(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】加熱アセンブリおよび香味吸引器
(51)【国際特許分類】
A24F 40/46 20200101AFI20230106BHJP
【FI】
A24F40/46
(21)【出願番号】P 2021529585
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2019026178
(87)【国際公開番号】W WO2021001910
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】井上 康信
(72)【発明者】
【氏名】隅井 干城
【審査官】八木 敬太
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-529322(JP,A)
【文献】国際公開第2017/194769(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/186455(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項18】
請求項1から請求項17までのいずれか1項に記載の加熱アセンブリを備えた香味吸引器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱アセンブリおよび香味吸引器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香味源を含有する基材の燃焼をすることなく香味を吸引するための香味吸引器が知られている。このような香味吸引器として、たばこレシーバ中に挿入されたたばこを摺動的に受ける加熱要素を備えた電気喫煙システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新たな構造を有する加熱アセンブリおよび香味吸引器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態によれば、加熱アセンブリが提供される。この加熱アセンブリは、香味発生物品を加熱するように構成された加熱部材と、加熱部材で発生した熱を香味発生物品に伝える熱伝導部材と、を備える。加熱部材は、熱を発生する発熱体と、発熱体を支持する絶縁性の基体と、を有し、発熱体と基体とにより、発熱体が配置された発熱領域と、発熱領域に隣接し、発熱体が配置されていない非発熱領域とが形成される。熱伝導部材は、加熱部材が配置される第1面と、香味発生物品が加熱部材に装着されたときに香味発生物品に対向するように構成された第2面と、第2面の、第1面に配置された加熱部材の非発熱領域に対応する領域に設けられ、装着された香味発生物品を押圧して保持する突起と、を有する。
【0006】
本発明の他の一実施形態によれば、上記加熱アセンブリを備えた香味吸引器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】一実施形態に係る香味吸引器の全体斜視図である。
【
図1B】香味発生物品を保持した状態の一実施形態に係る香味吸引器の全体斜視図である。
【
図3】
図1Aに示した矢視3-3における断面図である。
【
図6】容器、加熱部材および熱収縮チューブを抜粋した拡大断面図である。
【
図7】容器および加熱部材を抜粋した拡大図である。
【
図8】容器および加熱部材を抜粋した別の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一のまたは相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0009】
図1Aは、一実施形態に係る香味吸引器の全体斜視図である。
図1Bは、香味発生物品を保持した状態の一実施形態に係る香味吸引器の全体斜視図である。本実施形態に係る香味吸引器10は、例えば、エアロゾル源を含んだ香味源を有する香味発生物品110を加熱することで、香味を含むエアロゾルを生成するように構成される。
【0010】
図1Aおよび
図1Bに示すように、香味吸引器10は、トップハウジング11Aと、ボトムハウジング11Bと、カバー12と、スイッチ13と、蓋部14と、第1通気口15と、キャップ16と、を有する。トップハウジング11Aとボトムハウジング11Bとは、互いに接続されることで、香味吸引器10の最外のアウタハウジング11を構成する。アウタハウジング11は、使用者の手に収まるようなサイズである。使用者が香味吸引器10を使用する際は、香味吸引器10を手で保持して、香味を吸引することができる。
【0011】
トップハウジング11Aは、図示しない開口を有し、カバー12は、当該開口を閉じるようにトップハウジング11Aに結合される。
図1Bに示すように、カバー12は、香味発生物品110を挿入可能な開口12aを有する。蓋部14は、カバー12の開口12aを開閉するように構成される。具体的には、蓋部14は、カバー12に取り付けられ、開口12aを閉鎖する第1位置と開口12aを開放する第2位置との間を、カバー12の表面に沿って移動可能に構成される。これにより、蓋部14は、香味吸引器10の内部(
図4に示す挿入ガイド部材60の開口60b)への香味発生物品110のアクセスを許可または制限することができる。
【0012】
スイッチ13は、香味吸引器10の作動のオンとオフとを切り替えるために使用される。例えば、使用者は、
図1Bに示すように香味発生物品110を開口12aに挿入した状態でスイッチ13を操作することで、図示しない加熱部材に図示しない電源から電力が供給され、香味発生物品110を燃焼させずに加熱することができる。香味発生物品110が加熱されると、香味発生物品110に含まれるエアロゾル源からエアロゾルが蒸発し、エアロゾルに香味源の香味が取り込まれる。使用者は、香味発生物品110の香味吸引器10から突出した部分(
図1Bにおいて図示された部分)を吸引することで、香味を含んだエアロゾルを吸引することができる。
【0013】
第1通気口15は、アウタハウジング11の内部空間に格納される加熱アセンブリ41(
図3参照)の内部に空気を導入するための通気口である。キャップ16は、ボトムハウジング11Bに着脱自在に構成されている。キャップ16がボトムハウジング11Bに取り付けられることで、ボトムハウジング11Bとキャップ16との間に第1通気口15が形成される。キャップ16は、例えば図示しない貫通孔または切欠き等を有し得る。なお、本明細書において、香味吸引器10の長手方向とは、香味発生物品110が開口12aに挿入される方向をいう。また、本明細書の香味吸引器10において、空気等の流体が流入する側(例えば、第1通気口15側)を上流側とし、流体が流出する側(例えば開口12a側)を下流側とする。
【0014】
次に、本実施形態に係る香味吸引器10に使用される香味発生物品110の構成について説明する。
図2は、香味発生物品110の断面図である。
図2に示す実施形態においては、香味発生物品110は、充填物111と、充填物111を巻装する第1の巻紙112と、を含む基材部110Aと、基材部110Aとは反対側の端部を形成する吸口部110Bと、を有する。基材部110Aと吸口部110Bとは、第1の巻紙112とは異なる第2の巻紙113によって連結されている。ただし、第2の巻紙113を省略し、第1の巻紙112を用いて基材部110Aと吸口部110Bとを連結することもできる。
【0015】
図2中の吸口部110Bは、紙管部114と、フィルタ部115と、紙管部114とフィルタ部115との間に配置された中空セグメント部116と、を有する。中空セグメント部116は、例えば、1つまたは複数の中空チャネルを有する充填層と、充填層を覆うプラグラッパーとで構成される。充填層は、繊維の充填密度が高いため、吸引時、空気やエアロゾルは、中空チャンネルのみを流れることになり、充填層内はほとんど流れない。香味発生物品110において、フィルタ部115でのエアロゾル成分の濾過による減少を少なくしたいときに、フィルタ部115の長さを短くして中空セグメント部116で置き換えることは、エアロゾルのデリバリ量を増大させるために有効である。
【0016】
図2中の吸口部110Bは、3つのセグメントから構成されているが、本実施形態において、吸口部110Bは、1つまたは2つのセグメントから構成されていてもよいし、4つまたはそれ以上のセグメントから構成されていてもよい。例えば、中空セグメント部116を省略し、紙管部114とフィルタ部115とを互いに隣接配置して吸口部110Bを形成することもできる。
【0017】
図2に示す実施形態において、香味発生物品110の長手方向の長さは、40mm~90mmであることが好ましく、50mm~75mmであることがより好ましく、50mm~60mmであることがさらに好ましい。香味発生物品110の円周は、15mm~25mmであることが好ましく、17mm~24mmであることがより好ましく、20mm~23mmであることがさらに好ましい。また、香味発生物品110における基材部110Aの長さは20mm、第1の巻紙112の長さは20mm、中空セグメント部116の長さは8mm、フィルタ部115の長さは7mmであってよいが、これら個々のセグメントの長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。
【0018】
本実施形態において、香味発生物品110の充填物111は、所定温度で加熱されてエアロゾルを発生するエアロゾル源を含有し得る。エアロゾル源の種類は、特に限定されず、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質および/またはそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル源として、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、およびこれらの混合物を挙げることができる。充填物111中のエアロゾル源の含有量は、特に限定されず、十分にエアロゾルを発生するとともに、良好な香喫味の付与の観点から、通常5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、また、通常50重量%以下であり、好ましくは20重量%以下である。
【0019】
本実施形態における香味発生物品110の充填物111は、香味源としてたばこ刻みを含有し得る。たばこ刻みの材料は特に限定されず、ラミナや中骨等の公知のものを用いることができる。香味発生物品110における充填物111の含有量の範囲は、円周22mm、長さ20mmの場合、例えば、200mg~400mgであり、250mg~320mgであることが好ましい。充填物111の水分含有量は、例えば、8重量%~18重量%であり、10重量%~16重量%であることが好ましい。このような水分含有量であると、巻染みの発生を抑制し、基材部110Aの製造時の巻上適性を良好にする。
【0020】
充填物111として用いるたばこ刻みの大きさやその調製法については特に制限はない。例えば、乾燥したたばこ葉を、幅0.8mm~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20μm~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8mm~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。さらに、上記のシート加工したものについて刻まずにギャザー加工したものを充填物111として用いてもよい。また、充填物111は、1種または2種以上の香料を含んでいてもよい。当該香料の種類は特に限定されないが、良好な喫味の付与の観点から、好ましくはメンソールである。
【0021】
本実施形態において、香味発生物品110の第1の巻紙112および第2の巻紙113は、坪量が例えば20gsm~65gsmであり、好ましくは25gsm~45gsmである原紙から作られることができる。第1の巻紙112および第2の巻紙113の厚みは、特に限定されないが、剛性、通気性、および製紙時の調整の容易性の観点から、10μm~100μmであり、好ましくは20μm~75μmであり、より好ましくは30μm~50μmである。
【0022】
本実施形態において、香味発生物品110の第1の巻紙112および第2の巻紙113には、填料が含まれ得る。填料の含有量は、第1の巻紙112および第2の巻紙113の全重量に対して10重量%~60重量%を挙げることができ、15重量%~45重量%であることが好ましい。本実施形態において、好ましい坪量の範囲(25gsm~45gsm)に対して、填料が15重量%~45重量%であることが好ましい。填料としては、例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カオリン等を使用することができる。このような填料を含む紙は、香味発生物品110の巻紙として利用する外観上の観点から好ましい白色系の明るい色を呈し、恒久的に白さを保つことができる。そのような填料を多く含有させることで、例えば、巻紙のISO白色度を83%以上にすることができる。
【0023】
また、香味発生物品110の巻紙として利用する実用上の観点から、第1の巻紙112および第2の巻紙113は、8N/15mm以上の引張強度を有することが好ましい。この引張強度は、填料の含有量を少なくすることで高めることができる。具体的には、上記で例示した各坪量の範囲において示した填料の含有量の上限よりも填料の含有量を少なくすることで、引張強度を高めることができる。
【0024】
次に、
図1Aおよび
図1Bに示した香味吸引器10の内部構造について説明する。
図3は、
図1Aに示した矢視3-3における断面図である。
図3に示すように、香味吸引器10は、アウタハウジング11およびインナハウジング17の内部空間に、電源部20と、回路部30と、加熱部40と、を有する。アウタハウジング11を構成するトップハウジング11Aおよびボトムハウジング11Bは、インナハウジング17を取り囲んで、インナハウジング17を内部空間に格納する。
【0025】
回路部30は、互いに電気的に接続された第1回路基板31と、第2回路基板32と、第3回路基板33と、を有する。第1回路基板31は、例えば、図示のように矩形状の電源21の一面に隣接して長手方向に延びて配置される。第1回路基板31と加熱部40との間には、隔壁34が設けられており、これにより、電源部20と第1回路基板31とを収容する領域の少なくとも一部が区画される。隔壁34には、電源部20側の空間と加熱部40側の空間とを流体連通する切欠きや貫通孔等が設けられてもよい。
【0026】
第2回路基板32は、トップハウジング11Aの内側でカバー12と電源部20との間に配置され、第1回路基板31の延在方向と直交する方向に延びる。スイッチ13は、第2回路基板32と隣接して配置される。使用者がスイッチ13を押下したとき、スイッチ13の一部が、第2回路基板32と接触し得る。第3回路基板33は、加熱部40に対して、開口12a(
図1B参照)の反対側に形成された空間において、長手方向に延びて配置される。
【0027】
第3回路基板33は、種々の電子部品が取り付けられた主面を有する。例えば、第3回路基板33は、その主面が長手方向に対して傾斜するように、ボトムハウジング11B内に配置されてもよい。これにより、第3回路基板33の主面を大きくすることができ、ボトムハウジング11B内の空間を有効活用することができる。
【0028】
第1回路基板31、第2回路基板32および第3回路基板33は、例えばマイクロプロセッサ等を含み、電源部20から加熱部40への電力の供給を制御することができる。これにより、第1回路基板31、第2回路基板32および第3回路基板33は、加熱部40による香味発生物品110の加熱を制御することができる。
【0029】
電源部20は、第1回路基板31、第2回路基板32および第3回路基板33に電気的に接続される電源21を有する。電源21は、例えば、充電式バッテリまたは非充電式のバッテリであり得る。電源21は、第1回路基板31、第2回路基板32および第3回路基板33の少なくとも1つを介して、加熱部40と電気的に接続される。これにより、電源21は、香味発生物品110を適切に加熱するように、加熱部40に電力を供給することができる。また、図示のように、電源21は、加熱部40と並列に配置される。これにより、電源21の大きさを大きくしても、香味吸引器10の長手方向の長さが長くなることを抑制することができる。
【0030】
また、香味吸引器10は、外部電源と接続可能な端子22を有する。端子22は、例えばマイクロUSB等のケーブルと接続することができる。電源21が充電式バッテリである場合は、端子22に外部電源を接続することで、外部電源から電源21に電流を流し、電源21を充電することができる。また、端子22にマイクロUSB等のデータ送信ケーブルを接続することにより、香味吸引器10の作動に関連するデータを外部装置に送信できるようにしてもよい。
【0031】
加熱部40は、図示のように、長手方向に延びる加熱アセンブリ41と、断面L字状のインレット管50と、略筒状の挿入ガイド部材60と、を有する。加熱アセンブリ41は、複数の筒状の部材を含み、全体として筒状体をなしている。加熱アセンブリ41は、その内部に香味発生物品110の一部を収納可能に構成され、香味発生物品110へ供給する空気の流路を画定する機能、および香味発生物品110を外周から加熱する機能を有する。
【0032】
ボトムハウジング11Bには、加熱アセンブリ41の内部に空気を導入するための第1通気口15および第2通気口18が形成される。具体的には、第1通気口15は、インレット管50を貫通して加熱アセンブリ41に至る流路の上流端と流体連通する。つまり、第1通気口15は、インレット管50の貫通流路を介して加熱アセンブリ41の上流端と流体連通する。また、第2通気口18は、アウタハウジング11とインナハウジング17との間に形成される空気流路18Aの上流端と流体連通する。さらに、空気流路18Aの下流端は、インレット管50を貫通する流路の上流端と流体連通するので、第1通気口15と同じく、第2通気口18も最終的には加熱アセンブリ41と流体連通する。
【0033】
加熱アセンブリ41の下流端は、挿入ガイド部材60を貫通して
図1Bに示した開口12aに至る流路の上流端と流体連通する。香味発生物品110は、
図1Bに示すようにカバー12の開口12aから香味吸引器10の内部に挿入されると、挿入ガイド部材60を通過し、香味発生物品110の一部が加熱アセンブリ41の内部に配置される。このため、挿入ガイド部材60は、加熱アセンブリ41の下流側の内径の大きさよりも、カバー12側の内径の方が徐々に大きくなるように形成されることが好ましい。これにより、香味発生物品110を開口12aから挿入ガイド部材60の内部に挿入し易くなる。
【0034】
図1Bに示すように、香味発生物品110が開口12aから香味吸引器10内に挿入された状態で、使用者が、香味発生物品110の香味吸引器10から突出した部分、すなわち
図2に示したフィルタ部115から吸引すると、第1通気口15および第2通気口18から加熱アセンブリ41の内部に空気が流入する。流入した空気は、加熱アセンブリ41の内部を通過して、香味発生物品110から生じるエアロゾルと共に、使用者の口内に到達する。したがって、加熱アセンブリ41の第1通気口15および第2通気口18に近い側(インレット管50に近い側)は上流側であり、加熱アセンブリ41の開口12aに近い側(挿入ガイド部材60に近い側)は下流側である。
【0035】
次に、
図3に示した加熱部40の構成について説明する。
図4は、加熱部40の断面図である。
図4に示すように、加熱部40は、加熱アセンブリ41と、インレット管50と、挿入ガイド部材60と、を有する。加熱アセンブリ41は、香味発生物品110を収容可能なチャンバを形成するカップ状の容器(熱伝導部材)42と、香味発生物品110を加熱するように構成された加熱部材43と、熱収縮チューブ(固定部材)44と、断熱部45と、を有する。
【0036】
容器42は、香味発生物品110を挿入するための第1開口42aを一端に有し、かつ香味発生物品110に向けて空気を供給可能な第2開口42bを他端に有して、香味発生物品110を収容可能に構成される。容器42は、香味発生物品110が加熱部材43に装着されたときに、香味発生物品110に対向するように構成された第2面を有する。本実施形態では、容器42は、第1開口42aから挿入された香味発生物品110の外周を取り囲み、香味発生物品110の外周面の少なくとも一部と接触するように構成された内周面(第2面)を有する。また、容器42は、第1開口42aの近傍において、第2開口42b側から第1開口42a側に向けて、すなわち第1開口42aの反対側から前記第1開口42aに向けて、内径が徐々に大きくなっている。これにより、香味発生物品110を第1開口42aから容器42の内部に挿入し易くなる。
【0037】
さらに、容器42は、第1開口42aから挿入された香味発生物品110の先端が突き当てられるに底壁42dを有する。第2開口42bは、容器42の底壁42dに形成された貫通孔である。第2開口42bは、空気流の上流側に位置し、第1開口42aは、下流側に位置する。また、容器42の内周面には、挿入された香味発生物品110の外周面を径方向内向きに押圧して保持するように構成されたボス(突起)42cが形成されている。
【0038】
加熱部材43は、例えば2枚のPI(ポリイミド)等のフィルム(基体)で、ステンレス等の発熱抵抗体(発熱体)を挟み込んで構成される、可撓性のポリイミドヒータであり得る。加熱部材43は、容器42に接触するように配置される。具体的には、図示の例では、加熱部材43が容器42の外周面(第1面)に配置され、加熱部材43の内部表面が容器42の外部表面に密着している。加熱部材43は、容器42の外周面に沿って配置されるので、全体として略筒状に変形される。
【0039】
加熱部材43は、香味発生物品110に加えられる熱を発生する。容器42は、例えばSUS等の熱伝導性の高い金属材料により形成される。そのため、加熱部材43で発生した熱が容器42全体に伝達され、その結果、容器42に挿入された香味発生物品110が加熱される。
【0040】
熱収縮チューブ44は、筒状であり、加熱部材43が容器42に密着した状態を維持する。具体的には、熱収縮チューブ44は、加熱部材43の外周側に配置された状態で熱が加えられることにより熱収縮しており、これにより、加熱部材43を容器42に押し付けるように加熱部材43に応力を与える。ここで、熱収縮チューブ44は、インレット管50の下流側の一部を覆って熱収縮しており、これにより、容器42とインレット管50とを密着させることができる。
【0041】
断熱部45は、二重管構造を有する筒状の部材であり、熱収縮チューブ44から径方向(長手方向と直交する方向)外向きに所定の間隔を隔てて配置されている。また、断熱部45は、容器42と同様にSUS等の金属材料により形成される。断熱部45は、内側管状部材45a、外側管状部材45b、第1環状部材45cおよび第2環状部材45dを有している。内側管状部材45aおよび外側管状部材45bは、挿入された香味発生物品110の径方向に並んで配置されている。
【0042】
第1環状部材45cは、内側管状部材45aおよび外側管状部材45bの下流側に配置され、第2環状部材45dは、内側管状部材45aおよび外側管状部材45bの上流側に配置されている。例えば、断熱部45は、二重管構造の内側に減圧空気または真空を有する真空断熱材であり得る。具体的には、内側管状部材45aおよび外側管状部材45bと、第1環状部材45cおよび第2環状部材45dとで形成された空間を減圧することにより、加熱部材43から発生する熱が、加熱アセンブリ41の外側に伝わりにくくなる。
【0043】
インレット管50は、例えば樹脂材料により形成され、第2開口42bを介して容器42と流体連通し、容器42内に空気を導入する。インレット管50は、容器42の上流端(第2開口42b側の端部)と係合する下流端50aと、下流端50aの反対側の上流端50bと、を有する配管を形成する部材である。インレット管50は、容器42の第2開口42bに向けて空気を導入する内部流路を形成する。
図4に示したインレット管50は、L字状に曲がった内部流路を形成する。また、インレット管50の上流端50bは、
図3に示した第1通気口15および空気流路18Aと近接または隣接して配置される。
【0044】
挿入ガイド部材60は、例えば樹脂材料により形成され、第1開口42aを介して容器42と流体連通する。挿入ガイド部材60は、開口12a(
図1B参照)を有するカバー12と加熱アセンブリ41の下流端との間に設けられて、容器42への香味発生物品110の挿入を案内する。
【0045】
挿入ガイド部材60は、容器42の下流端(第1開口42a側の端部)と係合する上流端60aと、上流端60aの反対側の開口60bと、を有する部材である。挿入ガイド部材60の上流端60a(第1開口42a側の端部)は、容器42の下流端の外周を取り囲み、挿入ガイド部材60と容器42との間には、所定の空隙が設けられている。すなわち、挿入ガイド部材60の上流端は、容器42の下流端を収容可能な、容器42の下流端の外径よりも大きい内径を備える。開口60bは、カバー12の開口12a(
図1B参照)と流体連通し、香味発生物品110を挿入可能に構成される。
【0046】
次に、
図4に示した加熱部材43の構成について説明する。
図5は、容器42の外周面に沿って配置された加熱部材43の展開図である。
図5に示すように、加熱部材43は、熱を発生する発熱抵抗体43aと、発熱抵抗体43aを2枚のフィルムの間に挟み込んで支持する絶縁性のポリイミドフィルム43bと、電源21(
図3参照)と電気的に接続される配線部43cと、を有している。本実施形態では、発熱抵抗体43aは、3系統設けられている。発熱抵抗体43aとポリイミドフィルム43bとにより、発熱抵抗体43aが配置された発熱領域43dと、発熱領域43dに隣接し、発熱抵抗体43aが配置されていない非発熱領域43eとが形成される。
【0047】
次に、容器42の内周面に形成されたボス42cと加熱部材43との位置関係について詳細に説明する。
図6は、容器42、加熱部材43および熱収縮チューブ44を抜粋した拡大断面図である。
図6に示すように、加熱部材43は、容器42の外周面に配置されている。加熱部材43において、発熱抵抗体43aが配置された発熱領域43dから、第1開口42a側に向けて、発熱抵抗体43aが配置されていない非発熱領域43eが延在している。また、熱収縮チューブ44は、加熱部材43の外周を取り囲んで配置されている。
【0048】
ここで、ボス42cは、容器42の内周面において、容器42の外周面に配置された加熱部材43の非発熱領域43eに対応する領域に設けられている。すなわち、ボス42cは、加熱部材43の発熱領域43dから離間した位置に設けられている。また、ボス42cは、球面状の表面を有していれば、エンボス加工によって形成されてもよいし、容器42の内周面に取り付けられた凸状部材によって形成されてもよい。また、ボス42cは、金属製であってもよいし、非金属製であってもよい。
【0049】
また、
図6に示すように、長手方向について、熱収縮チューブ44の第1開口42a側の端部は、ボス42cよりも第1開口42a側に延びて配置されている。さらに、図示しないが、長手方向について、断熱部45(
図4参照)の第1開口42a側の端部は、ボス42cよりも第1開口42a側に延びて配置されている。
【0050】
ボス42cを、容器42の内周面において、容器42の外周面に配置された加熱部材43の非発熱領域43eに対応する領域に設けることにより、香味発生物品110を均一に加熱することができる。加熱部材43の発熱領域43dに対応する容器42の内周面に、エンボス加工によってボスを形成した場合、ボスの裏面に空隙が形成されるので、香味発生物品110への熱の伝わり方が不均一になる。また、加熱部材43の発熱領域43dに対応する容器42の内周面に、凸状部材を取り付けてボスを形成した場合、ボスの分だけ容器42が肉厚になり、容器42の内周面が加熱部材43から遠くなるので、香味発生物品110への熱の伝わり方が不均一になる。そこで、発熱領域43dを避けてボス42cを形成することで、香味発生物品110を均一に加熱することができる。
【0051】
また、ボス42cを、容器42の内周面において、容器42の外周面に配置された加熱部材43の非発熱領域43eに対応する領域に設けることにより、香味発生物品110の損傷を抑制しつつ、容器42に挿入された香味発生物品110を把持することができる。香味発生物品110を第1開口42aの近傍にボスを形成した場合、香味発生物品110の挿入動作中、香味発生物品110の長手方向の広い範囲がボスと摩擦接触するので、香味発生物品110の外面が損傷しやすくなる。そこで、非発熱領域43eに対応する領域にボス42cを形成することで、香味発生物品110がボス42cと摩擦接触する範囲を狭くして、香味発生物品110の損傷を抑制しつつ、容器42に挿入された香味発生物品110を把持することができる。
【0052】
また、ボス42cを金属で形成した場合には、金属は摩擦に強いため、香味発生物品110の挿入および抜去を繰り返した場合であっても、香味発生物品110を把持する能力が低下することを防止することができる。
【0053】
次に、ボス42cが設けられる具体的な位置について説明する。
図7は、容器42および加熱部材43を抜粋した拡大図である。
図7に示すように、加熱部材43は、容器42の外周の全周にわたって巻かれたシートであり、シートの周方向の側端部同士が突き合わされている(
図7中、加熱部材43中央の縦線参照)。
【0054】
加熱部材43の非発熱領域43eには、容器42の外周面の周方向に沿って延在する第1帯状領域43fが形成される。第1帯状領域43fは、加熱部材43において、容器42の第1開口42a側の端部に形成されている。ボス42cは、容器42の内周面において、容器42の外周面に配置された加熱部材43の第1帯状領域43fに対応する領域に設けられている。なお、ボス42cは、第1帯状領域43fの延在方向に沿って複数設けられてもよい。
【0055】
ボス42cを、容器42の内周面において、容器42の外周面に配置された加熱部材43の第1帯状領域43fに対応する領域に設けることにより、容器42に挿入された香味発生物品110を安定して把持することができる。容器42の第2開口42b(
図4参照)側にボスを形成した場合、香味発生物品110の先端に近い部分が把持されることとなり、香味発生物品110がボスを支点として揺動することがある。そこで、第1帯状領域43fに対応する領域にボス42cを形成することで、香味発生物品110を安定して把持することができる。また、ボス42cを複数設けることで、香味発生物品110をより安定して把持することができる。
【0056】
図8は、容器および加熱部材を抜粋した別の拡大図である。
図8に示すように、加熱部材43は、容器42の外周の全周にわたって巻かれたシートであり、シートの周方向の側端部同士が突き合わされている(
図8中、加熱部材43中央の縦線参照)。なお、シートの周方向の側端部同士は、少なくとも部分的に重なり合っていてもよい。
【0057】
加熱部材43の非発熱領域43eには、容器42の長手方向に沿って延在する第2帯状領域43gが形成される。すなわち、第2帯状領域43gは、径方向について、シートの両側端部に形成されている。また、第2帯状領域43gは、シートの側端部同士が少なくとも部分的に重なり合う領域に形成されてもよい。ボス42cは、容器42の内周面において、容器42の外周面に配置された加熱部材43の第2帯状領域43gに対応する領域に設けられている。なお、ボス42cは、第2帯状領域43gの延在方向について、発熱領域43dの範囲内に設けられてもよい。また、ボス42cは、第2帯状領域43gの延在方向に沿って複数設けられてもよい。また、ボス42cは、第2帯状領域43gに対応する領域に加えて、
図7に示した第1帯状領域43fに対応する領域に設けられてもよい。
【0058】
ボス42cを、容器42の内周面において、容器42の外周面に配置された加熱部材43の第2帯状領域43gに対応する領域であって、かつ第2帯状領域43gの延在方向について、発熱領域43dの範囲内に設けることにより、香味発生物品110の損傷を低減しつつ、容器42に挿入された香味発生物品110を把持することができる。すなわち、第1帯状領域43fに対応する領域にボス42cを形成する場合よりも、香味発生物品110がボス42cと摩擦接触する範囲を狭くすることができるので、香味発生物品110の損傷を低減することができる。また、ボス42cを複数設けることで、香味発生物品110をより安定して把持することができる。
【0059】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書および図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【0060】
以下に本明細書が開示する形態のいくつかを記載しておく。
【0061】
第1形態によれば、加熱アセンブリであって、香味発生物品を加熱するように構成された加熱部材と、加熱部材で発生した熱を香味発生物品に伝える熱伝導部材と、を備え、加熱部材は、熱を発生する発熱体と、発熱体を支持する絶縁性の基体と、を有し、発熱体と基体とにより、発熱体が配置された発熱領域と、発熱領域に隣接し、発熱体が配置されていない非発熱領域とが形成され、熱伝導部材は、加熱部材が配置される第1面と、香味発生物品が加熱部材に装着されたときに、香味発生物品に対向するように構成された第2面と、第2面の、第1面に配置された加熱部材の非発熱領域に対応する領域に設けられ、装着された香味発生物品を押圧して保持する突起と、を有する。
【0062】
第2形態によれば、第1形態の加熱アセンブリにおいて、熱伝導部材は、香味発生物品を収容可能なチャンバを形成し、チャンバの外周面および内周面は、熱伝導部材の第1面および第2面をそれぞれ形成する。
【0063】
第3形態によれば、第2形態の加熱アセンブリにおいて、非発熱領域は、外周面の周方向に沿って延在する第1帯状領域を有し、突起は、内周面の、第1帯状領域に対応する領域に設けられている。
【0064】
第4形態によれば、第3形態の加熱アセンブリにおいて、突起は、第1帯状領域の延在方向に沿って複数設けられている。
【0065】
第5形態によれば、第3形態または第4形態の加熱アセンブリにおいて、チャンバは、香味発生物品を挿入するための第1開口を有し、第1帯状領域は、加熱部材において、熱伝導部材の第1開口側の端部に形成されている。
【0066】
第6形態によれば、第5形態の加熱アセンブリにおいて、加熱部材の外周を取り囲んで、加熱部材を熱伝導部材に固定する固定部材をさらに備え、装着された香味発生物品の長手方向について、固定部材における熱伝導部材の第1開口側の端部は、突起よりも熱伝導部材の第1開口側に配置されている。
【0067】
第7形態によれば、第5形態または第6形態の加熱アセンブリにおいて、装着された香味発生物品の長手方向と直交する方向について加熱部材から離間して配置された断熱部をさらに備え、長手方向について、断熱部における熱伝導部材の第1開口側の端部は、突起よりも熱伝導部材の第1開口側に配置されている。
【0068】
第8形態によれば、第5形態から第7形態までのいずれかの加熱アセンブリにおいて、熱伝導部材は、第1開口の反対側から第1開口に向けて、内径が徐々に大きくなっている部分を有する。
【0069】
第9形態によれば、第5形態から第8形態までのいずれかの加熱アセンブリにおいて、熱伝導部材は、第1開口を介して、熱伝導部材への香味発生物品の挿入を案内する挿入ガイド部材と流体連通している。
【0070】
第10形態によれば、第9形態の加熱アセンブリにおいて、挿入ガイド部材は、第1開口から離間するにつれて、内径が徐々に大きくなっている。
【0071】
第11形態によれば、第2形態から第10形態までのいずれかの加熱アセンブリにおいて、チャンバは、香味発生物品に向けて空気を供給可能な第2開口を有する。
【0072】
第12形態によれば、第1形態から第11形態までのいずれかの加熱アセンブリにおいて、非発熱領域は、装着された香味発生物品の長手方向に沿って延在する第2帯状領域を有し、突起は、第2面の、第2帯状領域に対応する領域に設けられている。
【0073】
第13形態によれば、第12形態の加熱アセンブリにおいて、突起は、第2帯状領域の延在方向について、発熱領域の範囲内に設けられる。
【0074】
第14形態によれば、第12形態または第13形態の加熱アセンブリにおいて、突起は、第2帯状領域の延在方向に沿って複数設けられている。
【0075】
第15形態によれば、第12形態から第14形態までのいずれかの加熱アセンブリにおいて、加熱部材は、熱伝導部材の外周に巻かれたシートであり、第2帯状領域は、装着された香味発生物品の長手方向と直交する方向について、シートの両側端部に形成されている。
【0076】
第16形態によれば、第15形態の加熱アセンブリにおいて、第2帯状領域は、シートの側端部同士が少なくとも部分的に重なり合う領域である。
【0077】
第17形態によれば、第1形態から第16形態までのいずれかの加熱アセンブリにおいて、発熱体は、一対の基体に挟まれている。
【0078】
第18形態によれば、第1形態から第17形態までのいずれかの加熱アセンブリを備えた香味吸引器が提供される。
【符号の説明】
【0079】
10…香味吸引器
41…加熱アセンブリ
42…容器
42a…第1開口
42b…第2開口
42c…ボス
42d…底壁
43…加熱部材
43a…発熱抵抗体
43b…ポリイミドフィルム
43c…配線部
43d…発熱領域
43e…非発熱領域
43f…第1帯状領域
43g…第2帯状領域
44…熱収縮チューブ
45…断熱部
45a…内側管状部材
45b…外側管状部材
45c…第1環状部材
45d…第2環状部材
50…インレット管
60…挿入ガイド部材
110…香味発生物品