(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】巻胴式エレベータの制御装置
(51)【国際特許分類】
B66B 1/06 20060101AFI20230106BHJP
B66B 1/30 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
B66B1/06 L
B66B1/30 B
(21)【出願番号】P 2020044071
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】301020536
【氏名又は名称】三菱日立ホームエレベーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103067
【氏名又は名称】神戸 真澄
(72)【発明者】
【氏名】山内 厚志
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-255277(JP,A)
【文献】特開2009-149425(JP,A)
【文献】特開平02-182677(JP,A)
【文献】特開2005-280933(JP,A)
【文献】特開2007-153497(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01930275(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/06
B66B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごに連結されたロープを巻胴に巻き取り、巻き戻して前記かごを呼び信号に基づいて上昇したり下降したりすると共に、速度パターン生成手段からの速度指令信号に基づいて可変電圧可変周波数手段によりモータを回転して前記巻胴を駆動する巻胴式エレベータにおいて、
前記かごが停止していて、前記呼び信号に基づいて前記かごが上昇方向へ走行しようとすると、上昇信号を発生すると共に、前記呼び信号に基づいて前記かごが下降方向へ走行しようとすると、下降信号を発生する走行方向発生手段と、
前記かご内の荷重値に応じて荷重検出信号を発生する第1の荷重検出手段と、
前記荷重検出信号に基づく荷重検出値が予め定められた荷重閾値以下か否かを判断して、前記荷重閾値以下の場合に第1の荷重オン信号を発生すると共に、前記荷重閾値を越えると第1の荷重オフ信号を発生する荷重判断手段と、
前記エレベータの騒音抑制レベルを設定する騒音設定手段と、
前記騒音抑制レベルに基づいて前記かごの上昇方向の最高速度よりも遅い第1の速度、前記かごの下降方向への定格速度よりも遅い第2の速度を設定する騒音抑制速度設定手段と、
騒音抑制開始スイッチ手段のオン信号又はオフ信号に基づいて騒音抑制開始信号を発生する騒音抑制信号発生手段と
前記下降信号又は前記第1の荷重オフ信号が入力されると、最高速度切換えオフ信号を発生すると共に、前記上昇信号及び前記第1の荷重オン信号が入力されると、最高速度切換えオン信号を発生する第1の最高速度切換え手段と、
前記呼び信号及び前記騒音抑制開始信号に基づいて騒音抑制速度切換えオン信号を発生する騒音抑制速度切換え手段と、を備え、
前記速度パターン生成手段は、前記最高速度切換えオフ信号に基づいて前記かごを定格速度により走行する定格速度パターンを生成し、この定格速度走行パターンを成す定格速度指令信号を発生し、前記最高速度切換えオン信号により前記定格速度よりも速く前記かごを上昇方向へ走行する第1の最高速度走行パターンを生成し、この第1の最高速度走行パターンを成す第1の最高速度指令信号を発生し、
さらに、前記騒音抑制速度切換えオン信号及び前記上昇信号に基づいて前記第1の速度により走行する第1の速度走行パターンを生成し、この第1の速度走行パターンを成す第1の速度指令信号を発生し、
前記騒音抑制速度切換えオン信号及び前記下降信号に基づいて前記第2の速度により走行する第2の速度走行パターンを生成し、この第2の速度走行パターンを成す第2の速度指令信号を発生
し、
さらに、前記荷重検出信号に基づいて前記定格速度よりも速く前記かごを走行する最高速度値を定める前記第1の最高速度走行パターンを生成し、この第1の最高速度走行パターンを成す前記第1の最高速度指令信号を発生する、
ことを特徴とする巻胴式エレベータの制御装置。
【請求項2】
前記モータの回転に基づいて速度検出して速度検出信号を発生する速度検出手段と、
前記第1の最高速度指令信号と前記速度検出信号との差となる速度偏差値を求める速度偏差手段と、
前記速度偏差値が予め定められた速度偏差閾値を越えると、最高速度制限信号を発生する最高速度制限手段と、
を備えたことを特徴とする
請求項1の記載の巻胴式エレベータの制御装置。
【請求項3】
騒音抑制のための試行騒音抑制レベルを設定する試行騒音抑制設定手段と、
前記試行騒音抑制レベルに基づいて前記かごを走行する上昇方向の第1の試行速度が前記最高速度よりも遅く設定すると共に、前記下降方向の第2の試行速度が前記下降方向の定格速度よりも遅く設定する試行速度設定手段と、を備え、
前記試行騒音抑制設定手段により前記試行騒音抑制レベルを設定した後、
試行速度の設定を始める試行開始信号が発生することを検知する第1のステップと、
前記かごが停止状態で、前記騒音検知信号に基づいて暗騒音値が予め定められた暗騒音閾値以内かを判断する第2のステップと、
前記荷重検出信号に基づく荷重値が予め定められた荷重閾値以下か否かを判断する第3のステップと、
前記試行開始信号が発生し、前記暗騒音が暗騒音閾値以内であると共に、前記荷重閾値以下であると、前記かごを前記第1又は第2の試行速度より前記かごを走行し、前記騒音検知信号を検知する第4のステップと、
前記騒音検知信号に基づく騒音検知値が予め定められた騒音基準値以下か否かを判断して、騒音基準値以下か判断する第5のステップと、
前記騒音基準値以下であれば、前記第1又は第2の試行速度が予め定められた最低基準速度値を越えるか否かを判断して、越えれば、前記第1又は第2の試行速度を設定速度とし、越えなければ、この越えた速度に基づいて求めた増分速度を前記第1又は第2の試行速
度に加えて設定速度とする第6のステップと、備え、
前記騒音基準値を越えていれば、前記第1又は第2の試行速度に減少分速度を差し引いて前記第4から6のステップを順に実行する、
ことを特徴とする
請求項1又は2に記載の巻胴式エレベータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻胴式エレベータの制御装置で、特に、騒音を抑制するために、適切な速度でかごを走行するものである。
【背景技術】
【0002】
ホームエレベータでは、昇降路スペースを狭くする等のために、下記特許文献1に記載のように、釣合い重りが存在せず、かごをロープにより巻胴に巻き取る巻胴式が一般に採用されている。この制御装置は、エレベータの運転速度を変更するもので、基本構成には、かごの昇降を駆動する駆動手段と、指定速度を切換える速度切換え手段と、この速度切換え手段の切換え操作に応じて駆動手段によるかごの速度を制御する速度制御手段とを備えたものが記載されている。
【0003】
上記巻胴式エレベータの制御装置によれば、速度切換手段の切換操作によりかごの運転速度を定格速度より遅い低速度に切換えができる。これにより、深夜等においては、エレベータの運転速度を上記低速度に切換えて、静粛なエレベータ運転可能になるので、家族を始め近隣住宅への騒音による迷惑を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のエレベータの制御装置では、騒音抑制のための速度を上昇側と下降側により異なることには言及されていない。
これは、ホームエレベータ等に採用される巻胴式エレベータでは、下降方向では、かごがかご側の自重で下降するので、モータからの回生制動力を発生する回生運転となる。これに対して、上昇方向の運転では、かご側の荷重を巻上機の巻胴に巻き取りしなければならない。したがって、巻胴式エレベータでは、上昇方向のかご内の定格負荷に基づいて上記駆動能力が決定される。このように決定された駆動能力を有効に活用するために、かごの下降方向よりも上昇方向が定格速度を遅く設定されているのが一般で、エレベータから発生する騒音も下降側と上昇側で異なり得る。
一方、かごが上昇方向の定格速度による走行であっても、かご内の乗員の有無、人数によっては上記駆動能力に余裕を有することがあり、かかる点において駆動能力を十分に活用しておらず、かご内の荷重値に基づいてかごの定格速度よりも速い走行により、駆動能力を有効に活用することができるが、騒音も増大し得る。
このような状況下で、発明者は、かごの上昇及び下降方向の騒音を同じように抑えるために、かごの上昇側定格速度よりも速い最高速度を制限したり、上昇側の定格速度よりも低い第1の速度で走行させたり、下降側の定格速度よりも低い第2の速度により走行したりすることを見出したものである。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、電力変換装置などの駆動能力を上げることなく、エレベータの上昇方向の輸送効率を上げるために、かご内の負荷を検出し、かご側の荷重に応じて、エレベータの定格速度よりも速い走行速度を実現し得ると共に、騒音を抑制するためにかごを上昇方向、下降方向それぞれに適切な速度により走行し得る巻胴式エレベータの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る巻胴式エレベータの制御装置は、かごに連結されたロープを巻胴に巻き取り、巻き戻して前記かごを呼び信号に基づいて上昇したり下降したりすると共に、速度パターン生成手段からの速度指令信号に基づいて可変電圧可変周波数手段によりモータを回転して前記巻胴を駆動する巻胴式エレベータにおいて、
前記かごが停止していて、前記呼び信号に基づいて前記かごが上昇方向へ走行しようとすると、上昇信号を発生すると共に、前記呼び信号に基づいて前記かごが下降方向へ走行しようとすると、下降信号を発生する走行方向発生手段と、
前記かご内の荷重値に応じて荷重検出信号を発生する第1の荷重検出手段と、
前記荷重検出信号に基づく荷重検出値が予め定められた荷重閾値以下か否かを判断して、前記荷重閾値以下の場合に第1の荷重オン信号を発生すると共に、前記荷重閾値を越えると第1の荷重オフ信号を発生する荷重判断手段と、
前記エレベータの騒音抑制レベルを設定する騒音設定手段と、
前記騒音抑制レベルに基づいて前記かごの上昇方向の最高速度よりも遅い第1の速度、前記かごの下降方向の定格速度よりも遅い第2の速度を設定する騒音抑制速度設定手段と、
騒音抑制開始スイッチ手段のオン信号又はオフ信号に基づいて騒音抑制開始信号を発生する騒音抑制信号発生手段と
前記下降信号又は前記第1の荷重オフ信号が入力されると、最高速度切換えオフ信号を発生すると共に、前記上昇信号及び前記第1の荷重オン信号が入力されると、最高速度切換えオン信号を発生する第1の最高速度切換え手段と、
前記呼び信号及び前記騒音抑制開始信号に基づいて騒音抑制速度切換えオン信号を発生する騒音抑制速度切換え手段と、を備え、
前記速度パターン生成手段は、前記最高速度切換えオフ信号に基づいて前記かごを定格速度により走行する定格速度パターンを生成し、この定格速度走行パターンを成す定格速度指令信号を発生し、前記最高速度切換えオン信号により前記定格速度よりも速く前記かごを上昇方向へ走行する第1の最高速度走行パターンを生成し、この第1の最高速度走行パターンを成す第1の最高速度指令信号を発生し、
さらに、前記騒音抑制速度切換えオン信号及び前記上昇信号に基づいて前記第1の速度により走行する第1の速度走行パターンを生成し、この第1の速度走行パターンを成す第1の速度指令信号を発生し、
前記騒音抑制速度切換えオン信号及び前記下降信号に基づいて前記第2の速度により走行する第2の速度走行パターンを生成し、この第2の速度走行パターンを成す第2の速度指令信号を発生する、
さらに、前記荷重検出信号に基づいて前記定格速度よりも速く前記かごを走行する最高速度値を定める前記第1の最高速度走行パターンを生成し、この第1の最高速度走行パターンを成す第1の最高速度指令信号を発生する、
ことを特徴とするものである。
【0008】
このような巻胴式エレベータの制御装置によれば、走行方向発生手段はかごが停止している状態で上昇しようとすると、上昇信号を発生し、第1の荷重検出手段が検出した荷重値に応じて荷重検出信号を発生する。最高速度切換え手段は、下降信号又は第1の荷重オフ信号が入力されると、最高速度切換えオフ信号を発生すると共に、上昇信号及び第1の荷重オン信号が入力されると、最高速度切換えオン信号を発生する。速度パターン生成手段は、最高速度切換えオフ信号が入力されると、かごの定格速度により走行する定格速度走行パターンを生成して、定格速度指令信号を発生し、最高速度切換えオン信号が入力されると、かごの定格速度よりも速くかごを走行するための第1の最高速度走行パターンを生成して、第1の最高速度指令信号を発生する。
これにより、かご内の荷重値が荷重閾値よりも、高くなると第1の荷重オフ信号により定格速度指令信号に基づいてかごを定格速度にて上昇方向へ走行する。一方、かご内の荷重値が荷重閾値よりも、低いと第1の荷重オン信号により第1の最高速度指令信号に基づいてかごを定格速度よりも速い最高速度にて上昇方向へ走行する。ここにいう最高速度は、予め定められた一つの値となる。したがって、上昇方向への一定走行の速度値は、定格速度値と最高速度値の二種類となり、階段的な速度上昇となる。
【0009】
さらに、夜間等の騒音を抑制するために、呼び信号及び騒音抑制開始信号に基づいて騒音抑制切換え手段が騒音抑制速度切換えオン信号を発生すると、速度パターン生成手段は、騒音抑制速度切換えオン信号及び上昇信号に基づいて最高速度よりも遅い第1の速度により走行する第1の速度走行パターンを生成し、この第1の速度走行パターンを成す第1の速度指令信号を発生する。これにより、かごを最高速度よりも遅い第1の速度により走行する騒音を適切に抑制できる。ここで、騒音抑制を十分に図るには、かごを定格速度よりも遅く走行することが好ましい。
速度パターン生成手段は、騒音抑制速度切換えオン信号及び下降信号に基づいて定格速度よりも遅い第2の速度により走行する第2の速度走行パターンを生成し、この第2の速度走行パターンを成す第2の速度指令信号を発生する。これにより、かごを定格速度よりも遅い第2の速度により走行するので、騒音を適切に抑制できる。
【0010】
ここに、定格速度とは、かご内が定格負荷の状態で、かごが一定速度により走行する速度をいう。最高速度とは、かごの定格速度よりも速くかごが走行することをいい、かごが最高速度に達する加速度は問わない。但し、加速度を一定にすれば、速度生成パターンが簡易に形成できる。殊に、ホームエレベータのように定格速度が低い用途では加速度を上げても輸送効率向上の寄与度が低いので、加速度を一定にする利点がある。
また、上記最高速度値の上限は、特に定めていないが、第1の荷重オン信号から第1の荷重オフ信号の切換えとなる荷重閾値を低く設定すれば、するほど、かごの最高速度を上昇し得る。
【0011】
ここで、スイッチをオン(オフ)にしてオン信号(オフ信号)発生すると、騒音抑制信号発生手段は、騒音抑制開始信号を発生する。騒音抑制開始信号は時計装置により、設定された時間帯で、オン信号又はオフ信号に基づいて発生しても良く、さらに、外部システムからオン信号又はオフ信号に基づいて発生しても良い。ここに、外部システムとは、巻胴式エレベータ以外の電気機器を含めて全体で省エネルギーを図るエネルギーマネジメントシステムを例示できる。これにより、かごを定格速度よりも遅い速度で運転することにより、深夜の時間帯の騒音を低下できる。
さらに、かごが停止状態で、騒音抑制解除手段から騒音抑制解除信号を発生すると、騒音抑制速度切換え手段から騒音抑制速度切換えオフ信号を発生して、かごを騒音抑制用の速度から切換えて、かごを最高速度により走行することができる。
【0012】
これにより、速度パターン生成手段は、荷重検出信号に基づいてかごの定格速度よりも速くかごを走行する最高速度値を求めて最高速度走行パターンを生成する。よって、第1の発明が定格速度と一つの最高速度値を有して階段的に最高速度を速くしているのに比較して、本発明は、荷重検出信号がかご内の荷重値を連続的に検出すると共に、かご内の荷重値に対して荷重検出信号が比例して増加する特性を有する場合には、かご内の荷重値が低くなるに従い、上昇方向へのかごの最高速度値を連続的に速くして走行できる。
【0016】
第2の発明に係る巻胴式エレベータの制御装置は、前記モータの回転に基づいて速度検出して速度検出信号を発生する速度検出手段と、
前記第1又は第2の最高速度指令信号と前記速度検出信号との差となる速度偏差値を求める速度偏差手段と、
前記速度偏差値が予め定められた速度偏差閾値を越えると、最高速度制限信号を発生する最高速度制限手段と、を備えることが好ましい。
【0017】
これにより、最高速度走行パターンにより、かごが加速している時に速度偏差値が速度偏差閾値を越えると、最高速度制限手段から最高速度制限信号を発生して、前周期の速度指令信号によりモータを制御して、かごを制限された最高速度により一定速走行する。これにより、かごを加速することを止めて一定走行するので、最高速度指令信号にモータの回転が追従しやすくなる。これにより、速度偏差も減少して、モータの速度制御系が適切にフィードバック制御を維持できるので、かごを安定走行できる。
上記最高速度制限手段は、かごの上昇走行において、速度検出信号が定格速度を越えるとオフからオンに切換る速度スイッチ手段のオンに基づいて動作するようにしても良い。
【0018】
第3発明に係る巻胴式エレベータの制御方法は、騒音抑制のための試行騒音抑制レベルを設定する試行騒音抑制設定手段と、
前記試行騒音抑制レベルに基づいて前記かごを走行する上昇方向の第1の試行速度が前記最高速度よりも遅く設定すると共に、前記下降方向の第2の試行速度が前記下降方向の定格速度よりも遅く設定する試行速度設定手段と、を備え、
前記試行騒音抑制設定手段により前記試行騒音抑制レベルを設定した後、
試行速度の設定を始める試行開始信号が発生することを検知する第1のステップと、
前記かごが停止状態で、前記騒音検知信号に基づいて暗騒音値が予め定められた暗騒音閾値以内かを判断する第2のステップと、
前記荷重検出信号に基づく荷重値が予め定められた荷重閾値以下か否かを判断する第3のステップと、
前記試行開始信号が発生し、前記暗騒音が暗騒音閾値以内であると共に、前記荷重閾値以下であると、前記かごを前記第1又は第2の試行速度より前記かごを走行し、前記騒音検知信号を検知する第4のステップと、
前記騒音検知信号に基づく騒音検知値が予め定められた騒音基準値以下か否かを判断して、騒音基準値以下か判断する第5のステップと、
前記騒音基準値以下であれば、前記第1又は第2の試行速度が予め定められた最低基準速度値を越えるか否かを判断して、越えれば、前記第1又は第2の試行速度を設定速度とし、越えなければ、この越えた速度に基づいて求めた増分速度を前記第1又は第2の試行速度に加えて設定速度とする第6のステップと、備え、
前記騒音基準値を越えていれば、前記第1又は第2の試行速度に減少分速度を差し引いて前記第4から6のステップを順に実行する、
ことが好ましい。
これにより、試行騒音抑制レベルを例えば、「高」、「中」、「低」の三種類とすれば、一種類ごとの騒音を試行騒音抑制レベルに応じて、騒音抑制時のかごの上昇方向及び下降方向の一定速度を簡易に設定できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電力変換装置などの駆動能力を上げることなく、エレベータの上昇方向の輸送効率を上げるために、かご内の負荷を検出し、かご側の荷重に応じて、エレベータの定格速度よりも速い走行速度を実現し得ると共に、騒音を抑制するためにかごを上昇方向、下降方向それぞれに適切な速度により走行し得る巻胴式エレベータの制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態による巻胴式エレベータの全体図である。
【
図2】
図1による巻胴式エレベータの制御装置を示すブロック図である。
【
図3】
図1による巻胴式エレベータの制御装置において、かごの走行速度が定格速度、最高速度と時間との関係を示す走行曲線図(a)、かごの走行速度が定格速度、騒音抑制モードの速度と時間との関係を示す走行曲線図(b)である。
【
図4】
図1による巻胴式エレベータの制御装置において、最高速度制限信号が発生した場合のかごの走行速度と時間との関係を示す走行曲線図(a)、最高速度制限信号が発生の前後の最高速度指令信号と時間との関係を示すタイムチャート(b)である。
【
図5】
図2による巻胴式エレベータのかごが走行する際の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図5における結合子Aの続きとなる巻胴式エレベータの制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の他の実施の形態による巻胴式エレベータの制御装置を示し、表示器を省略したブロック図である。
【
図8】
図7による巻胴式エレベータの制御装置において、かごの走行速度が定格速度、最高速度と時間との関係を示す走行曲線図である。
【
図9】本発明の他の実施の形態による巻胴式エレベータの制御装置のブロック図である。
【
図10】
図9の巻胴式エレベータの制御装置による動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1.
本発明の一実施の形態を
図1から
図3によって説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による巻胴式エレベータである。
図1において、個人住宅などに施設される巻胴式エレベータ1は、3停止で、かご3の上端部にロープ5の一端部が連結固定され、昇降路の上部に設けられた吊り車7を介して、ロープ5の他端部が昇降路の下部に設けられた巻上機9の巻胴9dに連結固定されている。加えて、巻胴式エレベータ1は、巻胴9dの軸に回転軸が連結固定された三相交流のモータ11を有しており、巻上機9には、巻胴9dを拘束開放可能なブレーキ9bを設けている。
【0022】
かご3内には、乗り込んだ乗員の荷重を検出して荷重値としての入力値に比例して出力値としての荷重検出信号が増加する入出力特性21aを備えた第1の荷重検出装置21が設けられており、行先階を指定すると共に、押されることによりかご呼び信号を発生するかご呼び釦23も設けられている。かご3内には、かご3が騒音抑制用の速度より走行していること、かご3が制限された最高速度により走行している旨を表示したり、音声を発したりする音声発声機能付きの表示器600を有している。そして、乗り場の各階には、かご3を目的の乗場階に呼ぶ乗り場呼び釦31~33が設けられており、乗り場呼び釦31~33が押されると、乗り場呼び信号を発生するように形成されている。なお、乗り場呼び信号とかご呼び信号とを併せて呼び信号という。
【0023】
図1において、巻胴式エレベータ1は、モータ11を駆動制御するエレベータの制御装置100を有している。制御装置100は、かご3を定格速度と、定格速度よりも速い最高速度とを切換える最高速度切換えオン・オフ信号を発生すると共に、かご3を騒音抑制用の速度により走行する騒音抑制速度切換え信号を発生する速度切換え指令器200を有している。ここで、最高速度切換えオン・オフ信号を最高速度切換え信号という。そして、速度切換え信号がモータ11を速度制御するモータ制御器300に入力すると、モータ制御器300は、速度指令信号に基づいて電力変換装置500から交流の可変電圧可変周波 数を発生してモータ11を駆動制御している。加えて、モータ11の回転位置を検出して位置検出信号を発生するエンコーダ13が設けられており、位置検出信号と上記荷重検出信号とがモータ制御器300に入力されている。速度切換え指令器200には、かご3を騒音抑制用の速度でかご3を走行させる騒音抑制開始信号、騒音抑制用の速度でかご3を走行することを解除する騒音抑制解除信号、かご3が停止していて、かごが上昇方向へ走行しようとすると、発生する上昇信号、かご3内の荷重検出信号に基づく荷重信号、呼び信号が入力されている。
【0024】
モータ制御器300は、速度切換え指令器200からの最高速度切換えオフ信号によって、定格速度によりかご3を走行する定格速度走行パターンを生成し、この定格速度パターンを成す定格速度指令信号を発生すると共に、速度切換え指令器200からの最高速度切換えオン信号によって、定格速度よりも速くかご3を走行する最高速度走行パターンを成し、この最高速度走行パターンを成す最高速度指令信号を発生するように形成されている。そして、モータ制御器300に騒音抑制用の速度設定信号を発生する騒音抑制設定器400を有しており、騒音抑制設定器400には、騒音抑制レベルとして「高」、「中」、「低」の何れか一つを設定するダイヤル式の騒音抑制設定部402を有しており、「高」、「中」、「低」の設定に応じたかご3の上昇方向、下降方向の走行速度をそれぞれ設定する速度設定部404を有している。ここで、「高」とは、騒音抑制レベルが高いことを指し、かご3の速度が「高」を選択すると、最も遅くなり、「中」、「低」の順によりかご3の速度が速くなっている。騒音抑制のレベルを騒音値などにより設定しないのは、誤設定を防止するためである。そして、「高」、「中」、「低」のいずれが一つが設定されると、騒音を抑制するために、かご3の上昇方向の最高速度よりも遅い第1の速度、かご3の下降方向の定格速度よりも遅い第2の速度を速度設定部に設定されるように形成されている。
【0025】
図2おいて、制御装置100は、騒音抑制信号発生部205の騒音抑制開始スイッチ205sがオフからオンにして騒音抑制開始信号を発生して、この騒音抑制開始信号が騒音抑制速度切換え部240に入力されると、騒音抑制速度切換えオン信号を発生し、モータ制御器300を介して、かご3を騒音抑制用の速度より走行するように形成されている。騒音抑制信号発生部205は、暦により指定された日の時間帯を設定して、この時間帯を指定可能な時計機能を有し、この時間帯に限り騒音抑制開始信号を発生することになる。この時間帯で、かご3を騒音抑制用の速度でかご3を走行できる。巻胴式エレベータ1の駆動源等から発生する騒音を減少でき、静粛性を得ることができる。なお、設定された時間帯以外はオフ信号を発生している。
【0026】
さらに、騒音抑制信号発生部205は、外部システムからのオン信号に基づいて騒音抑制開始信号を発生して、上記同様に騒音抑制用の速度によりかご3を走行できる。ここで、外部システムとは、巻胴式エレベータ1以外の電気機器を含めたホーム全体で、省エネルギーを図るエネルギーマネジメントシステムを例示でき、具体的には、HEMSがある。
【0027】
騒音抑制解除部250は、騒音抑制スイッチ250sがオフからオンにしてオン信号により騒音抑制解除信号を発生して、この抑制信号が騒音抑制速度切換え部240に入力されると、騒音抑制速度切換えオフ信号を発生し、モータ制御器300を介して、かご3が停止状態で、かご3を騒音抑制用の速度による走行をできないように形成されている。騒音抑制解除部250は、騒音抑制信号発生部205と同様に、時計、外部システムからのオン信号に基づいて騒音抑制解除信号を発生しても良い。なお、上記オン信号とオフ信号との論理は逆でも良く、逆にした場合は、オフ信号に基づいて騒音抑制解除信号を発生することとなる。また、騒音抑制速度切換えオン信号と騒音抑制速度切換えオフ信号とを併せて騒音抑制速度切換え信号という。
【0028】
速度切換え指令器200には、かご3の走行方向を示す上昇信号及び下降信号を発生する走行方向発生部207と、荷重信号を発生する荷重判断部209とを有しており、走行方向発生部207は、速度検出信号と呼び信号が入力されると、速度検出信号からかご3が停止していて、呼び信号により、かご3が上昇方向へ走行しようと判断すると、上昇信号を発生すると共に、呼び信号により、かご3が下降方向へ走行しようと判断すると、下降信号を発生する。ここで、かご3が上昇しようとしたり、下降しようとしたりすることは、呼び信号と、かご3の停止階とから判断できる。
【0029】
荷重判断部209は、荷重検出信号に基づく荷重検出値が予め定められた荷重閾値以下か否かを判断して、荷重閾値以下の場合に第1の荷重オン信号を発生すると共に、荷重閾値を越えると第1の荷重オフ信号を発生するように形成されている。最高速度切換え部220は、上昇信号と、第1の荷重オン信号とが入力されると、最高速度切換えオン信号が発生すると共に、第1の荷重オフ信号、下降信号のいずれか一つの入力により最高速度切換えオフ信号を発生するように形成されている。なお、最高速度切換えオン信号及び最高速度切換えオフ信号を併せて、最高速度切換え信号という。
【0030】
速度切換スイッチ245は、最高速度切換え信号と騒音抑制速度切換えオン信号とを選択して速度パターン生成部300に入力されており、騒音抑制速度切換えオン信号が発生している時は、a側に倒して、騒音抑制速度切換えオン信号が速度パターン生成部303に入力されると共に、最高速度切換え信号が発生している時は、b側に倒して最高速度切換え信号が速度パターン生成部303に入力される。ここで、最高速度切換え信号及び騒音抑制速度切換え信号が両方発生している場合には、騒音抑制速度切換え信号を優先して速度切換えスイッチをa側に倒すようになっている。
なお、第1の荷重オン信号と第1の荷重オフ信号とを併せて、第1の荷重信号という。
【0031】
モータ制御器300は、かご3の現在位置から目的階の位置まで走行するための位置指令信号を生成する位置指令部301を有しており、エンコーダ13からの位置検出信号と位置指令信号との差を求める位置減算器epにより位置偏差信号を得ている。速度パターン生成部303は、位置偏差信号の入力を受けて、モータ11の速度指令信号となる速度走行パターンを生成するもので、最高速度切換えオフ信号に基づいて
図3(a)に示す時間対速度の定格速度曲線Vnでかご3を定格速度により走行させる定格速度走行パターンとしての定格速度走行パターンを生成し、定格速度走行パターンを成す定格速度指令信号を発生するように形成されている。
【0032】
速度パターン生成部303は、最高速度切換えオン信号に基づいて上昇方向の定格速度よりも速くかご3を最高速度Vhで走行する
図3(a)に示す時間対速度の最高速度走行曲線で、かご3を走行させる最高速度走行パターンを生成し、最高速度走行パターンを成す最高速度指令信号を発生するように形成されている。ここで、最高速度値の範囲Vmは、荷重閾値以下となる第1の荷重オン信号が発生している状態で、定格速度値Vnを越えて、荷重検出信号値が低いほど速い最高速度によりかご3を走行し、最高速度の最大速度値VLの範囲になっている。第1の荷重検出装置21からの荷重検出信号に基づいて最高速度値を定め、かご3内の荷重値が低くなるにつれて、かご3の最高速度を速くするためで、一点鎖線に示すように多数の最高速度パターンを生成するものである。
なお、下降方向へのかご3の走行は、かご3内の荷重に拘らず、速度パターン生成部303は、定格速度により走行する下降用の定格速度パターンを生成するように形成されている。
【0033】
速度パターン生成部303は、騒音抑制速度切換え信号に基づいて
図3(b)に示す時間対速度の速度走行曲線でかご3を走行させる速度走行パターンを生成し、速度走行パターンを成す速度指令信号を発生するように形成されている。かご3が上昇する際の上昇側の第1の速度走行パターンVLuは、かご3の上昇方向の最高速度よりも遅い第1の速度を得る第1の速度指令信号を発生する。かご3が下降する際の下降側の第2の速度走行パターンVLdは、下降方向への定格速度よりも遅い第2の速度を得る第2の速度指令信号を設定する。
ここで、騒音抑制用のかご3の速度は、上昇方向に比べて下降方向の方が速くなっている。これは、騒音値をかご3の上昇方向と下降方向とで、ほぼ同一の値にするためである。
【0034】
制御装置100は、エンコーダ13の位置検出信号を微分器321により速度検出信号を得て、この速度検出信号と、速度パターン生成部303からの最高速度指令信号との差を求める速度減算器evにより速度偏差信号を得ている。速度制御部305は、速度偏差信号の入力を受けて、電流指令信号(トルク指令信号)を生成するように形成されている。トルク制御部307は、モータ11に流れる電流を検出する電流検出器331からの電流検出信号と、電流指令信号との差を求める電流減算器eiにより電流偏差信号を入力していて、出力から発生したトルク指令信号により電力変換装置500を介してモータ11を駆動制御している。
【0035】
最高速度制限部335は、かご3の上昇走行において、速度検出信号が定格速度を越えるとオフからオンに切換る定格速度スイッチ333のオンにより、速度偏差信号が入力され、速度偏差値が予め定めた速度偏差閾値を越えると、
図4(a)に示すように、最高速度制限信号VmLを速度パターン生成部303に入力する。これにより、速度パターン生成部303は、かご3を最高速度走行への加速をやめて、前周期の速度指令信号に切換えて、前周期の速度指令信号により制限された最高速度Vemとなる一定速度によりかご3を走行する最高速度制限パターンを生成し、最高速度制限パターンを成す速度指令信号を発生するように形成されている。ここで、
図4(b)に示すようにデジタル処理では、速度偏差値が速度閾値を越える現在周期の最高速度指令信号から前周期の最高速度指令信号となる。
【0036】
表示器600は、表示検知部602と表示部604とを有しており、表示検知部602は騒音抑制開始信号を検知すると、この検知により表示部604は、かご3が騒音抑制用の運転である旨を文字、図形等で表示する。同様に、表示検知部602は騒音抑制解除信号を検知すると、この検知により表示部604は、かご3が最高速度により走行し得る旨を文字、図形等で表示する。同様に、表示検知部602は最高速度制限信号を検知すると、この検知により表示部604は、かご3が制限された最高速度により走行している旨を文字、図形等で表示する。
【0037】
上記のように構成された巻胴式エレベータの制御装置の動作を
図1から
図6によって説明する。
図5から
図6は
図2による巻胴式エレベータの制御装置の動作を示すフローチャートである。
<かごを最高速度により走行する場合の動作>
図5において、乗り場呼び釦31~33又はかご呼び釦23が押されたか否かを呼び信号の発生により判断して(ステップS101)、押されたことを検出すると共に、停止階と目的階とが異なると、位置指令部301は、かご3が停止階から走行して到着する目的階までの位置(距離)を設定する(ステップS103)。これにより、位置指令部301は、設定された位置に基づいて位置指令信号を生成する。
【0038】
騒音抑制速度切換え部240は、騒音抑制解除部250から騒音抑制解除信号の入力がないかを判断し(ステップS104)、騒音抑制解除信号の入力がないと、騒音抑制信号発生部205から騒音抑制開始信号の入力がないかを判断する(ステップS105)。騒音抑制開始信号の入力がないと、荷重判断部209は、荷重検出装置21からの荷重検出信号によりかご3内の荷重が予め定めた荷重閾値以下か否かを判断し(ステップS107)、荷重閾値以下であると、荷重オン信号を発生する。走行方向発生部207は、かご3が停止していて、かご3の目的階と現在階から上昇方向にかご3が走行しようとしているかを判断し(ステップS109)、かご3が停止していて、上昇方向にかご3が走行しようとすると、上昇信号を発生する。
【0039】
速度切換え指令器200は、荷重検出器21からの荷重検出信号が入力されている状態で、最高速度切換え部220からの最高速度切換えオン信号を速度切換えスイッチ245を介して速度パターン生成部303に入力する。速度パターン生成部303は、
図3(a)に示すように荷重検出信号から、かご3内の荷重値が低ければ低いほど、かご3の最高速度値を連続的に速くする最高速度走行パターンを生成する(ステップS113)。ここで、かご3の下降方向への定格速度は、上昇方向の定格速度よりも速く設定されているので、かご3を定格速度よりも速くする必要がないからである。そして、制御装置100は、モータ11のブレーキ9bを開放する(ステップS115)。
【0040】
次に、
図2及び
図6において、速度パターン生成部303から生成した最高速度走行パターンを成す最高速度指令信号を発生して、この速度指令信号と速度検出信号との差を速度減算器evに求めた速度偏差信号を速度制御部305に入力すると、速度制御部305は電流指令信号を生成して、電流検出信号との差を電流減算器eiに求めた電流偏差信号をトルク制御部307に入力する。トルク制御部307は、電力変換装置500を介してモータ11を駆動制御してかご3を加速する(ステップS201)。最高速度制限部335は、速度偏差値が予め定められた速度偏差閾値を越えた否かを判断して越えなければ(ステップS203)、速度制御部305は、最高速度指令信号に基づいて定められた最高速度にかご3が達するか否かを判断する(ステップS205)。
【0041】
図6において、制御装置100は、かご3が定められた最高速度に達すると、かご3を最高速度により一定速走行しながら(ステップS207)、かご3の最高速度を継続する。やがて、かご3が減速位置に達すると(ステップS209)、速度制御部305は、かご3が目的階までの距離に合わせて減速し(ステップS211)、かご3が停止位置に達すると、制御装置100は、ブレーキ9bを拘束して巻上機9を制動してかご3を停止する(ステップS213)。
【0042】
<かごを騒音抑制用の速度により走行している場合の動作>
図5のステップS105において、騒音抑制開始信号を騒音抑制速度切換え部240に入力していて、かご3が上昇方向に走行しようとして上昇信号が発生すると(ステップS121)、速度パターン生成部303は上昇方向の騒音抑制用としての第1の速度走行パターンを生成し、この速度走行パターンを成す上昇用の騒音抑制用としての第1の速度指令信号を発生してかご3を騒音抑制用の速度により走行する(ステップS123)。一方、ステップS121おいて、かご3が下降方向に走行しようとして下降信号が発生すると、速度パターン生成部303は下降用の騒音抑制用としての第2の速度走行パターンを生成して、この速度走行パターンを成す下降用の騒音抑制用としての第2の速度指令信号を発生してかご3を騒音抑制用の速度により走行する(ステップS125)。表示器600は、騒音用の第1又は第2の速度指令信号の発生により、かご3が騒音抑制用の速度により走行して旨を表示部604に文字、音声などを表示する(ステップS127)。
【0043】
制御装置100は、かご3が定められた騒音抑制用の速度に達すると、かご3を騒音抑制用の速度により一定速走行する(ステップS207)。騒音抑制解除信号が騒音抑制速度切換え部240に入力されると(ステップS208)、騒音抑制速度切換え部240から騒音抑制切換え信号がオフとなり、速度切換えスイッチ245をb側に倒して、速度パターン生成部303は、定格速度走行パターンを生成してこのパターンを成す定格速度指令信号により、かご3を定格速度により走行する。
【0044】
<かごの最高速度が制限される場合の動作>
図6のステップS203において、最高速度制限部335は、速度偏差値が予め定めた速度偏差閾値を越えると、最高速度制限信号を速度パターン生成部303に入力する。これにより、速度パターン生成部303は、かご3を最高速度走行への加速をやめて、速度偏差値を越える前(前周期)の速度指令信号に切換えて、前周期の速度指令信号により一定速度となる制限された最高速度によりかご3を走行する(ステップS223)。何らかの原因により速度指令信号に実速度が追随できていなからである。そして、速度パターン生成部303は、最高速度から制限された最高制限速度で走行するため、
図4(a)に示すように、新たに最高速度制限走行パターンを生成する。
【0045】
速度制御部305は、この走行パターンに基づいて速度指令信号を発生しながらモータ11を駆動してかご3を制限された最高速度Vemにより一定走行する(ステップS225)。表示器600は、最高速度制限信号の発生により、かご3が制限された最高速度により走行して旨を表示部604に文字、音声などを表示し(ステップS227)、かご3を制限速度により一定速走行する(ステップS207)。これにより、かごを加速することを止めて一定走行するので、最高速度指令信号にモータの回転が追従しやすくなる。これにより、速度偏差も減少して、モータの速度制御系が適切にフィードバック制御を維持できるので、かごを安定走行できる。
【0046】
<かごを定格速度走行する場合の動作>
図5に示すように、ステップS107において、荷重検出装置21からの荷重検出信号により予め定めた荷重値(閾値)以下か判断して閾値を越えている場合は、速度パターン生成部303からの定格速度指令信号によりかご3を定格速度にて走行する(ステップS117)。モータ11などの駆動能力を越えることになるからである。また、上記ステップS109において、下降方向にかご3が走行しようとしていると判断した場合は、かご3を定格速度にて走行する(ステップS117)。かご3の下降方向は、上昇方向の定格速度よりも速い定格速度により走行させているからである。
【0047】
本実施の形態によれば、騒音抑制開始信号が騒音抑制速度切換え部240に入力されると、かご3を騒音抑制用の上昇方向への速度、下降方向への速度により走行できるので、静かな巻胴式エレベータ1を得ることができる。しかも、モータ11、電力変換装置500などの駆動能力を上げることなく、かご3側の荷重に応じて、エレベータ1の定格速度又は定格速度よりも速い走行速度により走行し得る巻胴式エレベータの制御装置100を得ることができる。
【0048】
実施の形態2.
本発明の他の実施の形態を
図7及び
図8によって説明する。
図7は、他の実施の形態による巻胴式エレベータの制御装置を示した表示器を省略したブロック図、
図8は、
図7による巻胴式エレベータの制御装置によるかごの定格速度、最高速度と時間との関係を示す走行曲線図である。
図7中、
図2と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。
図7において、かご3の下部には、かご3内の荷重値が予め定められた荷重閾値以下では、第2の荷重オン信号を発生し、荷重閾値を越えると、第2の荷重オフ信号を発生する第2の入出力特性521aを有する第2の荷重検出装置521を備えている。
第2の制御装置1100には、第2の速度切換え指令器1200を有し、第2の最高速度切換え部1220には、第2の荷重オン・オフ信号となる第2の荷重信号が入力されている。これにより、本実施の形態では、実施の形態1となる制御装置100の
図2に示す荷重判断部209が省略されている。
【0049】
速度パターン生成部1303は、最高速度切換えオフ信号に基づいてかご3を定格速度により走行する定格速度走行パターンを生成し、この定格速度パターンを成す定格速度指令信号を発生し、最高速度切換えオン信号により定格速度よりも速くかご3を走行する第1の最高速度走行パターンを生成し、この第1の最高速度走行パターンを成す第1の最高速度指令信号を発生するように形成されている。速度パターン生成部1303は、さらに、騒音抑制速度切換えオン信号及び上昇信号に基づいて第1の速度により走行する第1の速度走行パターンを生成し、この第1の速度走行パターンを成す第1の速度指令信号を発生し、騒音抑制速度切換えオン信号及び下降信号に基づいて第2の速度により走行する第2の速度走行パターンを生成し、この第2の速度走行パターンを成す第2の速度指令信号を発生するように形成されている。
【0050】
本実施の形態では、
図8に示すように、定格速度走行パターンと一つの最高走行速度値を有する最高速度走行パターンとを切換えて、この二種類の速度走行パターンを生成している。これに対して、実施の形態1では、
図2及び
図3(a)に示すように速度パターン生成部303は、第1の荷重検出装置21からの荷重検出信号に基づいて予め定めた荷重閾値以下では、荷重検出信号に基づいて連続的にかご3の最高速度を速くして走行している。これにより、かご3の荷重値を連続して検出する上記実施の形態1の第1の荷重検出装置21よりも、荷重閾値を境に第2の荷重オン信号、第2の荷重オフ信号のいずれかを発生する第2の荷重検出装置521が簡易な構成となる。これにより、実施の形態1の荷重判断部70が不要となる。従って、実施の形態1に比較して制御装置1100が簡易な構成となる。
【0051】
実施の形態3.
本発明の他の実施の形態を
図9及び
図10によって説明する。
図9は、他の実施の形態による巻胴式エレベータの制御装置を示したブロック図、
図10は、
図9による巻胴式エレベータの制御装置により、騒音抑制のため、かごを試行速度により試験走行して速度設定するフローチャートである。
図9中、
図1と同一符号は同一部分を示し、説明を省略する。
【0052】
図9において、エレベータ1から発生する騒音抑制を試行騒音抑制レベルに応じて、かご3の上昇方向、下降方向のそれぞれの試行速度を設定するためにかご3を走行する速度指令信号を発生する騒音抑制速度試験器900を有している。騒音抑制速度試験器900は、騒音抑制指令器400の試行設定スイッチ410をオフ(開放)からオン(閉成)にして、騒音設定部402の「高」、「中」、「低」のうちの一つを選択して、試行騒音抑制レベル信号を騒音抑制速度試験器900の試行速度部902及び騒音判断部906に入力される。これにより、試行速度部902は、試行騒音抑制レベルに応じて上昇方向と下降方向の一定速度となる第1の試行速度、第2の試行速度をそれぞれ設定し、試行速度指令信号が発生するように形成されている。ここで、第1の試行速度は、かご3の上昇方向の最高速度よりも遅いと共に、第2の試行速度は、下降方向の定格速度よりも遅く設定されている。なお、試行設定スイッチ410及び騒音設定部402が試行騒音抑制設定手段を成している。
【0053】
試行荷重判断部904は、荷重検出信号に基づく荷重検出値が予め定められた荷重閾値以下か否かを判断し、荷重閾値以下であれば、試行荷重オン信号を発生するように形成されている。かご3内の荷重によって騒音値が変動するからである。かご3内負荷が無負荷に設定されることが好ましい。騒音判断部906には、試行騒音抑制レベルに応じて騒音基準値が設定され、かご3の走行している際に騒音検知信号に基づく騒音値が騒音基準値以内か否か判断すると共に、かご3が停止している状態で、暗騒音が暗騒音閾値以下か否かを判断するように形成されている。試行移行部908は、試行速度開始スイッチ920がオン(閉成)すると共に、試行荷重オン信号が入力され、暗騒音が暗騒音閾値以内であれば、走行開始信号を発生して、試行速度部902からの試行速度指令信号をモータ制御器300に入力されるように形成されている。
【0054】
試行速度判断部910は、騒音検出検知信号に基づく騒音検出値が騒音基準値を越えていると、試行速度からΔvdを差し引いた新たな試行速度を試行速度部902に設定すると共に、騒音検出検知信号に基づく騒音検出値が騒音基準値以下であれば、試行速度が最低基準速度を越えていれば、速度設定部404に設定する。さらに、試行速度判断部910は、新たな試行速度が最低基準速度値以下であれば、最低基準速度値と試行速度との差に基づいて、試行速度にΔvuを加えた新たな速度して速度設定部404に設定する。
【0055】
上記のように構成された巻胴式エレベータの制御装置の動作を
図9及び
図10によって説明する。まず、かご3が停止している状態で、試行速度設定スイッチ410をオフからオンにして(ステップS301)、騒音設定部402の「高」、「中」、「低」のうち一つを設定し、試行速度部902が上昇方向及び下降方向の第1の試行速度、第2の試行速度をそれぞれ設定する(ステップS303)。試行移行部908は、試行開始スイッチ910がオフからオンになることを検知すると(第1のステップとしてステップS305)、騒音判断部906は、かご3が停止状態で、暗騒音が予め定められた暗騒音閾値以下か判断する(第2のステップとしてのステップS307)。
【0056】
暗騒音閾値以下であれば、試行荷重判断部904は、かご3内の荷重が荷重閾値以下か否かを判断し(第3のステップとしてのステップS309)、荷重閾値以下であれば、試行移行部908からの試行開始信号が発生して、試行速度設定部902からの試行速度指令信号により、かご3を試行速度により下降方向へ走行し(第4のステップとしてのステップS311)、騒音判断部906は、騒音検知信号を検知して(ステップS313)、騒音値が予め定められた騒音基準値以下か判断し(第5のステップとしてのステップS315)、騒音基準値以下であれば、試行速度判断部903は、試行速度が輸送効率に基づく最低基準速度値以下か否かを判断して(ステップS317)、最低基準速度値を越えていれば、試行速度を速度設定部404に設定する(第6のステップとしてのステップS319)。
【0057】
一方、ステップS315において、騒音基準値以下でなければ、試行速度判断部910は、騒音閾値以下であれば、試行速度から減少分速度Δvdを差し引いた新たな試行速度として、ステップS311からステップS315を実行して新たな試行速度を走行速度として試行速度部902に設定する。また、ステップS315において、最低基準速度値以下であれば、試行判断部910は、最低基準速度値と試行速度との差に基づいて、試行速度に増分速度Δvuを加えた新たな速度して速度設定部404に設定して(第6のステップとしてのステップS317)、終了する。
本実施の形態によれば、騒音の試行騒音抑制レベルを上記のように「高」、「中」、「低」の三種類とすれば、一種類ごとの騒音を試行騒音抑制レベルに応じたかご3の上昇方向及び下降方向の第1の試行速度を第1の速度とし、第2の試行速度を第2の速度として速度設定部404に簡易に設定できる。さらに、騒音設定部402を試行設定スイッチ410のオンにより、騒音を抑制するための試行騒音抑制レベルの設定にも用いることができる。
【0058】
本発明は、上記発明の実施の形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。例えば、
図2において、荷重検出信号を速度パターン生成部303に入力しなくても良い。このようにすると、実施形態2の速度パターン生成部1303と同様な構成となり、
図8に示すように、速度パターン生成部1303は、荷重閾値を越えると、定格速度パターンを発生し、荷重閾値以下では、一つの最高速度値を有する第1の最高速度パターンの二種類を生成すると共に、第1の最高速度パターンを成す第1の最高速度指令信号を発生することになる。よって、この変形例による速度パターン生成部1303では、実施の形態1の速度パターン生成部303よりも簡易な構成となる。
【0059】
また、速度切換スイッチ245の機能を速度パターン生成部303に有するようにしても良い。最高速度切換え信号及び騒音抑制速度切換え信号を速度パターン生成部303に入力して、それぞれの信号が単独で入力している場合には、それぞれの信号による速度パターンを生成すると共に、最高速度切換え信号及び騒音抑制速度切換え信号が入力されると、騒音抑制速度切換え信号を優先して速度パターンを生成するようにしても良い。
【0060】
また、
図2及び
図7において、定格速度スイッチ333を省き、最高速度制限部335には、速度偏差信号を直接入力しても良い。この構成によれば、かご3の加速開始から最高速度制限部335は、速度偏差値が速度偏差閾値を越えると最高速度制限信号を発生するので、かご3が低速度なることがある。この場合には、明らかに異常であるので、表示検知部602が速度検出信号に基づいてかご3が定格速度に達していないことを判断して、表示器600にその旨を表示することが好ましい。
【0061】
また、騒音抑制設定部402は、騒音抑制レベルとして「高」、「中」、「低」と段階的に設定するようにしたが、ダイヤル式により「高」~「低」の間を連続的に設定しても良く、連続的にした場合には、速度設定部404は、騒音抑制設定部402の連続的な抑制レベル設定に応じたかご3の走行速度を連続した設定となる。これにより、騒音抑制のために、きめ細やかなかごの走行速度を得ることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 巻胴式エレベータ、3 かご、5 ロープ、9 巻上機、9d 巻胴、11 モータ、13 エンコーダ、21 第1の荷重検出装置(第1の荷重検出手段)、100,1100 エレベータの制御装置、200,1200 定格速度切換え指令器、205 騒音抑制信号発生部(騒音抑制信号発生手段)、205s 騒音抑制開始スイッチ(騒音抑制開始スイッチ手段)、207 走行方向発生部(走行方向発生手段)、209 荷重判断部(荷重判断手段)、220 第1の最高速度切換え部(第1の最高速度切換え手段)、240 騒音抑制速度切換え部、303,1303 速度パターン生成部(速度パターン生成手段)、335 最高速度制限部(最高速度制限手段)、400 騒音抑制設定器、402 騒音設定部、404 速度設定部、410 試行設定スイッチ、500 電力変換装置(可変電圧可変周波数手段)、521 第2の荷重検出装置(第2の荷重検出手段)、600 表示器、602 表示検知部(表示検知手段)、604 表示部(表示手段)、1220 第2の最高速度切換え部(第2の最高速度切換え手段)、902 試行速度部、904 試行荷重判断部、920 試行速度開始スイッチ。