(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20230110BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20230110BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B60C11/03 300E
B60C11/03 300B
B60C11/03 300C
B60C11/13 C
B60C11/12 C
(21)【出願番号】P 2018217494
(22)【出願日】2018-11-20
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 翔
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-060806(JP,A)
【文献】特開2009-132235(JP,A)
【文献】特開2006-160195(JP,A)
【文献】特開2006-151173(JP,A)
【文献】特開2018-149978(JP,A)
【文献】米国特許第06530405(US,B1)
【文献】特開2001-055014(JP,A)
【文献】特開2015-229395(JP,A)
【文献】特開2018-167783(JP,A)
【文献】特開2016-043894(JP,A)
【文献】特開2018-020735(JP,A)
【文献】特開2015-013513(JP,A)
【文献】特開2015-223884(JP,A)
【文献】特開2016-128272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を備えたタイヤであって、
前記トレッド部は、最もトレッド接地端側をタイヤ周方向に連続してのび、かつ、タイヤ赤道を挟むように配された一対のショルダー主溝と、前記一対のショルダー主溝の間のクラウン領域と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に配されたショルダー領域とを含み、
前記クラウン領域及びショルダー領域のランド比は、それぞれ40%~60%であり、
前記クラウン領域は、タイヤ赤道の両側に、複数のミドルブロックが設けられ、
各ミドルブロックは、タイヤ軸方向の長さL1よりもタイヤ周方向の長さL2が大きい縦長形状であ
り、
前記各ミドルブロックは、ミドル横溝を介してタイヤ周方向に並べられており、
前記各ミドルブロックには、前記各ミドルブロックを横断する浅溝が形成されており、
前記浅溝は、前記ミドル横溝よりも深さが小さい、
タイヤ。
【請求項2】
トレッド部を備えたタイヤであって、
前記トレッド部は、最もトレッド接地端側をタイヤ周方向に連続してのび、かつ、タイヤ赤道を挟むように配された一対のショルダー主溝と、前記一対のショルダー主溝の間のクラウン領域と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に配されたショルダー領域とを含み、
前記クラウン領域及びショルダー領域のランド比は、それぞれ40%~60%であり、
前記クラウン領域は、タイヤ赤道の両側に、複数のミドルブロックが設けられ、
各ミドルブロックは、タイヤ軸方向の長さL1よりもタイヤ周方向の長さL2が大きい縦長形状であり、
前記各ミドルブロックは、タイヤ赤道側に向かって凸となるように屈曲している、
タイヤ。
【請求項3】
トレッド部を備えたタイヤであって、
前記トレッド部は、最もトレッド接地端側をタイヤ周方向に連続してのび、かつ、タイヤ赤道を挟むように配された一対のショルダー主溝と、前記一対のショルダー主溝の間のクラウン領域と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に配されたショルダー領域とを含み、
前記クラウン領域及びショルダー領域のランド比は、それぞれ40%~60%であり、
前記クラウン領域は、タイヤ赤道の両側に、複数のミドルブロックが設けられ、
各ミドルブロックは、タイヤ軸方向の長さL1よりもタイヤ周方向の長さL2が大きい縦長形状であり、
前記クラウン領域は、前記ミドルブロックの間に、複数のクラウンブロックが設けられており、
各クラウンブロックのタイヤ軸方向の長さL3とタイヤ周方向の長さL4との比L4/L3は、0.85~1.15である、
タイヤ
【請求項4】
前記各ミドルブロックの前記長さL1と前記長さL2との比L2/L1は、2.0~4.0である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記浅溝の深さは、前記ミドル横溝の深さの40%~60%である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記浅溝の溝幅は、前記各ミドルブロックのタイヤ周方向の長さL2の4%~6%である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記浅溝の溝底には、前記浅溝に沿って延びる溝底サイプが設けられている、請求項
1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記溝底サイプの深さは、前記浅溝の深さの40%~60%である、請求項7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記各ミドルブロックのタイヤ周方向の両端に位置する2つの端面の少なくとも一方は、ブロック踏面から前記ミドル横溝の溝底に向って階段状に高さが減少する階段状部を有する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記階段状部は、前記ブロック踏面と前記ミドル横溝の溝底との間に、2つの階段部を有する、請求項9に記載のタイヤ。
【請求項11】
タイヤ軸方向に隣り合う一対の前記ミドルブロックの間に、一対の前記クラウンブロックが配されている、請求項3に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフロード(不整地)走行に適するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
オフロード走行を想定したタイヤでは、接地面内の溝容積を大きくし、泥、砂、雪等(以下、泥等)を噛みこみやすくしたり、進行方向に対して垂直方向のエッジ成分を増やしひっかき効果を増大させたりすることで、トラクション性能を向上させる方法がとられる。より具体的には、タイヤ軸方向に延びるラグ溝を太くする又はラグ溝の数を増やすという手法や、タイヤ軸方向にのびるサイプを増やすという手法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記手法によれば、トレッド部のタイヤ周方向の剛性が低下し、耐摩耗性能が悪化する虞がある。特に、いわゆるピックアップ車両に装着されるタイヤでは、後輪は高内圧低荷重の状態となり、クラウン領域での偏摩耗の発生が顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、耐摩耗性能を維持しつつ、オフロードでのトラクション性能を高めることができるタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を備えたタイヤであって、前記トレッド部は、最もトレッド接地端側をタイヤ周方向に連続してのび、かつ、タイヤ赤道を挟むように配された一対のショルダー主溝と、前記一対のショルダー主溝の間のクラウン領域と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に配されたショルダー領域とを含み、前記クラウン領域及びショルダー領域のランド比は、それぞれ40%~60%であり、前記クラウン領域は、タイヤ赤道の両側に、複数のミドルブロックが設けられ、各ミドルブロックは、タイヤ軸方向の長さL1よりもタイヤ周方向の長さL2が大きい縦長形状である。
【0007】
本発明に係る前記タイヤにおいて、前記各ミドルブロックの前記長さL1と前記長さL2との比L2/L1は、2.0~4.0である、ことが望ましい。
【0008】
本発明に係る前記タイヤにおいて、前記各ミドルブロックは、ミドル横溝を介してタイヤ周方向に並べられており、前記各ミドルブロックには、前記各ミドルブロックを横断する浅溝が形成されており、前記浅溝は、前記ミドル横溝よりも深さが小さい、ことが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記タイヤにおいて、前記浅溝の深さは、前記ミドル横溝の深さの40%~60%である、ことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記タイヤにおいて、前記浅溝の溝幅は、前記各ミドルブロックのタイヤ周方向の長さL2の4%~6%である、ことが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記タイヤにおいて、前記浅溝の溝底には、前記浅溝に沿って延びる溝底サイプが設けられている、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記タイヤにおいて、前記溝底サイプの深さは、前記浅溝の深さの40%~60%である、ことが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記タイヤにおいて、前記各ミドルブロックのタイヤ周方向の両端に位置する2つの端面の少なくとも一方は、ブロック踏面から前記ミドル横溝の溝底に向って階段状に高さが減少する階段状部を有する、ことが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記タイヤにおいて、前記階段状部は、前記ブロック踏面と前記ミドル横溝の溝底との間に、2つの階段部を有する、ことが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記タイヤにおいて、前記各ミドルブロックは、タイヤ赤道側に向かって凸となるように屈曲している、ことが望ましい。
【0016】
本発明に係る前記タイヤにおいて、前記クラウン領域は、前記ミドルブロックの間に、複数のクラウンブロックが設けられており、各クラウンブロックのタイヤ軸方向の長さL3とタイヤ周方向の長さL4との比L4/L3は、0.85~1.15である、ことが望ましい。
【0017】
本発明に係る前記タイヤにおいて、タイヤ軸方向に隣り合う一対のミドルブロックの間に、一対のクラウンブロックが配されている、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタイヤは、トレッド部に、一対のショルダー主溝の間のクラウン領域と、ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に配されたショルダー領域とを含み、クラウン領域及びショルダー領域のランド比は、それぞれ40%~60%である。これにより、耐摩耗性能とオフロードでのトラクション性能とが容易に両立される。クラウン領域には、タイヤ赤道の両側に、複数のミドルブロックが設けられ、各ミドルブロックは、タイヤ軸方向の長さL1よりもタイヤ周方向の長さL2が大きい縦長形状である。これにより、クラウン領域のタイヤ周方向の剛性が高められ、耐摩耗性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のタイヤの一実施形態を示すトレッド部の展開図である。
【
図3】
図2のミドルブロックのタイヤ周方向での一方の端面を含む断面図である。
【
図4】
図2のミドルブロックのタイヤ周方向での他方の端面を含む断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤのトレッド部2の展開図である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤは、トレッド部2に、一対のショルダー主溝4と、クラウン領域11と、一対のショルダー領域12とを含んでいる。
【0021】
ショルダー主溝4は、最もトレッド接地端TE側をタイヤ周方向に連続してのび、かつ、タイヤ赤道Cを挟むように配されている。
【0022】
トレッド接地端TEとは、正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷しかつキャンバー角0゜で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側のトレッド接地端を意味している。ここで、正規状態とは、タイヤを正規リム(図示省略)にリム組みし、かつ、正規内圧を充填した無負荷の状態である。以下、特に言及されない場合、タイヤの各部の寸法等はこの正規状態で測定された値である。正規状態において、トレッド接地端TE、TE間のタイヤ軸方向距離はトレッド接地幅TWとして定義される。
【0023】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0024】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。タイヤが乗用車用である場合、正規内圧は、例えば、180kPaである。
【0025】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。タイヤが乗用車用の場合、正規荷重は、例えば、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0026】
本実施形態のショルダー主溝4は、タイヤ周方向にジグザグ状に延びている。ショルダー主溝4の幅は、慣例に従って種々定めることができる。例えば、本実施形態のタイヤでは、ショルダー主溝4の幅は、トレッド接地幅TWの4.0%~8.5%が望ましい。
【0027】
ショルダー主溝4は、タイヤ赤道Cからタイヤ軸方向の外側に向って、トレッド接地幅TWの40%から70%の領域に形成されているのが望ましい。ショルダー主溝4がタイヤ赤道Cからトレッド接地幅TWの40%以上の領域に形成されることにより、クラウン領域11の耐摩耗性能を高めることができる。ショルダー主溝4がタイヤ赤道Cからトレッド接地幅TWの70%以下の領域に形成されることにより、ショルダー領域12の偏摩耗を抑制できる。
【0028】
クラウン領域11は、一対のショルダー主溝4の間に配されている。すなわち、クラウン領域11は、ショルダー主溝4のタイヤ軸方向内側に配されている。クラウン領域11のランド比は、40%~60%である。
【0029】
本明細書において、ランド比とは、各領域での踏面の表面積Sと各領域での全ての溝を埋めて得られる仮想踏面の表面積Saとの比(S/Sa)である。
【0030】
クラウン領域11のランド比が、40%以上であることにより、クラウン領域11の剛性が十分に確保され、耐摩耗性能が向上する。クラウン領域11のランド比が、60%以下であることにより、オフロード走行時において、クラウン領域11で泥等を噛みこむ容積が増えるため、トラクション性能が向上する。
【0031】
ショルダー領域12は、ショルダー主溝4のタイヤ軸方向外側に配されている。ショルダー領域12のランド比は、40%~60%である。
【0032】
ショルダー領域12のランド比が、40%以上であることにより、ショルダー領域12の剛性が十分に確保され、耐摩耗性能が向上する。ショルダー領域12のランド比が、60%以下であることにより、オフロード走行時において、ショルダー領域12で泥等を噛みこむ容積が増えるため、トラクション性能が向上する。
【0033】
すなわち、クラウン領域11及びショルダー領域12のランド比がそれぞれ40%~60%であることより、それぞれの領域でのトレッド部2の剛性と溝容積が十分に確保され、耐摩耗性能とオフロードでのトラクション性能とが容易に両立される。
【0034】
クラウン領域11は、タイヤ赤道Cからトレッド接地幅TWの31%以下の領域に形成されているのが望ましい。クラウン領域11が、タイヤ赤道Cからトレッド接地幅TWの31%以下の領域に形成されていることにより、ショルダー領域12のボリュームが容易に確保され、ショルダー領域12の偏摩耗が抑制される。
【0035】
図2は、クラウン領域11を示している。クラウン領域11には、ミドルブロック21が設けられている。各ミドルブロック21は、タイヤ赤道Cの両側に設けられている。ミドルブロック21は、ミドル横溝31を介してタイヤ周方向に並べられている(
図1参照)。
【0036】
各ミドルブロック21は、タイヤ軸方向の長さL1よりもタイヤ周方向の長さL2が大きい縦長形状である。これにより、クラウン領域11のタイヤ周方向の剛性が高められ、耐摩耗性能が向上する。
【0037】
ここで、ミドルブロック21のタイヤ軸方向の長さL1は、ミドルブロック21の踏面のタイヤ軸方向の内端からミドルブロック21の踏面のタイヤ軸方向の外端までのタイヤ軸方向の距離で測定される。ミドルブロック21のタイヤ周方向の長さL2は、ミドルブロック21の踏面のタイヤ周方向の一端からミドルブロック21の踏面のタイヤ周方向の他端までのタイヤ周方向の距離で測定される(後述するクラウンブロック23のタイヤ軸方向の長さL3及びタイヤ周方向の長さL4に関しても、同様である)。
【0038】
各ミドルブロック21の長さの比L2/L1は、2.0~4.0が望ましい。上記比L2/L1が2.0以上であることにより、ミドルブロック21のタイヤ周方向の剛性が容易に高められ、ミドルブロック21の摩耗が抑制される。上記比L2/L1が4.0以下であることにより、ミドル横溝31の本数が容易に確保される。従って、クラウン領域11で泥等を噛みこむ容積が増えるため、オフロードでのトラクション性能を高めることができる。
【0039】
各ミドルブロック21には、浅溝32が形成されている。浅溝32は、ミドルブロック21をタイヤ軸方向に横断している。ミドルブロック21に浅溝32が形成されることによって、オフロードでのトラクション性能をより一層高めることができる。
【0040】
浅溝32は、ミドル横溝31よりも深さが小さい。これにより、ミドルブロック21のタイヤ周方向の剛性が容易に確保され、耐摩耗性能が向上する。
【0041】
浅溝32の深さは、ミドル横溝31の深さの40%~60%が望ましい。浅溝32の深さがミドル横溝31の深さの40%以上であることにより、浅溝32の容積が十分に確保されるため、オフロードでのトラクション性能を高めることができる。浅溝32の深さがミドル横溝31の深さの60%以下であることにより、ミドルブロック21のタイヤ周方向の剛性が十分に確保され、耐摩耗性能が向上する。
【0042】
浅溝32の溝幅Wは、ミドルブロック21のタイヤ周方向の長さL2の4%~6%が望ましい。浅溝32の溝幅Wが上記長さL2の4%以上であることにより、浅溝32の容積が十分に確保されるため、オフロードでのトラクション性能を高めることができる。浅溝32の溝幅Wが上記長さL2の6%以下であることにより、ミドルブロック21のタイヤ周方向の剛性が十分に確保され、耐摩耗性能が向上する。
【0043】
浅溝32は、ミドルブロック21の周方向での略中央に形成されている。これにより、浅溝32に泥等が噛みこみ易くなり、オフロードでのトラクション性能を高めることができる。また、ミドルブロック21のタイヤ周方向の剛性が均一化され、ミドルブロック21の偏摩耗が抑制される。
【0044】
浅溝32は、タイヤ軸方向に対して傾斜する直線形状に形成されている。これにより、オフロードでのトラクション性能を高めることができると共に、トレッド部2に力強いデザインが付与される。
【0045】
本実施形態の浅溝32の溝底には、浅溝32に沿って延びる溝底サイプ33が設けられている。ここで「サイプ」とは、幅が2mm以下(好ましくは1.5mm以下)の切り込みであり、タイヤに正規荷重を負荷した接地条件、すなわち、踏面での高い接地圧により閉塞する。溝底サイプ33によって、ミドルブロック21のタイヤ軸方向のエッジ成分が増加し、トラクション性能が向上する。
【0046】
溝底サイプ33の深さは、浅溝32の深さの40%~60%が望ましい。溝底サイプ33の深さは、浅溝32の溝底を基準面として測定される。溝底サイプ33の深さが浅溝32の深さの40%以上であることにより、摩耗中期以降においても、溝底サイプ33が残存し、上述したエッジ成分によるトラクション性能の向上が期待される。溝底サイプ33の深さが浅溝32の深さの60%以下であることにより、ミドルブロック21のタイヤ周方向の剛性が十分に確保され、耐摩耗性能が向上する。
【0047】
各ミドルブロック21の端面には、階段状部22が形成されている。階段状部22は、ミドルブロック21のタイヤ周方向の両端に位置する2つの端面21a、21bに設けられている。階段状部22は、端面21a、21bの少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0048】
階段状部22は、端面21aに設けられた階段状部22aと、端面21bに設けられた階段状部22bとを有している。
【0049】
図3は、階段状部22aを含むミドルブロック21の断面であり、
図4は、階段状部22bを含むミドルブロック21の断面である。階段状部22は、ブロック踏面21sからミドル横溝31の溝底31aに向って階段状(段階的)に高さが減少するように形成されている。
【0050】
図3に示されるように、階段状部22aは、ブロック踏面21sとミドル横溝31の溝底31aとの間に、1つの階段部を有している。階段状部22aによって、ミドルブロック21のタイヤ軸方向のエッジ成分が増加し、トラクション性能が向上する。
【0051】
図4に示されるように、階段状部22bは、ブロック踏面21sとミドル横溝31の溝底31aとの間に、2つの階段部を有している。階段状部22bによって、ミドルブロック21のタイヤ軸方向のエッジ成分がさらに増加し、トラクション性能が向上する。
【0052】
階段状部22内の階段部の数は、2以下が望ましい。このような階段状部22によって、階段状溝部22g(
図4参照)の容積が十分に確保され、トラクション性能が向上する。
【0053】
本実施形態の階段状部22は、階段状部22cと、階段状部22dとを有しているのが望ましい。階段状部22cは、ミドルブロック21のタイヤ軸方向の内側に位置する端面に部分的に設けられている。階段状部22dは、ミドルブロック21のタイヤ軸方向の外側に位置する端面に部分的に設けられている。階段状部22c及び階段状部22dは、ミドルブロック21のタイヤ軸方向の外側に向って、1つの階段部を有している。階段状部22c及び階段状部22dによってトラクション性能が向上する。
【0054】
図2に示されるように、各ミドルブロック21は、タイヤ赤道C側に向かって凸となるように屈曲している。このようなミドルブロック21によって、オフロードでのトラクション性能が向上する。
【0055】
クラウン領域11は、複数のクラウンブロック23を有している。本実施形態では、タイヤ軸方向に隣り合う一対のミドルブロック21の間に、タイヤ周方向に隣り合う一対のクラウンブロック23が設けられている。タイヤ周方向に隣り合うクラウンブロック23は、互いに逆向きに屈曲している。このようなクラウンブロック23によって、オフロードでのトラクション性能が向上する。
【0056】
各クラウンブロック23のタイヤ軸方向の長さL3とタイヤ周方向の長さL4との比L4/L3は、0.85~1.15が望ましい。このようなクラウンブロック23によって、タイヤ周方向の剛性とタイヤ軸方向のエッジ成分のバランスが良好となり、耐摩耗性能とオフロードでのトラクション性能がバランスよく向上する。
【0057】
各クラウンブロック23の端面には、階段状部24が形成されているのが望ましい。階段状部24は、クラウンブロック23のタイヤ周方向の両側に設けられた階段状部24a、階段状部24b及び階段状部24cと、クラウンブロック23のタイヤ軸方向の両側に設けられた階段状部24d及び階段状部24eとを有している。
【0058】
階段状部24a、24bは、クラウンブロック23のタイヤ周方向の一方に位置する端面に部分的に設けられている。階段状部24aは、クラウンブロック23の踏面からタイヤ周方向の外側に向って、1つの階段部を有している。階段状部24bは、クラウンブロック23の踏面からタイヤ周方向の外側に向って、2つの階段部を有している。階段状部24aと階段状部24bとは、タイヤ軸方向に連続して配されている。
【0059】
階段状部24cは、クラウンブロック23のタイヤ周方向の他方に位置する端面に部分的に設けられている。階段状部24cは、クラウンブロック23の踏面からタイヤ周方向の外側に向って、1つの階段部を有している。
【0060】
階段状部24dは、クラウンブロック23のタイヤ軸方向の一方側に位置する端面の中央部に部分的に設けられている。階段状部24eは、クラウンブロック23のタイヤ軸方向の他方側に位置する端面の中央部に部分的に設けられている。階段状部24d及び階段状部24eは、クラウンブロック23の踏面からタイヤ軸方向の外側に向って、1つの階段部を有している。
【0061】
階段状部24a、24b、24c、24d及び24eによってトラクション性能が向上する。
【0062】
図1、2に示されるように、ミドルブロック21及びクラウンブロック23は、クラウン領域11をジグザグ状に延びるクラウン溝35、36、37等によって区分される。これにより、クラウン領域11のランド比は、上述のごとく40%~60%となる。
【0063】
図5は、ショルダー領域12を示している。ショルダー領域12には、トレッド接地端TEとショルダー主溝4とをつなぐ複数のショルダー横溝51及びショルダー横溝52が形成されている。また、ショルダー領域12には、トレッド接地端TEからタイヤ軸方向の内方に向って延び、ショルダー領域12内に内端を有するショルダー横溝53及びショルダー横溝53の溝底に形成された溝底サイプ54等が形成されている。溝底サイプ54は、ショルダー主溝4まで延伸されている。これにより、ショルダー領域12のランド比は、上述のごとく40%~60%となる。
【0064】
以上、本発明のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0065】
図1の基本パターンを有するサイズ:35×12.50R20LTのタイヤが表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤの耐摩耗性能及びトラクション性能がテストされた。ミドル横溝の深さは、14.6mm、浅溝の深さは、7.3mm、溝底サイプの深さは、3.7mmである。テスト方法は、以下の通りである。
【0066】
<耐摩耗性能>
リム:20×10Jに組み込まれた各供試タイヤに内圧450kPaが充填され、排気量:3500ccの4WDピックアップトラック車両に装着され、舗装路面を10万km走行した後の溝深さ及び偏摩耗の有無が試験者によって総合的に評価された。結果は、実施例1を100とする指数で表され、数値が大きい程、耐摩耗性能に優れていることを示す。
【0067】
<トラクション性能>
リム:20×10Jに組み込まれた各供試タイヤに内圧450kPaが充填され、上記車両に装着され、砂地、泥地路面を各100km走行し、急加速時のフィーリングが試験者の官能によって評価された。結果は、実施例1を100とする評点で表され、数値が大きい程、トラクション性能に優れていることを示す。
【0068】
【0069】
表1から明らかなように、実施例のタイヤは、比較例に比べて耐摩耗性能及びトラクション性能がバランスよく有意に向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0070】
2 :トレッド部
4 :ショルダー主溝
11 :クラウン領域
12 :ショルダー領域
21 :ミドルブロック
22 :階段状部
23 :クラウンブロック
31 :ミドル横溝
32 :浅溝
33 :溝底サイプ
C :タイヤ赤道
TE :トレッド接地端
TW :トレッド接地幅
W :溝幅