(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】生体適合性馴化細胞培地組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/32 20150101AFI20230106BHJP
A61K 6/00 20200101ALI20230106BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230106BHJP
A61K 35/33 20150101ALI20230106BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230106BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20230106BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20230106BHJP
【FI】
A61K35/32
A61K6/00
A61K9/08
A61K35/33
A61K47/36
A61P1/02
C12N5/077
(21)【出願番号】P 2020502537
(86)(22)【出願日】2018-04-02
(86)【国際出願番号】 US2018025655
(87)【国際公開番号】W WO2018183998
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-25
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519350236
【氏名又は名称】セラム バイオメディカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジン, リチャード シー.
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-269477(JP,A)
【文献】国際公開第2016/201154(WO,A1)
【文献】特表2004-534049(JP,A)
【文献】特表2008-518666(JP,A)
【文献】国際公開第2008/156221(WO,A1)
【文献】特表2002-544235(JP,A)
【文献】特表平10-504526(JP,A)
【文献】特開2016-065106(JP,A)
【文献】特表2013-536252(JP,A)
【文献】特表2007-523642(JP,A)
【文献】特表2011-526585(JP,A)
【文献】特表2013-505011(JP,A)
【文献】Masashi Osugi et al.,Conditioned Media from Mesenchymal Stem Cells Enhanced Bone Regeneration in Rat Calvarial Bone Defects,TISSUE ENGINEERING: Part A,2012年,Vol.18, No.13-14,pp.1497-1489
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯周の骨成長または歯周の骨吸収阻害のための生体適合性組成物であって、
(a)生体適合性ポリマーマトリクス
であって、前記生体適合性ポリマーマトリクスがアガロースである、生体適合性ポリマーマトリクス;ならびに
(b)i)細胞培養培地およびii)前記細胞培養培地において培養された1個または複数の細胞によって合成され前記細胞から分泌された1種または複数の薬剤を含む馴化細胞培地
であって、前記細胞が、骨芽細胞、線維芽細胞および骨芽細胞、または線維芽細胞および骨芽細胞の共培養物である、馴化細胞培地
を含む、生体適合性組成物。
【請求項2】
前記細胞が、骨芽細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記細胞が、線維芽細胞および骨芽細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記細胞が、線維芽細胞および骨芽細胞の共培養物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記細胞が
、活発に増殖している細胞である、請求項1
~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記細胞培養培地が、基礎細胞培養培地を含み、かつウシ胎仔血清(FBS)、L-グルタミン、ヒト上皮増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)およびアスコルビン酸からなる群より選択される1種または複数の補足物質をさらに含
む、請求項1
~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記基礎細胞培養培地が、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記補足物質が、組換え増殖因子であ
る、請求項
6または7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組換え増殖因子が、ヒト組換え増殖因子である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記細胞培養培地において培養された1個または複数の細胞によって合成され前記細胞から分泌された前記1種または複数の薬剤が
、増殖因子を含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記細胞培養培地において培養された1個または複数の細胞によって合成され前記細胞から分泌された前記1種または複数の薬剤が、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGFα)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1(TGFβl)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-2(TGFβ2)、インスリン様増殖因子(IGF)、神経成長因子(NGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン、ヒドロコルチゾン、ウロガストロン、血小板由来創傷治癒因子(PDWHF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血小板因子IV(PF IV)、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、コロニー刺激因子(CSF)、骨形成タンパク質(BMP)、オステオカルシン、オステオポンチン、インターロイキン-1、インターロイキン-6、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-11および増殖分化因子(GDF)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記細胞培養培地において培養された1個または複数の細胞によって合成され前記細胞から分泌された前記1種または複数の薬剤が、培養前の前記細胞培養培地における濃度と比較して、少なくとも約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約25倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍および約100倍からなる群より選択される増加した濃度で前記馴化培地に存在し、「約」が記載された値の10%以内の値を意味する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記細胞が、前記細胞培養培地において少なくとも24時
間培養される、請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記細胞が、前記細胞培養培地において少なくとも48時間培養される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記細胞が、前記細胞培養培地において少なくとも72時間培養される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記生体適合性組成物が、細胞を含まない、請求項1~
15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記馴化細胞培地
が濃縮され
る、請求項1~
16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記馴化細胞培地が、タンジェンシャルフロー濾過によって濃縮される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記馴化細胞培地が、前記生体適合性組成物の体積の約50%で存在し、「約」が記載された値の10%以内の値を意味する、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記アガロース
が海藻に由来する
、請求項1~
19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記アガロースが、低融点アガロースまたは超低融点アガロースである、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記アガロースが、約0.8%~3.0%重量対体積(w:v)、約0.9%w:v、約1.0%w:v、約1.1%w:v、約1.2%w:v、約1.3%w:v、約1.4%w:v、約1.5%w:v、約1.6%w:v、約1.7%w:v、約1.8%w:v、約1.9%w:v、約2.0%w:v、約2.1%w:v、約2.2%w:v、約2.3%w:v、約2.4%w:v、約2.5%w:v、約2.6%w:v、約2.7%w:v、約2.8%w:v、約2.9%w:vおよび約3.0%w:vからなる群より選択され、「約」が記載された値の10%以内の値を意味する、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
歯周の骨成長または歯周の骨吸収阻害のための生体適合性組成物を産生するための方法であって、
(a)細胞培養培地において細胞を培養するステップ
であって、前記細胞が、骨芽細胞、線維芽細胞および骨芽細胞、または線維芽細胞および骨芽細胞の共培養物である、ステップと、
(b)前記細胞培養培地における前記細胞によって合成され前記細胞から分泌された1種または複数の薬剤で馴化された前記細胞培養培地から培養された前記細胞を分離して、馴化細胞培地を産生するステップと、
(c)前記馴化細胞培地を生体適合性ポリマーマトリクスと混合するステップ
であって、前記生体適合性ポリマーマトリクスがアガロースである、ステップと
を含む、方法。
【請求項24】
前記細胞が、骨芽細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が、線維芽細胞および骨芽細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、線維芽細胞および骨芽細胞の共培養物である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が、活発に増殖している細胞である、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞培養培地が、基礎細胞培養培地を含み、かつウシ胎仔血清(FBS)、L-グルタミン、ヒト上皮増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)およびアスコルビン酸からなる群より選択される1種または複数の補足物質をさらに含
む、請求項
23~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記基礎細胞培養培地が、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記補足物質が、組換え増殖因子であ
る、請求項
28または
29に記載の方法。
【請求項31】
前記組換え増殖因子が、ヒト組換え増殖因子である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞培養培地において培養された1個または複数の細胞によって合成され前記細胞から分泌された前記1種または複数の薬剤が
、増殖因子を含む、請求項
23~
31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞培養培地において培養された1個または複数の細胞によって合成され前記細胞から分泌された前記1種または複数の薬剤が、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGFα)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1(TGFβl)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-2(TGFβ2)、インスリン様増殖因子(IGF)、神経成長因子(NGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン、ヒドロコルチゾン、ウロガストロン、血小板由来創傷治癒因子(PDWHF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血小板因子IV(PF IV)、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、コロニー刺激因子(CSF)、骨形成タンパク質(BMP)、オステオカルシン、オステオポンチン、インターロイキン-1、インターロイキン-6、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-11および増殖分化因子(GDF)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項23~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞培養培地において培養された1個または複数の細胞によって合成され前記細胞から分泌された前記1種または複数の薬剤が、培養前の前記細胞培養培地における濃度と比較して、少なくとも約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約25倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍および約100倍からなる群より選択される増加した濃度で前記馴化培地に存在し、「約」が記載された値の10%以内の値を意味する、請求項23~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が、前記細胞培養培地において少なくとも24時
間培養される、請求項
23~
34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞が、前記細胞培養培地において少なくとも48時間培養される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が、前記細胞培養培地において少なくとも72時間培養される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記生体適合性組成物が、細胞を含まない、請求項
23~
37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記馴化細胞培地が
、前記馴化細胞培地を生体適合性ポリマーマトリクスと混合する前に濃縮され
る、請求項
23~
38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記馴化細胞培地が、タンジェンシャルフロー濾過によって濃縮される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記馴化細胞培地が、前記生体適合性組成物の体積の約50%で存在し、「約」が記載された値の10%以内の値を意味する、請求項23~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記アガロースが
、海藻に由来する
、請求項
23~
41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記アガロースが、低融点アガロースまたは超低融点アガロースである、請求項23~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記アガロースが、約0.8%~3.0%重量対体積(w:v)、約0.9%w:v、約1.0%w:v、約1.1%w:v、約1.2%w:v、約1.3%w:v、約1.4%w:v、約1.5%w:v、約1.6%w:v、約1.7%w:v、約1.8%w:v、約1.9%w:v、約2.0%w:v、約2.1%w:v、約2.2%w:v、約2.3%w:v、約2.4%w:v、約2.5%w:v、約2.6%w:v、約2.7%w:v、約2.8%w:v、約2.9%w:vおよび約3.0%w:vからなる群より選択され、「約」が記載された値の10%以内の値を意味する、請求項23~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
医薬調製物の調製における
、請求項1~
22のいずれか一項に記載の生体適合性組成物の使
用。
【請求項46】
被験体にお
ける歯周の骨成長および/または
歯周の骨吸収阻害を必要とする部位に投与するために適合された、請求項1~
22のいずれか一項に記載の生体適合性組成
物。
【請求項47】
歯周の骨成長および/または歯周の骨吸収阻害の部位における歯周の新生骨成長の完全骨結合、垂直骨結合および/または水平骨結合が増強される、請求項46に記載の生体適合性組成物。
【請求項48】
被験体におけるa)
歯周の骨成長および/またはb)
歯周の骨吸収阻害を必要とする歯周部位
を処置するための、請求項1~
22のいずれか一項に記載の生体適合性組成物
。
【請求項49】
前記歯周部位における歯周の新生骨成長の完全骨結合、垂直骨結合および/または水平骨結合が増強される、請求項48に記載の生体適合性組成物。
【請求項50】
被験体において歯周の骨成長および/または歯周の骨吸収阻害を必要とする部位を処置するための、請求項1~22のいずれか一項に記載の生体適合性組成物。
【請求項51】
歯周の骨成長および/または歯周の骨吸収阻害の部位における歯周の新生骨成長の完全骨結合、垂直骨結合および/または水平骨結合が増強される、請求項50に記載の生体適合性組成物。
【請求項52】
歯周の骨質量が、維持もしくは増加される、歯周の骨密度が、維持もしくは増加される、あるいはこれらの任意の組合せである、請求項46~51のいずれか一項に記載の生体適合性組成物。
【請求項53】
前記生体適合性組成物が、a)歯周の骨成長を促進する、および/またはb)歯周の骨吸収を阻害する、有効量の治療剤の使用のために適合されている、請求項46~52のいずれか一項に記載の生体適合性組成物。
【請求項54】
前記生体適合性組成物が、前記部位への外用投与のために適合されている、請求項46~53のいずれか一項に記載の生体適合性組成物。
【請求項55】
前記被験体が、ヒト、ネコ、イヌ、ウマ、または齧歯類である、請求項46~54のいずれか一項に記載の生体適合性組成物。
【請求項56】
前記被験体がヒトである、請求項55に記載の生体適合性組成物。
【請求項57】
前記被験体が、歯周のi)骨成長および/またはii)骨吸収阻害を必要とする障害の動物モデルである、請求項46~54のいずれか一項に記載の生体適合性組成物。
【請求項58】
前記生体適合性組成物および前記治療剤が、逐次または同時使用のために適合されている、請求項53、および請求項53に従属する場合の請求項54~57のいずれか一項に記載の生体適合性組成物。
【請求項59】
前記治療剤が、骨形成因子、吸収抑制剤、骨原性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、成長ホルモン、エストロゲン、ビスホスホネート、スタチン、分化因子、鎮痛薬、麻酔薬、抗菌剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗生物質、抗炎症剤、抗酸化剤、消毒剤、免疫賦活剤およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項53、および請求項53に従属する場合の請求項54~57のいずれか一項に記載の生体適合性組成物。
【請求項60】
前記外用投与が、創傷被覆、外科的閉鎖、ステープリング、接着ストリップ、生体接着剤または歯肉皮弁からなる群より選択される、請求項54、および請求項54に従属する場合の請求項55~59のいずれか一項に記載の生体適合性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2017年3月31日に出願された米国仮出願第62/479,733号(この出願の全内容は、この参照によってその全体が本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
本発明の分野は、細胞培養、歯周および骨適用、ならびに医学生物工学、特に、培養細胞から生成された馴化細胞培地を注入されたポリマーマトリクスを含む生体適合性組成物である。線維芽細胞および骨芽細胞等、いずれかの種類の細胞を含む培養細胞は、細胞培地においてin vitroで成長され、培養の間に、培養細胞は、薬剤を合成し、細胞培地へと分泌する。薬剤を含有する細胞培地は、収集され、ポリマーマトリクスと組み合わされて、生体適合性組成物および医薬調製物を生成する。組成物および調製物は、骨、歯肉または組織の再生;骨成長の促進;皮膚細胞および組織の若返り;創傷治癒の刺激;ならびに歯周および歯肉疾患等、歯科関連の疾患、障害および状態の処置が挙げられるがこれらに限定されない再生プロセスに使用することができる。
【背景技術】
【0003】
歯肉炎からより重症型の歯周炎に及ぶ歯周疾患は、依然として著しい健康問題であり、米国および世界中の両方で成人における歯牙喪失の主原因である(E. Reichら(1993年)Comm. Dent. Oral Epidem.21巻:379頁;J. Angelillo ら(1996年)Comm. Dent. Oral Epidem.24巻:336頁;H. Murrayら(1997年)Int. Dent. J.47巻:3~8頁;R. C Oliverら(1998年)J. Periodontol.69巻:269~278頁;G. Ong(1998年)Int. Dental J.48巻:233~238頁;I. Haddadら(1999年)Dental J.49巻:343~346頁;E. F. Corbetら(2000年)Periodontol.29巻:122~152頁;A. Sheihamら(2000年)Periodontol.29巻:104~121頁;I. Chestnuttら(2000年)J. Dentist.28巻:295~297頁;U. M. Irfanら(2001年)J. Int. Acad. Periodontol.3巻:14~21頁)。米国の人口の15~35%、言い換えると、数千万名の患者が、様々な種類の歯周疾患に罹患していることが推定され(J. M. Albandarら(1999年)J. Peridontol.70巻:13~29頁)、年間数十億ドルの費用がかかる。さらに、歯周疾患は、口腔組織および構造的完全性における有害効果を越えた意義を有し、心血管疾患、妊娠合併症および糖尿病を含むいくつかの全身性状態の罹患率および死亡率増加の潜在的リスク因子を表す(R. C. Pageら(1998年)Ann. Periodontol.3巻:108~120頁;R. I. Garciaら(1998年)Ann. Periodontol.3巻:339~349頁)。
【0004】
歯周炎は、臨床アタッチメントおよび歯槽骨の喪失をもたらし得る、プラークの存在によって炎症性プロセスが刺激される感染性疾患である。歯周疾患の最も一般的な形態は、成人において観察され、慢性進行を示す(I. Brook(2003年)Gen. Dent.51巻:424~428頁)。歯周疾患の進行は、宿主応答の慢性の持続に依存する。口腔内に存在する数百種の細菌種のうち、ごく少数が、歯周疾患の病因に関与する(S. S. Socranskyら(2002年)Periodontal.28巻:12~55頁)。バイオフィルムは、Porphyromonas gingivalis、Bacteroides forsythus;およびTreponema denticola等の細菌を含有することができ、その存在は、歯周疾患の臨床特色、特に、ポケットの深さおよびプロービングの際の出血に顕著に関係付けられる(S. S. Socranskyら(1998年)J. Clin. Periodontol.25巻:134~144頁)。これらの病原性生物の一部は、歯周組織、象牙細管と共に、口腔の他の区域に侵入することができる。従来の歯周治療法は、歯牙構造から付着物を機械的に剪断するための歯肉溝内に置かれた歯科機器の使用により、歯根表面からの細菌の軟性および硬性付着物の機械的除去を重視した。しかし、スケーリングおよびルートプレーニングは多くの場合、このような付着物の除去において部分的にしか有効でない。さらに、容易に到達可能な区域の場合であっても、除去は一過性であり、細菌は歯根表面に再度定着する。
【0005】
有毒細菌は、歯周領域で繁茂し始めると、歯肉線下で毒性および病原性産物を放出し、これは、炎症性応答を誘導し、慢性感染を引き起こし得る。細菌毒素が、歯槽骨を溶解するにつれて、歯肉および骨が共に後退し、歯根を露出させる場合がある。他の実例では、骨は後退し得るが、歯肉は腫れぼったいままであり、失われた骨を置き換えたデブリのポケット周囲に壁を形成する。どちらの状況でも、歯根は、空気または刺激性細菌毒素のいずれかに曝露されるようになり、そのどちらも、自発痛、または冷たい、熱いまたは甘いもしくは酸っぱい食物に対する歯牙感受性を引き起こし得る。骨喪失によって引き起こされる損傷は通常永続的であるが、早期歯周炎は、適切な在宅口腔衛生により抑止することができ、歯牙喪失のリスクは最小となる。骨喪失が進行するにつれ、より侵襲的な処置を行って、歯牙を清潔に維持する必要がある。骨喪失が続き、歯牙支持が損なわれる場合、歯牙は可動性になり、最終的に、失われる、または抜歯される必要がある。
【0006】
歯周疾患の現在の処置は、抗菌化合物または様々な非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)を含有する組成物の使用を主に伴う。全身性抗生物質が、歯周治療法において使用された(R. J. Genco(1981年)J. Periodontal.52巻:545~558頁)。しかし、全身性送達(例えば、経口または筋肉内)は典型的に、歯肉溝区域に延長された期間にわたって十分な濃度の抗生物質を提供しない。歯周疾患の進行性症例において、歯周ポケットを排除し、骨を形態修正するための外科的介入を行うことができる。弛緩歯の副子固定および外傷性閉塞を排除するための歯牙表面の選択的再形成が必要な場合がある。これらの公知処置にもかかわらず、依然として、歯周疾患を予防および処置するための改善された組成物および方法の必要がある。特に、歯周炎関連の骨喪失を予防および処置するための方法が、非常に望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】S. S. Socranskyら、J.Clin.Periodontol.(1998年)25巻:134~144頁
【文献】R.J.Genco、J.Periodontal.(1981年)52巻:545~558頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも一部には、馴化細胞培地をポリマーマトリクス(例えば、アガロース)と組み合わせて、再生での使用のための生体適合性組成物および医薬調製物を生成することができるという発見に基づく。
【0009】
一態様では、(a)生体適合性ポリマーマトリクスならびに(b)i)細胞培養培地およびii)細胞培養培地において培養された1個または複数の細胞によって合成されその細胞から分泌された1種または複数の薬剤を含む馴化細胞培地を含む生体適合性組成物が提供される。
【0010】
本発明のいずれかの態様に適用することができる、および/または本明細書に記載されている他のいずれかの実施形態と組み合わせることができる、多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、細胞は、皮膚線維芽細胞、特に、新生児皮膚線維芽細胞等の線維芽細胞である。別の実施形態では、細胞は、骨芽細胞である。また別の実施形態では、細胞は、線維芽細胞および骨芽細胞である。さらに別の実施形態では、細胞は、線維芽細胞および骨芽細胞の共培養物である。別の実施形態では、細胞は、活発に増殖している細胞である。また別の実施形態では、細胞培養培地は、基礎細胞培養培地を含み、かつウシ胎仔血清(FBS)、L-グルタミン、ヒト上皮増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)およびアスコルビン酸からなる群より選択される1種または複数の補足物質(supplement)をさらに含む。さらに別の実施形態では、基礎細胞培養培地は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)である。別の実施形態では、補足物質は、ヒト組換え増殖因子等の組換え増殖因子である。また別の実施形態では、1種または複数の薬剤は、増殖因子を含む。さらに別の実施形態では、1種または複数の薬剤は、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGFα)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1(TGFβl)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-2(TGFβ2)、インスリン様増殖因子(IGF)、神経成長因子(NGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン、ヒドロコルチゾン、ウロガストロン、血小板由来創傷治癒因子(PDWHF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血小板因子IV(PF IV)、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、コロニー刺激因子(CSF)、骨形成タンパク質(BMP)、オステオカルシン、オステオポンチン、インターロイキン-1、インターロイキン-6、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-11および増殖分化因子(GDF)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される。別の実施形態では、細胞培養培地において培養された1個または複数の細胞によって合成されその細胞から分泌された1種または複数の薬剤は、培養前の細胞培養培地における濃度と比較して、約少なくとも2倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約25倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍および約100倍からなる群より選択される増加した濃度で馴化培地に存在する。また別の実施形態では、細胞は、細胞培養培地において少なくとも24時間、必要に応じて、少なくとも48時間または少なくとも72時間培養される。さらに別の実施形態では、生体適合性組成物は、細胞を含まない。別の実施形態では、馴化細胞培地は、濃縮され、必要に応じて、馴化細胞培地は、タンジェンシャルフロー濾過によって濃縮される。また別の実施形態では、ポリマーマトリクスは、海藻に由来するアガロース等のアガロースである。さらに別の実施形態では、アガロースは、低融点アガロースまたは超低融点アガロースである。別の実施形態では、アガロースは、約0.8%~3.0%重量対体積(w:v)、約0.9%w:v、約1.0%w:v、約1.1%w:v、約1.2%w:v、約1.3%w:v、約1.4%w:v、約1.5%w:v、約1.6%w:v、約1.7%w:v、約1.8%w:v、約1.9%w:v、約2.0%w:v、約2.1%w:v、約2.2%w:v、約2.3%w:v、約2.4%w:v、約2.5%w:v、約2.6%w:v、約2.7%w:v、約2.8%w:v、約2.9%w:vおよび約3.0%w:vからなる群より選択される。また別の実施形態では、馴化細胞培地は、生体適合性組成物の体積の約50%である。
【0011】
別の態様では、生体適合性組成物を産生するための方法であって、(a)細胞培養培地において細胞を培養するステップと、(b)細胞培養培地における細胞によって合成されその細胞から分泌された1種または複数の薬剤で馴化された細胞培養培地から培養細胞を分離して、馴化細胞培地を産生するステップと、(c)馴化細胞培地を生体適合性ポリマーマトリクスと混合するステップとを含む方法が提供される。
【0012】
上述の通り、多数の実施形態が、本明細書に記載されている本発明のいずれかの態様のために考慮される。例えば、一実施形態では、細胞は、皮膚線維芽細胞、特に、新生児皮膚線維芽細胞等の線維芽細胞である。別の実施形態では、細胞は、骨芽細胞である。また別の実施形態では、細胞は、線維芽細胞および骨芽細胞である。さらに別の実施形態では、細胞は、線維芽細胞および骨芽細胞の共培養物である。別の実施形態では、細胞は、活発に増殖している細胞である。また別の実施形態では、細胞培養培地は、基礎細胞培養培地を含み、かつウシ胎仔血清(FBS)、L-グルタミン、ヒト上皮増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)およびアスコルビン酸からなる群より選択される1種または複数の補足物質をさらに含む。さらに別の実施形態では、基礎細胞培養培地は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)である。別の実施形態では、補足物質は、ヒト組換え増殖因子等の組換え増殖因子である。また別の実施形態では、1種または複数の薬剤は、増殖因子を含む。さらに別の実施形態では、1種または複数の薬剤は、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGFα)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1(TGFβl)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-2(TGFβ2)、インスリン様増殖因子(IGF)、神経成長因子(NGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン、ヒドロコルチゾン、ウロガストロン、血小板由来創傷治癒因子(PDWHF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血小板因子IV(PF IV)、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、コロニー刺激因子(CSF)、骨形成タンパク質(BMP)、オステオカルシン、オステオポンチン、インターロイキン-1、インターロイキン-6、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-11および増殖分化因子(GDF)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される。別の実施形態では、細胞培養培地において培養された1個または複数の細胞によって合成されその細胞から分泌された1種または複数の薬剤は、培養前の細胞培養培地における濃度と比較して、約少なくとも2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約25倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍および約100倍からなる群より選択される増加した濃度で馴化培地に存在する。また別の実施形態では、細胞は、細胞培養培地において少なくとも24時間、必要に応じて、少なくとも48時間または少なくとも72時間培養される。さらに別の実施形態では、生体適合性組成物は、細胞を含まない。別の実施形態では、馴化細胞培地は、馴化細胞培地を生体適合性ポリマーマトリクスと混合する前に濃縮され、必要に応じて、馴化細胞培地は、タンジェンシャルフロー濾過によって濃縮される。また別の実施形態では、ポリマーマトリクスは、海藻に由来するアガロース等のアガロースである。さらに別の実施形態では、アガロースは、低融点アガロースまたは超低融点アガロースである。別の実施形態では、アガロースは、約0.8%~3.0%重量対体積(w:v)、約0.9%w:v、約1.0%w:v、約1.1%w:v、約1.2%w:v、約1.3%w:v、約1.4%w:v、約1.5%w:v、約1.6%w:v、約1.7%w:v、約1.8%w:v、約1.9%w:v、約2.0%w:v、約2.1%w:v、約2.2%w:v、約2.3%w:v、約2.4%w:v、約2.5%w:v、約2.6%w:v、約2.7%w:v、約2.8%w:v、約2.9%w:vおよび約3.0%w:vからなる群より選択される。また別の実施形態では、馴化細胞培地は、生体適合性組成物の体積の約50%である。
【0013】
また別の態様では、本発明の生体適合性組成物は、医薬調製物の調製において使用することができ、必要に応じて、医薬調製物は、外用に適用される歯周処置である。
【0014】
また別の態様では、被験体において骨を成長させるまたは骨吸収を阻害する方法であって、被験体における骨成長および/または骨吸収阻害を必要とする部位に、有効量の本発明の生体適合性組成物を投与するステップを含み、必要に応じて、歯周部位における新生骨成長の完全骨結合(total osseointegration)、垂直骨結合(vertical osseointegration)および/または水平骨結合(lateral osseointegration)を増強する方法が提供される。一実施形態では、被験体は、骨折、骨欠乏、転移性骨疾患、変形性関節症、骨粗鬆症および/または溶骨性骨疾患を有する。
【0015】
また別の態様では、被験体における歯周状態を処置する方法であって、被験体におけるa)歯肉および/または骨成長および/またはb)歯肉浸食および/または骨吸収阻害を必要とする歯周部位に、有効量の本発明の生体適合性組成物を投与するステップを含み、必要に応じて、歯周部位における新生骨成長の完全骨結合、垂直骨結合および/または水平骨結合を増強する方法が提供される。
【0016】
上述の通り、多数の実施形態が、本明細書に記載されている本発明のいずれかの態様のために考慮される。例えば、一実施形態では、被験体は、歯周疾患、歯肉炎症、齲歯、歯肉疾患、歯肉炎および/または歯周炎を有する。別の実施形態では、骨質量は、維持もしくは増加される、骨密度は、維持もしくは増加される、歯肉組織は、維持もしくは増加される、またはこれらのいずれかの組み合わせが生じる。また別の実施形態では、a)歯肉および/または骨成長を促進する、および/またはb)歯肉浸食および/または骨吸収を阻害する、有効量の治療剤が被験体に投与される。さらに別の実施形態では、生体適合性組成物の投与および治療剤の投与は、逐次または同時である。別の実施形態では、治療剤は、骨形成因子、吸収抑制剤、骨原性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、成長ホルモン、エストロゲン、ビスホスホネート、スタチン、分化因子、鎮痛薬、麻酔薬、抗菌剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗生物質、抗炎症剤、抗酸化剤、消毒剤、免疫賦活剤およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。また別の実施形態では、生体適合性組成物は、部位に外用に投与される。さらに別の実施形態では、外用投与は、創傷被覆、外科的閉鎖、ステープリング、接着ストリップ、生体接着剤または歯肉皮弁からなる群より選択される。別の実施形態では、被験体は、ヒト、ネコ、イヌ、ウマまたは齧歯類等の哺乳動物である。また別の実施形態では、哺乳動物は、歯周のa)歯肉および/または骨成長、および/またはb)歯肉浸食および/または骨吸収阻害を必要とする障害の動物モデルである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)生体適合性ポリマーマトリクス;ならびに
(b)i)細胞培養培地およびii)前記細胞培養培地において培養された1個または複数の細胞によって合成され前記細胞から分泌された1種または複数の薬剤を含む馴化細胞培地
を含む、生体適合性組成物。
(項目2)
前記細胞が、線維芽細胞である、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記線維芽細胞が、皮膚線維芽細胞である、項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記皮膚線維芽細胞が、新生児皮膚線維芽細胞である、項目3に記載の組成物。
(項目5)
前記細胞が、骨芽細胞である、項目1に記載の組成物。
(項目6)
前記細胞が、線維芽細胞および骨芽細胞である、項目1~5のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
前記細胞が、線維芽細胞および骨芽細胞の共培養物である、項目1~6のいずれか一項に記載の組成物。
(項目8)
前記細胞が、活発に増殖している細胞である、項目1~7のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
前記細胞培養培地が、基礎細胞培養培地を含み、かつウシ胎仔血清(FBS)、L-グルタミン、ヒト上皮増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)およびアスコルビン酸からなる群より選択される1種または複数の補足物質をさらに含む、項目1~8のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
前記基礎細胞培養培地が、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)である、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記補足物質が、組換え増殖因子である、項目9または10に記載の組成物。
(項目12)
前記組換え増殖因子が、ヒト組換え増殖因子である、項目11に記載の組成物。
(項目13)
前記1種または複数の薬剤が、増殖因子を含む、項目1~12のいずれか一項に記載の組成物。
(項目14)
前記1種または複数の薬剤が、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGFα)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1(TGFβl)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-2(TGFβ2)、インスリン様増殖因子(IGF)、神経成長因子(NGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン、ヒドロコルチゾン、ウロガストロン、血小板由来創傷治癒因子(PDWHF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血小板因子IV(PF IV)、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、コロニー刺激因子(CSF)、骨形成タンパク質(BMP)、オステオカルシン、オステオポンチン、インターロイキン-1、インターロイキン-6、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-11および増殖分化因子(GDF)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1~13のいずれか一項に記載の組成物。
(項目15)
前記細胞培養培地において培養された1個または複数の細胞によって合成され前記細胞から分泌された前記1種または複数の薬剤が、培養前の前記細胞培養培地における濃度と比較して、約少なくとも2倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約25倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍および約100倍からなる群より選択される増加した濃度で前記馴化培地に存在する、項目1~14のいずれか一項に記載の組成物。
(項目16)
前記細胞が、前記細胞培養培地において少なくとも24時間、必要に応じて、少なくとも48時間または少なくとも72時間培養される、項目1~15のいずれか一項に記載の組成物。
(項目17)
前記生体適合性組成物が、細胞を含まない、項目1~16のいずれか一項に記載の組成物。
(項目18)
前記馴化細胞培地が濃縮され、必要に応じて、前記馴化細胞培地が、タンジェンシャルフロー濾過によって濃縮される、項目1~17のいずれか一項に記載の組成物。
(項目19)
前記ポリマーマトリクスが、アガロースである、項目1~18のいずれか一項に記載の組成物。
(項目20)
前記アガロースが、海藻に由来する、項目19に記載の組成物。
(項目21)
前記アガロースが、低融点アガロースまたは超低融点アガロースである、項目19または20に記載の組成物。
(項目22)
前記アガロースが、約0.8%~3.0%重量対体積(w:v)、約0.9%w:v、約1.0%w:v、約1.1%w:v、約1.2%w:v、約1.3%w:v、約1.4%w:v、約1.5%w:v、約1.6%w:v、約1.7%w:v、約1.8%w:v、約1.9%w:v、約2.0%w:v、約2.1%w:v、約2.2%w:v、約2.3%w:v、約2.4%w:v、約2.5%w:v、約2.6%w:v、約2.7%w:v、約2.8%w:v、約2.9%w:vおよび約3.0%w:vからなる群より選択される、項目19~21のいずれか一項に記載の組成物。
(項目23)
前記馴化細胞培地が、前記生体適合性組成物の体積の約50%である、項目1~22のいずれか一項に記載の組成物。
(項目24)
生体適合性組成物を産生するための方法であって、
(a)細胞培養培地において細胞を培養するステップと、
(b)前記細胞培養培地における前記細胞によって合成され前記細胞から分泌された1種または複数の薬剤で馴化された前記細胞培養培地から培養された前記細胞を分離して、馴化細胞培地を産生するステップと、
(c)前記馴化細胞培地を生体適合性ポリマーマトリクスと混合するステップと
を含む、方法。
(項目25)
前記細胞が、線維芽細胞である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記線維芽細胞が、皮膚線維芽細胞である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記皮膚線維芽細胞が、新生児皮膚線維芽細胞である、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記細胞が、骨芽細胞である、項目25に記載の方法。
(項目29)
前記細胞が、線維芽細胞および骨芽細胞である、項目24~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記細胞が、線維芽細胞および骨芽細胞の共培養物である、項目24~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記細胞が、活発に増殖している細胞である、項目24~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記細胞培養培地が、基礎細胞培養培地を含み、かつウシ胎仔血清(FBS)、L-グルタミン、ヒト上皮増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)およびアスコルビン酸からなる群より選択される1種または複数の補足物質をさらに含む、項目24~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記基礎細胞培養培地が、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記補足物質が、組換え増殖因子である、項目32または33に記載の方法。
(項目35)
前記組換え増殖因子が、ヒト組換え増殖因子である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記1種または複数の薬剤が、増殖因子を含む、項目24~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記1種または複数の薬剤が、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGFα)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1(TGFβl)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-2(TGFβ2)、インスリン様増殖因子(IGF)、神経成長因子(NGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン、ヒドロコルチゾン、ウロガストロン、血小板由来創傷治癒因子(PDWHF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血小板因子IV(PF IV)、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、コロニー刺激因子(CSF)、骨形成タンパク質(BMP)、オステオカルシン、オステオポンチン、インターロイキン-1、インターロイキン-6、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-11および増殖分化因子(GDF)、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目24~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記細胞培養培地において培養された1個または複数の細胞によって合成され前記細胞から分泌された前記1種または複数の薬剤が、培養前の前記細胞培養培地における濃度と比較して、約少なくとも2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約25倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍および約100倍からなる群より選択される増加した濃度で前記馴化培地に存在する、項目24~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記細胞が、前記細胞培養培地において少なくとも24時間、必要に応じて、少なくとも48時間または少なくとも72時間培養される、項目24~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記生体適合性組成物が、細胞を含まない、項目24~39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記馴化細胞培地が、前記馴化細胞培地を生体適合性ポリマーマトリクスと混合する前に濃縮され、必要に応じて、前記馴化細胞培地が、タンジェンシャルフロー濾過によって濃縮される、項目24~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記ポリマーマトリクスが、アガロースである、項目24~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記アガロースが、海藻に由来する、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記アガロースが、低融点アガロースまたは超低融点アガロースである、項目42または43に記載の方法。
(項目45)
前記アガロースが、約0.8%~3.0%重量対体積(w:v)、約0.9%w:v、約1.0%w:v、約1.1%w:v、約1.2%w:v、約1.3%w:v、約1.4%w:v、約1.5%w:v、約1.6%w:v、約1.7%w:v、約1.8%w:v、約1.9%w:v、約2.0%w:v、約2.1%w:v、約2.2%w:v、約2.3%w:v、約2.4%w:v、約2.5%w:v、約2.6%w:v、約2.7%w:v、約2.8%w:v、約2.9%w:vおよび約3.0%w:vからなる群より選択される、項目42~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記馴化細胞培地が、前記生体適合性組成物の体積の約50%で存在する、項目24~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
医薬調製物の調製における項目1~23のいずれか一項に記載の生体適合性組成物の使用であって、必要に応じて、前記医薬調製物が、外用に適用される歯周処置である、使用。
(項目48)
被験体において骨を成長させるまたは骨吸収を阻害する方法であって、前記被験体における骨成長および/または骨吸収阻害を必要とする部位に、有効量の項目1~23のいずれか一項に記載の生体適合性組成物を投与するステップを含み、必要に応じて、前記方法は、骨成長および/または骨吸収阻害の部位における新生骨成長の完全骨結合、垂直骨結合および/または水平骨結合を増強する、方法。
(項目49)
前記被験体が、骨折、骨欠乏、転移性骨疾患、変形性関節症、骨粗鬆症および/または溶骨性骨疾患を有する、項目48に記載の方法。
(項目50)
被験体における歯周状態を処置する方法であって、前記被験体におけるa)歯肉および/または骨成長および/またはb)歯肉浸食および/または骨吸収阻害を必要とする歯周部位に、有効量の項目1~23のいずれか一項に記載の生体適合性組成物を投与するステップを含み、必要に応じて、前記方法は、前記歯周部位における新生骨成長の完全骨結合、垂直骨結合および/または水平骨結合を増強する、方法。
(項目51)
前記被験体が、歯周疾患、歯肉炎症、齲歯、歯肉疾患、歯肉炎および/または歯周炎を有する、項目50に記載の方法。
(項目52)
骨質量が、維持もしくは増加される、骨密度が、維持もしくは増加される、歯肉組織が、維持もしくは増加される、またはこれらのいずれかの組み合わせが生じる、項目48~51のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記被験体に、a)歯肉および/または骨成長を促進する、および/またはb)歯肉浸食および/または骨吸収を阻害する、有効量の治療剤を投与するステップをさらに含む、項目48~52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記生体適合性組成物の投与および前記治療剤の投与が、逐次または同時である、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記治療剤が、骨形成因子、吸収抑制剤、骨原性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、成長ホルモン、エストロゲン、ビスホスホネート、スタチン、分化因子、鎮痛薬、麻酔薬、抗菌剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗生物質、抗炎症剤、抗酸化剤、消毒剤、免疫賦活剤およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目53または54に記載の方法。
(項目56)
前記生体適合性組成物が、前記部位に外用に投与される、項目48~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記外用投与が、創傷被覆、外科的閉鎖、ステープリング、接着ストリップ、生体接着剤または歯肉皮弁からなる群より選択される、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記被験体が、哺乳動物である、項目48~57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記哺乳動物が、ヒト、ネコ、イヌ、ウマまたは齧歯類である、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記哺乳動物が、歯周のa)歯肉および/または骨成長および/またはb)歯肉浸食および/または骨吸収阻害を必要とする障害の動物モデルである、項目58に記載の方法。
【0017】
本発明の上述および他の目的、利点および特色は、当業者であれば、次の詳細な説明を読めば明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、それぞれの培地の間で細胞のサイズまたは形態に識別可能な効果がないことを示す、細胞形態の顕微鏡写真を描写する。
【0019】
【
図2】
図2は、24時間(hr)後の細胞増殖アッセイを示す。対照培地は、DPBSに対応する。非馴化培地は、非馴化線維芽細胞培地および非馴化骨芽細胞培地の50:50混合物に対応する。馴化培地は、線維芽細胞馴化培地および骨芽細胞馴化培地の50:50混合物に対応する。
【0020】
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、スクラッチアッセイの顕微鏡写真を示す。
図3Aは、骨芽細胞非馴化培地を使用したスクラッチアッセイを描写する。24時間の成長後に、骨芽細胞は、本来の間隙のおよそ40%を満たすまで成長した。48時間の成長後に、骨芽細胞は、本来の間隙のおよそ50%を満たすまで成長し、対向する側の間の連絡は殆どない。
図3Bは、骨芽細胞馴化培地を使用したスクラッチアッセイを描写する。24時間の成長後に、骨芽細胞は、本来の間隙のおよそ40%を満たすまで成長した。48時間の成長後に、骨芽細胞は、本来の間隙のおよそ75%を満たすまで成長し、対向する側から連絡する骨芽細胞が存在する。
【0021】
【
図4】
図4は、24時間目の隣接している細胞におけるアガロースディスクのパラクリン様効果の顕微鏡写真を示す。馴化培地を含有するアガロースディスクは、対照(PBS)または非馴化(非馴化培地)と比較して、周縁部の辺りに有意により多くの細胞凝集を有した。
【0022】
【
図5】
図5は、処置8週間後の骨再生のマイクロCTセクションスキャン画像を示す。
【0023】
【
図6】
図6は、処置8週間後の骨成長およびインプラント-骨の骨結合のマイクロCTセクションスキャン画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、1個または複数の培養細胞(例えば、線維芽細胞および/または骨芽細胞)から合成および分泌された、1種または複数の培養された薬剤を含む馴化細胞培地を注入されたポリマーマトリクス(例えば、アガロース)を含む生体適合性組成物を提供する。前記組成物は、被験体(例えば、ヒトまたは動物)における歯肉成長および/または骨成長を誘導または促進するため、ならびに骨悪化(bone deterioration)を低下または予防するための方法において使用することができる。本方法は一般に、被験体に有効量の生体適合性組成物を投与するステップを含む。非外科的、非侵襲的かつ安全である本発明の方法は、歯周疾患、変形性関節症、転移性骨疾患および溶骨性骨疾患が挙げられるがこれらに限定されない、歯肉および/または骨分解、歯肉および/または骨悪化、および/または歯肉および/または骨変性に関連する病状または状態の処置および/または予防に使用することができる。創傷治癒の刺激、骨、歯肉または組織の再生、ならびに歯周炎、歯肉炎および歯肉疾患等の歯科関連の疾患、障害および状態の処置が挙げられるがこれらに限定されない、追加的な再生での使用が考慮される。本方法の実行に使用することができる、生体適合性組成物を含む医薬組成物およびキットも提供される。
【0025】
本明細書に提供される生体適合性組成物は、サイトカインおよび増殖因子等、過多の培養された薬剤を含む馴化細胞培地を使用した、回復時間を短縮し、再生プロセスに関する全体的患者結果を改善するための治療代替/補助を医師に供する。増殖する培養線維芽細胞および骨芽細胞から放出された増殖因子等、培養された薬剤の不均質な組成は、サイトカインおよび増殖因子の完全供給源を提供して、歯肉再生に関与する線維芽細胞増殖および分化、ならび骨再生に関与する骨芽細胞増殖/成熟をそれぞれ刺激する。
【0026】
現在まで、活発に増殖する線維芽細胞または骨芽細胞から内在性に放出される増殖因子を含む、市場で現在利用できる製品は存在しない。GEM21(登録商標)(Osteohealth)は、骨成長を促すために組換えPDGFを利用する、市場における一製品であるが、これは、歯科骨填塞デバイスとして使用される合成リン酸カルシウム増殖因子増強マトリクスである。エナメリンおよびアメロブラスチン(ameloblastin)を含むタンパク質含有ゲルであるEmdogain(登録商標)(Straumann)等、他の製品は、エナメル芽細胞活性およびエナメルマトリクスタンパク質を促進して、歯周疾患による骨欠損を処置することができる。
【0027】
これらの現存する製品は、歯周再生および骨再生等の再生プロセスが複雑な生物学的プロセスであることを認識できていない。これらの生物学的プロセスには、最適に満たない結果をもたらす現存する製品において欠如する、いくつかの増殖因子が関与する。
【0028】
対照的に、本発明は、線維芽細胞および骨芽細胞等の培養細胞によって内在性に放出された増殖因子の完全混合物で構成される生体適合性組成物を提供する。その裏側にある理論的根拠は、歯肉および骨再生等の再生プロセスの複雑さに取り組むことであり、また、1種のモダリティを使用してこれを達成することができることである。理論に制約されることなく、ポリマーマトリクス(例えば、アガロース)の使用は、細胞増殖増加を最終的にもたらす、外傷または骨喪失の区域への曝露増加を可能にする、増殖因子の持続放出のための貯蔵所として機能する。
【0029】
I.定義
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、この冠詞の文法上の目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すように本明細書で使用されている。例として、「1つのエレメント(an element)」は、1つのエレメントまたは2つ以上のエレメントを意味する。
【0030】
用語「約」は一般に、他に指定がなければ、記述されている範囲よりも5%少ないおよび8%多い値以内の範囲値等、両端を含む列挙されているものまたはその間のいずれかの範囲の10%以内にある値を指す。
【0031】
用語「骨状態」は、骨質量および/または骨密度を増加、改善または促進すること、および/または骨質量および/または骨密度の喪失を予防、阻害または低下させることが望ましい、いずれかの状態を含む。用語「骨状態」は、破骨細胞および/または骨芽細胞数を増加させる、破骨細胞および/または骨芽細胞活性を増加させる、骨吸収を増加させる、骨髄線維症を増加させる、または骨のカルシウム含量を変更する、いずれかの状態を包含する。
【0032】
用語「骨喪失」は、骨格量(skeletal mass)、物質もしくはマトリクス、またはカルシウムおよびリン酸塩等の骨格のいずれかの構成成分が減少する、または破壊されることに抵抗するその能力の観点から、骨もしくは歯牙が失われる、損傷されるもしくは弱められる、いずれかの状況を指す。用語「骨喪失」は、骨悪化、骨分解、骨変性、骨質量の喪失、骨密度の喪失、およびこれらの状態のいずれかの組み合わせによって特徴付けられる、いずれかの状況も包含する。
【0033】
用語「有効量」は、その意図される目的(複数可)(例えば、目的は、骨喪失、例えば、歯周疾患に関連する骨喪失を処置または予防することであり得る)を充足するのに十分な、本明細書に提供される分子、薬剤、因子および/または生体適合性組成物のいずれかの量を指す。
【0034】
用語「局所的」および「外用」は、化合物または組成物の送達、投与または適用を指し、化合物または組成物が、局在化される効果のために目的の部位(例えば、歯周疾患等の口腔障害のために口腔内)に直接的に送達、投与または適用されることを指定することを意味する。ある特定の実施形態では、局所的または外用投与は、被験体の血流への組成物の構成成分のいかなる有意な吸収も伴わずもたらされる。
【0035】
用語「骨芽細胞」は、骨形成のためのマトリクスを分泌する細胞を指す。
【0036】
用語「破骨細胞」は、成長および治癒の際に骨組織を吸収する大型の多核骨細胞を指す。
【0037】
用語「骨伝導性(osteoconductive)」は、周囲の組織からの骨原性細胞の内部成長(ingrowth)および配向のための環境を提供する化合物、組成物、プロセスまたは材料の能力を指す。
【0038】
用語「骨原性」は、骨形成を引き起こす(例えば、開始する、促進する、容易にする、加速する、増強する、刺激する、その他)化合物、組成物、プロセスまたは材料の能力を指す。
【0039】
用語「骨誘導性」は、前駆細胞、特に、間葉系幹細胞から骨芽細胞の産生を誘導する化合物、組成物、プロセスまたは材料の能力を指す。骨誘導性化合物、組成物、プロセスまたは材料は、直接的に作用することができる(例えば、前駆細胞と相互作用して、骨芽細胞分化を誘導する増殖因子等)、または骨誘導性増殖因子の産生を誘導することにより間接的に作用することができる。
【0040】
用語「口腔障害」は、「歯科障害」と互換的に使用され、異常に低いまたは不十分なレベルの口腔骨(oral bone)(例えば、口腔内の骨)に起因するまたはこれによって特徴付けられる障害、疾患または状態を含む。例示的な口腔骨は、歯槽骨および基底骨(basal bone)を含む。骨質量または骨成長を増加させることにより、本発明に従って処置することができる口腔障害として、歯周疾患、歯槽骨喪失、歯肉炎、骨粗鬆症、骨減少症、口腔骨切除、口腔骨折、関節炎、変形性関節症、骨切り術骨喪失、小児期特発性骨喪失その他が挙げられるがこれらに限定されない。本発明に従って処置することができる破壊性口腔骨障害として、新生物疾患、放射線療法または化学療法に起因するもの等、骨粗鬆症、骨減少症、変形性関節症および溶骨性病変が挙げられるがこれらに限定されない。本発明によって、コラーゲンおよび血管等、軟部組織、上皮および結合組織を含む他の口腔組織の再生も考慮される。
【0041】
用語「歯周疾患」は、歯牙を囲み支持する歯周組織のあらゆる疾患を含む(例えば、D. M. Williamsら、Pathology of Periodontal Disease(1992年)Oxford University Pressを参照)。これらは、歯ぐき(gingiva)、セメント質、歯周靱帯、歯槽突起骨および歯科支持骨を含む。具体的には、歯周疾患は、歯肉炎および歯周炎を含む。歯肉炎は、炎症が歯ぐき内に局在化され、歯牙および歯ぐきの間の骨には病変が発生しない疾患である。歯周炎は、歯ぐきの炎症が歯周靱帯および歯槽骨に達する疾患である。処置しないままでは、歯周炎は、歯牙喪失をもたらし得る。歯周疾患は、歯周組織が罹患する炎症性疾患のより大きいセットも包含する。例えば、斯かる疾患は、歯苔誘導性の歯ぐきの疾患;慢性(以前に成人)歯周炎;侵襲性歯周炎(以前は早期発病、思春期前、若年性または急速進行性歯周炎);壊死性歯周疾患;歯周組織の膿瘍;および術後細菌感染(特に、P.gingivalisに起因する、これによって伝染されるおよび/またはこれによって増悪される感染)を含む。
【0042】
用語「被験体」は、いずれかの健康な動物、哺乳動物もしくはヒト、または目的の状態(例えば、歯周疾患)を患ういずれかの動物、哺乳動物もしくはヒトを指す。用語「被験体」は、「患者」または「個体」と互換的である。これらは、本発明の生体適合性組成物の投与が有益な病状または状態を患い得るが、この病状または状態を有していてもいなくてもよい、高等脊椎動物、好ましくは、ヒトまたは別の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマその他)を指す。多くの実施形態では、被験体は、骨状態、例えば、骨喪失に関連する骨状態を患っているまたはこれに対して感受性である(すなわち、高いまたはより高い発症リスクを示す)。ある特定の実施形態では、被験体は、人間である。この用語は、特定の年齢を表示せず、よって、成人、小児および新生児を包含する。他の実施形態では、被験体は、骨喪失および/または歯周疾患等の目的の障害の動物モデルである。
【0043】
用語「縫合」は、組織修復を達成するために、創傷または外科的切開の縁を一体に保持する縫い目または縫い目の列を指す。縫合による治癒は、その末端の一方において連接された金属針を使用して組織において縫合糸を導入し、切開の両側の間に針を連続的に通し、これにより、創傷の閉鎖を受動的に容易にすることにより創傷の縁を一体にすることからなる。縫合は、外科的施術においても使用されて、出血を止め(止血)、人体の臓器および他の構造を修復する。一部の状況では;このような縫合は、これが使用されている組織の治癒困難のため特に繊細である。これは、結腸壁に、腱に、ならびに神経組織および血管が関与する顕微鏡下手術において使用される縫合の場合に当てはまる。
【0044】
用語「処置」は、(1)病状もしくは状態の発病を遅延もしくは予防すること;(2)臨床状態の症状の進行、増悪もしくは悪化を減速するもしくは止めること;(3)状態の症状の好転(amelioration)をもたらすこと;および/または(4)状態を治癒することを目標とするプロセス/方法を特徴付けるために本明細書において使用される。処置は、予防的作用のために状態の発病前に投与することができる、または治療的作用のために状態の開始後に投与することができる。
【0045】
本明細書で使用されている用語「創傷」は、擦過傷、熱傷、ひび割れ、挫滅、切創、糖尿病性下肢潰瘍、裂創、深い切創、臓器移植、射創、切開、下肢潰瘍、褥瘡性潰瘍、熱傷瘢痕、引っ掻き傷、熱傷を受けた皮膚、ひりひり痛む皮膚(sore skin)、褥瘡性瘢痕、刺創、移植、静脈性潰瘍、または外科手術もしくは形成外科手術に関連する創傷等の創傷を指す。
【0046】
II.生体適合性組成物および生体適合性組成物を作製する方法
培養細胞(例えば、線維芽細胞および骨芽細胞の両方)由来の馴化細胞培地を注入されたポリマーマトリクス(例えば、アガロース)で構成される生体適合性組成物が本明細書に提供される。例えば、線維芽細胞由来の馴化細胞培地の、骨芽細胞と比較した比は、40%:60%~60%:40%等、5%:95%、10%:90%、15%:85%、20%:80%、25%:75%、30%:70%、35%:65%、40%:60%、45%:55%、50%:50%、55%:45%、60%:40%、65%:35%、70%:30%、75%:25%、80%:20%、85%:15%、90%:10%、95%:5%もしくはそれよりも高い、または両端を含むその間のいずれかの範囲であり得る。培養された薬剤を含有する馴化細胞培地は、炎症性、増殖性および成熟ステージを含む再生プロセスを刺激することが意図される、細胞増殖の際に放出された増殖因子の不均質な組成を表す。まとめると、活発に増殖している細胞(例えば、線維芽細胞および骨芽細胞)から馴化培地へと分泌された増殖因子は、歯周、骨および皮膚再生および再建等、再生での使用に両者共に必要な増殖因子およびタンパク質の完全混合物を表す。ポリマーマトリクス(例えば、アガロース)の使用は、増殖因子の持続放出のための貯蔵所として機能し、外傷の区域への曝露増加を可能にし、細胞増殖増加を最終的にもたらす。
【0047】
本発明は、また、培養細胞によって産生された1種または複数の培養された薬剤を含有する馴化細胞培地を含有する組成物または調製物を産生するための方法を提供する。本方法は、細胞が、1種または複数のサイトカイン、増殖因子および/またはタンパク質を合成し、培地へと分泌するように、細胞、例えば、線維芽細胞および/または骨芽細胞を培養するステップを含む。その結果得られる馴化細胞培地は、1種または複数の培養された薬剤を含有するようになり、培養細胞から分離され、ポリマーマトリクスと組み合わされて、生体適合性組成物を形成する。
【0048】
A.馴化細胞培地
用語「馴化細胞培地」または「馴化培地」は、栄養素、ビタミン、ホルモンならびに無機化合物および塩の供給源として細胞培養物の細胞によって使用されており、細胞培養物に接触したことにより、細胞によって合成され培地へと分泌されたサイトカイン、タンパク質、細胞外マトリクス構成成分、またはこれらのいずれかの組み合わせ等、細胞産物または「培養された薬剤」をここで追加された細胞培養培地を指す。馴化は、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、少なくとも約14時間、少なくとも約16時間、少なくとも約12時間、少なくとも約14時間、少なくとも約16時間、少なくとも約18時間、少なくとも約20時間、少なくとも約22時間、少なくとも約24時間、少なくとも約30時間、少なくとも約36時間、少なくとも約42時間、少なくとも約48時間、少なくとも約54時間、少なくとも約60時間、少なくとも約66時間、少なくとも約72時間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約2週間(記載される数値を含む)または24時間~3日間の間等のその間のいずれかの範囲等、培地を馴化するための時間、好ましくは、6時間~3日間、より好ましくは、12時間~2日間の間の時間にわたる、細胞および培地との接触、曝露、交換および相互作用の際の、新鮮培地へのサイトカイン、タンパク質および細胞外マトリクス構成成分の細胞合成および分泌の作用である。馴化細胞培地は、培養細胞を含有する培養装置から除去され、その培養された薬剤の精製のために収集される、または本明細書に記載されている様々な再生プロセスにおける使用のため、もしくはin vitro細胞培養における使用のための医薬組成物、美容組成物もしくは創傷治癒組成物として全体がもしくは部分が使用される。
【0049】
サイトカインは、分化、増殖、分泌または運動性等の細胞の機能または活性に変化を生じるタンパク質である。増殖因子は、同様に、細胞成長、増殖、遊走または他の関連細胞事象を促進または阻害する機能または活性に変化を引き起こすタンパク質であるサイトカインのサブセットである。ケモカインは、身体内の特異的組織へとT細胞、B細胞および他のケモカイン応答性細胞を誘引およびガイドするサイトカインの別のサブセットである。リンホカインは、免疫応答に関与するサイトカインのまた別のサブセットである。本明細書において、用語「サイトカイン」は、増殖因子、ケモカインおよびリンホカインを含むサイトカインを含み、それらの通常の構造および機能に限定されないが、その天然に存在するバリアントおよびハイブリッドを含むこともできる。本発明の培養された薬剤は、サイトカイン、増殖因子およびタンパク質を含むことができる。
【0050】
培養細胞は、その製造を通じて、また十分に形成された場合、サイトカインおよび他の物質のアレイを合成し、培養細胞を浸す培地へと分泌する生細胞を含有する。培養細胞は典型的に、線維芽細胞および骨芽細胞の細胞からなるが、いかなる種類の細胞も含むことができる。ネイティブな組織および/または骨(例えば、歯周組織および骨)において発生するものと同様の細胞-細胞および細胞-マトリクス相互作用のための、細胞を製造および培養するプロセスにおいて、線維芽細胞および骨芽細胞は、組織様環境、細胞外マトリクスを取り込む組織化された共培養物を提供することができる。発達中の細胞培養物におけるこれらの相互作用は、細胞外マトリクス発達、基底膜産生ならびに細胞増殖および分化の機能を実行するように培養物中の他の細胞を誘導するためのサイトカイン発現および培地への分泌の幅広いプロファイルを可能にする。
【0051】
馴化培地は、細胞成長、細胞分裂および血管新生に重要な、周知の血小板由来増殖因子(PDGF)を含む増殖因子を含むことができる。組換えPDGFは現在、骨修復および再生のためにFDA承認されている。他の増殖因子として、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)が挙げられるがこれらに限定されず、これらは全て、血管新生、コラーゲン沈着、肉芽組織形成および上皮化が関与する増殖期(新たな組織の成長)に寄与する。増殖する骨芽細胞由来の馴化培地は、上述等、増殖する線維芽細胞から同様に放出された増殖因子、ならびに骨の有機マトリクスを構成する特有のタンパク質オステオカルシンおよびオステオポンチンを含む。培養細胞によって産生される他のサイトカインおよび増殖因子として、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGFα)、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1(TGFβl)およびトランスフォーミング増殖因子ベータ-2(TGFβ2)を含むトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)、インスリン様増殖因子(IGF)、神経成長因子(NGF)ならびに肝細胞増殖因子(HGF)が挙げられるがこれらに限定されない。追加的な構成成分は、インスリン、ヒドロコルチゾン、ウロガストロン、血小板由来創傷治癒因子(PDWHF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血小板因子IV(PF IV)、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、コロニー刺激因子(CSF)、骨形成タンパク質(BMP)および増殖分化因子(GDF)等、生物学的に活性な薬剤を含むことができる。括弧内の上述の用語が、これに先行する正式名称の、本技術分野で一般的に公知かつ使用されている略語であることに留意されたい。
【0052】
インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-11(IL-11)を含む多数のインターロイキンも培養細胞によって合成され得、これもまた、本発明の特色である。ケモカインサブセットにおいて、インターロイキンは、細胞アポトーシスに影響を与える。括弧内の上述の用語が、これに先行する正式名称の、本技術分野で一般的に公知かつ使用されている略語であることに留意されたい。
【0053】
本発明の培養された薬剤を構成する他のサイトカインおよび増殖因子として、アンフィレギュリン、アンジオゲニン、アンジオポエチン-2、DTK、EGF-R、ENA-78、FAS、FGF-I、FGF-2、FGF-6、FGF-7、FGF-9、FIT-3リガンド、GCP-2、GM-CSF、GRO-アルファ、HGF、IGF-I、IGF-2、IGFBP-2、IL-lアルファ、IL-lベータ、L-IRA、IL-6R、レプチン、MCP-I、MCP-2、M-CSF、オステオプロテゲリン(osteoprotegrin)、PIGF、RANTES、幹細胞因子、TGFベータ3、TIMP-I、TIMP-2、TRAILおよびUPARが挙げられるがこれらに限定されない。
【0054】
本発明の馴化細胞培地は、骨芽細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、皮膚線維芽細胞、表皮細胞、破骨細胞、上皮細胞、内皮細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞、骨細胞、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト(oligodentrocyte)、複能性幹細胞、未分化幹細胞、多能性幹細胞、成体幹細胞、肝細胞および膵細胞またはこれらのいずれかの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない、培養細胞によって産生することができる。ある特定の実施形態では、細胞は、骨芽細胞および線維芽細胞の両方の共培養として一緒に培養される。
【0055】
本発明における使用のための追加的な細胞型は、間葉に由来し得る。ある特定の実施形態では、好まれる細胞型は、骨芽細胞、線維芽細胞、間質細胞および他の支持結合組織細胞である、または最も好まれる実施形態と同様に、ヒト骨芽細胞および線維芽細胞である。ヒト線維芽細胞細胞株は、新生児男児包皮、真皮、腱、肺、臍帯、軟骨、尿道、角膜実質、口腔粘膜および腸が挙げられるがこれらに限定されない、多数の供給源に由来し得る。ヒト細胞は、線維芽細胞、平滑筋細胞、軟骨細胞、および間葉系起源の他の結合組織細胞を含むことができるが、これらに必ずしも限定されない。ある特定の実施形態では、組織構築物の産生において使用されるマトリクス産生細胞の起源は、本発明の培養方法を用いた後にこれが似ているまたは模倣する組織型に由来し得る。例えば、多層シート構築物は、線維芽細胞と共に培養されて、生きている結合組織構築物を形成する;または骨格筋構築物に対しては筋芽細胞を用いる。2種以上の細胞型を使用して、組織構築物を製造することができる。細胞ドナーは、発生および年齢において様々であり得る。細胞は、胚、新生児または成人を含むより年長の個体のドナー組織に由来し得る。間葉系幹細胞等、胚性前駆細胞を本発明において使用し、分化して所望の組織へと発達するように誘導することができる。
【0056】
ヒト細胞が、本発明における使用に好まれるが、本方法において使用されるべき細胞は、ヒト供給源由来の細胞に限定されない。ウマ、イヌ、ブタ、ウシ、ネコ、ヤギおよびヒツジ供給源が挙げられるがこれらに限定されない、他の哺乳動物種由来の細胞を使用することができる。マウス細胞、および齧歯類供給源由来の他の細胞を使用することもできる。加えて、自発的に、化学的にまたはウイルスによりトランスフェクトされた遺伝子操作された細胞を本発明において使用することもできる。2種以上の細胞型を取り込む実施形態のため、正常および遺伝子改変またはトランスフェクトされた細胞の混合物を使用することができ、2種またはそれよりも多い種または組織供給源の細胞の混合物を使用することができる、またはその両方である。
【0057】
天然細胞産物のレベル増加または治療薬による処置を必要とする患者のための薬物送達移植片として作用する組織構築物を作製するための組織構築物の産生において、組換えまたは遺伝子操作された細胞を使用することができる。細胞は、連続的な時間量にわたり、または培養物に存在する条件により生物学的に、化学的にもしくは熱的にシグナル伝達された場合に必要に応じて、組換え細胞産物、増殖因子、ホルモン、ペプチドまたはタンパク質を産生することができる。細胞は、「正常」であるが高レベルで発現された、または改善された創傷治癒、容易にされたもしくは方向付けられた新血管新生を含む再生での使用に対して治療上有利な細胞産物を作製するように何らかの仕方で修飾されたサイトカイン、増殖因子、タンパク質または異なる種類の細胞外マトリクス構成成分を発現するように遺伝子操作することもできる。これらの手順は、本技術分野で一般に公知であり、参照により本明細書に組み込む、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、 NY(1989年)に記載されている。上述の種類の細胞は全て、サイトカインおよび/または増殖因子等の薬剤を含有する馴化培地を合成するであろう培養細胞の産生のため、本発明に従って使用することができる。一部の実施形態では、培養細胞における細胞は、正常な骨、皮膚または目的の組織において見出されるものを模倣する配置および組成で細胞を支持する足場において培養される。
【0058】
細胞の数、細胞培養培地の濃度、および細胞培養基材の体積は、細胞の増殖を最適化するために、本技術分野の周知方法に従って調節することができる。培養物は、インキュベーター内で維持して、細胞の培養のための制御された温度、湿度およびガス混合物の十分な環境条件を確実にすることもできる。好まれる条件は、約34℃~約38℃の間、より好ましくは、37±1℃であり、雰囲気は約5~10+1%CO2であり、相対湿度(Rh)約80~90%の間である。
【0059】
細胞が培地由来の構成成分を代謝し、サイトカイン、増殖因子および他のタンパク質を培地に分泌するため、細胞によって馴化されるようになった培養培地を接触させることにより、培養細胞に栄養を与えることができる。規定された培地は、化学的に規定された構成成分を含有し、未規定の動物臓器または組織抽出物、例えば、血清、下垂体抽出物、視床下部抽出物、胎盤抽出物または胚抽出物、またはフィーダー細胞によって分泌されるタンパク質および因子を含まない、細胞培養における使用のための培養培地を意味する。一部の実施形態では、細胞培養培地は、未規定の構成成分、および非ヒト供給源に由来する規定された生物学的構成成分を含まなくてよい。未規定の構成成分の添加は好まれないが、これは、馴化培地を生成するために、培養におけるいずれかの時点で開示されている方法に従って使用することができる。非ヒト由来生物学的構成成分に由来しない化学的に規定された構成成分を使用して培養されたスクリーニングされたヒト細胞を利用して本発明が実行される場合、結果としての組織構築物は、規定されたヒト骨、組織または皮膚構築物である。本発明の馴化培地を産生するための斯かる構築物の使用における利点は、外来性動物または種間ウイルス汚染および感染が、組織構築物または馴化培地に存在し得るという懸念の排除である。
【0060】
培養培地は、新鮮かつ未使用の場合、他の構成成分をさらに補充することもできる、栄養素基剤で構成される。当業者は、哺乳動物細胞培養の技術分野における適切な栄養素基剤を決定することができる。例えば、多くの市販の栄養素供給源は、本発明の実施において有用である。そのようなものとして、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM);最小必須培地(MEM);M199;RPMI1640;イスコフ改変ダルベッコ培地(EDMEM)等、無機塩、エネルギー供給源、アミノ酸およびB-ビタミンを供給する市販の栄養素供給源が挙げられる。最小必須培地(MEM)およびM199は、リン脂質前駆体および非必須アミノ酸による追加的な補充を要求する。追加的なアミノ酸、核酸、酵素補因子、リン脂質前駆体および無機塩を供給する市販のビタミン富化混合物は、Ham’s F-12、Ham’s F-10、NCTC109およびNCTC135を含む。変動する濃度にもかかわらず、全基礎培地は、他の基礎的培地構成成分と共に、グルコース、アミノ酸、ビタミンおよび無機イオンの形態で、細胞に基礎的栄養素供給源を提供する。
【0061】
基礎培地は、アミノ酸、増殖因子およびホルモン等、構成成分を補充することができる。本発明の細胞の培養のための規定された培養培地は、Parenteauに対する米国特許第5,712,163号および国際PCT公開番号WO95/31473に記載されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込む。HamおよびMcKeehan、Methods in Enzymology(1979年)58巻:44~93頁に開示されている培地等、他の培地が本技術分野で公知であり、または他の適切な化学的に規定された培地については、Bottensteinら、Methods in Enzymology(1979年)58巻:94~109頁に記載されている。一般的な代表的補足物質について後述する。
【0062】
例えば、インスリンは、グルコースおよびアミノ酸の取り込みを促進して、複数継代にわたる長期利益を提供するポリペプチドホルモンである。グルコースおよびアミノ酸を取り込む細胞の能力の最終的な枯渇ならびに細胞表現型の可能な分解が生じ得るため、インスリンまたはインスリン様増殖因子(IGF)の補充は、長期培養に必要である。インスリン補充は、連続培養にとって賢明であり、好ましくは、約0.5μg/ml~約50μg/mlの間の濃度範囲、より好ましくは、約5μg/mlで培地に提供され得る。IGF-IまたはIGF-2等、インスリン様増殖因子の補充に適切な濃度は、培養に選択される細胞型に対して当業者によって容易に決定することができる。
【0063】
トランスフェリンは、鉄輸送調節のために培地中に存在する。鉄は、血清中に見出される必須微量元素である。鉄は、その遊離型では細胞にとって毒性となり得るため、血清において、これは、好ましくは、約0.05~約50μg/mlの間の濃度範囲、より好ましくは、約5μg/mlでトランスフェリンに結合して細胞に供給され得る。
【0064】
トリヨードサイロニン(T3)は、基礎的構成成分であり、細胞代謝の速度を維持するために培地に含まれる甲状腺ホルモンの活性型である。トリヨードサイロニンは、約0~約400pMの間、より好ましくは、約2~約200pMの間の濃度範囲、最も好ましくは、約20pMで培地に補充することができる。
【0065】
リン脂質であるエタノールアミンおよびo-ホスホリル-エタノールアミンのいずれか一方または両方は、イノシトール経路および脂肪酸代謝における前駆体として添加することができる。血清中に通常見出される脂質の補充は、無血清培地において必要である。エタノールアミンおよびo-ホスホリル-エタノールアミンは、約10-6~約10-2Mの間の濃度範囲、より好ましくは、約1×10-4Mで培地に提供され得る。
【0066】
セレンは、無血清培地に添加して、血清によって通常提供されるセレンの微量元素を再補充することができる。セレンは、約10-9M~約10-7Mの濃度範囲;最も好ましくは、約5.3×10-8Mで提供され得る。
【0067】
アミノ酸L-グルタミンは、一部の栄養素基剤に存在し、その量が全く存在しないまたは不十分である場合に添加することができる。L-グルタミンは、GlutaMAX-1(商標)(Gibco BRL、Grand Island、NY)の商標で販売されているもの等、安定型で提供される場合もある。GlutaMAX-1(商標)は、L-アラニル-L-グルタミンの安定ジペプチド型であり、L-グルタミンと互換的に使用することができ、L-グルタミンに対する代替物として等モル濃度で提供される。ジペプチドは、L-グルタミンに、培地におけるL-グルタミンの有効濃度に不確実性をもたらし得る貯蔵およびインキュベーションの際の経時的な分解からの安定性を提供する。典型的には、基礎培地は、好ましくは、約1mM~約6mMの間、より好ましくは、約2mM~約5mMの間、最も好ましくは4mMのL-グルタミンまたはGlutaMAX-1(商標)を補充される。
【0068】
上皮増殖因子(EGF)およびbFGFのような本明細書に記載されている他の増殖因子等、増殖因子も、細胞スケールアップおよび播種による培養物の確立に役立つように培地に添加することができる。例えば、ネイティブ型または組換え型のEGFを使用することができる。非ヒト生物学的構成成分を含有しない皮膚等価物を製造する場合、ヒト型のネイティブまたは組換えEGFが、培地における使用に好まれる。EGFおよび/または他の増殖因子は、約1~約15ng/mLの間、より好ましくは、約5~約10ng/mLの間の濃度で提供され得る。
【0069】
細胞培養培地は典型的に、下の実施例に表記されている通りに調製される。しかし、その物理的特性と適合性の従来方法論を使用して、本発明の構成成分を調製およびアセンブルすることができることを理解されたい。利用可能性または経済上の目的のため、ある特定の構成成分を、適切なアナログまたは機能的に等価な作用薬剤で置換し、同様な結果に達することが本技術分野で周知である。天然に存在する増殖因子は、本発明の実施において使用された場合に同様の品質および結果を有する、組換えまたは合成増殖因子で置換され得る。
【0070】
本発明に従った細胞培養培地は、無菌である。無菌構成成分が購入される、また調製後に濾過等の従来手順によって無菌にされる。次の実施例を通じて適切な無菌的手順を使用した。例えば、DMEMが得られ、次いで他の構成成分が添加されて、培地が完成する。4℃で貯蔵され得る栄養素供給源を除いて、全構成成分のストック溶液を-20℃で貯蔵することができる。全溶液は、濃縮ストックとして調製することができる。
【0071】
培養物に新鮮培地を供給する様式は、培養装置へと培地をピペッティング、デカントまたはポンピングすることによって為される。培地の馴化は、十分な時間量、通常、約6時間~3日間またはそれよりも長く、培地を培養細胞と接触させて、細胞が、新鮮培地から栄養素その他を吸収または取り込み、培地へとサイトカイン、増殖因子および/またはタンパク質を分泌することを可能にすることにより行われる。培養細胞は、一定の代謝状況にあるため、ごく短い時間量が、培地の馴化に必要とされる。栄養素が新鮮培地から殆ど枯渇されるまで、構築物および培地が、交換のため互いに接触することが好まれる。
【0072】
馴化培地は、新鮮培地による馴化培地の各交換時にピペッティング、吸引、デカント、排出、サイホン(siphoning)またはポンピングすることにより、培養物から除去および収集される。馴化培地収集物は、個々の収集物として個々に使用する、または一体にプールすることができる。培養された骨、組織または皮膚構築物の発達は、各収集時点で変動する馴化プロファイルを有する馴化培地を産生する多数の事象によりマークされる。別々の収集物として、馴化培地は、特定の処置適応症または産物に望ましい可能性があるある特定の分泌因子を有するであろう。収集物を一体にプールすることにより組み合わせた場合、馴化培地は、処置または産物のためのより広い範囲の分泌因子を有するであろう。
【0073】
収集されたら、馴化培地は、収集されたままの状態で使用される、または適用もしくは使用前の貯蔵において精製もしくは容易にするために培地においてさらなる処理が行われる。馴化培地を凍結乾燥または蒸発させて、組成物の液体または水部分を除去することができる。水の除去は、減少した体積で、培養された薬剤:増殖因子、サイトカイン、タンパク質および細胞外マトリクス構成成分を含有する馴化培地の結晶性粉末形態を残す。この形態は、調製物を希釈することなく、より多い投薬量の培養された薬剤を含有する産物の調製をより容易にし、よって、その減少した体積のため、貯蔵をより容易にする。
【0074】
馴化培地は、濾過方法、特に、分子量カットオフまたは一連の分子量フィルターによる濾過方法を使用して濃縮することもできる。分子量フィルターの使用は、血清、細胞および細胞デブリに存在するある特定の大きい分子量の構成成分である、アルブミン等、培地に存在する大型の構成成分を除去するであろう。要求されるものではないが、馴化培地を前濾過して、より小さいポアのフィルターによる濾過に先立ち、このようなより大型の構成成分を除去して、いずれかその後に用いられるフィルターの目詰まりおよび濾過能力縮小を予防することが望ましい可能性がある。他の濾過および透析方法を使用して、細胞産物組成物から塩を除去することができる。例えば、タンジェンシャルフロー濾過を用いて、馴化培地における培養された薬剤の濃度を増加させることができる。加えて、タンジェンシャルフロー濾過を用いて、馴化培地における塩濃度を低下させることができる。塩の濃度を低下させるために、馴化培地の水性構成成分が除去されると、これは、水により置き換えられる。実際に、培養された薬剤から塩が有効にリンスされるように、培養された薬剤の濃縮および塩濃度の低下を少なくとも1回反復することができる。培養された薬剤をさらに精製、断片化またはコンジュゲートして、純粋なサイトカイン、タンパク質もしくは細胞外マトリクス組成物を形成することができる、または特定の組織、組織構造もしくは細胞型への方向付けられた送達に関して増強することができる。培養された薬剤の、精製されており塩が低下した態様は、これをより適合性にし、したがって、本発明の外用調製物の製剤化に好まれる。
【0075】
培養細胞によって産生されたサイトカインおよび/または増殖因子等、分泌された薬剤を含有する馴化培地は、単独で、細胞培養において有用であり得る、または本明細書にさらに記載されているポリマーマトリクスと組み合わせることができる。馴化培地を使用して、細胞増殖、ならびに活力のある新生骨および/または歯肉組織の生成、幹および前駆細胞の増殖および分化の制御、ならびに間葉系分化(間葉系細胞から骨細胞への分化等)を増加させることにより、細胞株を成長させるおよび持続することができる。馴化培地は、特定の層または方向における細胞成長を阻害または刺激するための、他の組織構築物の作製にも使用される。馴化培地の効果は、濃度依存性であると考えられ、より高い濃度は、より低い濃度よりも大きい効果を産生する。
【0076】
B.ポリマーマトリクス
上に示す通り、本発明の生体適合性組成物は、培養細胞由来の馴化細胞培地を注入されたポリマーマトリクスを含むことができる。ある特定の実施形態では、ポリマーマトリクスは、生分解性であり得る。ある特定の実施形態では、ポリマーマトリクスは、多糖を含むことができる。様々な多糖が、水相増粘剤として適することができる。斯かる多糖の例として、寒天、アガロース、Alcaligenes多糖、アルギン、アルギン酸、アカシアガム、アミロペクチン、キチン、デキストラン、カッシアガム(cassia gum)、セルロースガム、ゼラチン、ジェランガム、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ペクチン、菌核ガム、キサンタンガム、ペクチン、トレハロース(trehelose)、ゼラチン等々、天然由来の材料が挙げられる。ある特定の実施形態では、アガロースは、海藻または植物学的(biotanical)抽出物から抽出された多糖ポリマーマトリクスを含むことができる。抽出物は、総組成物の重量で約0.0001~10%、好ましくは、約0.0005~8%、より好ましくは、約0.001~5%に及ぶ範囲で、生体適合性組成物中に提供され得る。適した植物学的抽出物は、酵母発酵抽出物、Padina pavonica抽出物、Thermus thermophilus発酵抽出物、Camelina sativa種子油、Boswellia serrata抽出物、オリーブ抽出物、Arabodopsis thaliana抽出物、Acacia dealbata抽出物、Acer saccharum(サトウカエデ)、乳酸菌(acidopholus)、ショウブ、トチノキ属、アガリクス、リュウゼツラン属、キンミズヒキ属、藻類、アロエ、柑橘類、アブラナ属、シナモン、オレンジ、リンゴ、ブルーベリー、クランベリー、モモ、セイヨウナシ、レモン、ライム、エンドウマメ、海藻、カフェイン、緑茶、カモミール、ヤナギ樹皮、クワ、ポピー、およびthe CTFA Cosmetic Ingredient Handbook、第8版、2巻の1646~1660頁に表記されているものを含む、花、果実、野菜等々、植物(草本、根、花、果実、種子)由来の抽出物を含む。さらなる具体例として、Glycyrrhiza glabra、Salix nigra、Macrocystis pyrifera、Pyrus malus、Saxifraga sarmentosa、Vitis vinifera、Morus nigra、Scutellaria baicalensis、Anthemis nobilis、Salvia sclarea、Rosmarinus officinalis、Citrus medica limonum、Panax ginsengおよびこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0077】
ある特定の実施形態では、生体適合性組成物は、活性構成成分のうち1種または複数の局所的制御放出を提供するように製剤化される。局所的投与に適したいずれかの薬学的に許容される担体ビヒクルまたは製剤を用いることができる。本技術分野で公知の緩徐放出製剤は、コーティングされたペレット、ポリマー製剤(小胞またはリポソーム等)および微小粒子(例えば、ミクロスフェアまたはマイクロカプセル)を限定することなく含む。
【0078】
多種多様な生分解性材料を使用して、制御放出を提供することができる。制御放出材料は、生体適合性であるべきであり、天然組織プロセスにより適した時間量で(例えば、1年間未満、6ヶ月間未満および1ヶ月間未満、1週間未満、1日間未満または数時間未満)投与の部位から材料が除去されるように、安全かつ薬学的に許容される様式でin situにて分解、溶解または吸収されるべきである。制御放出担体は、いかなる望まれない局所的組織反応も引き起こすべきではなく、全身性または局所的毒性を誘導するべきでもない。
【0079】
本発明の生体適合性組成物における使用のための適した制御放出生分解性ポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、多糖、ポリ-ホスファゼン、タンパク質性ポリマーおよびその可溶性誘導体(ゲル化生分解性合成ポリペプチド、アルキル化コラーゲンおよびアルキル化エラスチン等)、多糖の可溶性誘導体、ポリペプチド、ポリエステルならびにポリオルトエステルを含むことができる。
【0080】
ある特定の実施形態では、細胞外マトリクスタンパク質を使用して、生体適合性足場を生成することができる。例えば、コラーゲンは、生分解性足場としての使用のための一般的な組成物である。コラーゲンは、生体適合性組成物における使用のための最も好まれる細胞外マトリクス組成物であるが、コラーゲンII、III、IV、V、VI5 VII、VIII5 IX、X5 XI、XII5 XIII、XTV、XV、XVI、XVII、XVIII、XIX5型等、コラーゲンファミリー由来の線維性および非線維性コラーゲンの両方の他のコラーゲン等、他の細胞外マトリクス、ならびにエラスチン、デコリンもしくはバイグリカン等のプロテオグリカン、またはテネイシン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン、トロンボスポンジンI等の糖タンパク質、およびヒアルロン酸(HA)等のグリコサミノグリカン(GAG)を挙げることができるがこれらに限定されない、他のマトリクスタンパク質を使用することもできる。真皮マトリクスは、組成および構造が変動し得る。コラーゲンスポンジ、生体適合性、生体リモデリング可能な(bioremodelable)、脱細胞(decellularized)真皮またはコラーゲンゲル。真皮細胞に細胞外マトリクス構成成分を提供するよりもむしろ、これを生分解性メッシュ材(ナイロンまたはポリグラクチン(polygalactin)(PGA)等)上で培養して、培養支持体を提供し、細胞およびそのマトリクスが支持体を覆う(envelope)まで培養して細胞外マトリクスを産生することができる。ある特定の実施形態では、参照により本明細書に組み込むBellに対する米国特許第4,485,096号に記載されているもの等、コラーゲンゲルを使用することができる。収縮されたコラーゲンゲルは、多孔性膜の上にあるバルクの無細胞コラーゲン層の上に配置して、膜にゲルを繋留し、ゲルの過剰な放射状収縮を予防することができる。バルクの無細胞コラーゲン層を取り込むための方法は、Kempらに対する米国特許第5,536,656号、Wilkins, L.M.ら、Biotechnology and Bioengineering(1994年)43巻:747~756頁、ならびにParenteau, N.L.、Skin equivalents.:T. LeighおよびF. Watt(編)、The Keratinocyte Handbook Cambridge University Press, London(1994年)内に記載されており、これらの開示を参照により本明細書に組み込む。組織等価物および無細胞の水分補給されたコラーゲンゲルは、ラット尾の腱、仔ウシの皮のコラーゲンおよび仔ウシの伸筋腱を含む皮膚および腱に由来するコラーゲンを使用して調製することができる。コラーゲンの他の供給源も適するであろう。仔ウシ総指伸筋腱に由来するコラーゲン組成物、および斯かるコラーゲン組成物を得る方法は、Kempに対する米国特許第5,106,949号に開示されており、その開示を参照により本明細書に組み込む。
【0081】
ある特定の実施形態では、ポリマーマトリクスは、アガロースまたはアガロース様材料を含むことができる。アガロースは、いくつかの利点を供する。第一に、これは、全てが天然のものであり、一般に、海藻に由来する。比較的単純な反復二糖からなり、アガロースは、化学的および熱的安定性を供し、これが、結合またはその構造の変更の観点から上述とのいかなる相互作用も最小化し、これにより、その生物活性を保存しつつ、室温でゲル様コンシステンシーを維持し、増殖因子およびタンパク質の物理的貯蔵所として機能することを可能にする。これは、歯周再生および骨成長の生物プロセスに関与する増殖因子およびタンパク質の即時のかつ持続した受動的分泌の両方を可能にする。経時的に、マトリクスは、溶解し、吸収を起こすであろう。
【0082】
第二に、水相から半固体ゼラチン様相へと遷移する場合、アガロースは、予め注入された増殖因子およびサイトカインが、アガロースから受動的に拡散して、細胞増殖を刺激することを可能にし、また、代謝の副産物を、マトリクスの一方の側面からもう一方の側面へと通過させて修復および成長を増強することにより、細胞が、そのパラクリン様効果を発揮することを可能にするチャネルのネットワークを形成する三次元メッシュネットワークを形成する。
【0083】
ある特定の実施形態では、低融点アガロースは、その化学的および熱的安定性ならびにタンパク質の相互作用(結合または変更)に関するその不活性のため、好まれるマトリクスである。ゼラチン様状況へと冷却されると、アガロースゲルは、歯周および骨再生に関係する増殖因子の即時かつ連続的な放出の両方をもたらす、それぞれの増殖因子のための物理的貯蔵所を表す。加えて、アガロースポリマー鎖は、細胞レベルで増殖および分化に要求される細胞間の相互作用のパラクリン様効果を増大する、増殖因子および他の天然に存在するサイトカインの受動的拡散を可能にし、歯周成長および新生骨形態形成として表される表現型変化をもたらす、チャネルの三次元メッシュネットワークを形成する。
【0084】
ある特定の実施形態では、アガロースは、低融点アガロースまたはさらには超低融点アガロース(Lonza製SeaPrep(商標)アガロース)であり得る。用語「低融点アガロース」は一般に、65℃前後またはそれよりも高い温度で流体に融解するであろうアガロースを指す(例えば、UltraPure(商標)低融点アガロース、ThermoFisher Scientificを参照)。用語「超低融点アガロース」は一般に、40~50℃前後またはそれよりも高い温度で流体に融解するであろうアガロースを指す(例えば、アガロースA5030、Sigma-AldrichおよびSeaPrep(登録商標)アガロース、Lonzaを参照)。斯かるアガロース組成物は、約0.8%w:v~約3.0%w:v等、0.8%重量対体積(w:v)、約0.9%w:v、約1.0%w:v、約1.1%w:v、約1.2%w:v、約1.3%w:v、約1.4%w:v、約1.5%w:v、約1.6%w:v、約1.7%w:v、約1.8%w:v、約1.9%w:v、約2.0%w:v、約2.1%w:v、約2.2%w:v、約2.3%w:v、約2.4%w:v、約2.5%w:v、約2.6%w:v、約2.7%w:v、約2.8%w:v、約2.9%w:v、約3.0%w:v、約3.1%w:v、約3.2%w:v、約3.3%w:v、約3.4%w:v、約3.5%w:vまたはその間のいずれかの範囲(両端を含む)の濃度であり得る。例えば、一実施形態では、アガロースは、最初に、温かいゼラチン様状況へと粉末形態を十分に溶解するために、最終1%w:v濃度の作製に要求される総体積の1/2である体積へと溶解することができる。混合物を37℃未満に冷却した後に、馴化線維芽細胞および骨芽細胞培地の50:50混合物等、残っている1/2体積の馴化培養培地を添加し、完全に混合して、全構成成分を十分に取り込むことができる。馴化線維芽細胞/骨芽細胞培地に溶解された1%w:v超低融点アガロースのマトリクスは、さらに使用するまで4℃に冷却して、アガロースの重合を助けることができる。
【0085】
生体適合性足場の薬物動態放出プロファイルは、一次、ゼロ次、二相または多相となって、所望の期間にわたる所望の治療効果を提供することができる。所望の放出プロファイルは、組成物の構成成分(複数可)の異なる放出速度および/または異なるパーセント負荷を有するポリマーの混合物を使用することにより達成することができる。コーティングされたペレット、リポソーム、ミクロスフェアおよびマイクロカプセルの製造のための方法は、本技術分野で周知である。
【0086】
本発明の生体適合性組成物が形成されたら、馴化細胞培地は、総生体適合性組成物の重量、体積、重量対体積および/または重量対重量の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれよりも多くてもよい。
【0087】
III.生体適合性組成物の使用および方法
生体適合性組成物は、被験体において骨を成長させるまたは骨吸収を阻害するための方法であって、被験体における骨成長および/または骨吸収阻害を必要とする部位に、有効量の本発明の生体適合性組成物を投与するステップを含む方法において使用することができる。斯かる被験体は、骨折、骨欠乏、転移性骨疾患、変形性関節症、骨粗鬆症および/または溶骨性骨疾患を有することができる。同様に、生体適合性組成物は、被験体における歯周状態を処置する方法であって、被験体におけるa)歯肉および/または骨成長、および/またはb)歯肉浸食および/または骨吸収阻害を必要とする歯周部位に、有効量の本発明の生体適合性組成物を投与するステップを含む方法において使用することができる。本方法により処置することができる有用な歯周状態として、歯周疾患、歯肉炎症、齲歯、歯肉疾患、歯肉炎および歯周炎が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、生体適合性組成物は、外用に適用される歯周処置として使用することができる。記載されている方法に従って本発明の生体適合性組成物を使用する場合、骨質量は、維持もしくは増加され得る、骨密度は、維持もしくは増加され得る、歯肉組織は、維持もしくは増加され得る、またはこれらのいずれかの組み合わせが生じる。
【0088】
本発明の方法は一般に、被験体に、有効量の生体適合性組成物を投与するステップを含む。非外科的、非侵襲的および安全である本発明の方法は、歯周炎、歯肉炎、歯肉疾患および歯周疾患等、変形性関節症、転移性骨疾患、溶骨性骨疾患および歯科関連の障害が挙げられるがこれらに限定されない、骨喪失、骨分解、骨悪化または骨変性に関連する病状または状態の処置および/または予防に使用することができる。
【0089】
本明細書に提供される生体適合性組成物は、増殖因子を使用して歯肉および骨再生に関する回復時間を短縮し、全体的患者結果を改善するための治療代替/補助を医師に供する。増殖する線維芽細胞および骨芽細胞から放出された増殖因子の不均質な組成は、それぞれ歯肉再生に関与する線維芽細胞増殖および分化ならびに骨再生に関与する骨芽細胞増殖/成熟を刺激するための増殖因子の完全供給源を提供する。
【0090】
本発明の方法はまた、少なくとも一部には、例えば、歯周炎または歯周炎に関連する疾患を含む、口腔骨形成増加から利益を得るであろう口腔状態の処置または予防に関する。生体適合性組成物は、口腔骨形成を増加させ、これにより、歯周炎または歯周炎に関連する疾患等の口腔骨形成増加から利益を得るであろう口腔状態を処置または予防する方法において使用することができる。斯かる方法は、生体適合性組成物を、口腔骨形成増加を必要とする口腔表面に投与するステップを伴う。経口投与は、生体適合性組成物およびその中に含有される活性成分を、唾液腺、唾液、歯ぐき、歯苔、歯牙、舌、頬組織その他が挙げられるがこれらに限定されない、口腔の表面に適用することによる等、口腔への適用のために標的化される。経口投与された薬剤は、単独で、または薬学的に許容される担体および/または他の活性成分と併せて、口腔骨形成薬剤増加から利益を得るであろう抗口腔障害等のため、経口組成物の前、その後またはそれと同時に投与することができる。本発明によって、コラーゲンおよび血管等、軟部組織、上皮および結合組織を含む他の口腔組織の再生も考慮される。
【0091】
一般に、本発明の生体適合性組成物は、骨の空洞、歯周ポケット、創傷床その他等、部位に直接的にまたは間接的に適用される。一部の実施形態では、生体適合性組成物は、創傷被覆に取り込まれ得る。生体適合性組成物は、自家移植片(患者から除去され、同じ患者の他の箇所に再適用された皮膚)または歯肉皮弁等、移植片による補助として使用することができる。生体適合性組成物またはこれを含む医薬調製物は、多数の周知手段のいずれかを使用して、物理的ポケットまたは外科的閉鎖等、目的の接触区域に物理的に適用される。例えば、縫合糸は、外科的部位に取り込むための生体適合性組成物により導入することができる。一部の実施形態では、縫合糸は、吸収性糸、非吸収性糸、天然糸、合成糸、モノフィラメント糸またはマルチフィラメント糸であり得る。縫合糸は、縫合が汚染されることを予防するための殺菌薬物質、抗凝固薬、または有害免疫反応を予防するための自家細胞に含浸させることもできる。
【0092】
別の実施形態では、生体適合性組成物を含有する医薬調製物は、生体接着剤を使用して、接触表面と生体適合性組成物との物理的接触を維持することができる。このような生体適合性接着剤は一般に、2種のカテゴリーに分けられる:血漿タンパク質から合成される生物学的接着剤;ならびに合成ポリマー、主に、シアノアクリレートおよびその誘導体。
【0093】
上述の通り、創傷被覆、外科的閉鎖、ステープリング、接着ストリップ、生体接着剤、歯肉皮弁および他の物理的拘束手段を使用して、生体適合性組成物を接触表面に固定することができる。
【0094】
一般に、本発明の治療有効量の生体適合性組成物またはこれを含む医薬組成物の投与は、個体の病状、年齢、性別および体重、ならびに個体における所望の応答を誘発するペプチドの能力等の因子に応じて変動し得る。投薬量レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整することができる。例えば、いくつかの分割用量は、毎日投与することができる、または用量は、治療状況の緊急事態によって示される通りに、比例して低下させることができる。
【0095】
例えば、本発明の一部の実施形態の実施において、本発明の安全な有効量の生体適合性組成物は、好ましくは、少なくとも1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間もしくはそれよりも長く、または少なくとも約10分間~少なくとも約1時間の間、少なくとも約1分間~少なくとも約14日間またはそれよりも長くの間、その他等、その間のいずれかの範囲において、上述の口腔の疾患または状態の処置または予防のため、コラーゲンおよび血管等、骨、骨表面、口腔骨、口腔骨表面、口腔の粘膜組織、口腔の歯ぐき組織、舌、唾液腺、唾液および/または、歯牙、軟部組織、上皮ならびに結合組織の表面に外用に適用され得る。一般に、生体適合性組成物は、歯肉皮弁または骨欠損等の物理的ポケット内に外用に投与され、生体適合性ポリマーマトリクスが分解するまたはさもなければ吸収されるまで作用させる。投与方法は、1日1~約5回、好ましくは、1~3回再適用または反復することができる。それに代えてまたはそれに加えて、経口送達は、1日1回~数回を1、2、3、4、5、6もしくは7日間;または1、2、3もしくは4週間;または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12ヶ月間またはそれよりも長く(またはその間のいずれかの範囲)にわたって等、1日1回~数回の頻度で最大12ヶ月間行うことができる。典型的には、組成物の有効量は、約0.5~約10グラム、好ましくは、約1グラムである。
【0096】
ある特定の実施形態では、予防的薬剤(例えば、生体適合性組成物)の投与は、疾患または障害が予防されるように、またはそれに代えて、その進行が遅延されるように、歯周疾患、変形性関節症、転移性骨疾患および溶骨性骨疾患が挙げられるがこれらに限定されない、歯肉喪失、歯肉変性、骨喪失、骨分解、骨悪化、骨変性その他に特徴的な症状の顕在化に先立ち行われ得る。
【0097】
本発明の方法を使用して、骨喪失/吸収を予防、阻害または低下させることができる。それに代えてまたはその上、本発明の方法を使用して、骨成長を増加、増強、改善または促進することができる。例えば、ある特定の方法を使用して、骨分解、骨変性および/または骨悪化を処置、予防または遅延する;骨質量および/または骨密度を増加または維持/安定化する;および/または骨喪失、骨分解、骨変性および/または骨悪化を逆転させることができる。同じことが、歯肉および歯周骨を含む歯周組織および構造に適用される。
【0098】
本発明の方法を使用して、口腔骨形成を増加させることができ、これは、斯かる疾患もしくは障害の発病を遅延させることもしくは予防すること、または斯かる疾患もしくは障害に関連する状態の進行、増悪、悪化もしくは重症度を逆転させる、軽減する、好転させる、阻害する、減速するもしくは止めることを包含する。
【0099】
骨形成増加、骨成長増強および/または歯肉/骨喪失の低下から利益を得るであろう骨および/または歯周障害の徴候または症状のいずれか1種または全種が、有益な様式で変更され、疾患の他の臨床的に認められた症状またはマーカーが、薬剤による処置後に例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれよりも多く改善またはさらには好転される場合、本明細書に記載されている生体適合性組成物による処置は、「有効な処置」であると考慮される。有効性は、入院または医学的もしくは歯科的介入の必要によって評価される通り、個体が悪化しないことによって測定することもできる(すなわち、疾患の進行が停止されるまたは少なくとも遅くなる)。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知である、および/または本明細書に記載されている。処置は、個体または動物(一部の非限定例は、ヒトまたは哺乳動物を含む)における疾患のいずれかの処置を含み、(1)疾患の阻害、例えば、骨および/または歯肉喪失の抑止;または(2)疾患の緩和、例えば、骨および/または歯肉成長の増加;ならびに(3)骨および/または歯周障害による合併症の発症の見込みの予防または低下を含む。
【0100】
一部の実施形態では、生体適合性組成物は、歯周皮弁外科手術に対する補助として提供される。例えば、皮弁が、口腔骨形成および/または歯肉再生の誘導、骨および/または歯肉成長の増強、および/または骨および/または歯肉喪失の予防に持続した外科手術後効果を有することが本明細書で決定されたことを考慮して、本発明の生体適合性組成物は、外科的創傷に適用することができる。歯周皮弁外科手術は一般的に、病変区域を郭清し、歯牙から沈着物を除去するために、有意な骨喪失を示す慢性歯周病変を処置するために行われる。一般に、患者が、スケーリングおよびルートプレーニング手順、および/または抗生物質処置に対して応答性でない場合、歯肉切除術または歯周皮弁外科手術等、歯周外科手術が要求されることが多い。斯かる処置方法は、本技術分野で周知である。例えば、歯肉切除術において、歯科医は、感染したポケットのサイズを低下させるために、不健康な歯肉組織を再形成する。ポケットサイズの低下は、患者に、慣例的なブラッシングおよびフロスかけによってポケットを衛生学的に維持させ、これにより、細菌成長にとって好ましい環境を排除する。歯周皮弁外科手術は、スケーリングおよびルートプレーニング手順が不成功な場合、特に、骨の喪失または組織脱離がある場合にも行われる。この手順において、歯肉に切開が為され、周囲の歯槽骨が形態修正されて、感染した区域の治癒を助ける。多くの場合、外科的処置は、本明細書に記載されている生体適合性組成物を使用した補助方法が特に有用となるような、重症歯周疾患に起因する破壊された骨およびセメント質の再成長または置き換えの刺激において不十分である。上述の通り、しかし、本発明の生体適合性組成物は、歯周皮弁外科手術に関連するか否かにかかわらず、それを必要とするいずれかの骨または歯周構造に適用または投与することができる。
【0101】
骨および/または歯周障害を処置するための本明細書に記載されているいずれかの経口組成物の有効性は、処置を受ける被験体から得られる2種またはそれよりも多い試料を比較することによりモニタリングすることができる。一般に、治療法開始に先立ち被験体から第1の試料を得て、処置の間に1種または複数の試料を得ることが好ましい。斯かる使用において、治療法に先立つ口腔障害を有する被験体由来の細胞の発現のベースラインが決定され、次いで細胞の発現のベースライン状況の変化、または口腔骨形成増加、骨成長増強および/または骨喪失の低下から利益を得るであろう口腔障害を有する被験体からの骨成長の検出が、治療法の経過においてモニタリングされる。それに代えて、処置前ベースライン試料の必要なしに、処置の間に得られる2種またはそれよりも多い逐次的な試料を使用することができる。
【0102】
治療法を受ける被験体における1種または複数の骨および/または歯周障害(複数可)が好転されつつあるか否かは、本技術分野の周知アッセイに従って決定することができる。例えば、次の指標をモニタリングすることができる:1)歯肉/骨成長および/または歯肉/骨密度の増加;2)歯肉/骨喪失の減少、および/または歯肉/骨密度喪失の逆転;3)歯牙が動くことの減少;4)アルカリホスファターゼ(ALP)、コラーゲンI型、オステオカルシン、オステオポンチン、Cbfa1/Runx2、gsc、Dlx1、DlxS、Msx1、Cart1、Hoxa1、Hoxa2、Hoxa3、Hoxb1、rae28、Twist、AP-2、Mf1、Pax1、Pax3、Pax9、TBX3、TBX4、TBXSおよびブラキュリ等、歯肉、骨芽細胞または骨特異的遺伝子の増加(遺伝子発現、酵素活性、免疫組織化学その他によって決定される;Olsenら、Annu. Rev. Cell. Dev. Biol.(2000年)16巻:191頁);5)歯周ポケットサイズの減少;6)歯肉アタッチメントレベルの増加;7)歯牙喪失の減少;8)歯周炎症の減少;9)歯周疾患進行ステージの低下;ならびにこれらの組み合わせ。
【0103】
本発明の方法において、生体適合性組成物は、予防的作用のために骨喪失に関連する病態生理学的状態の発病に先立ち投与することができる、または治療的作用のために状態の開始後に投与することができる。
【0104】
一般に、本発明の方法を使用して処置することができる脊椎動物被験体(ヒトまたは他の哺乳動物)は、骨喪失に関連する疾患もしくは状態を患う、または骨喪失に関連する疾患もしくは状態に対して感受性である(例えば、斯かる疾患もしくは状態の高いもしくはより高い発症リスクを示す、または骨喪失を引き起こすもしくはこれをもたらすもしくはこれに関連することが公知である病状もしくは状態と診断されている)。
【0105】
発明に係る方法を使用して処置および/または予防することができる、骨喪失に関連する病状および状態は、例えば、骨質量の喪失および/または骨密度の喪失をもたらす、骨分解、骨悪化または骨変性によって特徴付けられる、これを伴う、これに関連する、これをもたらす、またはこれを誘導する、いずれかの状態を含む。斯かる状態の例として、歯周炎等の歯周疾患;骨折または骨欠乏;変形性関節症;転移性骨疾患;および溶骨性骨疾患が挙げられるがこれらに限定されない。斯かる状態の他の例は、がんおよび腫瘍(骨肉腫および多発性骨髄腫等)、腎疾患(急性腎不全、慢性腎不全、腎骨ジストロフィー(renal bone dystrophy)および腎再灌流傷害を含む)、腎臓疾患、ならびに早発性卵巣機能不全を限定することなく含む。よって、本発明の方法は、骨喪失の予防、骨欠損における填塞、骨折、移植片および骨-プロテーゼの迅速な癒合の刺激、ならびに骨粗鬆症の骨の強化の促進に使用することができる。
【0106】
本発明のある特定の方法において、生体適合性組成物は、a)歯肉および/または骨成長を促進する、および/またはb)歯肉浸食および/または骨吸収を阻害する、少なくとも1種の治療剤と組み合わせて投与される。例えば、斯かる薬剤は、骨形成因子、吸収抑制剤、骨原性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、成長ホルモン、エストロゲン、ビスホスホネート(biphosphonate)、スタチン、分化因子またはこれらの組み合わせであり得る。
【0107】
本発明の一部の方法において、生体適合性組成物は、1種または複数の追加的な治療剤と組み合わせて投与される。追加的な治療剤の例として、鎮痛薬、麻酔薬、抗菌剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗生物質、抗炎症剤、抗酸化剤、消毒剤、免疫賦活剤およびこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、斯かる薬剤は、抗菌化合物および/または非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)であり得る。ある特定の実施形態では、追加的な治療剤(単数または複数)は、選択的COX-2阻害剤、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブおよび/またはバルデコキシブ等、COX-2阻害剤である。斯かる実施形態では、生体適合性組成物および他の薬剤は、逐次または同時に投与することができる。
【0108】
それに代えてまたはその上、生体適合性組成物は、医学的手順と組み合わせて(すなわち、これに先立ち、これに付随して、および/またはこれに続いて)投与することができる。例えば、医学的手順は、歯周疾患を患う被験体における、歯周ポケットを排除するための、および/または骨を形態修正するための、または歯牙表面の選択的再形成のための外科的介入であり得る。それに代えて、医学的手順は、骨移植、外科的腫瘍除去その他であり得る。
【0109】
斯かる追加的な薬剤は、身体内に天然に存在するおよび/または骨成長/形成を起こす部位において天然に分泌され、骨形成プロセスの1種または複数のステップにおける役割を果たす薬剤であり得る。当業者には明らかとなるであろうが、これらの薬剤または生体分子のバリアント、合成アナログ、誘導体および活性部分は、ネイティブ生体分子と実質的に同じ種類の特性/活性を示す限りにおいて、発明に係る組成物において代替的に使用することができる。斯かるバリアント、合成アナログ、誘導体または活性部分は、用語「治療用生体分子」の範囲内にあると意図される。
【0110】
治療剤または生体分子は、哺乳動物組織から抽出し、粗製または精製後のいずれかで本発明において使用することができる。それに代えて、これは、化学的に、または合成遺伝子もしくは部位特異的突然変異誘発によって変更された遺伝子の発現による等、従来の遺伝子工学技法によって調製することができる。
【0111】
骨質量または骨密度を増加させる治療剤または生体分子として、増殖因子(IGF-1、IGF-2、マクロファージ増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、軟骨由来形態形成タンパク質(CDMP-1、CDMP-2、CDMP-3)および結合組織活性化ペプチド(CTAP)等)、ミネラル(カルシウム、アルミニウム、ストロンチウムおよびフッ化物等)、ビタミン(ビタミンD3等)、ホルモン(副甲状腺ホルモン(PTH)および副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)等);プロスタグランジン(PDG1、PDG2、PGE2、PGE1およびPGF2等);15-リポキシゲナーゼの阻害剤;デキサメタゾン;スタチン;および骨形態形成タンパク質(BMP-2、BMP-4およびBMP-7等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0112】
ある特定の実施形態では、治療剤または生体分子は、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)であり得る。TGF-βは、広い範囲の生物学的プロセスに関係付けられる細胞外ポリペプチドであり(J. Massague、Annu. Rev. Cell. Biol.(19900 6巻:597~641頁)、胚発生、成人組織修復および免疫抑制における鍵となる事象における中心的役割を果たす(M. B. Spornら、Cell. Biol.(1992年)119巻:1017~1021頁;S. W. Wahl、J. Clin. Immunol.(1992年)12巻:61~74頁;D. M. Kingsley、Genes Dev.(1994年)8巻:133~146頁)。TGF-βは、骨芽細胞の増殖および分化を惹起することが公知である(M. Centrellaら、J. Bone Join. Surg.(1991年)73巻:1418~1428頁;T. A. Mustoeら、Science、1987年、237巻:1333~1336頁;L. S. Beckら、J. Bone Miner. Res.(1991年)6巻:961~968頁)。TGF-βはまた、骨形成の初期相において重要な役割を果たすことが公知である(S. Dieudonneら、J. Cell. Biochem.(1999年)76巻:231~243頁)。発明に係る組成物において使用されるべきTGF-βは、組換え細胞培養物から産生することができる。それに代えて、TGF-βは、いずれか適した方法を使用して、血小板または他のいずれかの哺乳動物組織に由来し得る。好ましくは、TGF-βは、ヒト組織に由来する。しかし、TGF-βは、種特異的ではないため、それに代えて、骨またはブタ供給源等、動物供給源に由来し得る。ある特定の事例では、TGF-βは、好ましくは、例えば、逐次ゲル濾過、カチオン交換クロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーを使用して、本質的に均一になるまで精製される。
【0113】
他の実施形態では、治療剤または生体分子は、骨形態形成タンパク質(BMP)である。BMPは、軟骨細胞および骨形成細胞へと分化されるように多能性細胞を刺激すること、ならびに骨再生において重要役割を果たすことが報告された骨形成タンパク質である(M. R. Urist、Science(1965年)150巻:893~899頁;M. R. Uristら、J. Dent. Res.(1971年)50巻:1392~1406頁;J. M. Wozney、Mol. Reprod. Dev.(1992年)32巻:160~167頁;J. M. Wozneyら、Science(1988年)242巻:1528~1534頁;I. Oneら、Craniofac. Surg.(1996年)7巻:418~425頁)。本発明において使用することができるBMPとして、BMP-1、BMP-2.アルファ.、BMP-2β、BMP-3β、MP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8β、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14およびBMP-15が挙げられるがこれらに限定されない。
【0114】
また他の実施形態では、組成物は、組成物の適用部位内のおよびその周囲の可溶性濃度の溶解されたカルシウム(Ca2+)およびリン酸(PO4
-)を局所的に増強するための、カルシウムおよびリン酸の供給源を含む。カルシウム供給源およびリン酸供給源は、同じ材料であり得る、または異なる材料であり得る。本発明における使用のためのカルシウムの適した供給源は、リン酸カルシウム塩(例えば、第一リン酸カルシウム、リン酸カルシウム二水和物(dicalとしても公知)およびピロリン酸カルシウム)またはクエン酸カルシウム塩等、いずれかの酸性カルシウム塩を含む。本発明における使用のためのリン酸の適した供給源は、リン酸カルシウム塩(例えば、酸性リン酸カルシウム塩)およびリン酸ナトリウム塩等、いずれかのリン酸塩を含む。酸性リン酸カルシウム塩の例として、リン酸水素塩二水和物、第一リン酸カルシウムおよびピロリン酸カルシウムが挙げられる。
【0115】
さらに他の実施形態では、治療剤または生体分子は、スタチンである。用語「スタチン」および「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤」は、本明細書で互換的に使用されており、酵素3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A(HMG-CoA)レダクターゼを阻害する化合物を指す。HMG-CoAレダクターゼは、細胞コレステロール生合成に関与する主要な律速酵素である。スタチンは、新生骨を産生し、骨芽細胞分化を増強する細胞である骨芽細胞の産生を増強する(E. Harrisら、Mol. Cell. Diff.(1995年)3巻:137~147頁;G. Mundyら、Science(1999年)286巻:19464949頁)。特に、スタチンは、全身性に(systematically)または骨折部位においてBMP産生を促進することが示された(米国特許第6,022,887号;同第6,080,779号;および同第6,376,476号)。本発明における使用に適したスタチンの例として、ロバスタチン、プラバスタチン、ベロスタチン(velostatin)、シンバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ダルバスタチン、フルインドスタチン(fluindostatin)、アトルバスタチン、これらのプロドラッグ、またはこれらの生理学的に許容される塩が挙げられるがこれらに限定されない。
【0116】
本発明において使用することができる骨喪失/吸収を予防する薬剤として、プロゲスチン、エストロゲン、エストロゲン/プロゲスチン組み合わせ、エストロン、エストリオール、17α-または17β-エチニルエストラジオール、SB242784、ポリホスホネートおよびビスホスホネートが挙げられるがこれらに限定されない。市販のビスホスホネートは、エチドロネート、クロドロネート、チルドロネート、アレンドロネート、パミドロネートおよびイバンドロネートを含む。
【0117】
一部の実施形態では、外科手術または傷害後に、組織における血管新生を促進する薬剤および/または粘膜表面の処置において有用な薬剤が有用である。
【0118】
本発明における使用に適した鎮痛薬は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含む。NSAIDは、鎮痛、解熱および抗炎症活性を有する。これは、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害を介してプロスタグランジンの合成を干渉することにより、末梢性に作用してその鎮痛効果を提供する。アスピリンおよび他のサリチル酸塩を含む、多くの異なる種類のNSAIDが存在する。代表例として、イブプロフェン、ナプロキセン、スリンダク、ジクロフェナク、ピロキシカム、ケトプロフェン、ジフルニサル、ナブメトン、エトドラク、オキサプロジンおよびインドメタシンが挙げられるがこれらに限定されない。より強力なNSAIDのうちいくつかは、身体の有痛性区域への局所的適用のための外用製品へと開発されている。
【0119】
キシロカイン、リドカインまたはベンゾカイン(または後述等の他の薬物)等、麻酔薬は、本発明の鎮痛組成物に添加して、鎮痛剤が十分に有効になるまで、即時の、ただし短期の除痛を提供することができる。本発明の実施における使用に適した麻酔薬は、ナトリウムチャネル遮断薬を含む。ナトリウムチャネル遮断薬は、ナトリウムイオンNa+に対する興奮性膜の透過性において大きい一過性増加を減少または予防することにより、神経インパルスの生成および伝導を予防する。
【0120】
ナトリウムチャネル遮断薬の例として、アムブカイン(ambucaine)、アモラノン(amolanone)、アミルカイン(amylcaine)、ベノキシネート、ベンゾカイン、ベトキシカイン(betoxycaine)、ビフェナミン(biphenamine)、ブピバカイン、ブタカイン(butacaine)、ブタムベン、ブタニリカイン、ブテサミン(butethamine)、ブトキシカイン(butoxycaine)、カルチカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、クロロメチカイン(cyclomethycaine)、ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン(dimethocaine)、ジペロドン(diperodon)、ジクロニン、エコゴニジン(ecogonidine)、エコゴニン(ecogonine)、エチドカイン、ユープロシン(euprocin)、フェナルコミン(fenalcomine)、フォルモカイン(formocaine)、ヘキシルカイン、ヒドロキシテテラカイン(hydroxyteteracaine)、p-アミノ安息香酸イソブチル、リューシノカイン(leucinocaine)、レボキサドロール(levoxadrol)、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、塩化メチル、ミルテカイン(myrtecaine)、ナエパイン(naepaine)、オクタカイン(octacaine)、オルトカイン(orthocaine)、オキセサゼイン、パレントキシカイン(parenthoxycaine)、フェナカイン(phenacaine)、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン(piridocaine)、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン(propanocaine)、プロパラカイン、プロピポカイン(propipocaine)、プロポキシカイン、シュードコカイン、ピロカイン(pyrrocaine)、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン(zolamine)、およびこれらの活性誘導体、プロドラッグ、アナログ、薬学的に許容される塩または混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0121】
本発明の生体適合性組成物は、抗感染活性を有する化合物、分子または薬物を包含する抗感染剤(すなわち、感染リスクを減少させる、感染を予防する、または感染を阻害、抑制、戦うもしくは他の仕方で処置することができる)と組み合わせる、またはこれらと併せて使用することもできる。ある特定の実施形態では、このような化合物、分子または薬物は、外用に適用されたときに抗感染活性を有する。本発明における使用に適した抗感染剤として、消毒薬、抗菌剤、抗生物質、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原生動物剤、免疫賦活剤およびこれらのいずれかの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0122】
抗ウイルス剤は、組成物中に存在して、ある部位におけるウイルス感染を予防するおよび/またはウイルス力価を低下させることができる。適した抗ウイルス剤は、RNA合成阻害剤、タンパク質合成阻害剤、免疫賦活剤およびプロテアーゼ阻害剤を含む。抗ウイルス剤は、例えば、アシクロビル、塩酸アマンタジン、ホスカルネットナトリウム、ガネイクロビル(ganeiclovir)ナトリウム、フェノール、リバビリン、ビダラビンおよびジドブジンからなる群より選択することができる。
【0123】
抗真菌剤は、多種多様な治療剤から選択することができる。例えば、乳酸(すなわち、2-ヒドロキシプロパン酸)は、病原体の成長を阻害することが公知の抗真菌剤である。ソルビン酸(すなわち、2,4-ヘキサジエン酸)は、Candida albicansを死滅させる天然の抗真菌剤である。他の抗真菌剤として、アンホテリシンB、シクロピロクス、クロトリマゾール、エニルコナゾール(Enilconazole)、エコナゾール、フルコナゾール、グリセオフルビン、ハログロピン(Halogropin)、イントロコナゾール(Introconazole)、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナフチフィン、ニスタチン、オキシコナゾール、スルコナゾール、チアベンダゾール、テルビナフィン、トルナフテート、ウンデシレン酸、マフェニド、スルファジアジン銀およびカルボール-フクシン(Fushsin)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0124】
抗生物質および他の抗菌剤は、バシトラシン;セファロスポリン(セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セファクロル、セファマンドール、セフォニシド、セフォラニド、セフォキシチン、セフロキシム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフォテタン、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソンおよびメロペネム等);サイクロセリン;ホスホマイシン、ペニシリン(アムジノシリン、アンピシリン、アモキシシリン、アズロシリン、バカンピシリン(bacamipicillin)、ベンザチンペニシリンG、カルベニシリン、クロキサシリン、シクラシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリンおよびチカルシリン等);リストセチン;バンコマイシン;コリスチン;ノボビオシン;ポリミキシン(コリスチン、コリスチマテート(colistimathate)およびポリミキシンB等);アミノグリコシド(アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシンおよびトブラマイシン等)、テトラサイクリン(デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリンおよびオキシテトラサイクリン等);カルバペネム(イミペネム等);モノバクタム(アズトレオナム等);クロラムフェニコール;クリンダマイシン;シクロヘキシミド;フシジン;リンコマイシン;ピューロマイシン;リファンピシン;他のストレプトマイシン;マクロライド(エリスロマイシンおよびオレアンドマイシン等);フルオロキノロン;アクチノマイシン;エタンブトール;5-フルオロシトシン;グリセオフルビン;リファマイシン;スルホンアミド(スルファシチン(sulfacytine)、スルファジアジン、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾール、スルファメチゾールおよびスルファピリジン等);およびトリメトプリムからなる群より選択することができる。
【0125】
他の適した抗細菌剤として、ビスマス含有化合物(アルミン酸ビスマス、次クエン酸ビスマス、次没食子酸ビスマスおよび次サリチル酸ビスマス等);ニトロフラン(ニトロフラゾン、ニトロフラントインおよびフロゾリドン(furozolidone)等);メトロニダゾール;チニダゾール;ニモラゾール;および安息香酸が挙げられるがこれらに限定されない。
【0126】
消毒剤は、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、ヘキサクロロフェン、フェノール、レゾルシノールおよび塩化セチルピリジニウムからなる群より選択することができる。
【0127】
発明に係る組成物における使用に適した免疫賦活剤は、インターロイキン1アゴニスト、インターロイキン2アゴニスト、インターフェロンアゴニスト、RNA合成阻害剤およびT細胞刺激剤等、幅広い範囲の治療剤から選択することができる。
【0128】
本発明における使用のための抗炎症剤は、抗炎症活性を有する化合物、分子または薬物である(すなわち、炎症の持続時間および/または重症度を予防または低下させる;組織に対する傷害を予防または低下させる;および/または紅斑、腫脹、組織虚血、発熱その他等の炎症の顕在化のうち少なくとも1種からの緩和を提供することができる)。ある特定の実施形態では、このような化合物、分子または薬物は、外用に適用されると抗炎症活性を有する。
【0129】
本発明における使用に適した抗炎症剤は、多種多様なステロイド性および非ステロイド性抗炎症剤から選択することができる。NSAIDの例は、上述に見出すことができる。ステロイド性抗炎症剤の例として、ジプロピオン酸アルクロメタゾン(aclomethasone dipropionate)、フルニソリド、フルチカゾン、ブデソニド、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、フロ酸モメタゾン、プレドニゾン、アセポン酸メチルプレドニゾロンおよびプレドニゾロンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0130】
抗炎症剤は、それに代えてまたはその上、抗酸化活性を示す多種多様な化合物、分子および薬物から選択することができる。抗酸化剤は、組織に対する酸化的損傷を予防または低下させることができる薬剤である。抗酸化剤は、ビタミンA(レチナール)、ビタミンB(3,4-ジデヒドロレチノール)、ビタミンC(D-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸)、α-カロチン、β-カロチン、γ-カロチン、δ-カロチン、ビタミンE(α-トコフェロール)、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、トコキノン(tocoquinone)、トコトリエノール、ブチルヒドロキシアニソール、システイン、およびこれらの活性誘導体、アナログ、前駆体、プロドラッグ、薬学的に許容される塩または混合物からなる群より選択することができる。
【0131】
本発明の組成物中に存在する治療剤(複数可)骨原性因子、成長ホルモン、鎮痛薬、抗炎症剤の量は、特定の治療剤に推奨または認可される投薬量と共に、処置されている骨喪失の種類、ならびに組成物における他の成分/構成成分の存在および性質に応じて変動し得る。ある特定の実施形態では、存在する治療剤の量は、外用投与により所望の結果を得るために要求される通常の投薬量である。斯かる投薬量は、製薬または医学技術分野の当業者にとって公知である、または当業者によって容易に決定される。
【0132】
一部の実施形態では、本発明の馴化細胞培地および生体適合性組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤を混合することにより医薬組成物として製剤化される。本発明の生体適合性組成物を含む医薬組成物は、一般薬務に従って製剤化することができる(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」および「Encyclopedia of Pharmaceutical Technology」、J. SwarbrickおよびJ. C. Boylan(編)、Marcel Dekker, Inc:New York、1988年を参照)。例えば、「薬学的に許容される担体」は、ある臓器または身体部分から別の臓器または身体部分への対象化学物質の搬送または輸送に関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または被包材料等、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを指す。各担体は、製剤の他の成分と適合性である、また、被験体に対して傷害性でないという意味において「許容される」必要がある。薬学的に許容される担体として機能し得る材料の一部の例として、次のものが挙げられる:(1)ラクトース、グルコースおよびスクロース等、糖;(2)トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン等、デンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース等、セルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバターおよび坐薬ワックス等、賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油等、油;(10)プロピレングリコール等、グリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール等、ポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル等、エステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等、緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンを含まない水;(17)等張性食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;ならびに(21)医薬製剤において用いられる他の無毒性適合性物質。
【0133】
一部の実施形態では、馴化細胞培地は、生体適合性ポリマーマトリクスを有する製剤なしで、単独で使用することができる。一部の実施形態では、馴化細胞培地は、生体適合性ポリマーマトリクスを有する製剤において使用することができる。馴化細胞培地が、単独で、または生体適合性ポリマーと共に使用されるかにかかわらず、その結果得られる組成物は、目的の送達部位への直接的投与による等、単独で使用することができる。それに代えて、一部の実施形態では、馴化細胞培地が、単独で、または生体適合性ポリマーと共に使用されるかにかかわらず、その結果得られる組成物は、追加的なマトリクス材料を有するおよび/またはその中にある製剤において使用することができる。マトリクス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、美容的外観および界面特性に基づく。代表的で非限定的なマトリクスは、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ酸無水物を含む、生分解性で化学的に規定された材料を包含する。他のマトリクス材料は、骨または真皮コラーゲン等、生分解性で生物学的に十分に規定されている。他のマトリクスは、純粋タンパク質または細胞外マトリクス構成成分で構成される。他の代表的マトリクスは、焼結ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸塩または他のセラミックス等、非生分解性で化学的に規定されている。マトリクスは、ポリ乳酸およびヒドロキシアパタイト、またはコラーゲンおよびリン酸三カルシウム等、上述の種類の材料のいずれかの組み合わせで構成されていてよい。バイオセラミックスは、カルシウム-アルミン酸塩-リン酸塩(calcium-aluminate-phosphate)等、組成が変更され、ポアサイズ、粒子サイズ、粒子形状および生分解性を変更するように加工することができる。理論に制約されることなく、経時的な馴化細胞培地の放出をモジュレートする生体適合性ポリマーマトリクスの能力のため、生体適合性ポリマーマトリクスなしの馴化培地と比較して骨成長(例えば、完全骨結合、垂直骨結合、水平骨結合その他)および/または骨吸収阻害をもたらすために、本発明によって包含される生体適合性ポリマーマトリクスと共に製剤化された馴化細胞培地が、実質的により少ないマトリクス材料が使用されることを可能にすることが考えられる。例えば、一部の実施形態では、並置された骨および他の組織との連接(すなわち、骨結合)を含む骨に所望の効果を有することに関する組成物の能力は、生体適合性ポリマーなしの組成物と比較して、ほんの5%、10%、15%、20%、25%、30%、31%、32%、33%、1/3、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または30%~40%等、その間のいずれかの範囲(両端を含む)を使用して維持される。
【0134】
IV.キット
別の態様では、本発明は、本発明の生体適合性組成物、またはこれを含む医薬組成物を含むキットを提供する。ある特定の実施形態では、生体適合性組成物は、キットにおいて少なくとも1種の治療剤と共に提供される。少なくとも1種の治療剤は、別々に、または混合物として提供することができる。
【0135】
例えば、キットは、2個の別々の容器を含むことができ、第1の容器は、その生体適合性組成物を含み、第2の容器は、治療剤またはその組成物を含む。キットは、それに代えて、2個の別々の容器を含むことができ、第1の容器は、生体適合性組成物および治療剤を含む混合物または組成物を含み、第2の容器は、すぐに使用できる組成物を得るために、使用前に第1の容器に添加されることが意図される適した培地を含む。それに代えてまたはその上、キットは、生体適合性組成物および治療剤を含む混合物または組成物を含む容器、ならびに第1の組成物の混合物または組成物の適用に使用されるべきツール(例えば、ブラシ、シリンジ、スパチュラ)で構成されていてよい。
【0136】
ある特定の実施形態では、個々の容器(例えば、バイアル、アンプル、フラスコ、ボトル、細い先端を有するチューブ)は、商業使用のために緊密に閉じ込めて維持される。
【0137】
キットは、本発明に従って生体適合性組成物および治療剤(ならびに他のいずれかの追加的な薬剤および試薬)を使用するための指示をさらに含むことができる。本発明の1種または複数の方法に従ってキットを使用するための指示は、適応症、好まれる投与様式(複数可)、好まれるレジメン(複数可)、好まれる投薬量、潜在的副作用その他に関する情報を含むことができる。キットは、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関(例えば、FDA)によって規定された形態での通知を含むこともできる。識別子、例えば、バーコード、無線周波数、IDタグ等が、キット中にまたはその表面に存在することができる。識別子を使用して、例えば、品質管理、在庫管理、ワークステーション間の移動の追跡等の目的でキットを特有に同定することができる。本発明のある特定の実施形態では、キットは、政府機関(例えば、FDA)承認医薬品によって要求される通り、適正製造基準に従って製造することができる。
【実施例】
【0138】
例証
本発明は、限定として解釈されるべきではない、次の実施例によってさらに説明される。
【0139】
(実施例1:実施例2~3のための材料と方法)
A.In vitro研究
本研究において、ヒト初代新生児皮膚線維芽細胞およびヒト初代骨芽細胞を使用した。線維芽細胞のため、およそ500ミリリットル(mL)のDMEM基礎細胞培養培地は、ウシ胎仔血清(FBS)(4.6%v:v)、GlutaMax(商標)(1.1%v:v)、組換えヒト上皮増殖因子(2.25マイクログラム)および組換えヒト線維芽細胞増殖因子、塩基性(0.68マイクログラム)を含有する。骨芽細胞初代培地は、およそ500mLの総体積に対して、アスコルビン酸(2.75mg)、GlutaMax(商標)(1%v:v)およびFBS(9.8%v:v)を補充したDMEM基礎細胞培養培地を含有する。
【0140】
線維芽細胞培地(培地A)および骨芽細胞培地(培地B)を、それぞれ増殖している線維芽細胞および骨芽細胞に添加し、37℃、5%CO2において、収集前の24時間の持続時間、加湿チャンバー内で細胞培養物をインキュベートした。線維芽細胞馴化培地および骨芽細胞馴化培地の50:50混合物として馴化細胞培地(培地C)を生成した。
【0141】
B.ポリマーマトリクス
ポリマーマトリクスは、1%w:vの濃度の超低融点アガロース(Lonza製SeaPrep(商標)アガロース)を含み、アガロースは、粉末形態を温かいゼラチン様状況へと十分に溶解するために、最終1%w:v濃度の作製に要求される総体積の1/2である体積に最初に溶解した。37℃未満まで混合物を冷却した後に、残っている1/2体積の培地C(馴化線維芽細胞および骨芽細胞培地の50:50混合物)を添加し、全構成成分を十分に取り込むまで完全に混合した。さらに使用するまで、馴化線維芽細胞/骨芽細胞培地に溶解された1%w:v超低融点アガロースのマトリクスを4℃に冷却して、アガロースの重合を助けた。
【0142】
C.形態
基礎骨芽細胞成長培地において6ウェルプレートに骨芽細胞を一晩播種した。培地を吸引し、接着細胞をdPBSで洗浄し、その後、それぞれの培地を添加した。細胞をさらに24時間成長させ、その後、Olympus CK2倒立顕微鏡を使用して10×で観察した。
【0143】
D.細胞増殖アッセイ
CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution細胞増殖アッセイを使用して、24時間および48時間時点における生存細胞の数を決定した。簡潔に説明すると、初代骨芽細胞成長培地において96ウェルプレートにおよそ2×104個の細胞を一晩平板培養した。細胞を24時間播種させた後に、成長培地を吸引し、dPBSで洗浄した。dPBSを吸引した後に、100μlのそれぞれの培地を個々のウェルに添加した。アッセイ時点は、それぞれの成長培地の添加後およそ24時間および48時間目であった。490nmにおける吸光度を細胞成長の関数として記録した。
【0144】
E.スクラッチアッセイ
基礎線維芽細胞成長培地において6ウェルプレートに骨芽細胞を一晩播種した。ピペットチップを使用して、各コンフルエントウェルにおける物理的分離を作製した。次に、基礎培地を吸引し、続いてdPBSで洗浄した。次に、それぞれの培地をそれぞれのウェルに添加し、さらに24時間成長させた。Olympus CK2倒立顕微鏡を使用して画像を得た。
【0145】
F.In vivo研究
実験動物の世話および使用のためのコロンビア大学ILARガイドならびに米国農務省によって施行された動物福祉条例規制に従って全動物実験を行った。動物福祉条例規制によって要求される通り、全実験手順は、IACUCによって承認された。
【0146】
総計8匹のイヌを研究に利用した。各イヌ被験体において、歯科抜歯/インプラント部位として定義される総計8種の欠損を使用した。8種の欠損は、次の通りに2群に分けた:群1:垂直骨欠損(5mm)+4個のインプラント+骨移植、および群2:垂直骨欠損(5mm)+4個のインプラント+骨移植+(増殖因子;DentaPro:実施例1の上述の通り、線維芽細胞/骨芽細胞馴化培地単独、低融点アガロースなし、PeriOSM:実施例1の上述の通り、線維芽細胞/骨芽細胞馴化培地+低融点アガロース)。
【0147】
動物被験体は、一連の3回の総外科手術を受けた。特に、最初の外科手術は、抜歯と、それに続く12週間の治癒からなり、抜歯の窪みを完全に治癒させた。これに続いて、標準化骨欠損(20×5mm;長さ×高さ)を作製するための第2の外科的手順、ならびに増殖因子ありまたはなしで、骨インプラントおよび骨移植材料(ヒドロキシアパタイト)の挿入を行った。インプラント挿入/骨欠損後に測定され、マイクロコンピュータ断層撮影(マイクロCT)および標準組織学的プロセスにより解析される通り、4および8週間時点において動物を屠殺した。
【0148】
(実施例2:生体適合性組成物は、細胞にプラスの影響を与える)
アガロースのパラクリン様効果を解析するために、1%w:vの濃度の凝固したアガロースを1cm直径のディスクにカットした。6ウェルプレートの単一ウェルにおいて、PBS、非馴化培地または馴化培地のいずれかを含有する3個のディスクをそれぞれ、同じウェル内に一緒に、ただし互いに離し間隔をあけて置き、接着させ、その後、骨芽細胞を添加した。基礎非馴化骨芽細胞培地を添加して、細胞を覆ったが、この培地はアガロースディスクを動かした。細胞を37℃、5%CO2にて24時間成長させた。次に、画像を撮影して、それぞれのディスクの周囲の細胞挙動を観察した。
【0149】
馴化培地を含有する凝固したアガロースディスクを次の通りに生成した:簡潔に説明すると、粉末形態を温かいゼラチン様状況へと十分に溶解させるために、最終1%w:v濃度の作製に要求される総体積の1/2である体積のddH2Oにおいてアガロースを最初に加熱した。37℃未満まで混合物を冷却した後に、馴化線維芽細胞および骨芽細胞培地の50:50混合物等、残っている1/2体積の馴化培養培地を添加し、全構成成分を十分に取り込むまで完全に混合した。次に、馴化線維芽細胞/骨芽細胞培地に溶解された1%w:v超低融点アガロースのマトリクスを、最大1cmの厚さまでペトリ皿に注いだ。次に、さらに使用するまで、皿を4℃に冷却して、アガロースの重合を助けた。アガロースディスクを凝固させた後に、さらなる実験のために直径最大1.5cmの円形ディスクを単離した。
【0150】
非馴化培地を馴化培地と比較する場合、細胞サイズまたは形態に識別可能な差はなかった(
図1)。他の2種の培地(すなわち、非馴化および馴化培地)と比較して、DPBSの陰性対照の間に有意差がある。
【0151】
蛍光に基づくアッセイに基づき、馴化培地は、非馴化および対照培地と比較して、最高レベルの細胞増殖をもたらした(
図2)。
【0152】
骨芽細胞馴化培地は、非馴化培地とは対照的に、加速された創傷治癒をもたらした(
図3)。
【0153】
馴化培地を注入されたアガロースは、おそらく、マトリクスからの増殖因子放出の受動的拡散のため、より強い走化性因子効果を発揮すると思われる(
図4)。この特徴は、本明細書に記載されている生体適合性組成物の臨床適用に関する重要な特色、および物理的に空の空間(例えば、歯科インプラントおよび隣接歯肉線の間の)を満たし、生体適合性組成物のポリマーマトリクスに向かって遊走するように細胞を刺激するその能力を表す。ポリマーマトリクスが溶解するにつれて、ポリマーマトリクスの両側の細胞が一体になることができる。
【0154】
(実施例3:in vivoにおける生体適合性組成物の歯周効果)
イヌ動物モデルを使用して新生骨再生および歯科インプラント骨結合に対するDentaProおよびPeriOSMの効果を評価するために、in vivo研究を行い、その際に、右(対照)および左(実験)側下顎小臼歯区域を使用した。
図5は、8週間後に対照と比較してDentaProおよびPeriOSMを使用した有意な骨再生を示す。同様に、
図6は、8週間後のインプラント骨結合(例えば、骨成長およびインプラント-骨結合高さの差)の結果を示す。特に、
図6は、DentaProおよびPeriOSMの両方による処置が、対照と比較して有意な骨結合(丸)を示したことを実証する。加えて、DentaProおよびPeriOSMの両方は、対照と比較して有意な垂直骨骨結合(無標識バー)を示した。また、PeriOSMは予想外なことに、DentaProおよび対照と比較してヒドロキシアパタイトマトリクスの量の3分の1のみの使用にもかかわらず、僅かに改善された垂直骨結合および有意な新たな水平骨成長を示した。
【0155】
参照による援用
本願を通じて引用されているあらゆる参考文献、特許出願、特許および公開特許出願、ならびに図面および配列表の内容は、これにより、参照により本明細書に組み込む。
【0156】
均等物
当業者であれば、単なる慣例的な実験法を使用して、本明細書に記載されている本発明の具体的実施形態に対する多くの均等物を認識する、または確かめることができるであろう。斯かる均等物は、次の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。