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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】水系ゲル状組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20230106BHJP
   A61L 9/012 20060101ALI20230106BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
A61L9/01 W
A61L9/01 Y
A61L9/012
C09K3/00 103L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019551109
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2018039156
(87)【国際公開番号】W WO2019087840
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2017209908
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田井治 淑美
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-093520(JP,A)
【文献】特開2017-025183(JP,A)
【文献】特開2007-029175(JP,A)
【文献】特開2009-001701(JP,A)
【文献】特開2005-306842(JP,A)
【文献】特開昭62-172958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/01
A61L 9/012
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(E)
(A)揮発性油性香料
(B)有機ベントナイト
(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレン硬化
ひまし油エーテル
(D)ジェランガム、グアーガム、カラギーナン、ゼラチン、イソブチレン-無
水マレイン酸共重合体、及びセルロース誘導体から選択される1種又は2種以
上のゲル化剤
(E)水
を含有する水系ゲル状組成物。
【請求項2】
成分(A)の含有量が3~20質量%である請求項1の水系ゲル状組成物。
【請求項3】
成分(B)と(C)の質量含有比((B):(C))が、1:1~30である請求項1または2に記載の水系ゲル状組成物。
【請求項4】
成分(D)が、ジェランガム、グアーガム、カラギーナン、ゼラチンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1~のいずれかの項記載の水系ゲル状組成物。
【請求項5】
更に、成分(F)炭素数が12~24の高級脂肪酸のアルカリ金属塩を含有する請求項1~のいずれかの項記載の水系ゲル状組成物。
【請求項6】
次の工程(1)~(3)
工程(1):(B)有機ベントナイトと(A)揮発性油性香料の混合物に(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテルを添加したものを調製する工程
工程(2):工程(1)で調製したものに(D)ジェランガム、グアーガム、カラギーナン、ゼラチン、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、及びセルロース誘導体から選択される1種又は2種以上のゲル化剤を(E)水に分散したものを加え、さらに攪拌・加熱して均一な溶液とする工程
工程(3):工程(2)で調製した溶液を冷却してゲル化する工程
を含むことを特徴とする水系ゲル状組成物の製造方法。
【請求項7】
(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテルと共に成分(F)炭素数が12~24の高級脂肪酸のアルカリ金属塩を添加するものである請求項記載の水系ゲル状組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水系ゲル状組成物に関し、更に詳細には、主要な溶媒として水を利用し、かつ高濃度の揮発性油性成分を含有することが可能な水系ゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、香料や消臭成分などの揮発性油性成分を溶媒に分散又は可溶化させ、ゲル化剤を用いてゲル化したゲル状組成物が提案されている。主要な溶媒として水を用いた水系ゲルでは、一般に外観の制御が容易であり、弾力性の高いゲルを形成しやすい。このような水系ゲルとして、たとえば、本出願人は、ゲル化剤として乾燥物での窒素含有率が0.01質量%以下、100g当たりのカルシウム含量が25mg以下である精製κ―カラギーナンを含有するゲル状組成物を開示している(特許文献1)。
【0003】
しかし、水系ゲル状組成物においては、揮発性油性成分を水に分散又は可溶化させるために、通常界面活性剤を用いる必要がある。特に香りの強度や薬効を高めることを目的として多量の揮発性油性成分を含有させるためには界面活性剤の添加量を増やす必要がある一方、界面活性剤の添加量を増やすとゲル化を阻害し、ゲルの強度が著しく弱くなって安定性が低下するという問題があった。このため、水系ゲル状組成物では、香料等の揮発性油性成分を多くても数質量%程度しか含有させることができなかった。
【0004】
一方、主要な溶媒としてエタノール等の低級アルコールを用いたアルコール系ゲルもあり、例えば、膨潤性層状ケイ酸塩の層間に、第4級アンモニウム塩を導入した有機粘土複合体と、香料とアルコールを含有するゲル状芳香剤組成物が開示されている(特許文献2)。このようなアルコール系ゲルは、油性の揮散性成分を比較的多く含有させることができるが、ゲルの外観を制御することが難しく、また弾力性に富むゲルを形成しにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-001701号公報
【文献】特開2005-306842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、香りの強度を高めることができ、比較的高濃度の揮発性油性成分を含有させても乳化安定性及びゲル安定性に優れる水系ゲル状組成物の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねていたところ、水系ゲルにおいて、ゲル化剤に有機ベントナイトを組み合わせて用いることで、界面活性剤の添加量を抑制しながら比較的多量の揮発性油性成分を水系溶媒中に安定して乳化分散させるとともに、ゲル強度が高く安定性に優れたゲルが形成されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、次の成分(A)~(E);
(A)揮発性油性成分
(B)有機ベントナイト
(C)界面活性剤
(D)ゲル化剤
(E)水
を含有することを特徴とする水系ゲル状組成物である。
【0009】
また本発明は、次の工程(1)~(3)
工程(1):(B)有機ベントナイトと(A)揮発性油性成分の混合物に(C)界面活性剤を添加したものを調製する工程
工程(2):工程(1)で調製したものに(D)ゲル化剤を(E)水に分散したものを加え、さらに攪拌・加熱して均一な溶液とする工程
工程(3):工程(2)で調製した溶液を冷却してゲル化する工程
を含むことを特徴とする水系ゲル状組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的高濃度の揮発性油性成分を含有させても、水系溶媒中に安定して乳化分散させることができ、さらにゲル強度が高く、安定性に優れる水系ゲルを形成することができる。そのため、香料や揮発性薬剤などを高濃度で含有し、香りの強度や薬効を高めたゲル製剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、水系ゲル状組成物とは、溶媒の主成分、例えば、溶媒全量に対し、50~100質量%(以下、単に「%」で示す)、好ましくは60~100%、より好ましくは70~100%が水であるゲル状の組成物を意味する。また、「ゲル状」とは、高い粘性を持って流動性を失い、その外観が一般にゲルといわれる状態を意味し、例えば、100mlビーカーに総量50gのゲルを作成し、ビーカーにおける作成後のゲル上端の位置から、そのゲルをビーカーごと横倒しに倒して5分経過した後のゲル表面先端の位置との距離が、0mm~45mmであるものを意味する。
【0012】
本発明の水系ゲル状組成物(以下、単に「組成物」ということがある)は、成分(A)揮発性油性成分、(B)有機ベントナイト、(C)界面活性剤、(D)ゲル化剤及び(E)水を含有する。
【0013】
成分(A)揮発性油性成分としては、油性香料を用いることが特に望ましい。本明細書において揮発性とは、常温常圧下(25℃、1atm程度)において水系ゲル状組成物を使用する際に順次気化する物質をさし、具体的には25℃における蒸気圧が1×10-3Pa以上であることを意味する。
【0014】
油性香料としては、例えば、麝香、霊猫香、竜延香等の動物性香料、アビエス油、アクジョン油、アルモンド油、アンゲリカルート油、ページル油、ベルガモット油、パーチ油、ボアバローズ油、カヤブチ油、ガナンガ油、カプシカム油、キャラウェー油、カルダモン油、カシア油、セロリー油、シナモン油、シトロネラ油、コニャック油、コリアンダー油、クミン油、樟脳油、ジル油、エストゴラン油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ホップ油、レモン油、レモングラス油、ナツメグ油、マンダリン油、ハッカ油、オレンジ油、セージ油、スターアニス油、テレピン油等の植物性香料を挙げることができる。この香料として、合成香料又は抽出香料等の人工香料を用いることもでき、例えば、リモネン、テルピノレン、メンタン、ピネン、ジペンテン等のテルペン系炭化水素、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、βフェネチルアルコール等のアルコール系香料、アネトール、オイゲノール等のフェノール系香料、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド等のアルデヒド系香料、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料、γ―ブチルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系香料等が挙げられる。さらに、上記香料の2種以上を混合した調合香料も使用することができる。
【0015】
本発明の水系ゲル状組成物中の成分(A)の配合割合は、通常その下限が1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。本発明の水系ゲル状組成物は、このような比較的高濃度の揮発性油性成分を含有させても十分なゲル強度を有し、安定性に優れるものである。一方、その上限は通常35%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。0.1%未満では、揮発性油性成分の効果を得るために十分な揮散量を得ることができない場合があり、40%を超えると成分(E)水の配合量が少なくなり、調製時の粘度が高くなりやすく均一なゲルの作成が困難になる場合がある。
【0016】
成分(B)有機ベントナイトは、スメクタイト型粘土であるベントナイト、または、その主成分の層状粘土鉱物であるモンモリロナイトへ有機カチオンを反応させたものである。スメクタイト結晶層表面を有機カチオンで親水性から疎水性に変更することによって、揮発性油性成分中で膨潤して剥離分散することが可能となる。このような有機ベントナイトは、例えば、「エスベン」シリーズ((株)ホージュン製)などとして市販されているので、これらをそのまま使用することもできる。
【0017】
成分(B)の有機ベントナイトの組成物中における配合割合は、通常0.1~5%、好ましくは0.2~2%、更に好ましくは0.2~1.5%である。
【0018】
成分(C)界面活性剤としては、従来公知の、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤又は両性界面活性剤が挙げられ、これらのいずれをも用いることができ、その1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0019】
上記界面活性剤のうち、アニオン系界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石けん、石けん用素地、金属石けん、N-アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム(N-ココイル-N-メチルタウリンナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルβ-アラニンナトリウム液、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
また、カチオン系界面活性剤としては、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
更にノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、第3級アミンオキサイド等が挙げられる。また、前記脂肪酸アルカノールアミドは、椰子油脂肪酸、ステアリン酸、ラウリン酸のモノエタノールアミド、ジエタノールアミド等が挙げられ、第3級アミンオキサイドとしては、ラウリルジメチルアミンオキサイド、椰子油脂肪酸ジメチルアミンオキサイド、ラウロイルアミノプロピルジメチルアミンオキサイド、オクチルジメチルアミンオキサイド、ミリスチルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0022】
更にまた、両性界面活性剤としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の1又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
上記した界面活性剤のうち、乳化安定性及びゲル安定性の観点から、揮発性油性成分に対する可溶化力の点からノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。更に、ノニオン系界面活性剤のうちでも特にポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテルを用いることが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ポリオキシエチレン鎖が3~18、好ましくは7~12であり、アルキル鎖は直鎖または分岐のどちらでも良く、アルキル鎖長は8~22好ましくは12~14である。また界面活性剤のHLBは13~17の範囲が好ましく、13~16の範囲がより好ましい。これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の界面活性剤を使用する場合、全体のHLBを上記範囲とすることが好ましい。全体のHLBは、各界面活性剤単独のHLBをその質量%を重みとして平均することにより求められる。
【0024】
成分(C)の界面活性剤の組成物中における配合割合は、配合される揮発性油性成分の種類、量等により適宜選択することができるが、乳化安定性及びゲル安定性の観点から、通常0.1~10%、好ましくは0.5~6%、更に好ましくは1~4%である。0.1%より少ないと揮発性油性成分を安定に分散、乳化もしくは可溶化することが困難となり、水系ゲル状組成物が相分離したり離水、離しょうを生じる場合がある。また、10%より多いと組成物のゲル化を阻害し、ゲルの強度が著しく弱くなる場合がある。また乳化安定性及びゲル安定性の観点から、成分(B)と成分(C)の質量含有比((B):(C))を1:1~30の範囲とすることが好ましく、1:2~20がより好ましく、1:4~15がさらに好ましい。
【0025】
成分(D)ゲル化剤としては、カラギーナン、ジェランガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドガム、アルギン酸ソーダ、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体等従来公知のものが例示される。これらの中でも乳化安定性及びゲル安定性の観点から、ジェランガム、グアーガム、カラギーナン、ゼラチンが好ましく、特にジェランガムが好ましい。
【0026】
成分(D)のゲル化剤の組成物における配合割合は、ゲル化剤の種類等により適宜選択することができるが、通常0.1%~5%、好ましくは0.1~4%であり、さらに好ましくは0.2~3%である。0.1%より少ないとゲル化せずゾル状となる場合があり、10%より多い場合は、使用後の残渣が多い為、使用終点が不明確になる場合がある。また、加熱溶解時の粘度が極めて高くなり、生産が困難となる場合もある。
【0027】
成分(E)水の組成物における配合割合は、好ましくは40~90%であり、50~85%がより好ましく、60~80%が特に好ましい。また前記したとおり、本発明の水系ゲル状組成物は、溶媒の主成分として水を含有するものであり、溶媒全量に対し、通常50~100%、好ましくは60~100%、より好ましくは70~100%の水を含有する。水以外の溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等が例示される。
【0028】
また、製造したゲルからの離水を防止する観点から、界面活性剤、好ましくはノニオン系界面活性剤と共に、成分(F)炭素数が12~24の高級脂肪酸のアルカリ金属塩を併用することが好ましい。炭素数が12~24の高級脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム等が挙げられる。炭素数が12~24の高級脂肪酸のアルカリ金属塩の好ましい具体的としては、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ベヘニン酸ナトリウム等が挙げられる。これら炭素数が12~24の高級脂肪酸のアルカリ金属塩の組成物中における配合割合は0.01~10%、好ましくは0.1~5である。なお、本発明において、成分(F)炭素数が12~24の高級脂肪酸のアルカリ金属塩は、成分(A)~(E)に含まれるものではない。
【0029】
さらに、本発明の水系ゲル状組成物には、ゲル形成に影響を与えない程度に各種添加剤を加えることができる。添加剤としては、例えば、ゲル強化剤としての塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩や塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、離水防止剤としてのヒドロキシエチルセルロースやグリセリン等が挙げられる。また、必要に応じて、酸・アルカリ等のpH調整成分、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消臭成分、色素等を添加することもできる。
【0030】
本発明の水系ゲル状組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、次の工程(1)~(3)等が挙げられる。
工程(1):(B)有機ベントナイトと(A)揮発性油性成分の混合物に(C)界面活性剤を添加したものを調製する工程
工程(2):工程(1)で調製したものに(D)ゲル化剤を(E)水に分散したものを加え、さらに攪拌・加熱して均一な溶液とする工程
工程(3):工程(2)で調製した溶液を冷却してゲル化する工程
【0031】
(B)有機ベントナイトと(A)揮発性油性成分の混合物は、(A)揮発性油性成分に、(B)有機ベントナイトを添加、撹拌し、(B)有機ベントナイトをよく分散させることにより得られる。(C)界面活性剤を添加する際には、必要により、(E)水の一部を添加してもよい。(C)界面活性剤の添加の際には、55~95℃、好ましくは60~90℃にして撹拌することが好ましい。また、(C)界面活性剤と成分(F)炭素数が12~24の高級脂肪酸のアルカリ金属塩を併用する場合には、(C)界面活性剤と成分(F)炭素数が12~24の高級脂肪酸のアルカリ金属塩を同時期に添加すればよい。
【0032】
(D)ゲル化剤を(E)水に分散させるには、撹拌している(E)水に(D)ゲル化剤を添加すればよい。(D)ゲル化剤を(E)水に分散させた後は、70~95℃、好ましくは75~90℃に加熱し、撹拌することで各成分を均一に溶解させることが好ましい。
【0033】
(B)有機ベントナイトと(A)揮発性油性成分の混合物へ(C)界面活性剤を添加したものに、(D)ゲル化剤を(E)水に分散したものを加えた後も、50~80℃、好ましくは55~75℃を維持したまま撹拌して均一な溶液とする。これを冷却、例えば、室温に静置することによりゲル化し、本発明の水系ゲル状組成物となる。
【0034】
本発明の水系ゲル状組成物は、ゲル化後に容器に入れてもよいが、容器中でゲル化させてもよい。その場合には、冷却前の溶液を容器に注いでから上記のように冷却してゲル化すればよい。本発明の水系ゲル状組成物を入れる容器としては、特に限定されないが、例えば、プラスチック製容器、ガラス製容器等が挙げられる。
【0035】
かくして得られる本発明の水系ゲル状組成物は、比較的高濃度の揮発性油性成分を含有することが可能である。したがって、有効成分を揮散させてその効果を発揮させる揮散タイプのゲル状組成物として、芳香剤、消臭剤等の用途に利用可能である。
【実施例
【0036】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制約されるものではない。
【0037】
実 施 例 1
表1に示す組成に従い、下記方法で水系ゲル状組成物を調製した。得られた水系ゲル状組成物について下記の方法で乳化安定性、ゲル安定性及び香りの強度について評価を行った。結果を併せて表1に示す。
【0038】
[ 製 法 ]
A液:成分9から16を一部の水に添加・攪拌し、分散させて混合物とした。これに成分17を追加後、水を添加・攪拌し、約70℃に加熱しながら攪拌した。
B液:成分1から8を約75℃で攪拌した。
A液にBを投入、混合後、約65℃を維持しながら15分攪拌した後、100gを200mlのガラス製ビーカーに注ぎ、室温にて静置することによってゲル化させ、ゲル状組成物を得た。
【0039】
[ 評価方法 ]
(1)乳化安定性
A液とB液を混合、攪拌後の状態を下記の基準で評価した。
○:均一に乳化した
×:水相と油相に分離した
(2)ゲル安定性
ビーカーに入った組成物を室温にて一晩静置した後の状態を下記の基準で評価した。
○:均一にゲル化した状態を維持していた
△:ゲルの上層に成分の一部が分離していた
×:組成物がゲル化しなかった
【0040】
(3)香りの強度
ビーカーに入った組成物を0.9×0.9×2.0m(約1.62m)の評価室内に入れ30分間放置し、香りの強度について下記の基準で評価した。
5:香りが非常に強い
4:香りが強い
3:どちらでもない
2:香りが弱い
1:香りが非常に弱い
【0041】
【表1】
※1 「エスベンNTO」((株)ホージュン製)
※2 POE鎖長:9、アルキル鎖長:12~14 、HLB13.3
※3 POE鎖長:9、アルキル鎖長:12~14 、HLB14.5
※4 HLB:17
※5 HLB:15
※6 「イソバン 110」((株)クラレ製)
※7 「HECダイセル SP900」(ダイセルファインケム(株)製)
【0042】
実 施 例 2
表2に示す組成に従い、下記方法で水系ゲル状組成物を調製した。得られた水系ゲル状組成物について実施例1と同様の方法でゲル安定性及び香りの強度について評価を行った。また、下記方法でゲルの離水率について測定した。結果を併せて表2に示す。
【0043】
[製 法]
A液:成分5から8を一部の水に添加・攪拌し、分散させて混合物とした。これに成分9を追加後、水を添加・攪拌し、約70℃に加熱しながら攪拌した。
B液:成分1から4を約75℃で攪拌した。
A液にBを投入、混合後、約65℃を維持しながら15分攪拌した後、100gを200mlのガラス製ビーカーに注ぎ、室温にて静置することによってゲル化させ、ゲル状組成物を得た。
【0044】
[ 離水率測定 ]
上記で作製したゲルを3cm角に切り出し、直径55mmのろ紙上に載せ、その上から錘(約15.3g)を載せ室温にて静置した。7時間後にろ紙に吸収された水分量を測定し、下記式にて離水率を算出した。
【0045】
【数1】
【0046】
【表2】
※1、※2は実施例1と同様
【0047】
以上の結果より本発明品はいずれも乳化安定性、ゲル安定性及び香りの強度が良好であった。また、ステアリン酸ナトリウムを配合したもの(本発明品9~12)は配合しなかったもの(本発明品13)に比べ離水率が少ないものであった。
【0048】
実 施 例 3
実施例1の本発明品1と同様に調製した水系ゲル状組成物を、ビーカーの代わりにプラスチック製の容器に充填し、室温で静置して芳香剤1を製造した。この芳香剤1は高濃度の揮発性油性成分を含有しているため、香りの強度が高かった。
【0049】
実 施 例 4
表3に示す組成に従い、下記方法で本発明の芳香剤2を得た。
【0050】
[製 法]
A液:成分5から8及び10を一部の水に添加・攪拌し、分散させて混合物とした。これに成分9を追加後、水を添加・攪拌し、約70℃に加熱しながら攪拌した。
B液:成分1から4を約75℃で攪拌した。
A液にBを投入、混合後、約65℃を維持しながら15分攪拌した後、100gを120mlのプラスチック製容器に注ぎ、それをさらに金属製の缶に入れ開口部を密封し室温にて静置することによって室温で静置して芳香剤2を製造した。
【0051】
【表3】
※1、※2は実施例1と同様
【0052】
得られた本発明の芳香剤2は乳化安定性及びゲル安定性に問題なく良好であり、高濃度の揮発性油性成分を含有しているため、香りの強度が高かった。
【0053】
また、芳香剤2を缶のまま80℃の恒温槽に5日間保存後、缶の蓋を開放し、離水した水分量(缶にたまっていた水分量)を測定し、下記式に基づき離水率を測定した。
【0054】
【数2】
【0055】
その結果、芳香剤2の離水率は0.1%であった。本発明は離水を良好に抑えることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、高濃度の揮発性油性成分を含有することが可能な水系ゲル状組成物が得られる。したがって、有効成分を揮散させてその効果を発揮させる揮散タイプのゲル状組成物として、芳香剤、消臭剤等の用途に利用可能である。