(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドルアセンブリ
(51)【国際特許分類】
E05B 85/18 20140101AFI20230106BHJP
E05B 79/06 20140101ALI20230106BHJP
E05B 81/54 20140101ALI20230106BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
E05B85/18 D
E05B79/06 D
E05B81/54
B60J5/04 H
(21)【出願番号】P 2019572497
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2018067420
(87)【国際公開番号】W WO2019002469
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515091865
【氏名又は名称】ユーシン ドイチュラント ツーガングスジュステーメ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】アントン リンデル
(72)【発明者】
【氏名】アントニー ラファル
(72)【発明者】
【氏名】レジス グレヌイヤ
(72)【発明者】
【氏名】トマーシュ シュメリンガイ
(72)【発明者】
【氏名】アントニー ゲラン
(72)【発明者】
【氏名】ギョーム デプレオー
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014113495(DE,A1)
【文献】仏国特許出願公開第03016854(FR,A1)
【文献】特表2016-537532(JP,A)
【文献】特開2017-008712(JP,A)
【文献】国際公開第2012/095084(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0000167(US,A1)
【文献】国際公開第2016/151116(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 5/00- 5/04
E05B 77/00-85/28
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアハンドル(1)の連結装置であって、前記ドアハンドル(1)は、ハンドルレバー(3)を有しており、前記ハンドルレバー(3)は、ドアパネル(100)の外面と同一面にあるフラッシュ位置と、モータ(7)によって突出させられ、ユーザが把持することができる待機位置との間を、および前記モータ(7)を作動させることなく前記ハンドルレバー(3)を前記待機位置に移動させるために、プレロードされたプッシュ-プッシュユニット(13)が解除される内側クリック位置との間を、移動可能であり、かつ前記連結装置は、
・前記ハンドルレバー(3)に接続されたレバーシャフト(27)と、
・前記プレロードされたプッシュ-プッシュユニット(13)を解除し、かつ前記ハンドルレバー(3)を待機位置に押し出すために、前記ハンドルレバー(3)が前記クリック位置に向けて内側に押し込まれたときに、プッシュ-プッシュレバー(30)を介して前記プッシュ-プッシュユニット(13)と相互作用する前記レバーシャフト(27)に回転可能に連結されたプッシュ-プッシュレバーリング(29)と、
・前記ハンドルレバー(3)を前記フラッシュ位置から前記待機位置に動かすために前記モータ(7)と相互作用する前記レバーシャフト(27)に回転可能に連結された連結ギア(31)とを備えており、
前記レバーシャフト(27)は、前記レバーシャフト(27)によって支えられ、かつ前記レバーシャフト(27)と前記連結ギア(31)とを回転可能に連結する連結機構を介して前記連結ギア(31)に回転可能に連結されており、前記連結機構は、前記ハンドルレバー(3)の前記クリック位置から前記待機位置までの角度において、前記連結ギア(31)に対する前記レバーシャフト(27)の自由な回転運動を可能にするようになっていることを特徴とする車両用ドアハンドル(1)の連結装置。
【請求項2】
前記レバーシャフト(27)は、軸部(27b)に少なくとも1つの半径方向の脚片(35)を備えており、前記連結ギア(31)は、前記半径方向の脚片(35)を収容する少なくとも1つの円弧状の孔(39)を備えており、前記円弧状の孔(39)の角のある開口部は、前記ハンドルレバー(3)の前記クリック位置から前記待機位置までの前記角度に対応していることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアハンドル(1)の連結装置。
【請求項3】
前記レバーシャフト(27)は、前記軸部(27b)に2つの直径方向に互いに対向する半径方向の脚片(35)を備えており、前記
連結ギア(31)は、半径方向に対向する2つの円弧状の孔(39)を備えており、前記半径方向の脚片(35)は、前記ハンドルレバー(3)の前記クリック位置から前記待機位置までの前記角度の間を自由に移動することができることを特徴とする請求項2に記載の車両用ドアハンドル(1)の連結装置。
【請求項4】
前記プッシュ-プッシュレバー(30)は、前記レバーシャフト(27)の第1軸部(27a)に嵌合されたプッシュ-プッシュレバーリング(29)によって支えられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル(1)の連結装置。
【請求項5】
前記レバーシャフト(27)、前記連結ギア(31)、および前記プッシュ-プッシュレバーリング(29)は、プラスチックを成形して作られていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル(1)の連結装置。
【請求項6】
減速機構(9)と相互作用する噛合い歯(33)を支えている前記連結ギア(31)の角部は、前記ハンドルレバー(3)の前記クリック位置から前記待機位置までの前記角度と、フラッシュ位置から待機位置までの角度の合計よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル(1)の連結装置。
【請求項7】
減速機構(9)と相互作用する噛合い歯(33)を支えている前記連結ギア(31)の角部は、前記ハンドルレバー(3)の前記クリック位置から前記待機位置までの前記角度の2倍よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル(1)の連結装置。
【請求項8】
車両用ドアハンドルであって、前記ドアハンドルは、ハンドルレバー(3)を有しており、前記ハンドルレバー(3)は、ドアパネル(100)の外面と同一面にあるフラッシュ位置と、モータ(7)によって突出させられ、ユーザが把持することができる待機位置との間を、および前記モータ(7)を作動させることなく前記ハンドルレバー(3)を前記待機位置に移動させるために、プレロードされたプッシュ-プッシュユニット(13)が解除される内側クリック位置との間を、移動可能であり、かつ前記ドアハンドルは、
・前記ハンドルレバー(3)に接続されたレバーシャフト(27)と、
・前記モータ(7)を作動させずにプレロードされたスプリング(15)が解除されるクリック位置から待機位置に向け
て、前記ハンドルレバー(3)を移動させるようになっている少なくとも1つの前記プレロードされたスプリング(15)を有するプッシュ-プッシュユニット(13)と、
・前記モータ(7)と、前記ハンドルレバー(3)を回転させるために、前記モータ(7)から連結ギア(31)を含む前記ハンドルレバー(3)に回転運動を伝達する減速機構(9)とを備えており、
前記レバーシャフト(27)は、前記レバーシャフト(27)によって支えられ、かつ前記レバーシャフト(27)と前記連結ギア(31)とを回転可能に連結する連結機構を介して前記連結ギア(31)に回転可能に連結されており、前記連結機構は、前記ハンドルレバー(3)の前記クリック位置から前記待機位置まで
の角度において前記連結ギア(31)に対する前記レバーシャフト(27)の自由な回転運動を可能にするようになっていることを特徴とする車両用ドアハンドル。
【請求項9】
前記プッシュ-プッシュユニット(13)は、解除されると、突出フィンガー(21)を介して前記レバーシャフト(27)から半径方向に突出するプッシュ-プッシュレバー(30)と相互作用するスライダー(37)を押し出す、2つのプレロードされたスプリング(15)を備えていることを特徴とする請求項8に記載の車両用ドアハンドル。
【請求項10】
前記減速機構(9)は、前記モータ(7)が作動したときに前記ハンドルレバー(3)を動かすために前記連結ギア(31)と相互作用するウォームギア駆動を備えていることを特徴とする請求項8または9に記載の車両用ドアハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、フラッシユドア用ハンドルレバーを有する車両用ドアハンドルアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用ドアハンドルアセンブリは、ハンドルレバーをフラッシュ位置と待機位置との間で動かすようになっているモータを備えている。フラッシュ位置では、ハンドルレバーは、ドア本体の外面と同一面にある。待機位置では、ハンドルレバーは、ユーザが把持することができるように、この外面から突出している。
【0003】
ユーザがハンドルレバーを待機位置で把持し、さらに突出した開錠位置にハンドルレバーを引くことによりドアのラッチを解除することができる。ハンドルドアレバーは、ボーデンケーブル、回転ピン、またはギア機構等を介してラッチ機構と相互作用し、ドアのラッチを解除する。
【0004】
ユーザがハンドルレバーから手を離すと、ハンドルレバースプリングにより、ハンドルレバーは待機位置に移動させられる。ドアを開閉した後、モータにより、ハンドルレバーを、待機位置からフラッシュ位置に動かすこともできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなドアハンドルアセンブリは、例えばモータまたはカーバッテリーに問題がある場合、すなわちモータが作動できない場合に、ドアを開けることができるようになっているバックアップ機構も備えている。この機構は、例えば、プッシュ-プッシュ機構を備えており、ユーザは、そのフラッシユ位置からプレロードされたスプリングが解除されるクリック位置に達するまで、ハンドルレバーを内側に押し込む。このプレロードされたスプリングは、解除されると、ハンドルレバーを内側のクリック位置から突出した待機位置へ押し出す。
【0006】
ユーザがバックアップモードで車両にアクセスすると、バッテリーは、通常再充電され、および/またはモータの問題は解消され、正常な電気的作動が再開されることとなる。
【0007】
通常の機能では、モータは、その回転速度を下げながら、トルク値を増加させる減速機構、例えばウォームおよびギア機構を介してハンドルレバーを動かす。ユーザがハンドルレバーをフラッシユ位置からクリック位置まで押し込むと、この減速機構は、逆方向に作動する。
【0008】
ユーザが早い速度でドアを開ける場合、作動の不可逆性から生じる別の問題が観察される。特に、ユーザは、ドアを開けようとして、開いた(伸びた)位置にあるハンドルレバーを引き込む。ドアパネルが十分に開いた位置になると、ユーザは、ドアパネルの動きを止めるために、ハンドルレバーを押し込むことにより動きを止めようとする。
【0009】
この力の逆転により、ハンドルレバーは、開いた位置から待機位置またはフラッシュ位置にすばやく戻ってしまう。この動きの間に、減速機構は、潜在的に速い移動速度で逆方向に作動する恐れがある。
【0010】
結果として生じる逆方向への作動により、不可逆性の場合には温度によって摩擦が増加するため、減速機構を劣化させるか、または破損させる恐れを生じさせる。そのため、手動でのバックアップ時および通常のモータの再作動時(例えば、バッテリーの再充電後またはモータの故障の解消後)の両方で、ドアハンドルの操作を危険にさらす恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の欠点を解消させるために、本発明は、車両用ドアハンドルの連結装置であって、前記ドアハンドルは、ハンドルレバーを有しており、前記ハンドルレバーは、ドアパネルの外面と同一面にあるフラッシュ位置と、モータによって突出させられ、ユーザが把持することができる待機位置との間を、および前記モータを作動させることなく前記ハンドルレバーを前記待機位置に移動させるために、プレロードされたプッシュ-プッシュユニットが解除される内側クリック位置との間を、移動可能であり、かつ前記連結装置は、
・前記ハンドルレバーに接続されたレバーシャフトと、
・前記プレロードされたプッシュ-プッシュユニットを解除し、かつ前記ハンドルレバーを待機位置に押し出すために、前記ハンドルレバーが前記クリック位置に向けて内側に押し込まれたときに、プッシュ-プッシュレバーを介して前記プッシュ-プッシュユニットと相互作用する前記レバーシャフトに回転可能に連結されたプッシュ-プッシュレバーリングと、
・前記ハンドルレバーを前記フラッシュ位置から前記待機位置に動かすために前記モータと相互作用する前記レバーシャフトに回転可能に連結された連結ギアとを備えており、
前記レバーシャフトは、前記レバーシャフトによって支えられ、かつ前記レバーシャフトと前記連結ギアとを回転可能に連結する連結機構を介して前記連結ギアに回転可能に連結されており、前記連結機構は、前記ハンドルレバーの前記待機位置と前記クリック位置との間の角距離に対応する角度範囲内において、前記連結ギアに対する前記レバーシャフトの自由な回転運動を可能にするようになっている。
【0012】
前記レバーシャフトの相対的に自由な回転運動により、ユーザがクリック位置に前記ハンドルレバーを押し込むとき、および前記プッシュ-プッシュユニットが前記ハンドルレバーを待機位置に押し出すときに、前記ハンドルレバーと減速段とを選択的に切り離すことができるようになっている。
【0013】
前記連結装置は、以下の特徴のうちの1つ以上を、単独で、または組み合わせて備えることができる。
【0014】
前記レバーシャフトは、軸部に少なくとも1つの半径方向のレールを備えており、前記連結ギアは、前記半径方向のレールを収容する少なくとも1つの円弧状の孔を備えており、前記円弧状の孔の角のある開口部は、前記ハンドルレバーの前記待機位置と前記クリック位置との間の前記角距離に対応している。
【0015】
前記レバーシャフトは、前記軸部に2つの直径方向に互いに対向する半径方向のレールを備えており、前記減速ギアは、半径方向に対向する2つの円弧状の孔を備えており、前記半径方向のレールは、前記ハンドルレバーの前記待機位置と前記クリック位置とに対応する角度位置の間を自由に移動することができる。
【0016】
前記プッシュ-プッシュレバーは、前記レバーシャフトの第1軸部に嵌合されたプッシュ-プッシュレバーリングによって支えられている。
【0017】
前記レバーシャフト、前記連結ギア、および前記プッシュ-プッシュレバーリングは、プラスチックを成形して作られている。
【0018】
減速機構と相互作用する噛合い歯を支えている前記連結ギアの角部は、前記ハンドルレバーのクリック位置から待機位置までの角度と、フラッシュ位置から待機位置までの角度の合計よりも大きくなっている。
【0019】
減速機構と相互作用する噛合い歯を支えている前記連結ギアの角部は、前記ハンドルレバーのクリック位置から待機位置までの角度の2倍よりも大きくなっている。
【0020】
本発明はまた、この種の車両ドア用のドアハンドルに関し、前記ドアハンドルは、ハンドルレバーを有しており、前記ハンドルレバーは、ドアパネルの外面と同一面にあるフラッシュ位置と、モータによって突出させられ、ユーザが把持することができる待機位置との間を、および前記モータを作動させることなく前記ハンドルレバーを前記待機位置に移動させるために、プレロードされたプッシュ-プッシュユニットが解除される内側クリック位置との間を、移動可能であり、かつ前記ドアハンドルは、
・前記ハンドルレバーに接続されたレバーシャフトと、
・前記モータを作動させずにプレロードされたスプリングが解除されるクリック位置から待機位置に向けて、前記ハンドルレバーを移動させるようになっている少なくとも1つの前記プレロードされたスプリングを有するプッシュ-プッシュユニットと、
・前記モータと、前記ハンドルレバーを回転させるために、前記モータから連結ギアを含む前記ハンドルレバーに回転運動を伝達する減速機構とを備えており、
前記レバーシャフトは、前記レバーシャフトによって支えられ、かつ前記レバーシャフトと前記連結ギアとを回転可能に連結する連結機構を介して前記連結ギアに回転可能に連結されており、前記連結機構は、前記ハンドルレバーの前記待機位置と前記クリック位置との間の角距離に対応する角度範囲内において前記連結ギアに対する前記レバーシャフトの自由な回転運動を可能にするようになっている。
【0021】
前記プッシュ-プッシュユニットは、解除されると、突出フィンガーを介して前記ハンドルレバーシャフトから半径方向に突出するプッシュ-プッシュレバーと相互作用するスライダーを押し出す、2つのプレロードされたスプリングを備えていてもよい。
【0022】
前記減速機構は、前記モータが作動したときに前記ハンドルレバーを動かすために前記連結ギアと相互作用するウォームギア駆動を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】異なる位置にあるハンドルレバーを有するドアハンドルを備える車両用ドアの模式的断面図である。
【
図3】
図2のドアハンドルの連結装置の模式図である。
【
図4】
図2および
図3に記載のドアハンドルの連結装置の分解図、およびその主要構成要素の断面図である。
【
図5a】プッシュ-プッシュユニットが作動する場合であって、ハンドルレバーがフラッシュ位置にある場合の
図4の連結装置を示す図である。
【
図5b】プッシュ-プッシュユニットが作動する場合であって、ハンドルレバーがクリック位置にある場合の
図4の連結装置を示す図である。
【
図5c】プッシュ-プッシュユニットが作動する場合であって、ハンドルレバーが待機位置にある場合の
図4の連結装置を示す図である。
【
図6a】モータが作動する場合であって、ハンドルレバーがフラッシュ位置にある場合の
図4の連結装置を示す図である。
【
図6b】モータが作動する場合であって、連結ギアがレバーシャフトに接触するまで回転したときの
図4の連結装置を示す図である。
【
図6c】モータが作動する場合であって、連結ギアがレバーシャフトを待機位置まで回転させたときの
図4の連結装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の他の特徴および利点は、図面に示す本発明の例示的かつ非限定的な実施形態に関する以下の説明を読むことにより、明らかになると思う。
【0025】
すべての図において、同じ構成要素には、同じ符号を付してある。
【0026】
図面は、本発明の適切な実施形態を示しているが、この実施形態を組み合わせることにより、またはこれをわずかに変更することにより、他の実施形態を得ることができることは言うまでもなく、これらの新しい実施形態も、本発明の範囲に含まれるものである。
【0027】
図1は、ドアハンドル1が組み込まれている車両用ドアパネル100の一連の模式的断面図である。ドアパネル100は、車両の外面を形成し、ドアハンドル1は、実質的に、ハンドルレバー3(ユーザが把持して動かす部分)とハンドルフレーム5(ハンドルレバーの作動中に動かない部分)とによって示してある。
【0028】
以下において、「内向き」、「外向き」などの用語は、それぞれ車両の内側および外側を指している。
【0029】
図1の最初の断面図では、ハンドルレバー3は、フラッシユ位置にある。このフラッシユ位置では、ハンドルレバー3の外面は、ドアパネル100と同一面にある。このフラッシユ位置は、車両を運転しているとき、および長時間駐車しているときのものである。フラッシユ位置では、ハンドルレバー3は、駐車中は、通行人によって偶然または故意に動かされる可能性が低く、また運転中は、空気抵抗を減少させている。フラッシユ位置では、ハンドルレバー3は、体裁が良く、かつ目立たないようにドアパネル100に組み込まれているように見える。
【0030】
図1の2番目の断面図では、ハンドルレバー3は、待機位置にある。この待機位置では、ハンドルレバー3は、ユーザが把持することができるように、ハンドル軸Aの周りに所定の角度(例えば20°~45°)だけ外向きに回転している。この待機位置は、ユーザが例えばキーまたはRFIDセキュリティトークンに組み込まれたリモートコントロールを使用して、車両に近づくか、ドアのロックを解除するときのものである。この位置では、ユーザは、ハンドルレバー3を利用することが可能であり、把持することができるが、ハンドルのラッチは、掛ったままである。
【0031】
図1の3番目の断面図では、ハンドルレバー3は、開いた位置にある。待機位置と比較して、ハンドルレバー3は、ユーザによってさらに外向きに(40°~60°以上)回転させられ、ハンドルレバー3は、ラッチ機構と相互作用してドアのラッチを解除する。その結果、ラッチは解除され、ハンドルレバー3をさらに引くことにより、ドアを開ける準備が整う。
【0032】
ハンドルレバー3をフラッシユ位置から待機位置に駆動する機構が機械的または電気的に故障した場合、
図1の4番目の断面図に示すように、ユーザは、ハンドルレバー3に内向きの圧力Pを加えることにより、ハンドルレバー3をドアパネル100の内側に押し込むことができる。これにより、ハンドルレバー3は、本明細書でクリック位置と呼ぶ位置となり、機械的相互作用(「クリック」)により、プッシュ-プッシュユニットのスプリングは解除され、モータが作動しなくてもハンドルレバー3を待機位置に駆動することができるようになる。
【0033】
図2は、ドアハンドル1の内側を示す図である。
図2では、ハンドルレバー3は、車両用ドアパネル100の内面に取り付けられたハンドルフレーム5に対して回転可能である。ハンドルフレーム5内には、ドアハンドル1のほとんどの部品が収容されている。
【0034】
ハンドルフレーム5のハウジング内には、減速機構9を有するモータ7が設けられている。モータ7は、車両のバッテリーからの電流によって作動する。減速機構9は、回転速度を下げ、トルク値を増加させることにより、モータ7の回転出力運動を調整している。減速機構9は、ハンドルレバー3をフラッシユ位置から待機位置まで動かす。
【0035】
減速機構9は、例えば、減速ギアおよび/またはウォームギアシステムからなる1つ以上の減速段を備えている。
【0036】
減速機構9は、連結装置200を動かす。連結装置200は、ハンドルレバー3を組み立てて取付けるために、ドアハンドル1の組み立て時にハンドルレバー本体(図示せず)を取り付けるハンドルレバーベース11を備えている。
【0037】
ハンドルフレーム5には、2つのガイドロッド17の周りに配置された2つのプッシュ-プッシュスプリング15を備えるプッシュ-プッシュユニット13も収容されている。プッシュ-プッシュスプリング15は、解除されると、連結装置200のプッシュ-プッシュレバー30に当接する突出フィンガー21を支持しているスライダー19を押し出す。プッシュ-プッシュフィンガー21は、ゴム、軟質プラスチック、またはその他の衝撃吸収材料でできている。
【0038】
プッシュ-プッシュスプリング15およびガイドロッド17は、それぞれ解除機構23の両側に配置されており、押し込まれるとクリック位置となり、解除機構23は、スライダー19を解除し、次にスライダー19は、ガイドロッド17に沿ってプッシュ-プッシュスプリング15により押し出され、ハンドルレバー3を待機位置に押し出す。
【0039】
ハンドルレバー3の回転位置は、連結装置200の下部に設けた位置決め手段25によって検出される。この位置決め手段25は、磁気インデックスおよび磁気センサー(例えば、ホール効果センサー)を備えている。磁気インデックスは、連結装置200およびハンドルレバー3と共に回転し、磁気センサーは、磁気インデックスの回転位置、ひいては、ハンドルレバー3の位置を定める。
【0040】
図3は、ハンドルフレーム5から取り出した連結装置200の模式図である。
【0041】
図3では、連結装置200は、ハンドルレバーベース11を備えており、特にハンドルレバーベース11から軸方向に延びるレバーシャフト27を保持している。レバーシャフト27は、プッシュ-プッシュレバーリング29および連結ギア31に対応する2つの軸部27a、27bを備えており、プッシュ-プッシュレバーリング29および連結ギア31は、連結装置200が組み立てられた状態で、それぞれ軸部27a、27bを収容している。
【0042】
プッシュ-プッシュレバーリング29は、レバーシャフト27に軸方向にかつ回転可能に連結されており、形状嵌合環状本体から半径方向に延びるプッシュ-プッシュレバー30を備えている。
【0043】
連結ギア31は、円筒形の壁の外面の一部に、噛合い歯33を備えている。
【0044】
図4は、レバーシャフト27、プッシュ-プッシュレバーリング29、および連結ギア31を備える連結装置200の分解図である。
【0045】
レバーシャフト27は、連結装置200を組み立てたときに、プッシュ-プッシュレバーリング29および連結ギア31によってそれぞれ保持される2つの軸部27a、27bを備えている。
【0046】
第1軸部27aは、ハンドルレバーベース11から見ると、4つの半径方向脚片35を有しており、これらは、プッシュ-プッシュレバーリング29の形状嵌合十字形孔と相互作用する。第2軸部27bは、2つの半径方向脚片35を有しており、これらは、第1軸部27aの2つの対向する半径方向脚片35を延長したものである。
【0047】
連結ギア31は、軸孔があけられたギア本体を備えている。この軸孔は、中央の円形孔37、および中央の円形孔37の半径方向に対向する2つの方向に延びる2つの円弧状の孔39を備えている。
【0048】
円弧状の孔39の角のある弧状の開口部は、ハンドルレバー3(またはハンドルレバーベース11)のクリック位置と待機位置との間の角距離に少なくとも等しい。円弧状の孔39の角のある弧状の開口部の角度は、約30°~150°である。
【0049】
角のある開口部の角度(約30°)は、レバーシャフト27と連結ギア31の自由な回転運動が、ハンドルレバー3のクリック位置と待機位置との間の角距離に等しい実施形態に対応している。開口部の角度がより大きい(90°よりも大きい)と、円弧状の孔39は、ドアパネル100を早く開ける動きの終わりに生じる運動エネルギーを消散することができる。
【0050】
連結ギア31と半径方向脚片35を有するレバーシャフト27とは、レバーシャフト27によって支えられ、レバーシャフト27と連結ギア31とを回転可能に連結する連結機構を形成している。この連結機構は、ハンドルレバー3の待機位置とクリック位置との間の角距離に対応する角度範囲内で、連結ギア31に対するレバーシャフト27の自由な回転運動を可能にするようになっている。
【0051】
軸部27a、27b、およびプッシュ-プッシュレバーリング29および連結ギア31の断面図も
図4に示されている。
【0052】
図5a、
図5b、および
図5cは、電気的障害(バッテリー上り、または不具合、モータ7の故障)の場合のプッシュ-プッシュ作動を示している。
【0053】
図5a、
図5b、および
図5cは、ハンドルレバーベース11に向って軸端部から見たときの
図4の連結装置200の軸方向模式図である。連結装置200を軸Aの方向に見ているので、プッシュ-プッシュレバー30と共に連結ギア31およびレバーシャフト27の半径方向の面のみが見えている。
【0054】
プッシュ-プッシュレバー30、レバーシャフト27、およびハンドルレバー3は、回転可能に連結されている。レバーシャフト27とプッシュ-プッシュレバーリング29とは嵌合されているため、これらの3つは、一体として回転することができる。
【0055】
図5aでは、ハンドルレバー3は、フラッシュ位置にある。レバーシャフト27および連結ギア31では、半径方向脚片35が円弧状の孔39内で非極値位置にある。すなわち、円弧状の孔39の半径方向の壁の1つに当接していない位置にある。プッシュ-プッシュユニット13(そのばねのうちの1つが模式的に表されている)は、プレロードされて、解除されていない(「活性化された」)状態にある。
【0056】
図5bでは、ユーザは、プッシュ-プッシュユニット13がさらに圧縮されて解除されるクリック位置に到達させるために、ハンドルレバー3を押し込み、レバーシャフト27、ひいてはプッシュプッシュレバー30を回転させる。
図5bでは、レバーシャフト27の半径方向延長部は、それぞれの円弧状の孔39の半径方向の壁の1つに当接している。
図5a、
図5bの両方とも、連結ギア31は、同じ回転位置にある。
【0057】
図5cでは、解除されたプッシュ-プッシュユニット13がプッシュ-プッシュレバー30を押し出し、次に待機位置に到達するまで、ハンドルレバー3を押し出す。この待機位置では、プッシュ-プッシュレバー30は、
図5aの位置(フラッシュ位置に対応する点線の輪郭)を超えて押し出され、半径方向脚片35は、それぞれの円弧状の孔39の他の半径方向の壁に当接する。
【0058】
図5a、
図5b、および
図5cのいずれにおいても、連結ギア31は、動いていない。レバーシャフト27は、待機位置とクリック位置との間で連結ギア31に対して回転自在に移動可能である。特に、円弧状の孔39の角のある開口部は、待機位置とクリック位置との間のハンドルレバー3の回転角度に少なくとも対応している。
【0059】
図6a、
図6b、および
図6cは、たとえば、接近中のユーザを検出した場合の通常の作動中に、連結ギア31に対するモータ7の動作、ひいてはレバーシャフト27の動作を示している。
【0060】
図6aは、ハンドルレバー3がフラッシュ位置にあるときの連結装置200を示すものであり、したがって
図6aは、
図5aと同一の状態である。
【0061】
モータ7は、連結ギア31を回転させる。この回転の前段では、特に半径方向脚片35が円弧状の孔39の半径方向の壁に当接するまで、レバーシャフト27は動かずに、連結ギア31が移動する。この状況を
図6bに示してある。大きいトルクを減速ギア31に加えることなく、レバーシャフト27を回転させることができる全角度範囲は、円弧状の孔39の角のある開口部に対応し、少なくともハンドルレバー3の待機位置とクリック位置との間の角度である。
【0062】
さらに連結ギア31が回転すると、連結ギア31は、半径方向脚片35に、ひいてはレバーシャフト27にトルクを加え、
図6cに示すように、待機位置に到達するまで回転する。
【0063】
図6a、
図6b、
図6cのすべてにおいて、プッシュ-プッシュユニット13は、動くことなく、かつ解除機構23によってプレロードされ、拘束されたままである。
【0064】
図5a、
図5b、
図5cおよび
図6a、
図6b、
図6cの両方の動きを可能にするために、噛合い歯33を支える連結ギア31の角部は、例えば減速機構9のウォームギアと相互作用するために、クリック位置から待機位置までの角度(レバーシャフト27に対する連結ギア31の制限された自由運動を解消するため)と、フラッシュ位置から待機位置までの角度(動いているときのレバーシャフト27の実際の動きを遂行するため)との合計よりも大きくなければならない。
【0065】
たとえば、長時間の駐車やヘッドライトの点灯によりカーバッテリーに問題が生じた場合、ユーザは、プッシュ-プッシュユニット13を解除することにより、
図5a、
図5b、
図5cに示すプッシュ-プッシュ作動を開始する。
【0066】
さらに、プッシュ-プッシュユニット13のプレロードされた、および拘束された(「活性化された」)状態への自動復帰を可能にするために、モータ7は、ハンドルレバー3をフラッシュ位置からクリック位置に戻すことができなければならない。プッシュ-プッシュユニット13の自動再活性化を可能にするために、噛み合い歯33を支える連結ギア31の角度は、前述の角度(クリック位置から待機位置までの角度をフラッシュ位置から待機位置までの角度に追加した角度)とフラッシュ位置からクリック位置までの角度(絶対値で)との合計よりも大きい。
【0067】
この角度の合計は、クリック位置から待機位置位置までの角度の2倍に等しくなる。
【0068】
連結装置200、レバーシャフト27、連結ギア31およびプッシュ-プッシュレバーリング29は、全てプラスチック材料を成形して作ることができる。
【0069】
本発明は、モータ7を使用する電気的待機に関連する動きと、プッシュ-プッシュユニット13を使用するバックアップ作動に関連する動きの選択的な非干渉化を可能にする。そのため、減速段と減速段のギアおよびウォームとは、ハンドルレバー3からモータ7への逆方向の減速の恐れを考慮することなく、モータ7からレバーシャフト27に動きとトルクとを伝達するためにのみ最適化することができる。
【0070】
非可逆的減速機構は、可逆的減速機構よりも温度耐性が高く、機械加工部品の精度が低くてもよく、かつストレスと摩耗がはるかに小さいため、構成要素の寸法と観念の許容範囲を広げることができる。
【0071】
減速ギアを動かさずにハンドルレバー3を動かすことにより、ユーザにとって望ましくないと感じ、かつ品質が低いものであると感じる抵抗とノイズを減らすこともできる。
【0072】
したがって、本発明は、知覚品質を全体的に向上させながら、ドアハンドル1をより堅牢にし、かつ潜在的に安価にすることができるものである。
【符号の説明】
【0073】
1 ドアハンドル
3 ハンドルレバー
5 ハンドルフレーム
7 モータ
9 減速機構
11 ハンドルレバーベース
13 プッシュ-プッシュユニット
15 プッシュ-プッシュスプリング
17 ガイドロッド
19 スライダー
21 突出フィンガー
23 解除機構
25 位置決め手段
27 レバーシャフト
27a 第1軸部
27b 第2軸部
29 プッシュ-プッシュレバーリング
30 プッシュ-プッシュレバー
31 連結ギア(減速ギア)
33 噛合い歯
35 半径方向脚片
37 円形孔
39 円弧状の孔
100 ドアパネル
200 連結装置
A 軸