IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニオバスク ティアラ インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】経カテーテル人工僧帽弁
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20230106BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020206854
(22)【出願日】2020-12-14
(62)【分割の表示】P 2019000320の分割
【原出願日】2011-05-04
(65)【公開番号】P2021037423
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】61/414,879
(32)【優先日】2010-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/393,860
(32)【優先日】2010-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/331,799
(32)【優先日】2010-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513259997
【氏名又は名称】ニオバスク ティアラ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ランディー マシュー レーン
(72)【発明者】
【氏名】コリン エー. ニュリー
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/113906(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0195183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁であって、
折畳み構成及び拡張構成を有するアンカーと、
複数の弁尖を有する弁と、
を備え、
前記アンカーは、心房スカート、環状領域、及び、心室スカートを有しており、
前記心室スカートは、該心室スカートの患者の僧帽弁の前尖の第1の側面の側の部分に連結された固着タブを含んでおり、
前記固着タブは、前記前尖及び隣接腱索が該固着タブと前記アンカーの前面との間に捕捉されるように、前記患者の僧帽弁の前尖の第1の側面上の第1の線維性三角に対して固着されるように適合されており、
前記複数の弁尖の各々は、前記アンカーと連結された第1端と、該第1端の反対側にある自由端と、を有し、
前記弁は、開放構成と閉鎖構成とを有し、前記開放構成において、前記複数の弁尖の前記自由端が相互から離れて配置されることにより、順行血流がそれを通り越すことを可能にし、前記閉鎖構成において、前記複数の弁尖の前記自由端が相互に係合して、逆行血流がそれを通り越すことを実質的に防止する
ことを特徴とする人工心臓弁。
【請求項2】
前記心房スカートの少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われている
ことを特徴とする請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項3】
前記環状領域の少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われている
ことを特徴とする請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項4】
前記環状領域は、非対称的なD字形の断面を備え、該非対称的なD字形の断面は、実質的に平坦な前方部分と、円筒形状の後方部分とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項5】
前記心室スカートの少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われている
ことを特徴とする請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項6】
前記心室スカートは、非対称的なD字形の断面を備え、該断面は、実質的に平坦な前方部分と、円筒形状の後方部分とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項7】
第2の固着タブが、前記心室スカートの前記前方部分に連結されており、
該第2の固着タブは、前記第1の線維性三角の反対側の第2の線維性三角に対して固着されるように適合されることにより、前記前尖及び隣接腱索が、該第2の固着タブと前記アンカーの前面との間に捕捉される
ことを特徴とする請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項8】
後方心室固着タブが、前記心室スカートの後方部分に連結されており、
該後方心室固着タブは、前記患者の僧帽弁の後尖を覆って固着されるように適合され、それにより、該後方心室固着タブは、前記後尖と前記患者の心臓の心室壁との間に着座させられる
ことを特徴とする請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項9】
前記アンカーの前方部分に連結され整列要素をさらに備え、該整列要素は、前記患者の心臓の大動脈起始部と整列させられ、該患者の僧帽弁の前尖の2つの線維性三角の間に配置されるように適合される
ことを特徴とする請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項10】
前記人工心臓弁は、それに連結される治療薬をさらに備え、該治療薬は、そこから溶出されるように適合される
ことを特徴とする請求項1に記載の人工心臓弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概して、医療デバイスおよび方法に関し、より具体的には、僧帽弁逆流とも呼ばれる、僧帽弁閉鎖不全症等の弁不全症の治療に関する。従来の外科的埋込方法によって、または低侵襲経皮カテーテルあるいは低侵襲経心尖的方法によって送達される、人工弁の使用が、弁不全症に対する1つの可能な治療である。
【0002】
脊椎動物の心臓は、4つの心腔に分けられ、心臓によって拍出される血液が心臓血管系を通って順方向に流れることを確実にする、4つの弁(僧帽、大動脈、肺動脈、および三尖弁)を装備している。健康な心臓の僧帽弁は、心臓の左心室から左心房の中への血液の逆流を防止し、左心室が収縮するときに閉じる2つの可撓性弁尖(前および後)を備える。弁尖は、線維輪に付着しており、それらの自由縁は、左心室の収縮中に左心房の中へ脱出することを防止するように、左心室の乳頭筋へ弁下腱索によって係留される。
【0003】
種々の心臓疾患または退行性変化は、僧帽弁器官のこれらの部分のうちのいずれかにおいて機能不全を引き起こす場合があり、僧帽弁を異常に狭窄または拡張させ、または血液が左心室から左心房の中に戻るように漏出する(すなわち、逆流する)ことを可能にさせる。任意のそのような機能障害は、心臓の十分性を損ない、衰弱させ、生命を脅かし得る。
【0004】
したがって、僧帽弁機能不全を治療するために、自然僧帽弁器官を置換、修復、または再形成するための心臓切開手術手技、および自然僧帽弁の生体構造を修正する弁形成リング等の種々の人工装具の外科的埋込を含む、多数の外科的方法およびデバイスが開発されてきた。つい最近、置換僧帽弁アセンブリを送達するための低侵襲経カテーテル技法が開発された。そのような技法では、人工弁は、概して、可撓性カテーテルの端の上に圧着状態で載置され、弁が埋込部位に到達するまで、患者の血管または身体を通して前進させられる。次いで、人工弁は、欠損自然弁の部位で、その機能的サイズまで拡張される。
【0005】
これらのデバイスおよび方法は、弁不全症に対する有望な治療であるが、送達するのが困難で、製造するのが高価となり得るか、または全ての患者の治療に適応されない場合がある。したがって、僧帽弁不全症等の弁不全症の治療のための改良型デバイスおよび方法を提供することが望ましいであろう。これらの目的のうちの少なくともいくつかは、以下で開示されるデバイスおよび方法によって満たされる。
【背景技術】
【0006】
一例として、その開示が参照することにより本明細書に組み込まれる国際出願PCT/US2008/054410号(特許文献1として公開されている)は、弾性リングと、1つの方向でそれを通る血流を可能にするよう、リングに対して載置される複数の弁尖膜と、リングに対して移動可能に載置され、心臓弁輪、心臓弁尖、および/または心臓壁の解剖学的構造を握持するように寸法決定される、複数の組織係合設置要素とを備える、経カテーテル人工僧帽弁を説明する。設置要素のそれぞれは、解剖学的構造の組織の別個の対応領域に同時に係合するように協働的に構成および寸法決定される、それぞれの近位、中間、および遠位組織係合領域を画定し、第1、第2、および第3の細長い組織穿刺要素を含んでもよい。人工弁はまた、人工弁の周囲の逆血流に対して人工弁の周囲を密閉するために弾性リングに対して載置される、スカートを含んでもよい。
【0007】
その開示が参照することにより本明細書に組み込まれる、国際出願PCT/US2009/041754号(特許文献2として公開されている)は、自然僧帽弁の輪郭に適合するように広口上端および先細部分を有するアンカーまたは外側支持フレームと、その中に載置された組織ベースの一方向弁とを備える人工僧帽弁アセンブリを説明する。アセンブリは、自然心臓組織と接触するように半径方向外向きに拡張して、圧入を作成するように適合され、さらに、人工腱索として機能するように、弁アセンブリの弁尖を心臓の好適な場所に固着する張力部材を含む。
【0008】
自然解剖学的構造に対する人工弁の自己設置および自己固着を促進するように、半径方向よりもむしろ軸方向の締め付け力の印加に依存する人工僧帽弁アセンブリのような、心臓への人工弁の付着のための鉤爪構造を利用する人工僧帽弁アセンブリ(例えば、その開示が参照することにより本明細書に組み込まれる、Hermannらへの特許文献3を参照)も知られている。
【0009】
僧帽弁逆流の治療として提案されている別の方法は、インプラントが弁尖をともに挟むために使用される、低侵襲カテーテルベースの治療に最近適合されている外科的ボウタイ方法である。この手技は、その内容全体が参照することにより本明細書に組み込まれるSt.Goarらへの特許文献4等の科学および特許文献でさらに十分に開示されている。
【0010】
他の関連公報は、Carpentierらへの特許文献5を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2008/103722号
【文献】国際公開第2009/134701号
【文献】米国特許出願公開第2007/0016286号明細書
【文献】米国特許第6,629,534号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0015731号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
患者の心臓の中に人工弁を固着する方法であって、
該方法は、
該人工弁を提供することであって、該人工弁は、アンカーを備え、該アンカーは、心房スカート、環状領域、心室スカート、および複数の弁尖を有し、該アンカーは、該心臓に送達するための折畳み構成、および該心臓と固着するための拡張構成を有する、ことと、
該患者の心臓の中に該人工弁を設置することと、
該患者の自然僧帽弁の上面の上に横たわるように、半径方向外向きに該心房スカートを拡張し、該心房の一部分に対して該心房スカートを固着することと、
自然僧帽弁輪と一致するように、およびそれに係合するように、該アンカーの該環状領域を半径方向に拡張させることと、
該心室スカートを半径方向に拡張し、それにより、自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させることと
を含む、方法。
(項目2)
前記人工弁の少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われている、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記人工弁を設置することは、前記心臓の右心房から左心房まで該人工弁を経中隔的に送達することを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記人工弁を設置することは、前記心臓の外側の領域から該心臓の前記左心室まで該人工弁を経心尖的に送達することを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記心房スカートを拡張させることは、該心房スカートから離れるように制約シースを摺動可能に移動させ、それにより、該心房スカートの半径方向拡張を可能にすることを含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記心房スカートは、前記制約シースが該心房シースから除去されたときに自己拡張する、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記人工弁に力を印加することをさらに含み、該力を印加することにより、前記心房スカートが前記僧帽弁の前記上面に係合することを確実にする、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記心房スカートは、複数の鉤を備え、該心房スカートを拡張することは、前記僧帽弁の前記上面の中に該鉤を固着することを含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記心房スカートを拡張することは、前記自然僧帽弁の前記上面に対して該心房スカートを密閉することを含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記環状領域を半径方向に拡張することは、該環状領域から離れるように制約シースを摺動可能に移動させ、それにより、該環状領域の半径方向拡張を可能にすることを含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記環状領域は、前記制約シースが該環状領域から除去されたときに自己拡張する、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記環状領域を半径方向に拡張することは、該環状領域を非対称的に拡張することを含み、該非対称に拡張することにより、該環状領域の前方部分は実質的に平坦であり、該環状領域の後方部分は円筒形状である、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記心室スカートは、該心室スカートの前方部分上に三角固着タブをさらに備え、該心室スカートを半径方向に拡張することは、前記自然僧帽弁の前尖の第1の側面上の第1の線維性三角に対して該三角固着タブを固着することを含み、該三角固着タブを固着することにより、該自然前尖および隣接腱索が、該三角固着タブと前記アンカーの前面との間に捕捉される、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記心室スカートは、該心室スカートの前記前方部分上に第2の三角固着タブをさらに備え、該心室スカートを半径方向に拡張することは、前記第1の線維性三角の反対側の第2の線維性三角に対して該第2の三角固着タブを固着することを含み、該第2の三角固着タブを固着することにより、前記自然前尖および隣接腱索が、該第2の三角固着タブと前記アンカーの前面との間に捕捉される、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記心室スカートは、該心室スカートの後方部分上に後方心室固着タブをさらに備え、該心室スカートを半径方向に拡張することは、前記自然僧帽弁の後尖を覆って該後方心室固着タブを固着することを含み、該後方心室固着タブを固着することにより、該心室スカートは、該後尖と前記心臓の心室壁との間に着座する、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記心室スカートを半径方向に拡張することは、該心室スカートから離れるように制約シースを摺動可能に移動させ、それにより、該心室スカートの半径方向拡張を可能にすることを含む、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記心室スカートは、前記制約シースが該心室スカートから除去されたときに自己拡張する、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記心室スカートは、複数の鉤を備え、該心室スカートを拡張することは、心臓組織の中に該鉤を固着することを含む、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記人工弁は、複数の人工弁尖を備え、前記心室スカートを半径方向に拡張することは、前記自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させ、それにより、該人工弁尖への該自然僧帽弁尖の干渉を防止することを含む、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記心室スカートを半径方向に拡張することは、心室壁に接触することなく、および左心室流出路を塞ぐことなく、前記自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させることを含む、項目1に記載の方法。
(項目21)
前記心室スカートを半径方向に拡張することは、該心室スカートを非対称的に拡張することを含み、該非対称に拡張することにより、該心室スカートの前方部分は実質的に平坦であり、該心室スカートの後方部分は円筒形状である、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記心房スカートは、整列要素を備え、前記方法は、前記患者の弁に対して該整列要素を整列させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記弁は、僧帽弁を備え、前記整列させることは、前記整列要素を大動脈起始部と整列させ、該僧帽弁の前尖の2つの線維性三角の間に該整列要素を配置することを含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記整列させることは、前記人工弁を回転させることを含む、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記人工弁は、交連に連結される複数の人工弁尖を備え、前記方法は、送達カテーテルから該交連を解放することを含む、項目1に記載の方法。
(項目26)
前記人工弁は、三尖弁尖構成を備える、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記人工弁は、開放構成および閉鎖構成を有し、該開放構成において、前記人工弁尖が相互から離れて配置され、該閉鎖構成において、該人工弁尖が相互に係合し、血液は、該開放構成における該人工弁を通って自由に流れ、該人工弁を横断する逆行血流は、該閉鎖構成において実質的に妨げられる、項目1に記載の方法。
(項目28)
僧帽弁逆流を低減または排除することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目29)
前記人工弁は、治療薬を備え、前記方法は、該人工弁から隣接組織の中に該治療薬を溶出することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目30)
人工心臓弁であって、
該人工心臓弁は、
心房スカート、環状領域、および心室スカートを有するアンカーであって、該アンカーは、心臓に送達するための折畳み構成、および該人工心臓弁を患者の心臓に固着するための拡張構成を有する、アンカーと、
複数の人工弁尖であって、該弁尖の各々は、第1端および自由端を有し、該第1端は、該アンカーと連結され、該自由端は、該第1端の反対側にある、人工弁尖と
を備え、
該人工心臓弁は、開放構成および閉鎖構成を有し、該開放構成において、該人工弁尖の該自由端が相互から離れて配置されることにより、順行血流がそれを通り越すことを可能にし、該閉鎖構成において、該人工弁尖の該自由端が相互に係合して、逆行血流がそれを通り越すことを実質的に防止する、人工心臓弁。
(項目31)
前記心房スカートの少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われている、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目32)
前記心房スカートは、それに連結される複数の鉤を備え、該複数の鉤は、前記患者の僧帽弁の上面の中に該心房スカートを固着するようにさらに適合される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目33)
前記心房スカートは、折畳み構成および拡張構成を有し、該折畳み構成は、前記患者の心臓に送達するために適合され、該拡張構成は、該折畳み構成に対して半径方向に拡張されており、該患者の自然僧帽弁の上面の上に横たわるように適合されており、それにより、心房の一部分に対して該心房スカートを固着する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目34)
前記心房スカートは、拘束されていないときに、前記折畳み構成から前記半径方向拡張構成まで自己拡張する、項目33に記載の人工心臓弁。
(項目35)
前記心房スカートは、1つ以上の放射線不透過性マーカーを備える、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目36)
前記心房スカートは、複数の軸方向に配向された支柱を備え、該複数の支柱は、コネクタ要素によって一緒に接続され、該複数の相互接続された支柱は、一連の頂点および谷間を形成する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目37)
前記環状領域の少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われている、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目38)
前記環状領域は、折畳み構成および拡張構成を有し、該折畳み構成は、前記患者の心臓に送達するために適合され、該拡張構成は、該折畳み構成に対して半径方向に拡張されており、自然僧帽弁環に順応し、それに係合するように適合される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目39)
前記環状領域は、拘束されていないときに、前記折畳み構成から前記拡張構成まで自己拡張する、項目38に記載の人工心臓弁。
(項目40)
前記環状領域は、非対称的なD字形の断面を備え、該非対称的なD字形の断面は、実質的に平坦な前方部分と、円筒形状の後方部分とを有する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目41)
前記環状領域は、複数の軸方向に配向された支柱を備え、該複数の支柱は、コネクタ要素によって一緒に接続され、該複数の相互接続された支柱は、一連の頂点および谷間を形成する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目42)
前記軸方向に配向された支柱のうちの1つ以上は、それを通って延在する1つ以上の縫合糸穴を備え、該縫合糸穴は、縫合糸を受容するようにサイズ決定される、項目41に記載の人工心臓弁。
(項目43)
前記心室スカートの少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われている、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目44)
前記心室スカートは、非対称的なD字形の断面を備え、該断面は、実質的に平坦な前方部分と、円筒形状の後方部分とを有する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目45)
前記心室スカートは、折畳み構成および拡張構成を有し、該折畳み構成は、前記患者の心臓に送達するために適合され、該拡張構成は、該折畳み構成に対して半径方向に拡張されており、自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させるように適合される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目46)
前記心室スカートは、拘束されていないときに、前記折畳み構成から前記拡張構成まで自己拡張する、項目45に記載の人工心臓弁。
(項目47)
前記心室スカートは、該心室スカートの前方部分上に配置された三角固着タブをさらに備え、該三角固着タブは、前記患者の僧帽弁の前尖の第1の側面上の第1の線維性三角に対して固着されるように適合され、それにより、該前尖および隣接腱索が、該三角固着タブと前記アンカーの前面との間に捕捉される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目48)
前記心室スカートは、該心室スカートの前記前方部分上に配置される第2の三角固着タブをさらに備え、該第2の三角固着タブは、前記第1の線維性三角の反対側の第2の線維性三角に対して固着されるように適合されることにより、前記前尖および隣接腱索が、該第2の三角固着タブと前記アンカーの前面との間に捕捉される、項目47に記載の人工心臓弁。
(項目49)
前記心室スカートは、該心室スカートの後方部分上に配置される後方心室固着タブをさらに備え、該後方心室固着タブは、前記患者の僧帽弁の後尖を覆って固着されるように適合され、それにより、該後方心室固着タブは、該後尖と該患者の心臓の心室壁との間に着座させられる、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目50)
前記心室スカートは、それに連結される複数の鉤をさらに備え、該複数の鉤は、心臓組織の中に該心室スカートを固着するように適合される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目51)
前記心室スカートは、複数の支柱を備え、該複数の支柱は、コネクタ要素によって一緒に接続され、該複数の相互接続された支柱は、一連の頂点および谷間を形成する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目52)
前記支柱のうちの1つ以上は、それを通って延在する1つ以上の縫合糸穴を備え、該縫合糸穴は、縫合糸を受容するようにサイズ決定される、項目51に記載の人工心臓弁。
(項目53)
前記複数の人工弁尖は、三尖弁尖構成を備える、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目54)
1つ以上の人工弁尖の少なくとも一部分は、組織または合成材料を備える、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目55)
前記複数の人工弁尖のうちの1つ以上は、1つ以上の支柱に連結され、該1つ以上の支柱は、前記心室スカートに対して半径方向内向きに付勢される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目56)
前記1つ以上の支柱は、それを通って延在する1つ以上の縫合糸穴を備え、該縫合糸穴は、縫合糸を受容するようにサイズ決定される、項目55に記載の人工心臓弁。
(項目57)
前記人工弁尖のうちの1つ以上は、交連柱に連結され、該交連柱は、該交連柱を送達デバイスと解放可能に係合させるように適合される交連タブを有する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目58)
前記アンカーの前方部分に連結される整列要素をさらに備え、該整列要素は、前記患者の心臓の大動脈起始部と整列させられ、該患者の僧帽弁の前尖の2つの線維性三角の間に配置されるように適合される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目59)
前記整列要素は、前記心房スカートと連結される、項目58に記載の人工心臓弁。
(項目60)
前記人工心臓弁は、それに連結される治療薬をさらに備え、該治療薬は、そこから溶出されるように適合される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目61)
人工心臓弁を患者の心臓に送達するための送達システムであって、
該システムは、
管腔が自身を通って延在している内側ガイドワイヤシャフトであって、該管腔は、ガイドワイヤを摺動可能に受容するように適合されている、内側ガイドワイヤシャフトと、
該内側ガイドワイヤシャフトを覆って同心円状に配置されるハブシャフトと、
該ハブシャフトを覆って摺動可能および同心円状に配置されるベルシャフトと、
該ベルシャフト覆って摺動可能および同心円状に配置されるシースと、
該送達システムの近位端付近のハンドルであって、該ハンドルは、アクチュエータ機構を備え、該アクチュエータ機構は、該ベルシャフトおよび該シースを前進および後退させるように適合される、ハンドルと
を備える、システム。
(項目62)
前記人工心臓弁をさらに備え、該人工心臓弁は、半径方向の折畳み構成で前記シースの中に収納される、項目61に記載のシステム。
(項目63)
前記人工心臓弁は、
心房スカート、環状領域、および心室スカートを有するアンカーと、
複数の人工弁尖であって、該弁尖の各々は、第1端および自由端を有し、該第1端は、該アンカーと連結され、該自由端は、該第1端の反対側にあり、該人工心臓弁は、開放構成および閉鎖構成を有し、該開放構成において、該人工弁尖の該自由端が相互から離れて配置されることにより、順行血流がそれを通り越すことを可能にし、該閉鎖構成において、該人工弁尖の該自由端が相互に係合して、逆行血流がそれを通り越すことを実質的に防止する、人工弁尖と
を備える、項目62に記載のシステム。
(項目64)
前記ベルシャフトに対する前記シースの近位への後退は、前記人工心臓弁から拘束を除去し、それにより、該人工心臓弁が自己拡張して前記患者の自然心臓組織と係合することを可能にする、項目62に記載のシステム。
(項目65)
前記人工心臓弁は、前記ハブシャフトと解放可能に連結され、該ハブシャフトに対する前記ベルシャフトの近位への後退は、該ハブシャフトから該人工心臓弁を解放する、項目62に記載のシステム。
(項目66)
前記アクチュエータ機構は、回転ホイールを備える、項目61に記載のシステム。
(項目67)
前記ハブシャフトに連結される組織貫通遠位先端をさらに備え、該組織貫通遠位先端は、前記患者の心臓を通過し、該患者の心臓の切開を拡張するように適合される、項目61に記載のシステム。
(項目68)
ピンロック機構をさらに備え、該ピンロック機構は、前記ハンドルと解放可能に連結され、該ピンロック機構は、前記シースの近位への後退を制限する、項目61に記載のシステム。
本発明は、概して、医療デバイスおよび方法に関し、より具体的には、僧帽弁逆流を治療するために使用される人工弁に関する。本開示は、僧帽弁逆流を治療するための人工弁の使用に焦点を当てているが、これは、限定的となることを目的としない。本明細書で開示される人工弁は、また、他の心臓弁または静脈弁を含む他の身体弁を治療するために使用されてもよい。例示的な心臓弁は、大動脈弁、三尖弁、または肺動脈弁を含む。
【0013】
本主題の実施形態では、経カテーテル人工僧帽弁、ならびに同人工弁を配備する経カテーテル方法および方法が提供される。ある実施形態では、人工僧帽弁は、薄型心房スカート領域の中に拡張する幾何学形状を有する、自己拡張式または拡張可能アンカー(すなわち、フレーム)部分内に付加される複数の弁尖を備える組織型人工一方向弁構造と、概して自然僧帽弁輪に一致するように寸法決定される環状領域と、自然僧帽弁尖を変位させる心室スカート領域と、弁輪下心室空間の中に(すなわち、人工弁を通る血液の流出の方向に)延在し、人工弁構造の効率およびその弁尖上の負荷分配を最適化するように構成される、複数の弁尖交連とを備える。アンカー部分はまた、好ましい実施形態では、その長手軸に沿って非対称であってもよく、心房スカート領域、環状領域、および/または心室スカート領域は、典型的な自然僧帽弁器官の非対称的な輪郭および特徴の密接した適応を促進するために、異なって構成された前面および後面を有する。この非対称性は、本質的に、以下でさらに論議されるように、および/または製造過程中に採用される成形あるいは形成ステップの結果として、アンカー部分の構造的構成に起因してもよい。
【0014】
人工弁構造は、好ましい実施形態では、部分的に、人工僧帽弁の製造を単純化するために、二尖弁または三尖弁を備えてもよいが、当業者に容易に明白となるように、他の構成が可能である。弁尖は、凍結または化学保存した心膜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、カンガルー)等の1つまたは複数の標準生物人工弁材料から、あるいは当技術分野で周知である標準の好適な合成人工弁材料(例えば、繊維強化基質材料)から加工されてもよく、任意の標準の好適な方式で弁尖を形成するように、アンカーに縫い付けられ、または別様に接着されてもよい。
【0015】
人工弁の効率および人工弁尖上の負荷分配を最適化するために、交連は、弁輪下空間の中へ下流に、カンチレバー型様式で略軸方向に延在し、人工弁構造を通る血流と関連付けられる力を分配するように、それらの軸方向長さに沿って半径方向および横方向に屈曲することが可能である。いくつかの実施形態では、(人工僧帽弁が延長状態であるときに)交連は、心室の収縮中の人工弁構造の閉鎖に役立つために、血流の順方向に沿って狭くなる、いくぶん切頭円錐形の開口を画定する。効率および弁尖上の負荷分配をさらに最適化するために、交連は、弓形の継ぎ目に沿って弁尖の付着を提供するよう、成形および寸法決定されてもよく、また、例えば、補強支柱の追加または削除を通して、あるいは選択された領域中の交連の厚さの変動を通して、それらの軸方向長さに沿った異なる点またはゾーンで選択的に可撓性にされてもよい。
【0016】
人工僧帽弁のアンカー部分は、好ましくは、人工僧帽弁が、小型の略管状送達構成に圧縮され、本明細書でさらに説明される配備構成に拡張されることを可能にするよう切断されている、単一の金属材料から加工される。自己拡張式実施形態では、人工僧帽弁のアンカー部分は、ニッケルチタン合金ニチノール等の形状記憶合金(SMA)から加工されてもよく、拡張可能実施形態では、アンカー部分は、体内に埋め込むために好適である、クロム合金またはステンレス鋼等の任意の金属材料から加工されてもよい。いくつかの実施形態では、金属材料は、アンカー部分の全体を通して単一の厚さであってもよく、他の実施形態では、ある領域中でアンカー部分の可撓性を増加または減少させるように、および/または配備に備えた圧縮過程および配備中の拡張の過程を制御するように、その特定の領域中でアンカー部分によって及ぼされる半径方向力の変動を促進するよう、厚さが異なってもよい。
【0017】
配備されたときに、人工僧帽弁の心房スカート領域は、自然僧帽弁輪の心房表面に対して平坦に横たわり、心房表面を覆うよう、および心臓の隣接心房表面の少なくとも一部分に対して人工僧帽弁を固着するよう、略半径方向外向きに延在する。心房スカート領域は、血流中の潜在的血栓形成乱流を最小化するために、薄型軸方向外形を有し(心臓の心房の中にわずかにのみ延在する)、好ましい実施形態では、心房表面に対して心房スカート領域を密閉するため、および人工僧帽弁を通して心房血液を注ぎ込むことを促進するために、上記で説明される種類の標準生物または合成人工弁材料で覆われてもよい。いくつかの実施形態では、心房スカート領域はさらに、心房心臓表面への配備した人工弁の固着をさらに促進するように、心房鉤または突起を備える。配備時に自然僧帽弁内の人工僧帽弁の配向および整列を促進するために、アンカー部分が縦方向に非対称である実施形態では、人工僧帽弁のアンカー部分の心房スカート領域は、好ましくは、(血管造影法、コンピュータ断層撮影法等によって)心房スカート領域の残りの部分と区別され、それにより、配備中に配向ガイドとして使用されてもよい、整列構造をさらに備えてもよい。最も好ましくは、整列構造は、半径方向に拡張して心房表面の大動脈起始部分に適応するように構成される、心房スカート領域の前面の伸長を備えてもよい。
【0018】
人工僧帽弁の環状領域は、上述のように、配備されたときに、概して自然僧帽弁輪に一致し、かつ自然僧帽弁輪に対して固着するように寸法決定される。好ましい実施形態では、配備した環状領域は、典型的な自然僧帽弁の輪郭に適合するために好適な略D字形の輪を画定してもよく、自然僧帽弁輪に対して環状領域を密閉するように、以前に説明された種類の標準生物または合成人工弁材料で覆われてもよい。
【0019】
心室スカート領域は、心室空間中で配備されたときに、自然僧帽弁に対して略半径方向外向きに拡張するが、左心室流出路を塞ぐまで、または心室壁に接触するまでは拡張しない。心室空間中で変位した自然弁尖に対して人工僧帽弁を固着するために、完全配備心室スカート領域の最大半径方向変位は、自然僧帽弁の円周よりもわずかに大きくなるように選択される。好ましい実施形態では、心室スカート領域はまた、そこへ配備した人工弁をさらに固着するように、心室および/または自然弁尖鉤または突起部を備える。最も好ましくは、心室スカート領域は、非対称性であり、その突起部は、自然僧帽弁の前尖の両側で線維性三角に対して固着するために、心室スカート領域の前面に位置する2つの三角固着タブと、自然僧帽弁の後尖を覆って固着するために、心室スカート領域の後面に位置する1つの後方心室固着タブとを備える。これらのタブには、以下でさらに詳細に説明されるような配備制御領域が関連付けられる。
【0020】
心室スカート領域はまた、いくつかの実施形態では、変位した自然弁尖に対して心室スカート領域を密閉するので、それにより、心室の収縮中にその閉鎖を支援するように、人工弁構造に向かって(心室の収縮中に)心室血液を注ぎ込むために、以前に説明された種類の標準生物または合成人工弁材料で覆われてもよい。
【0021】
心室空間中の心房表面に対する人工僧帽弁、自然弁輪、および変位した自然弁尖の複合3ゾーン固着(好ましい実施形態では、三角および後方心室固着からの第4の固着ゾーンによって補足される)は、心房または心室の収縮中に、人工弁が移動すること、または自然弁輪内から外れることを防止し、単一の固着ゾーンのみで、またはこれら4つの固着ゾーンの任意の組み合わせで固着される人工弁と比較して、任意の所与の固着ゾーンで印加されるために必要とされる固着圧力を低下させる。各ゾーンで自然構造に対して及ぼされるために必要とされる半径方向力の結果として生じる低減は、自然僧帽弁器官の変位によって引き起こされる、近くの大動脈弁または大動脈起始部の閉塞または衝突の危険性を最小化する。人工僧帽弁の複合3または4ゾーン固着はまた、以下で説明されるように、人工僧帽弁の設置および/または再配置を促進する。
【0022】
自然僧帽弁器官内で人工僧帽弁を配備するために、人工弁は、最初に圧縮され、当業者に周知である種類の好適に適合された従来のカテーテル送達システムの中に搭載される。好ましくは、後の配備を促進するために、人工弁の交連および関連人工弁構造は、カテーテル送達システムの内側管腔内で捕捉され、アンカー領域の残りの部分は、カテーテル送達システムの二次外側管腔内で捕捉される。次いで、搭載した人工僧帽弁は、従来のカテーテル送達システムを使用して、その圧縮形態で、心臓の左心房の中に送達される(典型的には経中隔的または経心尖的に)。人工弁は、その交連を介してカテーテル送達システムに解放可能に付着され、心房空間の中への通行中に、その(好ましくは二重管腔)送達シースによって遮蔽される。いったん人工弁が左心房の中に誘導されると、人工弁の種々の領域の拡張が進むことを可能にするために、カテーテル送達システムの送達シースは、以下で説明されるように後退させられる。当然ながら、自己拡張式実施形態では、人工弁の拡張は、送達シースの後退時に自発的に起こり、拡張可能実施形態では、バルーン等のカテーテル膨張構造が、拡張を達成するために必要とされる。
【0023】
人工僧帽弁の配備は、配備されている人工弁の特定の実施形態の特徴に応じて、異なって進んでもよい。例えば、心室スカート領域中に三角固着タブおよび後方心室固着タブ(ならびに、好ましくは、心房領域中の整列構造)を備える、非対称実施形態では、これらのタブは、好ましくは、それぞれ、自然線維性三角および後尖に対するこれらのタブの固着を促進するために、心室スカート領域の残りの部分の配備の前に配備されてもよい。
【0024】
第1の一般配備ステップでは、人工僧帽弁の心房スカート領域は、心臓の左心房内でカテーテル送達シースの対応部分を後退させることによって拡張することを許可され(または、送達シースの対応部分の後退後にバルーン拡張され)、次いで、拡張した心房スカート領域は、自然僧帽弁の心房表面を覆って設置され、心臓の隣接心房表面の少なくとも一部分に対して固着される。心房スカート領域が整列構造を備える、好ましい実施形態では、この第1の一般配備ステップはさらに、2つのサブステップに分けられてもよく、カテーテル送達シースは、最初に、(所望の位置に人工僧帽弁を配向するような方法で、送達システムの操作を促進するよう可視化されてもよいように)整列構造の拡張を可能にするまでのみ後退させられ、次いで、いったん人工弁の初期整列が満足いくように思われると、心房スカート領域の残りの部分の拡張、設置、および固着を可能にするようにさらに後退させられる。整列構造が心房スカート領域の後面の伸長を備える、実施形態では、そのような初期整列は、大動脈起始部に隣接し、かつ自然前尖の線維性三角の間に設置されるように、整列構造の回転および/または整列を含む。
【0025】
次に、人工弁の環状領域は、第2の固着ゾーンを作成するため、および人工弁構造を通る血流のための好適な開口部を作成するために、自然僧帽弁輪に係合するよう(すなわち、少なくともその大部分の全体を通して自然弁輪に接触するよう)カテーテル送達シースのさらなる後退によって拡張することが許可される。
【0026】
次いで、心室スカート領域中の三角固着タブおよび後方心室固着タブを備える実施形態では、カテーテル送達シースは、タブが拡張することを可能にするまでさらに後退させられる一方で、タブの配備制御領域を含む、人工弁の心室スカート領域の残りの部分は、覆われたままとなる。配備制御領域が依然として送達システム内で保持され、心房スカート領域が心房表面に対して固着されると、タブは、自然僧帽弁の対応特徴との係合を促進するように半径方向外向きに突出する。後方心室固着タブは、後尖への腱索付着が欠けている、僧帽弁の後尖の中央で整列させられ、後尖と心室壁との間に着座するように後尖を通り越させられる。2つの三角固着タブは、それらの頭部が線維性三角に設置された状態で、前尖の両側に設置される。人工弁のわずかな回転および再整列がこのときに起こり得る。
【0027】
いったんアセンブリが満足に設置され、タブが整列させられると、カテーテル送達シースは、心室スカート領域の残りの部分の拡張を可能にして、僧帽弁器官内で人工弁を固定し、僧帽弁輪を密閉するようにさらに後退させられてもよい。外側カテーテル送達シースの完全後退は、心室スカート領域を解放し、固着タブがそれらの固着場所に近接することを可能にする。人工弁が拡張するにつれて、三角タブが線維性三角に対して固着し、タブと人工弁アセンブリの前面との間に自然前尖および腱索を捕捉し、後方心室タブが心室壁と後尖との間に固着し、後方心室タブと人工弁アセンブリの後面との間に後尖を捕捉する。心室スカート領域の残りの部分は、自然僧帽弁尖および隣接生体構造に対して拡張し、それにより、自然弁尖内で密閉漏斗を作成し、人工弁機能の閉塞を回避するように、人工交連から自然弁尖を変位させる。人工弁の交連が依然として送達システム内で捕捉されると、正確な設置、固着、および密閉を確保するように、非常に軽微な調整が依然として行われてもよい。
【0028】
心室スカート領域中の三角固着タブおよび後方心室固着タブを備えない実施形態では、心室スカート領域からのカテーテル送達シースの後退は、当然ながら、人工弁の心室スカート領域が自然僧帽弁に対して拡張することを可能にするように、および加えて、心室空間中の変位した自然弁尖に対して人工弁を固着するように、人工弁の心房スカートおよび環状領域が最初に固着された後に、1ステップで行われてもよい。任意で、この時点では依然として、その交連を介してカテーテル送達システムに解放可能に付着される、人工僧帽弁は、心房スカート領域と心臓の心房表面との間で、より大きい着座力を生成するように、および心室スカート領域に存在してもよい任意の心室および/または自然弁尖鉤の付加的な購入を提供するように、心室空間の中にさらに下流に、わずかに駆動されてもよい。心房スカート領域、環状領域、および心室スカート領域のうちの1つ以上が好適な生物または合成人工弁材料で覆われる、実施形態では、シールもまた、人工弁のそれぞれの領域と自然僧帽弁器官の関連ゾーンとの間に形成されてもよい。
【0029】
最終的に、いったん人工弁の満足できる設置が達成されると、交連がカテーテル送達システムから解放され、カテーテル送達システムが引き出されることを可能にし、自然僧帽弁器官の機能的代替として、人工僧帽弁を定位置に残す。交連の解放時に、人工弁はさらに、送達システムによって及ぼされる残存圧力が放出されるにつれて、短縮および着座の最終段階を受けてもよい。心房スカート領域は、この圧力の放出からわずかに反動し、人工弁をわずかにさらに左心房の中まで入れ、それにより、任意の関連鉤、突起部、またはタブを含む、心室スカート領域をさらに着座させる。三角固着タブを備える実施形態では、その着座は、人工弁に対して捕捉した前尖を堅く引き、それにより、左心室流出路(LVOT)の閉塞を回避または最小化し、弁傍漏出を防止するように弁輪の中で心室スカート領域をしっかりと着座させる。いったん最終配備が完了すると、送達システムが後退させられ、除去される。
【0030】
本発明の第1の側面では、患者の心臓の中で人工弁を固着する方法は、人工弁を提供するステップであって、人工弁は、心房スカート、環状領域、心室スカート、および複数の弁尖を有する、アンカーを備え、アンカーは、心臓に送達するための折畳み構成と、心臓と固着するための拡張構成とを有する、ステップと、患者の心臓の中に人工弁を設置するステップとを含む。方法はまた、患者の自然僧帽弁の上面の上に横たわるよう、半径方向外向きに心房スカートを拡張し、心房の一部分に対して心房スカートを固着するステップと、自然僧帽弁輪と一致するように、およびそれに係合するように、アンカーの環状領域を半径方向に拡張するステップとを含む。方法はまた、心室スカートを半径方向に拡張し、それにより、自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させるステップも含む。
【0031】
人工弁の少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われてもよい。人工弁を設置するステップは、心臓の右心房から左心房へ人工弁を経中隔的に送達するステップ、または心臓の外側の領域から心臓の左心室へ人工弁を経心尖的に送達するステップを含んでもよい。
【0032】
心房スカートを拡張するステップは、心房スカートから離して制約シースを摺動可能に移動させ、それにより、その半径方向拡張を可能にするステップを含んでもよい。心房スカートは、制約シースがそこから除去されたときに自己拡張してもよい。方法はさらに、心房スカートが僧帽弁の上面に係合することを確実にするように、人工弁に力を印加するステップを含んでもよい。心房スカートは、複数の鉤を備えてもよく、心房スカートを拡張するステップは、僧帽弁の上面の中に鉤を固着するステップを含んでもよい。心房スカートを拡張するステップは、自然僧帽弁の上面に対して心房スカートを密閉するステップを含んでもよい。
【0033】
環状領域を半径方向に拡張するステップは、環状領域から離して制約シースを摺動可能に移動させ、それにより、その半径方向拡張を可能にするステップを含んでもよい。環状領域は、制約シースがそこから除去されたときに自己拡張してもよい。環状領域を半径方向に拡張するステップは、環状領域の前方部分が実質的に平坦であり、環状領域の後方部分が円筒形状であるように、環状領域を非対称的に拡張するステップを含んでもよい。
【0034】
心室スカートはさらに、心室スカートの前方部分上に三角固着タブを備えてもよく、心室スカートを半径方向に拡張するステップは、自然僧帽弁の前尖の第1の側面上の第1の線維性三角に対して三角固着タブを固着するステップを含んでもよい。自然前尖および隣接腱索は、三角固着タブとアンカーの前面との間で捕捉されてもよい。心室スカートはさらに、心室スカートの前方部分上に第2の三角固着タブを備えてもよく、心室スカートを半径方向に拡張するステップは、第1の線維性三角の反対側の第2の線維性三角に対して第2の三角固着タブを固着するステップを含んでもよい。自然前尖および隣接腱索は、第2の三角固着タブとアンカーの前面との間で捕捉されてもよい。心室スカートはさらに、心室スカートの後方部分上に後方心室固着タブを備えてもよい。心室スカートを半径方向に拡張するステップは、後尖と心臓の心室壁との間に着座するように、自然僧帽弁の後尖を覆って後方心室固着タブを固着するステップを含んでもよい。心室スカートを半径方向に拡張するステップは、心室スカートから離して制約シースを摺動可能に移動させ、それにより、その半径方向拡張を可能にするステップを含んでもよい。心室スカートは、制約シースがそこから除去されたときに自己拡張してもよい。
【0035】
心室スカートは、複数の鉤を備えてもよく、心室スカートを拡張するステップは、心臓組織の中に鉤を固着するステップを含んでもよい。人工弁は、複数の人工弁尖を備えてもよく、心室スカートを半径方向に拡張するステップは、自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させ、それにより、人工弁尖への自然僧帽弁尖の干渉を防止するステップを含んでもよい。心室スカートを半径方向に拡張するステップは、心室壁に接触することなく、および左心室流出路を塞ぐことなく、自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させるステップを含んでもよい。心室スカートを半径方向に拡張するステップは、心室スカートの前方部分が実質的に平坦であり、心室スカートの後方部分が円筒形状であるように、心室スカートを非対称的に拡張するステップを含んでもよい。
【0036】
心房スカートは、整列要素を備えてもよく、方法はさらに、患者の弁に対して整列要素を整列させるステップを含んでもよい。弁は、僧帽弁を備えてもよく、整列させるステップは、整列要素を大動脈起始部と整列させ、前記僧帽弁の前尖の2つの線維性三角の間に整列を配置するステップを含んでもよい。整列させるステップは、人工弁を回転させるステップを含んでもよい。人工弁は、1つ以上の交連に連結される複数の人工弁尖を備えてもよく、方法は、送達カテーテルから交連を解放するステップをさらに含んでもよい。人工弁は、三尖弁尖構成を備えてもよい。
【0037】
人工弁は、人工弁尖が相互から離れて配置される、開放構成と、人工弁尖が相互に係合する、閉鎖構成とを有してもよい。血液は、開放構成の人工弁を通って自由に流れ、人工弁を横断する逆行血流は、閉鎖構成において実質的に妨げられる。方法は、僧帽弁逆流を低減または排除するステップを含んでもよい。人工弁は、治療薬を備えてもよく、方法は、人工弁から隣接組織の中に治療薬を溶出するステップをさらに含んでもよい。
【0038】
本発明の別の側面では、人工心臓弁は、心房スカート、環状領域、および心室スカートを有する、アンカーを備える。アンカーは、前記心臓に送達するための折畳み構成と、人工心臓弁を患者の心臓に固着するための拡張構成とを有する。人工弁はまた、複数の人工弁尖も備え、弁尖のそれぞれは、第1端と、自由端とを有し、第1端は、アンカーと連結され、自由端は、第1端の反対側にある。人工心臓弁は、人工弁尖の自由端が、相互から離れて配置されることにより、順行血流がそれを通り越すことを可能にする開放構成と、人工弁尖の自由端が相互に係合して、逆行血流がそれを通り越すことを実質的に防止する閉鎖構成とを有する。
【0039】
心房スカートの少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われてもよい。心房スカートはさらに、それに連結される複数の鉤を備えてもよく、複数の鉤は、患者の僧帽弁の上面の中に心房スカートを固着するように適合される。心房スカートは、折畳み構成と、拡張構成とを備えてもよい。折畳み構成は、患者の心臓に送達するために適合されてもよく、拡張構成は、折畳み構成に対して半径方向に拡張され、患者の自然僧帽弁の上面の上に横たわるように適合されてもよく、それにより、心房の一部分に対して心房スカートを固着する。心房スカートは、拘束されていないときに、折畳み構成から半径方向拡張構成へ自己拡張してもよい。心房スカートは、1つ以上の放射線不透過性マーカーを備えてもよい。心房スカートは、コネクタ要素でともに接続される、複数の軸方向に配向された支柱を備え、それにより、一連の頂点および谷間を形成してもよい。頂点および谷間のうちのいくつかは、心房スカートの他の部分よりもさらに軸方向外向きに延在し、それにより、整列要素を形成してもよい。
【0040】
環状領域の少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われてもよい。環状領域は、折畳み構成と、拡張構成とを有してもよい。折畳み構成は、患者の心臓に送達するために適合されてもよく、拡張構成は、折畳み構成に対して半径方向に拡張され、自然僧帽弁環と一致するように、およびそれに係合するように適合されてもよい。環状領域は、拘束されていないときに、折畳み構成から拡張構成へ自己拡張してもよい。環状領域は、実質的に平坦な前方部分、および円筒形状の後方部分を有する、非対称的にD字形の断面を備えてもよい。環状領域は、コネクタ要素でともに接続される、複数の軸方向に配向された支柱を備え、それにより、一連の頂点および谷間を形成してもよい。軸方向に配向された支柱のうちの1つ以上は、それを通って延在する1つ以上の縫合糸穴を備えてもよく、縫合糸穴は、縫合糸を受容するようにサイズ決定される。
【0041】
心室スカートの少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われてもよい。心室スカートは、実質的に平坦な前方部分、および円筒形状の後方部分を有する、非対称的にD字形の断面を備えてもよい。心室スカートは、折畳み構成と、拡張構成とを有してもよい。折畳み構成は、患者の心臓に送達するために適合されてもよく、拡張構成は、折畳み構成に対して半径方向に拡張されており、自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させるように適合されてもよい。心室スカートは、拘束されていないときに、折畳み構成から拡張構成へ自己拡張してもよい。
【0042】
心室スカートは、心室スカートの前方部分上に配置された三角固着タブをさらに備えてもよい。三角固着タブは、患者の僧帽弁の前尖の第1の側面上の第1の線維性三角に対して固着されるように適合されてもよい。したがって、前尖および隣接腱索は、三角固着タブとアンカーの前面との間で捕捉されてもよい。心室スカートは、心室スカートの前方部分上に配置されてもよい第2の三角固着タブをさらに備えてもよい。前尖および隣接腱索が、第2の三角固着タブとアンカーの前面との間で捕捉されるように、第2の三角固着タブは、第1の線維性三角の反対側の第2の線維性三角に対して固着されるように適合されてもよい。心室スカートは、心室スカートの後方部分上に配置される後方心室固着タブをさらに備えてもよい。後方心室固着タブが、後尖と患者の心臓の心室壁との間に着座されるように、後方心室固着タブは、患者の僧帽弁の後尖を覆って固着されるように適合されてもよい。心室スカートは、それに連結され、心臓組織の中に心室スカートを固着するようにさらに適合されてもよい、複数の鉤を備えてもよい。心室スカートは、コネクタ要素でともに接続される、複数の支柱を備え、それにより、一連の頂点および谷間を形成してもよい。支柱のうちの1つ以上は、それを通って延在し、縫合糸を受容するようにサイズ決定されてもよい、1つ以上の縫合糸穴を備えてもよい。
【0043】
複数の人工弁尖は、三尖弁尖構成を備えてもよい。1つ以上の人工弁尖の少なくとも一部分は、組織または合成材料を備えてもよい。複数の人工弁尖のうちの1つ以上は、心室スカートに対して半径方向内向きに付勢される1つ以上の交連柱または支柱を覆って配置されてもよい。1つ以上の交連柱または支柱は、それを通って延在し、縫合糸を受容するようにサイズ決定されてもよい、1つ以上の縫合糸穴を備えてもよい。1つ以上の人工弁尖は、交連柱または支柱を送達デバイスと解放可能に係合させるように適合される交連タブを有する交連柱または支柱に連結されてもよい。
【0044】
人工心臓弁はさらに、アンカーの前方部分に連結される整列要素を備えてもよい。整列要素は、患者の心臓の大動脈起始部と整列させられ、患者の僧帽弁の前尖の2つの線維性三角の間に配置されるように適合されてもよい。整列要素は、心房スカートと連結されてもよい。人工心臓弁は、それに連結され、そこから制御可能に溶出されるように適合される治療薬をさらに備えてもよい。
【0045】
本発明のなおも別の側面では、人工心臓弁を患者の心臓に送達するための送達システムは、それを通って延在し、ガイドワイヤを摺動可能に受容するように適合される管腔を有する内側ガイドワイヤシャフトと、内側ガイドワイヤシャフトを覆って同心円状に配置されるハブシャフトとを備える。送達システムはまた、ハブシャフトを覆って摺動可能かつ同心円状に配置されるベルシャフトと、ベルシャフト覆って摺動可能かつ同心円状に配置されるシースと、送達システムの近位端付近のハンドルとを備える。ハンドルは、ベルシャフトおよびシースを前進および後退させるように適合されるアクチュエータ機構を備える。
【0046】
システムは、半径方向の折畳み構成でシースに収納され得る人工心臓弁をさらに備えてもよい。人工心臓弁は、心房スカート、環状領域、および心室スカートを有するアンカーを備えてもよい。人工弁はまた、複数の人工弁尖を備えてもよい。弁尖のそれぞれは、第1端と、自由端とを有してもよい。第1端は、アンカーと連結されてもよく、自由端は、第1端の反対側にあってもよい。人工心臓弁は、人工弁尖の自由端が、相互から離れて配置されることにより、順行血流がそれを通り越すことを可能にする開放構成を有してもよい。弁は、人工弁尖の自由端が相互に係合して、逆行血流がそれを通り越すことを実質的に防止する閉鎖構成を有してもよい。
【0047】
ベルシャフトに対するシースの近位後退は、人工心臓弁から拘束を除去し、それにより、人工心臓弁が、患者の自然心臓組織と係合するように自己拡張することを可能にしてもよい。人工心臓弁は、ハブシャフトと解放可能に連結されてもよく、ハブシャフトに対するベルシャフトの近位後退は、そこから人工心臓弁を解放してもよい。アクチュエータ機構は、回転ホイールを備えてもよい。システムは、ハブシャフトに連結される組織貫通遠位先端をさらに備えてもよい。組織貫通遠位先端は、患者の心臓を通過し、そこで切開を拡張するように適合されてもよい。システムは、ハンドルと解放可能に連結される、ピンロック機構をさらに備えてもよい。ピンロック機構は、シースの近位後退を制限してもよい。
【0048】
これらおよび他の実施形態は、添付図面に関係する以下の説明でさらに詳細に説明される。
【0049】
図面中、類似の参照数字は、類似または同様のステップまたは構成要素を指定する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は、矢印で収縮期中の血流を示す、心臓の左心室の概略図である。
図2図2は、僧帽弁の中に脱出弁尖を有する、心臓の左心室の概略図である。
図3図3は、心臓が拡張され、弁尖が交わらない、心筋症に罹患した患者における心臓の概略図である。
図3A図3Aは、弁尖の正常閉鎖を示す。
図3B図3Bは、拡張した心臓における異常な閉鎖を示す。
図4図4は、乳頭筋の障害を有する、心臓の左心室中の僧帽弁逆流を図示する。
図5A図5A-5Bは、僧帽弁を図示する。
図5B図5A-5Bは、僧帽弁を図示する。
図6図6は、例示的な人工僧帽弁の底部部分断面図を図示する。
図7図7は、図6で見られる人工僧帽弁のアンカー部分の斜視図である。
図8A図8Aは、人工僧帽弁の斜視図である。
図8B図8Bは、図8Aの人工弁の心房からの上面図である。
図9A図9Aは、心房からの図8Aの人工弁の斜視図を図示する。
図9B図9Bは、心室からの図8Aの人工弁の斜視図を図示する。
図10図10は、平坦パターンで覆いがなく、広げられた、図8Aの人工弁を図示する。
図11図11は、人工弁の埋込のための送達デバイスの側面図である。
図12図12は、図11の送達デバイスの近位部分の斜視分解図である。
図13図13は、図11の送達デバイスの遠位部分の斜視分解図である。
図14図14は、図11の送達デバイスの近位部分の断面図である。
図15A図15A-15Cは、図11の送達デバイスの遠位部分の断面図である。
図15B図15A-15Cは、図11の送達デバイスの遠位部分の断面図である。
図15C図15A-15Cは、図11の送達デバイスの遠位部分の断面図である。
図16図16は、人工弁の埋込のための送達デバイスの別の例示的実施形態の側面図である。
図17図17は、図16の送達デバイスの斜視図である。
図18図18は、図16の送達デバイスの斜視分解図である。
図19A図19A-19Bは、種々の操作段階中の図16の送達デバイスの側面図である。
図19B図19A-19Bは、種々の操作段階中の図16の送達デバイスの側面図である。
図20図20は、人工弁の一部分に係合するように適合される、図16の送達デバイスの遠位部分を図示する。
図21図21は、図8Aの人工弁との図16の送達デバイスの係合を図示する。
図22A図22A-22Gは、人工僧帽弁を経心尖的に送達する例示的な方法を図示する。
図22B図22A-22Gは、人工僧帽弁を経心尖的に送達する例示的な方法を図示する。
図22C図22A-22Gは、人工僧帽弁を経心尖的に送達する例示的な方法を図示する。
図22D図22A-22Gは、人工僧帽弁を経心尖的に送達する例示的な方法を図示する。
図22E図22A-22Gは、人工僧帽弁を経心尖的に送達する例示的な方法を図示する。
図22F図22A-22Gは、人工僧帽弁を経心尖的に送達する例示的な方法を図示する。
図22G図22A-22Gは、人工僧帽弁を経心尖的に送達する例示的な方法を図示する。
図23A図23A-23Gは、人工僧帽弁を経中隔的に送達する例示的な方法を図示する。
図23B図23A-23Gは、人工僧帽弁を経中隔的に送達する例示的な方法を図示する。
図23C図23A-23Gは、人工僧帽弁を経中隔的に送達する例示的な方法を図示する。
図23D図23A-23Gは、人工僧帽弁を経中隔的に送達する例示的な方法を図示する。
図23E図23A-23Gは、人工僧帽弁を経中隔的に送達する例示的な方法を図示する。
図23F図23A-23Gは、人工僧帽弁を経中隔的に送達する例示的な方法を図示する。
図23G図23A-23Gは、人工僧帽弁を経中隔的に送達する例示的な方法を図示する。
図24図24は、僧帽弁空間に埋め込まれた人工僧帽弁を図示する。
図25図25は、左心室から上向きに見た、僧帽弁空間に埋め込まれた僧帽弁の底面図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
ここで、図面を参照して、開示されたデバイス、送達システム、および方法の具体的実施形態を説明する。この発明を実施するための形態におけるどのようなものも、任意の特定の構成要素、特徴、またはステップが本発明に不可欠であると暗示することを目的としない。
【0052】
心臓の生体構造。収縮期における正常な心臓Hの左心室LVが、図1に図示されている。左心室LVは、収縮しており、血液は、矢印の方向で、大動脈弁AV、三尖弁を通って外向きに流れる。僧帽弁が、左心室中の圧力が左心房LA中の圧力よりも高いときに逆流を防止する、「逆止弁」として構成されるので、僧帽弁MVを通る血液の逆の流れ、または「逆流」が防止される。僧帽弁MVは、図1に図示されるように、均等に交わって閉じる自由縁FEを有する、一対の弁尖を備える。弁尖LFの反対端は、弁輪ANと呼ばれる環状領域に沿って、周辺心臓構造に付着している。弁尖LFの自由縁FEは、弁尖LFのそれぞれの下面を覆って固定される複数の分岐腱を含む、腱索CT(本明細書では腱とも呼ばれる)を通る左心室LVの下部分に固定される。腱索CTは順に、左心室および心室中隔IVSの下部分から上向きに延在する、乳頭筋PMに付着している。
【0053】
ここで図2-4を参照すると、心臓におけるいくつかの構造的欠陥が僧帽弁逆流を引き起こし得る。図2に示されるような腱索断裂RCTは、不十分な張力が腱索を介して弁尖に伝達されるので、弁尖LF2を脱出させ得る。他方の弁尖LF1が正常な外形を維持する一方で、2つの弁尖は、適正に交わらず、矢印によって示されるように、左心室LVから左心房LAの中への漏出が起こる。
【0054】
逆流はまた、心臓が拡張され、増大したサイズが、図3に示されるように、弁尖LFが適正に交わることを妨げる心筋症に罹患している患者おいても発生する。心臓の拡大は、僧帽弁輪を拡大させ、自由縁FEが収縮期中に交わることを不可能にする。前および後尖の自由縁は通常、図3Aに示されるような接合線Cに沿って交わるが、図3Bに示されるように、心筋症に罹患している患者において顕著な間隙Gを残すことができる。
【0055】
僧帽弁逆流はまた、図4に図示されるように、乳頭筋PMの機能が損なわれている、虚血性心疾患に罹患している患者でも発生し得る。左心室LVが収縮期に収縮するにつれて、乳頭筋PMは、適正な閉鎖を達成するために十分接触しない。次いで、弁尖LF1およびLF2が、図示されるように脱出する。漏出が再び、矢印によって示されるように、左心室LVから左心房LAへ発生する。
【0056】
図5Aは、前側ANTおよび後側POSTを有する二尖弁である、僧帽弁MVの生体構造をより明確に図示する。弁は、前(大動脈)尖ALおよび後(壁)尖PLを含む。腱索CTは、弁尖AL、PLを、前外側乳頭筋ALPMおよび後内側乳頭筋PMPMと連結する。弁尖AL、PLは、前外側交連ALCおよび後内側交連PMCと呼ばれる線に沿って、相互に接合する。弁輪ANは、弁尖を囲み、前尖の反対側の弁輪の前方部分に隣接する2つの領域は、左線維性三角LFT、およびまた右線維性三角RFTと呼ばれる。これらの領域は、概して、実線の三角形によって示される。図5Bは、左および右線維性三角LFT、RFTをより明確に図示する。
【0057】
種々の手術手技ならびに埋込型デバイスが提案され、僧帽弁逆流に対する有望な治療であるように思われるが、外科的アプローチは、長期にわたる回復期を必要とし得て、埋込型デバイスは、様々な臨床結果を有する。したがって、依然として僧帽弁逆流を治療するための改良型デバイスおよび方法の必要性がある。本明細書で開示される実施形態は、僧帽弁逆流に対する埋込型人工僧帽弁を対象とするが、当業者であれば、これが限定的となることを目的とせず、本明細書で開示されるデバイスおよび方法はまた、三尖弁、大動脈弁、肺動脈弁等の他の心臓弁、ならびに静脈弁等の体内の他の弁を治療するために使用されてもよいことを理解するであろう。
【0058】
人工弁。人工弁は、僧帽弁逆流に対する治療として、心臓に外科的に埋め込まれてきた。これらの弁のうちのいくつかは、ブタ弁等の動物から収穫された弁であり、他の弁は、組織被覆を伴う、または伴わない、人工機械弁である。つい最近、人工弁を心臓に送達するために、低侵襲カテーテル技術が使用されてきた。これらの弁は、典型的には、弁を患者の心臓に固定するためのアンカーと、機械弁、動物組織を伴う弁、またはそれらの組み合わせである、弁機構とを含む。人工弁は、いったん埋め込まれると、正常に機能しない自然弁の役割を引き継ぎ、それにより、弁不全症を低減または排除する。これらの弁のうちのいくつかが有望と思われるが、依然として改良型弁の必要性がある。以下は、既存の人工弁と関連付けられる困難のうちのいくつかを克服する、人工弁、人工弁用の送達システム、および弁を送達する方法の例示的実施形態を開示する。
【0059】
ここで図6-7を参照すると、参照数字10で概して指定される人工僧帽弁の例示的実施形態は、薄型心房スカート領域18に拡張する幾何学形状を有する、自己拡張式または拡張可能アンカー部分16内に付加される弁尖14と、環状領域20と、心室スカート領域22と、カンチレバー様式で、心室スカート領域22によって画定される弁輪下空間の中に軸方向に延在する複数の弁尖交連24(本明細書では交連柱とも呼ばれる)とを備える、三尖弁組織型人工一方向弁構造12を備える。図6は、右心房に向かって上向きに見た、患者の左心室からの弁10の部分断面図を示す。心房スカート領域18は、右心房19の下部分に固着される。弁尖14は、開放位置(図示せず)と、図6に図示される閉鎖位置とを有する。開放位置において、弁尖14は、相互から離れて変位させられることにより、血流がそれを通り越すことを可能にし、閉鎖位置において、弁尖14は、弁を閉鎖するように相互に係合して、逆行血流がそれを通り越すことを実質的に防止する。弁交連24は、弓形の継ぎ目28(図7で最も良く見える)に沿って弁尖14の付着を提供することによって、および補強支柱の追加または削除を通して、それらの軸方向長さに沿った異なる点またはゾーンで選択的に可撓性にされることによって、人工弁構造12の効率および弁尖14上の負荷分配を最適化するように構成されてもよい。
【0060】
図7は、一連の相互接続した支柱から形成されている、弁10のアンカー部分16の斜視図を示す。心房スカート領域18は、人工弁の上部分を心房の中に固定するために役立つように、アンカー上で環状フランジ付き領域を形成し、環状領域20は、自然弁輪に沿って弁を固着するための円筒形領域である。心室スカート領域22は、同様に、円筒形状であり、人工弁の下部分を患者の左心室の中に固着することに役立つ。アンカーの任意の部分または全体が、心膜または本明細書で開示される他の組織等の組織で覆われてもよく、あるいはDacronまたはePTFE等の合成材料が、アンカーを覆うために使用されてもよい。被覆は、アンカーを自然弁に密閉することに役立ち、これは、弁の周囲よりもむしろ、人工弁の中に、および人工弁を通して血液を注ぎ込むことに役立つ。いくつかの実施形態では、アンカーは、覆われないままであってもよい。人工弁は、拡張構成と、折畳み構成とを有する。折畳み構成は、送達システム上で載置するために好適である薄型円筒形を有し、送達は、好ましくは、カテーテル上で経腔的に、または心臓壁を通して経心尖的に行われる。(図示されるような)拡張構成は、人工弁が所望の位置に固着されることを可能にする。
【0061】
図8Aは、アンカー支柱が視認できるようにするために、任意的な被覆が除去されている人工僧帽弁の好ましい実施形態の斜視図を図示する。図8Bは、心室を見下ろした、心房からの図8Aの人工弁の上面図を図示する。弁800は、D字形の断面を有する非対称の拡張したアンカー部分を含む。示されるように、アンカー部分は、概して、その長手軸に沿った前802および後804面、ならびに図6-7において上記で説明される実施形態の心房スカート18、環状20、および心室スカート22領域に概して対応する、心房806、環状808、および心室810領域を備える。交連(本明細書では交連柱とも呼ばれる)813はまた、概して、図6-7の実施形態の弁尖14に対応する。人工弁800は、折畳み構成と、拡張構成とを有する。折畳み構成は、心臓への経腔的送達用の送達カテーテル等のシャフト上、または心臓壁を通した経心尖的送達用のシャフト上の負荷に適合される。半径方向拡張構成は、損傷弁に隣接する患者の自然心臓に弁を固着するように適合される。弁が折畳み構成から拡張構成へ拡張することを可能にするために、弁のアンカー部分は、ニチノールのようなニッケルチタン合金等の自己拡張式材料から加工されてもよく、あるいはまた、スプリングテンパー調節ステンレス鋼または弾性ポリマーからできていてもよい。なおも他の実施形態では、アンカーは、バルーン等の拡張可能部材を用いて拡張可能であってもよい。好ましい実施形態では、アンカーは、レーザ切断、放電加工機(EDM)、または管を光か学的にエッチングすることによって加工される。アンカーはまた、対向端がともに溶接された状態で巻き上げられる、平板材料を光化学的にエッチングすることによって加工されてもよい。
【0062】
心房スカート部分816は、僧帽弁より上側で人工弁を心房に固着することに役立つフランジ付き領域を形成する。心房スカートは、アンカーから半径方向外向きに延在してフランジを形成する、複数の三角指部を含む。心房スカート816の後方804部分が略丸形または円形である一方で、心房スカート816の前方802部分は平坦である。したがって、心房スカート領域は、好ましくは、D字形の断面を有する。これは、以下で論議されるように、心臓の他の部分を閉塞することなく、人工弁が患者の心臓の生体構造に一致することを可能にする。各三角指部は、一対の相互接続した支柱から形成される。心房スカートの三角指部は、概して、人工弁の中心軸から半径方向外向きに曲げられ、弁中心軸に対して直角に走っている平面内に位置する。いくつかの実施形態では、心房スカートは、弁の中心軸と実質的に垂直である平面内に位置する。心房スカート806の前方部分802は、概して、垂直に上向きに、かつ人工弁と実質的に平行に延在する、1つ以上の支柱であってもよい、整列要素814を含む。整列要素814は、蛍光透視下で可視化を促進するように、放射線不透過性マーカー(図示せず)を含んでもよい。整列要素は、以降で論議されるように、医師が人工弁を自然僧帽弁の生体構造と整列させるのを助ける。
【0063】
心房スカート領域の下には、送達のための折畳み構成、および自然弁輪に沿って人工弁を固着するための拡張構成も有する環状領域820が配置される。環状領域はまた、好ましくは閉鎖された、一連のセルを形成する複数の相互接続した支柱から成る。支柱のうちのいくつかの中の縫合糸穴821は、組織または他の被覆(図示せず)が環状領域に付着されることを可能にする。組織または別の被覆でアンカーの全体または一部分を覆うことは、心臓弁および隣接組織に対してアンカーを密閉することに役立ち、それにより、血液が弁の周囲ではなく、弁を通して注ぎ込まれることを確実にする。環状領域は、円筒形であってもよいが、好ましい実施形態では、円形である後方部分804と、平坦である前方部分802とを有し、それにより、D字形の断面を形成する。D字形の断面は、心臓の他の領域の血流を閉塞することなく、自然僧帽弁の生体構造により良好に一致する。
【0064】
人工弁の下部分は、心室スカート領域828を含む。心室スカート領域はまた、送達のための折畳み構成および固着のための拡張構成も有する。それは、半径方向に拡張することができる、好ましくは閉鎖された、一連のセルを形成する、複数の相互接続した支柱から形成される。拡張構成の心室スカートは、自然僧帽弁尖に対して拡張することによって、人工弁を心室に固着する。人工弁を心室組織の中に固着することにさらに役立つために、心室スカートの中の任意的な鉤823が使用されてもよい。鉤はまた、任意で、心房スカート部分ならびにアンカーの環状領域に含まれてもよい。加えて、上記で論議されるのと同様に、組織または別の材料を心室スカート領域に縫合することに役立つために、心室スカートの中の任意的な縫合糸穴821が使用されてもよい。心室スカートの前方802部分は、平坦であってもよく、心室スカートの後方804部分は、円形であってもよく、心臓の他の部分を閉塞することなく、自然生体構造に固着して一致するように、D字形の断面を同様に形成する。心室スカートの下部分は、下部分が覆われたままとなり、それにより、以下でより詳細に説明されるように、任意的な心室三角タブおよび後方タブが拡張した後まで、心室スカートを半径方向拡張から拘束することができるので、配備制御領域としての機能を果たす。
【0065】
心室スカート部分はまた、任意で、以下でより詳細に論議されるように、人工弁を固着することに役立つために、アンカーの前方部分上に一対の心室三角タブ824(この図では1つだけが可視的である)を含んでもよい。心室スカートはまた、任意で、人工弁を輪の後方部分に固着するために、心室スカートの後方部分804上に後方タブ826を含んでもよい。三角タブ824または後方タブ826は、アンカーから半径方向外向きに延在するタブであり、上流方向で上向きに傾斜している。
【0066】
実際の弁機構は、漏斗または錐体様形状で、アンカーの中心軸に向かって半径方向内向きに延在する、3つの交連支柱(交連とも呼ばれる)813から形成される。交連813は、三角形状の交連を作成する、複数の相互接続した支柱から形成される。交連の支柱は、組織または合成材料が交連に付着されることを可能にする、1つ以上の縫合糸穴821を含んでもよい。この例示的実施形態では、弁は、三尖弁であり、したがって、3つの交連813を含む。交連の先端は、送達カテーテルに係合するための交連タブ812(タブとも呼ばれる)を含んでもよい。この実施形態では、タブは、キノコ様形状を形成する、より狭い頸部に接続された拡大頭部領域を有する。交連は、任意の位置で付勢されてもよいが、好ましくは、逆行血流が交連を強制的に相互と並置させて弁を閉じ、順行血流が交連を半径方向外向きに押して弁を完全に開くように、人工弁の中心軸に向かってわずかに角度を成してもよい。図8Bは、心房側から図8Aの人工弁を図示する上面図であり、D字形の断面を示す。
【0067】
図9Aは、縫合糸872でアンカーの部分に連結された被覆870を伴う図8A-8Bの人工僧帽弁を図示する。この図は、心房の視点から得られている。この実施形態では、被覆は、好ましくは、本明細書の他の場所で開示されるように、いくつかの供給源に由来してもよい心膜である。代替実施形態では、被覆は、Dacronポリエステル、ePTFE、または別の合成材料等のポリマーであってもよい。被覆は、好ましくは、環状領域820および心室スカート領域828を覆って配置され、いくつかの実施形態では、前方心室三角824タブおよび心室後方タブ830もまた、同じまたは異なる材料で覆われてもよい。被覆は、血液が弁機構を通って注ぎ込むように、隣接組織に対してアンカーを密閉することに役立つ。この実施形態では、心房スカート、ならびにタブ824、830は、覆われないままである。加えて、放射線不透過性マーカー814aが、整列要素の一部分を形成し、弁の整列中に重要である、蛍光透視下での人工弁の可視化を促進する。
【0068】
図9Bは、心室から見た際の図9Aで見られる人工僧帽弁の斜視図である。弁交連の支柱は、上記で論議されるように、環状および心室領域と同じ材料または異なる材料で覆われ、それにより、三尖弁尖813を形成する。図9Bは、3つの弁尖が相互に係合させられ、逆行血流を防止する閉鎖構成で弁を示す。交連タブ812は、覆われないままであり、以下で説明されるように、交連が送達デバイスと連結されることを可能にする。図9A-9Bの人工弁は、当業者に公知である方法を使用して患者に埋め込むために好適であるように、滅菌されてもよい。
【0069】
図10は、被覆が除去され、残りのアンカーが広げられて平らにされた、図9Aの人工弁を図示する。人工弁800は、複数の相互接続した支柱から形成される。例えば、心房スカート領域806は、一連の頂点および谷間を形成する複数の相互接続した支柱を含む。人工弁の平坦な前方領域802は、心房スカートの残りの部分の頂点および谷間から軸方向にオフセットした、その頂点および谷間を有し、この領域は、整列要素814の一部になる。放射線不透過性マーカー814aは、オフセットした頂点および谷間の両側に配置され、弁の埋込中の可視化に役立つ。軸方向に配向したコネクタは、スカート領域806の支柱を環状領域808の支柱と接合する。環状領域はまた、頂点および谷間を形成する、複数の軸方向に配向および相互接続した支柱から成る。コネクタ支柱は、環状領域の支柱を心室領域810の支柱と連結する。心室領域はまた、頂点および谷間を形成する、複数の相互接続した支柱も含む。加えて、支柱は、弁尖交連813、心室スカート828、ならびに三角および後方タブ824、830を形成する。縫合糸穴821は、心膜あるいはDacronまたはePTFE等のポリマー等のカバーの付着を可能にするように、環状領域の支柱ならびに心室領域に沿って配置される。鉤823は、人工弁を隣接組織に固着することに役立つように、心室スカート828に沿って配置される。交連タブまたはタブ812は、交連813の先端上に配置され、以下で説明されるように、人工弁を送達システムと解放可能に連結するために使用されてもよい。当業者であれば、いくつかの支柱幾何学形状が使用されてもよく、加えて、剛性、半径方向粉砕強度、交連偏向等の所望の機械的性質をアンカーに提供するために、長さ、幅、厚さ等の支柱寸法が調整されてもよいことを理解するであろう。したがって、図示した幾何学形状は、限定的となることを目的としない。
【0070】
いったん平坦アンカーパターンがEDM、レーザ切断、光化学エッチング、または当技術分野で公知である他の技法によって形成されると、アンカーは、所望の幾何学形状に半径方向に拡張される。次いで、アンカーは、形状を設定するように、公知の過程を使用して熱処理される。したがって、アンカーは、折畳み構成で送達カテーテル上に搭載され、拘束シースを用いて折畳み構成で拘束されてもよい。拘束シースの除去は、アンカーがその不偏事前設定形状に自己拡張することを可能にする。他の実施形態では、アンカーをその好ましい拡張構成に半径方向に拡張するために、バルーン等の拡張可能部材が使用されてもよい。
【0071】
送達システム。図11-15Cは、経心尖的に人工僧帽弁を心臓に送達するように形造られた送達装置1124を示す。しかしながら、当業者であれば、送達システムが修正されてもよく、人工僧帽弁を経中隔的に送達するためにデバイスが使用されることを可能にするように、種々の構成要素の相対運動が調整されてもよいことを理解するであろう。送達装置は、概して、ハンドルセクション1102およびハンドルセクション1103(図12で最も良く見える)の組み合わせであるハンドル1101、ならびに心尖に円滑に貫通することができる可撓性先端1110、および軸方向に平行移動するように設計され、以下で詳細に説明される、いくつかの付加的なカテーテルを収納するシースカテーテル1109から成る。
【0072】
ハンドル1101は、0.035”直径ガイドワイヤ(図示せず)を伴う止血シールを提供するために、Tuohy Borstアダプタ1114に接続する、雌ネジ式ルアーアダプタ1113を含む。雌ネジ式ルアーアダプタ1113は、ネジ式ポート1131(図12で最も良く見える)を通してハンドル1101の近位セクションと螺合接触している。
【0073】
図11から分かるように、ハンドル1101は、人工僧帽弁を設置して配備するために使用される制御機構のための場所を提供する。ハンドル1101は、ハンドル1101の上部および底部の両方の上に現れる窓1137を通してアクセスすることができる、サムホイール1106用の筐体を提供する。サムホイール1106は、シースカテーテル1109を作動させるネジ式挿入部分1115(図12で最も良く見える)と内部で噛合し、この相互作用の力学は、以下で詳細に説明される。
【0074】
図11はまた、配備サムホイール1104の旋回運動が動力ネジの役割を果たし、ペグ1128を前方かつユーザから遠位に押すので、旋回させられたときに線形平行移動を配備カテーテル1120(図12で最も良く見える)に提供する、配備サムホイール1104も示す。ペグ1128の背後の力学は、以下でさらに詳述される。サムホイールロック1105は、回転に対する物理的障壁の役割を果たすことによって、配備サムホイール1104の不要な回転に対するセキュリティ対策を提供する。配備サムホイール1104を旋回させるために、ユーザは、サムホイールロック1105を前方に押し、配備サムホイール1105の中の2つのスロット1147(図12で見える)からそれを係脱しなければならない。
【0075】
図11からも分かるように、ブリード弁1108および流体ライン1107が、ハンドル1101の遠位部分の中の内部機構に接続され、シースカテーテル1109用の止血シールを提供する。この接続の詳細は、以下で説明される。
【0076】
送達装置1124の内部力学は、図12で詳細に図示されており、以下の説明は、個々の構成要素の間の相互作用、および人工心臓弁送達装置を達成するためにこれらの構成要素が組み合わさる方式を明らかにする。
【0077】
図12で見えるように、ハンドルセクション1103およびハンドルセクション1102は、送達装置1124の基礎を形成するハンドル1101を作成するように組み合わさる。弁搭載中にシースカテーテル1109を前進させるか、または配備中にシースカテーテル1109を後退させるために、回転サムホイール1106は、近位位置から遠位位置へ、送達装置の軸に沿って直線的に平行移動するネジ式挿入部分1115(図13の外側ネジ山1130)と螺合接触している(図14で見える内側ネジ山1129)。シースカテーテル1109は、ネジ式挿入部分1115と噛合接触しており、カラーを挿入部分と整列および噛合させる、カラー1117の使用を通して締結される。カラー1117は、ネジ1116(図14の詳細Aで最も良く見える)を用いてネジ式挿入部分1115に締結され、患者と送達装置との間で止血を維持することができるように、流体ライン1117のための場所を提供する流体ポート1142(図14の詳細Aで最も良く見える)を含有する。Oリング1118(図14の詳細Aで最も良く見える)は、シースカテーテル1109に対して静止カテーテル1119(図14で最も良く見える)を密閉する。流体ライン1107はまた、操作中に流体ライン1107が(穴1151(図14の詳細Aで最も良く見える)を通して)シースカテーテル1109とともに平行移動することをハンドル1101のスロット1138が可能にするので、位置に対してシースカテーテル1109を視覚的に設置する手段も提供し、この平行移動は、極めて可視的である。平行移動中にネジ式挿入部分の回転を防止するために、平面1164がネジ式挿入部分1115の両側上に機械加工されている。平面1164は、突出部1139および1140がネジ式挿入部分1115を握持して回転を防止するよう作用するように、ハンドルセクション1102およびハンドルセクション1103の両方の上に位置する、突出部1139および1140と接触したままである。テクスチャ加工パターン1155は、ユーザが手術野でサムホイール1106を容易に旋回させることを可能にする。戻り止め1141(図14で最も良く見える)は、回転を可能にするために、サムホイール1116上にフランジ63(図14で最も良く見える)を設置する。
【0078】
個々のカテーテル(4つのカテーテルがある)が相互に対して移動する方式が、図12に図示されている。シースカテーテル1109は、静止カテーテル1119用の筐体を提供し、それは順に、可動ハブカテーテル1120用の筐体を提供する。ハブカテーテル1120は、各前カテーテルに対して平行移動させることもできるノーズカテーテル1121、およびハンドル1101に対して直線的に平行移動する。静止カテーテル1119は、内部穴1150の中でハンドルセクション1103と噛合され、それはまた、静止カテーテル1119とハブカテーテル1120との間にシールを形成する。静止カテーテル1119の遠位部分は、ハブ捕捉1123(図15Aの詳細A参照)を保持するように筐体の役割を果たすベル1122(図15Aの詳細A参照)の形状で形成される。
【0079】
前述のように、サムホイールロック1105は、配備サムホイール1104の回転を防止する。操作されるまでサムホイールロック1105を係止位置で保つ着座力を提供するために、バネ1125は、内部穴62(図14で最も良く見える)に収納され、サムホイールロック1105の内側に位置する段部1161(図14で最も良く見える)に対して隣接する。このバネ1125は、配備サムホイール1104の2つのスロット1147内の係止位置で、サムホイールロック1105の前縁1149を維持する。握持テクスチャ1154が、使用しやすくするためにサムホイールロック1105上に提供される。ハンドル1101の内側にサムホイールロック1105を設置し、保持するために、スロット1135が、ハンドルセクション1102およびハンドルセクション1103の両方の中で提供されている。
【0080】
図12に示されるように、摺動ブロック1127が、ハンドル1101の内側に現れる平坦な並行面1134の内側に収納される。この摺動ブロック1127は、ハブカテーテル1120と噛合接触しており、カテーテルを直線的に作動させる物理的機構である。バネ1126が、外部柱1159上に載置され、摺動ブロック1127の遠位端上に位置する段部1133に対して隣接する。このバネ1126は、ペグ1128(図14の貫通穴1156の内側に位置する)を、配備サムホイール1104に切り込まれる傾斜スロット1148の近位縁と強制的に接触させる。配備サムホイール1104は、段部1136とスナップリング(図示せず)との間に格納され、その両方は、ハンドル1101の特徴である。配備サムホイール1104上の握持テクスチャ1153は、ユーザが時計回り方向にサムホイールを容易に回転させることを可能にし、スロット1148に沿って遠位に乗り、摺動ブロック1127を移動させるように、ペグ1128を作動させ、それは、ハブカテーテル1120およびハブ1123(図15Aの詳細Aで最も良く見える)を前方に押し、かつベル1122(図15Aの詳細Aで最も良く見える)から押し出す。スロット1132が、ハンドルセクション1102およびハンドルセクション1103の中に現れ、ペグ1128が所望の範囲を越えて平行移動することを防止する。
【0081】
ノーズカテーテル1121は、ハンドル1101の近位端上のTuohy Borstアダプタ1114から延在し、ハンドルおよびそれぞれのカテーテル(シースカテーテル1109、静止カテーテル1119、およびハブカテーテル1120)の全体を通して内部で延在し、シースカテーテル1109の遠位端と隣接する可撓性先端1110(図15Aで見える)の剛性挿入部分1112(図15Aで見える)の内側で終端する。
【0082】
図13は、送達装置1124の先端セクションの分解図を表示し、人工僧帽弁1165と内部および外部カテーテルとの間の関係を示す。圧着および搭載されると、人工僧帽弁1165は、シースカテーテル1109の内面とノーズカテーテル1121の外面との間に入れられる。送達装置1124内で人工僧帽弁1165を捕捉および固着するために、人工僧帽弁1165の近位端上に現れる3つの交連タブ1160(円周方向に120°離間している)は、弁とハブ1123の外面に機械加工される3つのスロット1143(円周方向に120°離間している)(図15Aで見える)との間の接触点を提供する。配備サムホイール1104(図12で見える)を時計回りに回転させることによって、最初にハブカテーテル1120(図15A)を前進させた後に、3つの交連タブ1160を3つのスロット1143(図15Aで見える)内で捕捉することができる。次いで、ハブ1123は、配備サムホイール1104(図12で見える)を解放することによって、ベル1122の中に後退させることができる。この位置で、人工僧帽弁1165は、送達装置1124に固着され、弁のさらなる圧着は、シースカテーテル1109が弁上で前進させられることを可能にする。
【0083】
図15A-15Cは、送達装置1124の中への人工僧帽弁1165(図13で見える)の搭載を達成することができる方式をさらに詳述する。最初に、可撓性先端1110が、シースカテーテル1109の遠位縁1157に対して隣接させられる。可撓性先端1110は、剛性挿入部分1112、剛性挿入部分1112上に外側被覆される軟質かつ可撓性の先端部分1111から成る。剛性挿入部分1112の段部1145および先細面1146は、カテーテルが可撓性先端1110に対して静置し、可撓性先端1110によって強化され、心尖により容易に導入されてもよいように、シースカテーテル1109の遠位縁1157を誘導し、設置するように作用する。
【0084】
搭載を達成することができる最初の位置が、図15Aに図示されている。送達装置1124の中への人工僧帽弁1165(図13で見える)の搭載における第1のステップとして、シースカテーテル1109は、反時計方向へのサムホイール1106の回転によって引き出される。シースカテーテル1109の遠位縁1157は、図15Bの詳細Aで図示されるように、ベル1122の遠位縁を通り越すまで後退させられる。送達装置1124の中への人工僧帽弁1165(図13で見える)の搭載における第2のステップとして、ハブ1123は、図15Cの詳細Aで図示されるように、配備サムホイール1104(図12で見える)の時計回り旋回によってベル1122の下から前進させられる。配備サムホイールは、いったんサムホイールロック1105(図12参照)が前方位置で設定されと、旋回させられるのみであってもよく、サムホイールロックをサムホイールとの接触から係脱する。ハブ1123の前進は、人工僧帽弁1165(図13で見える)の3つの交連タブ1160が嵌合して固着される、3つのスロット1143から覆いを取る。ハブ1123の後退によって、スロット1143の中への交連タブ1160の固着が達成されると、送達装置1124の中への人工僧帽弁1165(図13で見える)の搭載における第3のステップが行われてもよい。人工僧帽弁1165(図13で見える)は、搭載機構(図示せず)によって最小直径まで圧着することができ、次いで、反時計方向へのサムホイール1106の回転によって、弁を覆うよう、シースカニューレ1109を前方に前進させることができる。次いで、送達装置1124および人工僧帽弁1165は、配備の準備ができている。
【0085】
図16-19Bは、心臓に人工弁を経心尖的に埋め込むための送達デバイスの別の例示的実施形態を図示する。しかしながら、当業者であれば、送達システムが修正されてもよく、人工弁を経中隔的に送達するためにデバイスが使用されることを可能にするように、種々の構成要素の相対運動が調整されてもよいことを理解するであろう。送達装置は、概して、2つの半分(1610および1635)の組み合わせであるハンドル1601、ならびに心尖に円滑に貫通することができる先端1603、および軸方向に平行移動するように設計され、以下で詳細に説明される、いくつかの同心カテーテルから成る、可撓性シース1602から成る。
【0086】
ハンドル1601は、0.035”直径ガイドワイヤ(図示せず)用の密閉可能出口を提供するために、雌ネジ式ルアーアダプタ1612に接続する、ハンドルキャップ1611を含む。ハンドルキャップ1611は、ネジ式締結具1613を用いてハンドル1601に取り付けられる。雌ネジ式ルアーアダプタ1612は、タップ付きポートを通してハンドルキャップ1611と螺合接触しており、完全に挿入されたときに、ガイドワイヤカテーテル(図18で最も良く見える1621)の外径に対して密閉するOリング(図18で最も良く見える1636)に対して圧搾する。
【0087】
図17から分かるように、ハンドル1601は、人工僧帽弁を設置して配備するために使用される制御機構のための場所を提供する。ハンドル1601は、ハンドル1601の上部および底部の両方の上に現れる窓1606を通してアクセスすることができる、サムホイール1616用の筐体を提供する。サムホイール1616は、シースカテーテル1604を作動させるネジ式挿入部分(図18の1627)と内部で噛合し、この相互作用の力学は、以下で詳細に説明される。
【0088】
図17はまた、スロット1605を通して内部に挿入され、穴(それぞれ、図18の1625および1626)を通して第1の血液ポートと噛合する、第1の止血管1617も示す。第1の止血管1617は、内部カテーテル間の流体除去を可能にする。スロット1605に沿った第1の止血管1617の位置は、シースカテーテル1604の位置に関する視覚的合図、および人工僧帽弁(図示せず)の相対配備段階を提供する。第1の止血管1617およびシースカテーテル1604の接続間の関係が、以下で説明される。
【0089】
図17からも分かるように、内部カテーテル間の流体除去を可能にするために、第2の止血管1614は、ハンドル1601に挿入され、第2の血液ポート(図18の1629)に噛合され、この挿入の詳細は、以下で説明される。最終的に、ピンロック1608が、内部機構間の平行移動に対する物理的障壁の役割を果たすことによって、人工僧帽弁の早期解放に対するセキュリティ対策を提供する。ピンロック突起部1615は、ハンドル1601の中でピンロック1608を保持することにバネ力に依存し、ユーザは最初に、人工弁の最終配備前にピンロック1608を引き抜かなければならない。
【0090】
図17はまた、ネジ式締結具およびナット(それぞれ、図18の1607および1639)の使用によって、どのようにしてハンドル1601がともに締結され、皿頭位置決め穴1609がハンドルの長さの全体にわたって配置されるかも示す。
【0091】
送達システムの内部機構は、図18で詳細に図示されており、以下の説明は、個々の構成要素の間の相互作用、および好ましくは経心尖的に人工僧帽弁を送達することができるシステムを作成するためにこれらの構成要素が組み合わさる方式を明らかにする。
【0092】
図18で見られるように、可撓性シース1602は、4つの同心円状入れ子カテーテルから成る。直径が最小から最大の順番で、同心円状入れ子カテーテルが詳細に説明される。最内カテーテルは、先端1603から始まり、雌ネジ式ルアーアダプタ1612で終端する、送達システム全体を通して内部に及ぶガイドワイヤカテーテル1621である。ガイドワイヤカテーテル1621は、より低いデュロメータの単管腔Pebax押し出し型材から成り、静止している。それは、それを通してガイドワイヤ(図示せず)が送達システムと連通することができる、チャネルを提供する。次のカテーテルは、ハブ1620に対する支持を提供し、概して、より高いデュロメータの単管腔PEEK押し出し型材から成る、ハブカテーテル1622である。ハブカテーテル1622は、遠位端におけるハブ1622、および近位端におけるステンレス鋼支持ロッド1634の両方と噛合接続している。ステンレス鋼支持ロッド1634は、ハンドル1601に入れられるストッパ1637によって固定して担持される。ハブカテーテル1622は、静止しており、支持および軸方向剛性を同心円状入れ子カテーテルに提供する。次のカテーテルは、筐体をハブ1620に提供し、概して、内部鋼鉄編組および潤滑裏地、ならびに放射線不透過性マーカーバンド(図示せず)を含む、中間デュロメータの単管腔Pebax押し出し型材から成る、ベルカテーテル1624である。ベルカテーテル1624は、軸方向に平行移動し、ハブ1620に対して前進および後退させることができる。ベルカテーテル1624は、近位端における第2の血液ポート1629と噛合接続しており、ベルカテーテル1624とステンレス鋼支持ロッド1634との間の止血は、第2の止血管1614を浄化することによって達成することができる。ベルカテーテル1624は、ハブ1620をカプセル化するために、遠位端上でより大きい直径1623に格上げされる。最外および最終カテーテルは、人工僧帽弁(図示せず)用の筐体を提供し、先端1603を支持して方向付け、心臓壁の筋肉における切開の拡張を支援することによって、心尖(図示せず)を貫通することができる、シースカテーテル1604である。シースカテーテル1604は、概して、内部鋼鉄編組および潤滑裏地、ならびに放射線不透過性マーカーバンド(図示せず)を含む、中間デュロメータの単管腔Pebax押し出し型材から成る。シースカテーテル1604は、軸方向に平行移動し、ハブ1620に対して前進および後退させることができる。シースカテーテル1604は、近位端における第1の血液ポート1625と噛合接続しており、シースカテーテル1604とベルカテーテル1624との間の止血は、第1の止血管1617を浄化することによって達成することができる。
【0093】
図18で見られるように、シースカテーテル1604の近位端は、第1の血液ポート1625と噛合接続している。第1の血液ポートは、ネジ式挿入部分1627、およびベルカテーテル1624に対して圧迫し、止血シールを作成するために、第1の血液ポート1625とネジ式挿入部分1627との間に封入される、Oリング1638と噛合接続している。サムホイール1616が回転させられるにつれて、ネジ挿入部分1627が平行移動し、付着によってシースカテーテル1624を後退または前進させることができる。心臓壁組織を拡張させることに十分な剛性を提供するために、シースカテーテル1604の遠位縁は、先端1603上に位置する段部1618に対して隣接する。この連通は、先端1603が、送達中に固定され、シースカテーテル1604と整列させられたままであることを可能にし、穿刺剛性を生じる。
【0094】
図18はまた、それを通して、ハブ1620に対してベルカテーテル1624を後退または前進させることができる、機構も詳述する。ネジ挿入部分1627が、第2の血液ポート1629に圧入される2つのピン1628と接触させられるほどまでに、サムホイール1616を回転させることができる。ベルカテーテル1624が第2の血液ポート1629と噛合接続しているので、サムホイール1616のさらなる回転は、第2の血液ポートキャップ1632の接続によって、第2の血液ポート1629を平行移動させ、バネ1633に押し付けさせる。この前進は、ベルカテーテル1624の格上げしたより大きい直径のセクション1623をハブ1620から後退させる。サムホイール1616が反対方向に回転させられるにつれて、バネ1633によって生成される復元力は、第2の血液ポート1629を反対方向に押し進めさせ、ベルカテーテル1624の格上げしたより大きい直径のセクション1623をハブ1620上で引っ込め、人工弁の初期搭載中に必要な動作である。
【0095】
図18はさらに、止血がステンレス鋼支持ロッド1634とベルカテーテル1624との間で達成される方式を詳述する。Oリング1631が、第2の血液ポート1629と第2の血液ポートキャップ1632との間で圧縮され、ステンレス鋼支持ロッド1634に対するシールを作成する。ベルカテーテル1624とステンレス鋼支持ロッド1634との間の止血は、スロットおよび穴1630を通して浄化されるように空隙と連通している、第2の止血管1614を浄化することによって達成することができる。
【0096】
配備に関与する機構を起動するために必要な配備過程および動作が、図19A-19Bで詳述されている。逆の順番で行われたときに、これらの動作はまた、手術前に弁(図示せず)の最初の搭載を余儀なくさせる。
【0097】
図19Aで見られるように、サムホイール1616の操作は、シースカテーテル1604の平行移動制御を提供する。心臓弁(図示せず)の配備を達成するために、ユーザは、ベルカテーテル1624のより大きい直径のセクション1623を通り越すまで、先端1603の段部1618との接触からシースカテーテル1604を引き出さなければならない。心臓弁(図示せず)は、図13に図示される実施形態と同様に、図19Aの1621に対する始端部によって示される位置で、ガイドワイヤカテーテル1621より上側で同心円状に存在する。シースカテーテル1604は、ネジ挿入部分1627がピンロック1608と接触するまで引き出すことができる。次いで、ネジ挿入部分1627のさらなる進行を達成することができる前に、ピンロック1608を除去しなければならない。
【0098】
図19Bで見られるように、ピンロック1608は、シースカテーテル1604のさらなる平行移動を可能にするためにハンドル1601から除去される。シースカテーテル1604が完全に後退させられたときに、ベルカテーテル1624のより大きい直径のセクション1623も完全に後退させられ、それは、送達システムから心臓弁(図示せず)を完全に解放する。相互から円周方向に120°だけ離間した、3つのハブスロット1619は、送達システムと心臓弁との間に固着機構および物理的リンクを提供する。いったんベルカテーテル1624のより大きい直径のセクション1623が引き出されると、ハブスロット1619は、覆いを取られ、心臓弁アンカー(図示せず)が完全に拡張することを可能にする。
【0099】
図20は、図16の送達デバイスの遠位部分を図示する。3つのハブスロット1619は、ベルカテーテル1624の大直径先端1623に対して遠位に、摺動可能に配置される。これらのスロットは、人工弁との係合を可能にする。弁は、スロット1619の中に人工弁の交連タブまたはタブ812を配置し、次いで、ベルカテーテル1624の先端1623の下でスロット1619を後退させることによって、スロットによって解放可能に担持されてもよい。人工弁は、ベルカテーテル1624上の拘束先端1623が除去されたときに、搭載アンカーまたはタブ812がスロット1619から自己拡張してもよいように、ベルカテーテルに対して遠位にスロットを前進させることによって、送達カテーテルから解放されてもよい。
【0100】
図21は、ハブスロット(可視的ではない)の中に配置されたアンカータブ812およびその上で前進させられたベルカテーテル1623を伴う、(図8Aを参照して上記で論議されるような)人工僧帽弁800を図示する。したがって、たとえ人工弁800の大部分がその拡張構成に自己拡張したとしても、弁交連は、スロット1619の中で捕捉されたタブ812を伴って折畳み構成にとどまる。いったんベルカテーテル1623によって提供された拘束がスロット1619から除去されると、タブ812は、スロット1619から自己拡張してもよく、交連は、それらの不偏位置まで開く。次いで、人工弁は、送達デバイスから断絶および解放される。
【0101】
経心尖的送達方法。図22A-22Gは、人工僧帽弁を経心尖的に送達する例示的な方法を図示する。この実施形態は、本明細書で説明される人工弁のうちのいずれかを使用してもよく、本明細書で説明される送達デバイスのうちのいずれかを使用してもよい。図22Aは、心尖2202において心臓の中への入口を伴って、左心室2204を通り、僧帽弁2206を横断し、左心房2208の中に得られる、一般的な経心尖的経路を図示する。大動脈弁2210は影響を受けないままである。経心尖的送達方法は、その内容全体が参照することにより本明細書に組み込まれる、国際公開第2009/134701号等の特許および科学文献で説明されている。
【0102】
図22Bでは、送達デバイス2214は、送達デバイス2214の遠位部分が心房2208の中に配置された状態で、心尖2202における切開を通して、心室2204を通るガイドワイヤGW上で、および僧帽弁2206を通り越して導入される。送達デバイスは、切開を通過して拡張させるように構成され、僧帽弁2206または隣接組織への不要な外傷を引き起こすことなく、心臓を通して前進させることができる、丸みを帯びた先端2212を有する。縫合糸2216は、過剰な出血を防止するので、および定位置で送達デバイスを担持することに役立つために、巾着縫合または当業者に公知である他のパターンを使用して、心尖2202において送達デバイス2214の周囲で縫い合わせられてもよい。
【0103】
図22Cでは、送達デバイス2214の外側シース2214aは、整列要素2218および人工僧帽弁2220上の心房スカート領域2222の一部分を露出させ、心房スカート領域2222が部分的に半径方向外向きに拡張し、広がって開き始めることを可能にするように、人工僧帽弁2220に対して近位に後退させられる(または人工僧帽弁は外側シース2214aに対して遠位に前進させられる)。整列要素2218は、蛍光透視下で可視化を促進する、一対の放射線不透過性マーカー2218aを含んでもよい。次いで、医師は、放射線不透過性マーカー2218aが僧帽弁前尖の両側に配置されるように、整列要素を整列させることができる。送達デバイス2214は、整列要素を整列させることに役立つために回転させられてもよい。整列要素は、好ましくは、大動脈起始部に隣接して、かつ自然前尖の線維性三角の間に設置される。
【0104】
図22Dでは、いったん整列が得られると、シース2214aは、さらに近位に後退させられ、フランジを形成するように外向きに広がる、心房スカート2222の半径方向拡張を可能にする。送達デバイス2214および人工弁2220の近位後退は、僧帽弁2206に隣接する心房表面に対して心房スカート2222を着座させ、それにより、第1の位置で人工弁を固着する。
【0105】
図22Eは、シース2214aのさらなる近位後退が、付加的な拘束を露出させ、人工弁2220から軸方向に除去し、それにより、弁のより多くが自己拡張することを可能にすることを示す。環状領域2224は、僧帽弁輪と係合するように拡張し、心室三角タブ2226および後方タブ2228は、半径方向に拡張する。心室スカートの部分は、配備制御領域としての機能を果たし、依然として拘束されているので、心室スカート全体が拡張することを防止する。タブは、僧帽弁前尖および後尖と心室壁との間に捕捉される。後方心室固着タブ2228は、好ましくは、腱索付着が欠如している、僧帽弁後尖の中央で整列させられ、後尖と心室壁との間に着座するように後尖を通り越させられる。それらの頭部が線維性三角に設置された状態で、2つの心室三角固着タブ2226が、前尖の両側に設置される。人工弁のわずかな回転および再整列が、このときに起こり得る。人工弁が拡張するにつれて、前方三角タブが線維性三角に対して固着し、タブと人工弁の前面との間に自然前尖および腱索を捕捉し、後方心室タブが心室壁と後尖との間に固着し、後方固着タブと人工弁アセンブリの後面との間に後尖を捕捉する。
【0106】
図22Fは、シース2214aのさらなる後退が、心室三角タブおよび後方タブを解放し、心室スカート2230の配備制御領域も解放され、自然僧帽弁尖に対して半径方向外向きに拡張することが許可されることを示す。これは、自然弁尖内で密閉漏斗を作成し、人工僧帽弁を通る直接血流を助ける。人工弁の交連が依然として送達システム内で捕捉されていると、正確な設置、固着、および密閉を確保するように、非常に軽微な調整が依然として行われてもよい。人工弁は現在、4つの位置で固着されている。次いで、アンカータブ2232は、内側シャフトの後退によって送達デバイスから解放され、上記で以前に論議され、図22Gに示されるように、タブが送達カテーテル上のスロットから自己拡張することを可能にする。人工弁は現在、患者の心臓に埋め込まれており、自然僧帽弁を引き継ぐ。次いで、送達デバイス2214は、それを近位に後退させ、心尖切開から除去することによって、心臓から除去されてもよい。次いで、縫合糸2216が結紮されてもよく、穿孔部位を密閉する。
【0107】
経中隔送達方法。図23A-23Gは、人工僧帽弁を経中隔的に送達する例示的方法を図示する。この方法は、本明細書で説明される人工弁のうちのいずれかを使用してもよく、適切に修正された場合に、本明細書で説明される送達デバイスのうちのいずれかを使用してもよい。当業者であれば、経中隔的アプローチに適応するために、上記で開示される送達システムの実施形態における種々のシャフトの相対運動が逆転される必要があってもよいことを理解するであろう。図23Aは、大静脈2302を上行して右心房2304の中に入る送達デバイスを伴って得られる、一般的な経中隔的経路を図示する。経中隔的穿孔2306は、デバイスが、僧帽弁2310より上側で、かつ左心室2312に隣接して、左心房2308の中に入れられてもよいように、しばしば卵円孔を通して、心房中隔を通して作成される。経中隔的技法は、その内容全体が参照することにより本明細書に組み込まれる、Zarbatanyらへの米国特許出願公開第2004/0181238号等の特許および科学文献で公開されている。
【0108】
図23Bでは、送達デバイス2314は、ガイドワイヤGW上で、大静脈2302を通して右心房2306の中に入れられる。次いで、送達デバイス2314は、心房壁を経中隔的に通過させられ、僧帽弁2310に隣接する左心房2308の中に入れられる。ガイドワイヤGWは、左心室2312の中の僧帽弁2310を横断して配置されてもよい。送達デバイスの遠位先端は、典型的に、僧帽弁または隣接組織の損傷を防止するように、ノーズコーンまたは他の非外傷性先端を含む。
【0109】
図23Cでは、送達デバイス2214の外側シース2214aは、人工僧帽弁2319に対して近位に後退させられる。代替として、送達デバイス2214の遠位部分2314bは、整列要素2316および人工僧帽弁2319上の心房スカート領域2318の一部分を露出させ、心房スカート領域2318が部分的に半径方向外向きに拡張し、広がって開き始めることを可能にするように、人工弁2319に対して遠位に前進させられてもよい。整列要素2316は、蛍光透視下で可視化を促進する、一対の放射線不透過性マーカー2316aを含んでもよい。次いで、医師は、放射線不透過性マーカー2316aが僧帽弁前尖の両側に配置されるように、整列要素を整列させることができる。整列要素は、好ましくは、大動脈起始部に隣接して、かつ自然前尖の線維性三角の間に設置される。送達デバイス2214は、整列要素を整列させるために役立つために回転させられてもよい。
【0110】
図23Dでは、いったん整列が得られると、遠位部分2314bは、さらに遠位に前進させられ、フランジを形成するように外向きに広がる、心房スカート2318の半径方向拡張を可能にする。送達デバイス2214および人工弁2319を遠位に前進させることは、僧帽弁2310に隣接する心房表面に対して心房スカート2318を着座させ、それにより、第1の位置で人工弁を固着する。
【0111】
図23Eは、遠位部分2314bのさらなる遠位前進が、付加的な拘束を露出させ、人工弁2319から軸方向に除去し、それにより、弁のより多くが自己拡張することを可能にすることを示す。環状領域2320は、僧帽弁輪と係合するように拡張し、心室三角タブ2324および後方タブ2322は、半径方向に拡張する。心室スカートの部分は、拘束されたままであるので、配備制御領域としての機能を果し、したがって、心室スカート全体は、拡張することができない。タブは、僧帽弁前尖および後尖と心室壁との間に捕捉される。後方心室固着タブ2322は、好ましくは、腱索付着が欠如している、僧帽弁後尖の中央で整列させられ、後尖と心室壁との間に着座するように後尖を通り越させられる。それらの頭部が線維性三角に設置された状態で、2つの心室三角固着タブ2324が、前尖の両側に設置される。人工弁のわずかな回転および再整列が、このときに起こり得る。人工弁が拡張するにつれて、前方三角タブが線維性三角に対して固着し、タブと人工弁の前面との間に自然前尖および腱索を捕捉し、後方心室タブが心室壁と後尖との間に固着し、後方固着タブと人工弁アセンブリの後面との間に後尖を捕捉する。
【0112】
図23Fは、遠位部分2314bのさらなる遠位前進が、心室三角タブおよび後方タブを解放し、心室スカート2326も解放され、心室壁に係合することなく、自然僧帽弁尖に対して半径方向外向きに拡張することが許可されることを示す。これは、自然弁尖内で密閉漏斗を作成し、人工弁を通って注ぎ込む血流を助ける。人工弁の交連が依然として送達システムによって捕捉されていると、正確な位置付け、固着、および密閉を確保するように、非常に軽微な調整が依然として行われてもよい。人工弁は現在、4つの位置で固着されている。次いで、アンカータブ2328は、内側シャフトのさらなる前進によって送達デバイスから解放され、上記で以前に論議され、図23Gに示されるように、タブが送達カテーテル上のスロットから自己拡張することを可能にする。人工弁は現在、患者の心臓に埋め込まれており、自然僧帽弁を引き継ぐ。次いで、送達デバイス2314は、心房中隔を通して大静脈から外へ、それを近位に後退させすることによって、心臓から除去されてもよい。
【0113】
図24は、経心尖または経中隔的送達後に僧帽弁空間の中に固着された人工弁2418を示す。人工弁2418は、好ましくは、図8Aに図示される人工僧帽弁であり、図22A-22Gまたは図23A-23Gに示される方法によって送達される。人工弁2418は、僧帽弁と係合して、大動脈弁2402等の左心室流出路を含む、心臓の他の部分を閉塞することなく、定位置でそれを固着するように、半径方向に自己拡張している。前方三角タブ2408(この図では1つだけが見える)および後方心室タブ2405は、心室スカート2410の残りの部分から半径方向外向きに拡張され、前尖2406および後尖2404は、アンカー点を形成するように、それぞれのタブと心室スカート2410との間に捕捉される。心室スカート2410はまた、腱索および乳頭筋のうちの少なくともいくつかに係合して外向きに押すように、しかし好ましくは、心室壁を圧迫することなく、半径方向外向きに拡張される。環状領域2416は、僧帽弁輪に係合し、それを圧迫するように、半径方向外向きに拡張され、心房スカート2414はまた、心房に対して僧帽弁の上に静置するフランジを形成するように、外向きに拡張している。したがって、人工弁2418は、僧帽弁空間の中の4つの位置で固着され、それは、心臓の収縮中に人工弁が移動する、または外れることを防止する。また、4つのアンカー点を使用することは、単一の固着ゾーンのみで、またはこれら4つの固着ゾーンの任意の組み合わせで固着される人工弁と比較して、任意の所与の固着ゾーンで印加される必要がある固着圧力を軽減する。各ゾーンの中で自然構造に対して及ぼされる必要がある半径方向力の結果として生じる低減は、自然僧帽弁器官の変位によって引き起こされる、近くの大動脈弁または大動脈起始部の閉塞または衝突の危険性を最小化する。弁尖2420は、順行血流によって開き、逆行血流によって閉じる三尖弁を形成する。交連2421(図25において最も良く見える)の先端上のタブ2412は、送達デバイスからの係脱後に遊離したままである。
【0114】
図25は、心房に向かって上向きに見た、僧帽弁空間の中に固着され、左心室から見た図24の人工弁2418を図示する。前述のように、人工弁2418は、経心尖的または経中隔的に送達されてもよく、好ましくは、図22A-22Gまたは図23A-23Gに示される方法によって送達される、図8Aに図示される人工僧帽弁である。この図は、隣接組織との人工僧帽弁2418の固着および係合をより明確に図示する。例えば、三尖弁を形成する、3つの弁尖2420が、開放位置で示されており、それを通り越した血流を可能にする。加えて、前方三角タブ2408および後方心室タブ2405が、心室心臓組織2425と係合するように半径方向外向きに拡張されて示されている。前方三角タブ2408の間の人工弁の前方部分は、上記で以前に論議されているように、対応する平坦な生体構造に合致するように、ほぼ平坦である。人工弁の前方部分の平坦形状は、人工弁が、大動脈弁を含む左心室流出路等の隣接生体構造に影響を与え、それを閉塞することを防止する。図25はまた、どのようにして心室スカート2410が自然僧帽弁尖に対して半径方向外向きに拡張するかも図示する。
【0115】
送達中。人工弁のうちのいずれかはまた、局所的薬剤溶出のための薬剤送達デバイスとして使用されてもよい。治療薬は、人工弁上で、アンカーを覆う組織上で、または両方で被覆されてもよく、あるいは人工弁によって別様に運ばれ、埋込後にそこから制御可能に溶出されてもよい。例示的な薬剤は、抗石灰化薬、抗生物質、血小板凝集抑制薬、抗炎症薬、組織拒絶反応を阻害する薬剤、抗再狭窄薬、抗血栓薬、血栓溶解薬等を含む。これらの治療効果を有する薬剤は、当業者に周知である。
【0116】
理解を明確にするので、および一例として、例示的実施形態がいくらか詳細に説明されているが、種々の付加的な修正、適合、および変更が当業者に明白であってもよい。当業者であれば、本明細書で説明される種々の特徴が相互と組み合わせられ、または相互と置換されてもよいことを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項のみによって限定される。
図1
図2
図3
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F
図22G
図23A
図23B
図23C
図23D
図23E
図23F
図23G
図24
図25