(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】打込機
(51)【国際特許分類】
B25C 1/06 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
B25C1/06
(21)【出願番号】P 2018157115
(22)【出願日】2018-08-24
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 勇人
(72)【発明者】
【氏名】西河 智雅
(72)【発明者】
【氏名】安富 俊徳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-254151(JP,A)
【文献】特開2010-082765(JP,A)
【文献】特開2016-203292(JP,A)
【文献】特開2011-229317(JP,A)
【文献】特開2010-158743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向及び前記第1方向とは逆の第2方向に作動可能な打撃部と、前記打撃部を前記第1方向に付勢する付勢機構と、電圧が印加されて軸線を中心として回転し、かつ、前記打撃部を前記付勢機構の力に抗して前記第2方向に作動させる電動モータと、前記電動モータに電圧を印加する電源と、前記打撃部、前記付勢機構、前記電動モータ、前記電源を支持するハウジングと、を有する打込機において、
前記電源の定格電圧は、36Vであって、
前記ハウジングは、
前記打撃部の作動を制御する操作部を備え、作業者が手で握るハンドルと、
前記電動モータを収容するモータケースと、
を有し、
前記ハンドルと前記モータケースとが、前記打撃部の作動方向に間隔をおいて配置され、
前記打撃部、前記付勢機構、前記電動モータ、前記電源を支持している前記ハウジングの重心を備え、
前記ハウジングの重心は、前記打撃部の作動方向で前記ハンドルと前記モータケースとの間であり、かつ、前記軸線方向で前記ハウジング及び前記電源を含む全長の略1/2の位置に配置され
、
前記電動モータは、ブラシレスモータであり、
前記電圧が印加されて回転磁界を形成するステータと、
前記ステータが形成する回転磁界により、軸線を中心として回転するロータと、を有し、
前記ステータは、
前記電源に電気的に接続されるコイルと、
前記コイルが取り付けられるステータコアと、を有し、
前記ステータコアは、
前記軸線に沿った方向における長さが20mm以下、かつ、前記軸線を中心とする直径が前記軸線に沿った方向における前記ステータコアの長さよりも大きく、
前記軸線に沿った方向における位置が、前記操作部に対して前記打撃部から離れる側とされ、
前記電源は、
前記ハウジングに対して着脱可能な収容ケースと、
前記収容ケース内に収容される電池セルと、を備え、
前記電池セルは、直列に接続される10個の電池セルであり、
10個の前記電池セルのそれぞれの定格電圧は、3.6Vであり、
前記電源は、前記ハウジングにおける前記打撃部と反対の側であって、前記打撃部の作動方向で、前記電動モータと重なる位置に配置されている、打込機。
【請求項2】
前記打撃部により打撃される止具が供給される射出部が、前記ハウジングに取り付けられ、
前記電動モータは、前記打撃部の作動方向で前記ハンドルと前記射出部との間に配置され、
前記軸線は、前記打撃部の作動方向に対して交差して配置されている、請求項1記載の打込機。
【請求項3】
前記電源と前記電動モータとの間に形成された電気回路と、前記電気回路をオン及びオフするスイッチング素子と、
が更に設けられ、
前記スイッチング素子は、電気信号が入力されて前記電気回路をオン及びオフする信号入力部を有し、
前記電源の降下電圧は、前記スイッチング素子の駆動電圧よりも高い、
請求項1記載の打込機。
【請求項4】
前記電源の放電終止電圧は、前記信号入力部に入力される前記電気信号の電圧よりも高い、請求項3記載の打込機。
【請求項5】
前記スイッチング素子が前記電気回路をオンする割合であるデューティ比を制御するコントローラが設けられ、
前記コントローラは、前記電源の電圧を前記電動モータに印加する場合の目標電流値が一定となるように、前記スイッチング素子のデューティ比を制御する、請求項3
又は4記載の打込機。
【請求項6】
前記ハウジング内の温度を検出する温度検出部が、更に設けられ、
前記コントローラは、前記ハウジング内の温度が所定値を超えている場合の前記目標電流値を、前記ハウジング内の温度が前記所定値以下である場合の前記目標電流値よりも高く設定する、請求項
5記載の打込機。
【請求項7】
前記ハウジング内の温度は、前記電動モータの温度、または、前記スイッチング素子の温度である、請求項
6記載の打込機。
【請求項8】
前記軸線に沿った方向における前記ステータコアの長さは、11mm以下である、請求項
1記載の打込機。
【請求項9】
前記打撃部により打撃される止具が供給される射出部と、
前記射出部に取り付けられ、かつ、前記止具を打ち込む相手材に接触及び離間が可能な接触部材と、
前記射出部に供給する前記止具を支持するマガジンと、
前記マガジンに取り付けられ、かつ、前記接触部材の先端を照らす照明部と、
が更に設けられ、
前記照明部の点灯させるために必要な電圧は、前記電源の放電終止電圧よりも低い、請求項
1記載の打込機。
【請求項10】
前記モータケース内に設けられ、かつ、前記スイッチング素子を取り付けた基板と、
前記モータケース内に設けたギヤケースと、
前記ギヤケース内に設けられ、かつ、前記電動モータから回転力が伝達される減速機と、
前記モータケースを貫通して設けられた第1吸気孔、第2吸気孔及び排気孔と、
前記モータケースの外部の空気を前記第1吸気孔及び前記第2吸気孔から前記モータケースの内部に吸入し、かつ、前記モータケースの内部の空気を、前記排気孔から前記モータケースの外部に排出させるファンと、
が更に設けられ、
前記第1吸気孔の配置領域と前記ギヤケースの配置領域とが重なり、
前記第2吸気孔の配置領域と前記基板の配置領域とが重なり、
前記排気孔の配置領域と前記ファンの配置領域とが重なっている、請求項
3記載の打込機。
【請求項11】
前記モータケースにおいて前記打撃部の作動方向で前記
操作部と対向する位置に、窪み部が設けられている、請求項
1記載の打込機。
【請求項12】
前記電源は、前記
ハンドルが延びる方向に対して交差する方向にスライドすることにより、前記ハンドルに対して着脱可能である、請求項
1記載の打込機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打撃部により打撃される前の止具を収容する収容部と、収容部に供給される止具の数に応じた信号を出力する検出部と、を備えた打込機に関する。
【背景技術】
【0002】
打撃部により打撃される前の止具を収容する収容部と、収容部に供給される止具の数に応じた信号を出力する検出部と、を備えた打込機は、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された打込機は、ハウジング、打撃部、スプリング、クラッチ、電動モータ、マガジン、電池、トリガスイッチ、コントローラ、レバー、射出部を有する。打撃部及びクラッチは、ハウジング内に設けられている。マガジンは止具を収容している。
【0003】
コントローラは、トリガスイッチがオフしていると、電池の電力を電動モータに供給せず、電動モータは停止している。このため、打撃部は下死点で停止している。コントローラは、トリガスイッチがオンすると、電池の電力を電動モータに供給させ、電動モータを回転させる。クラッチが係合していると、電動モータの回転力は打撃部に伝達され、打撃部は下死点から上死点に向けて作動する。クラッチが解放すると、電動モータの回転力は打撃部に伝達されなくなり、打撃部はスプリングの力で、上死点から下死点に向けて作動し、打撃部は止具を打撃する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、打撃部が作動を開始してから、打撃部が止具を打撃するまでの応答性を向上させようとすると、電動モータが大型化する、という課題を認識した。
【0006】
本発明の目的は、電動モータの大型化を抑制可能な打込機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の打込機は、第1方向及び前記第1方向とは逆の第2方向に作動可能な打撃部と、前記打撃部を前記第1方向に付勢する付勢機構と、電圧が印加されて軸線を中心として回転し、かつ、前記打撃部を前記付勢機構の力に抗して前記第2方向に作動させる電動モータと、前記電動モータに電圧を印加する電源と、前記打撃部、前記付勢機構、前記電動モータ、前記電源を支持するハウジングと、を有する打込機において、前記電源の定格電圧は、36Vである。前記ハウジングは、前記打撃部の作動を制御する操作部を備え、作業者が手で握るハンドルと、前記電動モータを収容するモータケースと、を有する。前記ハンドルと前記モータケースとが、前記打撃部の作動方向に間隔をおいて配置される。前記打撃部、前記付勢機構、前記電動モータ、前記電源を支持している前記ハウジングの重心を備え、前記ハウジングの重心は、前記打撃部の作動方向で前記ハンドルと前記モータケースとの間であり、かつ、前記軸線方向で前記ハウジング及び前記電源を含む全長の略1/2の位置に配置される。前記電動モータは、ブラシレスモータであり、前記電圧が印加されて回転磁界を形成するステータと、前記ステータが形成する回転磁界により、軸線を中心として回転するロータと、を有する。前記ステータは、前記電源に電気的に接続されるコイルと、前記コイルが取り付けられるステータコアと、を有する。前記ステータコアは、前記軸線に沿った方向における長さが20mm以下、かつ、前記軸線を中心とする直径が前記軸線に沿った方向における前記ステータコアの長さよりも大きく、前記軸線に沿った方向における位置が、前記操作部に対して前記打撃部から離れる側とされる。前記電源は、前記ハウジングに対して着脱可能な収容ケースと、前記収容ケース内に収容される電池セルと、を備える。前記電池セルは、直列に接続される10個の電池セルであり、10個の前記電池セルのそれぞれの定格電圧は、3.6Vである。前記電源は、前記ハウジングにおける前記打撃部と反対の側であって、前記打撃部の作動方向で、前記電動モータと重なる位置に配置されている。
【0008】
他の実施形態の打込機は、第1方向及び前記第1方向とは逆の第2方向に作動可能な打撃部と、前記打撃部を前記第1方向に付勢する付勢機構と、電圧が印加されて回転し、かつ、前記打撃部を前記付勢機構の力に抗して前記第2方向に作動させる電動モータと、前記打撃部を支持するハウジングと、前記ハウジングに設けられ、かつ、前記電動モータに電圧を印加する電源と、前記電源と前記電動モータとの間に形成された電気回路と、前記電気回路をオン及びオフするスイッチング素子と、を有する打込機であって、前記スイッチング素子は、電気信号が入力されて前記電気回路をオン及びオフする信号入力部を有し、前記電源の降下電圧は、前記スイッチング素子の駆動電圧よりも高い。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態の打込機は、電動モータの大型化を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の打込機の実施形態を示す正面断面図である。
【
図2】打込機のモータケース内を示す正面断面図である。
【
図3】打込機における重心の位置を示す正面図である。
【
図5】(A)は打込機のモータケース内を示す側面断面図、(B)は打込機のモータケースを示す正面図である。
【
図7】打込機の使用例を示すフローチャート図である。
【
図8】打込機に設けた電動モータの制御例を示すタイムチャートである。
【
図9】(A)は電動モータの目標電流値の制御例を示すフローチャートであり、(B)は電動モータの回転数の変化例を示すタイムチャートである。
【
図10】(A)は打込機に設けた電池パックの電圧の変化例を示すタイムチャート、(B)は電動モータの電流または電圧またを制御するフローチャートである。
【
図11】打込機に設けた電池パックの電圧と、発光ダイオードランプの駆動電圧との関係を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に含まれる打込機の代表的な実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示す打込機10は、ハウジング11、打撃部12、マガジン13、電動モータ14、動力伝達部15、コントローラ16、電池パック17及びウェイト18を有する。ハウジング11は、筒形状の本体19と、本体19に接続されたハンドル20と、本体19に接続されたモータケース21と、を有する。
【0013】
ハンドル20は、本体19の外面から所定方向に突出して設けられている。装着部22がハンドル20及びモータケース21に接続されている。射出部23が本体19の外に設けられ、射出部23が本体19に固定されている。射出部23は、射出路を有する。
【0014】
打撃部12は、本体19及び射出部23に亘って設けられている。打撃部12は、本体19内に配置されたプランジャ24と、プランジャ24に固定されたドライバブレード25と、を有する。ガイドシャフト26が本体19内に設けられている。中心線B1はガイドシャフト26の中心である。
【0015】
プランジャ24は、ガイドシャフト26の外周面に取り付けられており、プランジャ24は、ガイドシャフト26に沿って中心線B1方向に作動可能である。プランジャ24は、プランジャアーム27を有する。ドライバブレード25はプランジャ24と共に中心線B1方向に作動可能である。ドライバブレード25は射出路内で作動可能である。
【0016】
ウェイト18は、ハウジング11が受ける反動を抑制する。ウェイト18の材質は、金属、非鉄金属、鋼、セラミックの何れでもよい。ウェイト18はガイドシャフト26に取り付けられている。ウェイト18はガイドシャフト26に沿って中心線B1方向に作動可能である。ウェイト18は一例として筒形状であり、ウェイトアーム70が、ウェイト18に設けられている。
【0017】
スプリング28が本体19内に配置され、スプリング28は、中心線B1方向でプランジャ24とウェイト18との間に配置されている。スプリング28は、一例として金属製の圧縮コイルスプリングを用いることが可能である。スプリング28は、中心線B1方向に伸縮可能である。スプリング28は、中心線B1方向の圧縮力を受けて弾性エネルギを蓄積する。ウェイトバンパ29及びプランジャバンパ30が、本体19内に設けられている。ウェイトバンパ29及びプランジャバンパ30は、共に合成ゴム製である。
【0018】
図1に示す打込機10は、中心線B1が鉛直線と平行な状態である例を示す。打撃部12またはプランジャ24またはウェイト18が、第1方向D1でそれぞれ作動することを下降と呼ぶ。
図1において、打撃部12またはプランジャ24またはウェイト18が、第2方向D2でそれぞれ作動することを上昇と呼ぶ。第1方向D1は第2方向D2に対して逆向きであり、第1方向D1及び第2方向D2は、中心線B1に沿った方向である。
【0019】
作業者が電池パック17を装着部22に対して第1方向D1に沿ってスライドさせると、電池パック17を装着部22に対して取り付けることが可能である。電池パック17を、装着部22に対して第2方向D2に沿ってスライドさせると、電池パック17を装着部22から取り外すこと、が可能である。
【0020】
電池パック17は、
図4のように、容器82、カバー83及び複数の電池セル32を有する。カバー83は容器82の開口部を覆い、カバー31は容器82に対して着脱可能である。容器82及びカバー31により取り囲まれた収容室84が形成されている。複数個、一例として10個の電池セル32が収容室84に設置されている。
【0021】
10個の電池セル32のそれぞれは、充電及び放電が可能な2次電池であり、10個の電池セル32は、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、の何れか1種類を用いることができる。1個の電池セル32は3.6Vであり、10個の電池セル32が直列に接続されている。
【0022】
したがって、電池パック17の定格電圧、つまり最大電圧は36Vである。10個の電池セル32は、それぞれ円柱形状である。10個の電池セル32は、一例として、それぞれの直径が約18mmで長さが約65mmである。また、電池セル32は、それぞれの直径が21mmで長さが約70mmでもよい。なお、電池セル32の直径及び長さは上記以外の値でもよい。
【0023】
モータケース21は、中心線B1方向でハンドル20と射出部23との間に配置されている。電動モータ14は、モータケース21内に設けられている。電動モータ14は、
図2のように、ロータ33及びステータ34を有する。ステータ34は、モータケース21に固定されており、ステータ34は、ステータコア35及びコイル36を有する。ステータコア35は、導電材料、一例として鉄板を重ね合わせたものである。コイル36は、導電線をステータコア35に巻いたものである。コイル36に電流が流れてステータ34は回転磁界を形成する。電動モータ14は、3相交流型のブラシレスモータであり、コイル36は、3相、つまり、U相、V相、W相に対応して3本設けられている。
【0024】
ロータ33に永久磁石37が取り付けられ、ロータ33はモータ軸38に固定されている。モータ軸38は、2個の軸受39,40を介して、モータケース21により軸線B2を中心として回転可能に支持されている。
図1に示す打込機10の正面視で、中心線B1と軸線B2とが所定角度で交差、一例として、90度で交差する。2個の軸受39,40は、軸線B2方向に間隔をおいて配置されている。軸受40は、軸線B2方向でプランジャバンパ30と軸受39との間に配置されている。電動モータ14は、軸線B2方向で軸受39と軸受40との間に配置されている。
【0025】
ギヤケース41がモータケース21内に設けられている。ギヤケース41は、熱伝導性に優れた金属製である。ギヤケース41は、一例として樹脂製であるが、アルミニウム等の金属製でもよい。ギヤケース41は筒形状であり、減速機42がギヤケース41内に配置されている。減速機42は、軸線B2方向で軸受40とプランジャバンパ30との間に配置されている。減速機42は、複数組の遊星歯車機構、入力要素43及び出力要素44を有する。入力要素43はモータ軸38に接続されている。電動モータ14及び減速機42は軸線B2を中心として同心状に配置されている。
【0026】
動力伝達部15は、出力要素44の回転力を打撃部12の作動力及びウェイト18の作動力に変換する。動力伝達部15は、第1ギヤ45、第2ギヤ46及び第3ギヤ47を有する。ホルダ48がハウジング11内に設けられ、出力要素44はホルダ48により回転可能に支持されている。第1ギヤ45は出力要素44に固定されている。第2ギヤ46及び第3ギヤ47は、ホルダ48により回転可能に支持されている。第2ギヤ46は、第1ギヤ45及び第3ギヤ47に噛み合っている。
【0027】
カムローラ49が第1ギヤ45に設けられ、カムローラ50が第2ギヤ46に設けられ、カムローラ51が第3ギヤ47に設けられている。カムローラ49,50は、プランジャアーム27に対して、それぞれ単独で係合及び解放可能である。カムローラ51は、ウェイトアーム70に係合及び解放可能である。
【0028】
電池パック17の電圧が電動モータ14に印加される、具体的には、電池パック17の電力がステータ34に供給されると、ロータ33及びモータ軸38が回転する。モータ軸38の回転力は、減速機42を介して第1ギヤ45に伝達される。第1ギヤ45の回転力は、第2ギヤ46を経由して第3ギヤ47に伝達される。
【0029】
図2に示す回転規制機構52がギヤケース41内に設けられている。回転規制機構52は、入力要素43と出力要素44との間の動力伝達経路に配置される。回転規制機構52は、転動体、例えば、ローラまたはボールである。回転規制機構52は、遊星歯車機構の回転要素、例えば、キャリヤとギヤケース41との間に配置されている。
【0030】
回転規制機構52は、電動モータ14から減速機42に第1方向のトルクが伝達されると、そのトルクで第1ギヤ45が正回転することを許容する。回転規制機構52は、第2ギヤ46またはプランジャアーム27から第1ギヤ45にトルクが加わり、そのトルクが減速機42に伝達された場合に、キャリヤとギヤケース41との間に食い込み、第1ギヤ45が逆回転することを阻止する。
【0031】
プッシュレバー53が射出部23に取り付けられている。プッシュレバー53は、射出部23に対して直線状に作動可能、一例として、中心線B1方向に作動可能である。付勢部材が射出部23に設けられ、付勢部材は、プッシュレバー53を本体19から離間させる向きで、中心線B1方向に付勢する。射出部23はストッパを有し、プッシュレバー53がストッパに接触して、プッシュレバー53が初期位置で停止する。作業者は、ハンドル20を手で握り、プッシュレバー53の先端を相手材W1に接触させること、またはプッシュレバー53の先端を相手材W1から離間させること、が可能である。
【0032】
マガジン13は、ハウジング11及び射出部23により支持されている。モータケース21は、中心線B1方向でハンドル20とマガジン13との間に配置されている。マガジン13は、止具54を収容する。止具54は、一例として棒状の釘である。複数の止具54同士は接続要素で互いに接続されている。接続要素は、接着剤、樹脂、ワイヤの何れでもよい。
【0033】
マガジン13はフィーダを有する。フィーダは、マガジン13が支持する止具54を、射出路に供給する。照明用の発光ダイオードランプ55が、マガジン13及びモータケース21の2ヶ所にそれぞれ設けられている。発光ダイオードランプ55は、相手材W1を照射する。射出部23、具体的にはプッシュレバー53の先端が、相手材W1に接触した状態で影ができないようにし、視認性を向上させている。
【0034】
電池パック17から発光ダイオードランプ55に電力が供給されると、発光ダイオードランプ55が点灯する。発光ダイオードランプ55に対する電力の供給が停止すると、発光ダイオードランプ55は消灯する。発光ダイオードランプ55は、プッシュレバー53の先端を照らす。
【0035】
コントローラ16は、装着部22内に設けられている。また、
図6に示すインバータ回路56が、モータケース21内に設けられている。コントローラ16は、マイクロコンピュータ57及び駆動信号出力回路58を有する。マイクロコンピュータ57は、入力ポート、出力ポート、演算処理部、タイマー及び記憶部を有する。マイクロコンピュータ57は、駆動信号出力回路58を制御する。
【0036】
インバータ回路56は、
図2のように、基板59と、基板59に取り付けられた複数のスイッチング素子、一例として電界効果トランジスタ60と、を有する。基板59は、軸線B2方向で電動モータ14と減速機42との間に配置されている。コイル36は、インバータ回路56を介して、電池パック17に電気的に接続または遮断される。
【0037】
電界効果トランジスタ60は、U相、V相、W相に対応させて、
図5(A)のように6個設けられている。6個の電界効果トランジスタ60は、ゲート60A、ソース60B及びドレイン60Cをそれぞれ有する。3個の電界効果トランジスタ60のドレイン60Cは、それぞれ電池パック17の正極に接続されている。3個の電界効果トランジスタ60のソース60Bは、他の3個の電界効果トランジスタ60のドレイン60C、及び3本のコイル36にそれぞれ別々に接続されている。他の3個の電界効果トランジスタ60のソース60Bは、それぞれ電池パック17の負極に接続されている。
【0038】
駆動信号出力回路58から出力される電気信号は、6個の電界効果トランジスタ60のゲート60Aにそれぞれ入力され、6個の電界効果トランジスタ60は、それぞれ単独でオン及びオフが可能である。
【0039】
図1のように、トリガ61及びトリガスイッチ62がハンドル20に設けられている。
図3のように、モータケース21のうち、軸線B2方向でトリガ61と対向する位置に窪み部21Aが設けられている。窪み部21Aは、軸線B2方向で電動モータ14をしている箇所21Bと、本体19との間に位置する。この窪み部21Aが設けられていることで、中心線B1方向において、トリガ61とモータケース21の外面との間に十分な隙間を確保できる。このため、作業者がハンドル20を手で握り、かつ、トリガ61に指を接触させた場合に、指がモータケース21に接触しにくくなり、トリガ61の操作性が向上する。
【0040】
作業者がトリガ61に操作力を加えるとトリガスイッチ62がオンする。作業者がトリガ61に対する操作力を解除すると、トリガスイッチ62がオフする。位置検出センサ63が、ハウジング11内に設けられている。位置検出センサ63は、中心線B1方向におけるウェイト18の位置を検出して信号を出力する。
【0041】
図6に示す位相検出センサ64が、モータケース21内に設けられている。位相検出センサ64は、一例としてホール素子であり、永久磁石37が形成する磁界を検出する。プッシュレバースイッチ65が、一例としてマガジン13に設けられている。プッシュレバー53が相手材W1に押し付けられていると、プッシュレバースイッチ65はオンする。プッシュレバー53が相手材W1から離間していると、プッシュレバースイッチ65はオフする。
【0042】
さらに、電池パック17の電圧を検出する電圧検出センサ66が設けられ、電池パック17から電動モータ14に供給される電流値を検出する電流値検出センサ67が設けられている。さらにまた、ハウジング11内に温度検出センサ72が設けられている。温度検出センサ72は、ハウジング11内の温度、例えば、電動モータ14の温度またはインバータ回路56のうち、少なくとも一方の温度を検出して信号を出力する。
【0043】
コントローラ16は、トリガスイッチ62の信号、プッシュレバースイッチ65の信号、位置検出センサ63の信号、位相検出センサ64の信号、電圧検出センサ66の信号、電流値検出センサ67の信号、温度検出センサ72の信号を、それぞれ検出及び処理する。コントローラ16は、位相検出センサ64の信号を処理して、モータ軸38の回転方向における位相、モータ軸38の回転数、モータ軸38の回転速度を推定する。
【0044】
さらに、ハウジング11の外面、例えば、装着部22の外面にランプスイッチ68が設けられている。作業者がランプスイッチ68をオンすると、電池パック17の電力が発光ダイオードランプ55に供給される。作業者がランプスイッチ68をオフすると、発光ダイオードランプ55に対する電力の供給が停止する。
【0045】
さらに、表示部69がハウジング11の外面に設けられている。表示部69は、一例として液晶ディスプレイを有する。コントローラ16から出力される信号が表示部69に入力される。表示部69は、電池パック17の電圧、電動モータ14の制御状態、ハウジング11内の温度などを表示可能である。
【0046】
次に、打込機10の使用例を、
図7のフローチャートを参照して説明する。ステップS10で電動モータ14が停止していると、打撃部12は待機位置で停止している。打撃部12の待機位置は、中心線B1方向における位置を意味する。ここでは、打撃部12の待機位置が、プランジャ24がプランジャバンパ30から離間している位置である例を説明する。回転規制機構52は、第1ギヤ45が逆回転することを阻止し、打撃部12が待機位置で停止している。
【0047】
コントローラ16は、ステップS11でプッシュレバースイッチ65がオンされたか否かを判断する。コントローラ16はステップS11でNoと判断すると、ステップS10に戻る。コントローラ16はステップS11でYesと判断すると、ステップS12において、トリガスイッチ62がオンしているか否かを判断する。
【0048】
コントローラ16はステップS12でNoと判断すると、ステップS11に戻る。コントローラ16はステップS12でYesと判断すると、ステップS13において、インバータ回路56を制御して、電池パック17から電動モータ14に電流を供給させる。電動モータ14の回転力は、減速機42を介して第1ギヤ45に伝達される。
【0049】
第1ギヤ45の回転力は、第2ギヤ46を経由して第3ギヤ47に伝達される。カムローラ49,50の少なくとも一方がプランジャアーム27に係合すると、打撃部12は、スプリング28の付勢力に抗して上昇する。また、カムローラ51がウェイトアーム70に係合すると、ウェイト18は下降する。
【0050】
コントローラ16は位置検出センサ63の信号を処理し、コントローラ16は、ステップS14において、打撃部12が上死点に到達したか否かを判断する。打撃部12が中心線B1方向でウェイトバンパ29に最も近づいた位置が、打撃部12の上死点である。
【0051】
コントローラ16は、ステップS14でNoと判断すると、ステップS14の判断を繰り返す。コントローラ16がステップS14でYesと判断した後、カムローラ49,50が共にプランジャアーム27から解放され、打撃部12は、スプリング28の付勢力で下降する。また、カムローラ71がウェイトアーム70から解放され、ウェイト18は、スプリング28の付勢力で上昇する。
【0052】
打撃部12が下降すると、ドライバブレード25は、射出路に位置する止具54を打撃する。止具54は相手材W1に打ち込まれる。ドライバブレード25が止具54を打撃した後、プランジャ24がプランジャバンパ30に衝突する。プランジャ24がプランジャバンパ30に衝突した位置が、打撃部12の下死点である。
【0053】
また、ウェイト18はウェイトバンパ29に衝突する。このように、打撃部12が第1方向に作動して止具54を打撃する際、ウェイト18は第1方向とは逆の第2方向に作動する。このため、打撃部12が止具54を打撃する際の反動を低減可能である。
【0054】
打撃部12が下死点に到達した後、カムローラ49,50の少なくとも一方がプランジャアーム27に係合すると、打撃部12は下死点から上死点に向けて作動する。また、カムローラ51がウェイトアーム70に係合すると、ウェイト18は上死点から下死点に向けて作動する。
【0055】
コントローラ16は、位相検出センサ64の信号を処理しており、コントローラ16は、ステップS15において、中心線B1方向で打撃部12を停止させるべき位置、つまり待機位置を算出する。コントローラ16は、ステップS16において、打撃部12が待機位置に到達したか否かを判断する。コントローラ16は、ステップS16でNoと判断すると、ステップS16の判断を繰り返す。
【0056】
コントローラ16は、ステップS16でYesと判断すると、ステップS17で電動モータ14に対する電流の供給を停止させ、
図7の制御を終了する。電動モータ14が停止すると、ウェイト18も停止する。
【0057】
図3に示すように、打込機10のサイズは、高さH1が約250mmであり、横幅L2が約270mmである。高さH1は、中心線B1方向において、プッシュレバー53の先端と、本体19の上端との間の最大長さである。横幅L2は、軸線B2方向において、本体19の端部と、容器82の底面との間の最大長さである。
【0058】
打込機10は、重心G1を有する。重心G1は、打撃部12、電動モータ14、電池パック17、減速機42、マガジン13、スプリング28、動力伝達部15を支持した状態におけるハウジング11の重心G1である。
図1のように、中心線B1及び軸線B2を含む打込機10の正面視で、重心G1は、中心線B1方向で、ハンドル20とモータケース21との間の空間に位置する。重心G1は、軸線B2方向で横幅L2の略1/2の位置に配置されている。つまり、重心G1は、横幅L2の略中央に位置する。
【0059】
打込機10の重心G2が横幅L2の概ね中心に位置するため、作業者がハンドル20を手で握った場合に、横幅L2方向のバランスが良く、かつ、作業者が打込機10を持ち運び易い。また、作業者が止具54を打ち込む相手材W1の位置を正確に狙うことができる。更に、止具54を相手材W1に打込んだ場合に、本体19の反動で重心G1の周りで生じる回転力、つまりモーメントを抑制できる。したがって、作業者の手にかかる負担を低減できる。
【0060】
本実施形態の打込機10は、電池パック17が36Vであるため、電動モータ14を高出力で駆動可能である。このため、打撃部12が作動する際の応答性を向上できる。具体的には、打撃部12が待機位置から上昇を開始した時点から、打撃部12が上死点に到達するまで要する時間を低減可能である。したがって、作業者が止具54を相手材W1に打ち込む作業性が向上する。また、電動モータ14に供給する電流値の増加を抑制でき、電動モータ14の大型化を抑制できる。また、電動モータ14及びインバータ回路56の温度上昇を抑制できる。
【0061】
(制御例1)
図8は、コントローラ16が、
図7のステップS13からステップS17の間に行う制御のうち、電動モータ14に供給する電流値の制御を示す。目標電流値A1は、最大電流値の一例である60A未満である。最大電流値は、電動モータ14に供給することの可能な電流値であり、例えば、インバータ回路56の電界効果トランジスタ60の耐久性等の条件により決定される。本実施形態において、目標電流値A1は一定であり、一例として40Aに設定可能である。デューティ比は、所定期間内に電界効果トランジスタ60をオンする割合である。
【0062】
コントローラ16は、時刻T1において、電動モータ14に対する電流の供給を開始している。このため、打撃部12は待機位置から上昇する。コントローラ16は、時刻T7において、電動モータ14に対する電流の供給を停止している。これは、打撃部12が下死点から上昇して待機位置に到達し、かつ、打撃部12が停止したことを意味する。
【0063】
時刻T1から時刻T4の間における電動モータ14の負荷は、時刻T4を超えた時点以降における電動モータ14の負荷よりも高い。また、電動モータ14の負荷は、時刻T4以前よりも時刻T4以降の方が低い。なお、一例として、打撃部12は時刻T5で上死点に到達し、打撃部12は時刻T6で下死点に到達する。
【0064】
コントローラ16は、時刻T1から時刻T4の間、電界効果トランジスタ60をオン及びオフさせることにより、実際の電流値A2を目標電流値A1に近づけるフィードバック制御を行っている。コントローラ16は、一例として、実際の電流値A2が目標電流値A1よりも低い場合に電界効果トランジスタ60をオンし、実際の電流値A2が目標電流値A1よりも高い場合に電界効果トランジスタ60をオフする制御、つまり、バング-バング制御を行うことが可能である。バング-バング制御は、ヒステリシス制御とも呼ばれる。
【0065】
コントローラ16が、時刻T1から時刻T4の間にデューティ比を100%未満で制御することにより、実際の電流値A2が目標電流値A1付近を行き来している。実際の電流値A2は、時刻T1から時刻T2の間が第1変化率で上昇し、時刻T2から時刻T3の間が第2変化率で低下し、時刻T3から時刻T4の間が第3変化率で上昇している。第1変化率、第2変化率及び第3変化率は、互いに異なる。
【0066】
コントローラ16は、時刻T4から時刻T7までの間、デューティ比を100%に保持している。時刻T4以降は、電動モータ14の負荷が低いため、実際の電流値A2は目標電流値A1未満になっている。また、実際の電流値A2は、時刻T4を以降に低下している。これは、電動モータ14が、回転数が上昇することに伴い、実際の電流値A2が低下するという特性を有するからである。
【0067】
本実施形態の打込機10は、目標電流値A1を最大電流値未満で一定の40Aに設定している。そして、コントローラ16は、時刻T1から時刻T4の間において、実際の電流値A2を目標電流値A1に近づけるように、デューティ比を制御している。本実施形態の打込機10では、短期間に電流値を目標電流値A1に上げる制御をしている。つまり、従来行われていた、いわゆる“ソフトスタート”法と呼ばれる、徐々に電流値を上げていく制御を行わない。これは、電池パック17の出力電圧を36Vにして、電源に余裕ができたためである。
【0068】
したがって、打撃部12の応答性を向上できることに加え、各種の条件に関わり無く、実際の電流値A2を最大電流値未満に抑制でき、かつ、電動モータ14に供給する電流値を、なるべく高く制御可能である。各種の条件の一例は、電動モータ14の部品、減速機42の部品、動力伝達部15の部品などの個体差、電池パック17の出力性能、電池セル32の種類、打込機10の使用環境の温度などである。
【0069】
なお、電池パック17の電池性能に応じて、
図8に示す時刻T1から時刻T4までの経過時間が変化する。電池パック17の電池性能が高いほど、
図8に示す時刻T1から時刻T4までの経過時間が長くなる。
【0070】
コントローラ16は、実際の電流値A2が目標電流値A1となるように制御を行うにあたり、バング-バング制御に代えて、PID(Proportional Integral Differential)制御を行ってもよい。
【0071】
さらに、目標電流値A1と実際の電流値A2とデューティ比との関係を実験によって予め求め、かつ、実験結果に関するデータをコントローラ16に記憶しておくことも可能である。このようにすると、コントローラ16は、実際の電流値A2が目標電流値A1に近似するようにデューティ比を制御することも可能である。
【0072】
(制御例2)
コントローラ16が、目標電流値A1を制御する例を説明する。コントローラ16は、
図9(A)のように、温度または打撃部12の応答時間に応じて、目標電流値A1を変更可能である。コントローラ16は、ステップS20において、打撃部12の応答時間が所定時間以下であるか否かを判断する。打撃部12の応答時間は、打撃部12が待機位置から上昇を開始した時点から、打撃部12が上死点に到達するまでの時間である。所定時間は、例えば90ms、つまり、0.09秒である。
【0073】
コントローラ16は、ステップS20でYesと判断すると、ステップS21において、電動モータ14またはインバータ回路56の少なくとも一方の温度が、所定値以下、例えば50度以下であるか否かを判断する。コントローラ16はステップS21でYesと判断すると、ステップS22で目標電流値A1を現在の値から減少、一例として1A減少させ、
図9(A)の制御を終了する。コントローラ16はステップS21でNoと判断すると、ステップS23で目標電流値A1を上限に設定し、
図9(A)の制御を終了する。目標電流値A1の上限は、例えば50Aである。
【0074】
コントローラ16は、ステップS20でNoと判断すると、ステップS24で目標電流値A1が上限未満であるか否かを判断する。コントローラ16は、ステップS24でYesと判断するとステップS23に進む。コントローラ16は、ステップS24でNoと判断すると、ステップS25で目標電流値A1を現在の値から増加、一例として1A増加させ、
図9(A)の制御を終了する。
【0075】
コントローラ16が
図9(A)の制御を行うと、打撃部12の応答性の低下を抑制でき、かつ、電動モータ14またはインバータ回路56の温度が上昇することを抑制可能である。
【0076】
なお、
図9(A)のステップS21,S22,S23の処理は、ハウジング11内の温度が、所定値、例えば、50度を超える場合の目標電流値A1を、ハウジング11内の温度が所定値以下である場合の目標電流値A1よりも高く設定する制御の一例である。
【0077】
(制御例3)
コントローラ16は、
図9(B)に示す電動モータ14の回転数に基づいて、電動モータ14を停止させることが可能である。コントローラ16が、
図7のステップS13で電動モータ14に電流の供給を開始すると、電動モータ14の回転数は、実線R1のように上昇する。実線R1は、止具54が射出路で詰まっていない場合の回転数である。
【0078】
これに対して、止具54が射出路で詰まっていると、電動モータ14の回転数は、例えば、破線R2のように上昇し、電動モータ14の回転数は時刻T11から下降し、かつ、電動モータ14の回転数は時刻T12から上昇する、という変化になる。電動モータ14の回転数が時刻T11から下降する理由は、ドライバブレード25の作動抵抗が増加したからである。
【0079】
コントローラ16は、電動モータ14を回転させた後、打撃部12が待機位置に到達する前に、電動モータ14の回転数が時刻T11以降のように低下した時点で、電動モータ14にブレーキ力を付加し、かつ、電流の供給を停止する制御を行うことが可能である。電動モータ14にブレーキ力を付加する制御は、電動モータ14を発電機として機能させることである。
【0080】
コントローラ16が、電動モータ14を停止させることにより、電動モータ14から打撃部12に至る動力伝達経路の負荷、例えば、減速機42を構成するギヤ同士の噛み合い箇所の負荷が増加することを抑制可能である。なお、
図8に示す実際の電流値A2が、急激に上昇した場合に、電動モータ14を停止させることも可能である。なお、コントローラ16は、電動モータ14を停止させる制御を行ったことを、表示部69で表示する。
【0081】
(電池パックの電圧例)
電池パック17の電圧の例が、
図10(A)に示されている。電池パック17の電圧V1は実線で示されている。電池パック17の電圧V1は、36Vから時間の経過に伴い低下する。電池パック17の放電終止電圧V3は、ゲート60Aに入力される信号の電圧V4よりも高い。ゲート60Aに入力される信号の電圧は、例えば15Vである。なお、放電終止電圧V3は、安全に放電を行える放電電圧の最低値である。このように、電池パック17の電圧V1は、時間の経過に関わり無く電圧V4よりも高い。したがって、電界効果トランジスタ60の機能が低下すること、つまり、インバータ回路56の機能が低下することを抑制可能である。
【0082】
また、停止している電動モータ14を回転させる場合、電池パック17の電圧V1は、破線で示すように急激に降下及び上昇する。しかし、電池パック17の電圧V1は、電圧V4を超えている。つまり、電池パック17の電圧V1が破線のように降下しても、降下した電圧V1の最低値は電圧V4より高い。
【0083】
比較例における電池パックの電圧V2は、電圧V1未満、一例として18Vである。また、比較例の放電終止電圧V5は、電圧V4未満である。このため、比較例の電圧V2が時間の経過に伴い低下すると、電圧V2は、時刻T13以降で電圧V4以下になる。
【0084】
(制御例4)
コントローラ16が行うことの可能な制御例を、
図10(B)を参照して説明する。コントローラ16は、ステップS30において電池パック17の電圧が、所定電圧以下であるか否かを判断する。所定電圧は、放電終止電圧と、所定のマージンとの合計である。所定のマージンは、例えば、停止している電動モータ14を回転させた場合に生じる電圧の変化量から求めた値である。
【0085】
コントローラ16は、ステップS30でNoと判断すると、ステップS31において一定電流制御を行い、
図10(B)の制御を終了する。一定電流制御は、
図8に示すように、実際の電流値A2を、目標電流値A1に基づいて制御することである。コントローラ16は、ステップS30でYesと判断すると、ステップS32において一定電圧制御を行い、
図10(B)の制御を終了する。一定電圧制御は、電池パック17の実際の電圧が所定電圧未満にならないように、デューティ比を制御することである。
【0086】
コントローラ16が、
図10(B)の制御を行うと、電池パック17に対して行う1回の充電で、打込機10を使用可能な時間が減少すること、または、打撃可能な止具54の数が減少すること、を抑制できる。
【0087】
(電池パックの電圧例)
電池パック17の電圧の例が、
図11に示されている。電池パック17の電圧V6は、36Vから経過時間に伴い低下する。電圧V6は時間の経過に関わり無く、発光ダイオードランプ55を点灯させるために必要な駆動電圧V7を超える値で推移する。例えば、停止している電動モータ14を回転させる場合に、電圧V6が低下しても、電圧V6は駆動電圧V7を超える。したがって、発光ダイオードランプ55の照度不足を抑制できる。
【0088】
比較例の電池パックの電圧V8は、一例として18Vから時間の経過に伴い低下する。このため、電圧V8は、時刻T14以降で駆動電圧V7以下になり、発光ダイオードランプの照度不足が起きる可能性がある。
【0089】
(電動モータの設計例)
ステータコア35の軸線B2方向における厚さL1は、一例として20mm以下、具体的には11mmに設定されている。比較例のコアの厚さは22mmである。実施形態の打込機10は、軸線B2方向において大型化を抑制できる。
【0090】
(冷却構造)
モータケース21内の空気の温度が上昇することを抑制をする機構、つまり、冷却機構の一例を、
図2、
図5(A)、
図5(B)を参照して説明する。冷却ファン73がモータケース21内に設けられ、冷却ファン73は、モータ軸38に取り付けられている。冷却ファン73は、軸線B2方向で電動モータ14と軸受39との間に配置されている。
【0091】
モータケース21内に仕切り板77が設けられている。仕切り板77は、軸線B2方向で電動モータ14と減速機42との間に配置されている。モータケース21は隔壁79を有し、仕切り板77は、隔壁79によって支持されている。軸受40は、隔壁79を介してモータケース21により支持されている。仕切り板77はギヤケース41の開口部78を覆っている。仕切り板77は軸孔80を有し、軸受40及びモータ軸38は軸孔80に配置されている。
【0092】
モータケース21は、第1吸気孔74、第2吸気孔75及び排気孔76を有する。第1吸気孔74、第2吸気孔75及び排気孔76は、モータケース21を内外方向に貫通している。軸線B2方向で、第2吸気孔75は、第1吸気孔74と排気孔76との間に配置されている。第1吸気孔74、第2吸気孔75及び排気孔76は、モータ軸38を取り囲むように、軸線B2に対して垂直な平面内で、それぞれ複数、かつ、間隔をおいて配置されている。第2吸気孔75の少なくとも1つは、モータケース21のうち、マガジン13に最も近い箇所を貫通している。第2吸気孔75の少なくとも1つは、モータケース21のうちハンドル20に最も近い箇所を貫通している。
【0093】
軸線B2に対して平行な平面内で、第1吸気孔74の配置領域は、ギヤケース41の配置領域と重なっている。軸線B2に対して平行な平面内で、第2吸気孔75の配置領域の一部は、仕切り板77の配置領域の一部と重なっている。軸線B2に対して平行な平面内で、排気孔76の配置領域の一部は、冷却ファン73の配置領域の一部と重なっている。隔壁79と仕切り板77の外面との間に、通気路81が設けられている。通気路81は、軸孔80の円周方向に間隔をおいて複数設けられている。
【0094】
電動モータ14に電流が供給されてモータ軸38が回転すると、モータケース21の外部E1の空気は、第1吸気孔74及び第2吸気孔75を通りモータケース21の内部E2に吸い込まれる。減速機42の熱は、ギヤケース41を介して空気に伝達されて、ギヤケース41内の温度上昇を抑制できる。例えば、減速機42の温度上昇を抑制できる。また、潤滑材、例えばグリースが、ギヤケース41内に入れられている。グリースは、減速機42を構成する要素を潤滑する。ギヤケース41内の温度上昇を抑制できるため、グリースの粘度が低下することを抑制できる。したがって、グリースがギヤケース41の外に漏れることを抑制できる。
【0095】
モータケース21の内部E2に吸い込まれた空気は通気路81を通る。インバータ回路56の熱は、モータケース21内を流れる空気に伝達される。したがって、インバータ回路56、具体的には電界効果トランジスタ60の温度上昇を抑制できる。モータケース21内を流れる空気は、さらに、電動モータ14の熱を奪った後、排気孔76を介してモータケース21の外部E1に排出される。
【0096】
排気孔76の少なくとも1つは、モータケース21のうちハンドル20に最も近い箇所を貫通している。このため、モータケース21の内部E2から外部E1へ排出される空気の一部は、ハンドル20を握っている作業者の手に向けて流れる。したがって、止具54を相手材W1に打ち込む際に生じる異物、例えば、木片が、作業者の手に付着することを抑制できる。
【0097】
さらに、第2吸気孔75のうちの少なくとも1つは、モータケース21のうちマガジン13に最も近い箇所を貫通して設けられている。止具54を相手材W1に打ち込む際に生じる異物、例えば、木片が、第2吸気孔75を介してモータケース21の内部E2に吸い込まれることを抑制できる。
【0098】
打込機の実施形態で説明した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。打込機10は、打込機の一例である。ハウジング11は、ハウジングの一例である。本体19は、本体の一例である。第1方向D1は、第1方向の一例であり、第2方向D2は、第2方向の一例である。中心線B1方向は、打撃部の作動方向の一例である。打撃部12は、打撃部の一例である。スプリング28は、付勢機構の一例である。電動モータ14は、電動モータの一例である。ステータ34は、ステータの一例である。ロータ33は、ロータの一例である。コイル36は、コイルの一例である。ステータコア35は、ステータコアの一例である。インバータ回路56は、電気回路の一例である。モータ軸38は、回転軸の一例である。
【0099】
電池パック17は、電源の一例である。容器82及びカバー83は、収容ケースの一例である。電界効果トランジスタ60は、スイッチング素子の一例である。ゲート60Aは、信号入力部の一例である。容器82及びカバー83は、収容ケースの一例である。電池セル32は、電池セルの一例である。コントローラ16は、コントローラの一例である。温度検出センサ72は、温度検出部の一例である。射出部23は、射出部の一例である。プッシュレバー53は、接触部材の一例である。マガジン13は、マガジンの一例である。発光ダイオードランプ55は、照明部の一例である。
【0100】
モータケース21は、モータケースの一例である。基板59は基板の一例である。ギヤケース41は、ギヤケースの一例である。減速機42は、減速機の一例である。冷却ファン73は、ファンの一例である。第1吸気孔74は、第1吸気孔の一例である。第2吸気孔75は、第2吸気孔の一例である。排気孔76は、排気孔の一例である。横幅L2は、ハウジング及び電源の全長の一例である。軸線B2方向は、ハンドルが本体に対して突出した所定方向の一例である。
図10(B)で破線のように降下する電圧V1の最低値が、電源の降下電圧の一例である。重心G1は、重心の一例である。
【0101】
本実施形態で開示した打込機10は、次の第1の構成及び第2の構成を有する。これに対して、第1の構成または第2の構成の何れか一方を有する打込機であってもよい。
【0102】
第1の構成は、第1方向及び前記第1方向とは逆の第2方向に作動可能な打撃部と、前記打撃部を前記第1方向に付勢する付勢機構と、電圧が印加されて軸線を中心として回転し、かつ、前記打撃部を前記付勢機構の力に抗して前記第2方向に作動させる電動モータと、前記電動モータに電圧を印加する電源と、を有する打込機であって、前記電源の定格電圧は、36Vである打込機。
【0103】
第2の構成は、第1方向及び前記第1方向とは逆の第2方向に作動可能な打撃部と、前記打撃部を前記第1方向に付勢する付勢機構と、電圧が印加されて軸線を中心として回転し、かつ、前記打撃部を前記付勢機構の力に抗して前記第2方向に作動させる電動モータと、前記電動モータに電圧を印加する電源と、前記打撃部、前記付勢機構、前記電動モータ、前記電源を支持するハウジングと、を有する打込機であって、前記ハウジングは、作業者が手で握るハンドルと、前記電動モータを収容するモータケースと、を有し、前記ハンドルと前記モータケースとが、前記打撃部の作動方向に間隔をおいて配置され、前記打撃部、前記付勢機構、前記電動モータ、前記電源を支持している前記ハウジングの重心を備え、前記ハウジングの重心は、前記打撃部の作動方向で前記ハンドルと前記モータケースとの間であり、かつ、前記軸線方向で前記ハウジング及び前記電源を含む全長の略1/2の位置に配置されている。第2の構成における電源の電圧は、36Vとは異なっていてもよい。一例として電源の電圧は18Vでもよい。
【0104】
打込機は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、電池セルの数は、10個未満、10個を超える数でもよい。さらに、電池セルは、1次電池でもよい。スイッチング素子として、ユニジャンクショントランジスタまたはサイリスタを用いることも可能である。
【0105】
電源は、直流電源である。電源は、収容ケースをハウジングに対して取り付け及び取り外しが可能であるものの他、収容ケースがハウジングに固定、または、一体化されており、電池セルのみを交換可能なものでもよい。さらに、ハウジングとアダプタとを電力ケーブルで接続し、電源は、アダプタに対して着脱可能であってもよい。
【0106】
打撃部を第1方向に付勢する付勢機構は、固体スプリングの他、ガススプリング、合成ゴム、磁気スプリングを含む。固体スプリングは、金属製のスプリング、または非鉄金属製のスプリングは、圧縮スプリング、引っ張りスプリングの何れでもよい。さらに、打込機は、ウェイトを備えていなくてもよい。この場合、打撃部を付勢するスプリングの端部は、ハウジングにより直接支持されるか、または、スペーサを介してハウジングにより間接的に支持される。打撃部の待機位置は下死点でもよい。
【0107】
さらに、電動モータの回転力を打撃部に伝達する動力伝達部は、ラック・アンド・ピニオン機構、ワイヤー機構、ソレノイド機構でもよい。ラック・アンド・ピニオン機構は、ピニオンとラックとが係合していると、打撃部が第2方向に作動する。ラック・アンド・ピニオン機構は、ピニオンとラックとが解放されると、打撃部は付勢機構の力で第1方向に作動する。
【0108】
ワイヤー機構は、電動モータの回転力でワイヤーを牽引し、ワイヤーの牽引力で打撃部を第2方向に作動させるものである。ワイヤーの牽引力が打撃部に伝達されないと、打撃部は付勢機構の力で第1方向に作動する。ソレノイド機構は、ソレノイドに電力を供給すると、吸引力で打撃部を第2方向に付勢させる。ソレノイドに対する電力の供給を停止すると、吸引力が解除され、打撃部は付勢機構の力で第1方向に作動する。
【0109】
コントローラは、電気部品または電子部品の単体でもよいし、複数の電気部品または複数の電子部品を有するユニットでもよい。電気部品または電子部品は、プロセッサ、制御回路及びモジュールを含む。
【0110】
ハンドルが本体に対して突出する所定方向は、中心線に対して90度とは異なる方向でもよい。つまり、ハンドルの突出方向は、軸線方向と平行でなくともよい。電源が装着部に対してスライドする方向は、中心線と平行な方向、中心線に対して交差する方向の何れでもよい。
【符号の説明】
【0111】
10…打込機、11…ハウジング、12…打撃部、13…マガジン、14…電動モータ、16…コントローラ、17…電池パック、19…本体、20…ハンドル、21…モータケース、21A…窪み部、23…射出部、28…スプリング、32…電池セル、33…ロータ、34…ステータ、35…ステータコア、36…コイル、41…ギヤケース、42…減速機、53…プッシュレバー、55…発光ダイオードランプ、56…インバータ回路、59…基板、60…電界効果トランジスタ、60A…ゲート、72…温度検出センサ、73…冷却ファン、74…第1吸気孔、75…第2吸気孔、76…排気孔、82…容器、83…カバー、D1…第1方向、D2…第2方向、G1…重心