK6をノックダウンした場合におけるαSMA遺伝子の転写量を示す。NEK6 siRNAにより、TGF-βによって上昇するFibronectin、αSMA遺伝子の転写量が減少した。したがって、NEK6のノックダウンは線維化を抑制することが示された。
【0239】
実施例13: 腎臓線維芽細胞におけるNEK6 siRNAのSMAD3タンパク質リン酸化に対する影響
NEK6タンパク質がTGF-βシグナルを制御する可能性を検討するため、NEK6 siRNAをトランスフェクションした細胞においてリン酸化SMAD3の量を解析した。
【0240】
ラット腎線維芽細胞株NRK-49F細胞に、ヒトNEK6に対するsiRNA(KB-004)をLipofectamine RNAi MAXを用いてトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後、培地を10%FCS含有DMEM培地から0.1%FCS含有DMEM培地に交換した。トランスフェクション48時間後、ヒトTGF-βタンパク質を終濃度5 ng/mlとなるように添加した。添加後30分或いは1時間後、細胞を2×SDS sample buffer(100mM Tris-HCl pH6.8,4% SDS,6M Urea,12% Glycerol,2% protease inhibitor cocktail,1% phosphatase inhibitor cocktail)で溶解し細胞抽出液とした。得られた細胞抽出液にβ-Mercaptoethanol及びBromophenol blueをそれぞれ終濃度5%、0.025%となるように添加した後に、95℃で4分加熱してサンプルとした。得られたサンプルを用いてSDS-PAGEを実施し、サンプルに含まれるタンパク質を大きさにより分離した。その後、分離したタンパク質をPVDFメンブレンに転写し、抗リン酸化SMAD3抗体及び抗SMAD3抗体、抗NEK6抗体(abcam社)、抗Vinculin抗体によりウェスタンブロッティングを行った。
【0241】
図16にNEK6をノックダウンした場合におけるリン酸化SMAD3タンパク質のウェスタンブロッティングの結果を示す。NEK6のsiRNAを用いることで、NEK6のタンパク質の量が減少し、TGF-βによって上昇するリン酸化SMAD3の量が減少した。したがって、NEK6のノックダウンによりSMAD3タンパク質のリン酸化が抑制されることが示された。
【0242】
実施例14: 四塩化炭素(CCl)誘発肝線維化モデルにおけるNEK6 siRNAの有効性評価
NEK6のノックダウンが線維症に対して有効性を示すことを確認するため、CClモデルマウスに、NEK6 siRNAを静脈内投与して抗線維化作用を解析した。
【0243】
7週齢雄のC57BL/6Jマウス(日本チャールス・リバー株式会社)に、10v/v%CCl含有オリーブ油溶液(富士フイルム和光純薬株式会社)を、10 mL/kg体重で0,4,7,11日目に腹腔内投与し、肝線維化モデルマウスを作製した。CClの初回投与前日の体重で群わけを実施し、群設定は、CCl未投与の生理食塩水投与群(n=5)、CCl投与の溶媒投与群(n=10)、CCl投与の核酸投与群(n=10)とした。NEK6 siRNAとしてKB-004を、投与溶媒としてinvivofectamine 3.0 Reagent(Thermo Fisher Scientific)を用いて、invivofectamine 3.0の製品プロトコールに従い、0.3mg/mLの核酸投与液を作製した。核酸投与群にはKB-004を含む核酸投与液を3mg/kg体重となるように尾静脈投与し、溶媒投与群には核酸投与群と等量の投与溶媒を、CClの初回投与前日および病態誘発10日目に尾静脈投与した。肝障害および線維化の評価は病態誘発13日目で実施した(実施例15、16、17及び19)。
【0244】
実施例15: CClモデルでの肝障害マーカーの解析
線維化とは、細胞や組織の障害に対する過剰な創傷治癒過程だと理解されている。そのため、線維化と共に細胞や組織の障害を抑制することは、各種線維症の治療に有効であると考えられている。そこで、NEK6のノックダウンが肝障害に対して効果を示すかを検討するため、CClモデルにおける肝障害マーカーの測定を行った。
【0245】
病態誘発13日目に尾静脈よりプレーンのキャピラリー採血管を用いて採血し、30分以上静置した。静置後の血液を遠心分離し、血清を得た。トランスアミナーゼCII-テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて血清中グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)及びグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)を測定した。測定方法は試薬の説明書に従った。
【0246】
図17aに血清中GPTの測定結果、図17bに血清中GOTの測定結果を示した。NEK6 siRNAを投与することで、CClモデルで認められた血清中GPT及びGOTの上昇が抑制された。したがって、NEK6のノックダウンは肝障害を抑制することが示された。
【0247】
実施例16: CClモデルでのSMAD3タンパク質リン酸化の解析
NEK6のノックダウンがSMAD3タンパク質のリン酸化に対して効果を示すかを検討するため、CClモデルにおけるリン酸化SMAD3の量を解析した。
【0248】
病態誘発13日目に採取した肝臓を凍結後に粉砕し粉状にした。粉末状の肝臓へ溶解バッファー(150mM NaCl,1% NP40,0.1% SDS,50mM Tris-HCl pH7.5,1mM EDTA,1mM Benzylsulfonyl fluoride,2% protease inhibitor cocktail,1% phosphatase inhibitor cocktail)を加え、ハンディ超音波発生機を用いて臓器抽出液を調製した。臓器抽出液を遠心分離して得られた上清へβ-Mercaptoethanol及びBromophenol blueをそれぞれ終濃度5%、0.025%となるように添加した。その後、95℃で4分加熱してサンプルとした。得られたサンプルを用いてSDS-PAGEを実施し、サンプルに含まれるタンパク質を大きさにより分離した。その後、分離したタンパク質をPVDFメンブレンに転写し、抗リン酸化SMAD3抗体(abcam社)及び抗SMAD3抗体、抗NEK6抗体(abcam社)、抗Vinculin抗体によりウェスタンブロッティングを行った。リン酸化SMAD3はトータルSMAD3量により補正した。
【0249】
図18にNEK6をノックダウンした場合におけるリン酸化SMAD3タンパク質のウェスタンブロッティングの結果を示す。NEK6のsiRNAを用いることで、NEK6のタンパク質の量が減少し、TGF-βによって上昇するリン酸化SMAD3の量が減少した。したがって、NEK6のノックダウンはCClモデルの肝臓においてSMAD3タンパク質のリン酸化を抑制することが示された。
【0250】
実施例17: CClモデルでの線維症関連遺伝子の解析
NEK6のノックダウンが線維化に対して有効性を示すかを検討するため、CClモデルにおける線維症関連遺伝子の転写量を解析した。
【0251】
病態誘発13日目に採取した肝臓からQIAzol Lysis reagent(QIAGEN社)を用いてRNAを抽出した。続いて、RNeasy mini kitを用いてRNAを精製し、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kitを用いて逆転写反応を行った。TaqMan GeneExpression Assayを用いてNEK6 Taqman Probe(Mm00480730_m1、Applied Biosystems社)、及び線維症関連遺伝子としてCol1a1 Taqman Probe(Mm00801666_g1、Applied Biosystems社)、Col3a1 Taqman Probe(Mm01254476_m1、Applied Biosystems社)、Timp1 Taqman Probe(Mm01341361_m1、Applied Biosystems社)の転写量を測定し、内部標準である18s rRNA Taqman Probe(Hs99999901_s1、Applied Biosystems社)の転写量との相対比を各遺伝子の転写量とした。
【0252】
CClモデルにおける各遺伝子の転写量を図19a~dに示す。NEK6 siRNAの投与によって、NEK6遺伝子の転写量が低下した。このことから、用いられたKB-004は、効率的に標的遺伝子の転写を抑制したことが示された。この時、病態誘発によって誘導される線維症関連遺伝子(Col1a1、Col3a1、Timp1)の転写量は有意に低下した。したがって、NEK6のノックダウンは線維化を抑制することが示された。
【0253】
実施例18: 胆管結紮誘発肝線維化(BDL)モデルでの線維症関連遺伝子の解析
NEK6のノックダウンが線維症に対して有効性を示すことを検討するため、胆管結紮誘発肝線維化モデルマウス(BDLモデル)にNEK6 siRNAを静脈内投与して線維症関連遺伝子の転写量を解析した。
【0254】
9週齢のC57BL/6Jマウス(日本チャールス・リバー社)を体重で群分けし、遺伝子導入試薬invivofectamin 3.0(ThermoFisher Scientific社)の添付文書に従って調製したKB-004溶液(0.3mg/mL)を3mg/kg体重の用量で尾静脈内投与した(n=12)。対照群には、溶媒のみを投与した(n=15)。投与翌日、総胆管を2箇所結紮し、肝線維化モデルマウスを作製した。偽手術群は、生理食塩水(大塚生食注)を尾静脈内投与し、総胆管の剥離のみ行った(n=7)。胆管結紮14日目に肝臓を採取し、上記と同様にしてNEK6 Taqman Probe(Mm00480730_m1、Applied Biosystems社)、及び線維症関連遺伝子としてCol1a1 Taqman Probe(Mm00801666_g1、Applied Biosystems社)、Col3a1 Taqman Probe(Mm01254476_m1、Applied Biosystems社)、Timp1 Taqman Probe(Mm01341361_m1、Applied Biosystems社)の転写量を測定し、内部標準であるGAPDH Taqman Probe(Mm9999995_g1、Applied Biosystems社)の転写量との相対比を各遺伝子の転写量とした。
【0255】
BDLモデルにおける各遺伝子転写量を図20にa~dに示す。NEK6 siRNAの投与によって、NEK6遺伝子の転写量が低下した。このことから、用いられたKB-004は、効率的に標的遺伝子の転写を抑制したことが示された。この時、病態誘発によって誘導される線維症関連遺伝子(Col1a1、Col3a1、Timp1)の転写量は有意に低下した。したがって、NEK6のノックダウンは線維化を抑制することが示された。
【0256】
実施例19: CClモデルでの病理解析
NEK6のノックダウンがCCl誘発肝線維化モデルに対して効果を示すかを検討するため、病理像の観察を行った。
【0257】
病態誘発13日目に肝臓の内側右葉を採取し、10%中性緩衝ホルマリン液を用いて固定した。パラフィンで包埋した後に、組織切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色を行った。
【0258】
図21に病理像の代表例を示した。図21aはCCl未投与の生理食塩水投与群の結果、図21bはCCl投与の溶媒投与群の結果、図21cはCCl投与の核酸投与群の結果を表す。図21b中に多く認められる空胞変性は細胞の障害を示し、中央部付近に多く存在する核が染色していない部分は細胞の壊死を示す。NEK6 siRNAを投与することで、CClモデルの肝臓組織で認められた細胞の障害や壊死が減少した。したがって、NEK6のノックダウンはCCl誘発肝線維化モデルにおける病理像の変化を抑制することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0259】
本発明により新規なSMAD2/3タンパク質のリン酸化阻害剤及び線維症治療剤の提供が可能となる。
図1
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【配列表】
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