(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】赤外線遮蔽透明部材用樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20230106BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230106BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K3/22
B60J1/00 G
(21)【出願番号】P 2021504923
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008316
(87)【国際公開番号】W WO2020184222
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019046018
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】大西 庸介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰香
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179053(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137729(WO,A1)
【文献】特開2017-095686(JP,A)
【文献】特開2011-168636(JP,A)
【文献】特開2006-282736(JP,A)
【文献】特開2016-169189(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143732(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130492(WO,A1)
【文献】特開2008-156386(JP,A)
【文献】特開平11-335548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子(B成分)0.0001~0.2重量部、(C)エポキシ樹脂(C成分)0.0001~0.1重量部並びに(D)脂肪酸および多価アルコールからなるフルエステルを主成分とする脂肪酸エステルである離型剤(D成分)0.001~0.5重量部を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
B成分の粒子径が1nm~800nmであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
D成分が下記式(1)で表される脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式中、前記R
1~R
6は、独立して互いに同一または異なり、炭素数10~32のアルキル基である。)
【請求項4】
A成分100重量部に対し、(E)熱安定剤(E成分)0.0002~0.8重量部を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
E成分が、フェノール系安定剤(E-1成分)、イオウ系安定剤(E-2成分)およびリン系安定剤(E-3成分)からなる群から選ばれる少なくとも一種の熱安定剤であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
A成分100重量部に対し、(F)紫外線吸収剤(F成分)0.1~2重量部を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
F成分が、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(F-1成分)、トリアジン系紫外線吸収剤(F-2成分)およびオキサジン系紫外線吸収剤(F-3成分)からなる群から選ばれる少なくとも一種の紫外線吸収剤であることを特徴とする請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の樹脂組成物からなるフィルム、シートまたは射出成形品。
【請求項9】
厚みが0.1~20mmである請求項8に記載の成形品。
【請求項10】
ISO9050で規定される全光線透過率が20%以上であり、ISO9050で規定されるヘーズが5%以下である請求項8または9に記載の成形品。
【請求項11】
請求項8~10のいずれかに記載の成形品の片面または両面にハードコート処理を施された成形品。
【請求項12】
成形品が車両用灯具、車両用センサーカバー、車両用表示装置カバー、車両用窓部材、リレー用表示装置カバーまたは建築材用窓部材である請求項8~11のいずれかに記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線吸収性能をもつ無機材料としての複合タングステン酸化物微粒子を含むポリカーボネート樹脂組成物ならびに該ポリカーボネート樹脂組成物から成る成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線遮蔽性能を有する透明材料は室内の温度上昇抑制や人の体感温度上昇を抑制する効果があり、自動車用途や建材用途等の窓部材に用いることで環境負荷低減への効果が期待される。特に透明樹脂に赤外性線遮蔽性能を付与することにより軽量化とサーマルマネージメントの観点からCO2排出量抑制など環境負荷低減への効果は大きい。赤外線遮蔽性能を発現させる手法として、特許文献1には透明樹脂に複合タングステン酸化物微粒子を付与する技術が開示されているが、湿熱条件下で経時的に赤外線遮蔽性能が劣化するという問題がある。特許文献2には複合タングステン酸化物微粒子の粒子径を限定することで耐湿熱性を向上する技術が開示されているが、その効果は不十分である。また、特許文献3には脂肪酸エステルを配合することで樹脂の熱安定性を向上させる技術が開示されているが、赤外線遮蔽性能の耐湿熱性を向上させる効果は認められない。また、特許文献4には透明樹脂にエポキシ樹脂を配合することで樹脂の加水分解を抑制する技術が開示されているが、赤外線遮蔽性能の耐湿熱性を向上させる効果は認められない。そのため、複合タングステン酸化物微粒子を付与した透明樹脂の赤外線遮蔽性能の耐湿熱性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5714826号公報
【文献】特開2017-95686号公報
【文献】特開2008-156386号公報
【文献】特表2003-531926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高い透明性を保ちながら耐湿熱性が良好な赤外線遮蔽性能を有する樹脂組成物とその成形品を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂に複合タングステン酸化物微粒子、エポキシ樹脂及び脂肪酸エステルを添加することで、耐湿熱性に優れかつ高い赤外線遮蔽性能と高い透過性を示すポリカーボネート樹脂組成物とそれから成る成形品が得られることを見出した。すなわち、上記課題は、(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子(B成分)0.0001~0.2重量部、(C)エポキシ樹脂(C成分)0.0001~0.1重量部並びに(D)脂肪酸および多価アルコールからなるフルエステルを主成分とする脂肪酸エステルである離型剤(D成分)0.001~0.5重量部を含有する樹脂組成物により達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂組成物は、高い透明性を保ちながら耐湿熱性が良好な赤外線遮蔽性能を有するため、車両用灯具、車両用センサーカバー、車両用表示装置カバー、車両用窓部材、リレー用表示装置カバーまたは建築材用窓部材等に適しておりその奏する産業上の効果は格別である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の各構成成分の詳細について説明する。
(A成分:ポリカーボネート樹脂)
本発明でA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0008】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ビフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エステル、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましい。
【0009】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
【0010】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明のポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0011】
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0012】
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる量は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001~1モル%、好ましくは0.005~0.9モル%、特に好ましくは0.01~0.8モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001~1モル%、好ましくは0.005~0.9モル%、特に好ましくは0.01~0.8モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合については1H-NMR測定により算出することが可能である。
【0013】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
【0014】
更にポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0015】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ピリジンなどが用いられる。
【0016】
有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。
【0017】
また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。更に単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。これらの比較的長鎖のアルキル基を有する単官能フェノール類は、流動性や耐加水分解性の向上が求められる場合に有効である。
【0018】
反応温度は通常0~40℃、反応時間は数分~5時間、反応中のpHは通常10以上に保つのが好ましい。
【0019】
溶融法による反応は、通常二価フェノールと炭酸ジエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールと炭酸ジエステルを混合し、減圧下通常120~350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1~4時間程度である。
【0020】
炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0021】
重合速度を速めるために重合触媒を使用することができ、重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などの通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒があげられる。触媒は単独で使用しても良いし、二種類以上を併用して使用しても良い。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-9~1×10-5当量、より好ましくは1×10-8~5×10-6当量の範囲で選ばれる。
【0022】
また、重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2-クロロフェニルフェニルカーボネート、2-メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2-エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートなどの化合物を加えることができる。
【0023】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5~50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後の芳香族ポリカーボネートに対し、0.01~500ppmの割合、より好ましくは0.01~300ppm、特に好ましくは0.01~100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。上記以外の反応形式の詳細についても、成書及び特許公報などで良く知られている。
【0024】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、14,000~100,000であることが好ましく、20,000~30,000がより好ましく、22,000~28,000がさらに好ましく、23,000~26,000が特に好ましい。上記範囲を超えて分子量が低すぎる場合にはハードコート剤に対する耐性が不十分となりやすく、上記範囲を超えて分子量が高すぎる場合には射出成形が困難となり成形品の割れや不均一な陰影が生じやすくなる。上記の好適な範囲においてはハードコート剤に対する耐性が十分な分子量において、本発明の樹脂組成物は樹脂流動の乱れにより生じる成形品の不均一な陰影が低減可能であり、ハードコート層を有する良好なポリカーボネート樹脂成形体の形成を可能とする。更により好ましい範囲においては、耐衝撃性と成形加工性との両立に優れる。尚、上記ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が上記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。
【0025】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
【0026】
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4M0.83
c=0.7
本発明におけるポリカーボネート樹脂の態様として以下のものを挙げることができる。すなわち、粘度平均分子量70,000~300,000の芳香族ポリカーボネート(PC-i)、および粘度平均分子量10,000~30,000の芳香族ポリカーボネート(PC-ii)からなり、その粘度平均分子量が15,000~40,000、好適には20,000~30,000である芳香族ポリカーボネート(以下、“高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート”と称することがある)も使用できる。
【0027】
かかる高分子量成分含有芳香族ポリカーボネートは、PC-iの存在によりポリマーのエントロピー弾性を大きくし本発明において好適な射出プレス成形時においてより有利となる。例えばヘジテーションマークなどの外観不良はより低減でき、その分射出プレス成形の条件幅を広げることが可能である。一方PC-ii成分の低い分子量成分は全体の溶融粘度を低下し、樹脂の緩和を促進して、より低歪の成形を可能とする。尚、同様の効果は分岐成分を含有するポリカーボネート樹脂においても認められる。
(B成分:複合タングステン酸化物微粒子)
複合タングステン酸化物微粒子(B成分)は、一般式MxWyOzで表される。式中Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素を表し、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選択される1種類以上の元素であることが好ましく、K、Rb、またはCsであることがさらに好ましい。また、Wはタングステン、Oは酸素を表す。
【0028】
x、y、zは0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0の式を満たす数である。さらに、x/y、z/yの範囲はそれぞれ0.01≦x/y≦0.5、2.7≦z/y≦3.0が好ましく、0.2≦x/y≦0.4、2.8≦z/y≦3.0がより好ましい。
【0029】
複合タングステン酸化物微粒子(B成分)の粒子径は、1nm~800nmであることが好ましく、1nm~600nmがより好ましく、1nm~300nmがさらに好ましい。粒子径が1nmより小さいと凝集効果が大きくなるため分散性不良が生じやすくなり、800nmより大きいと透明樹脂成形品の曇り度が高くなるなど不良が生じることがある。
【0030】
複合タングステン酸化物微粒子(B成分)は、出発原料であるタングステン化合物を、不活性ガス雰囲気もしくは還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。当該熱処理を経て得られた複合タングステン酸化物微粒子は、十分な近赤外線遮蔽力を有し、赤外線遮蔽微粒子として好ましい性質を有している。
【0031】
複合タングステン酸化物微粒子(B成分)の出発原料は、元素Mを、元素単体または化合物のかたちで含有するタングステン化合物である。具体的には元素Mを、元素単体または化合物のかたちで含有する、3酸化タングステン粉末、2酸化タングステン粉末、タングステン酸化物の水和物、6塩化タングステン粉末、タングステン酸アンモニウム粉末、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、および金属タングステン粉末からなる群より選ばれた一種類以上であることが好ましい。なお、出発原料が溶液であると、各元素は容易に均一混合可能となる観点より、タングステン酸アンモニウム水溶液や、6塩化タングステン溶液を用いることがさらに好ましい。これら原料を用い、これを不活性ガス雰囲気もしくは還元性ガス雰囲気中で熱処理して、上述した複合タングステン酸化物微粒子を得ることができる。
【0032】
ここで、各成分が分子レベルで均一混合した出発原料であるタングステン化合物を製造するためには、各原料を溶液で混合することが好ましく、元素Mを含むタングステン化合物が、水や有機溶媒などの溶媒に溶解可能なものであることが好ましい。例えば、元素Mを含有するタングステン酸塩、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酸化物、炭酸塩、水酸化物などが挙げられるが、これらに限定されず、溶液状になるものであれば好ましい。
【0033】
複合タングステン酸化物微粒子(B成分)を製造するための原料に関し、以下で、再度詳細に説明する。
【0034】
一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子(B成分)を得るための出発原料には、タングステン酸化物系粉末と前記M元素系粉末を混合した粉末を用いることが出来る。タングステン酸化物系粉末として、3酸化タングステン粉末、2酸化タングステン粉末、タングステン酸化物の水和物、6塩化タングステン粉末、タングステン酸アンモニウム粉末、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、金属タングステン粉末などが挙げられる。またM元素系粉末として、M元素を含有する単体または化合物の粉末などが挙げられる。さらに、複合タングステン酸化物微粒子(B成分)を得るための出発原料であるタングステン化合物が、溶液または分散液であると、各元素は容易に均一混合可能となる。当該観点より、複合タングステン酸化物微粒子(B成分)の出発原料が、6塩化タングステンのアルコール溶液またはタングステン酸アンモニウム水溶液と、前記M元素を含有する化合物の溶液とを、混合したのち乾燥した粉末であることがさらに好ましい。同様に、複合タングステン酸化物の微粒子(B成分)の出発原料が、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿を生成させた分散液と、前記M元素を含有する単体または化合物の粉末または前記M元素を含有する化合物の溶液とを、混合したのち乾燥した粉末であることも好ましい。
【0035】
前記M元素を含有する化合物としては、M元素のタングステン酸塩、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酸化物、炭酸塩、水酸化物などが挙げられるが、これらに限定されず、溶液状になるものであればよい。さらに、複合タングステン酸化物微粒子(B成分)を工業的に製造する場合に、タングステン酸化物の水和物粉末や三酸化タングステンと、M元素の炭酸塩や水酸化物とを用いると、熱処理などの段階で有害なガスなどが発生することが無く、好ましい製造法である。
【0036】
ここで、複合タングステン酸化物微粒子(B成分)の不活性雰囲気中における熱処理条件としては、650℃以上が好ましい。650℃以上で熱処理された出発原料は、十分な近赤外線遮蔽力を有し赤外線遮蔽微粒子として効率がよい。不活性ガスとしてはAr、N2などの不活性ガスを用いることがよい。
【0037】
また、還元性雰囲気中の熱処理条件としては、まず出発原料を還元性ガス雰囲気中にて100℃以上850℃以下で熱処理し、次いで不活性ガス雰囲気中で650℃以上1,200℃以下の温度で熱処理することが好ましい。この時の還元性ガスは、特に限定されないがH2が好ましい。また還元性ガスとしてH2を用いる場合は、還元雰囲気の組成として、H2が体積比で0.1%以上が好ましく、さらに好ましくは2%以上がよい。H2が体積比で0.1%以上あれば効率よく還元を進めることができる。
【0038】
耐候性の向上の観点から、複合タングステン酸化物の微粒子(B成分)の表面は、Si、Ti、Zr、Alの一種類以上の金属を含有する酸化物で被覆されていることが好ましい。被覆方法は特に限定されないが、当複合タングステン酸化物の微粒子(B成分)を分散した溶液中へ、上記金属のアルコキシドを添加することで、複合タングステン酸化物微粒子(B成分)の表面を被覆することが可能である。
【0039】
また、複合タングステン酸化微粒子(B成分)は、分散剤で被覆されていることが好ましい。分散剤としてはポリカーボネート、ポリサルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、シリコーン系樹脂やこれらの誘導体などが挙げられる。これらで被覆されることにより樹脂へ添加したときの分散性が向上し、更に機械物性の低下を防ぐ効果がある。なお、分散剤による被覆方法としては複合タングステン酸化微粒子(B成分)と分散剤をトルエンなどの溶媒に溶解、攪拌し分散液を調製した後、真空乾燥などの処理で溶媒を除去することにより複合タングステン酸化微粒子(B成分)を被覆する方法などが挙げられる。
【0040】
また、B成分をポリカーボネート樹脂(A成分)に添加する方法としては、複合タングステン酸化物微粒子(B成分)もしくは被覆された複合タングステン酸化物微粒子(B成分)を直接添加する方法や、1~100倍のポリカーボネート樹脂(A成分)で希釈した後に添加する方法が挙げられる。
【0041】
B成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.0001~0.2重量部であり、0.001~0.1重量部が好ましく、0.002~0.05重量部がより好ましい。B成分の含有量が0.0001重量部より少ないと赤外線の遮蔽能力が十分に発揮できず、0.2重量部より多いと耐湿熱性が悪化し、また全光線透過率が非常に小さくなってしまう。
(C成分:エポキシ樹脂)
本発明の樹脂組成物は高い透明性を保ちながら耐湿熱性が良好な赤外線遮蔽性能を有することを目的に、C成分としてエポキシ樹脂を含有する。使用されるエポキシ樹脂は、グリシジル基を含むエポキシ重合体であることが好ましく、グリシジルメタクリレートを共重合体に含むエポキシ重合体であることがより好ましく、共重合体のもう一方成分にはポリスチレンが好適に用いられる。その中でも、ポリグリシジルメタクリレート―ポリスチレン共重合体が好ましく用いられる。グリシジル基を含有しないエポキシ重合体を用いた場合はA成分との相溶性が悪く透明性に劣る場合がある。グリシジル基を含む重合体のモノマー成分としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、1,2-エポキシ―5-ヘキセン、1,2-エポキシ―9-デセン、エポキシスクシン酸などが挙げられ、重合体としては末端エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、側鎖エポキシ変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0042】
C成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.0001~0.1重量部、好ましくは0.001~0.05重量部、より好ましくは0.001~0.03重量部である。含有量が0.0001重量部未満では十分な耐湿熱性が発現せず、0.1重量部を超えると、色相が悪化し透明性が損なわれる。
(D成分:離型剤)
本発明の樹脂組成物は高い透明性を保ちながら耐湿熱性が良好な赤外線遮蔽性能を有することを目的に、D成分として脂肪酸および多価アルコールからなるフルエステルを主成分とする脂肪酸エステルである離型剤を含有する。
【0043】
かかる脂肪酸は炭素数が3~32であることが好ましく、特に炭素数が10~32の脂肪酸が好ましい。該脂肪酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、ベヘン酸、イコサン酸、およびドコサン酸などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪酸は、炭素数が14~20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪酸が好ましい。特にステアリン酸およびパルミチン酸が好ましい。ステアリン酸やパルミチン酸など上記の脂肪酸は通常、牛脂や豚脂などに代表される動物性油脂およびパーム油やサンフラワー油に代表される植物性油脂などの天然油脂類から製造されるため、これらの脂肪酸は、通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。したがって本発明の脂肪酸エステルの製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなる脂肪酸、殊にステアリン酸やパルミチン酸が好ましく使用される。
【0044】
かかる多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール~ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが挙げられる。本発明の脂肪酸エステルにおいてはジペンタエリスリトールが好ましい。
【0045】
本発明の脂肪酸エステルは、フルエステルである。部分エステルを使用した場合、十分な耐湿熱性が発現しない。本発明の脂肪酸エステルにおける酸価は、熱安定性の点から好ましく20以下、より好ましくは4~20の範囲、更に好ましくは4~12の範囲である。尚、酸価は実質的に0を取り得る。また脂肪酸エステルの水酸基価は、0.1~30の範囲が好ましい。更にヨウ素価は、10以下が好ましい。尚、ヨウ素価は実質的に0を取り得る。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
【0046】
以上のことを踏まえると、D成分は下記式(1)で表される脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0047】
【0048】
(式中、前記R1~R6は、独立して互いに同一または異なり、炭素数10~32のアルキル基である。)
D成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.001~0.5重量部、好ましくは0.01~0.4重量部、より好ましくは0.05~0.3重量部である。含有量が0.001重量部未満では十分な耐湿熱性が発現せず、0.5重量部を超えると、成形時にポリカーボネート樹脂組成物の分子量が低下する。
(E成分:熱安定剤)
本発明の樹脂組成物はE成分として、熱安定剤を含有することが好ましい。熱安定剤としては、フェノール系安定剤(E-1成分)、イオウ系安定剤(E-2成分)およびリン系安定剤(E-3成分)からなる群から選ばれる少なくとも一種の熱安定剤が好ましい。E成分の含有量はA成分100重量部に対し、0.0002~0.8重量部であることが好ましく、0.001~0.7重量部であることがより好ましく、0.01~0.1重量部であることがさらに好ましい。含有量が0.0002重量部未満では熱安定性の効果を発現しない場合があり、0.8重量部を超えると複合タングステン酸化物微粒子と併用した際成形時の色相安定性を維持することができなくなる場合がある。
(E-1成分:フェノール系安定剤)
フェノール系安定剤としては、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記フェノール系安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
(E-2成分:イオウ系安定剤)
イオウ系化合物として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)などが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上混合して使用しても良い。
(E-3成分:リン系安定剤)
リン系安定剤は、芳香族ポリカーボネートの熱安定剤として既に広く知られている。本発明においてリン系安定剤は、樹脂組成物が極めて過酷な熱負荷に耐え得る程度まで、その熱安定性を高める。リン系安定剤としては主にホスファイト化合物とホスホナイトが上げられる。
【0049】
ここで、ホスファイト化合物としては例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが例示される。
【0050】
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイトなどが例示される。
【0051】
ホスホナイト化合物としては、例えばテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイトなどが挙げられ、テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物はアルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
(F成分:紫外線吸収剤)
本発明の樹脂組成物は、塗装などを施すことなく使用される場合がある。かかる場合には良好な耐光性を要求される場合があるため紫外線吸収剤を配合することが好ましい。
【0052】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(F-1成分)、トリアジン系紫外線吸収剤(F-2成分)およびオキサジン系紫外線吸収剤(F-3成分)からなる群から選ばれる少なくとも一種の紫外線吸収剤が好ましい。F成分の含有量はA成分100重量部に対し、好ましくは0.1~2重量部であり、より好ましくは0.12~1.5重量部、さらに好ましくは0.15~1重量部である。F成分の含有量が0.1重量部未満であると、十分な耐光性が発現しない場合があり、2重量部より多いとガス発生による外観不良や物性低下が発生する場合がある。
(F-1成分:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、 例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ル、並びに2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2-(2’―ヒドロキシ-5-アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体など、2-ヒドロキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
(F-2成分:トリアジン系紫外線吸収剤)
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、および2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4-ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
(F-3成分:オキサジン系紫外線吸収剤)
オキサジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-m-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-p,p’-ジフェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが例示される。
(その他の成分)
(1)染顔料
本発明の樹脂組成物は各種の染顔料を含有し多様な意匠性を発現する成形品を提供できる。本発明で使用する染顔料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、フタロシアニン系染料、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、金属酸化物微粒子などを挙げることができる。更に本発明のポリカーボネート樹脂組成物はメタリック顔料を配合してより良好なメタリック色彩を得ることもできる。メタリック顔料としては、アルミ粉が好適である。また、蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を配合することにより、発光色を生かした更に良好な意匠効果を付与することができる。本発明で使用する蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。
(2)窒化物微粒子
本発明の樹脂組成物は、窒化物微粒子を含有することが好ましい。窒化物微粒子は、Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の窒化物微粒子であることが好ましい。
(樹脂組成物の製造)
本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば各成分、並びに任意に他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式ニ軸押出機が好ましい。他に、各成分、並びに任意に他の成分を予備混合することなく、それぞれ独立に二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法も取ることもできる。
(成形品の製造)
上記の如く得られた本発明の樹脂組成物は通常前記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。更にペレットを経由することなく、押出機で溶融混練された樹脂を直接シート、フィルム、異型押出成形品および射出成形品にすることも可能である。
【0053】
かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また本発明の樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シートを成形することも可能である。また、成形品の片面または両面にハードコート処理されることが好ましい。
【0054】
成形品の厚みは0.1~20mmであることが好ましく、0.1~15mmであることがより好ましい。また、成形品のISO9050で規定される全光線透過率は20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。さらに、成形品のISO9050で規定されるヘーズは5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。
【0055】
本発明者の実施する形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。また、以下“部”は特に断りのない限り“重量部”を、%は“重量%”を示す。
(1)樹脂組成物の作成
(1-1)使用原料
(A成分)
A-1:下記製法により得られた分子量24,200のポリカーボネート樹脂パウダー
バッフル付反応容器に、三段六枚羽根の攪拌機および還流冷却管を取り付けた。この反応容器に、ビスフェノールA45.6部、p-tert-ブチルフェノールをビスフェノールAに対して2.78モル%、ジクロロメタン265部及び水200部を入れ、反応容器内の酸素を除去する為に窒素パージを行った。尚、かかる段階で反応容器中の内容物は、容器容量の8割弱であった。次に、上記懸濁液にナトリウムハイドロサルファイト0.09部および水酸化ナトリウム21.8部を供給するための水溶液約80部を供給し、15℃でビスフェノールAを溶解した。撹拌下、この混合物にホスゲン23.35部を30分間で供給した。その後、トリエチルアミン0.016部(ビスフェノールAに対して0.08モル%)を添加して60分間攪拌し、反応を終結させた。その後、反応混合物を静置し、有機相を分液した。得られたポリカーボネート樹脂のジクロロメタン溶液に塩化メチレンを加えて14重量%の濃度の溶液とし、更に多孔板付遠心抽出機(川崎エンジニアリング(株)製KCC遠心抽出機)を用いて0.5%水酸化ナトリウム水溶液を流量1,000ml/min、有機相を流量1,000ml/minの速度で供給し、3,500rpmの条件で処理した後、有機相を塩酸酸性とし、その後水洗を繰り返し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで塩化メチレンを蒸発してポリカーボネート樹脂パウダーを得た。
(B成分)
B-1:Cs0.33WO3約23重量%および有機分散樹脂からなる熱線吸収剤(住友金属鉱山(株)製YMDS-874R)
(C成分)
C-1:エポキシ樹脂(日油(株)製:G-0250SP)
C-2:エポキシ樹脂(日油(株)製:G-0150M)
(D成分)
D-1:脂肪酸フルエステル(式(1)で示される構造を有する。)(理研ビタミン(株)製:L-8483)
D-2:脂肪酸フルエステル(式(1)で示される構造を有する。)(理研ビタミン(株)製:SL-02)
D-3:脂肪酸フルエステル(式(1)で示される構造を有さない。)(日油(株)製:H-874S)
D-4:脂肪酸部分エステル(理研ビタミン(株)製:S-100A)
(E成分)
E-1:フェノール系安定剤(BASFジャパン(株)製:IRGANOX1076)
E-2:イオウ系安定剤:(BASFジャパン(株)製:IRGANOX L115)
E-3:リン系安定剤(クラリアントジャパン(株)製:P-EPQ)
(F成分)
F-1:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ケミプロ化成(株)製:ケミソーブ79)
F-2:ベンゾトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製:Tinuvin1577ED)
F-3:オキサジン系紫外線吸収剤(錦海化学(株)製:UV0901)
(2)試験片作成
(2-1)樹脂組成物の製造
表1および表2に記載の各成分を表1および表2記載の割合で計量して混合しブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、B成分の含有量は括弧内に示したB-1に含まれる無機系紫外線吸収材料であるCs0.33WO3の量である。(括弧外の数字はB-1の樹脂組成物中の重量部を表す。)ポリカーボネート樹脂に添加する添加剤はそれぞれ配合量の10~100倍の濃度を目安に予めポリカーボネート樹脂との予備混合物として作成した後、ブレンダーによる全体の混合を行った。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を使用した。混練ゾーンはベント口手前に1箇所のタイプとした。押出条件は吐出量20kg/h、スクリュー回転数130rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第1供給口からダイス部分まで290℃とした。尚、上記の樹脂組成物の製造はHEPAフィルターを通した清浄な空気が循環する雰囲気において実施し、また作業時に異物の混入がないよう十分に注意して行った。
(2-2)試験片作成方法
得られたペレットを110~120℃で6時間熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機[住友重機械工業(株)製SG260M-HP]により、シリンダー温度300℃、金型温度80℃の条件で評価用の試験片である幅150mm×長さ150mm×厚さ5mmの板を成形した。
(3)評価項目
(3-1)試験片の粘度平均分子量
3mm角程度の屑に粉砕した試験片を、その20~30倍重量の塩化メチレンと混合し、組成物中の可溶分を溶解させた。次に、かかる可溶分をセライト濾過により採取した。その後得られた溶液中の溶媒を除去し、溶媒除去後の固体を十分に乾燥し、塩化メチレンに溶解する成分の固体を得た。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上記のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量と同様に、20℃における比粘度を求め、該比粘度から粘度平均分子量を算出した。
(3-2)耐湿熱性試験後の赤外線遮蔽性能の変化量
試験片から50mm角の試験片を切り出した。その分光光線を(株)日立ハイテクノロジーズ製分光光線測定器U-4100を用いて初期のTotal transmission of solar energy(Tts)をISO13837に準拠して算出した。結果を表1および表2に示す。次に、かかる試験片をプレッシャークッカー試験機TPC-412(ESPEC株式会社製)で120℃、75%Rhの条件にて48時間の湿熱処理を行い、上記方法と同様の方法でTtsを算出した。プレッシャークッカー後のTtsと初期のTtsの差を算出し耐湿熱性試験後の赤外線遮蔽性能の変化量(ΔTts)とした。結果を表1および表2に示す。
(3-3)全光線透過率およびヘーズ
試験片から50mm角の試験片を切り出し、(株)村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHR-100を用いISO13468に準拠して全光線透過率およびヘーズを測定した。結果を表1および表2に示す。
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