(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】血圧測定装置、モデル設定装置、および血圧測定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20230106BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20230106BHJP
A61B 5/103 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
A61B5/02 310V
A61B5/022 400E
A61B5/103
A61B5/022 ZDM
(21)【出願番号】P 2020565675
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2019050082
(87)【国際公開番号】W WO2020145091
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019001951
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】足立 佳久
(72)【発明者】
【氏名】小川 莉絵子
(72)【発明者】
【氏名】江戸 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】富澤 亮太
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-077890(JP,A)
【文献】特開2018-164587(JP,A)
【文献】国際公開第2017/085894(WO,A1)
【文献】特開2016-193021(JP,A)
【文献】特開2009-072407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 - 5/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の脈波に基づき当該生体の第1血圧を測定する血圧測定装置であって、
上記生体の体表における所定の領域において脈波を取得する脈波取得部と、
上記所定の領域の移動方向を検出する体動検出部と、
上記移動方向を分類する体動分類部と、
上記脈波に基づき、複数の脈波パラメータを算出する脈波パラメータ算出部と、を備えており、
上記血圧測定装置は、モデル保管部と通信可能に接続されており、
上記モデル保管部には、
(i)上記移動方向の分類結果に応じて上記第1血圧を推定するための複数の血圧推定モデル
と、
(ii)上記移動方向の分類結果に応じた上記複数の血圧推定モデルのそれぞれの評価結果と、
が、予め保管されており、
上記血圧測定装置は、
上記複数の血圧推定モデルのそれぞれの上記評価結果に基づき、当該複数の血圧推定モデルの中から、上記第1血圧を算出するための測定モデルを選択するモデル選択部と、
上記測定モデルを用いて、上記複数の脈波パラメータに基づき上記第1血圧を算出する第1血圧測定部
と、をさらに備えている、血圧測定装置。
【請求項2】
Nを2以上の整数として、
上記体動分類部は、上記移動方向を、第1パターンから第NパターンまでのN通りのパターンに分類し、
kを1以上かつN以下の整数として、
第kパターンに応じた上記血圧推定モデルを第kモデルと称し、
上記モデル保管部には、
(i)第kパターンに応じた上記複数の血圧推定モデルである複数の第kモデルと、
(ii)上記複数の第kモデルのそれぞれの評価結果と、
が、予め保管されており、
上記モデル選択部は、上記複数の第kモデルのそれぞれの上記評価結果に基づき、当該複数の第kモデルの中から、上記測定モデルを選択する第kモデル選択部を有している、請求項
1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
上記所定の領域は、上記生体の顔である、請求項1
または2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
生体の脈波に基づき当該生体の第1血圧を測定する血圧測定装置と通信可能に接続されたモデル設定装置であって、
上記生体の第2血圧を測定する第2血圧測定部と、
上記生体の体表における所定の領域において脈波を取得する脈波取得部と、
上記所定の領域の移動方向を検出する体動検出部と、
上記移動方向を分類する体動分類部と、
上記脈波に基づき、複数の脈波パラメータを算出する脈波パラメータ算出部と、を備えており、
上記モデル設定装置は、モデル保管部と通信可能に接続されており、
上記モデル設定装置は、
上記移動方向の分類結果に応じて、上記複数の脈波パラメータと上記第2血圧とに基づき、上記第1血圧を推定するための血圧推定モデルを作成し、当該血圧推定モデルを上記モデル保管部に保管するモデル作成部を備えている、モデル設定装置。
【請求項5】
上記モデル設定装置は、さらに
上記移動方向の分類結果に応じて、上記モデル保管部に保管された複数の上記血圧推定モデルのそれぞれを評価し、その評価結果を当該モデル保管部に保管するモデル評価部を備えている、請求項
4に記載のモデル設定装置。
【請求項6】
Nを2以上の整数として、
上記体動分類部は、上記移動方向を、第1パターンから第NパターンまでのN通りのパターンに分類し、
kを1以上かつN以下の整数として、
第kパターンに応じた上記血圧推定モデルを第kモデルと称し、
上記モデル作成部は、上記複数の脈波パラメータと上記第2血圧とに基づき、上記第1血圧を推定するための複数の第kモデルを作成し、当該複数の第kモデルを上記モデル保管部に保管する第kモデル作成部を有し、
上記モデル評価部は、上記モデル保管部に保管された上記複数の第kモデルのそれぞれを評価し、その評価結果を当該モデル保管部に保管する第kモデル評価部を有している、請求項
5に記載のモデル設定装置。
【請求項7】
生体の脈波に基づき当該生体の第1血圧を測定する血圧測定装置を用いた血圧測定方法であって、
上記生体の体表における所定の領域において脈波を取得する脈波取得工程と、
上記所定の領域の移動方向を検出する体動検出工程と、
上記移動方向を分類する体動分類工程と、
上記脈波に基づき、複数の脈波パラメータを算出する脈波パラメータ算出工程と、を含んでおり、
上記血圧測定装置は、モデル保管部と通信可能に接続されており、
上記モデル保管部には、
(i)上記移動方向の分類結果に応じて上記第1血圧を推定するための複数の血圧推定モデル
と、
(ii)上記移動方向の分類結果に応じた上記複数の血圧推定モデルのそれぞれの評価結果と、
が、予め保管されており、
上記血圧測定方法は、
上記複数の血圧推定モデルのそれぞれの上記評価結果に基づき、当該複数の血圧推定モデルの中から、上記第1血圧を算出するための測定モデルを選択するモデル選択工程と、
上記測定モデルを用いて、上記複数の脈波パラメータに基づき上記第1血圧を算出する第1血圧測定工程
と、をさらに含んでいる、血圧測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一態様は、生体の脈波に基づいて当該生体の血圧を測定する血圧測定装置に関する。本願は、2019年1月9日に、日本に出願された特願2019-1951に優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体(被験体)の生体情報を測定するための様々な技術が提案されている。一例として、特許文献1には、被験体の顔が撮影された画像(カメラ画像)に基づき、当該被験体の所定の種類の生体情報(例:脈拍数)を高精度に測定するための技術が開示されている。具体的には、特許文献1の技術は、被験体の顔に動きが生じた場合にも、脈拍数を高精度に測定することを一目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
但し、特許文献1では、生体の血圧(生体情報の別の例)を高精度に測定するための具体的な手法については、特に言及されていない。本開示の一態様の目的は、従来よりも高精度に生体の血圧を測定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る血圧測定装置は、生体の脈波に基づき当該生体の第1血圧を測定する血圧測定装置であって、上記生体の体表における所定の領域において脈波を取得する脈波取得部と、上記所定の領域の移動方向を検出する体動検出部と、上記移動方向を分類する体動分類部と、上記脈波に基づき、複数の脈波パラメータを算出する脈波パラメータ算出部と、を備えており、上記血圧測定装置は、モデル保管部と通信可能に接続されており、上記モデル保管部には、(i)上記移動方向の分類結果に応じて上記第1血圧を推定するための複数の血圧推定モデルと、(ii)上記移動方向の分類結果に応じた上記複数の血圧推定モデルのそれぞれの評価結果と、が、予め保管されており、上記血圧測定装置は、上記複数の血圧推定モデルのそれぞれの上記評価結果に基づき、当該複数の血圧推定モデルの中から、上記第1血圧を算出するための測定モデルを選択するモデル選択部と、上記測定モデルを用いて、上記複数の脈波パラメータに基づき上記第1血圧を算出する第1血圧測定部と、をさらに備えている。
【0006】
また、上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るモデル設定装置は、生体の脈波に基づき当該生体の第1血圧を測定する血圧測定装置と通信可能に接続されたモデル設定装置であって、上記生体の第2血圧を測定する第2血圧測定部と、上記生体の体表における所定の領域において脈波を取得する脈波取得部と、上記所定の領域の移動方向を検出する体動検出部と、上記移動方向を分類する体動分類部と、上記脈波に基づき、複数の脈波パラメータを算出する脈波パラメータ算出部と、を備えており、上記モデル設定装置は、モデル保管部と通信可能に接続されており、上記モデル設定装置は、上記移動方向の分類結果に応じて、上記複数の脈波パラメータと上記第2血圧とに基づき、上記第1血圧を推定するための複数の血圧推定モデルを作成し、当該複数の血圧推定モデルを上記モデル保管部に保管するモデル作成部と、上記移動方向の分類結果に応じて、上記モデル保管部に保管された上記複数の血圧推定モデルのそれぞれを評価し、その評価結果を当該モデル保管部に保管するモデル評価部と、をさらに備えている。
【0007】
また、上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る血圧測定方法は、生体の脈波に基づき当該生体の第1血圧を測定する血圧測定装置を用いた血圧測定方法であって、上記生体の体表における所定の領域において脈波を取得する脈波取得工程と、上記所定の領域の移動方向を検出する体動検出工程と、上記移動方向を分類する体動分類工程と、上記脈波に基づき、複数の脈波パラメータを算出する脈波パラメータ算出工程と、を含んでおり、上記血圧測定装置は、モデル保管部と通信可能に接続されており、上記モデル保管部には、(i)上記移動方向の分類結果に応じて上記第1血圧を推定するための複数の血圧推定モデルと、(ii)上記移動方向の分類結果に応じた上記複数の血圧推定モデルのそれぞれの評価結果と、が、予め保管されており、上記血圧測定方法は、上記複数の血圧推定モデルのそれぞれの上記評価結果に基づき、当該複数の血圧推定モデルの中から、上記第1血圧を算出するための測定モデルを選択するモデル選択工程と、上記測定モデルを用いて、上記複数の脈波パラメータに基づき上記第1血圧を算出する第1血圧測定工程と、をさらに含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る血圧測定装置によれば、従来よりも高精度に生体の血圧を測定できる。本開示の一態様に係る血圧測定方法によっても、同様の効果を奏する。また、本開示の一態様に係るモデル設定装置によっても、同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1の血圧測定装置の要部の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】顔画像分割部の処理の一例について説明するための図である。
【
図3】顔画像分割部の処理の別の例について説明するための図である。
【
図4】測定モデル候補を抽出する処理の一例について説明するための図である。
【
図6】
図1の血圧測定装置における測定モデル作成方法の処理の流れの一例を示す図である。
【
図7】
図1の血圧測定装置における血圧測定方法の処理の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
実施形態1の血圧測定装置1について、以下に説明する。便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、以降の各実施形態では、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。公知技術と同様の事項についても、説明を適宜省略する。なお、各図に示されている装置構成は、説明の便宜上のための単なる一例である。また、明細書中において以下に述べる各数値も、単なる一例である。
【0011】
(血圧測定装置1の概要)
図1は、血圧測定装置1の要部の構成を示す機能ブロック図である。血圧測定装置1は、被験体H(生体)の脈波に基づいて、当該被検体Hの血圧(以下、単に血圧)を測定する。具体的には、血圧測定装置1は、以下に述べるモデル設定装置100において設定された血圧測定モデル(以下、単に「測定モデル」とも称する)を用いて、血圧を測定する。なお、本明細書では、後述する血圧推定モデルを、単に「推定モデル」とも称する。また、測定モデルおよび推定モデルを総称的に、単に「モデル」と称する場合もある。
【0012】
以下の説明では、非接触式の血圧測定装置(被験体Hに接触することなく血圧を測定可能な測定装置)としての血圧測定装置1について述べる。実施形態1では、被験体Hが人である場合を例示する。血圧測定装置1は、被験体Hの体表における所定の領域を、ROI(Region of Interest,関心領域)として取り扱うことで、血圧を測定する。以下の説明では、ROIが顔である場合を例示する。なお、本明細書では、被検体Hの顔を、単に「顔」とも称する。その他の表記についても、同様である。
【0013】
血圧測定装置1は、モデル設定装置100とモデル選択部60と血圧測定部160(第1血圧測定部)と血圧測定結果出力部170とを備えている。モデル設定装置100は、血圧取得部2(第2血圧測定部)と、脈波取得部10と、脈波パラメータ算出部20と、体動検出部21と、体動分類部22と、モデル作成部30と、モデル評価部40と、モデル保管部50とを備えている。
【0014】
図1の例では、モデル設定装置100は、血圧測定装置1の内部に設けられている。但し、モデル設定装置100を、血圧測定装置1の外部に設けることもできる(後述の実施形態2を参照)。
【0015】
血圧取得部2は、被検体Hの血圧を測定する。血圧取得部2は、接触式の血圧計(例:カフ血圧計)である。血圧取得部2によって測定された血圧(以下、BPm)は、モデル設定装置100におけるテスト用データ(訓練用データ)として用いられる。すなわち、BPmは、モデル選択部60において測定モデルを設定するために用いられる。また、BPmは、モデル作成部30において複数の推定モデルを設定するためにも用いられる。
【0016】
血圧取得部2は、モデル作成部30およびモデル評価部40(より具体的には、以下に述べるモデル評価指数算出部42)に、BPmを出力する。なお、血圧測定装置1における最終的な血圧測定結果(後述のP)を、第1血圧とも称する。また、当該第1血圧との区別のため、BPmを第2血圧とも称する。後述するように、Pは血圧測定部160によって測定(算出)される。このことから、BPmは、血圧測定装置1によってPを測定するための訓練用データとも表現できる。
【0017】
(脈波取得部10)
脈波取得部10は、ROI(例:顔)における脈波を取得する。脈波取得部10は、撮像部11と、光源12と、光源調節部13と、顔画像取得部14と、顔画像分割部15と、肌領域抽出部16と、脈波算出部17とを備えている。
【0018】
撮像部11は、イメージセンサとレンズとを含むカメラである。当該イメージセンサとしては、例えば、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型またはCCD(Charge-Coupled Device)型のイメージセンサが用いられてよい。撮像部11は、所定のフレームレートによって(つまり、所定の時間間隔ごとに)、被検体Hを複数回撮像し、撮像した被検体Hの画像(以下、被検体画像)を顔画像取得部14へ出力する。一例として、上記フレームレートは、300fps(frames per second)である。
【0019】
撮像部11は、公知のカラーフィルタを含んでいてもよい。当該カラーフィルタは、血液量の増減を観察するために適した光学特性を有していることが好ましい。好適なカラーフィルタの例としては、(i)RGBCy(Red,Blue,Green,Cyan:赤,青,緑,シアン)カラーフィルタ、(ii)または、RGBIR(Red,Blue,Green,Infrared:赤,青,緑,赤外)カラーフィルタを挙げることができる。また、撮像部11は、RGBカメラであってもよいし、あるいはIRカメラであってもよい。
【0020】
光源12は、撮像部11が被検体Hを撮像する場合に、当該被検体Hに対して光を照射する。光源調節部13は、光源12を調節する。一例として、光源調節部13は、モデル選択部60によって選択された測定モデルにおいて使用される領域間の脈波伝播時間(脈波パラメータの一例)を精度良く算出できるように、光源を調節することが好ましい。
【0021】
具体的には、光源調節部13は、該当する領域において一定の信号品質を有する脈波を検出できるように光源12を調節する。「一定の信号品質を有する脈波」とは、例えば、「SNR(Signal-to-Noise Ratio,信号対雑音比)が高い脈波」である。より具体的には、光源調節部13は、(i)光源12の光量、(ii)光源12の光スペクトル、および、(iii)被検体Hの肌に対する照射角度、のうちの少なくとも1つを調節する。
【0022】
なお、脈波取得部10には、光源12および光源調節部13は必ずしも設けられなくともよい。光源12および光源調節部13が設けられない場合、撮像部11は、周囲環境光のみを用いて被検体Hを撮像してもよい。
【0023】
顔画像取得部14は、撮像部11によって撮像された被検体画像から、被検体Hの顔領域を抽出する。顔画像取得部14は、顔領域が抽出された後の画像を、顔画像(被検体Hの顔が写った画像)として取得する。一例として、顔画像取得部14は、被検体が写った動画像(複数の被検体画像によって構成される動画像)に対してフェイストラッキングを行うことにより、当該動画像の所定のフレーム間隔毎に、顔領域を抽出してもよい。
【0024】
但し、顔画像取得部14は、必ずしもフェイストラッキングを行わなくとも、顔領域を抽出できる。例えば、(i)予め設定された枠の中に被検体Hに顔を入れさせ、かつ、(ii)当該顔と撮像部11とが固定された状態で、撮像部11によって被検体画像を撮像してもよい。このような場合には、被検体画像における顔のブレを抑制できるので、フェイストラッキングは不要である。
【0025】
顔画像分割部15は、顔画像取得部14によって抽出された顔画像を複数の領域(部分領域)に分割する。以下の説明では、便宜上、顔画像を「IMG」とも称する。
図2は、顔画像分割部15の処理の一例について説明するための図である。
図2には、顔画像分割部15による分割後のIMGの一例が示されている。
図2のIMGは、正面を向いた顔が写っている顔画像の一例である。
【0026】
図2の例では、顔画像分割部15は、IMGを、縦方向および横方向にそれぞれ10分割(例:それぞれ10等分)する。つまり、顔画像分割部15は、IMGを、100個の部分領域(部分領域1~100)に分割する。但し、顔画像分割部15によるIMGの分割方法は、
図2の例に限定されない。例えば、各部分領域のサイズは、必ずしも同一でなくともよい。
【0027】
脈波取得部10の他の部分についての説明に先立ち、体動検出部21の動作について述べる。体動検出部21は、被検体Hの体動を検出する。具体的には、体動検出部21は、ROI(例:顔)の動きを検出する。より具体的には、体動検出部21は、ROIの移動方向を検出する。一例として、体動検出部21は、顔画像取得部14によるフェイストラッキングの結果を用いて、動画像内における顔の各特徴点(例:目、鼻、口、または輪郭)の移動量を検出する。
【0028】
具体的には、体動検出部21は、所定のフレーム間隔毎に、各特徴点の位置変化量(移動量)を検出する。つまり、体動検出部21は、所定のフレーム間隔毎に、「各特徴点がどの方向にどの程度動いたか」を検出する。体動検出部21は、上記移動量に基づき、顔の移動方向をさらに検出する。また、体動検出部21は、上記移動量に基づき、現時点における顔の向きをさらに検出する。
【0029】
後述するように、モデル設定装置100では、ROIの移動方向(例:顔の向き)について、複数種類の所定のパターンが予め設定されている。以下に詳述するように、体動分類部22は、体動検出部21によって検出された顔の向きが、上記所定のパターンのうちの、どのパターンに属するか(該当するか)を特定する。
【0030】
図3は、顔画像分割部15の処理の別の例について説明するための図である。顔画像分割部15は、体動分類部22によるパターン分類の結果にさらに基づき、IMGを分割できる。
図3のIMGAは、正面を向いた顔が写っている顔画像の別の例である。体動分類部22は、IMGAにおける顔の向きが、後述の
図5の「パターン1」に該当すると判定する。
【0031】
図3の例において、IMGAに対する分割手法は、
図2の例と同様である。但し、説明の便宜上、
図3の例では、IMGAは、25個(部分領域A1~A25)に分割されている。
図3では、図示の簡便化のため、A1~A25のうちの一部のみに部材番号を付して明示している。この点については、以下に述べる部分領域B1~B25(IMGBの部分領域)についても同様である。
【0032】
図3におけるIMGBは、右下面を向いた顔が写っている顔画像の一例である。以下、IMGAが撮像された時点を時点A、IMGBが撮像された時点を時点Bとそれぞれ称する。本例では、時点Bは、時点Aよりも後の時点である。体動分類部22は、IMG2における顔の向きが、
図5の「パターン7」に該当すると判定する。
【0033】
顔画像分割部15は、あるパターンの顔画像(例:パターン1の顔画像であるIMGA)に対する分割結果に基づき、別のパターンの顔画像(例:パターン7の顔画像であるIMGB)を分割する。具体的には、顔画像分割部15は、IMGBの各部分領域(B1~B25)を、IMGAの各部分領域(A1~A25)に対応させるように、IMGBを分割する。
図3の例では、B1およびB25はそれぞれ、A1およびA25に対応する。
【0034】
このように顔画像を分割することにより、(i)時点A(被験体Hの体動が生じる前)のある部分領域と、(ii)時点B(被験体Hの体動が生じた後)における当該ある部分領域に対応する部分領域とで、概ね同じ部位を示すことができる。
図3の例では、A12およびB12はそれぞれ、被験体Hの片目(例:左目)が写った部分領域である。また、A18およびB18はそれぞれ、被験体Hの口が写った部分領域である。
【0035】
肌領域抽出部16は、各部分領域から肌領域(肌の少なくとも一部が写った領域)を抽出する。肌領域は、被覆物(例:髪の毛)によって肌が完全に覆い隠されていない領域とも表現できる。
図2の例では、肌領域は、各部分領域のうち、網掛けが付されていない領域として示されている。
図2の例において、肌領域抽出部16は、100個の部分領域から、52個(52箇所)の肌領域を抽出する。
【0036】
脈波算出部17は、肌領域抽出部16によって抽出された肌領域のそれぞれについて、脈波(より厳密には、脈波信号)を算出する。脈波算出部17における脈波の算出方法としては、公知の手法(例:独立成分分析を利用した手法)が適用されてよい。脈波算出部17は、算出した脈波を脈波パラメータ算出部20に供給する。
【0037】
脈波パラメータ算出部20は、脈波算出部17から取得した各肌領域の脈波に基づき、脈波パラメータを算出する。本明細書において、「脈波パラメータ」とは、測定モデルに基づく血圧の測定(算出)において用いられる説明変数(独立変数とも称される)を総称的に意味する。
【0038】
実施形態1では、各肌領域間における脈波伝播時間(Pulse Transit Time,PTT)が、脈波パラメータとして用いられる場合を例示する。この場合、脈波パラメータ算出部20は、公知の手法を用いて、各肌領域の脈波に基づきPTTを算出する。なお、領域A(任意の1つの肌領域)と領域B(領域
Aとは別の1つの肌領域)との間のPTTを、PTT(A-B)とも表す。例えば、
図2の領域23・24間のPTTは、PTT(23-24)として表される。
【0039】
図2の例の場合、脈波パラメータ算出部20は、52個の肌領域から、任意の2つの肌領域の組み合わせを選択する。すなわち、脈波パラメータ算出部20は、総数で
52C
2=1326通りの組み合わせを選択する。そして、脈波パラメータ算出部20は、各組み合わせについて、PTTを算出する。このように、脈波パラメータ算出部20は、1326通りのPTT、すなわち、PTT(23-24)~PTT(96-97)を算出する。脈波パラメータ算出部20は、算出した各PTT(脈波パラメータ)を、モデル作成部30、評価用予測血圧算出部41、および血圧測定部160のそれぞれに供給する。
【0040】
(モデル作成部30)
モデル作成部30は、血圧推定モデル(推定モデル)を作成する。推定モデルとは、被検体Hの血圧(P)を推定するための計算モデルである。具体的には、モデル作成部30は、(i)脈波パラメータ算出部20において算出された脈波パラメータ(PTT)と、(ii)血圧取得部2において取得された被検体Hの血圧(BPm)とを、テスト用データとして用いることにより、推定モデルを作成する。
【0041】
なお、
図1に示されるように、モデル作成部30は、第1モデル作成部300-1、第2モデル作成部300-2、…、および第Nモデル作成部300-Nを有する。Nは、顔の向きについて予め設定された分類パターン数を示す。Nは、2以上の任意の整数である。第kモデル作成部300-kは、パターンkに応じた推定モデルを作成する。kは、1≦k≦Nを満たす整数である。このように、モデル作成部30は、顔の向きの各パターンに応じた推定モデルを作成できる。
【0042】
本明細書では、便宜上、第1モデル作成部300-1~第Nモデル作成部300-Nを総称的に、モデル作成部30とも称する。モデル作成部30についての説明は、任意の第kモデル作成部300-kに当てはまる。同様の趣旨により、本明細書では、後述する第1モデル評価用予測血圧算出部410-1~第Nモデル評価用予測血圧算出部410-Nを総称的に、評価用予測血圧算出部41とも称する。また、後述する第1モデル評価指数算出部420-1~第Nモデル評価指数算出部420-Nを総称的に、モデル評価指数算出部42とも称する。また、後述する第1モデル選択部600-1~第Nモデル選択部600-Nを総称的に、モデル選択部60とも称する。
【0043】
(推定モデルの作成方法の一例)
脈波が血管内を伝播する速度vは、Moens-Kortegの式、すなわち、
【0044】
【0045】
によって表される。式(1)において、Eは血管のヤング率であり、aは血管壁圧であり、Rは血管径であり、ρは血液密度である。
【0046】
血管のヤング率Eは、血圧Pに対して指数関数的に変化することが知られている。従って、P=0における血管のヤング率をE0とした場合、Eは、
【0047】
【0048】
として表される。γは、血管に依存する定数である。
【0049】
また、血管経路の長さLは、
【0050】
【0051】
として表される。Tは脈波伝播時間(PTT)であり、Lは血管経路の長さである。
【0052】
従って、式(1)~(3)から、
【0053】
【0054】
が導かれる。
【0055】
式(4)に示されるように、Lが一定の場合、TはPと相関関係を有する。そこで、モデル作成部30は、脈波パラメータ算出部20において算出されたPTTを用いて、Pの推定モデルを複数作成する。
【0056】
まず、モデル作成部30は、複雑度1の推定モデルM1を作成する。本明細書における「複雑度」とは、推定モデルにおける説明変数の数(例:推定モデルにおいて用いられるPTTの数)を意味する。以下の例では、推定モデルM1では、説明変数として1つのPTTが用いられている。
【0057】
以下の説明では、脈波パラメータ算出部20において算出された1つのPTTを、PTT1として表す。PTT1は、任意の2つの肌領域間におけるPTTである。モデル作成部30は、PTT1とBPmとに対して、最小二乗法を用いた回帰分析を行う。モデル作成部30は、回帰分析の結果として、推定モデルM1を作成する。脈波パラメータ算出部20において算出された各PTT、および、血圧取得部2において取得されたBPmはいずれも、テスト用データの一例である。
【0058】
一例として、推定モデルM1が、
BP1=α1×PTT1+α2 …(5)
によって表される線形モデル(線形関数によって表現される計算モデル)である場合を考える。式(5)において、BP1は予測血圧であり、α1およびα2はそれぞれ定数である。この場合、モデル作成部30は、回帰分析を行うことにより、α1およびα2を算出する(すなわち、推定モデルM1を作成する)。
【0059】
以下、便宜上、
図2の例における1326通りのPTTのそれぞれを、PTT1-1~PTT1-1326と称する。モデル作成部30は、PTT1-1~PTT1-1326を用いて、当該PTTと同数の推定モデルM1を作成する。便宜上、これらの推定モデルM1のそれぞれを、M1-1~M1-1326と称する。
【0060】
次に、脈波パラメータ算出部20は、複雑度2の推定モデルM2を作成する。推定モデルM2では、説明変数として2つのPTTが用いられている。以下の説明では、脈波パラメータ算出部20において算出された互いに異なる2つのPTTを、PTT1およびPTT2として表す。
【0061】
モデル作成部30は、(i)PTT1およびPTT2と、(ii)BPmと、に対して、最小二乗法を用いた回帰分析を行う。モデル作成部30は、回帰分析の結果として、推定モデルM2を作成する。
【0062】
一例として、推定モデルM2が、
BP2=β1×PTT1+β2×PTT2+β3 …(6)
によって表される線形モデルである場合を考える。式(6)において、BP2は予測血圧であり、β1~β3はそれぞれ定数である。この場合、モデル作成部30は、回帰分析を行うことにより、β1~β3を算出する。
【0063】
図2の例では、モデル作成部30は、PTT1-1~PTT1-1326を用いて、当該PTTよりも多数の推定モデルM2を作成する。本例では、PTT1とPTT2の組み合わせは、878475通り(つまり、
1326C
2通り)である。従って、モデル作成部30は、878475個の推定モデルM2を算出する。
【0064】
以下同様にして、モデル作成部30は、複雑度3の推定モデルM3、複雑度4の推定モデルM4、…、複雑度zの推定モデルMzを作成する。zは、複雑度の上限値を示す。zは、後述の
図6のフローチャートの各処理における演算結果に応じて相違しうる。モデル作成部30は、作成した各推定モデルを、モデル評価部40(より具体的には、評価用予測血圧算出部41)に供給する。
【0065】
以上の説明の通り、第1モデル作成部300-1は、パターン1に応じた推定モデル(以下、第1モデル)を作成する。第2モデル作成部300-2~第Nモデル作成部300-Nについても同様である。すなわち、第kモデル作成部300-kは、パターンkに応じた推定モデル(以下、第kモデル)を作成する。
【0066】
このように、モデル作成部30は、第1モデル~第Nモデルを作成する。以下、第1モデル~第Nモデルを総称して、モデル群とも称する。
図1の例では、モデル作成部30は、作成したモデル群を、モデル評価部40およびモデル保管部50にそれぞれ供給する。
【0067】
(モデル評価部40)
モデル評価部40は、モデル作成部30において作成された各推定モデルを評価し、その評価結果を出力する。具体的には、モデル評価部40は、以下に述べるPIを、評価結果として出力する。
図1の例では、モデル評価部40は、モデル作成部30からモデル群を直接的に取得している。但し、モデル評価部40は、モデル作成部30によって作成され、かつ、モデル保管部50に予め保管されたモデル群を取得してもよい。
【0068】
モデル評価部40は、評価用予測血圧算出部41とモデル評価指数算出部42とを有する。評価用予測血圧算出部41は、第1モデル評価用予測血圧算出部410-1、第2モデル評価用予測血圧算出部410-2、…、および第Nモデル評価用予測血圧算出部410-Nを有する。また、モデル評価指数算出部42は、第1モデル評価指数算出部420-1、第2モデル評価指数算出部420-2、…、および第Nモデル評価指数算出部420-Nを有する。
【0069】
第kモデル評価用予測血圧算出部410-kおよび第kモデル評価指数算出部420-kはそれぞれ、第kモデルに応じた機能部である。第kモデル評価用予測血圧算出部410-kと第kモデル評価指数算出部420-kとを総称して、「第kモデル評価部」とも称する。
【0070】
評価用予測血圧算出部41は、モデル作成部30において作成された推定モデルにおける予測血圧(以下、BPe)を算出する。具体的には、評価用予測血圧算出部41は、当該推定モデルに対し、テスト用データとして脈波パラメータ算出部20によって算出されたPTTを適用(具体的には代入)することにより、BPeを算出する。
【0071】
モデル評価指数算出部42は、上記推定モデルの評価指数(以下、PI)を算出する。モデル評価指数算出部42は、BPeとBPmとに基づき、PIを算出してよい。一例として、モデル評価指数算出部42は、BPeとBPmとの平均二乗誤差(Mean Square error,MSE)をPIとして算出する。モデル評価指数算出部42は、複雑度の小さい推定モデルから順番に、各推定モデルのPIを算出する。そして、モデル評価指数算出部42は、算出したPIをモデル保管部50に供給する。
【0072】
以上の説明の通り、第1モデル評価用予測血圧算出部410-1は、第1モデルにおける予測血圧(第1モデル用予測血圧)を算出する。第2モデル評価用予測血圧算出部410-2~第Nモデル評価用予測血圧算出部410-Nについても同様である。すなわち、第kモデル評価用予測血圧算出部410-kは、第kモデル用予測血圧(以下、BPek)を算出する。このように、評価用予測血圧算出部41は、BPe1~BPeNを算出する。以下、BPe1~BPeNを総称して、予測血圧群とも称する。評価用予測血圧算出部41は、算出した予測血圧群を、モデル評価指数算出部42に供給する。
【0073】
続いて、第1モデル評価指数算出部420-1は、第1モデルにおける各PI(第1モデル評価指数セット)を算出する。第2モデル評価指数算出部420-2~第Nモデル評価指数算出部420-Nについても同様である。すなわち、第kモデル評価指数算出部420-kは、第kモデル評価指数セット(以下、PIk)を算出する。以下、PI1~PIkを総称して、評価指数セット群とも称する。モデル評価指数算出部42は、算出した評価指数セット群を、モデル群と関連付けて、モデル保管部50に供給する。
【0074】
(モデル保管部50)
モデル保管部50には、モデル作成部30によって作成されたモデル群が保管(保存)される。また、モデル保管部50には、モデル評価指数算出部42によって算出された評価指数セット群が保管される。モデル保管部50は、公知の記憶装置であってよい。
【0075】
(モデル選択部60)
モデル選択部60は、第1モデル選択部600-1、第2モデル選択部600-2、…、および第Nモデル選択部600-Nを有する。第kモデル選択部600-kは、第kモデルに応じた機能部である。後述の
図7に示されるように、モデル選択部60は、モデル設定装置100による処理の終了後に、血圧測定部160において血圧(P)を測定(算出)するために動作する。
【0076】
モデル選択部60は、モデル評価部40(より詳細には、モデル評価指数算出部42)による評価結果(すなわち、モデル保管部50に保管された各PI)に基づいて、モデル保管部50に保管された複数の推定モデルの中から、少なくとも1つの測定モデルを選択する。測定モデルとは、血圧測定部160において血圧(P)を測定するための計算モデルである。
【0077】
まず、モデル選択部60は、複数の推定モデルの中から、少なくとも1つの測定モデルの候補(モデル候補)を選択する。一例として、モデル選択部60は、複数の推定モデルの中から、「PI(例:MSE)が所定の閾値以下となる推定モデル」を、測定モデル候補として抽出する。そして、モデル選択部60は、測定モデル候補の中から、少なくとも1つの測定モデルを選択する。
【0078】
一例として、モデル選択部60によって1つの測定モデルを選択する場合を考える。この場合、モデル選択部60は、測定モデル候補の内、PIが最小となる推定モデルを、測定モデルとして選択してよい。あるいは、モデル選択部60は、測定モデル候補の内、複雑度が最も小さい推定モデルを、測定モデルとして選択してもよい。
【0079】
また、モデル選択部60は、複数の測定モデルを選択してもよい。例えば、モデル選択部60は、複数の測定モデル候補の内、「測定モデル候補において用いられる全ての部分領域におけるSNRが、所定の値以上である測定モデル候補」を、測定モデルとして選択してもよい。
【0080】
図4は、測定モデル候補を抽出する処理の一例について説明するための図である。
図4の例では、推定モデルの誤差の標準偏差がPIとして用いられている(後述の変形例も参照)。この場合、モデル評価指数算出部42は、BPe(予測血圧)とBPm(テスト用データ)との誤差の標準偏差を、PIとして算出する。
図4のグラフは、モデル評価指数算出部42によって算出されたPI(誤差の標準偏差)の分布を示す。
【0081】
図4の例では、所定の閾値は、「8mmHg」という数値(血圧閾値)に設定されている。当該数値は、非観血式血圧計の規格に基づいて設定されている。この場合、モデル選択部60は、PIが8m
mHg以下となる推定モデルを、測定モデル候補として抽出する。
図4の例では、モデル選択部60は、推定モデルM1~M4(複雑度1~4)の中から、M2~M4を測定モデル候補として抽出する。
【0082】
以上の説明の通り、第1モデル選択部600-1は、第1モデルから、少なくとも1つの測定モデル候補(第1モデル内測定モデル候補)を選択する。そして、第1モデル選択部600-1は、第1モデル内測定モデル候補から、少なくとも1つの測定モデル(第1モデル内測定モデル)を選択する。第2モデル選択部600-2~第Nモデル選択部600-Nについても同様である。
【0083】
すなわち、第kモデル選択部600-kは、第kモデルから、少なくとも1つの第kモデル内測定モデル候補を選択する。そして、第kモデル選択部600-kは、第kモデル内測定モデル候補から、少なくとも1つの第kモデル内測定モデルを特定する。第kモデル内測定モデルとは、パターンkの場合に、血圧測定部160において血圧(P)を測定するための計算モデルである。
【0084】
ところで、一部の肌領域からは、一定の信号品質を有する脈波(高精度な脈波)を取得できない場合が考えられる。このような肌領域の例としては、(i)被覆物によってその一部が覆い隠されている肌領域、または、(ii)影がさしている肌領域を挙げることができる。従って、血圧測定精度の向上の観点からは、このような肌領域の存在を考慮することが好ましい。
【0085】
そこで、脈波算出部17は、まずは各肌領域における脈波を算出する。そして、脈波算出部17は、各肌領域を、(i)一定の信号品質を有する脈波を取得できた領域(以下、品質適合領域)と、(ii)その他の領域(以下、品質不適合領域)と、に分類してよい。品質不適合領域は、一定の信号品質を有する脈波を取得できなかった領域とも表現できる。例えば、各脈波のSNR(信号品質の一例)に基づいて、当該分類が行われてもよい。あるいは、各肌領域の画素値に基づいて、当該分類が行われてもよい。
【0086】
そして、モデル選択部60は、複数の推定モデルの中から、品質適合領域のみが使用されているモデルのみを、測定モデル候補として抽出してよい。これにより、測定結果(後述の血圧P)の精度低下を、より効果的に防止できる。
【0087】
(体動分類部22の処理の一例)
体動分類部22には、被験体Hの顔の向き(方向)について、N種類の所定のパターンが予め設定されている。以下、当該N種類の所定のパターンを示すデータセットを、顔方向テンプレートと称する。体動分類部22は、顔方向テンプレートを用いて、体動検出部21によって検出された顔の向きを分類する。つまり、体動分類部22は、体動検出部21によって検出された顔の向き(以下、検出方向)が、顔方向テンプレート内のどのパターンに該当するかを特定する。
【0088】
図5は、顔方向テンプレートの一例を示す図である。
図5の例では、N=9である。
図5の例では、
・パターン1:正面;
・パターン2:右;
・パターン3:右上;
・パターン4:上;
・パターン5:左上;
・パターン6:左;
・パターン7:左下;
・パターン8:下;
・パターン9:右下;
として、9通りの異なる顔の向きのパターンが規定されている。この場合、体動分類部22は、検出方向をパターン1からパターン9までの9通りに分類できる。なお、「パターンk」は、「第kパターン」と称されてもよい。体動分類部22は、自身が特定した分類番号(パターン番号)を、所定の時間ごとに出力する。
【0089】
上記の例の分類番号は、所定の2つの時点間(例:時点A・B間)での、顔の向きの遷移(変化)を示すために付されている。一例として、時点Aにおける顔の向きがパターン1であったとする。この場合、パターン1~9は、時点A・B間の顔の移動方向のパターンとも表現できる。なお、時点Bにおいてもパターン1である場合、顔の向きに変化がなかったことを意味する。このように、顔の向きのパターンは、顔の移動方向のパターンとも言い換えられてもよい。
【0090】
一例として、時点Aにおける検出方向が正面(パターン1)であった場合を考える。第1の例として、時点Bにおける検出方向が左(パターン6)であったとする。この場合、体動分類部22は、「パターン1→6」に、分類番号を変更する(
図5の矢印の例)。
【0091】
また、第2の例として、時点C(時点Bよりも後の時点)における検出方向が正面(パターン1)であり、時点D(時点Cよりも後の時点)における検出方向が右上(パターン3)で有った場合を考える。この場合、体動分類部22は、「パターン1→6→1→3」に、分類番号を変更する。
【0092】
なお、体動分類部22は、所定の2つの時点間におけるパターン遷移を、分類対象とすることもできる。上記の第2の例の場合であれば、まず、「パターン1→6」から「パターン6→1」に、パターン遷移の分類が変更される。続いて、「パターン6→1」から「パターン1→3」に、パターン遷移の分類が変更される。
【0093】
なお、体動分類部22には、体動検出部21によって算出された移動量に基づき、パターン分類を行うこともできる。一例として、体動分類部22は、当該移動量と所定の閾値とを比較した結果に基づき、パターン分類を行ってもよい。また、パターン分類のための判定処理においては、移動量に替えて、移動量の時間平均値(以下、移動量平均値)を用いてもよい。当該移動量の時間平均値は、例えば、モデル作成のための各測定データの測定時間における、移動量の平均値であってよい。
【0094】
(血圧測定部160および血圧測定結果出力部170)
血圧測定部160は、モデル選択部60によって選択された測定モデルを用いて、血圧(P)を測定する。具体的には、血圧測定部160は、当該測定モデルに、脈波パラメータ算出部20によって算出された脈波パラメータ(例:PTT)を適用することにより、Pを算出する。このように、血圧測定部160は、測定モデルを用いることにより、脈波パラメータに基づき、第1血圧(P)を算出する。
【0095】
上述のように、モデル選択部60は、パターンkに応じた測定モデル(第kモデル内測定モデル)を選択する。このため、血圧測定部160において、被験体Hの顔の向きに適した測定モデルを用いて、Pを算出できる。
【0096】
血圧測定結果出力部170は、血圧測定部160によって測定されたPを取得する。そして、血圧測定結果出力部170は、当該Pを血圧測定結果として出力する。血圧測定結果出力部170は、Pを任意の報知態様によって提示してよい。一例として、血圧測定結果出力部170は、ディスプレイであってよい。この場合、血圧測定結果出力部170は、Pを示す数値を表示することにより、血圧測定結果を被験体Hに視覚的に提示できる。
【0097】
(測定モデル作成方法)
図6は、血圧測定装置1の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6では、血圧測定装置1(より具体的には、モデル設定装置100)によって測定モデルを作成(設定)する方法の一例が示されている。当該方法は、測定モデル作成方法(または測定モデル設定方法)と称されてもよい。
【0098】
まず、撮像部11は、被検体画像を撮像する(S1)。顔画像取得部14は、撮被検体画像から顔画像(IMG)を取得する(S2)。顔画像取得部14は、IMGに対するフェイストラッキングを行う(S3)。
【0099】
次に、体動検出部21は、S3におけるフェイストラッキングの結果を用いて、顔の向き(顔移動方向)を検出する(S4,体動検出工程)。体動分類部22は、S4において検出された顔の向きを分類する(S5,体動分類工程)。例えば、体動分類部22は、当該顔の向きを、上述のパターン1~9のうちのいずれか1つのパターン(パターンk)に分類する。
【0100】
次に、顔画像分割部15は、S5において分類されたパターンに応じて、IMGを複数の部分領域に分割する(S6)。肌領域抽出部16は、当該複数の部分領域から肌領域を抽出する(S7)。脈波算出部17は肌領域のそれぞれについて、脈波(脈波信号)を算出する(S8,脈波取得工程)。次に、脈波パラメータ算出部20は、当該脈波を用いて、各肌領域間におけるPTT(脈波伝播時間)を算出する(S9,脈波パラメータ算出工程)。
【0101】
以下に述べる各処理は、S5において分類されたパターン(パターンk)ごとに行われる。S9の後、モデル設定装置100は、現在血圧を測定しようとしている被検体Hに対するパターンkの推定モデル(第kモデル)が、すでに存在しているか否かを確認する(S10)。つまり、モデル設定装置100は、顔の向きに応じた推定モデルが存在しているか否かを確認する。上記推定モデルが現時点で存在していない場合(S10でNO)、血圧取得部2は、被検体Hの血圧(BPm)を取得する(S11,第2血圧測定工程)。
【0102】
次に、モデル作成部30(より具体的には、第kモデル作成部300-k)は、テスト用データを用いて、パターンkにおける複数の推定モデル(第kモデル)を作成する。具体的には、モデル作成部30は、PTTとBPmとを用いて、所定の複雑度の複数の推定モデルを作成する(S12,モデル作成工程)。S12を初めて行う場合(1回目のループ処理)には、モデル作成部30は、複雑度1の複数の推定モデル(複数のM1)を作成する。上述の通り、モデル作成部30は、自身が作成した各推定モデル(例:各M1)を、モデル保管部50に保管する。
【0103】
なお、S12において用いられるBPmは、被検体画像の撮像(S1)と同時に、血圧取得部2によって測定された血圧である。つまり、第2血圧測定工程は、S11に先立ち、S1と同時に予め1回実行されている。
【0104】
次に、評価用予測血圧算出部41(より具体的には、第kモデル評価用予測血圧算出部410-k)は、テスト用データを用いて、S12において作成された各M1における予測血圧(BPe,より具体的にはBPek)を算出する。具体的には、評価用予測血圧算出部41は、各M1に対しPTTを適用することにより、BPeを算出する(S13)。
【0105】
次に、モデル評価指数算出部42(より具体的には、第kモデル評価指数算出部420-k)は、推定モデルの評価指数(PI,より具体的にはPIk)を算出する。具体的には、モデル評価指数算出部42は、BPeとBPmとの平均二乗誤差(MSE)を、PIとして算出する(S14)。上述の通り、モデル評価指数算出部42は、自身が算出した各PIを、モデル保管部50に保管する。S13およびS14は、総称的にモデル評価工程とも称される。なお、S13の開始に先立ち、モデル評価部40は、モデル保管部50から各推定モデル(第kモデル)を読み出してよい。
【0106】
次に、モデル評価部40は、各複雑度におけるPI(例:MSE)が最も小さい推定モデル同士をプロットしたときに、MSEの極小値が得られたかどうかを判定する(S15)。換言すれば、モデル評価部40は、直前のS14で算出した複雑度における最小のMSEが、その1つ前のループ処理におけるS14で算出した複雑度における最小のMSEよりも大きいか否かを判定する。
【0107】
なお、S16を初めて行う場合(1回目のループ処理)には、その1つ前のループ処理におけるS14で算出した複雑度における最小のMSE(つまり、直前のステップS14で算出した複雑度における最小のMSEとの比較対象)が存在しない。このため、S15を初めて行う場合には、当該S15ではNOと判定される。
【0108】
MSEの極小値が得られなかった場合(換言すれば、直前のS14で算出した複雑度における最小のMSEが、その1つ前のループ処理におけるS14で算出した複雑度における最小のMSEよりも小さい場合)(S15でNO)、モデル作成部30は、推定モデルの複雑度を1だけ上げる(S16)。上記の例の場合、モデル作成部30は、複雑度を1から2へとカウントアップする。そして、S12に戻る。以降、S15でYESとなるまで、S12~S15の各処理が繰り返される。このように、上述のz(複雑度の上限値)は、S12~S15の処理の繰り返し回数と一致する。
【0109】
一方、MSEの極小値が得られた場合(換言すれば、直前のS14で算出した複雑度における最小のMSEが、その1つ前のS14で算出した複雑度における最小のMSEよりも大きい場合)(S15でYES)、モデル評価部40は、当該MSEの極小値が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する(S17)。
【0110】
MSEの極小値が閾値よりも大きい場合(S17でYESの場合)、第kモデルを作成する処理を終了する。このような場合には、これ以上複雑度を上げても、現状よりも優れたPI(例:MSE)が得られる推定モデルを作成できる余地は乏しいと考えられるためである。一方、MSEの極小値が閾値以下である場合(S17でNOの場合)、S16に戻る。このような場合には、複雑度を上げることにより、現状よりも優れたPIが得られる推定モデルを作成できる余地があると考えられるためである。
【0111】
なお、S10でYESの場合(第kモデルがすでに存在している場合)、そのまま処理を終了する(つまり、S11~S17を行わない)。このような場合、第kモデルを作成することは不要であるためである。
【0112】
図6の処理を、パターン1~N(例:パターン1~9)のそれぞれに対して実行することにより、モデル設定装置100によって第1モデル~第Nモデル(モデル群)を作成できる。
【0113】
(血圧測定方法)
図7は、血圧測定装置1の処理の流れの別の例を示すフローチャートである。
図7では、血圧測定装置1によって血圧を測定する方法(血圧測定方法)の一例が示されている。
図7の各処理は、
図6の全処理が完了した後に実行される。つまり、
図7の各処理の開始に先立ち、(i)モデル設定装置100によって作成されたモデル群、および、(ii)モデル設定装置100によって算出された評価指数セット群が、予めモデル保管部50に保管されている。
【0114】
図7のS21~S32のうち、S21~S29はそれぞれ、
図6のS1~9と同様の処理である。従って、以下では、S30~S32および関連する処理についてのみ説明する。なお、S30以降の処理は、S25において分類されたパターン(パターンk)ごとに行われる。また、
図7の例では、第2血圧測定工程は、S21と同時に実行される。
【0115】
S29の後、モデル選択部60(より具体的には、第kモデル選択部600-k)は、モデル保管部50から各推定モデル(第kモデル)を読み出す。また、モデル選択部60は、モデル保管部50から各PIを読み出す。上述の通り、モデル選択部60は、各PIに基づき、複数の第kモデルの内から、所定の測定モデル(第kモデル内測定モデル)を選択する。このように、モデル選択部60は、顔の向きに応じた複数の推定モデルの内から、所定の測定モデルを選択する(S30,モデル選択工程)。
【0116】
次に、血圧測定部160は、S30において選択された測定モデルを用いて、血圧(P)を算出する(S31,第1血圧測定工程)。最後に、血圧測定結果出力部170は、当該Pを血圧測定結果として出力する(S32)。S32の完了に伴い、血圧測定装置1による血圧測定が終了する。
【0117】
(効果)
上述の通り、特許文献1の計測装置は、被験体Hの体動が生じた場合(より具体的には、被験体Hの顔に動きが生じた場合)にも、脈拍数を高精度に測定できるように構成されている。しかしながら、特許文献1には、被験体Hの体動に対処するように、血圧(P)を高精度に測定するための具体的な手法については、特に言及されていない。このように、従来技術では、Pを高精度に測定できるには至らなかった。
【0118】
これに対し、血圧測定装置1では、モデル設定装置100によって、顔の向きに応じた(つまり体動に応じた)、複数種類の推定モデルを予め設定できる。そして、血圧測定装置1は、モデル保管部50に保管された当該推定モデルを用いて、血圧(P)を測定(算出)できる。すなわち、被験体Hの体動を考慮してPを測定できる。それゆえ、ユーザの体動がある場合にも、Pを従来よりも高精度に測定できる。
【0119】
〔実施形態2〕
(1)被験体Hは、人に限定されない。被験体Hは、本開示の一態様に係る血圧測定方法が適用可能な対象であればよい。例えば、被験体Hは、犬または猫等の動物であってもよい。
【0120】
(2)ROIは、顔に限定されない。ROIは、脈波を取得可能な生体の体表であればよい。ROIの別の例としては、首、胸、および掌等を挙げることができる。
【0121】
但し、ROIは、顔であることが好ましい。IMG(顔画像)を用いた場合、血圧の測定時における被検体Hに対する負担を少なくできる。すなわち、自然な状態(リラックスした状態)における被検体Hの血圧を測定しやすくなる。
【0122】
(3)体動検出部21は、必ずしも画像解析に基づいて(例:フェイストラッキング結果を用いて)、体動を検出しなくともよい。例えば、体動検出部21は、体動を検出可能な接触型のセンサであってもよい。当該センサは、被験体Hに拘束感をなるべく与えないように構成されていればよい。このように、血圧測定装置1は、接触式の血圧測定装置であってもよい。
【0123】
また、体動検出部21は、体動の大きさ(変位量)に加え、(i)体動の速度、および、(ii)体動の加速度の少なくともいずれかをさらに検出してもよい。この場合、体動分類部22は、体動の大きさに加え、(i)体動の速度、および、(ii)体動の加速度の少なくともいずれかにさらに基づいて、体動のパターンを分類してもよい。この場合、モデル作成部30において、当該分類に応じた推定モデルを作成すればよい。
【0124】
(4)脈波パラメータは、PTTに限定されない。例えば、脈波パラメータ算出部20は、各肌領域における脈波の波形特徴量を、波形パラメータとして算出してもよい。当該波形特徴量の例としては、(i)脈波の振幅、および、(ii)各脈波パルス間の時間差、を挙げることができる。また、脈波パラメータ算出部20は、PTTと波形特徴量とを組み合わせて、脈波パラメータを設定してもよい。
【0125】
(5)推定モデルは、線形モデルに限定されない。モデル作成部30は、回帰分析を行うことにより、非線形モデル(非線形関数によって表現される計算モデル)を作成してもよい。
【0126】
(6)推定モデルの評価指数(PI)は、BPeとBPmとの平均二乗誤差に限定されない。例えば、(i)BPeとBPmとの平均絶対誤差、または、(ii)BPeとBPmとの誤差の標準偏差、を、PIとして用いることもできる。さらに、PIは、BPeとBPmとに基づいて算出されるパラメータであればよく、誤差に関するパラメータに限定されない。例えば、(i)自由度調整済み決定指数、および、(ii)AIC(Akaike's Information Criteria)を、PIとして用いることもできる。
【0127】
(7)モデル保管部50は、血圧測定装置1と通信可能に接続されていればよい。例えば、モデル保管部50は、血圧測定装置1の外部に設けられたサーバ装置であってもよい。このように、モデル保管部50は、必ずしも血圧測定装置1の内部に設けられていなくともよい。同様に、モデル保管部50は、必ずしもモデル設定装置100の内部に設けられていなくともよい。
【0128】
また、モデル保管部50を割愛することもできる。この場合、モデル選択部60は、モデル作成部30から各測定モデルを直接的に取得すればよい。同様に、モデル選択部60は、モデル評価部40から各PIを直接的に取得すればよい。但し、血圧測定装置1によるPの測定を高速化するためには、モデル保管部50を設けることが好ましい。
【0129】
(8)モデル設定装置100には、測定データ分類部がさらに設けられてよい。測定データ分類部とは、(i)脈波取得部10において取得された脈波から、複数のデータ測定時間毎に脈波を抽出し、かつ、(ii)抽出した各脈波を分類する機能部である。一例として、モデル作成部30に、測定データ分類部の機能が付与されてもよい。
【0130】
一例として、複数のデータ測定時間は、「5秒」、「10秒」、「20秒」、および「30秒」の、4通りの時間である。脈波パラメータ算出部20は、測定データ分類部によって分類された各脈波を用いて、複数の脈波パラメータを算出する。つまり、脈波パラメータ算出部20は、(i)体動分類部22のパターン分類毎、かつ、(ii)測定データ分類部の脈波分類毎に、複数の脈波パラメータを算出する。
【0131】
本例の場合、脈波パラメータ算出部20は、パターンkにおいて、「データ測定時間が5秒の場合の脈波パラメータ」、「データ測定時間が10秒の場合の脈波パラメータ」、「データ測定時間が20秒の場合の脈波パラメータ」、および、「データ測定時間が30秒の場合の脈波パラメータ」の、4通りの脈波パラメータを算出する。
【0132】
そして、モデル作成部30は、脈波パラメータ算出部20によって算出された各脈波パラメータを用いて、各推定モデルを作成する。当該構成によれば、複数種類のデータ測定時間毎に、推定モデルを作成できる。それゆえ、血圧測定装置1は、体動の生じている時間の長さをさらに考慮して、血圧測定に適した測定モデルを選択できる。それゆえ、血圧測定の精度をさらに向上させることができる。
【0133】
(9)モデル設定装置100は、血圧測定装置1と通信可能に接続されていればよい。例えば、モデル設定装置100は、血圧測定装置1の外部に設けられたサーバ装置であってもよい。このように、モデル設定装置100は、必ずしも血圧測定装置1の内部に設けられていなくともよい。
【0134】
〔実施形態3〕
血圧測定装置1の制御ブロック(特に、脈波取得部10、脈波パラメータ算出部20、体動検出部21、体動分類部22、モデル作成部30、モデル評価部40、モデル選択部60、および血圧測定部160)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0135】
後者の場合、血圧測定装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば少なくとも1つのプロセッサ(制御装置)を備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な少なくとも1つの記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本開示の一態様の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。血圧測定装置1は、公知の情報処理装置(例:スマートフォン、タブレット、またはパーソナルコンピュータ)によって実現されてもよい。なお、本開示の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0136】
〔付記事項〕
本開示の一態様は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の一態様の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成できる。