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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】圧延機スタンド
(51)【国際特許分類】
   B21B 31/07 20060101AFI20230106BHJP
   B21B 13/14 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
B21B31/07 A
B21B31/07 D
B21B13/14 G
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020558942
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2019060625
(87)【国際公開番号】W WO2019207050
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】18169686.5
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515153152
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・オーストリア・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アンスガー・ラデク
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・シナグル
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-196107(JP,A)
【文献】特表2007-533455(JP,A)
【文献】特開平10-080708(JP,A)
【文献】特開昭55-094022(JP,A)
【文献】特開昭58-023507(JP,A)
【文献】米国特許第04907329(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 27/00-35/14
B21B 13/00-13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向において向かい合う2つの端面(3、4)を有する、圧延機スタンド(1)内で浮動し、軸方向に延在する回転軸(9)の周りに回転可能に取り付けられた作業ロール(2)と、
少なくとも1つの軸受モジュール(6)であって、前記作業ロール(2)の2つの端面(3、4)の内の1つに配置され、前記作業ロール(2)が前記圧延機スタンド(1)内で浮動式に支持される際に用いられ、ハウジング(7)を有しており、前記ハウジング内には、前記作業ロール(2)が、固定軸受アセンブリ(8)を用いて取り付けられている少なくとも1つの軸受モジュール(6)と、
を有する圧延機スタンド(1)において、
前記軸受モジュール(6)は、支持装置(17)を有しており、前記支持装置を用いて、前記軸受モジュール(6)は、前記圧延機スタンド(1)内で軸方向に支持可能であり、
前記軸受モジュール(6)が、バネ要素(21)を含んでおり、前記支持装置(17)は、第1の部材及び第2の部材(19、20)を有しており、2つの部材(19、20)が、軸方向(5)において互いに対して変位可能であり、軸方向(5)において、前記バネ要素(21)を用いてクランプ可能であり、
前記固定軸受アセンブリ(8)は予圧転がり軸受構造(12)を用いて実現されており、
前記第1の部材(19)は片側が開放された中空シリンダとして構成されており、前記中空シリンダは、前記中空シリンダの開放端に、径方向に突出した縁部(36)を有しており、前記第2の部材(20)は、片側が開放された中空シリンダとして構成されており、前記中空シリンダは、前記中空シリンダの内側延在部分(37)で、前記第1の部材(19)の前記縁部(36)を包囲していることを特徴とする圧延機スタンド(1)。
【請求項2】
前記固定軸受アセンブリ(8)が、転がり軸受構造(12)を用いて実現されていることを特徴とする、請求項1に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項3】
前記軸受モジュール(6)が、周囲(15)に対して、回転軸シール(16)及び/又はVリングシール(16)及び/又はOリングシール(16)及び/又はラビリンスシール(16)を用いて密閉及び/又はカプセル化されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項4】
前記軸受モジュール(6)の前記ハウジング(7)が、周囲(15)に対して、密閉及び/又はカプセル化されていることを特徴とする、請求項に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項5】
前記支持装置(17)が、前記軸受モジュール(6)の前記ハウジング(7)上に配置されており、前記支持装置(17)を用いて、前記ハウジング(7)が、前記圧延機スタンド(1)内で軸方向に支持可能であることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項6】
前記支持装置(17)が、軸方向支持のために、キャンバーを備えた端面(18)を有していることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項7】
径方向外側に位置し、前記作業ロール(2)に対向する前記第2の部材(20)の端面に、内径が前記第1の部材(19)の前記縁部(36)の直径よりも小さい環状ワッシャ(38)が固定されていることを特徴とする、請求項に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項8】
前記バネ要素(21)が、前記バネ要素の第1の端部(42)で、前記軸受モジュール(6)の前記ハウジング(7)に対して支持されており、前記バネ要素の第2の端部(44)で、径方向内側に位置する、前記作業ロール(2)に対向する前記第2の部材(20)の端面(45)に対して支持されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項9】
前記固定軸受アセンブリ(8)が、前記作業ロール(2)の両方の端面(3、4)の内の一方に配置された、軸方向に延在するロール延長部分(22)を有しており、前記ロール延長部分の上に、前記固定軸受アセンブリ(8)の軸受(12)が配置されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項10】
転がり軸受(12)の内輪(23)が、前記ロール延長部分(22)上に、前記ロール延長部分(22)上で前記内輪(23)の間に配置されたスペーサリング(25)及び/又はシャフトナット(26)を用いてクランプされていることを特徴とする、請求項に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項11】
円すいころ軸受(13、14)の内輪(23)が、前記ロール延長部分(22)上に、前記ロール延長部分(22)上で前記内輪(23)の間に配置されたスペーサリング(25)及び/又はシャフトナット(26)を用いてクランプされていることを特徴とする、請求項に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項12】
前記ロール延長部分(22)が、前記作業ロール(2)にネジで固定されて(27)いるか、又は、前記作業ロール(2)と一体的に構成されていることを特徴とする、請求項から11のいずれか一項に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項13】
前記ハウジング(7)が、担体要素(30)上での可動支持のための支持面(29)を備えた、少なくとも1つの保持要素(28)を、前記圧延機スタンド(1)内に有していることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項14】
前記ハウジング(7)が、曲げシリンダ(30)上での可動支持のための支持面(29)を備えた、少なくとも1つの保持要素(28)を、前記圧延機スタンド(1)内に有していることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項15】
前記ハウジング(7)が2つのカバー(31、32)と、前記2つのカバーの間に受容された中間要素(33)とから構成されていることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の圧延機スタンド(1)。
【請求項16】
2つの軸受モジュール(6)が設けられており、2つの前記軸受モジュール(6)の内の一方は、前記作業ロール(6)の2つの前記端面(3、4)の内の一方に配置されており、2つの前記軸受モジュール(6)の内の他方は、前記作業ロール(2)の2つの前記端面(3、4)の内の他方に配置されていることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の圧延機スタンド(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のおいて書きに記載の圧延機スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
圧延装置内では、例えば鋼等の圧延材の成形が、圧延機スタンドで行われる。この成形は、圧延と呼ばれる。
【0003】
その際、圧延材の圧延は、少なくとも2つの作業ロール(以下において、概ね短縮してロールとのみ表記される)の間で行われ、当該作業ロールは、そのそれぞれ軸方向に延在する回転軸の周りに回転可能であるように、圧延機スタンド内に取り付けられている。
【0004】
その際、圧延機スタンドの構造は、ロールの数と、ロールの位置と、ロールの形状と、圧延の間に作用する力と、圧延材の精度要件とに左右される。1つのみの圧延機スタンドを備えた圧延機もあれば、複数の前後に又は並んで配置された圧延機スタンドを備えた圧延機もある。
【0005】
特に、500N/mmを超える強度、特に1000N/mmを超える強度を有する鋼のような、比較的高強度の、及び、高強度の鋼の圧延に関しては、当該圧延機スタンドでは、直径が小さいロール、例えば直径が150mmから180mmまでの範囲のロールが用いられ、これらのロールは、浮動式に圧延機スタンド内に取り付けられている。
【0006】
「浮動式」軸受アセンブリ(しばしば「オーバーハング」軸受アセンブリとも呼ばれる)は、ロール等の、軸方向に延在する回転軸の周りを回転する要素の軸受アセンブリであると理解され、当該軸受アセンブリは(回転する要素の軸方向に延在する回転軸に関して)、軸方向において遊びを有している/可能にしている。すなわち、(浮動式に支承されるべき)要素は、軸方向においては明確に固定されていない。それによって、特に支承されるべき要素の機械的又は熱的な長さの変化が、軸受アセンブリを変形させることなく、吸収され得る。
【0007】
このような直径が小さいロールの場合、(駆動)トルクは、機械的に制限されて、もはやロール(の端面)に配置された駆動ピンを通じて直接には伝達され得ないので、当該ロールは、専ら、ロールに対して(そのそれぞれの回転軸に関して)平行に配置され、かつ、そのそれぞれの外側面/表面を通じて、(駆動されるべき)ロールと力接続又は摩擦接続している、(それぞれ固有の回転軸の周りに回転可能に取り付けられた)中間ロールによって駆動される。
【0008】
一般的に、これらのロールは、ストリップの走行方向に関して横方向にも、すなわちその(両方の)軸方向端面においても、さらなる(同様にその固有の回転軸の周りに回転可能に取り付けられた)支持ロール又は支持ローラによって、力接続又は摩擦接続を通じて(ロール及び支持ロール/支持ローラ又は外側面/表面が、互いに接して転動する)支持される。
【0009】
すなわち、ロールの軸方向において、ロールの、(ロールの軸方向端面において)水平支持をもたらす形状-摩擦接続が、(両側において)その側方に取り付けられ、垂直方向に方向付けられた、支持ロール又は支持ローラの形状を有するローラを通じて生じる。すなわち、これらの支持ローラの回転軸は、支持ローラによって支持されるべきロールの回転軸に対して垂直に、又は、(ロールが水平になるように位置合わせされている場合は)垂直になるように位置合わせされている。
【0010】
このような、ロールを軸方向において支持する支持ローラは、(その回転軸に関して)軸方向に(も)湾曲した走行面/外側面/表面(「たる形」)を供給しており、支持ローラの最大直径になる周囲円は(周囲円又は周囲円面は、その回転軸に対して垂直な支持ローラの断面を通じて生じる)、ロールの回転軸に関して径方向にオフセットされている。
【0011】
それによって、(両側で)横方向又は軸方向においてロールの端面に配置されたこれらの支持ローラは、それぞれ、その表面上の線(すなわちロールの端面と/端面上での線形力接続又は摩擦接続を形成する周囲円)に沿って、ロールの各軸方向端面上を転動し、その軸方向における動きを制限する。
【0012】
場合によっては、ロールは、軸方向において機械的な遊びを有しているので、必ずしもつねに両側の2つの支持ローラが同時に接触されるのではなく、ロールはその間で「自由に浮動する」。
【0013】
従って、このような「自由に浮動する」ロールは、中間ロール、支持ロール/支持ローラ、及び、圧延材によって、それぞれの接触を通じて力接続によって保持される。ロールを交換する際、圧延機スタンドは開かれ、ロールは、いわゆる「バランスアーム」によって支持される。
【0014】
実践からは、まさにこの種の、支持ローラによるロールの横方向又は軸方向の支持が、大きな問題を引き起こし得ることが明らかになっている。
【0015】
(ロールの直径が小さいゆえの)高いロール(回転)速度と、(圧延されるべき比較的高強度又は高強度の圧延材ゆえの)加えられる大きな圧延荷重とゆえに、及び、(力接続/摩擦接続に)関与する表面/外側面の摩耗現象(触れ合う/接触し合う表面/外側面は機械的に摩耗する)に基づいて、すなわちそこでは、接触線に沿った、制限されていない転動運動(「線形接触」、周囲円)の代わりに、これらの横方向の支持ローラとロールの端面との間で、摩擦事象が繰り返し生じる。
【0016】
当該摩擦事象は、必然的に、高い摩擦熱も生じさせ、最悪の場合には、圧延機スタンドの発火及び全焼までもがもたらされる(圧延機スタンドの内側領域全体には、圧延油が存在しており、圧延油は非常に高い温度において発火し得る)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、内部に取り付けられた少なくとも1つの作業ロールを有する圧延機スタンドであって、摩擦挙動及び摩耗挙動が改善され、構造的に単純に設計された圧延機スタンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によると、本課題は、請求項1に記載の特徴を有する圧延機スタンドによって解決される。本発明の有利なさらなる発展形態は、従属請求項及び以下の説明の対象である。
【0019】
本発明に係る圧延機スタンドは、軸方向において向かい合う2つの端面を有する、圧延機スタンド内で浮動し、軸方向に延在する回転軸の周りに回転可能に取り付けられた作業ロール(以下において短縮してロールとのみ表記する)を有し、少なくとも1つの軸受モジュールを供給しており、当該軸受モジュールは、作業ロールの2つの端面の内の1つに配置され、ハウジングを有しており、当該ハウジング内には、作業ロールが、固定軸受アセンブリを用いて取り付けられている。
【0020】
軸受モジュールを用いて、ロールは、圧延機スタンド内で浮動式に支持されている。すなわち、単純かつ短く表現すると、ロールを固定軸受アセンブリを用いて支承する軸受モジュールは、圧延機スタンド内に「浮動するように」受容されている。
【0021】
「軸の」又は「軸方向の」は、ロールの回転軸に関して、その「長手方向の延在部分」又は「長手方向の延在方向」として理解してよい。「半径の」又は「径方向」は、「軸の」又は「軸方向」に対して垂直に方向付けられた延在部分である。
【0022】
特に、このような軸受モジュールは、ロールの2つの端面のいずれに配置されていてもよく、軸受モジュールのハウジング内には、ロールが固定軸受アセンブリを用いて受容されている。
【0023】
その際、固定軸受アセンブリは、軸受コンセプト又は軸受アセンブリ/軸受構造(ロール等の、軸方向に延在する回転軸の周りに回転する部材の支承のための)であると理解可能であり、軸受コンセプト又は軸受アセンブリ/軸受構造は、支承されるべき部材又はロールを、(回転軸に関して)軸方向において明確に配置する。
【0024】
このような固定軸受アセンブリは、つまり、径方向力も軸方向力(両方の軸方向における軸方向力)も吸収し、これらの力を、ハウジング又は軸受モジュールのハウジング等の、支承されるべき部材又はロールを「包囲する」構造に誘導するであろう。
【0025】
この固定軸受アセンブリは、基本的に、例えば転がり軸受(又は場合によっては滑り軸受も)等の、単独の軸受によって(ここでは、それぞれ変位しないように配置された外輪又は内輪を有する深溝玉軸受又は4点接触軸受等の、単独の軸受によって、軸方向力と径方向力とが吸収される)実現し得る。
【0026】
軸方向荷重又は径方向荷重が非常に高い場合、しばしば、2つの軸受、例えば2つの転がり軸受(又は場合によっては2つの滑り軸受も)が、固定軸受の機能を果たすために用いられる。例えば、予圧(転がり)軸受アセンブリ(ここでは、例えば2つの鏡像配置されたアンギュラ玉軸受若しくは円すいころ軸受等の、2つの固定軸受が互いに対してクランプされる)、又は、固定-浮動軸受アセンブリ(ここでは、軸方向力と径方向力とが分かれて2つの軸受に分配される。すなわち、専ら軸方向力を吸収するスラスト軸受、及び、専ら径方向力を吸収するラジアル軸受、例えばスラストころ軸受(軸方向力のため)を伴う円筒ころ軸受(径方向力のため))である。
【0027】
固定支承が転がり軸受によって行われる場合、摩擦及び摩耗を避けるために、転がり軸受は、グリースで潤滑されているか、又は、オイルで潤滑されていてよく、特にグリースで潤滑されていてよい。
【0028】
その際、「浮動式に支持されている」が意味するところによると、特に、支持される部材、ここでは(圧延機スタンド内の)ロールが、その位置において明確には、又は、(圧延機スタンド内で)不動には固定されておらず(すなわち、「浮動している」又は並進的に変位可能)、軸受モジュールを通じて支持される「のみ」であり、それによって、ロール又はロールと軸受モジュールとから成る構造ユニットが圧延機スタンド内に受容されているが、(並進的な)自由度が(ロールに関して)可能であり、当該自由度は、圧延機スタンド内でのロールの(並進的な)位置変更、例えばロールの軸方向及び/又は水平方向の変位を可能にする。
【0029】
それによって、軸受アセンブリ又はロールを変形させることなく、特にロール及び/又は軸受モジュールにおける機械的又は熱的な長さの変化を吸収することができる。
【0030】
例えば、軸受モジュールの垂直方向の支持が圧延機スタンド内で行われる場合、それによって、圧延機スタンド内におけるロールの水平方向の可動性が保証され得る。2つの部材の互いに対する軸方向における伸縮自在の可動性を通じて、ロールの軸方向の可動性が実現し得る場合、部材は、軸方向において、軸受モジュールと圧延機スタンド又は圧延機スタンド内のロール支台との間に配置されている。
【0031】
本発明の基礎を成す考察及び認識は、従来の回転するロール上で転動する支持ローラを用いてロールを支承する場合、回転するロール上で転動する支持ローラに基づいて、部材内、すなわち支持ローラ内で、「(静的)支持機能」(ここでは、ロールが軸方向に支持される)と、同時に、「移動自由機能」(ここでは、ロールの回転運動又は回転自由度が、ロールと支持ローラとの間における動的な転動運動によって可能になる)とが組み合わされるというものである。
【0032】
(単独の)部材、ここでは支持ローラが、これら2つの、それ自体異なる機能、すなわち「静的支持機能」と「移動自由機能」とを組み合わせる場合、この(単独の)部材は、極めて異なる負荷を受けることになり、両方の機能を果たさなければならない。しかしながら、この高い負荷は、支持ローラにおける摩耗問題(と、下流の後続の問題)の原因である。
【0033】
当該考察又は認識を実行すべく、本発明は、これら2つの機能、すなわち「静的支持機能」及び「移動自由機能」の「構造的かつ機能的」分割又は分離を設けている。
【0034】
従って、「移動自由機能」は、作業ロールが、「古典的な」固定軸受アセンブリを用いて、軸受モジュール内又はそのハウジング内に取り付けられる/受容されることによって実現する。回転の自由度は、専ら固定軸受アセンブリによって可能になり、それによって、「不動の」(すなわち回転していない)ハウジング又は軸受モジュールにおいて、ロールが、「不動の」ハウジング又は軸受モジュールに対して回転する。
【0035】
ロールが、軸受モジュール又はそのハウジング内で、固定軸受アセンブリを通じて受容されている場合、(ロールに関する)「静的支持機能」は、ハウジング又は軸受モジュールが、圧延機スタンド内、例えば圧延機スタンド内のロール支台内で、「浮動式に支持又は受容される」ことによって実現し得る。このような「不動の」ロール支台と「不動の」ハウジング又は軸受モジュールとの間には、回転の相対運動が(もはや)生じず、これに対して、並進的な変位が(「浮動する」ので)可能である。
【0036】
簡単に表現すると、「静的支持」は、軸受モジュール/ハウジングと圧延機スタンドとの間で行われ、「回転/回転の自由度」は、ロールとハウジング/軸受モジュールとの間で、固定軸受アセンブリを用いて行われる。端的に言うと、「支持」と「回転/回転の自由度」とは切り離されている。
【0037】
作業ロールが片側において、上述した種類の軸受モジュールを用いて、浮動式に支持されている圧延機スタンドは、例えば国際公開第2005/011885号、又は、特開平10-80708号公報に開示されている。
【0038】
本発明ではさらに、軸受モジュールが、支持装置を有しており、当該支持装置を用いて、軸受モジュールが圧延機スタンド内で軸方向に支持可能であることが規定されている。
【0039】
軸受モジュールの支持装置は、圧延機スタンドの動作中に作業ロールに作用する軸方向力を、圧延機スタンド、特に圧延機スタンドのロール支台に誘導することを可能にする。それによって、圧延機スタンドのより確実かつより安定した動作が可能になる。
【0040】
言い換えると、本発明では、軸受モジュールを用いて、ロールの「浮動式の」支承/支持だけではなく、圧延機スタンドへの、特に圧延機スタンドのロール支台への軸方向力の誘導も実現し得る。
【0041】
国際公開第2005/011885号、又は、特開平10-80708号公報に記載の圧延機スタンドの場合、軸受モジュールは、軸受モジュール(とロールとの)の軸方向の支持のための支持装置を有していないが、当該圧延機スタンドとは異なり、本発明の場合、圧延機スタンドに、特に圧延機スタンドのロール支台に軸方向力を誘導できる、(軸受モジュールに加えて)別個の構造ユニットは必要ない。それによって、圧延機スタンドの構造的に単純な設計が可能になる。
【0042】
国際公開第2005/011885号、又は、特開平10-80708号公報に記載の圧延機スタンドでは、軸方向力が、軸受モジュールの反対側に配置された軸方向調整手段を通じて、圧延機スタンド又はロール支台に誘導される。本発明では、基本的に、このような軸方向調整手段を省略できる。
【0043】
好ましいさらなる発展形態によると、固定軸受アセンブリは、転がり軸受構造、特に予圧転がり軸受構造を用いて実現することが規定されている。
【0044】
固定軸受アセンブリを構成する転がり軸受構造は、1つのみの(転がり)軸受を用いて、しかし特に、予圧(転がり)軸受アセンブリの場合に必要であれば、2つの(又は必要であればそれより多くの)(転がり)軸受を用いて、実現し得る。
【0045】
さらなる発展形態において、予圧転がり軸受構造が設けられている場合、転がり軸受構造の予圧は、X配置又はO配置の形で実現されていてよい。支持の幅を広げるためには、O配置で予圧することが適切であり得る。
【0046】
さらに、さらなる発展形態では、転がり軸受構造、特に予圧転がり軸受構造は、少なくとも1つの第1の、及び、少なくとも1つの第2の、互いに予圧を与え合う円すいころ軸受又は球面ころ軸受又はアンギュラ玉軸受を用いて実現されているということも規定され得る。
【0047】
特に好ましくは、O配置において互いに予圧が加えられた第1及び第2の円すいころ軸受が用いられ得る。
【0048】
個々の(転がり)軸受の負荷、特に互いに対して予圧を加えられた(転がり)軸受それぞれの負荷を減少させるために、第1及び/第2の(転がり)軸受、特に円すいころ軸受の内の複数を用いることを規定してよい。
【0049】
別のさらなる発展形態によると、軸受モジュール、特にハウジングが、周囲に対して、特に1つ又は複数のシール、特に回転軸シール及び/又はVリングシール及び/又はОリングシール及び/又はラビリンスシールを用いて密封される、及び/又は、カプセル化されることが規定されている。従って、固定軸受アセンブリ又はハウジング内部は、汚れやほこり等の環境負荷から保護され、それと共に、その寿命も延長され得る。
【0050】
好ましいさらなる発展形態によると、支持装置が、軸受モジュールのハウジングに配置されていることが規定されている。支持装置を用いて、ハウジングとロールとが、圧延機スタンド内で、例えばロール支台において軸方向に支持可能であり得る。
【0051】
軸受モジュール(とロールとの)可能な限り明確な軸方向支持を実現するためには、支持装置が、例えば圧延機スタンド内の平板に対する軸方向支持のために、キャンバーを備えた端面(「ハウジングストッパ」)を有していると都合が良い。支持装置の端面におけるキャンバーを通じて、理想的には、支持接触を点接触に減少させることが可能であり、当該点接触は、径方向の障害/制限から免れている。
【0052】
好ましくは、軸受モジュールは、バネ要素、特にコイルバネを含んでいる。さらに、支持装置が、第1の部材及び第2の部材を有していると有利である。さらに、さらなる発展形態では、支持装置の2つの部材が、軸方向において互いに対して変位可能(望遠鏡のように)である(また、このような方法で、ロールの(軸方向の)浮動式の支承が実現する)と規定してよい。それによって、妨害等が生じることなく、特にロールの機械的又は熱的な長さの変化を吸収することが可能である。有利には、支持装置の両方の部材は、軸方向において、バネ要素を用いてクランプ可能である。
【0053】
第1の部材は、例えば、軸受モジュールのハウジングの一部、特にハウジングカバーと一体的に構成されていてよい。好ましくは、第1の部材は、片側が開放された中空シリンダとして構成されている。当該中空シリンダは、その開放端に、有利には径方向に突出した縁部を有している。さらに、第2の部材が、片側が開放された中空シリンダとして構成されていると好ましい。当該中空シリンダは、その内側延在部分で、有利には第1の部材の縁部を包囲している。
【0054】
さらに、径方向外側に位置し、作業ロールに対向する第2の部材の端面に、内径が第1の部材の縁部の直径よりも小さい環状ワッシャが固定されていると規定してよい。
【0055】
上述のバネ要素は、有利には、第1の部材の空洞に配置されている。その第1の端部で、バネ要素は、好ましくは軸受モジュールのハウジングに対して支持されている。その第2の端部で、バネ要素は、好ましくは径方向内側に位置する、作業ロールに対向する第2の部材の端面に対して支持されている。
【0056】
さらなる発展形態によると、固定軸受アセンブリは、ロールの両方の端面の内の一方に配置された、ほぼ軸方向に延在するロール延長部分を有しており、当該ロール延長部分の上に固定軸受アセンブリが「座っており」、すなわち、当該ロール延長部分の上には、固定軸受アセンブリの軸受が、例えば(予圧)円すいころ軸受が、特に、複数の第1の及び/又は第2の転がり軸受又は円すいころ軸受を有する構成で配置されている。
【0057】
さらなる発展形態では、好ましくは、固定軸受アセンブリを構成する転がり軸受の、特に円すいころ軸受の内輪が、特に複数の第1の及び/又は第2の転がり軸受又は円すいころ軸受が存在する場合に、ロール延長部分上に、特にロール延長部分上で内輪の間に配置されたスペーサリング及び/又はシャフトナットを用いてクランプされていると規定してもよい。
【0058】
外輪の場合も、すなわち、固定軸受アセンブリを構成する転がり軸受、特に円すいころ軸受の外輪の間に、特に複数の第1の及び/又は第2の転がり軸受又は円すいころ軸受が存在する場合に、このようなスペーサリングを設けてもよい。
【0059】
まさに複数の第1及び第2の転がり軸受又は円すいころ軸受が存在する場合に、このような精密製造されたスペーサリングを用いて、転がり軸受又は円すいころ軸受での力の分配が最適化され得る。
【0060】
特に「内側の」スペーサリングと「外側の」スペーサリングとの調整を通じて、支持力が、転がり軸受、特に円すいころ軸受の外輪で均等に分配されて、ハウジング内に誘導され得る。
【0061】
クランプは、好ましくはロール延長部分上のオフセット、ショルダー等によって実現され、当該オフセット、ショルダー等に対して、固定軸受アセンブリを構成する転がり軸受、特に円すいころ軸受の内輪がクランプされる。このために、シャフトナットが、ロール延長部分の「自由端」にネジで固定されていてよい。
【0062】
ロール延長部分が(その、自由端の反対側の端部で)、ロールにネジで固定され、特にセンタリングされてネジで固定されているか、又は、ロールと一体的に構成されていると適切である。まさにロールにネジで固定され得るロール延長部分において、特に軸受モジュールのさらなる分解を必要とせずに、より容易で柔軟かつ迅速な(従って費用が安価で時間を節約できる)ロールの交換が、例えばロールが摩耗した場合、又は、ロール間隙が変化した場合に可能である。
【0063】
ロールが、好ましくは全体的に硬化している場合、ロール延長部分は硬化していないと規定してもよい。
【0064】
別の好ましいさらなる発展形態によると、軸受モジュール、特にハウジングが、担体要素、特に曲げシリンダ上における可動支持(「浮動支持」)のための支持面を備えた少なくとも1つの保持要素(「耳たぶ」)を有することが規定されている。好ましくは、2つの当該保持要素が、ハウジング上に設けられていてよい。
【0065】
ロール交換の際に、ロールが、1つ又は複数の保持要素を通じて、圧延機スタンドを側方において開放した後、1つ又は複数の担体要素/曲げシリンダによって/1つ又は複数の担体要素/曲げシリンダ上で担持される場合、及び、ロールが、引き続いて、対応する装置(スライド等)によって、圧延機スタンドから取り出され得る場合、「バランスアーム」を省略することが可能である。
【0066】
圧延機スタンドでの組み立て/分解作業を容易にするためには、ハウジングが複数の部分から構成され、特に、2つのカバー(「内側/外側カバー」)と、これら2つのカバーの間に受容された中間要素(「チョック」)とから構成されていることが適切であり得る。
【0067】
当該中間要素には、好ましくは1つ又は複数の保持要素が配置されており、例えばネジで固定されており、中間要素と一体的に構成されている。
【0068】
別のさらなる発展形態によると、ロールは、約150mmから約200mm、特に約150mmから約180mmの範囲の直径、特に約180mmの直径を有していることが規定されている。
【0069】
さらに、好ましくは、圧延機スタンドが2つの軸受モジュールを有していることを規定してもよい。有利には、両方の軸受モジュールの内の一方は、作業ロールの2つの端面の内の一方に配置されており、両方の軸受モジュールの内の他方は、作業ロールの2つの端面の内の他方に配置されており、それによって、ロールが、圧延機スタンド内で両側において(浮動式に)支承される。
【0070】
上述の本発明の有利な態様に関する説明は、多くの特徴を含んでおり、これらの特徴は、各従属請求項において、部分的に、群としてまとめられて描写されている。しかしながら、合理的なことに、これらの特徴は、個別に考慮されることも可能であり、有意義なさらなる組み合わせにまとめられることも可能である。特に、これらの特徴は、それぞれ個別に、かつ、任意の適切な組み合わせにおいて、本発明に係る圧延機スタンドと組み合わせることが可能である。
【0071】
明細書又は請求項において、いくつかの概念が、それぞれ単数形又は数詞と共に用いられるとしても、当該概念に関する本発明の範囲が、単数形またはそれぞれの数詞に限定されるべきではない。さらに、「a」又は「an」は、数詞としてではなく、不定冠詞として理解されるべきである。
【0072】
上述の本発明の特性、特徴及び利点と、これらを得るための方法とは、本発明の1つ又は複数の実施例についての、図面を用いて詳細に行われる以下の説明との関連においてより明確、かつ、より理解しやすくなる。1つ又は複数の実施例は、本発明の説明に資するものであり、本発明を、実施例で記載される特徴の組み合わせに限定するものではなく、機能的特徴に関しても限定しない。加えて、このために適した各実施例の特徴は、実施例から離れて、明確に分離しても考察可能であり、その補足のために別の実施例に導入可能であり、いずれかの請求項に組み合わされ得る。示されているのは、以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】圧延機スタンドに取り付けられた2つの作業ロールと共に、圧延機スタンドの構造を概略的に示した図である。
図2】軸受モジュールと共に、作業ロールの一部を示した図である(断面図)。
図3】軸受モジュールと共に、作業ロールの一部を示した図である(斜視図)。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図1は、圧延機スタンド1の構造を概略的に示しており、圧延機スタンド1は、2つの、そのそれぞれ軸方向に延在する回転軸9の周りに回転可能に、(浮動式に)取り付けられた作業ロール2を、圧延材の、ここでは高強度の鋼の成形のため、すなわち圧延のために有している。
【0075】
その際、それぞれ約180mmの直径を有する2つの作業ロール2は、予め調整可能又は調整可能な間隔において、(その回転軸に関して)互いに平行に、圧延機スタンド1内に(概ね垂直に重なり合って)配置されており、それによって、2つの作業ロール2の間に、ロール間隙が形成され、圧延材は、当該ロール間隙を通過し、その際に成形、すなわち圧延される。
【0076】
このような直径の小さいロールの場合、(駆動)トルクは、もはやロール(の軸方向端面)に配置された駆動ピンを通じて直接には伝達され得ないので、図1に示したように、2つの作業ロール2は、作業ロール2に対して(そのそれぞれの回転軸9に関して)平行に配置され、そのそれぞれの外側面/表面を通じて、(駆動されるべき)作業ロール2と力接続又は摩擦接続された中間ロール34を用いて駆動される。
【0077】
両方の作業ロール2(以下においては、短縮してロール2とのみ記す)は、構造的に概ね同じであり、図1が示すように、単にその「上側」及び「下側」ロール2としての配置に応じて、その取り付け環境に関してわずかな差異を有している。しかしながら、機能的構造的要素は、両方のロール2において、基本的に同じである。
【0078】
図2及び図3は、それぞれ、ロール2の一部を、ロール2の(軸方向)端面3(又は4)に配置された軸受モジュール6と共に示しており、軸受モジュール6を用いて、ロール2が、圧延機スタンド1内に(浮動式に)取り付けられ、又は、受容されている。
【0079】
第2の(対称的に同一の)軸受モジュール6は、ロール2の他方の(視認不可能な)(軸方向)端面4(又は3)に、第1の軸受モジュール6に対応して配置されている(図示されていない)。
【0080】
図2及び図3が示すように、軸受モジュール6は、密封又はカプセル化された(複数の部分から成り、ネジで固定可能である/ネジで固定された)ハウジング7を供給しており、ハウジング7内では、ロール2が、ハウジング7内の固定軸受アセンブリ8を用いて、軸方向5及び径方向39において正確に位置決めされて、回転可能に受容/取り付けられている。
【0081】
ハウジング7(及びロール2)は、同様に、軸方向において、そのロール2に背向する端面35を通じて、端面35に配置された支持装置17(「ハウジングストッパ」)を用いて、圧延機スタンド1内又はロール支台(図示せず)上で支持される。
【0082】
(支持装置17とロール支台との間の)支持接触を、理想的には、点接触に減少させるために、図2及び図3から明らかであるように、支持装置17は、ロール2/軸受モジュール6又はハウジング7のロール支台での軸方向支持10のための、軸方向の、キャンバーを備えた端面18を有している。
【0083】
図2が示すように、支持装置17又は「ハウジングストッパ」は、軸方向5において互いに対して変位可能である2つの部材19、20を有しており(このような方法で/それによって、圧延機スタンド1内でのロール2の軸方向に変位可能又は軸方向に浮動する支承/支持10を実現しており)、2つの部材19、20は、軸方向5において、バネ要素21、ここではコイルバネ21を用いてクランプ可能である(それによって、ロール2が、圧延機スタンド1内で軸方向において固定又はクランプ可能である)。それによって、妨害等が生じることなく、特にロール2の機械的又は熱的な長さの変化を吸収することが可能である。圧延の際に、中間ロール34を有するロール2と圧延材との間に生じる相互作用に起因する変位も、それによって吸収され得る。
【0084】
図3に示すように、支持装置17は、第1の、フランジ様の、軸方向に延在する部材19を有しており、部材19は、軸方向外側に位置する(すなわち、ロール2の軸方向5において背向して、「内側」及び「外側」は、ロール2に関する軸方向5においてであると理解される)ハウジング7のハウジングカバー31と一体的に/ハウジングカバー31上に構成されている。
【0085】
この支持装置17の第1の部材19は、片側が開放された中空シリンダに類似しており、当該中空シリンダは、その軸方向において開放された(軸方向外側に位置する)端部に、径方向に突出した縁部36(フランジに類似した)を有している。
【0086】
支持装置17の第2の部材20は、同様に概ねシリンダ状に形成されており、その軸方向外側の端面18は、支持装置17のキャンバーを備えた面18を(圧延機スタンド1内での、又は、ロール支台に対する軸方向支持のため)供給、又は、形成しており、第2の部材20は、図2から明らかであるように、その内側延在部分37上で、又は、その内側延在部分37で、(ネジで固定可能な)環状ワッシャ38を用いて、第1の部材19の縁部36を外側から包囲している。
【0087】
図2が示すように、包囲の内側では、第2の部材20は、軸方向の変位経路40を供給しており、当該軸方向の変位経路40上で、第1の部材19又はその径方向縁部36が、第2の部材20に対して軸方向に変位可能(「軸方向に浮動する」)である。
【0088】
第1の部材19の径方向縁部36の軸方向厚さ41が、約12mmの設けられた変位経路40に対して、約7mmである場合、第1の部材19の、第2の部材20に対する、ほぼ5mmの、自由な軸方向の可動性が生じる。
【0089】
支持装置17の第1の部材19を、支持装置17の第2の部材20に対してクランプし、同時に、長さの変化を補償可能にするために、図2も示すように、コイルバネ21が設けられており、コイルバネ21は、第1の部材19の、片側が開放された中空シリンダ状部分の内側に配置されており、その第1の(軸方向内側に位置する)端部42は、外側ハウジングカバー31の軸方向外側端面43に対して支持されており、その第2の(軸方向外側に位置する)端部44は、第2の部材20の(軸方向内側に位置する)端面45に対して支持されている。
【0090】
さらに図2及び図3が示すように、ハウジング7は、3つのハウジング部分31、32、33を、すなわち上述した軸方向外側に位置するハウジングカバー31と、軸方向内側に位置するハウジングカバー32と、軸方向外側に位置するハウジングカバー31と軸方向内側に位置するハウジングカバー32との間に(軸方向において)配置された中間要素33と、を有している。
【0091】
これら3つのハウジング部分31、32、33は、複数の植え込みボルト27を用いて、互いに螺合されており、(その接合部において)シール要素16を用いて、ここではゴムシールリング16を用いて密封されている。
【0092】
図1から図3も示すように、ハウジング7(及びロール2)は、ハウジング7又は中間要素33にネジで固定された2つの保持アーム28(「耳たぶ」)(特に図3を参照のこと)を用いて、圧延機スタンド1内で、さらなる垂直方向の、又は、垂直に変位可能/浮動する支持11を受けており、図1が示すように、保持アーム28は、圧延機スタンド1内での垂直支持11のために、支持面29で、圧延機スタンド1内に配置された曲げシリンダ30又はそのシリンダロッドに載置される(軸受モジュール6/ハウジング7又はロール2は、水平に(並進的に)変位可能(「浮動するように」)になり、それによってロール2が、ストリップの走行方向において(も)、ある程度の移動の遊びを有することが可能になる)。
【0093】
ロール2の、曲げシリンダ30上での垂直の、又は、垂直に浮動する支持11によって、従来の「バランスアーム」を省略することも可能になる。
【0094】
図2が示すように、軸受モジュール6内又はハウジング7内でのロール2の取り付けは、ロール延長部分22を用いて行われ、ロール延長部分22は、(軸方向の)端面で、(軸方向の)ロール端面3(又は4)に、センタリングピン46を用いてセンタリングされて、ロール延長部分22上に形成されたフランジ47を通じて、植え込みボルト27を用いてネジで固定されている。
【0095】
ロール延長部分22又はその軸方向自由端48は、内側に位置するハウジングカバー32内に形成されている開口部49を通って、ハウジング7内に入り、ハウジング7において、固定支承アセンブリ8を用いて回転可能に取り付けられている。
【0096】
図3に示すように、シール16、この場合は複数の回転軸シールリング又はシャフトシールリング16を用いて(径方向及び軸方向の構成及び配置において)、ハウジング7、すなわち、軸方向内側に位置するハウジングカバー32は、ロール延長部分22又はその自由端48に対して(周囲15、すなわち湿気、圧延油、ほこり等に対して)密閉されており、それによって、軸受モジュール6のための完全にカプセル化された「軸受ハウジング」7が形成される。
【0097】
図2が示すように、当該ロール延長部分22上には(密封された/カプセル化されたハウジング7内部で)、((予圧)転がり軸受構造12から)4つの円すいころ軸受13、14が配置されており、2つの、軸方向において最も外側、又は、軸方向において最も外側に離れて位置している円すいころ軸受13、14は、O配置で配置されている。別の2つの(軸方向内側に位置する)円すいころ軸受14は、その軸方向外側の隣接する円すいころ軸受14に対応して配置されている/位置決めされている。
【0098】
図2も示すように、シャフトナット26を用いて、円すいころ軸受13、14、すなわちその内輪23は、ロール延長部分22上の(径方向)オフセット50に押し付けられる。
【0099】
円すいころ軸受13、14の内輪23の間では、精密製造された中間リング/スペーサリング25が、最適化された(すなわち均等に分配された)各軸受への力の分配のために配置されている。
【0100】
3つの軸方向内側に位置する、1つの支持方向を構成する円すいころ軸受14の外輪14の間には、同様に、精密製造された中間リング/スペーサリング25が、最適化された(すなわち均等に分配された)各軸受への力の分配のために配置されている。
【0101】
これら3つの軸方向内側に位置する、1つの支持方向を構成する円すいころ軸受14の、最も離れて軸方向外側に位置する円すいころ軸受14の外輪24は、軸方向内側で、ハウジング中間要素33の、径方向内側に向かって延在するオフセット(ショルダー)51に当接しており、軸方向において最も外側の円すいころ軸受13の外輪24は、軸方向外側で、ハウジング中間要素33の、径方向内側に向かって延在するオフセット51に当接しており、軸方向外側に位置するハウジングカバー31によって保持される。
【0102】
精密製造された「内側」の中間リング/スペーサリング25と、「内側」中間リング/スペーサリング25との調整によって、支持力が、円すいころ軸受14の外輪24を通して均等に分散されて、径方向内側に向かって延在するオフセット(ショルダー)51を通じて、ハウジング7内に誘導される。
【0103】
軸受モジュール6の、その保持アーム28を用いた、圧延機スタンド1内での垂直の/垂直に浮動する支持11によって、又は、軸受モジュール6若しくはロール2の水平の(並進的な)可動性によって、及び、一方において圧延機スタンド1若しくはロール支台に対して支持装置17を用いた、及び、軸受モジュール6内でのロール2の固定軸受アセンブリ8を用いた、軸受モジュール6若しくはロール2の軸方向の可動性によって、「支持」と「回転/回転の自由度」とは、ロール2において分離しており、この分離は、ロール2の取り付けに、摩耗を減少させるように作用する。
【0104】
加えて、当該軸受モジュール6を用いたロール2の取り付けで、ロールを交換する際に、ロール2は、軸受モジュール6のハウジング7上の保持アーム28を通じて、圧延機スタンド1が側方において開放された後も、圧延機スタンド1内の曲げシリンダ30によって保持され、続いて、対応する装置(スライド等)によって取り出されることが可能であり、それによって、ロール交換が著しく容易になる。
【0105】
ロール延長部分22が、ロール2とネジで固定されている「のみ」である場合、ロール延長部分22を、圧延機スタンド1からロール2を取り外した後「即座に」、次の、使用準備のできたロール2にネジで取り付けることが可能であり、他方では、「使用された」ロール2を、オーバーホールに回すことが可能である。
【0106】
それによって、有利には、実際の摩耗部分(つまりロール2自体)のみを交換すればよく、他方では、ロール延長部分22は、即座に、次の使用準備のできたロール2にネジで取り付けられ、ロール2、ロール延長部分22及び軸受モジュール6から成る構造は、再び圧延機スタンド1内に取り付けられ得る。
【0107】
ロール延長部分22も、直径の異なるロール2にネジで固定可能であり、「つねに使用中」である。すなわち、実際に圧延機スタンド1において必要とされる数(場合によってはさらに予備の分も)のロール延長部分22を用意すればよく、他方では、より多い数のロール2(例えば様々な圧延要件のために、異なる直径を有し、予想される交換後の仕上げ時間に適応したロール2)が供給され得る。
【0108】
加えて、軸受モジュール6又はこれに関して実現されるロール2の取り付けは、新しい圧延材片を圧延機スタンド1内に投入する際に、付加的な利点を提供する。つまり、この際、新しい圧延材片の端面による機械的な衝突(損傷リスク)を回避するためには、「上側の」ロール2と「下側の」ロール2とを、一方では、離して移動させなければならない。このようにロール2を離して移動させることは、曲げシリンダ30によって支援され、曲げシリンダ30は、「上側の」ロール2を、その保持アームを通じて、適切に持ち上げ、又は、「下側の」ロール2を、適切に下降させる。
【0109】
付加的に、及び、従来のオーバーハング作業ロールとは異なり、ロール2は、曲げシリンダ30によって、(ロール2を駆動している)中間ロール34に対して押圧され得るので、ロール2は、中間ロール34によって、圧延材の速度にまで加速され、それによって、引き続いて、ロール間隙を設定圧延厚さになるように通過する際、ロール2の圧延材との、対応して軟らかく、ロールを傷めない接触が生じる。
【0110】
軸受モジュール6のハウジング7がカプセル化され、密封されている場合、従って、内側に位置する固定軸受アセンブリ8が、外部の影響から保護されている場合、それによって、軸受要素の寿命は何倍も延長される。
【0111】
本発明が、1つ又は複数の好ましい実施例によって、詳細に図示かつ説明されたが、本発明は、1つ又は複数の開示された例によって限定されるものではなく、本発明の保護範囲を離れることなく、他の変型例を当該例から導き出すことが可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 圧延機スタンド
2 作業ロール、ロール
3 2の(軸方向)端面
4 2の(軸方向)端面
5 軸方向
6 軸受モジュール
7 (密封され、カプセル化された)(軸受)ハウジング
8 固定軸受アセンブリ
9 回転軸
10 (軸方向に)浮動する取り付け/(軸方向)支持
11 (垂直に)浮動する取り付け/(垂直)支持
12 (予圧)転がり軸受構造、軸受
13 (第1の)円すいころ軸受
14 (第2の)円すいころ軸受
15 周囲
16 シール/シール要素、回転軸シール、Vリングシール、Oリングシール、ラビリンスシール
17 支持装置
18 17の軸方向の、キャンバーを備えた端面、20の軸方向外側の端面
19 17の第1の部材
20 17の第2の部材
21 バネ要素、コイルバネ
22 ロール延長部分
23 (12、13又は14の)内輪
24 (12、13又は14の)外輪
25 精密製造された中間リング/スペーサリング
26 シャフトナット
27 (センタリングされた)ネジ固定、(植え込み)ボルト
28 保持要素/保持アーム(「耳たぶ」)
29 支持面
30 担持要素、曲げシリンダ
31 (軸方向外側に位置する)ハウジングカバー
32 (軸方向内側に位置する)ハウジングカバー
33 中間要素
34 中間ロール
35 7の(軸方向)端面
36 19の(径方向に突出する)縁部、フランジ
37 20の内側延在部分
38 環状ワッシャ
39 径方向
40 軸方向の変位経路
41 36の軸方向厚さ
42 21の第1の(軸方向内側に位置する)端部
43 31の軸方向外側の端面
44 21の第2の(軸方向外側に位置する)端部
45 20の軸方向内側に位置する端面
46 センタリングピン
47 22上のフランジ
48 22の軸方向自由端
49 32の開口部
50 22上の(径方向)オフセット
51 33上の径方向内側に向かって延在するオフセット
図1
図2
図3