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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20230110BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20230110BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/03 100B
B60C11/01 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018206733
(22)【出願日】2018-11-01
(65)【公開番号】P2020069964
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】川崎 雄三
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019437(JP,A)
【文献】特開2018-131000(JP,A)
【文献】特開2007-008342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、最もトレッド端側に配されたショルダー陸部を含み、
前記ショルダー陸部は、陸部を完全に横断する複数のショルダー横溝を具え、
前記ショルダー横溝は、その長さ方向と直交する横断面において、底部と、前記底部からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体と、前記ショルダー陸部の接地面と前記溝壁本体との間の面取り部とを含み、
前記面取り部は、前記接地面を延長したトレッドプロファイルに対して、5~30°の角度で傾斜し、
前記ショルダー横溝の前記溝壁本体は、タイヤ周方向の一方側の第1溝壁本体と、タイヤ周方向の他方側の第2溝壁本体とを含み、
前記面取り部は、前記第1溝壁本体に連なる第1面取り部と、前記第2溝壁本体に連なる第2面取り部とを含み、
前記第2面取り部は、前記角度が異なる第1部分と第2部分とを有する、
タイヤ。
【請求項2】
前記ショルダー陸部は、複数の前記ショルダー横溝で区分された複数のショルダーブロックを含み、
前記複数のショルダーブロックは、それぞれ、踏面に溝及びサイプが設けられていない、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1面取り部は、一定の前記角度でタイヤ軸方向に延びている、請求項1又は2のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第2部分の前記角度は、前記第1部分の前記角度よりも大きい、請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第2部分は、前記第1部分のタイヤ軸方向外側に設けられている、請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1部分の前記角度は、15~25°である、請求項1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ショルダー横溝の前記第2面取り部と前記接地面とが交わる溝縁は、Z字状の折れ曲がり部を含んでいる、請求項1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ショルダー横溝は、互いに向き合う一対の前記溝壁本体を有し、
トレッド平面視において、前記面取り部の最大の幅は、前記一対の溝壁本体の間の最大の距離の0.50~1.70倍である、請求項1ないし7のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記トレッド部は、前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向内側に、ショルダー主溝を介して隣り合うミドル陸部を含み、
前記ミドル陸部には、前記ショルダー主溝から延びる複数のミドル横溝が設けられ、
前記ミドル横溝の少なくとも1本は、前記ショルダー主溝を介して前記ショルダー横溝と連続している、請求項1ないし8のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ミドル横溝は、その長さ方向と直交する横断面において、底部と、前記底部からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体と、前記ミドル陸部の接地面と前記溝壁本体との間の面取り部とを含み、
前記ミドル横溝の前記面取り部は、前記ミドル陸部の前記接地面を延長したトレッドプロファイルに対して、5~30°の角度で傾斜している、請求項9記載のタイヤ。
【請求項11】
前記ミドル横溝の前記角度は、前記ショルダー横溝の最大の前記角度よりも小さい、請求項10記載のタイヤ。
【請求項12】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、最もトレッド端側に配されたショルダー陸部を含み、
前記ショルダー陸部は、陸部を完全に横断する複数のショルダー横溝を具え、
前記ショルダー横溝は、その長さ方向と直交する横断面において、底部と、前記底部からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体と、前記ショルダー陸部の接地面と前記溝壁本体との間の面取り部とを含み、
前記面取り部は、前記接地面を延長したトレッドプロファイルに対して、5~30°の角度で傾斜し、
前記ショルダー横溝の前記溝壁本体は、タイヤ周方向の一方側の第1溝壁本体と、タイヤ周方向の他方側の第2溝壁本体とを含み、
前記面取り部は、前記第1溝壁本体に連なる第1面取り部と、前記第2溝壁本体に連なる第2面取り部とを含み、
前記ショルダー横溝の前記第2面取り部と前記接地面とが交わる溝縁は、Z字状の折れ曲がり部を含んでいる、
タイヤ。
【請求項13】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、最もトレッド端側に配されたショルダー陸部と、前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向内側に、ショルダー主溝を介して隣り合うミドル陸部とを含み、
前記ショルダー陸部は、陸部を完全に横断する複数のショルダー横溝を具え、
前記ショルダー横溝は、その長さ方向と直交する横断面において、底部と、前記底部からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体と、前記ショルダー陸部の接地面と前記溝壁本体との間の面取り部とを含み、
前記面取り部は、前記接地面を延長したトレッドプロファイルに対して、5~30°の角度で傾斜し、
前記ミドル陸部には、前記ショルダー主溝から延びる複数のミドル横溝が設けられ、
前記ミドル横溝の少なくとも1本は、前記ショルダー主溝を介して前記ショルダー横溝と連続し、
前記ミドル横溝は、その長さ方向と直交する横断面において、底部と、前記底部からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体と、前記ミドル陸部の接地面と前記溝壁本体との間の面取り部とを含み、
前記ミドル横溝の前記面取り部は、前記ミドル陸部の前記接地面を延長したトレッドプロファイルに対して、5~30°の角度で傾斜し、
前記ミドル横溝の前記角度は、前記ショルダー横溝の最大の前記角度よりも小さい、
タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部に、ショルダー横溝を具えたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、ショルダー陸部にショルダー横溝が設けられたタイヤを提案している。ショルダー横溝は、ウェット性能を高めるのに役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-154710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ドライ路面でのブレーキ時において、タイヤのトレッド部のショルダー陸部は、大きなタイヤ周方向のせん断力を受ける。これにより、ショルダー横溝がその溝幅を縮めるように変形し、その溝縁に連なるショルダー陸部の接地面が局部的に路面から浮き上がるという傾向があった。したがって、特許文献1のタイヤでは、ドライ路面でのブレーキ時において、グリップを損ねる傾向があった。
【0005】
一方、上述の不具合を緩和するために、ショルダー横溝の開口面積を小さくすると、十分なウェット性能が得られないという傾向があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題に鑑み案出されたもので、ドライ路面でのブレーキ性能及びウェット性能を向上させ得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、最もトレッド端側に配されたショルダー陸部を含み、前記ショルダー陸部は、陸部を完全に横断する複数のショルダー横溝を具え、前記ショルダー横溝は、その長さ方向と直交する横断面において、底部と、前記底部からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体と、前記ショルダー陸部の接地面と前記溝壁本体との間の面取り部とを含み、前記面取り部は、前記接地面を延長したトレッドプロファイルに対して、5~30°の角度で傾斜している。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダー陸部は、複数の前記ショルダー横溝で区分された複数のショルダーブロックを含み、前記複数のショルダーブロックは、それぞれ、踏面に溝及びサイプが設けられていないのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダー横溝は、タイヤ周方向の一方側の第1溝壁本体と、タイヤ周方向の他方側の第2溝壁本体とを含み、前記面取り部は、前記第1溝壁本体に連なる第1面取り部と、前記第2溝壁本体に連なる第2面取り部とを含み、前記第1面取り部は、一定の前記角度でタイヤ軸方向に延びているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記第2面取り部は、前記角度が異なる第1部分と第2部分とを有するのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記第2部分の前記角度は、前記第1部分の前記角度よりも大きいのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記第2部分は、前記第1部分のタイヤ軸方向外側に設けられているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記第1部分の前記角度は、15~25°であるのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダー横溝の前記第2面取り部と前記接地面とが交わる溝縁は、Z字状の折れ曲がり部を含んでいるのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダー横溝は、互いに向き合う一対の前記溝壁本体を有し、トレッド平面視において、前記面取り部の最大の幅は、前記一対の溝壁本体の間の最大の距離の0.50~1.70倍であるのが望ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向内側に、ショルダー主溝を介して隣り合うミドル陸部を含み、前記ミドル陸部には、前記ショルダー主溝から延びる複数のミドル横溝が設けられ、前記ミドル横溝の少なくとも1本は、前記ショルダー主溝を介して前記ショルダー横溝と連続しているのが望ましい。
【0017】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドル横溝は、その長さ方向と直交する横断面において、底部と、前記底部からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体と、前記ミドル陸部の接地面と前記溝壁本体との間の面取り部とを含み、前記ミドル横溝の前記面取り部は、前記ミドル陸部の前記接地面を延長したトレッドプロファイルに対して、5~30°の角度で傾斜しているのが望ましい。
【0018】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドル横溝の前記角度は、前記ショルダー横溝の最大の前記角度よりも小さいのが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のタイヤのショルダー陸部は、陸部を完全に横断する複数のショルダー横溝を具えている。ショルダー横溝は、その長さ方向と直交する横断面において、底部と、底部からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体と、ショルダー陸部の接地面と溝壁本体との間の面取り部とを含む。面取り部は、接地面を延長したトレッドプロファイルに対して、5~30°の角度で傾斜している。
【0020】
このようなショルダー横溝は、ドライ路面でのブレーキ時、溝壁が適度に変形して面取り部の外面を接地させながら、ショルダー陸部の接地面が路面から浮き上がるのを防ぐことができ、ひいては高いグリップを提供する。また、面取り部は、ショルダー横溝の開口面積を増やし、ウェット性能を高めることができる。
【0021】
以上のように、本発明のタイヤは、ドライ路面でのブレーキ性能及びウェット性能を向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1の外側ショルダー陸部及び外側ミドル陸部の拡大図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】面取り部を具えていない横溝のドライ路面でのブレーキ時の断面図である。
図5】ショルダー横溝の斜視図である。
図6図2のB-B線断面図である。
図7図1の内側ショルダー陸部及び内側ミドル陸部の拡大図である。
図8図7のC-C線断面図である。
図9】(a)は、図7のD-D線断面図であり、(b)は、図7のE-E線断面図である。
図10】クラウン陸部の拡大図である。
図11】比較例のタイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして用いられる。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0024】
本実施形態のタイヤ1は、例えば、車両への装着の向きが指定されたトレッドパターンを有している。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部等に文字やマークで表示されている(図示省略)。
【0025】
図1に示されるように、トレッド部2は、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端Toと、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端Tiとを有している。
【0026】
外側トレッド端To及び内側トレッド端Tiは、それぞれ、空気入りタイヤの場合、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。特に断りがない場合、タイヤの各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0027】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0028】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0029】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0030】
トレッド部2には、外側トレッド端To又は内側トレッド端Ti側でタイヤ周方向に連続して延びるショルダー主溝3と、タイヤ赤道C側でタイヤ周方向に連続して延びるクラウン主溝4とが設けられている。ショルダー主溝3は、外側トレッド端To側に配された外側ショルダー主溝3Aと、内側トレッド端Ti側に配された内側ショルダー主溝3Bとを含む。クラウン主溝4は、外側ショルダー主溝3Aとタイヤ赤道Cとの間に設けられた外側クラウン主溝4Aと、内側ショルダー主溝3Bとタイヤ赤道Cとの間に設けられた内側クラウン主溝4Bとを含む。本実施形態の各主溝は、例えば、直線状に延びている。
【0031】
タイヤ赤道Cからショルダー主溝3の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの0.25~0.35倍であるのが望ましい。タイヤ赤道Cからクラウン主溝4の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの0.05~0.15倍であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態における外側トレッド端Toから内側トレッド端Tiまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0032】
各主溝の溝幅は、例えば、例えば、トレッド幅TWの4.0%~8.0%であるのが望ましい。各主溝の溝深さは、例えば、5~12mmであるのが望ましい。
【0033】
ショルダー主溝3は、例えば、クラウン主溝4よりも小さい溝幅を有しているのが望ましい。また、外側ショルダー主溝3Aの溝幅W1は、内側ショルダー主溝3Bの溝幅W2よりも小さいのが望ましい。具体的には、外側ショルダー主溝3Aの溝幅W1は、内側ショルダー主溝3Bの溝幅W2の0.50~0.80倍であるのが望ましい。
【0034】
トレッド部2は、上記主溝に区分された複数の陸部を有している。本実施形態のトレッド部2は、ショルダー陸部5、ミドル陸部6及びクラウン陸部7を有している。
【0035】
ショルダー陸部5は、最もトレッド端側に配されている。ショルダー陸部5は、外側トレッド端To側に配された外側ショルダー陸部5Aと、内側トレッド端Ti側に配された内側ショルダー陸部5Bとを含んでいる。
【0036】
ミドル陸部6は、例えば、外側ショルダー主溝3Aと外側クラウン主溝4Aとの間に区分された外側ミドル陸部6Aと、内側ショルダー主溝3Bと内側クラウン主溝4Bとの間に区分された内側ミドル陸部6Bとを含んでいる。
【0037】
クラウン陸部7は、例えば、外側クラウン主溝4Aと内側クラウン主溝4Bとの間に区分されている。
【0038】
図2には、ショルダー陸部5及びミドル陸部6の一例を示す図として、外側ショルダー陸部5A及び外側ミドル陸部6Aの拡大図が示されている。図2に示されるように、ショルダー陸部5は、陸部を完全に横切る複数のショルダー横溝10を具えている。
【0039】
ショルダー横溝10は、例えば、タイヤ軸方向に対して30°未満の角度で配されている。望ましい態様では、ショルダー横溝10のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、0~10°である。
【0040】
図3には、図2のショルダー横溝10のA-A線断面図が示されている。図3に示されるように、ショルダー横溝10は、その長さ方向と直交する横断面において、底部11と、底部11からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体12と、ショルダー陸部5の接地面5sと溝壁本体12との間の面取り部15とを含む。なお、発明を理解し易いように、図2において、面取り部15は着色されている。
【0041】
面取り部15は、前記接地面5sを延長したトレッドプロファイル13に対して、5~30°の角度θ1で傾斜している。トレッドプロファイル13は、正規状態において接地面5sをその曲率を維持して延長したものである。
【0042】
図4には、面取り部を具えていない横溝のドライ路面でのブレーキ時の断面図である。なお、図4では、タイヤaがR方向に回転しながらA方向に進んでいる状態を示している。図4に示されるように、タイヤaの陸部bに設けられた横溝cは、ドライ路面でのブレーキ時、その溝幅を縮めるように変形し、その溝縁に連なる接地面sが局部的に路面Gから浮き上がるという傾向があった。
【0043】
図3に示されるように、本発明のショルダー横溝10は、ドライ路面でのブレーキ時、溝壁が適度に変形して面取り部15の外面を接地させながら、ショルダー陸部5の接地面5sが路面から浮き上がるのを防ぐことができ、ひいては高いグリップを提供する。また、面取り部15は、ショルダー横溝10の開口面積を増やし、ウェット性能を高めることができる。
【0044】
ショルダー横溝10は、タイヤ周方向の一方側の第1溝壁本体12aと、タイヤ周方向の他方側の第2溝壁本体12bとを含んでいる。また、面取り部15は、第1溝壁本体12aに連なる第1面取り部16と、第2溝壁本体12bに連なる第2面取り部17とを含んでいる。
【0045】
図5には、ショルダー横溝10の斜視図が示されている。図5に示されるように、第1面取り部16は、例えば、トレッドプロファイルに対して一定の角度でタイヤ軸方向に延びている。これにより、ショルダー横溝10の全体で上述の作用効果を期待することができる。
【0046】
図2に示されるように、第1面取り部16は、その長さ方向と直交する幅W3がタイヤ軸方向外側に向かって漸減しているのが望ましい。これにより、ショルダー横溝10の溝縁周辺において、局部的な摩耗が発生するのを抑制することができる。
【0047】
図5に示されるように、第2面取り部17は、例えば、トレッドプロファイルに対する角度が異なる第1部分17aと第2部分17bとを有する。このような第2面取り部17は、ショルダー横溝10が接地するときの打音をホワイトノイズ化することができる。
【0048】
第1部分17aは、例えば、第2部分17bのよりもショルダー主溝3側に設けられている。本実施形態の第1部分17aは、例えば、ショルダー主溝3と接している。
【0049】
第1部分17aのトレッドプロファイルに対する角度は、例えば、15~25°である。より望ましい態様では、第1部分17aの前記角度は、第1面取り部16のトレッドプロファイルに対する角度よりも小さい。このような第1部分17aは、ウェット走行時、ショルダー主溝3とショルダー横溝10との連通部分における水の出入りをより滑らかにし、ウェット性能を高めることができる。
【0050】
図2に示されるように、第1部分17aは、その長さ方向と直交する幅W4がタイヤ軸方向内側に向かって漸減しているのが望ましい。
【0051】
第2部分17bは、第1部分17aのタイヤ軸方向外側に設けられている。本実施形態の第2部分17bは、例えば、第1部分17aから外側トレッド端Toまで延びている。
【0052】
第2部分17bのトレッドプロファイルに対する角度は、例えば、第1部分17aのトレッドプロファイルに対する角度よりも大きいのが望ましい。さらに望ましい態様では、第2部分17bの前記角度は、第1面取り部16のトレッドプロファイルに対する角度と同じである。このような第2部分17bは、ショルダー横溝10の溝縁の局部的な摩耗を抑制しつつ、ショルダー横溝10が接地するときの打音をホワイトノイズ化することができる。
【0053】
第2部分17bは、その長さ方向と直交する幅W5がタイヤ軸方向外側に向かって漸減しているのが望ましい。
【0054】
上述の第1部分17a及び第2部分17bが構成されることにより、ショルダー横溝10の第2面取り部17とショルダー陸部5の接地面5sとが交わる溝縁10eは、Z字状の折れ曲がり部を含んでいる。このような溝縁10eは、タイヤ軸方向のグリップも高めることができ、ウェット路面での旋回性能を向上させる。
【0055】
トレッド平面視において、面取り部15の最大の幅は、一対の溝壁本体12の間の最大の距離L3の0.50~1.70倍であるのが望ましい。このような面取り部15は、ドライ路面でのブレーキ性能とウェット性能とをバランス良く高めることができる。なお、図3に示されるように、前記距離L3は、例えば、溝壁本体12のタイヤ半径方向の外端で測定される。
【0056】
図2に示されるように、ショルダー陸部5は、複数のショルダー横溝10で区分された複数のショルダーブロック18を含んでいる。複数のショルダーブロック18は、それぞれ、踏面に溝及びサイプが設けられていないのが望ましい。このようなショルダーブロック18は、高い剛性を有し、優れた操縦安定性を発揮するのに役立つ。なお、本明細書において、「サイプ」とは、幅が1.0mm未満の切れ込みを意味する。
【0057】
ミドル陸部6は、ショルダー陸部5のタイヤ軸方向内側に、ショルダー主溝3を介して隣り合っている。ミドル陸部6には、ショルダー主溝3から延びる複数のミドル横溝20が設けられている。
【0058】
ミドル横溝20は、例えば、ショルダー主溝3から延び、ミドル陸部6内で途切れている。ミドル横溝20のタイヤ軸方向の長さL4は、例えば、ミドル陸部6のタイヤ軸方向の幅W6の0.50~0.70倍であるのが望ましい。
【0059】
ミドル横溝20は、例えば、タイヤ軸方向に対して30°未満の角度で配されている。望ましい態様では、ミドル横溝20のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、0~10°である。
【0060】
ミドル横溝20の少なくとも1本は、ショルダー主溝3を介してショルダー横溝10と連続している。本実施形態では、各ミドル横溝20が、ショルダー主溝3を介してショルダー横溝10と連続している。このようなミドル横溝20は、ショルダー横溝10とともに、ウェット性能を高めるのに役立つ。なお、上記構成は、少なくとも、ショルダー横溝10をその長さ方向に沿ってタイヤ赤道C側に仮想に延長した領域が、ミドル横溝20のショルダー主溝3側の端部の一部と重複する態様を含む。望ましい態様では、前記領域と前記ミドル横溝との端部との重複幅が、前記ミドル横溝の溝幅の70%以上である。
【0061】
ミドル横溝20は、ショルダー横溝10と同様、面取り部25を具えている。すなわち、ミドル横溝20は、その長さ方向と直交する横断面において、底部と、底部からタイヤ半径方向外側に延びる溝壁本体と、ミドル陸部6の接地面と前記溝壁本体との間の面取り部25とを含む。ミドル横溝20の面取り部25は、ミドル陸部6の接地面を延長したトレッドプロファイルに対して、5~30°の角度で傾斜しているのが望ましい。このようなミドル横溝20は、上述のショルダー横溝10と同様の作用効果が得られる。
【0062】
本実施形態において、ミドル横溝20のタイヤ周方向の一方側の溝縁に連なる面取り部25aと、ミドル横溝20のタイヤ周方向の他方側の溝縁に連なる面取り部25bとは、トレッドプロファイルに対する角度が同一である。
【0063】
ミドル横溝20には、ショルダー横溝10よりも大きい接地圧が作用する傾向がある。このため、ミドル横溝20の面取り部25のトレッドプロファイルに対する角度は、ショルダー横溝10の面取り部15のトレッドプロファイルに対する最大の角度よりも小さいのが望ましい。ミドル横溝20の面取り部25の前記角度は、例えば、ショルダー横溝10の第1面取り部16のトレッドプロファイルに対する角度よりも小さいのが望ましい。本実施形態では、ミドル横溝20の面取り部25の前記角度は、ショルダー横溝10の第2面取り部17の第1部分17aのトレッドプロファイルに対する角度と同一である。これにより、ミドル横溝20及びショルダー横溝10の周辺の偏摩耗が抑制される。
【0064】
具体的には、ミドル横溝20の面取り部25の前記角度は、15~25°であるのが望ましい。
【0065】
ミドル横溝20の面取り部25は、その長さ方向と直交する幅W7がタイヤ軸方向内側に向かって漸減しているのが望ましい。
【0066】
図6には、図2ミドル横溝20のB-B線断面図が示されている。図6に示されるように、ミドル横溝20は、タイヤ軸方向外側に向かって深さが漸増する漸増部21と、漸増部21のタイヤ軸方向外側に配され、一定の深さを有する外側部22とを有している。漸増部21は、外側ミドル陸部6Aに剛性の急変部が生成されるのを防止する。
【0067】
上述の効果をさらに発揮させるために、漸増部21のタイヤ軸方向の長さL5は、ミドル陸部6のタイヤ軸方向の幅W6(図2に示す)の0.35~0.45倍であるのが望ましい。
【0068】
ミドル陸部6は、タイヤ周方向に連続して延びるリブとして構成されている。ミドル陸部6には、ミドル横溝20を除き、溝及びサイプが設けられていない。このようなミドル陸部6は、高い剛性を有し、操縦安定性を高めるのに役立つ。
【0069】
図7には、内側ショルダー陸部5B及び内側ミドル陸部6Bの拡大図が示されている。図7に示されるように、内側ショルダー陸部5Bには、複数の内側ショルダー横溝30が設けられている。内側ショルダー横溝30は、例えば、ショルダー横溝10の面取り部15と同様の面取り部35を具えている。このため、内側ショルダー横溝30の面取り部35には、上述のショルダー横溝10の面取り部15の構成を適用することができる。なお、発明を理解し易いように、図7において、面取り部35及び陸部の接地面から凹んでいる部分は、着色されている。
【0070】
内側ショルダー横溝30は、例えば、溝本体部31と、溝本体部31のタイヤ軸方向内側に連なる浅底接地部32とを含んでいる。溝本体部31は、内側トレッド端Tiからタイヤ軸方向内側に延びている。浅底接地部32は、正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させた状態では接地せず、正規荷重よりも大きい荷重が負荷されたときに接地する。また、浅底接地部32は、面取り部35と滑らかに連続している。
【0071】
図8には、図7内側ショルダー横溝30のC-C線断面図が示されている。図8に示されるように、溝本体部31は、例えば、最大の深さが主溝の深さの0.50~1.00倍程度である。浅底接地部32は、例えば、最大の深さが0.5~2.0mmであり、溝本体部31から内側ショルダー主溝3Bまで延びている。また、浅底接地部32は、例えば、溝本体部31からショルダー主溝3に向かって深さが漸減しているのが望ましい。このような浅底接地部32は、内側ショルダー横溝30の周辺の接地面の浮き上がりを抑制し、ドライ路面でのブレーキ性能を高める。
【0072】
浅底接地部32には、さらに、溝本体部31からショルダー主溝3まで延びる幅及び深さが0.5mm未満の切れ込みが配されても良い(図示省略)。
【0073】
図7に示されるように、内側ショルダー陸部5Bには、上述の内側ショルダー横溝30を除き、溝及びサイプが設けられていないのが望ましい。このような内側ショルダー陸部5Bは、高い剛性を有し、優れた操縦安定性を発揮するのに役立つ。
【0074】
内側ミドル陸部6Bには、例えば、複数の内側ミドル横溝40が設けられている。内側ミドル横溝40は、例えば、内側クラウン主溝4Bから内側ショルダー主溝3Bまで延びている。内側ミドル横溝40は、例えば、タイヤ軸方向に対して内側ショルダー横溝30とは逆向きに傾斜している。内側ミドル横溝40のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、45°未満であるのが望ましい。より望ましい態様では、内側ミドル横溝40の前記角度は、例えば、15~30°である。
【0075】
内側ミドル横溝40は、例えば、タイヤ軸方向の中央部41と、中央部41の両側に配された一対の端部分42とを含んでいる。端部分42は、中央部41から内側クラウン主溝4B又は内側ショルダー主溝3Bまで延びている。
【0076】
図9(a)には、図7の中央部41のD-D線断面図が示されている。図9(a)に示されるように、中央部41は、例えば、ショルダー横溝10よりも小さい深さd1を有している。中央部41の深さd1は、例えば、1.0~2.0mmであるのが望ましい。このような中央部41は、高い操縦安定性を維持しつつ、適度なウェット性能を確保する。
【0077】
図9(b)には、図7の端部分42のE-E線断面図が示されている。図9(b)に示されるように、端部分42は、例えば、中央部41と同じ幅及び深さを有する浅底部42aと、浅底部42aよりも小さい幅W8を有し、浅底部42aからタイヤ半径方向内側に延びる幅狭部42bとを有している。幅狭部42bの幅W8は、例えば、1.5mm未満であり、より望ましくは0.4~0.8mmである。
【0078】
図7に示されるように、内側ミドル陸部6Bには、内側ミドル横溝40を除き、溝及びサイプが設けられていないのが望ましい。
【0079】
図10には、クラウン陸部7の拡大図が示されている。図10に示されるように、クラウン陸部7には、複数のクラウン横溝45が設けられている。クラウン横溝45は、例えば、中央傾斜部46と、一対の端傾斜部47とを含んでいる。
【0080】
中央傾斜部46は、例えば、タイヤ軸方向に対してショルダー横溝10と同じ向きに傾斜しているのが望ましい。中央傾斜部46のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、例えば、ショルダー横溝10のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きいのが望ましく、より望ましくは45°よりも大きいのが望ましい。具体的には、中央傾斜部46の前記角度θ2は、60~70°であるのが望ましい。このような中央傾斜部46は、タイヤ軸方向にもグリップを提供し、旋回性能を高めるのに役立つ。
【0081】
中央傾斜部46は、例えば、内側ミドル横溝40の中央部41と同じ断面形状を有している。このため、内側ミドル横溝40の中央部41の断面に関する構成は、中央傾斜部46に適用することができる。
【0082】
端傾斜部47は、例えば、中央傾斜部46から外側クラウン主溝4A又は内側クラウン主溝4Bまで延びている。端傾斜部47は、タイヤ軸方向に対して中央傾斜部46とは逆向きに傾斜している。中央傾斜部46と端傾斜部47との間の角度θ3は、例えば、80~100°であるのが望ましい。
【0083】
端傾斜部47は、例えば、内側ミドル横溝40の端部分42と同じ断面形状を有している。このため、内側ミドル横溝40の端部分42の断面に関する構成は、端傾斜部47に適用することができる。
【0084】
図1に示されるように、クラウン横溝45の端傾斜部47は、例えば、内側ミドル横溝40の端部をタイヤ軸方向に沿ってタイヤ軸方向に仮想に延長した領域と重複するのが望ましい。これにより、クラウン横溝45及び内側ミドル横溝40の幅狭部が開き易くなり、ウェット性能が高められる。
【0085】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例
【0086】
図1の基本トレッドパターンを有するサイズ225/45R17の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、図11に示されるように、ショルダー横溝に面取り部が設けられていないタイヤが試作された。比較例のタイヤのパターンは、面取り部が設けられていない点を除いて、図1に示されるものと実質的に同じである。各テストタイヤのドライ路面でのブレーキ性能、及び、ウェット性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
リム:17×7.5J
タイヤ内圧:230kPa
テスト車両:排気量1400cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0087】
<ドライ路面でのブレーキ性能>
上記テスト車両を用いて、ドライ路面でのブレーキ性能が運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、ドライ路面でのブレーキ性能が優れていることを示す。
【0088】
<ウェット性能>
上記テスト車両でウェット路面を走行したときの走行性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、ウェット性能が優れていることを示す。
テスト結果が表1に示される。
【0089】
【表1】
【0090】
テストの結果、実施例のタイヤは、ドライ路面でのブレーキ性能及びウェット性能が向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0091】
2 トレッド部
5 ショルダー陸部
10 ショルダー横溝
11 底部
12 溝壁本体
13 トレッドプロファイル
15 面取り部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11