(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物、液状コーヒーホワイトナー
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20230110BHJP
A23C 11/02 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
A23D7/00 508
A23C11/02
(21)【出願番号】P 2018183276
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 洋祐
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-153454(JP,A)
【文献】特開2016-054675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23C
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料油脂100質量部に対して、レシチンを0.
1~0.
3質量部を含有する液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物であって、
前記原料油脂は、構成脂肪酸としてオレイン酸が75~90質量%、α-リノレン酸が1質量%以下である植物油脂93~97質量%、及び、ラウリン系油脂3~7質量%からなり、
前記油脂組成物の構成脂肪酸は、オレイン酸が70~83質量%、リノール酸が14質量%以下、α-リノレン酸が0.8質量%以下、トランス脂肪酸が1質量%以下
であり、
飽和脂肪酸の含有量は、8~18質量%であることを特徴とする、液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物。
【請求項2】
請求項
1に記載の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を含むことを特徴とする、液状コーヒーホワイトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物及びそれを用いた液状コーヒーホワイトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
液状コーヒーホワイトナーは水中油型乳化液であり、ポーションパックに充填されているポーションクリームと、瓶に充填されているボトルクリームに大別される。コーヒーホワイトナーは、コーヒーに添加した際にコーヒー本来の風味を生かしながらコク味、ボリューム感などを与えコーヒーの風味を高めるために使用される。また、実際の使用にあたっては、沸点に近い高温のコーヒー(ホットコーヒー)から氷温に近い低温のコーヒー抽出液(アイスコーヒー)など、種々の温度の飲料に添加されるため、乳液の凝集やオイルオフを起こさず、良好なコーヒーホワイトナー効果が得られることが必要である。(非特許文献1)
さらにポーションタイプの液状コーヒーホワイトナーでは、製品としての流通を考えた場合、常温管理され、場合によっては高温の場所に長時間保管されるおそれもあるため、その保管時に風味が劣化しにくい性能、すなわち保管温度によらない風味安定性が求められる。また、流通時にはメーカーからの輸送温度、小売店頭での保管温度、家庭での保管温度など、消費者が口にするまでの流通段階において様々な温度(1℃~40℃)に置かれるため、低温から高温に対しての乳化安定性が必要である。
【0003】
液状コーヒーホワイトナーは、油相部と水相部からなる水中油型乳化液であり、油相部としては植物油脂の部分硬化油が広く使用されてきた。部分硬化油にはトランス脂肪酸が多く含まれるが、食品中のトランス脂肪酸について世界各国で法規制化や表示義務化なされてきており、このような世界情勢を背景にトランス脂肪酸を低減する、すなわち部分硬化油を用いない液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物が求められるようになった。
【0004】
例えば、油脂組成物の構成脂肪酸を細かく規定し、且つSFCを一定の範囲に設定することで、コーヒーへの良好な分散性や低温保存時の乳化安定性に優れるトランス酸を低減した液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を得る方法が開示されている(特許文献1)。
【0005】
さらに近年では、健康志向の高まりとともにトランス脂肪酸だけでなく飽和脂肪酸も低減した液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物が求められるようになってきた。液状コーヒーホワイトナーの油相部として飽和脂肪酸が少ない油脂組成物を用いた技術として、植物液状油を用いたもの(特許文献2、特許文献3)が開示されている。しかし、これらの液状植物油を用いた液状コーヒーホワイトナーは、油脂組成物の酸化安定性が悪いため液状コーヒーホワイトナーが風味劣化し易い。さらに乳化安定性も悪く、コーヒーに添加した際、油分が分離するオイルオフや乳蛋白の凝集物が浮遊するフェザリングが発生し、コーヒーホワイトナーとしての品質が劣るものであった。
液状コーヒーホワイトナーの酸化安定性の低下に対しては、オレイン酸を中心とした油脂中に酸化防止剤として水溶性茶ポリフェノールを水溶液にて分散した状態で用いることで解決を図る技術が開示されている(特許文献4)が、液状コーヒーホワイトナーの乳化安定性は依然として不充分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-153491号公報
【文献】特表2014-510541号公報
【文献】特開2018-33367号公報
【文献】国際公開第2017/065284号
【非特許文献】
【0007】
【文献】後藤洋一,「コーヒーホワイトナー」,日本食品工業学会誌,第32巻,第7号,第545頁,1985年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、トランス脂肪酸と飽和脂肪酸を同時に低減し、さらに酸化安定性と乳化安定性に優れた液状コーヒーホワイトナーを製造することができる液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、特定の構成脂肪酸を所定の範囲内に調製した原料油脂に、レシチンを所定量含有することにより、上記課題を解決することができるとの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の〔1〕~〔3〕である。
【0010】
〔1〕原料油脂100質量部に対して、レシチンを0.05~0.5質量部を含有する液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物であって、
前記油脂組成物の構成脂肪酸は、オレイン酸が70~83質量%、リノール酸が14質量%以下、α-リノレン酸が0.8質量%以下、トランス脂肪酸が1質量%以下であることを特徴とする、液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物。
〔2〕前記原料油脂は、構成脂肪酸としてオレイン酸が75~90質量%、α-リノレン酸が1質量%以下である植物油脂、及び、ラウリン系油脂からなることを特徴とする、前記〔1〕の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物。
〔3〕前記〔1〕又は〔2〕記載の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を含むことを特徴とする、液状コーヒーホワイトナー。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トランス脂肪酸と飽和脂肪酸を同時に低減し、さらに酸化安定性と乳化安定性に優れた液状コーヒーホワイトナーを製造することができる液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施するための形態を説明する。
[液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物]
本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物は、原料油脂100質量部に対して、レシチンを0.05~0.5質量部を含有する液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物であって、前記油脂組成物の構成脂肪酸は、オレイン酸が70~83質量%、リノール酸が14質量%以下、α-リノレン酸が0.8質量%以下、トランス脂肪酸が1質量%以下であることを特徴とする。
なお、本発明における「液状」とは、常温(20℃)において液体の状態であることを意味する。
【0013】
本発明における液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物は、原料油脂に加えて、レシチンを含有することを特徴とする。レシチンは水中油型乳化液を製造する際に、油相部の油滴を水相部中に安定して分散するための乳化剤としての機能を有する。一般的に乳化剤としてのレシチンの使用量は、油脂100質量部に対して0.03質量部程度である。しかしレシチンをより多く配合することにより、液状コーヒーホワイトナーの乳化安定性のみならず、風味安定性をも向上することを本発明者は見出した。本発明におけるレシチンの含有量は、原料油脂100質量部に対し0.05~0.5質量部であることを特徴とする。下限値としては、好ましくは0.1質量部以上であり、上限値としては、好ましくは0.3質量部以下である。原料油脂に対するレシチンの含有量が0.05質量部未満であると、液状コーヒーホワイトナーの乳化安定性、風味安定性を良好にすることができず、0.5質量部を超えると乳化安定性は良好とすることができるが、レシチン自体の風味が際立ってしまい、液状コーヒーホワイトナーの風味が悪くなる。よって、レシチンの含有量を上記範囲とすることで、液状コーヒーホワイトナーの乳化安定性及び風味安定性を向上することができる。
【0014】
本発明におけるレシチンは、植物原料または動物原料から得られたものであり、その主成分は、ホスファチジルコリンやホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール等を含むリン脂質である。植物原料由来のレシチンは油糧種子等植物原料の油脂より分離して得られたもので、例えば、大豆やナタネ、コーン等から得られたレシチンが挙げられる。動物原料由来のレシチンは、例えば、卵黄より得られた卵黄油より分離して得られたものが挙げられる。
本発明におけるレシチンは、上記に挙げたレシチンについてそれらを1種または2種以上選択することができる。
【0015】
さらに、本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物は、構成脂肪酸としてオレイン酸が70~83質量%、リノール酸が14質量%以下、α-リノレン酸が0.8質量%以下であることを特徴とする。オレイン酸が70~83質量%、リノール酸が14質量%以下、α-リノレン酸が0.8質量%以下であると、液状コーヒーホワイトナーの風味安定性と乳化安定性が良好となる。
【0016】
本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物において、オレイン酸の含有量は、70~83質量%とすることを特徴とする。下限値としては、好ましくは72質量%以上である。上限値としては、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは77質量%以下である。オレイン酸の含有量を70~83質量%とすることで、コーヒーホワイトナーの経時変化による安定性の悪化を抑制でき、コーヒーホワイトナーに良好な風味を与えることができる。
【0017】
本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物において、リノール酸の含有量は、14質量%以下とすることを特徴とする。上限値としては、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下である。リノール酸の含有量を14質量%以下とすることで、液状コーヒーホワイトナーの風味安定性を良好にすることができる。
【0018】
本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物において、α-リノレン酸の含有量は、0.8質量%以下とすることを特徴とする。上限値としては、好ましくは0.7質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。α-リノレン酸の含有量の含有量を0.8質量%以下とすることで、液状コーヒーホワイトナーの風味安定性を良好にすることができる。
【0019】
本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物において、トランス脂肪酸の含有量は、1質量%以下とすることを特徴とする。トランス脂肪酸の含有量としては、より好ましくは0.9質量%以下であり、更に好ましくは0.7質量%以下である。健康志向の高まりにより、市場においてはトランス脂肪酸の少ないものが求められる傾向にあり、液状コーヒーホワイトナーにおいても、原料油脂中のトランス脂肪酸を1質量%以下に抑えることが好ましい。
【0020】
更に、本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物において、飽和脂肪酸の含有量としては8~18質量%が好ましい。より好ましくは10~15質量%以下である。健康志向の高まりにより、市場においては飽和脂肪酸の少ないものが求められる傾向にあり、液状コーヒーホワイトナーにおいても、原料油脂中の飽和脂肪酸を18質量%以下に抑えることが好ましい。また、飽和脂肪酸が8質量%以上であると、相対的に油脂組成物中の不飽和脂肪酸を減らすことができ、風味安定性を向上できるため好ましい。
【0021】
また、飽和脂肪酸として、ラウリン酸を含有することが好ましい。本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物の構成脂肪酸中におけるラウリン酸の含有量としては、好ましくは1.0~3.5質量%である。下限値として、より好ましくは1.3質量%以上であり、上限値として、より好ましくは3.0質量%以下であり、更に好ましくは2.5質量%以下である。ラウリン酸の含有量を上記範囲とすることにより、低温時の飽和脂肪酸の結晶化に由来する乳化破壊が生じにくいという効果を奏する。
【0022】
本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物は、植物油脂93~97質量%、好ましくは95~96質量%、及び、ラウリン系油脂3~7質量%、好ましくは4~5質量%からなる原料油脂を用いることが好ましい。
植物油脂の含有量を93質量%以上、ラウリン系油脂を7質量%以下とすることにより、油脂組成物中の飽和脂肪酸含量の増加を抑制し、低温時の飽和脂肪酸の結晶化に由来する乳化破壊が生じにくいという効果を奏する。よって、液状コーヒーホワイトナーの乳化安定性を向上することができる。
一方、植物油脂の含有量を97質量%以下、ラウリン系油脂を3質量%以上とすることにより、油脂組成物中の不飽和脂肪酸の増加を抑制し、液状コーヒーホワイトナーの酸化安定性を高めることができる。
【0023】
本発明において、植物油脂とラウリン系油脂からなる原料油脂は、脂肪酸の組成が変わらない限り混合後にエステル交換を行なっても構わない。このエステル交換はランダムエステル交換、あるいは位置特異的なエステル交換のどちらでも良く、触媒としてナトリウムメチラート等のアルカリ触媒を用いる方法、あるいはリパーゼ製剤等の酵素触媒を用いる方法のどちらを用いても構わない。
【0024】
本発明の植物油脂とラウリン系油脂からなる原料油脂は、トランス脂肪酸含量が1質量%以下で、且つ飽和脂肪酸含量が8~18質量%であることが好ましい。トランス脂肪酸の含有量としては、より好ましくは0.9質量%以下であり、更に好ましくは0.7質量%以下である。飽和脂肪酸の含有量としては、より好ましくは10~15質量%である。健康志向の高まりにより、市場においてはトランス脂肪酸、飽和脂肪酸の少ないものが求められる傾向にあり、液状コーヒーホワイトナーにおいても、原料油脂中のトランス脂肪酸を1質量%以下、且つ飽和脂肪酸を8~18質量%に抑えることが好ましい。
【0025】
(植物油脂)
本発明に用いる植物油脂は、構成脂肪酸としてオレイン酸が75~90質量%であり、好ましくは75~85質量%であり、より好ましくは75~80質量%含み、且つα-リノレン酸が1質量%以下であり、好ましくは0.8質量%以下である。
植物油脂のオレイン酸が75質量%以上の場合、相対的にオレイン酸以外の脂肪酸が少なくなる。例えば、多価不飽和脂肪酸が少なくなる場合、油脂組成物の酸化安定性が向上するため、液状コーヒーホワイトナーの風味の劣化を抑制するという効果を奏する。あるいは飽和脂肪酸が少なくなる場合、低温時の飽和脂肪酸の結晶化に由来する乳化破壊が生じ難くなるため、液状コーヒーホワイトナーの乳化安定性が向上する。
また、α-リノレン酸が1質量%を超えて含まれる場合、油脂組成物の酸化安定性が悪くなり、液状コーヒーホワイトナーの風味安定性が悪くなる。
【0026】
本発明に用いる植物油脂は、例えば、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、オリーブ油、ハイオレイック大豆油、あるいはそれらの分別油、エステル交換油等が挙げられ、それらを1種または2種以上選択することができる。
【0027】
(ラウリン系油脂)
本発明に用いるラウリン系油脂は、構成脂肪酸としてラウリン酸を40~50質量%含有する油脂であり、例えば、ヤシ油、パーム核油、あるいはそれらの分別油、エステル交換油等が挙げられ、それらを1種または2種以上選択することができる。
【0028】
(その他の添加物)
本発明には、液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物の酸化防止を目的として、一般的に用いられる油脂の酸化防止剤を使用しても構わない。油脂組成物の酸化防止をすることにより、液状コーヒーホワイトナーの風味安定性をより良好とすることができる。例えば、総トコフェロール中のα-トコフェロール含量が3質量%以下のトコフェロール製剤が好ましく用いられる。トコフェロール製剤の含有量は、本発明における原料油脂100質量部に対して、例えば0.1~0.5質量部である。下限値としては、好ましくは0.2質量部以上であり、より好ましくは、0.3質量部以上である。
【0029】
本発明には、上記のトコフェロール製剤以外にも、油脂の酸化防止に通常用いられる酸化防止剤を併用することができる。例えば、各種トコトリエノール類、アスコルビン酸、そのエステル体、クエン酸、そのエステル体、ローズマリー抽出物やヤマモモ抽出物等の各種ポリフェノール類が挙げられ、これらを1種または2種以上選択することができる。酸化防止剤の含有量は、本発明の原料油脂100質量部に対して、例えば0.1~0.5質量部である。下限値としては、好ましくは0.2質量部以上であり、より好ましくは、0.3質量部以上である。
なお、油脂の酸化防止剤であるポリフェノール類の一種である茶ポリフェノールを使用した場合、製造時に液状コーヒーホワイトナーの褐変(褐色への変色)が起こったり、液状コーヒーホワイトナーの風味が不良となったりするため、色調の安定性の観点から、茶ポリフェノールは含まないことが好ましい。ここで茶ポリフェノールを含まないとは、茶ポリフェノールが本発明の原料油脂100質量部に対して0.001質量部未満であることを意味する。
【0030】
[液状コーヒーホワイトナー]
本発明の液状コーヒーホワイトナーは、本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を用いて調製する。例えば以下のように調製することができる。
水相部に水と脱脂粉乳と乳化剤、油相部に油脂組成物と乳化剤を各々配合し、プロペラ攪拌にて予備乳化を行ったのち、ホモジナイザーにて均一化して調製することができる。
【0031】
液状コーヒーホワイトナーに添加する乳化剤は、特に制限されないが、例えば、モノグリセライド、有機酸モノグリセライド、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、等が挙げられる。これらの乳化剤を用いることにより、液状コーヒーホワイトナーの乳化粒径をより微細化することができる。更には、乳化安定性にも優れ、液状コーヒーホワイトナーの乳化粒径を長期間維持することができる。
好ましくは、モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステルであり、より好ましくは、モノグリセライド及びポリグリセリン脂肪酸エステルの併用することである。ポリグリセリン脂肪酸エステルのグリセリンの重合度は、好ましくは4~10であり、より好ましくは4~6である。また、ポリグリセリンに結合する脂肪酸数は、好ましくは1~3であり、より好ましくは1~2である。モノグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステルに結合する脂肪酸の炭素数は、好ましくは8~22であり、より好ましくは14~18である。
【0032】
液状コーヒーホワイトナーにおける乳化剤の含有量は、好ましくは0.1~5質量%である。下限値としては、より好ましくは0.3質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上である。上限値としては、より好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以下である。
【0033】
液状コーヒーホワイトナーに添加するその他の材料としては、脱脂粉乳や、カゼインソーダ、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。脱脂粉乳、カゼインソーダを添加することにより、ミルクのような風味を添加することができる。脱脂粉乳の含有量は、好ましくは0.5~10質量%であり、より好ましくは1~5質量%である。カゼインソーダの含有量は、好ましくは0.5~10質量%であり、より好ましくは1~5質量%である。
【0034】
さらに、本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を用いた液状コーヒーホワイトナーは、その乳化粒径(メジアン径)を0.2~0.4μmに調整することが好ましい。液状コーヒーホワイトナーにおける乳化粒径を上記範囲とすることで、液状コーヒーホワイトナーの乳化安定性をより良好なものとし、さらに油脂のコク味を感じることができる風味良好な液状コーヒーホワイトナーにすることができる。また、レシチン特有の風味を抑制することができ、コーヒーの風味が損なわれることを防ぐことができる。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例および比較例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。
表1に実施例および比較例に使用する原料油脂の脂肪酸組成の分析例を示す。各原料油脂の脂肪酸組成は基準油脂分析試験法2.4.2.2-2013に準じて測定した。
【0036】
【0037】
〔液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物の原料油脂の製造〕
本発明では液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物に用いる原料油脂として、本発明の範囲である原料油脂P-1~P-5、および本発明の範囲外である原料油脂Q-1~Q-8を製造した。原料油脂P-5においては配合後にさらにエステル交換操作を加えランダムエステル交換油とし、Q-7においては配合後にさらには部分水素添加を行い部分硬化油とした。原料油脂の製造例については、表2に示す。
なお、トランス脂肪酸含量以外の各脂肪酸含量については、表1の脂肪酸組成と表2の油脂の含有量から計算にて求めた。トランス脂肪酸含量は、基準油脂分析試験法2.4.4.3-2013に準じて測定した。また、配合後にさらに部分水素添加を行い部分硬化油としたQ-7についても、部分水素添加後に同様に測定した。
【0038】
【0039】
〔実施例1~5〕
上記の製造例1~5の各油脂に、下記レシチン、各種酸化防止剤を配合し、実施例1~5の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を製造した。各実施例の油脂配合およびレシチンや酸化防止剤の副原料配合は表3に示した。これら油脂組成物を用いて以下に示す方法にて液状コーヒーホワイトナーを調製、評価し、結果を表3に示した。
【0040】
(レシチン)
実施例および比較例のレシチンには大豆由来のレシチン(日清オイリオ(株)製)を使用した。
【0041】
(酸化防止剤)
実施例および比較例には以下の酸化防止剤を使用した。
酸化防止剤:イーミックスD(三菱フードケミカル(株)製)75質量%、及び、EC-100V(理研ビタミン製)25質量%の混合物
茶ポリフェノール:サンフェノン90S(太陽化学(株)製)を10質量%溶解した水溶液
【0042】
(液状コーヒーホワイトナーの製造方法)
液状コーヒーホワイトナーは以下のように調製した。
上記で製造した油脂組成物300gを70℃に加熱溶解しておき、これにエマルジーMS(理研ビタミン(株)製)4gを溶解した。これに、脱脂粉乳20g、カゼインソーダ30g、SYグリスターMS5S(坂本薬品工業(株)製)5g、第2リン酸ナトリウム3gに水を加え、65℃に加熱した水相成分696gを徐々に加えてプロペラ攪拌により予備乳化を行った。これによって得られた予備乳化液を、ホモジナイザーを用いて20MPaの加圧によって均質化した。その後、加熱滅菌機によって、140℃、4秒間の直接滅菌を行った後、冷却後、24時間5℃でエージングして、液状コーヒーホワイトナーを得た。
【0043】
(液状コーヒーホワイトナーの風味評価)
製造後の液状コーヒーホワイトナーについて、以下の方法にて風味の評価を行った。
5%濃度のインスタントコーヒー(80℃)、150mLに、上記の製造方法にて得られた液状コーヒーホワイトナーを5g添加、スプーンにて攪拌後、10人のパネラーが試飲して風味評価を行った。風味評価は「油っぽさ、青臭さ、異臭」について評価し、以下の基準で採点した。
油っぽさ、青臭さ、異臭が感じられない:3点
油っぽさ、青臭さ、異臭がほとんど感じられない:2点
油っぽさ、青臭さ、異臭がやや感じられる:1点
油っぽさ、青臭さ、異臭が強く感じられる:0点
これら10人の採点結果の平均点が、2.5点以上を◎、2.5点未満から2.0点以上を○、2.0点未満から1.0点以上を△、1.0点未満を×とした。
【0044】
(液状コーヒーホワイトナーの乳化安定性の評価)
製造後の液状コーヒーホワイトナーについて、以下の方法にて乳化安定性の評価を行った。
5%濃度のインスタントコーヒー(80℃)、150mLを200mLビーカーにいれ、上記の製造方法にて得られた液状コーヒーホワイトナー1gをスポイトにてビーカーの壁面を伝わらせるように静かに添加し、静置した。そして、コーヒー内での状態、分散の状態を10人のパネラーが目視により確認し、以下の基準にて採点した。
液状コーヒーホワイトナーがコーヒー全体に分散:2点
液状コーヒーホワイトナーの分散性は悪いもののオイルオフやフェザリングは認められない:1点
液状コーヒーホワイトナーの分散性が悪くオイルオフやフェザリングが発生:0点
これら10人の採点結果の平均点が、1.5点以上を○、1.5点未満から1.0点以上を△、1.0点未満を×とした。
【0045】
(液状コーヒーホワイトナーの乳化粒径の測定)
製造後の液状コーヒーホワイトナーについて、その乳化粒径(メジアン径)を堀場製作所製・レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950を用いて測定した。測定においては、液状コーヒーホワイトナーを測定に適した濃度まで精製水にて希釈したのち測定した。
【0046】
(液状コーヒーホワイトナーの経時的な乳化安定性の変化に関する評価)
液状コーヒーホワイトナーの経時的な乳化安定性の変化について、以下の方法にて評価した。
上記の製造方法にて得られた液状コーヒーホワイトナーを5gずつポーションパックに封入し、30℃にて保管試験を行った。125日後にその乳化安定性を、前述と同様の基準にて採点し、評価した。
【0047】
【0048】
〔比較例1~10〕
前述の製造例1、比較製造例1~8の各油脂に、前述のレシチンや酸化防止剤を配合し、比較例1~10の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を製造した。各比較例の油脂配合およびレシチンや酸化防止剤の副原料配合は表4に示した。これら油脂組成物を用いて前述の方法によりコーヒーホワイトナーを調製し、評価し、結果を表4に示した。
【0049】
【0050】
本発明の実施例1~4において、その液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を用いることにより、トランス脂肪酸及び飽和脂肪酸を低減しながら、良好な酸化安定性を示し、且つコーヒー添加時にオイルオフやフェザリングが認められず、乳化安定性に優れた液状コーヒーホワイトナーを得ることができた。なお、実施例5は、実施例2と同様の原料油脂および酸化防止剤を使用し、油脂部をランダムエステル交換した場合の例であるが、乳化安定性及び風味安定性に優れることが確認された。
【0051】
一方、比較例1は、オレイン酸の含有量が83質量%より多く含む例であるが、経時変化による乳化安定性及び風味(酸化安定性)が悪くなることがわかった。比較例2、6は、リノール酸を14質量%より多く含み、α―リノレン酸を0.8質量%より多く含有するため、風味が悪くなることがわかった。比較例3~5は、α―リノレン酸を0.8質量%より多く含有するため、風味や乳化安定性が悪くなることがわかった。比較例9は、レシチンを含まないため、乳化安定性が悪くなり、さらには風味も悪くなることがわかった。比較例10は、レシチンの添加量が多いため、風味が悪くなった。
また、比較例7はトランス脂肪酸を1質量%より多く含む油脂組成物を用いた例であり、比較例8は飽和脂肪酸を18質量%より多く含む例であるが、実施例1~4の油脂組成物は、それらと比較しても、同等の酸化安定性、乳化安定性等を示すことがわかった。