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特許7204682石油およびガス産業における従来の酸の代替物としての新規改質酸組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】石油およびガス産業における従来の酸の代替物としての新規改質酸組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 8/68 20060101AFI20230106BHJP
   C09K 8/528 20060101ALI20230106BHJP
   C09K 8/575 20060101ALI20230106BHJP
   C02F 1/66 20230101ALI20230106BHJP
   C02F 1/68 20230101ALI20230106BHJP
   B01J 49/50 20170101ALI20230106BHJP
   E21B 43/22 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
C09K8/68
C09K8/528
C09K8/575
C02F1/66 510R
C02F1/66 510Z
C02F1/66 521X
C02F1/68 510H
C02F1/68 520B
C02F1/68 520G
B01J49/50
E21B43/22 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019566830
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 CA2018000105
(87)【国際公開番号】W WO2018218333
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】2,969,174
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519424962
【氏名又は名称】フリュイド エナジー グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パーディー、クレイ
(72)【発明者】
【氏名】バイセンベルガー、マルクス
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0114647(US,A1)
【文献】国際公開第2016/049738(WO,A1)
【文献】D. Jayaperumal et al.,Inhibition effect of ethanolamines on oil well tubular material in hydrochloric acid,ANTI-CORROSION METHOD AND MATERIALS,2000年,Vol.47, No.6,pp.349-353
【文献】I. A. Akpan et al.,Effect of Ethanolamine and Ethylamine on the Entropy Content of the Corrosion of Mild Steel in Tetraoxosulphate(VI) acid Solution,Chemistry and Materials Research,2012年,Vol.2, No.7,pp.40-47
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 8/68
C09K 8/528
C09K 8/575
C02F 1/66
C02F 1/68
B01J 49/50
E21B 43/22
C22B 1/00
C23G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸とエタノールアミンを含み、前記エタノールアミンに対する前記塩酸のモル比が3以上10以下である、水性改質酸組成物であって、pHが1未満であり、190℃までの温度で安定である、前記水性改質酸組成物。
【請求項2】
前記エタノールアミンに対する前記塩酸のモル比が8以下で存在する、請求項1に記載の水性改質酸組成物。
【請求項3】
前記エタノールアミンに対する前記塩酸のモル比が7以下で存在する、請求項1又は2に記載の水性改質酸組成物。
【請求項4】
前記エタノールアミンに対する前記塩酸のモル比が4.1以下で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性改質酸組成物。
【請求項5】
HClおよびアルカノールアミンを含む、水性改質酸組成物であって、前記アルカノールアミンが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびそれらの組合せからなる群から選択され、前記アルカノールアミンに対する前記HClのモル比が10以下で存在する、前記水性改質酸組成物。
【請求項6】
前記アルカノールアミンがモノエタノールアミンである、請求項5に記載の水性改質酸組成物。
【請求項7】
前記アルカノールアミンがジエタノールアミンである、請求項5に記載の水性改質酸組成物。
【請求項8】
金属ヨウ化物またはヨーダートをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性改質酸組成物。
【請求項9】
アルコールをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の改質酸組成物。
【請求項10】
α位にメチル基を有しないα,β-不飽和アルデヒドを含む腐食防止剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の改質酸組成物。
【請求項11】
α位にメチル基を有しない前記α,β-不飽和アルデヒドが、シトラールおよびシンナムアルデヒドからなる群から選択される、請求項10に記載の改質酸組成物。
【請求項12】
石油産業における改質酸組成物の使用であって、
前記組成物が、塩酸とアルカノールアミンを含み、前記アルカノールアミンに対する前記塩酸のモル比が3以上10以下の範囲であり、pHが1未満であり、
前記使用が、地層の刺激;ダウンホールポンプ作業中のブレークダウン圧の低減の支援;掘削作業後の坑井フィルターケークの処理;詰まったパイプの解放の支援;パイプラインおよび/または生産井のスケール除去;注入油井の注入性の向上;流体のpHの低下;設備、油井ならびに関連する設備および施設からなる群から選択される表面上の望ましくないスケールの除去;油井の破砕;マトリックス刺激;環状およびブルヘッドの圧搾および浸漬の実施;管、パイプおよび/またはコイル状管の酸洗;地層の効果的な浸透率の向上;坑井損傷の軽減または排除;穿孔の洗浄;ならびに石灰石、ドロマイト、方解石およびそれらの組合せの可溶化からなる群から選択される作業を含む使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油およびガス産業を含むがこれらに限定されない様々な産業で様々な用途を実施する際に使用するための組成物に関し、さらに具体的には、広範囲の温度および用途にわたって使用するための従来の鉱酸および有機酸の代替物として水性改質酸組成物(aqueous modified acid composition)を作製するためのアルカノールアミン(alkanolamine(s))の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
石油およびガス産業では、生産を開始するか、増加させるか、回復させるために、油井に対して酸による刺激が行われる。いくつかの例では、油井は最初に低い浸透率を示し、油層(reservoir)からの生産を開始するために刺激が使用される。他の例では、スケール付着の問題、坑井(wellbore)の損傷、または油層の枯渇により生産性が低下した既存の油井からの浸透率および流れをさらに促進するために、刺激またはレメディエーションが使用される。
【0003】
酸処理は、油層の自然な浸透率を開始、回復または増加させるために、油層破砕圧超または油層破砕圧未満で行われる刺激処理(stimulation treatment)の一種である。酸処理は、主に塩酸である酸を油井に注入して、典型的には貯留岩の酸不溶性堆積物粒間の石灰石、ドロマイトおよび方解石セメントを溶解するか、スケール蓄積を処理することによって達成される。
【0004】
酸の用途には、マトリックス酸処理(matrix acidizing)、フラクチャー酸処理(fracture acidizing)、およびブレークダウンまたはスピアヘッド酸処理(breakdown or spearhead acidizing)(地層破壊を補助するために、酸を用いない破砕パッドまたはセメント操作の前に汲み上げられる(破砕圧(fracture pressure)の低減、供給速度の増加)の主要な3種の他、坑井または穿孔内に残ったセメントの洗浄が挙げられる。油井内および油層地層の孔内に酸が地層破砕圧未満で注入された際に、マトリックス酸処理が行われる。この刺激形態では、酸は、岩の浸透率を妨げている堆積物地層および/または泥固形物を溶解し、油層の自然の孔(ワームホーリング(wormholing))を拡大し、回収のために坑井への炭化水素の流れを刺激する。マトリックス酸処理は、貯留岩の破砕を避けるのに十分な低い圧力で行われるが、フラクチャー酸処理は、非常に高い圧力で油井に酸を注入し、貯留岩を物理的に破砕し、地層の酸反応部分をエッチングすることを伴う。この種の酸処理は、一連のワームホール(wormhole(s))の形成に加えて、炭化水素が流れることができるチャネル、または酸エッチングされたフラクチャーを形成する。場合によっては、フラクチャーを支えて開くのを助け、炭化水素の坑井内への流れをさらに高めるプロパントが流体中に導入される。
【0005】
生産を刺激したり、レメディエーション作業を行ったりするために油井に対して使用される最も一般的な種類の酸は、カーボナート油層を刺激するのに有用な塩酸(HCl)である。
【0006】
石油およびガス産業で塩酸を使用することにより直面する主な課題の一部には、極めて高いレベルの腐食が挙げられる(典型的には、それ自体が人間、野生生物、環境および設備に対して毒性および有害性を有する「フィルミング」タイプの腐食防止剤を添加することによって相殺される)。鉱酸と様々な種類の金属との反応は大きく異なる場合があるが、アルミニウムおよびマグネシウムなどの柔らかい金属は、即時の損傷を引き起こす大きな影響を非常に受けやすい。塩酸は、毒性(潜在的に致死的)であり、皮膚、目および金属に対して腐食性を示す塩化水素ガスを生成する。50ppm(百万分率)を超える濃度では、脱出限界許容濃度(Immediately Dangerous to Life and Health)(IDHL)になる可能性がある。1300~2000ppmの濃度では、2~3分以内に死亡する可能性がある。
【0007】
水帯水層または他の水源の表面またはダウンホールに意図せずまたは偶発的に酸が放出された場合の酸の固有の環境影響(器質性不妊、野生生物の中毒など)は壊滅的であり、その著しいpH低下を引き起こす可能性があり、毒性を実質的に増大させる可能性があり、水生種を大量に死滅させ、水に曝露したり水を飲用する人間または家畜および野生生物の潜在的な中毒を引き起こす可能性がある。表面での意図しない放出はまた、塩化水素ガスの放出を引き起こし、人間および動物の健康を危険にさらす可能性がある。これは、タンクが割れたり漏れたりした場合の大規模貯蔵所では、またはHClを扱うトラックによる交通事故の際に一般的な事象である。典型的には、一般市民に近い場合、事故後に広い地域を避難させる必要があり、そのような貯蔵区域の承認前に、包括的で、実施に費用がかかる緊急避難計画を策定する必要がある。塩化水素ガスは酸性であるため、特に水分の存在下では腐食性でもある。
【0008】
一般的な腐食制御添加剤を含む鉱酸およびその混合物は自然に生分解することができないため、意図しない放出が生じた場合には、事業者にとって費用のかかる浄化再生コストが生じる。さらに、鉱酸および一部の有機酸によって生成される有毒ガスは、人間/動物に有害であり、腐食性が高く、および/または爆発性、毒性および/または腐食性の蒸気を生成する可能性がある。酸の輸送および貯蔵要件は制限が多く負担が大きい。同様に、このような危険な製品の混合を扱う職員による曝露を取り巻く危険性は、都市の範囲内などの高リスク地域、および沖合などの環境的に慎重に扱うべき地域での使用/実施を制限する。
【0009】
もう一つの懸念は、周囲温度であっても酸の腐食レベルが高いことに起因する現地での曝露事故の可能性であり、この酸の高い腐食レベルは、貯蔵タンクの潜在的な故障および/または展開装置の故障、すなわち、高い腐食率(孔食、亀裂、ピンホールおよび重大な欠陥)によって引き起こされるコイル状管または高圧鉄の欠陥を引き起こす。その他の懸念には、事業者が改修を実行し、ダウンホールポンプ、チューブラー、ケーブル、パッカーなどを交換しなければならない、腐食によるダウンホール設備の故障;鉱酸および有機酸の一定しない強度または品質レベル;産業生産レベルに基づく潜在的な供給問題;表面ポンプ装置の高レベルの腐食により、事業者およびサービス会社にとって修理および保守のコストが高くなること;酸を注入することを目的とした特殊な設備が必要とされ、事業者およびサービス会社の設備投資が大幅に増加すること;ならびに最終製品を地元で、またはその最終用途に非常に近いところで調達することができないこと;輸送および現場貯蔵が困難であることが挙げられる。
【0010】
典型的には、酸は、石油およびガスの生産地域からある程度離れた国の工業地域で生産され、酸の特性の様々な側面を制御するために、最大で、かつ時には10種を超える添加剤も必要とされ、取扱いおよび出荷物流の複雑さが増す場合がある。最小限の添加剤しか必要としない代替物を有することは、非常に有利である。
【0011】
温度上昇に伴う極めて高い腐食速度および反応速度は、所望の効果、例えば、油またはガスの生成物を深く浸透させてワームホールを増大させる、または「経路」を効果的にエッチングして石油生成物が坑井に自由に流れることを可能にする、などを達成する前に、従来の鉱酸を消費/反応または「中和」させる。別の例として、状況によっては、詰まったドリルパイプを開放する(free)ために塩酸を利用することができる。ボトムホールの温度の上昇および反応速度の大幅な上昇のために、パイプ/チューブを詰まらせた地層を溶解するのに必要な深さに達する前に、多くの酸が、表面に近い方の地層で消費されるか、それを中和するため、さらに系統的に消費されたり反応したりする代替物を有し、まだ活性な溶液によってスラッジを処理し、パイプ/チューブを自由に引っ張ることができるようにすることが有利である。
【0012】
生成または注入された水の鉱物沈殿による表面設備上のスケール付着の問題を処理するために従来の酸が使用される場合、人間および機械装置ならびに高価な設備がその酸に曝露し、腐食に関連した問題が発生すると、事業者にとってリスクおよびコストが増大する。強酸は、塩基もしくはさらに高いpHの流体または水と混合されると、潜在的な安全上の懸念および設備の損傷を引き起こす大量の熱エネルギーを生成し(発熱反応)、典型的には、淡水と所望の濃度まで酸を混合する必要があることから(高塩分の水に耐えられず、鉱物が沈殿する可能性があるため)、海水または生成された水と現場で混合するのとは対照的に、企業が現地外で予め混合することが必要となるため、輸送に関連するコストが増加する。
【0013】
pH制御状況で使用される従来の鉱酸は、特定のポリマー/添加剤の急速な分解を引き起こし、これらの悪影響に対抗するために増加した配合物または化学物質を添加する必要がある場合がある。多くの沖合操業区域では、酸の輸送/取扱いおよび展開に関する非常に厳格な取締規則があり、事業者の負担およびコストを増大させている。酸を使用してチューブまたはパイプを酸洗する場合、温度が上昇すると、酸系の腐食レベルを制御するために使用される典型的な添加剤が非常に急速に劣化し始め(防止剤が鋼鉄上で「プレートアウト」するか、高速適用でシアーリングアウト(sheering out)するために)、酸が非常に腐食性になり、ダウンホール設備/チューブラーに損傷を与えるため、極めて高い注意が払われなければならない。従来の酸は、噴出防止装置(BOP)/ダウンホールツール/パッカー/水中ポンプ/シールなどに見られるような、石油およびガス産業で見られる多くのエラストマーおよび/またはシールに有害であり得る。使用済みの酸は典型的にはまだ低pHであり、毒性および腐食性のままであることから、バックフラッシュプロセス中に使用済みの酸を処理しなければならないこともまた極めて費用がかかる。使用または適用後、使用済みのHClのそれよりもはるかに高い、パイプラインを介して製造施設に輸出することができる酸ブレンドを有し、廃棄コスト/手数料を削減することは有利である。また、鉱酸は、典型的には、使用済みの酸のpHが上昇するにつれて、作業中に可溶化された鉄および/または鉱物を沈殿させ、施設の混乱および生産の喪失を引き起こす。pHが中性状態の近くまたはそれを超えて劇的に上昇しても、溶液中でこれらの可溶化された鉱物および金属を保持する強酸を有し、使用済みの酸を処分する必要性を大幅に減少させ、さらに経済的な方法で使用済みの酸を処理することを可能にすることは有利である。酸は、石油およびガス産業における多くの作業の遂行に使用され、様々な石油井および関連設備の所望の生産を達成し、それらのそれぞれのシステムを維持し、特定の掘削、レメディエーションおよび仕上作業機能(すなわち、詰まったパイプの開放、フィルターケーク処理、刺激およびスケール処理)を補助するために必要であると考えられる。鉱酸の使用に伴う関連する危険性は広範囲に及ぶため、そのような危険性が化学的または機械的に設計されているかどうかを制御することにより、それらを軽減することが望ましい。
【0014】
強酸の有用性を維持しながら、強酸の悪影響を排除するか、単に低減することは、この産業にとって困難でありリスクである。危険の少ない製品の使用に対する公衆および政府の要求が増大するにつれて、企業は、従来の酸の使用に関連する欠点のすべてまたは大部分を伴わずに必要な機能を果たす代替物を探している。
【0015】
一部の改質酸は、強酸の使用から生じるいくつかの問題を克服しているが、それらの反応性は、場合によっては、一般にスピアヘッド処理酸として利用される15%HClのような従来の鉱酸などの高速作用酸を必要とするであろう使用者にとって懸念事項となる。迅速な反応時間を維持しながら、安全性の向上(すなわち、発煙性または蒸気圧が低く、金属および皮膚組織に対して腐食性が低い、輸送の問題)を慎重に両立させることは、事業者にとって課題である。
【0016】
様々な水圧破砕技術が存在し、いくつかの異なるアプローチが特定の区域内で適用され得る。地層、坑井鉱物、気孔率および浸透率および場所に特有の工学的要件に基づいて、水圧破砕プログラムと破砕流体組成物とが変化する。ただし、水ベースのフラッキング技術では、典型的には、スピアヘッドまたはブレークダウン酸工程、パッド工程、プロパント工程およびフラッシュ工程の4つの工程が必要とされる。一般に酸スピアヘッド工程と呼ばれるスピアヘッド工程では、事業者は、典型的には、10%~15%塩酸を使用するが、酸の反応性が高く好ましい供給速度を開始するのに必要な時間が短縮されるため、最も好ましいのは15%塩酸である。スピアヘッド酸の目的は、坑井穿孔に存在する破片を除去することであり、低圧で破砕処理の次の段階を開始し、破砕流体がその地層に到達するための明確な経路を提供することを支援する。第2の工程であるパッド工程では、流体が坑井内に注入されて地層を破壊または破砕し、ターゲット地層の水圧破砕を開始する。この工程では、プロパントは使用されない。第3の工程であるプロパント工程では、水とプロパント(最も一般的な天然砂または高強度合成プロパント)との混合物が坑井内に注入される。プロパントは、ゲル化または粘性流体(フラッキング流体とも呼ばれる)によって地層に運ばれ、堆積される。圧力が低下し、流体および過剰なプロパントが地層から除去される間、フラクチャーを開いたままに維持するために、プロパントが地層内に留まる。地層内に留まっているプロパントにより、地層がその新たな増加した浸透率を維持することが可能になる。最後に、フラッシュ工程では、依然として坑井内に残っている可能性のある残滓の過剰なプロパントを洗い流すために、大量の淡水を注入して坑井内にポンプで送り込む。
【0017】
石油産業でのいくつかの作業は流体を非常に高い温度(190℃までまたはそれ以上のものもある)に曝し、これらの様々な作業に使用される組成物は、それらの全体的な効果を失うことなく高温に耐える必要がある。また、これらの組成物は、超高温での腐食効果を制御することが非常に困難で高価な従来の鉱酸と比較して、接触する設備に影響を与えないか、影響を少なくとも最小限に抑えるか、腐食させないか、腐食を少なくとも最小限に抑えながら、広範囲の温度にわたる作業に適用することができなければならない。
【0018】
海洋掘削および生産が日常的に行われている海域に接する多くの国では、環境および人間への曝露の影響を最小限に抑えることを目的とした多くの規制と運用パラメータとが導入されている。これらの規制/手順には、海洋生物および/または環境に有害な可能性のある特定の化学物質の禁止および/または規制が含まれる。これらの非常に制限的な規制を克服するために、多くの石油会社は、石油およびガスの探鉱ならびに生産の産業において幅広い用途を有する酸などの特定の化学物質の取扱いのために、非常に費用のかかる封じ込めプログラムを採用している。
【0019】
様々な石油およびガス事業で従来使用されている酸は、190℃までまたはそれ以上の温度に曝され得る。これらの温度では、それらの反応性および腐食性は指数関数的に増大し、そのため、それらの経済的効果は大きく低下する。腐食は、高温での主要な懸念事項の1つであり、それが全く制御可能できなければ、追加の化学物質を用いて制御することは困難であり、費用がかかる。状況によっては、温度制約、または市場で広く入手することができない非常に高価な外国産の酸系のために、化学溶液とは対照的な機械的手順を利用しなければならない。
【0020】
尿素および塩酸の主成分を含有するような改質および合成酸が開発され、現在特許が取得されているが、これは従業員の安全性を高め、腐食効果を減らし、反応速度を遅くし、HClの毒性を減らすことを目的としている。しかし、90~100℃を超える温度では、このような化合物を含有する合成または改質酸中の尿素成分は最終的に分解し、分解の副産物としてアンモニアおよび二酸化炭素を生成する傾向があることが分かっている。アンモニア成分は、HClの酸性成分を中和し、生成物を非反応性または中性にする。さらに、分解相中の主にアンモニアの生成によって引き起こされるpHの上昇のために、制御されていない、以前に可溶化された鉱物沈殿による坑井および/または地層損傷のリスクがある。
【0021】
米国特許第20160032176A1号明細書では、生成層がカーボナートである地下油井を処理する方法が開示されており、この方法は、(a)多価カチオン反応性ポリマーの水溶液、(b)脂肪酸およびエタノールアミンを含む溶液、(c)カルシウム塩が不溶性である1つ以上の化合物の酸性水溶液、または(d)尿素もしくはそのアルカン誘導体またはこれらの両方とポリビニルピロリドン(PVP)とを含む水溶液のいずれかを含む処理流体を調製することを含む。この明細書では、溶液が破砕圧よりも低い圧力でカーボナート層と接触するように油井に処理流体を入れると述べられている。さらに、処理流体がカーボナート層と反応することを可能にし、それにより、地層表面、または地層表面の一部に膜を堆積させると述べられている。次いで、酸が破砕圧よりも低い圧力でカーボナート層と接触するように油井に酸溶液を入れる。
【0022】
先行技術にもかかわらず、高温での石油およびガス事業における酸の使用によって誘発される実質的な課題に鑑みて、改質酸の安全性および低下した腐食効果を提供し、HClなどの従来の酸の性能に匹敵する性能を有しながら、90~100℃を超える温度で安定である既知の合成または錯化/改質酸の代替物を見出す重大な必要性が依然として存在する。本発明者らは、驚くべきことにかつ予期せずに、アルカノールアミンと塩酸とを適切な比率で混合することにより、酸の性能特性を実質的に維持し、それにより、石油およびガス事業において有用であり続け、競争力のある価格で広く入手可能でありながら、この一般的な従来の鉱酸(HCl)に対する、安全性の向上した代替物を得ることができることを見出した。
【0023】
したがって、様々な石油産業用途および温度で使用するための、さらに安全で、さらに技術的に進歩した強酸組成物であって、必ずしも限定するものではないが、高い腐食速度および/または安全性などの多くの関連する危険性および/または作業上の問題を低減/最小化または排除することができる強酸組成物の必要性が依然として存在する。
【0024】
本発明による組成物が、高温(90℃超および最高190℃)での作業に対して安定性を示し、したがって、酸が必要とされるあらゆる用途のために石油およびガス産業においてそれらを有用なものとし、また、これまでこの産業ではその組合せがまれであるか知られていない、あるレベルの安全性、技術的利点および低腐食性を提供する技術を用いて高温仕上および保守/生産作業を処理する能力を事業者に提供することが発見された。本発明による組成物は、限定するものではないが、スピアヘッドブレークダウン酸、酸フラクチャリング作業、注入-廃棄油井処理、高温循環スチーム注入(high temperature cyclical steam injection)(CSS)スケール処理、スチーム補助重力排油法(SAGD)スケール処理、表面および地下設備およびパイプラインおよび施設スケール処理、フィルターケーク処理、管または金属酸洗、マトリックス酸処理作業、刺激、破砕、浸漬、セメント圧搾、流体pH制御、詰まったパイプの作業、ならびにコイル状管の酸洗浄、浸漬および圧搾を含む油田作業に理想的に使用することができる。本発明による組成物の最も好ましい使用は、スピアヘッド酸、レメディエーション作業および高温循環スチームおよびSAGDスケール処理である。
【発明の概要】
【0025】
本発明による組成物は、腐食、物流および取扱い、人間および環境曝露、反応速度、毒性レベル、生分解傾向および地層/流体適合性および設備および/または生産および水処理インフラの運転適合性の問題を対象として、石油およびガス産業ならびにその関連用途のために開発されてきた。
【0026】
本発明の目的は、石油およびガス産業における広範囲の用途にわたって使用することができ、既知の組成物よりも有利な特性を示す改質酸組成物を提供することである。本発明の一態様によれば、強酸とアルカノールアミンとが、15:1以下のモル比で、好ましくは10:1以下のモル比で、さらに好ましくは8:1以下のモル比で、さらに一層好ましくは5:1以下のモル比で、さらになお一層好ましくは4.1:1以下のモル比で、さらになお一層好ましくは3:1以下のモル比で含まれる改質酸組成物が提供される。本発明の別の態様によれば、強酸とアルカノールアミンとが、3:1~15:1、好ましくは3:1~10:1、さらに好ましくは4:1~8:1、またさらに好ましくは5:1~6.5:1のモル比で含まれる改質酸組成物が提供される。
【0027】
本発明の好ましい実施形態は、適切に使用すると、石油およびガス産業のチューブラーダウンホールツールおよび設備の腐食速度が非常に低くなる改質酸組成物を提供する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、石油産業で使用するための生分解性の改質酸組成物が提供される。本発明の好ましい実施形態によれば、石油産業で使用するための改質酸組成物であって、90℃超および最高190℃の温度で熱安定性を提供する改質酸組成物が提供される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、石油産業で使用するための水性改質酸組成物であって、最高190℃の温度での許容される油田限界で腐食保護をもたらす水性改質酸組成物が提供される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、石油産業で使用するための水性改質酸組成物であって、希釈時または水による希釈プロセス中に発熱反応が最小である水性改質酸組成物が提供される。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、石油産業で使用するための水性改質酸組成物であって、既存の工業用酸添加剤と適合性のある水性改質酸組成物が提供される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、石油産業事業で使用するための水性改質酸組成物であって、カルシウムベーススケールまたは地層との接触/適用時に直ちに反応する水性改質酸組成物が提供される。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、石油産業で使用するための水性改質酸組成物であって、制御性の向上した水素プロトン供与のために、意図されていない坑井近くの侵食または表面溶解が少なくなる水性改質酸組成物が提供される。これにより、さらに深く、さらに最適な地層浸透とワームホール特性とをもたらし、浸透率を増加させ、典型的な「オープンホール」機械的分離適用処理中のゾーン連通(zonal communication)の可能性を低減させる。塩酸などの反応性の高い酸が、分離のためのオープンホールパッカー(ケーシング無し)を有する油井内に展開される場合、目的のゾーンまたは区域間の連通、ならびに潜在的な砂の生産、および微粉の移動をもたらす、坑井に近い圧縮強度の損失を引き起こす可能性がある。加えて、塩酸などの一般的に展開される従来の鉱酸は、それらの高い反応性のために、坑井安定性の問題を引き起こし、圧縮力が大幅に増加する可能性があり、それによって、崩壊または圧縮された生産チューブラーのために潜在的な高価なレメディエーション作業を引き起こす可能性がある。活性化エネルギー障壁が増加した、またはプロトン拡散係数の制御性が向上した改質酸を使用することは有利である。
【0034】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、石油およびガス産業に関連する先行技術の従来の酸組成物の使用に見られる欠点の少なくともいくつかを克服するであろう。
【0035】
本発明の別の態様によれば、改質酸組成物は、スケールの処理、および流体系におけるpHレベルの調整からなる群から選択される用途のために鉱業でも使用することができる。本発明のさらに別の態様によれば、改質酸組成物は水処理産業でも使用することができ、上記用途は、pHの調整およびアルカリ性廃液の中和からなる群から選択される。本発明のさらに別の態様によれば、改質酸組成物は、土壌のpHレベルを調整するために肥料/造園業でも使用することができる。本発明のさらに別の態様によれば、改質酸組成物は、イオン交換ベッド(ion exchange bed(s))を再生するためにも使用することができる。本発明のさらに別の態様によれば、改質酸組成物は建設産業でも使用することができ、上記使用は、コンクリートのエッチング、ならびに設備および建物からのコンクリートの洗浄からなる群から選択される。本発明のさらに別の態様によれば、改質酸組成物は発電産業でも使用することができ、上記使用はパイプラインおよび関連設備のスケール除去、ならびに施設のスケール除去からなる群から選択される。本発明のさらに別の態様によれば、改質酸組成物は、食品および酪農産業でも使用することができ、上記使用は、タンパク質の製造、デンプンの製造、ホエーの脱塩、カゼインの製造およびイオン交換樹脂の再生からなる群から選択される。本発明のさらに別の態様によれば、改質酸組成物は、流体のpHを低下させるためにプール産業(pool industry)でも使用することができる。本発明のさらに別の態様によれば、改質酸組成物は、鋼鉄の酸洗および金属の洗浄からなる群から選択される作業を実施するために製造産業でも使用することができる。本発明のさらに別の態様によれば、改質酸組成物は、小売産業でも低pH洗浄添加剤として使用することができる。
【0036】
本発明は、添付の図面に関連して本発明の様々な実施形態の以下の説明を考慮すると、さらに完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明による好ましい実施形態の様々な濃度の消費率(spend rate)対対照組成物(control composition)の2つの濃度のグラフ表示である。
図2】本発明による別の好ましい実施形態の様々な濃度の消費率/反応速度対対照組成物の2つの濃度のグラフ表示である。
図3】地層への酸(酸フラックス)の注入の関数として得られた様々なワームホールのCTスキャンである。
図4】本発明の好ましい実施形態による組成物を使用したワームホール効率関係試験の結果のグラフ表示である。
図5A】本発明の好ましい実施形態による組成物を使用したワームホール効率関係試験中に得られたワームホールの画像である。
図5B】本発明の好ましい実施形態による組成物を使用したワームホール効率関係試験中に得られたワームホールの画像である。
図5C】本発明の好ましい実施形態による組成物を使用したワームホール効率関係試験中に得られたワームホールの画像である。
図5D】本発明の好ましい実施形態による組成物を使用したワームホール効率関係試験中に得られたワームホールの画像である。
図5E】本発明の好ましい実施形態による組成物を使用したワームホール効率関係試験中に得られたワームホールの画像である。
図6】HCl(15%)および例1の組成物(濃度90%)の注入量と比較したスキン進展(skin evolution)のグラフ表示である。
図7】HCl(15%)および例1の組成物(濃度90%)の経時的な刺激された産出指数(stimulated productivity index)のグラフ表示である。
図8】HCl(15%)および例1の組成物(濃度90%)の総注入量と比較したワームホール浸透長のグラフ表示である。
図9】HCl(15%)および例1の組成物(濃度90%)の0スキン(skin)での産出指数比較のグラフ表示である。
図10】HCl(15%)および例1の組成物(濃度90%)の10スキンでの産出指数比較のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の説明、およびそこに記載される実施形態は、本発明の原理の特定の実施形態の単数または複数の例の例示として提供される。これらの例は、これらの原理および本発明の限定ではなく、説明の目的のために提供される。
【0039】
本発明の一態様によれば、
・強酸とアルカノールアミンとが、15:1以下のモル比で、好ましくは10:1以下のモル比で、さらに好ましくは8:1以下のモル比で、さらに一層好ましくは5:1以下のモル比で、さらになお一層好ましくは4.1:1以下のモル比で、さらになお一層好ましくは3:1以上のモル比で含まれる合成または改質酸組成物が提供される。
【0040】
好ましくは、本発明の組成物の体積および重量パーセントの観点からの主成分は、アルカノールアミンおよび強酸、例えばHCl、硝酸、リン酸、硫酸、スルホン酸を含む。本発明によるアルカノールアミンは、少なくとも1つのアミノ基、-NH、および1つのアルコール基、-OHを含有する。本発明による好ましいアルカノールアミンには、限定するものではないが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンが挙げられる。さらに好ましいのは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンである。最も好ましいのはモノエタノールアミンである。塩酸に加えると、一級アミノ基がルイス塩基として作用し、HClのプロトンがルイス酸として作用するルイス酸/塩基付加物が形成される。形成された付加物は、発煙性/蒸気圧効果、吸湿性、および高度に腐食性など、塩酸自体の有害な影響を大幅に低減する。本発明の好ましい実施形態によれば、様々な有機酸も考えられる。
【0041】
2つの主成分のモル比は、意図する用途および所望の可溶化能力に応じて調整または決定することができる。1:1のHCl:MEAのモル比を使用することができるが、2:1の比を超えて、好ましくは3:1の比を超えて作業すると、結果は著しく最適化される。強酸がHClである好ましい実施形態によれば、以下の利点、すなわち、健康、安全性、環境性、および塩酸に対する作業上の利点のうち少なくとも1つを依然として提供しながら、HCl成分の比率を増加させて組成物の可溶化能力を増大させることができる。
【0042】
モノエタノールアミンなどのアルカノールアミンは当業者に知られている化合物であるが、当業者であれば、そのような化合物がHClなどの強酸と混合されないことを知っている。実際、当業者であれば、モノエタノールアミンLFG 85のDOW安全データシートを検討すると、この化合物と強酸との接触を避けなければならないことを示していることに気付くであろう。
【0043】
本発明による組成物と接触する鋼鉄の腐食を低減するために、強酸とアルカノールアミンとを含む様々な腐食防止剤を本発明の好ましい組成物に組み込むことができる。本発明の好ましい実施形態によれば、組成物は、アセチレンアルコール、芳香族または脂肪族アルデヒド(例えば、α,β-不飽和アルデヒド)、アルキルフェノン、アミン、アミド、窒素含有複素環(イミダゾリンベースなど)、イミニウム塩、トリアゾール、ピリジンおよびその誘導体または塩、キノリン誘導体、チオ尿素誘導体、チオセミカルバジド、チオシアナート、第四級アミン塩、ならびにカルボニルとアミンとの縮合物からなる群から選択される腐食防止剤として作用し得る有機化合物をさらに含み得る。本発明による組成物に組み込むことができる増強剤は、ギ酸、ヨウ化カリウム、酸化アンチモン、ヨウ化銅、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム、塩化アルミニウム、酸化ビスマス、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよびそれらの組合せから選択される。好ましくは、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物化合物が使用される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、組成物に他の添加剤を場合により加えることができる。このような一般的な添加剤の非限定的な一覧には、鉄制御剤(還元剤など)、水湿潤性界面活性剤、非乳化剤、無乳化剤、発泡剤、スラッジ防止剤、粘土および/または微粒子安定剤、スケール防止剤、相互溶媒、摩擦低減剤が含まれる。
【0045】
アルキンアルコールおよび誘導体などのアルコールおよびその誘導体、好ましくはプロパルギルアルコールおよびその誘導体は、腐食防止剤として使用することができる。プロパルギルアルコール自体が、低濃度でよく作用する腐食防止剤として従来使用されている。ただし、濃縮物として扱うには非常に毒性/引火性の高い化学物質であるため、濃縮物に曝露する際には注意しなければならない。本発明による組成物では、取扱いがはるかに安全な誘導体であるため、メチルオキシランと錯化した2-プロピン-1-オールを使用することが好ましい。Basocorr(登録商標)PPは、このような化合物の例である。
【0046】
金属ヨウ化物またはヨーダート(iodate(s))、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化第一銅およびヨウ化リチウムは、本発明の好ましい実施形態による組成物とともに腐食防止剤増強剤として潜在的に使用することができる。実際、ヨウ化カリウムは、腐食防止剤増強剤として従来使用されている金属ヨウ化物であり、高価であるが極めてうまく作用する。ヨウ化カリウムは規制されておらず、取り扱うのに安全である。ヨウ化物またはヨーダートは、好ましくは0.1~5重量%、さらに好ましくは0.2~3重量%、さらに一層好ましくは0.25~2重量%の範囲の重量パーセントで存在する。
【0047】
例1-本発明の好ましい実施形態による組成物を調製する方法
モノエタノールアミン(MEA)および塩酸を出発試薬として使用する。4.1:1のモル比のMEAとHClとを得るには、まず165gのMEAと835gの水とを混合しなければならない。これにより、モノエタノールアミン溶液が形成される。その後、先に調製したモノエタノールアミン溶液370mlを取り、36%のHCl水溶液(22 Baume)350mlと混合する。添加剤を使用する場合、MEA溶液とHClとを完全に混合してから添加剤を加える。例えば、この時点で、ヨウ化カリウム、および本発明による組成物の性能を最適化するために望ましい他の任意の成分を加えることができる。あらゆる生成物が可溶化されるまで循環を維持する。必要に応じて、この時点で追加の生成物を加えることができる。
【0048】
例1の得られた組成物は、1年を超える貯蔵寿命を有する透明な(わずかに黄色の)液体である。この組成物は、約100℃の沸点を有する。比重は1.1±0.02である。水に完全に溶解し、そのpHは1未満である。凝固点は-35℃未満であると決定された。
【0049】
組成物中の有機成分は生分解性である。組成物は、皮膚試験の分類に従って軽度刺激性物質に分類される。組成物は、15%HClと比較して発煙性が大幅に低い。代理情報を使用して毒性試験を計算し、LD50は-1300mg/kg超であると決定された。
【表1】
【0050】
例1の組成物中のHCl含有量は、15%HCl組成物中のHCl含有量に対応する。同様に、例2は、20%HCl組成物中のHCl含有量に対応する。同様に、例3は、25%HCl組成物中のHCl含有量に対応する。
【表2】
【0051】
本発明の好ましい実施形態によれば、アルカノールアミンおよび強酸を含む組成物は、テルペン;α位にメチル基のないα,β-不飽和アルデヒド;少なくとも1つの両性界面活性剤;および溶媒を含む腐食防止パッケージ自体をさらに含み得る。好ましくは、α位にメチル基のないα,β-不飽和アルデヒドを使用することができ、そのようなアルデヒドの例には、限定するものではないが、シトラールおよびシンナムアルデヒド(およびその誘導体)が挙げられる。これらの成分は、最終改質酸組成物中に0.025~0.5%の範囲の量で存在することが好ましい。
【0052】
本発明の他の好ましい実施形態では、メチルオキシランと錯化した2-プロピン-1-オールは、0.05~5.0重量/重量%の範囲で存在することができ、好ましくは0.1~3重量%、さらに一層好ましくは0.5~2.0重量/重量%、さらになお一層好ましくは0.75~1.5重量/重量%の範囲の量で存在する。ヨウ化カリウムの代わりに、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化銅およびヨウ化リチウムを使用することができる。ただし、ヨウ化カリウムが最も好ましい。
【0053】
本発明の好ましい実施形態によれば、腐食パッケージはテルペン化合物を含み得る。本発明者らが望ましい腐食防止結果を達成すると考えたテルペンには、モノテルペン(非環式)、単環式テルペンおよびβイオノンが挙げられる。前述のテルペンサブクラスのうちいくつかの例示的であるが非限定的な化合物には、モノテルペンについてはシトラール(ゲラニアールとネラールとの混合物)、シトロネラール、ゲラニオールおよびオシメン、単環式テルペンについてはαテルピネン、カルボン、p-シメンが挙げられる。さらに好ましくは、テルペンは、シトラール、イオノン、オシメンおよびシメンからなる群から選択される。
【0054】
腐食防止パッケージは、環境に優しい界面活性剤を含むことが好ましい。さらに好ましくは、界面活性剤は、分解を受けることなく、閉鎖環境で2~4時間の期間にわたって少なくとも最高220℃の温度への曝露に耐えることができる。
【0055】
好ましくは、両性の界面活性剤が腐食防止パッケージに存在する。好ましくは、両性界面活性剤は、スルタイン(sultaine)界面活性剤、ベタイン界面活性剤およびそれらの組合せからなる群から選択される。さらに好ましくは、スルタイン界面活性剤およびベタイン界面活性剤は、アミドベタイン界面活性剤、アミドスルタイン界面活性剤およびそれらの組合せからなる群から選択される。さらに一層好ましくは、アミドベタイン界面活性剤は、C~C16の疎水性尾部を含むアミドベタインからなる群から選択される。最も好ましくは、C~C16の疎水性尾部を含むアミドベタインはコカミドベタイン(cocamidobetaine)である。
【0056】
また、好ましくは、腐食防止パッケージは、アニオン性界面活性剤をさらに含む。好ましくは、アニオン性界面活性剤はカルボン酸界面活性剤(carboxylic surfactant)である。さらに好ましくは、カルボン酸界面活性剤はジカルボン酸界面活性剤(dicarboxylic surfactant)である。さらに一層好ましくは、ジカルボン酸界面活性剤は、C~C16の範囲の疎水性尾部を含む。最も好ましくは、ジカルボン酸界面活性剤はラウリミノジプロピオン酸ナトリウムである。
【0057】
いくつかの好ましい実施形態は、コカミドプロピルベタインおよびβ-アラニン、N-(2-カルボキシエチル)-N-ドデシル-、ナトリウム塩(1:1)を含む腐食防止パッケージを使用する。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、腐食防止パッケージを含む酸性組成物を調製する場合、金属ヨウ化物またはヨーダート、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化第一銅およびヨウ化リチウムを腐食防止剤増強剤として加えることができる。ヨウ化物またはヨーダートは、好ましくは、酸性組成物の0.1~1.5の範囲の重量/体積%、さらに好ましくは0.25~1.25重量/体積%、さらに一層好ましくは1重量/体積%で存在する。最も好ましくは、使用されるヨウ化物はヨウ化カリウムである。
【0059】
好ましくは、テルペンは、腐食防止パッケージの総体積の2体積%~25体積%の範囲の量で存在する。
【0060】
好ましい実施形態によれば、プロパルギルアルコールまたはその誘導体は、存在する場合、腐食防止パッケージの総体積の20体積%~55体積%の範囲の量で存在する。
【0061】
好ましくは、少なくとも1つの界面活性剤は、腐食防止パッケージの総体積の2体積%~20体積%の範囲の量で存在する。
【0062】
好ましくは、溶媒は、腐食防止パッケージの総体積の10体積%~45体積%の範囲の量で存在する。
【0063】
本発明の好ましい実施形態によれば、腐食パッケージは、メチルオキシランと錯化した2-プロピン-1-オール;β-アラニン、N-(2-カルボキシエチル)-N-ドデシル-、ナトリウム塩(1:1);コカミドプロピルベタイン;(±)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエナール(シトラール);およびイソプロパノールを含む。さらに好ましくは、組成物は、メチルオキシランと錯化した38.5%の2-プロピン-1-オール;5%のβ-アラニン、N-(2-カルボキシエチル)-N-ドデシル-、ナトリウム塩(1:1);5%のコカミドプロピルベタイン;20%の(±)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエナール(シトラール);および31.5%のイソプロパノールを含む(百分率はいずれも体積分率である)。
【0064】
本発明の好ましい実施形態による組成物とともに使用される場合、シトラールは、腐食防止パッケージの総体積の5~30体積%の範囲の濃度で存在し、シンナムアルデヒドは、5~30体積%の濃度で存在することができ、コカミドベタインは、2.5~15体積%の濃度で存在することができる。温度、酸、金属などの様々な要因に応じて、酸組成物内の好ましい腐食防止剤パッケージの配合量は、0.1~7.5%体積/体積の範囲であり得る。さらに好ましくは、0.1~5%体積/体積の範囲であり得る。実施された様々な生分解性、毒性および生物蓄積性試験は、これらの成分を使用する組成物の大部分が、北海(ノルウェー)での沖合使用のための黄色の分類の下に列挙するための要件を十分に満たすことが確認されたことを示している。
【0065】
腐食試験
本発明の好ましい実施形態による組成物を腐食試験に曝露した。ほとんどの場合、様々な酸性流体に腐食パッケージを加えた。腐食パッケージ成分の%は、最終配合組成(酸+腐食防止剤)内のその%を示す。腐食試験の結果を表3~25に報告する。使用した対照は、HClの組成物であった。様々な温度で様々な時間にわたり、様々な列挙された組成物に様々な鋼鉄グレードの試験片を曝露した。好ましい結果は、lb/ft2の腐食数が0.05以下のものである。さらに好ましくは、その数は0.02以下である。
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15-1】

【表15-2】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】
【0066】
典型的な油田グレードの鋼鉄に対する組成物の腐食の影響に関しては、スピアヘッド用途または低温スケール処理などの特定の用途について業界が設定した許容腐食限界を明らかに十分に下回ることが証明された。
【0067】
実施された腐食試験は、様々な温度および鋼鉄グレードに曝露された場合の、業界標準(HClブレンドまたは他の任意の鉱酸もしくは有機酸ブレンド)と比較した本発明によるそのような改質酸組成物の使用の影響を決定するのに役立つ。
【0068】
HClのみを含有する組成物について得られた結果をベースラインとして使用して、他の組成物を比較した。表3の結果は、本発明の好ましい実施形態による組成物が、110℃の温度で6時間にわたり1018鋼鉄の試験片に曝露された場合、15%HCl溶液と比較して大幅な改善(2倍を超えて良好)を示すことを示している。
【0069】
さらに、本発明の好ましい実施形態による組成物は、ダウンホール性能の利点、輸送および/または貯蔵の利点、ならびに健康、安全性および環境面の利点を有する、従来の酸の代替物を最終消費者が利用できるようにする。腐食制御の強化は、90℃を超える温度でのHClの使用に対する本発明の利点である。皮膚腐食性の低減、制御された消費性、および高い耐塩性は、本発明による組成物の好ましい実施形態に依存する他の利点である。
【0070】
溶解試験
本発明の好ましい実施形態による改質酸の効果を評価するために、溶解試験を実施して、炭酸カルシウム(表24)およびドロマイト(表25)への曝露時の様々な組成物の溶解力を試験した。試験は23℃の温度で実施し、15%HClおよび28%HClの溶液の効果と比較した。結果を以下の表24および25に報告する。
【表24】

【表25】
【0071】
消費率
本発明の好ましい実施形態による組成物の反応性を評価するために試験を実施した。
【0072】
60℃での合成酸の反応速度の決定
所定量の合成酸を水浴中で60℃に加熱した。次いで、溶液を天秤上に置き、事前に秤量した炭酸カルシウムタイルを加熱溶液に浸した。重量は、1分間ごとに30分間記録した。記録された重量から重量損失率を計算し、時間の関数としてプロットした。
【0073】
本発明の好ましい実施形態による同じ組成物の2つの異なる濃度は、得られたデータに基づいて、2つの濃度の対照酸組成物(15%および28%のHCl)と比較した際に、匹敵する消費率を有した。試験のグラフ表示を図1および図2に示す。
【0074】
本発明は、15%HClよりも系統的な反応速度を示すが、33%~90%の濃度では、ほとんどの典型的な改質、錯化または合成酸よりも反応性が高く、90%希釈(酸90%-水10%)では、15%HClの反応速度に非常に近くなる。他の安全性の高い改質酸系よりも大幅に速く反応する安全性の高い改質酸系を有することは、酸の目的が穿孔から残留セメントを清浄にし、刺激処理(フラクチャーまたはマトリックス)の初期段階の間にブレークダウン圧または連合圧(federate pressure)を低下させるのを助ける(支援する)ことであるスピアヘッド用途では有利である。次いで、その場で所望の濃度に展開および希釈またはブレンドすることができる濃縮物(濃縮型でも高い安全性を提供する)として現地に貯蔵することができる酸系を有することが有利である。油井処理の困難な領域に遭遇した場合(高ブレークダウン圧)、濃度を増加させ、それにより、以下の流体系の所望の注入速度を達成するのに要する時間を短縮することができる。
【0075】
安定性試験
様々な温度での例1の組成物の安定性を評価するために、テフロンライナー付き加圧エージングセルを使用して試験を実施した。400psiの圧力で試験を実施した。試験の結果を以下の表26に報告する。
【表26】
【0076】
皮膚試験
この試験の目的は、モル比1:4.1のMEA-HCl組成物を皮膚に単回塗布した後の例1の組成物の皮膚刺激性および腐食性を評価することであった。
【0077】
試験表面(手の甲にある人間の皮膚)を、モル比1:4.1のMEA-HCl組成物に曝露した。曝露領域の目視観察は15分、30分、45分および60分の時間間隔で実施した。曝露後に表面を洗浄し、皮膚表面の目視観察として結果を記録した。
【0078】
記録された観察結果は、試験した組成物の曝露中および曝露後に、曝露した皮膚に対する水疱形成または発赤の影響はなかったことを示す。
【0079】
皮膚試験(ウサギ試験)
被検物質の皮膚腐食の可能性を決定するために、例1の組成物を使用して、アルビノウサギに対して皮膚腐食/皮膚刺激試験を実施した。
【0080】
希釈されていない被検物質0.5mLを用いて初期状態の動物を処置して、処置部位の皮膚刺激および欠損を所定の時間観察した。第1の投与部位を洗浄し、3分後に観察した。第2の部位に投与し、1時間ラップし、次いで洗浄した。第1および第2の試験部位の両方を観察した。第3の投与部位を4時間ラップした。第3の部位を開封して洗浄した1時間後、3つの試験部位いずれにも皮膚刺激性および/または腐食性の兆候が観察された。第1に投与した動物の結果に基づいて、2匹の追加の動物それぞれに対して、単一の無傷の4時間試験部位に投与した。皮膚刺激および欠損に関して、約1時間、24時間、48時間および72時間の時点で、ならびに(初期状態の動物のみ)投与後4時間の開封から7、10および14日後に全動物の観察を行った。
【0081】
皮膚腐食性評価期間内に、いずれの動物にも組織破壊(壊死)は観察されなかった。被検物質は、アルビノウサギの無傷の皮膚に塗布された場合、DOT基準により非腐食性と判断される。
【0082】
試験の主要な皮膚刺激部分では、2匹の動物に皮膚刺激が観察された。刺激に対する1時間、24時間、48時間および72時間の時点の観察結果(4時間の曝露部位のみ)に基づいて、1.3の一次刺激性指数(PII)が得られ、この値を用いて軽度刺激の記述評価を割り当てた。
【0083】
硫化鉄スケール制御
硫化鉄を溶解する能力について、本発明の好ましい実施形態による組成物を試験した。性能の結果を以下の表27に記録した。
【表27】
【0084】
上記の結果は、一般的に遭遇する油田スケールである硫化鉄を可溶化することによる、本発明の好ましい実施形態による組成物の別の有用な使用を示す。
【0085】
エラストマー適合性
石油およびガス産業で使用される一般的な封止要素が酸組成物と接触すると、劣化するか、少なくとも損傷の兆候を示す傾向がある。本発明の好ましい実施形態による組成物に、この産業での作業に共通する多くの封止要素を曝露して、それらの完全性に対する本発明の好ましい実施形態による組成物の影響を評価した。さらに具体的には、ブレークダウンでは欠陥のある封止要素の交換が必要とされるため、封止要素の硬化および乾燥ならびに機械的完全性の損失は、特定のプロセスの効率に大きな影響を及ぼし得る。様々なエラストマーに対する例1の組成物の曝露の影響を評価するために試験を実施した。70℃および28,000kPaでの例1の濃縮生成物の長期(72時間曝露)エラストマー試験では、Nitrile(登録商標)70、Viton(登録商標)75、Aflas(登録商標)80型の封止要素などの様々なエラストマーの劣化がほとんどまたは全くないことが示された。結果を表28に報告する。これは、例1の組成物が、石油およびガス産業で典型的に見られる様々なエラストマーと適合性があることを示している。
【表28】
【0086】
ワームホーリング試験
カーボナート酸処理におけるワームホーリングプロセスに関する多くの試験により、流動する酸によって生成される溶解パターンは、以下の3つのタイプ、すなわち、(1)酸の大部分が岩の表面の近くで消費されるコンパクト溶解、(2)少数の高導電性マイクロチャネル、すなわちワームホールの先端で周囲の壁よりも溶解が急速に進むワームホーリングおよび(3)均一な溶解のうち1つとして特徴付けることができることが示されている。
【0087】
生成される溶解パターンは間隙速度に応じて決まり、間隙速度は多孔質媒体を流れる酸の速度として定義される。間隙速度は、注入速度に関係している(間隙速度=注入速度/(気孔率の低い領域))。コンパクト溶解パターンは比較的低い注入速度で生成され、ワームホールパターンは中間速度で生成され、均一な溶解パターンは高速で生成される。
【0088】
ワームホール先端でのこの間隙速度により、ワームホールの伝播を制御する。次いで、半経験的流量相関に基づいて最適な酸注入速度が計算される。最適な注入速度では、所定の量に対して、酸が地層に最も深く浸透し、酸刺激の成果が最も効率的になる。ワームホール構造は、低い間隙速度での大径から最適速度条件での薄いワームホールへ、高い間隙速度でのさらに分岐したパターンへと変化する。
【0089】
所定の量の酸が地層に最も深く浸透する最適な間隙速度が酸刺激の最も効率的な結果をもたらす場合に、間隙速度がワームホールモードを生じることは、業界によって広く受け入れられている。ワームホール構造は、低い間隙速度での大径から最適条件での薄いワームホールへ、高い間隙速度でのさらに分岐したパターンへと変化する。図3は、3つのワームホールパターンを示す例を示している。
【0090】
この一連の実験的試験研究では、例1の組成物(濃度90%に希釈)を調べた。この組成物は、特に高温から超高温までの標準的なHClブレンドに取って代わる独自の油田化学物質の添加によって強化された低ハザード/低腐食水性合成酸としてデザインされている。
【0091】
全く同じ試験条件下で、本発明による酸系を15%HClと比較した。比較のために、両酸系について、ワームホール効率曲線(ブレークスルーまでの細孔容積対間隙速度)を決定した。試験された組成物は、HClと比較して、約11%低い値および約18%低い最適間隙速度でブレークスルーの同等の最適細孔容積を有すると結論付けられた。
【0092】
試験パラメータ
例1の組成物対15%HClの性能を評価するために、2組のマトリックス酸処理実験を実施した。実験では、0.3体積%の一般的な市販の腐食防止剤を含む濃度90%の例1の組成物を使用し、他の実験セットでは0.3体積%の腐食防止剤を含む15%のHCl溶液を使用した。実験はインディアナ石灰石のコアを利用して実施した。
【0093】
コアはいずれも直径1.5インチ、長さ8インチであった。コアサンプルの平均気孔率は14%であり、平均浸透率は13mDであった。これらの実験で使用された背圧は2000psiであった。試験温度は180°F(82℃)であった。石灰石のコアは、北米の油田で最もよく見られる地質のシミュレーションに役立つことから選択された。
【0094】
試験手順
マトリックス酸処理装置は、ポンプシステム、蓄積システム、コア封じ込めセル、圧力維持システム、加熱システムおよびデータ取得システムからなる。Teledyne Isco(登録商標)シリンジポンプを使用して、一定の速度で水および酸を注入した。背圧調整器を使用して、所望の最小システム圧力を2000psiに維持した。
【0095】
流体の漏れを防ぐために、封圧は注入圧力よりも400~500psi高く設定した。2つの加熱テープを使用して、高温試験用のコアホルダと注入液とを加熱した。実験中、流れが定常状態に達すると、水を注入することによりシステムをまず加圧した。コア封じ込めセル全体にわたって測定された圧力差から浸透率を計算した。次いで、システムを実験温度まで加熱した。完全なシステムの場合、流体、コア封じ込めセル、コアが目標温度に達し、水注入を停止し、酸注入を開始した。
【0096】
ワームホールがコアを破った際に注入を停止し、ブレークスルー細孔容積の計算のために酸注入時間を記録した。各実験条件について、同じ温度および圧力パラメータを用いて4~6個の個別の試験を実施した。変更した唯一の条件は、注入速度であった。最適な条件が特定されるまで、一定範囲内で速度を変化させた。Buijse and Glasbergen(2005)モデルを用いて、得られた実験データを当てはめることによりワームホール効率関係を生成した。
【0097】
コアの特性
試験に使用したコアは、直径1.5インチ、長さ8インチであった。線形特性を確保するために、露頭の1つのサンプルからインディアナ石灰石サンプルを取得した。
【0098】
実験結果
HClの実験結果を以下の表29に列挙する。例1の組成物(濃度90%)の実験結果を表30に列挙する。
【表29】

【表30】
【0099】
Buijse and Glasbergenの式を用いた2組の実験の最適条件を表31に列挙する。
【0100】
図4は、本発明の好ましい実施形態による組成物を使用したワームホール効率関係試験の結果のグラフ表示である。取得されプロットされたデータは、間隙速度の関数としての細孔容積ブレークスルーと相関する。各曲線の最低点は、各酸性組成物に最適な条件を提供すると考えられる。
【0101】
例1の両組成物(濃度90%)のCTスキャンを図5A、B、C、DおよびEに示す。コアLDA16(図5A)、IC108(図5D)、IC109(図5B)、IC111(図5E)およびIC112(図5C)のCTスキャン画像。画像は、最低間隙速度(0.57cm/分)から最高間隙速度(6.37cm/分)まで並べた。ワームホーリングの挙動は従来のパターンに従う。低い間隙速度ではワームホールの分岐が多くなり、高い間隙速度ではワームホールの均一性および直線性が高まる。
【表31】
【0102】
最適なワームホール効率理論によれば、ワームホール直径は、注入速度が低下し、低い注入速度で刺激が効率を失い始めると増大すると考えられる。これは、例1の組成物(濃度90%)を使用するこの試験中には観察されない。低い注入速度(0.8ml/分(0.5cm/分))では、HClコアは大径のワームホールを発生し、ワームホールの伝播速度は遅い。封圧用のスリーブが、HClによって示されるコンパクト溶解により破損したため、試験を中止した。対照的に、例1の組成物(濃度90%)は、最適度の高い注入速度(比較的高い注入速度)と同等のワームホール直径を示した。1.2cm/分では、例1の組成物(濃度90%)によって生成されたワームホールは、15%HCl組成物によって生成されたワームホールよりもはるかに小さかった(望ましかった)。これは、本発明の好ましい実施形態による例1の組成物(濃度90%)が、特に低い注入速度で、HClよりも一般に高い刺激効率を有することを示す。
【0103】
ワームホール効率試験の予備的観察:例1の組成物の最適間隙速度(濃度90%)は15%HClよりも低く、HCl酸系試験よりも有利である。この特徴は、ワームホーリング性能に関して任意のレベルの効率を達成するために現場作業で典型的に使用される高い注入速度の要件を低減するのに役立つ。例1の組成物(濃度90%)のブレークスルーまでの最適細孔容積は、15%HClと同等(最適)である。他の遅延酸は、比較的低い間隙速度を有する傾向がある。それらの大部分は、すべてではないにしても、比較的低い反応速度のために、ブレークスルーの比較的高い最適細孔容積を有する。例1の組成物(濃度90%)は、PVbt,optの増加を示さず、ワームホール性能の観点から15%HClと比較すると、有利な可能性がある。低い間隙速度では、この利点はさらに顕著になる。注入速度が制限された用途では、本発明による組成物は、同じ刺激結果を伴って、必要な酸量を2~4分の1減少させる可能性がある。
【0104】
ワームホーリング性能
例1の組成物(濃度90%)と15%HCl組成物とのワームホーリング性能を比較するために、2つの間隙速度値でいくつかのモデリング作業を行った。
【0105】
それらの性能を比較するために、例1の最適な条件に近いvと比較的低い条件でのvとをモデル化した。表32には、選択したvでの対応するPVbt値を含めた。
【表32】
【0106】
モデリング作業は、ワームホール伝播のBuijse-Glasbergenモデルに従った。式は以下の通りである。
【数1】
【0107】
事例ごとに、PVbt,nおよびvi,nの値を変化させて、vwh値を比較することによって酸の性能を評価した。ワームホールの先端速度を時間ステップ(この事例では0.1分)に乗算し、前の時間ステップでのワームホールの長さに加算することにより、ワームホールがどれだけ増加したかを単純に計算することによって、各時間ステップでのワームホールの長さを計算した。
【数2】

単純化されたHawkinsの式によってスキンを計算した。
【数3】

以下の式4を使用して、全体的な産出指数を計算した。
【数4】

次いで、各酸の産出を0および10の全体的なスキンでのJ値と比較した。
【数5】

スキンの項は0または10の値を有する。次いで、使用した酸の量とともに、この比率をグラフ化した。計算のために、2bpmの注入速度、14%の気孔率、1,000フィートの坑井厚、0.4フィートの初期坑井半径、2,980フィートの油層半径、3,000psiの坑井圧、5,000psiの油層圧、30mDの浸透率、1cpの流体粘度および1.117の地層体積係数を想定した。
【0108】
図6図10は、これらの条件により生成されたグラフである。4つの曲線は、2つの異なる間隙速度での両組成物の性能を表す(0.6および1.6cm/分でのHCl組成物(15%)および例1の組成物(濃度90%))。図6は、HCl(15%)および例1の組成物(濃度90%)の注入量と比較したスキン進展のグラフ表示である。図7は、HCl(15%)および例1の組成物(濃度90%)の経時的な刺激された産出指数のグラフ表示である。図8は、HCl(15%)および例1の組成物(濃度90%)の総注入量と比較したワームホール浸透長のグラフ表示である。図9は、HCl(15%)および例1の組成物(濃度90%)の0スキンでの産出指数比較のグラフ表示である。図10は、HCl(15%)および例1の組成物(濃度90%)の10スキンでの産出指数比較のグラフ表示である。
【0109】
図6図10から分かるように、例1の組成物(濃度90%)は、15%HCl組成物と比較して、低い間隙速度で明らかに優れた性能を示す。これは、酸刺激操作が15%HClの最適間隙速度を下回るポンプ流量の制限を有する場合、例1の組成物(濃度90%)は15%HClと比較して明確な利点を有することを意味する。
【0110】
環境試験
モノエタノールアミンの環境への影響を評価するために、一連の試験を実施した。純度98~99%のモノエタノールアミンの原液を試験に供した。必要に応じて溶液を希釈した。
【0111】
海洋カイアシ類(カイアシ類;甲殻類)に対する急性致死毒性度の決定(ISO 14669(1999)Water Quality)
この試験は、海洋カイアシ類アカルチア・トンサ(Acartia tonsa)に対するモノエタノールアミンの水相毒性を決定するために委託された。A.トンサ毒性LC50試験は、以下の逸脱および干渉を除いて試験計画に従って実施され、他の関連する妥当性基準をいずれも満たしていた。最終試験では、希釈水の温度は許容限度を最大0.7℃下回っており、pHは許容限度を最大0.01単位下回っていた。これらの逸脱は、対照群に死亡例が認められなかったことから、試験に影響を及ぼすとは予測されなかった。
【0112】
用量反応区域検出試験では、モノエタノールアミンの組成物は、水相で海洋カイアシ類A.トンサに対して550mg/lの48時間LC50値(水性画分(WAF))を示した。結果は名目上濃度に基づいており、統計解析のCETISパッケージソフト内の線形補間によって計算された。用量反応区域検出試験全体を通して、対照群の10%未満の死亡率が観察された。最終試験では、モノエタノールアミンの組成物は、水相の海洋カイアシ類A.トンサに対して、海水中で434mg/lの48時間LC50値(水性画分(WAF))を示した。結果は名目上濃度に基づいており、統計解析のCETISパッケージソフト内の線形補間によって計算された。最終試験全体を通して、対照群の10%未満の死亡率が観察された。
【0113】
OSPARCOMガイドライン(2006)パートA.端脚類コロフィウム(Corophium)種を使用した堆積物バイオアッセイ
この試験は、潮間帯の端脚類コロフィウム・ボルタトル(Corophium volutator)に対するモノエタノールアミンの組成物の堆積物相毒性を決定するために委託された。C.ボルタトル毒性LC50試験は、試験計画に従って実施され、関連する妥当性基準をいずれも満たしていた。10,000mg/kg(公称重量)での複製物のpHは、通常必要とされる7.5~8.5の範囲と比較してはるかに高いpHを示したが、これは被検物質自体の直接的な影響である。モノエタノールアミンの組成物は、堆積相の海洋端脚類C.ボルタトルに対して、6,660mg/kgの10日LC50値(乾燥堆積物による)を示した。結果は名目上濃度に基づいており、統計解析のCETISパッケージソフト内の線形補間によって計算された。
【0114】
ISO 10253(2016)Water quality-スケルトネマ種を用いた海藻類の成長阻害試験
この試験は、海洋単細胞藻類スケルトネマ種に対するモノエタノールアミンの組成物の水相毒性を決定するために委託された。スケルトネマ種毒性EC(r)50試験は、試験計画に従って実施され、関連する妥当性基準をいずれも満たしていた。この試験から得られた結果を報告する。観察により、1000mg/lストックのpHは物理的変化をもたらしたことが示され、このストックは混濁から透明に変化したことから、100mg/lストックとは別に未調整ストックを用量反応区域検出試験および最終試験に使用したところ、物理的変化は観察されなかった。
【0115】
用量反応区域検出試験では、モノエタノールアミンの組成物は、水相で海洋性植物プランクトン、スケルトネマ種に対して509mg/lの72時間EC(r)50値(WAF)を示した。結果は名目上濃度に基づいており、統計解析のCETISパッケージソフト内の線形補間によって計算された。最終試験では、モノエタノールアミンは、水相で海洋性植物プランクトン、スケルトネマ種に対して199.7mg/lの72時間EC(r)50値(WAF)を示した。結果は名目上濃度に基づいており、統計解析のCETISパッケージソフト内の線形補間によって計算された。
【0116】
海水中の例1の組成物の好気的分解性の評価(OECD 306法)
この試験は、海水中のモノエタノールアミンの組成物の好気的分解性を決定するために委託された。試験は試験計画に従って実施され、関連する妥当性基準をいずれも満たしていた。この試験では逸脱はなかった。ThODNO3値は、試験した化合物の化学式から決定された。窒素含有成分が存在していたため、完全な硝化が想定された。
【0117】
酸素ブランク分解は、正規の許容限度内であった。可溶性標準物質の安息香酸ナトリウムは、最初の14日間で60%超分解し、試験に用いた海水には十分な数の生菌が含まれていたことが示された。収集された海水データから、この試験で使用された海水の微生物数が許容限度内であったことが確認されている。
【0118】
硝化を考慮した生分解データによれば、モノエタノールアミンの組成物は28日間で71%生分解された。被検物質は最初の7日間に急速に生分解するように思われ、14日目と21日目との間で速度が低下した。しかし、最後の7日間に速度が上昇し、28日間の試験の最終日に最大生分解率71%に達した。
【0119】
OECD 306ガイドラインには、標準物質と被検物質との混合物のBODが、2つの物質の別個の溶液のBODの合計よりも小さければ、被検物質は(使用濃度で)細菌に対して阻害性であると考えることができると記載されている。この試験では、組成物は28日間で12%という低い阻害率を示した。
【0120】
海産魚キプリノドン・ヴァリエガータス(Cyprinodon variegatus)に対する例1の組成物の毒性の評価(OSPAR限界試験)
この試験は、海産魚キプリノドン・ヴァリエガータスに対するモノエタノールアミンの組成物の水生(96時間限界試験)毒性を決定するために委託された。
【0121】
96時間魚類限界試験は、試験計画に従って実施され、関連する妥当性基準をいずれも満たしていた。この試験では干渉はなかった。曝露の試験条件は、下記の例外を除いて、正規および非正規の許容限度内であった。試験水槽および対照水槽の両方に10匹の魚が使用され、対照群に死亡例は観察されなかった。関連試験の海洋カイアシ類アカルチア・トンサに対する試験組成物の毒性評価(48時間LC50)(2356-1)では、pHの調整により被検物質ストックに物理的変化が生じたため、pHは調整しなかった。
【0122】
試験濃度は、最も感受性の高い急性毒性試験種であるスケルトネマ種とA.トンサとの間の被検物質EC/LC50値から導出した。関連試験から、藻類種スケルトネマ種の方が感受性が高く、EC50値は199.7mg/lであることが確認された。
【0123】
モノエタノールアミンの組成物に対する96時間の曝露後、海産魚C.ヴァリエガータスに死亡は観察されなかった。したがって、この組成物は、水相では海産魚C.ヴァリエガータスに対して、96時間曝露後(水性画分)199.7mg/lで影響を示さなかったと結論付けることができる。
【0124】
本発明の好ましい実施形態による組成物の使用
表33は、約1~90%希釈の範囲の希釈時の本発明による組成物の多くの潜在的な使用(または用途)を列挙するものであり、それらには、限定するものではないが、注入/廃棄処理;マトリックス酸の圧搾、浸漬またはブルヘッド(bullhead);酸フラクチャリング、酸洗浄;破砕スピアヘッド(ブレークダウン);パイプラインスケール処理、セメントブレークダウンまたは穿孔洗浄;pH制御;ならびにスケール除去用途、高温(最高190℃)循環スチームスケール処理およびスチーム補助重力排油法(SAGD)スケール処理(最高190℃)が挙げられる。
【0125】
使用方法は一般に、以下の工程、すなわち、本発明の好ましい実施形態による組成物を提供する工程と、水性改質酸組成物に表面(金属表面など)を曝露する工程と、水性改質酸組成物が上記表面に作用するのに十分な時間を与える工程と、場合により、曝露時間が作業を完了するまたは十分に完了するのに十分であると決定された場合、酸組成物を除去する工程とを含む。別の使用方法は、水性改質酸組成物を油井に注入することと、水性改質酸組成物がその所望の機能を果たすのに十分な時間を与え、続いて油井から酸組成物を除去して酸曝露を停止することとを含む。さらに別の使用方法は、pHの低下を必要とする流体本体(典型的には水)に水性改質酸組成物を曝露することと、水性改質酸組成物がpHを所望のレベルまで低下させるのに十分な曝露時間を与えることとを含む。
【表33】
【0126】
改質酸組成物の使用の主な利点には、濃縮された生成物を現地に送達し、(淡水、または低塩度から高塩度の生産水を用いて)現地または近くの場所で利用可能な流体で希釈することによる、輸送される酸の総貨物量およびタンクの必要数の低減が挙げられる。本発明の好ましい実施形態の別の利点には、腐食防止剤の配合量の低減が挙げられる。本発明による組成物の好ましい実施形態の他の利点には、腐食制御用化学添加剤の分離により、HCl酸タンクを定期的に循環させる必要性の排除につながる運転効率;ダウンホールチューブラーに対する腐食の減少;最高190℃の温度腐食保護、油処理プロセスでの鉄または金属の沈殿および低いpHレベルでの可溶化カーボナートの沈殿による設備の混乱の減少、改質酸の熱安定性、ならびに低い危険性、低い発煙酸(低蒸気圧)、低いか全くない皮膚腐食性を有することによる、作業員および環境への有害なHCl酸曝露の減少が挙げられる。
【0127】
本発明の好ましい実施形態による改質酸組成物は、業界によって設定された時間依存性の許容可能な腐食限界(典型的には高温で2~3時間)を達成しながら、高温(最高190℃)でのSAGDまたはCSS(循環流)作業におけるスケール形成を処理するために使用することができる。これはまた、スケール処理前の「冷却」のためにSAGDまたはCSS作業を停止する必要性を排除し、上記改質酸は上記油井に注入されて高温で上記油井内のスケール形成を処理し、ダウンタイムおよび事業者の損失収益を大幅に低減する。
【0128】
前述の発明は、明確さと理解とを目的としてある程度詳細に説明されているが、関連技術の当業者であれば、本開示に精通すれば、添付の特許請求の範囲における本発明の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細に様々な変更を加えることができることを理解するであろう。

図1
図2
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図10