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  • 特許-広範囲の焦点深度を有する眼用レンズ 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】広範囲の焦点深度を有する眼用レンズ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20230106BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20230106BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
A61F2/16
G02C7/06
G02C7/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021196174
(22)【出願日】2021-12-02
(62)【分割の表示】P 2018543198の分割
【原出願日】2017-02-15
(65)【公開番号】P2022043104
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】15/055,993
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ゾラン ミラノビッチ
(72)【発明者】
【氏名】シン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シン ホン
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-511671(JP,A)
【文献】特表2011-528451(JP,A)
【文献】米国特許第07073906(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0161051(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
G02C 7/06
G02C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面、後面、および光軸を含む、光学素子であって、前記前面および前記後面の少なくとも一方は、
前記光軸から第1の半径方向境界へ広がる第1のゾーンと、
前記第1の半径方向境界から前記光学素子のエッジへ広がる第2のゾーンと、
を含む、光学素子
を含む、眼用レンズであって、
前記第1のゾーンは、側領域と、1の曲率を有する外側領域とを含み、
位相シフト特徴が、前記内側領域と前記外側領域とを分離し、前記位相シフト特徴は、前記内側領域隣接する部分に対して厚さが増したリッジを含み、前記リッジは、ッジ面と、前記内側領域から前記リッジ面まで外向きに延びる第1の位相シフトステップと、前記リッジ面から前記外側領域まで内向きに延びる第2の位相シフトステップとを含む、眼用レンズ。
【請求項2】
前記内側領域および前記外側領域が同じ曲率半径を有する、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項3】
前記第1のゾーンの表面プロファイルは、以下の式、
first zone=Zbase+Z2ps
によって定義され、Zbaseは以下の式、
【数1】
によって定義され、rは、前記光軸からの半径方向距離であり、
cは、前記第1のゾーンのベース曲率であり、
kは、円錐定数であり、
、a、およびaは、それぞれ、2次、4次、および6次係数であり、
2psは、以下の式、
【数2】
によって定義され、rは、前記光軸からの半径方向距離であり、
は、前記光軸であり、
前記内側領域は、前記光軸からrへ広がっており、
前記位相シフト特徴は、rからrへ広がっており、
前記第1のゾーンの前記外側領域は、rからrへ広がっており、
Δは、前記内側領域に対する前記位相シフト特徴のステップ高であり、
Δは、前記外側領域に対する前記位相シフト特徴のステップ高である、
請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項4】
前記第2のゾーンの表面プロファイルは、Z2psが前記第2のゾーンにおいて一定とされ、かつ、Zsecond zoneが、前記第1のゾーンと前記第2のゾーンとの間の境界点においてZfirst zoneと同一である場合に、以下の式、
second zone=Zbase+(Δ+Δ
によって定義される、請求項3に記載の眼用レンズ。
【請求項5】
前記第1の位相シフトステップのステップ高は、前記第2の位相シフトステップのステップ高よりも大きい、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項6】
前記リッジ面は、前記第1の曲率を有する、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項7】
前記第1の曲率は、非球面プロファイルを含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、眼用レンズに関し、より詳細には、広範囲の焦点深度を有する眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
眼内レンズ(IOL)は、白内障手術の際に、天然の水晶体を交換するために患者の眼に日常的に移植されている。天然の水晶体の屈折力は、毛様体筋の影響下で変化して、眼から異なる距離にある物体を見るために遠近調節をもたらし得る。しかしながら、多くのIOLは、遠近調節への備えがない単焦点屈折力を提供する。遠用屈折力ならびに近用屈折力をもたらし(例えば、回折構造を用いることによって)、それにより、ある程度の偽調節をもたらす多焦点IOLも知られている。しかしながら、偽調節屈折力をもたらし得る改良型のIOLに対するニーズが依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、概して、(1)焦点深度を広げるために、瞳孔領域内での複数の位相シフトの変化を制御し、および(2)スルーフォーカス曲線をシフトさせかつ中間用補正と遠用補正との間のエネルギーのバランスを再び取るために、瞳孔領域の中心サブ領域における屈折力調整を行う、眼用レンズ(例えば、IOL)に関する。いくつかの実施形態において、眼用レンズは、前面、後面、および光軸を有する、光学素子を含む。前面および後面の少なくとも一方は、光軸から第1の半径方向境界へ広がる第1のゾーンと、第1の半径方向境界から光学素子のエッジへ広がる第2のゾーンとを含む。第1のゾーンは、位相シフト特徴によって分離された内側領域および外側領域を含み、位相シフトは、内側領域および外側領域から外向きに延びるリッジを含む。
【0004】
本開示およびその利点をより完全に理解するために、ここで、添付の図面と併せて以下の説明を参照し、図面では、参照符号は同様の特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A-1B】本開示のいくつかの実施形態による、広範囲の焦点深度を有する眼内レンズの実施形態を示しかつ実例とする。
図2】本開示のいくつかの実施形態による、同じベース曲率を備える内側ゾーンおよび外側ゾーンを有する例示的な光学素子に関する表面サグ対光軸からの半径方向距離のプロット図を示す。
図3】本開示のいくつかの実施形態による、標準的な非球面光学素子に関するスルーフォーカスプロット図と比較した、図2に示す光学素子の表面プロファイルに関するスルーフォーカスプロット図を示す。
図4】本開示のいくつかの実施形態による、異なるベース曲率を備える内側ゾーンおよび外側ゾーンを有する例示的な光学素子に関する表面サグ対光軸からの半径方向距離のプロット図を示す。
図5】本開示のいくつかの実施形態による、図2に示す光学素子に関するスルーフォーカスプロット図と比較した、図4に示す光学素子の表面プロファイルに関するスルーフォーカスプロット図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
当業者は、下記で説明する図面は、説明のためにすぎないことを理解する。図面は、本出願人の開示の範囲をなんら限定するものではない。
【0007】
本開示は、概して、焦点深度を広げるように、レンズの様々な領域を通過する光波の位相シフトのばらつきを制御する表面プロファイルを有する眼用レンズ(IOLなど)に関する。以下の説明では、広範囲の焦点深度をもたらすレンズ特徴について、眼内レンズ(IOL)に関連して説明する。しかしながら、本開示は、それらの特徴が、コンタクトレンズなどの他の眼用レンズにも適用され得ることを考慮する。本明細書では、用語眼内レンズ(およびその略記IOL)は、眼の天然の水晶体を交換するため、または天然の水晶体が除去されるか否かに関わらず、他の方法で視覚を増強するためのいずれかで、眼の内部に移植されるレンズを説明するために使用される。
【0008】
図1A~1Bは、本開示のいくつかの実施形態による、広範囲の焦点深度を有する眼内レンズ100の実施形態を示しかつ実例とする。IOL100は、光軸OA108の周りに配置される前面104および後面106を有する光学素子102を含む。IOL100は、さらに、一般的に患者の眼の水晶体嚢(capsular bag)内でIOL100を位置決めしかつ安定化させるように動作可能な複数のハプティック110を含み得る。
【0009】
図1Aに示すように、光学素子102の前面104は、光軸108から第1の半径方向境界へ広がる第1のゾーン112と、第1の半径方向境界から光学素子102のエッジへ広がる第2のゾーン114とを含む。さらに、第1のゾーン112は、位相シフト特徴120によって分離された内側領域116および外側領域118を含み得る。概して、光学素子102の上述の表面特徴は、光学素子102を通過する光波の様々な量の位相シフト(光波が通過する光学素子102の領域に依存する)を生じ得、および様々な量の位相シフトを有する光波間の建設的干渉が、広範囲の焦点深度を生じ得る。上述の第1および第2のゾーン112、114を、光学素子102の前面104に配置されているとして図示しかつ説明するが、それに加えてまたはその代わりに、本開示は、第1および第2のゾーン112、114は、光学素子102の後面106に配置され得ることを考慮する。
【0010】
いくつかの実施形態において、位相シフト特徴120は、光学素子102の前面104から前方に突出するリッジを含み得る。その結果、光軸108から半径方向外側に動いて、位相シフト特徴120は、2つの位相シフトステップを生じ得る。例えば、第1のゾーンの表面プロファイルは、以下の式:
first zone=Zbase+Z2ps 式(1)
によって定義される。
【0011】
式(1)では、Zbaseは、以下の式:
【数1】
(式中、
rは、光軸108からの半径方向距離であり;
cは、第1のゾーン112のベース曲率であり;
kは、円錐定数であり;および
2、a4、a6...およびanは、それぞれ、2次、4次、6次...およびn次係数である)
に従って、第1のゾーンに対してベースサグプロファイルを定義し得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、Zbaseを定義する式は、2次、4次、および6次係数のみを含み得る。換言すると、Zbaseは、以下の式:
【数2】
に従って、第1のゾーンに対してベースサグプロファイルを定義し得る。
【0013】
式(2)および式(3)は、一般的に、非球面プロファイルを定義するが、本開示は、それらの式に含まれる定数は、それらが球面プロファイルを定義するように選択され得ることを考慮する。換言すると、第1のゾーン(Zbase)のベース曲率は、球面または非球面のいずれかとし得る。
【0014】
式(1)では、Z2psは、ベースサグプロファイル(Zbase)に追加され得、かつ一部には、位相シフト領域120の特徴を定義し得る。例えば、Z2psは、以下の式:
【数3】
(式中、
rは、光軸108からの半径方向距離であり;
0は、光軸108であり;
内側領域116は、光軸108からr1へ広がっており
位相シフト特徴120は、r1からr4へ広がっており;
外側領域118は、r4からr5へ広がっており;
Δ1は、内側領域116に対する位相シフト120特徴のステップ高であり;および
Δ2は、外側領域118に対する位相シフト特徴のステップ高である)
によって定義され得る。
【0015】
式(1)~(4)によって定義されるような光学素子102の全表面プロファイルは、図2に示すようなサグ対光軸108からの半径方向距離のプロット図として、グラフで表わされ得る。図2のプロット図では、サグ値は、Zbaseの寄与を除去することによって、正規化されている(すなわち、プロットされたサグ値は、Z2psにのみ対応する)。さらに、図2のプロット図では、サグプロファイルは、第1のゾーン112および第2のゾーン114に関する定数である。換言すると、式(1)が、第1のゾーン112のみであるのとは対照的に、光学素子102全体の表面プロファイルを定義すると仮定される(つまり、Z2psは、r5から光学素子102全体の半径にかけて一定である。)。
【0016】
図3は、本開示のいくつかの実施形態による、標準的な非球面光学素子(すなわち、式(4)(Z2ps)を追加せずに、式(3)(Zbase)のみによって定義される表面プロファイルを有する光学素子)に関するスルーフォーカスプロット図と比較したときの、図2に示す光学素子の表面プロファイルに関するスルーフォーカスプロット図を示す。図示の通り、図2に示す表面プロファイルの追加は(Z2psによって表わされる位相シフト特徴120を含む)は、標準的な非球面レンズと比較すると、より広範囲の焦点深度を生じる。
【0017】
いくつかの実施形態において、ベースサグプロファイルは、第1のゾーン112および第2のゾーン114に対して異なり得る。例えば、光学素子102の表面プロファイルは、以下の式:
optic=Zbase+Z2ps 式(5)
【数4】
rは、光軸108からの半径方向距離であり;
0は、光軸108であり;
第1のゾーン112は、光軸108からr5へ広がっており、ここでは、内側領域116が光軸108からr1へ広がっており、位相シフト特徴120がr1からr4へ広がっており、および外側領域118がr4からr5へ広がっており;
第2のゾーン114は、r5からr6へ広がっており;
cは、第1のゾーン112のベース曲率であり;
kは、第1のゾーン112の円錐定数であり;および
2、a4、およびa6は、それぞれ、第1のゾーン112の2次、4次、および6次係数であり;
c’は、第2のゾーン114のベース曲率であり;
k’は、第2のゾーン114の円錐定数であり;および
2’、a4’、およびa6は、それぞれ、第2のゾーン114の2次、4次、および6次係数であり、
Δ1は、内側領域116に対する位相シフト特徴120のステップ高であり、
Δ2は、外側領域118に対する位相シフト特徴120のステップ高である
によって定義され得る。
【0018】
上記の式(6)で定義されるベースプロファイルは、2次、4次、および6次係数のみを含むが、本開示は、それらのベースプロファイルは、その代わりに、任意の好適な数のより高次の係数を含んでいる(式(1)におけるように)と定義され得ることを考慮する。
【0019】
第1のゾーン112および第2のゾーン114は、異なるベースサグプロファイルを含むため、Δ3(式(8)において定義されるような)は、第1のゾーン112と第2のゾーン112との間の滑らかな移行部を提供し得る。例えば、第1のゾーン112は、第2のゾーン114と比較して、異なるベース曲率(c)、円錐定数(k)、および/またはより高次の係数(a2、a4、a6)よって修正されて、図3に示すスルーフォーカス曲線と比較して、近視方向においてスルーフォーカス曲線をシフトさせ得る。図4は、本開示のいくつかの実施形態による、式(5)~(8)によって定義された表面プロファイルを有する光学素子102に関する表面サグ対光軸からの半径方向距離のプロット図を示す。図4にプロットされている表面プロファイルは、以下の値を前提としている。
【0020】
【表1】
【0021】
表1に示される値は、例示的な目的のために提供されるにすぎず、および本開示は、値のそれぞれが、異なる値の範囲を有し得ることを考慮する。例として、本開示は、r1が0.3mm~0.7mmの範囲に入り、r4が0.8mm~1.2mmの範囲に入り、r1とr2との間の距離が0mm~0.2mmの範囲に入り、およびr3とr4との間の距離が0mm~0.2mmの範囲に入り得ることを考慮する。さらなる例として、本開示は、Δ1が-1.5μm~-0.5μmの範囲に入り、およびΔ2が0.3μm~0.9μmの範囲に入り得ることを考慮する。
【0022】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による、図2に示す光学素子に関するスルーフォーカスプロット図と比較した、図4に示す光学素子の表面プロファイルに関するスルーフォーカスプロット図を示す。上述の通り、異なるベース曲率、円錐定数、および/またはより高次の係数による第1のゾーン112の修正は、(1)中間用補正と遠用補正との間のエネルギーのバランスを再び取り、かつ(2)第1のゾーン112および第2のゾーン114が同じベース曲率を有する光学素子に対するスルーフォーカス曲線と比較して、近視方向(標的に近い方向(near target direction))においてスルーフォーカス曲線をシフトさせる。
【0023】
様々な技術および材料は、上述のIOL100を製作するために用いられ得る。例えば、IOL100の光学素子102は、様々な生体適合性ポリマー材料で形成され得る。いくつかの好適な生体適合性材料は、限定されるものではないが、軟質アクリルポリマー、ヒドロゲル、ポリメチメタクリレート(polymethymethacrylate)、ポリスルホン、ポリスチレン、セルロース、アセテートブチレート、または他の生体適合性材料を含む。例として、一実施形態において、光学素子102は、Acrysofとして一般に知られている軟質アクリルポリマー(2-フェニルエチルアクリレートと2-フェニルエチルメタクリレートの架橋共重合体)で形成され得る。IOL100のハプティック104も、上述のものなどの好適な生体適合性材料で形成され得る。場合によっては、IOLの光学素子102およびハプティック104は、一体形ユニットとして製作され得るが、他の場合には、それらは、別個に形成されて、当技術分野において公知の技術を用いて、一緒に接合され得る。
【0024】
様々な上記で開示したおよび他の特徴および機能、またはそれらの代替例は、望ましくは、多くの他の異なるシステムまたは適用例に組み合わせら得ることが認識される。それに続いて、様々な現在は予見できないまたは予期せぬ代替例、修正例、変形例または改良例が、当業者によってなされ得、それらの代替例、変形例および改良例も、以下の特許請求の範囲に含まれるものとすることも認識される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5