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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】光学測定器
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018219009
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2020085615
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 明信
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信二
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-146539(JP,A)
【文献】特開2017-156166(JP,A)
【文献】特開2016-173265(JP,A)
【文献】特開2017-219857(JP,A)
【文献】国際公開第2011/121896(WO,A1)
【文献】特開平11-183386(JP,A)
【文献】特表2005-526238(JP,A)
【文献】特開2013-238611(JP,A)
【文献】特開2002-026376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0020413(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62 - G01N 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に配置され、試料ケースに収容された測定試料に励起光を照射する光源ユニットと、
前記筐体内に配置され、前記励起光が照射された前記測定試料から放出される観測光を測定する受光ユニットと、を備え、
前記光源ユニットは、
前記励起光である紫外光を放出するLED光源と、
前記LED光源から放出される光を集光する集光ユニットと、
前記集光ユニットにより集光された光を前記測定試料へ導光する第1の導光路および当該第1の導光路を包囲する第1の遮光部材を有する第1の導光ユニットと、を備え、
前記受光ユニットは、
前記観測光を測定する受光センサと、
前記測定試料から放出される光を前記受光センサへ導光する第2の導光路および当該第2の導光路を包囲する第2の遮光部材を有する第2の導光ユニットと、を備え、
前記光源ユニットの光軸と前記受光ユニットの光軸とは所定の角度をなし、両光軸が平行ではないことを特徴とする光学測定器。
【請求項2】
前記励起光と前記観測光とは異なる波長を有し、
前記光源ユニットは、
前記LED光源から放出される光のうち、少なくとも前記観測光の波長と同じ波長成分を遮断し、かつ前記励起光を透過する第1のフィルタ部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光学測定器。
【請求項3】
前記第1のフィルタ部は、
前記第1の導光ユニットの光出射側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の光学測定器。
【請求項4】
前記励起光と前記観測光とは異なる波長を有し、
前記受光ユニットは、
前記測定試料から放出される光のうち、少なくとも前記励起光の波長と同じ波長成分を遮断し、かつ前記観測光を透過する第2のフィルタ部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光学測定器。
【請求項5】
前記第2のフィルタ部は、
前記第2の導光ユニットの光入射側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の光学測定器。
【請求項6】
前記所定の角度は、前記光源ユニットから放出される励起光が前記受光ユニットの前記第2の導光路に入射しない角度であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光学測定器。
【請求項7】
前記所定の角度は、90度以上170度以下であることを特徴とする請求項6に記載の光学測定器。
【請求項8】
前記第2の導光路は、前記観測光に対して透明な樹脂からなり、
前記第2の遮光部材は、光吸収性材料である顔料を含有し、前記透明な樹脂と同じ材質の樹脂からなる顔料含有樹脂であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光学測定器。
【請求項9】
前記第1の導光路は、空洞であり、
前記第1の遮光部材は、光吸収性材料である顔料を含有する樹脂からなる顔料含有樹脂であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光学測定器。
【請求項10】
前記集光ユニットは、光入射側から順に半球レンズ、ボールレンズが配置されてなることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の光学測定器。
【請求項11】
前記光源ユニットの光軸上に、前記光源ユニットから放出され前記試料ケースを透過した前記励起光が入射される光ダンパー部をさらに備え、
前記光ダンパー部は、入射された前記励起光を複数の反射面の間で多重反射させて減衰させる空間を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の光学測定器。
【請求項12】
前記LED光源から放出される光が通過する光路の少なくとも一部は、石英ガラスおよび高純度透明シリコーンの少なくとも一方により構成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の光学測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で高性能な測定が可能な光学測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばPOCT(Point Of Care Test)のように、分析が必要な現場において、検査時間が短く、かつ高精度な評価分析が可能な小型かつ携帯可能な光学測定器に関する要請が高まっている。また、特にそのような光学測定器を用いて、吸光度法や蛍光光度法(例えば、レーザ誘起蛍光法(Laser Induced Fluorescence:LIF))といった光学測定法を用いた光学測定を分析現場で行うことの需要は大きい。
LIFは、計測対象である原子や分子の共鳴遷移を利用して励起準位に合致した(波長をチューニングした)レーザ光を照射して上記計測対象を励起し、それによって引き起こされる発光(蛍光)を測定する手法である。蛍光の強度から測定対象の濃度が算定され、蛍光のスペクトル分布から測定対象の温度が算定される。
【0003】
このようなLIF装置として、例えば特許文献1に記載の技術がある。このLIF装置は、光源から放出される励起光や、測定試料から放出される観測光が通過する光路の少なくとも一部を、励起光、観測光に対して透明な樹脂(シリコーン樹脂)から構成し、当該光路を、光吸収性材料(カーボンブラック等の顔料)を含有する顔料含有樹脂により包囲した構造を有する。ここで、上記透明な樹脂と顔料含有樹脂との材質を同じにすることにより、以下のような利点が得られる。
【0004】
まず、両樹脂の界面での反射および散乱が抑制される。次に、顔料含有樹脂に入射した迷光が当該樹脂により吸収されて導光路には殆ど戻らず、迷光の複雑な多重反射がほとんど発生しない。よって、光学系を複雑な多重反射に対応した構成とする必要がなく、光学系の小型、簡便化が図れる。結果として、装置自体も小型化することができる。以上のようなシリコーン樹脂で構築した光学系の技術を、SOT(Silicone Optical Technologies)と呼称する。
このようなSOT構造の光路を有する光学測定器によれば、光源から放出される光の反射光や散乱光といった迷光が、試料から放出される観測光を測定するための測定器へ入射されることを抑制することが可能である。したがって、POCTの要請に対応可能な小型で携帯が容易であり、簡便で高速、高性能な測定が可能な光学測定器を提供することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5665811号公報
【文献】特開2016-191707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の技術では、レーザ光源として、波長532nmのレーザビームを放出するグリーンレーザ装置を用いている。また、試料としては、抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドとを備え、抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドのいずれか一方が蛍光色素により標識されたキットを用いている。
一方で、例えばDNA検出用蛍光試薬として知られるエチジウムブロマイドは、紫外光(UV光:例えば、300~350nm)により励起される。
また、例えば特許文献2に記載されているように、腎機能障害時に上昇する血中インドキシル硫酸濃度を測定するためには、励起波長を260~300nmとした光学測定が行われる。
【0007】
このように、紫外光光源を用いた光学測定器の需要がある。紫外光光源としては、UV-LD(Laser Diode)やUV-LED(Light Emitting Diode)が挙げられるが、UV-LDは、比較的大型で高価である。そのため、試料に励起光を照射するための紫外光光源としては、小型で比較的安価なUV-LEDを用いることが望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、紫外光を放出するLED光源を用いた小型で高感度な測定が可能な光学測定器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る光学測定器の一態様は、筐体と、前記筐体内に配置され、試料ケースに収容された測定試料に励起光を照射する光源ユニットと、前記筐体内に配置され、前記励起光が照射された前記測定試料から放出される観測光を測定する受光ユニットと、を備え、前記光源ユニットは、前記励起光である紫外光を放出するLED光源と、前記LED光源から放出される光を集光する集光ユニットと、前記集光ユニットにより集光された光を前記測定試料へ導光する第1の導光路および当該第1の導光路を包囲する第1の遮光部材を有する第1の導光ユニットと、を備え、前記受光ユニットは、前記観測光を測定する受光センサと、前記測定試料から放出される光を前記受光センサへ導光する第2の導光路および当該第2の導光路を包囲する第2の遮光部材を有する第2の導光ユニットと、を備え、前記光源ユニットの光軸と前記受光ユニットの光軸とは所定の角度をなし、両光軸が平行ではない。
【0010】
このように、光学測定器は、LED光源から放出される拡散光を集光して測定試料へ導く構成を有するので、UV光が進行する光路を絞って当該UV光を測定試料へ照射することができる。そのため、LED光源から放出されるUV光が試料ケース以外の広範囲に照射されることを抑制し、UV光による2次的な発光(自家蛍光)を抑制することができる。また、光学測定器は、光源ユニットの光軸と受光ユニットの光軸とが所定の角度をなし、両光軸が平行とならないように、光源ユニットと受光ユニットとが配置された構成を有する。そのため、光源ユニットから放出される励起光が、直接受光ユニットに入射することを抑制することができる。
したがって、LED光源から放出されるUV光や、当該UV光による2次的な発光がノイズ光となって光測定へ影響を及ぼすことを抑制することができ、高感度な光測定が可能となる。
【0011】
また、上記の光学測定器において、前記励起光と前記観測光とは異なる波長を有し、前記光源ユニットは、前記LED光源から放出される光のうち、少なくとも前記観測光の波長と同じ波長成分を遮断し、かつ前記励起光を透過する第1のフィルタ部をさらに備えてもよい。
この場合、スペクトル幅の広いLED光源を使用した場合であっても、適切に所望の励起光波長の光を取り出して測定試料に照射することができる。つまり、LED光源が、励起光波長のみならず、観測光波長と同じ波長の光も放出している場合であっても、この観測光波長と同じ波長の光がノイズ光となって光測定へ影響を及ぼすことを抑制し、高感度な光測定が可能となる。
【0012】
さらに、上記の光学測定器において、前記第1のフィルタ部は、前記第1の導光ユニットの光出射側に配置されていてもよい。
この場合、LED光源から試料ケースまでのUV光が通過する光路において当該UV光により発生した2次的発光を、第1のフィルタ部によって適切に遮断することができる。
【0013】
また、上記の光学測定器において、前記励起光と前記観測光とは異なる波長を有し、前記受光ユニットは、前記測定試料から放出される光のうち、少なくとも前記励起光の波長と同じ波長成分を遮断し、かつ前記観測光を透過する第2のフィルタ部をさらに備えてもよい。
この場合、LED光源から放出されるUV光が迷光として受光ユニットに入射されてしまった場合であっても、当該迷光が受光センサに到達することを回避することができる。このように、LED光源から放出されるUV光がノイズ光となって光測定へ影響を及ぼすことを抑制し、高感度な光測定が可能となる。
【0014】
さらに、上記の光学測定器において、前記第2のフィルタ部は、前記第2の導光ユニットの光入射側に配置されていてもよい。
この場合、第2の導光ユニットの光入射側でUV光を遮断することができる。したがって、第2のフィルタ部以降の第2の導光路を含む受光センサまでの光路において、UV光による2次的な発光を抑制することができる。
【0015】
また、上記の光学測定器において、前記所定の角度は、前記光源ユニットから放出される励起光が前記受光ユニットの前記第2の導光路に入射しない角度とすることができる。この場合、光源ユニットから放出される励起光がノイズ光となって光測定に影響を及ぼすことを適切に抑制することができる。
さらに、上記の光学測定器において、前記所定の角度は、90度以上170度以下とすることができる。このように、上記角度を170度以下とすることで、光源ユニットから放出される励起光が、直接受光ユニットの第2の導光路に入射しないようにすることができる。また、上記角度を90度以上とすることで、光路長を短く維持しつつ、第1の導光ユニットと第2の導光ユニットとの物理的な干渉を回避することができる。
【0016】
また、上記の光学測定器において、前記第2の導光路は、前記観測光に対して透明な樹脂からなり、前記第2の遮光部材は、光吸収性材料である顔料を含有し、前記透明な樹脂と同じ材質の樹脂からなる顔料含有樹脂であってよい。
このように、第2の導光路を、外光や散乱光を吸収可能な顔料含有樹脂により包囲することで、外光や散乱光等が迷光(ノイズ光)となって受光センサに入射されることを抑制することができる。そのため、当該迷光による測定誤差を低減することができ、高精度な測定が可能となる。
【0017】
さらにまた、上記の光学測定器において、前記第1の導光路は、空洞であり、前記第1の遮光部材は、光吸収性材料である顔料を含有する樹脂からなる顔料含有樹脂であってよい。
このように、UV光を試料ケースへ導く第1の導光路を空洞とすることで、第1の導光路においてUV光による2次的な発光(自家蛍光)を抑制することができる。したがって、上記自家蛍光を抑制するために、例えば第1の導光路を高価な高純度透明シリコーンなどにより充填する必要がなく、コストを削減することができる。
【0018】
また、上記の光学測定器において、前記集光ユニットは、光入射側から順に半球レンズ、ボールレンズが配置されていてもよい。この場合、拡散光であるLED光源からの放出光を適切に集光し、第1の導光ユニットへ入射させることができる。
【0019】
さらに、上記の光学測定器は、前記光源ユニットの光軸上に、前記光源ユニットから放出され前記試料ケースを透過した前記励起光が入射される光ダンパー部をさらに備え、前記光ダンパー部は、入射された前記励起光を複数の反射面の間で多重反射させて減衰させる空間を有していてもよい。
この場合、試料ケースを透過したUV光を適切に減衰させることができ、当該UV光が迷光となって受光ユニットに入射することを防止することができる。
【0020】
また、上記の光学測定器において、前記LED光源から放出される光が通過する光路の少なくとも一部は、石英ガラスおよび高純度透明シリコーンの少なくとも一方により構成されていてもよい。
石英ガラスや高純度透明シリコーンは、UV光が通過する際に自家蛍光の発生が小さい材料である。このような材料によりUV光が通過する光路の少なくとも一部を構成することにより、上記自家蛍光の発生を抑制し、受光センサに入射しうるノイズ光を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光学測定器は、紫外光を放出するLED光源を用いた小型で高感度な測定が可能な光学測定器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態における光学測定器の全体構成を示す図である。
図2】導光路に侵入する外光について説明する図である。
図3】本実施形態における光学測定器の別の例を示す図である。
図4】従来の光学測定器の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における光学測定器100の全体構成を示す図である。
本実施形態における光学測定器100は、測定試料へ紫外光(励起光)を照射し、当該励起光が照射された測定試料から放出される観測光(蛍光)を測定する光誘起蛍光測定器である。この光学測定器100は、測定試料に紫外光を照射することで当該測定試料を励起し、それによって引き起こされる蛍光の度合いを測定することで、測定試料の物理的性質を検出する装置である。
本実施形態における光学測定器100は、図1に示すように、光源ユニット110と、受光ユニット120と、試料ケース保持筐体130と、を備える。試料ケース200は、測定試料210を収容し、試料ケース保持筐体130によって着脱可能に保持される。
【0024】
(光源ユニット)
光源ユニット110は、第1の筐体111内に配置され、試料ケース200に収容された測定試料210に励起光を照射する。光源ユニット110は、LED光源112と、集光ユニット113と、第1の導光ユニット114と、第1のフィルタ部115と、を備える。第1の導光ユニット114は、第1の導光路114aと、第1の導光路114aを包囲する第1の遮光部材114bと、を備える。
第1の筐体111は、LED光源112、集光ユニット113、第1の導光ユニット114および第1のフィルタ部115を内包する。
LED光源112は、例えばピーク波長が340nmの紫外光(UV光)を放出する。このLED光源112は、放熱性を確保するために、例えばアルミニウム製の基板上に実装することができる。
【0025】
集光ユニット113は、LED光源112の光放出側に配置される。集光ユニット113は、例えば、LED光源112に近い側から順に、半球レンズ113aおよびボールレンズ113bを備える。この集光ユニット113は、LED光源112から放出される拡散光を後述する第1の導光路114aに集光する機能を有する。
なお、集光ユニット113は、半球レンズ113aとボールレンズ113bとからなる構成に限定されるものではない。例えば、集光ユニット113は、複数の半球レンズを並べる構成であってもよい。つまり、集光ユニット113は、少なくとも1つの半球レンズを備えていればよい。
【0026】
第1のフィルタ部115は、集光ユニット113の光出射側に配置することができる。本実施形態では、第1のフィルタ部115は、集光ユニット113と第1の導光ユニット114の光入射側との間に配置される。第1のフィルタ部115は、測定試料210に照射すべき励起光波長の光を透過し、少なくとも測定試料210から放出される観測光波長と同じ波長の光の透過をカット(遮断)する機能を有する。
ここで、測定試料210から放出される観測光は、励起光波長よりも長い波長を有する光であり、例えば波長450nm~500nmの可視光とすることができる。
【0027】
LED光源112は、比較的広帯域のスペクトルの光を放出するので、励起光波長のみならず、測定試料から放出される観測光波長と同じ波長の光も微弱ながら放出する。第1のフィルタ部115は、LED光源112から放出される光に含まれる観測光波長と同じ波長の光を遮断することができる。
また、第1のフィルタ部115は、LED光源112から放出されるUV光により発生し得る2次的な発光(自家蛍光)の光も遮断することができる。ここで、2次的発光(自家蛍光)は、観測光波長と同等の波長を有し、光測定のノイズ光となり得る光である。この第1のフィルタ部115は、例えばLED光源112から放出されるUV光が集光ユニット114等を通過する際に自家蛍光が発生した場合であっても、当該自家蛍光を適切に遮断することができる。
【0028】
第1の導光ユニット114は、集光ユニット113の光出射側と、測定試料210が内部に収容された試料ケース200との間に配置される。本実施形態では、第1の導光ユニット114は、第1のフィルタ部115の光出射側と試料ケース200との間に配置される。
第1の導光ユニット114が備える第1の導光路114aは、LED光源112から放出される励起光を試料ケース200へ導光するための導光路である。第1の導光路114aは、LED光源112から放出され第1のフィルタ部115を透過する励起光に対して透明な樹脂(例えば、シリコーン樹脂)により構成される。
【0029】
また、この第1の導光路114aを包囲する第1の遮光部材114bは、顔料含有樹脂からなる。顔料含有樹脂は、光透過特性を有する樹脂(例えば、シリコーン樹脂)に、迷光を吸収する特性を有する顔料を含有したものである。上記顔料は、例えば、黒色顔料であるカーボンブラック等を採用することができる。
ここで、第1の導光路114aを構成する透明な樹脂と、顔料含有樹脂を含有する樹脂との材質を同等にすることが好ましい。このように構成すると、両樹脂の屈折率が同じになるため、両樹脂の界面での反射および散乱が抑制される。なお、顔料含有樹脂に入射した迷光は、その顔料含有樹脂で吸収され、第1の導光路114aにほとんど戻らず、迷光の複雑な多重反射がほとんど発生しない。
【0030】
図2に示すように、第1の導光路114aに侵入する外光等のノイズ光L11のうち、第1の導光路114aの光軸と同方向に進む成分は非常に少なく、大部分は、第1の導光路114aと顔料含有樹脂からなる第1の遮光部材114bとの界面から顔料含有樹脂へと入射し、顔料により吸収される。このとき、上記界面での反射は、第1の導光路114aを構成する透明な樹脂と、第1の遮光部材114bを構成する顔料含有樹脂との材質を同じとすることにより、発生しない。
なお、顔料に入射する外光やその散乱光は、当該顔料によりほぼ吸収されるが、わずかながら顔料表面で散乱される。しかしながら、その散乱光は、再度顔料含有樹脂からなる第1の遮光部材114bへと入射する場合が多く、顔料含有樹脂の顔料により吸収されることになる。
したがって、図2に示すように、第1の導光路114aから取り出される光の大部分は、第1の導光路114aの光軸に沿った直進光L1となる。
【0031】
ここで、第1の導光路114aは、顔料含有樹脂からなる第1の遮光部材114bに設けた空洞として構成することもできる。この場合、空洞よりなる第1の導光路114aと第1の遮光部材114bとの界面での反射や散乱が生じ、その反射光や散乱光の一部はノイズ光として第1の導光路114aの出射端から放出される。しかしながら、当該出射端から放出されるノイズ光はわずかであり、この場合においても、第1の導光路114aから取り出される光の大部分は、第1の導光路114aの光軸に沿った直進光となる。
【0032】
本実施形態における光源ユニット110によれば、複雑なコリメート用光学系を用いることなく、拡散光を放出するLED光源112から直進光を取り出し、測定試料210へ適切に照射することが可能となる。また、光源ユニット110は、測定試料210に照射すべき励起光波長を有し、少なくとも測定試料210から放出される観測光波長と同じ波長の光がカットされた光を直進光として取り出し、測定試料210へ照射することが可能となる。
【0033】
(試料ケース保持筐体)
試料ケース保持筐体130は、測定試料210が収容された試料ケース200を保持する。ここで、試料ケース200は、内部に測定試料210を収容するための容器であり、測定試料210を励起する励起光、および、測定試料210から放出される観測光が透過する光透過性材料により構成される。この試料ケース200は、UV光による自家蛍光の発生が小さい材料、例えば石英ガラスや高純度透明シリコーンにより構成することが好ましい。
試料ケース保持筐体130は、光源ユニット110の第1の筐体111と、受光ユニット120の後述する第2の筐体121とにそれぞれ接続される。この試料ケース保持筐体130は、光源ユニット110から放出される励起光が通過して試料ケース200に到達するための第1の開口部131と、試料ケース200から放出される観測光が通過して受光ユニット120の後述する第2の導光路123aに到達するための第2の開口部132と、を備える。
【0034】
(受光ユニット)
受光ユニット120は、第2の筐体121内に配置され、励起光が照射された測定試料210から放出される観測光を測定する。受光ユニット120は、受光センサ122と、第2の導光ユニット123と、第2のフィルタ部124と、を備える。第2の導光ユニット123は、第2の導光路123aと、第2の導光路123aを包囲する第2の遮光部材123bと、を備える。
第2の筐体121は、受光センサ122、第2の導光ユニット123および第2のフィルタ部124を内包する。
【0035】
受光センサ122は、測定試料210から放出される蛍光の度合いを測定する光学センサである。
受光ユニット120における試料ケース200と対向する側には、第2の導光ユニット123が設けられる。第2の導光ユニット123は、光源ユニット110が備える第1の導光ユニット114と同様の構成を有する。第2の導光ユニット123が備える第2の導光路123aは、試料ケース200に収容された測定試料210から放出される観測光を受光センサ122へと導光するための導光路である。第2の導光路123aは、測定試料210から放出される観測光に対して透明な樹脂(例えば、シリコーン樹脂)により構成される。また、この第2の導光路123aを包囲する第2の遮光部材123bは、第1の遮光部材114bと同様に顔料含有樹脂からなる。
【0036】
ここで、第2の導光路123aを構成する透明な樹脂と、顔料含有樹脂を含有する樹脂との材質を同等にすることが好ましい。
このように、第2の導光ユニット123は、上記した第1の導光ユニット114と同様の構成を有し、第1の導光ユニット114と同等の機能を有する。すなわち、第2の導光路123aから取り出される光の大部分は、第2の導光路123aの光軸に沿った直進光となる。
【0037】
第2のフィルタ部124は、受光センサ122の光入射側に配置することができる。本実施形態では、第2のフィルタ部124は、第2の導光ユニット123の光出射側に配置することができる。第2のフィルタ部124は、測定試料210から放出される観測光波長の光を透過し、少なくとも光源ユニット110から放出される励起光波長と同じ波長の光の透過をカット(遮断)する機能を有する。
【0038】
図1において、第1のフィルタ部115および第2のフィルタ部124は、干渉フィルタ部材により構成することができる。干渉フィルタ部材は、バンドパスフィルタにより構成されていてもよいし、ハイパスフィルタとローパスフィルタとの組み合わせにより構成されていてもよい。
例えば第2のフィルタ部124は、観測光の波長領域のみを透過するバンドパスフィルタとして構成することができる。また、第2のフィルタ部124は、観測光の波長領域の短波長側よりも長波長側の光を透過するハイパスフィルタとして構成される第1の干渉フィルタ部材と、観測光の波長領域の長波長側よりも短波長側の光を透過するローパスフィルタとして構成される第2の干渉フィルタ部材とを組み合わせて構成してもよい。ここで、上記したように、第2の導光ユニット123から放出される光は、ほぼ直進光である。そのため、入射角度依存性を有する干渉フィルタ部材により構成される第2のフィルタ部124は、効率良く波長選択機能を奏することが可能となる。
また、第1のフィルタ部115を構成する干渉フィルタは、石英ガラスにより構成することができる。これにより、干渉フィルタをUV光が通過する際に発生する自家蛍光を抑制することができ、ノイズ光の抑制効果が得られる。
【0039】
また、図1において、第1の筐体111、第2の筐体121および試料ケース保持筐体130は、例えばアルミニウムにより構成することができる。LED光源112は、発熱量が大きいため、各筐体をアルミニウムにより構成することで、ヒートシンク機能を持たせることができる。また、仮に各筐体が樹脂などにより構成されている場合、LED光源112から放出されるUV光によってUV劣化が起こり得る。各筐体をアルミニウムにより構成することで、当該UV劣化を抑制することができる。また、各筐体におけるUV光による自家蛍光の発生も抑制することができる。
以上のように、放熱性、耐UV性の観点から、各筐体はアルミニウムにより構成することが望ましい。なお、各筐体を構成する材料は、ジュラルミン等のアルミニウム合金であってもよい。ただし、各筐体を構成する材料は上記に限定されない。例えば放熱性の確保のためには、別途ヒートシンクを設けるようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、各筐体がそれぞれ別体である場合について説明するが、各筐体は一体形成されていてもよい。
【0040】
(光源ユニットと受光ユニットとの配置)
図1に示すように、光源ユニット110と受光ユニット120とは、光源ユニット110の第1の光軸(第1の導光路114aの光軸)116と、受光ユニット120の第2の光軸(第2の導光路123aの光軸)125とが、所定の角度θをなすように配置される。すなわち、第1の光軸116と第2の光軸125とは、平行ではない。
この所定の角度θは、光源ユニット110から第1の光軸116に沿って放出される直進光が、受光ユニット120の第2の導光路123a内に入射しないように設定された角度であり、例えば170度以下(図1では135度)とすることができる。
また、この所定の角度θは、90度以上であることが好ましい。角度θが90度よりも狭くしていくと、第1の導光ユニット114と第2の導光ユニット123とが互いに干渉してしまう。当該干渉を回避するためには、第1の導光ユニット114と試料ケース200との距離、および第2の導光ユニット123と試料ケース200との距離をそれぞれ長くとる必要があり、光路長が長くなる。そのため、装置の大型化を招く。
したがって、上記所定の角度θは、90度以上170度以下であることが好ましい。
【0041】
光源ユニット110から放出される光は、比較的光強度は大きいが、上述したように直進光である。よって、第1の光軸116と第2の光軸125とがなす角度が上記の角度θとなるように光源ユニット110と受光ユニット120とを配置することで、容易に光源ユニット110からの直進光が受光ユニット120の第2の導光路123aに入射することを著しく低減することが可能となる。
つまり、受光ユニット120の第2の導光路123aを通過する光は、ほぼ測定試料210から放出される観測光となる。したがって、精度のよい蛍光測定を行うことが可能となる。
【0042】
以上のように光源ユニット110と受光ユニット120とを配置するために、光源ユニット110の第1の筐体111、受光ユニット120の第2の筐体121および試料ケース保持筐体130は、例えば以下のように構成される。
図1に示すように、第1の筐体111の光出射側の面は平面を構成し、当該平面に第1の導光ユニット114の光出射側の平面が含まれる。また、第2の筐体121の光入射側の面も平面を構成し、当該平面に第2の導光ユニット123の光入射側の平面が含まれる。
試料ケース保持筐体130は、第1の開口部131が形成され、光源ユニット110から放出される光(励起光)が入射される光入射側平面133と、第2の開口部132が形成され、測定試料210から放出される光(観測光)が出射される光出射側平面134と、を有する。ここで、試料ケース保持筐体130の光入射側平面133と光出射側平面134とのなす角度は、(180-θ)度である。
【0043】
そして、試料ケース保持筐体130の光入射側平面133と光源ユニット110の光出射側平面とを接触させ、かつ、試料ケース保持筐体130の光出射側平面134と光源ユニット120の光入射側平面とを接触させて各筐体が配置される。これにより、第1の光軸116と第2の光軸125とが所定の角度θをなし、両光軸は平行にはならない。
【0044】
なお、試料ケース保持筐体130の第1の開口部131は、試料ケース保持筐体130の光入射側平面133と光源ユニット110の光出射側平面とを接触させて配置した際に、試料ケース保持筐体130の第1の開口部131の光軸と第1の光軸116とがほぼ一致する位置に設けられている。同様に、試料ケース保持筐体130の第2の開口部132は、試料ケース保持筐体130の光出射側平面134と受光ユニット120の光入射側平面とを接触させて配置した際に、試料ケース保持筐体130の第2の開口部132の光軸と第2の光軸125とがほぼ一致する位置に設けられている。
【0045】
また、試料ケース保持筐体130は、光源ユニット110の光軸116上に、光源ユニット110から放出されて第1の光軸116上を直進し、試料ケース200を透過した励起光が入射される光ダンパー部135を備えてもよい。この光ダンパー部135は、光が入射する光ダンパー部空間を有し、当該光ダンパー部空間を構成する面が、入射した光を多重反射させて減衰させるように構成されている。
具体的には、光ダンパー部135の内表面を、入射光を散乱させる複数の反射面により構成される散乱面とし、当該散乱面を黒アルマイト処理するなどにより黒色にしておくことにより、散乱光を徐々に減衰させる。ここで、光ダンパー部空間を構成する面には、光源ユニット110から直進する励起光の進行方向に対して直交する面が存在しないようにする。このように構成することで、入射光の正反射成分が試料ケース200に戻らないようにすることができる。
この光ダンパー部135を試料ケース保持筐体130に設けることにより、光源ユニット110から放出され試料ケース200を透過した直進光が、迷光となって受光ユニット120の第2の導光路123aに入射してしまうことを抑制することが可能となる。
【0046】
以下、従来の光学測定器(LIF装置)の構成例について、図4を参照しながら説明する。
図4に示すLIF装置1000は、レーザ光源1103、測定試料を保持する試料ケース1105、レンズや光学フィルタ等からなる蛍光収集光学系1107、光電子増倍管などの蛍光測定器1109を含む。
LIF装置1000は、SOT構造の光学系を採用しており、試料ケース1105に保持される測定試料から放出される観測光(蛍光)に透明なPDMS等の透明樹脂1113が少なくとも一部に充填された導光路と、当該導光路を包囲する顔料含有樹脂1111と、を有する。試料ケース1105および蛍光収集光学系1107は、透明樹脂1113に埋設される。
【0047】
上記光学系における蛍光収集光学系1107は、測定試料から放出される観測光を蛍光測定器(光学センサ)1109まで導光する。
蛍光収集光学系1107は、ノッチフィルタ(1119,1121)、第1のレンズ1115、色ガラスフィルタ(1123,1125,1127)、第2のレンズ1117を有する。
ここで、上記ノッチフィルタは、励起光の迷光、試料ケース1105からの自家蛍光、透明樹脂1113を励起光が通過するときに放出されるラマン光といったノイズ光を低減し、観測光を透過させるために配置される。特に、観測光以外の上記ノイズ光は、第1のレンズ1115により平行光(入射角0°)となり、ノッチフィルタ1121によって効果的に減衰される。また、上記色ガラスフィルタは、ノッチフィルタ1121を僅かに通過した上記ノイズ光を吸収し、観測光を通過させるために配置される。
また、樹脂1111は、上記ノイズ光を吸収する波長特性を有する顔料をほぼ一様に含有している。
なお、ノイズ光の強度に応じて、ノッチフィルタ1119は省略することができる。また、色ガラスフィルタの枚数を1枚とすることもできる。
【0048】
本発明者らが図4に示すレーザ光源1103に替えてUV-LEDを採用し、図4と同等の光学測定器(光誘起蛍光測定器)を試作したところ、以下のような作用が生じることが判明した。
図4に示す構成によれば、光源(UV-LED)から放出されたUV光が試料ケース1105に照射されるまでの光路には、透明樹脂が充填されることになる。本発明者らは、透明樹脂としてPDMSを採用し、複数の樹脂メーカー製のPDMSにてUV-LEDから放出されるUV光を通過させてみた。その結果、あるメーカー製のPDMSの場合、PDMSより2次的な発光(自家蛍光)が顕著に観測された。
【0049】
UV-LEDから放出される光は、UV-LDから放出される光と異なり拡散光であるので、PDMS光路の比較的広い領域を進行する。そのため、この2次的な発光の発光領域は広範囲となり、更に強度も比較的大きい。
このUV光により発生する自家蛍光は、迷光としてノッチフィルタ1119に入射する。しかしながら、この自家蛍光の波長は、測定試料から放出される観測光(蛍光)の波長と重なるので、ノッチフィルタ1119やその後段の色ガラスフィルタ等では自家蛍光をカットすることができない。そのため、当該自家蛍光は、ノイズ光として蛍光測定器1109に到達し、測定結果に悪影響を及ぼしてしまう。
【0050】
これに対して、本実施形態における光学測定器100の光源ユニット110は、LED光源112から放出される光を集光する集光ユニット113と、集光ユニット113により集光された光を測定試料210へ導光する第1の導光ユニット114を、を備える。
このように、LED光源112から放出される拡散光を集光して測定試料210へ導くので、UV光が進行する光路を絞ることができる。そのため、LED光源112から放出されるUV光が広範囲に照射されることを抑制し、UV光による2次的な発光(自家蛍光)を抑制することができる。
ここで、集光ユニット113は、光入射側から順に半球レンズ113a、ボールレンズ113bが配置された構成とすることができる。この場合、拡散光であるLED光源112からの放出光を適切に集光することができる。また、集光ユニット113を構成する各レンズは、石英レンズとすることができる。この場合、集光ユニット113をLED光源112から放出されるUV光が進行する際に発生する自家蛍光を抑制することができ、ノイズ光の抑制効果が得られる。
【0051】
また、光学測定器100は、光源ユニット110の第1の光軸116と、受光ユニット120の第2の光軸125とが所定の角度θをなし、両光軸が平行とならないように、光源ユニット110と受光ユニット120とが配置された構成を有する。そのため、光源ユニット110から放出される励起光が、直接受光ユニット120に入射されることを抑制することができ、当該励起光の光測定への影響を抑制することができる。
このように、LED光源から放出されるUV光や、当該UV光による2次的な発光がノイズ光となって光測定へ影響を及ぼすことを抑制することができ、高感度な光測定が可能となる。
【0052】
なお、光学測定器の光源としてレーザ光源を用いた場合、レーザビームの進行方向に対して真横(90度方向)から観測光を測定した方が、観測光放出領域を光軸方向から有効に臨むことができるので、当該観測光の光強度が大きく測定感度が高い。つまり、図4に示すように、測定試料からの観測光(蛍光)を導光する導光路は、光源から試料ケースへ向かう光路に対して90度に配置することが望ましい。
これに対して、本実施形態における光学測定器100は、光源としてLED光源を用いている。LED光源は拡散光を放出するため、LED光源から放出される光を集光して試料ケースに照射したとしても、試料ケース全体に光が照射され、測定試料から放出される蛍光の強度は試料ケースのどの方向から測定しても同等となる。
したがって、測定試料からの観測光(蛍光)を導光する第2の導光路123aを、光源からの励起光を試料ケースへ導光する第1の導光路114aに対して90度に配置しなくても、即ち、第1の光軸116と第2の光軸125とのなす角度θが90度でなくても、高感度な光測定が可能である。
【0053】
また、光学測定器100の光源ユニット110は、LED光源112から放出される光のうち、少なくとも観測光の波長と同じ波長成分を遮断し、かつ励起光を透過する第1のフィルタ部115をさらに備えることができる。
第1のフィルタ部115を配置することにより、LEDのようにスペクトル幅の広い光源を使用した場合であっても、適切に所望の励起光波長の光を取り出して測定試料210に照射することができる。また、LED光源112から放出されるUV光が通過する光路において、UV光により観測光波長と同じ波長の自家蛍光が発生した場合であっても、当該自家蛍光を遮断することができる。また、第1のフィルタ部115を石英ガラスにより構成される干渉フィルタとすることで、第1のフィルタ部115をUV光が通過した際に発生する自家蛍光を抑制することができる。
したがって、ノイズ光の影響を抑制し、光測定精度を向上させることができる。
【0054】
さらに、光学測定器100の受光ユニット120は、試料ケース200に収容される測定試料210から放出される光のうち、少なくとも励起光の波長と同じ波長成分を遮断し、かつ観測光を透過する第2のフィルタ部124をさらに備えることができる。
第2のフィルタ部124を配置することにより、LED光源112から放出されるUV光が迷光として受光ユニット120に入射されてしまった場合であっても、当該迷光が受光センサ122に到達することを抑制することができる。また、受光ユニット120に入射されたUV光をカットすることができるので、受光ユニット120内においてUV光により自家蛍光が発生することを抑制することができる。
【0055】
また、光学測定器100は、SOT構造の光路を有することができる。つまり、第1の導光ユニット114の第1の導光路114aは、励起光に対して透明な樹脂からなり、第1の遮光部材114bは、光吸収性材料である顔料を含有し、第1の導光路114aを構成する透明な樹脂と同じ材質の樹脂からなる顔料含有樹脂とすることができる。また、第2の導光ユニット123の第2の導光路123aは、観測光に対して透明な樹脂からなり、第2の遮光部材123bは、光吸収性材料である顔料を含有し、第2の導光路123aを構成する透明な樹脂と同じ材質の樹脂からなる顔料含有樹脂とすることができる。
このように、SOT構造の光路を有することで、簡便な構成でLED光源112から放出される光の反射光や散乱光といった迷光が受光センサ122へ入射されることを抑制することができる。つまり、小型で高感度な光測定が可能となる。
【0056】
ここで、第1の導光ユニット114の第1の導光路114aは、空洞とすることもできる。第1の導光路114aにシリコーン樹脂を充填した場合、当該シリコーン樹脂が、例えば高純度透明シリコーンでない場合には、自家蛍光が顕著に発生するおそれがある。第1の導光路114aを空洞にすることで、当該第1の導光路114aにおいて自家蛍光が発生することを抑制することができる。
【0057】
また、光学測定器100は、光源ユニット110の光軸上に、光源ユニット110から放出され試料ケース200を透過した励起光が入射される光ダンパー部135をさらに備えることができる。ここで、光ダンパー部135は、入射した励起光を複数の反射面の間で多重反射させて減衰させる空間を有することができる。
これにより、試料ケース200を透過したUV光を適切に減衰させることができ、当該UV光が迷光となって受光ユニット120に入射することを防止することができる。
【0058】
さらに、試料ケース200は、石英ガラスもしくは高純度透明シリコーンより構成することができる。これにより、試料ケース200をUV光が通過した際の自家蛍光の発生を抑制することができる。
このように、LED光源112から放出される光が通過する光路(集光ユニット113、第1の導光路114a、第1のフィルタ部115、試料ケース200)の少なくとも一部は、石英ガラスおよび高純度透明シリコーンの少なくとも一方により構成することができる。また、上記光路を内包する筐体(第1の筐体111、第2の筐体121、試料ケース保持筐体130)は、アルミニウムやアルミニウム合金により構成することができる。これにより、光路等におけるUV光による2次的発光(自家蛍光)を適切に抑制することができる。
【0059】
以上のように、本実施形態における光学測定器100は、励起光であるUV光を適切に測定試料200に照射し、それによって引き起こされた蛍光だけを適切に受光センサ122で測定することができる。このように、本実施形態における光学測定器100は、拡散光を放出するUV-LED光源を用いて光路等における2次的発光(ノイズ光)が顕著に発生しうる場合においても、ノイズ光の影響を適切に抑制し、小型で高感度な測定が可能な光学測定器とすることができる。
【0060】
(変形例)
上記実施形態においては、第1のフィルタ部115を第1の導光ユニット114の光入射側に配置する場合について説明したが、図3に示すように、第1のフィルタ部115は、第1の導光ユニット114の光出射側に配置してもよい。
第1の導光路114aにシリコーン樹脂を充填する場合、当該シリコーン樹脂が高純度透明シリコーンでない場合には、第1の導光路114aを通過する励起光(UV光)によって自家蛍光が発生するおそれがある。第1のフィルタ部115を第1の導光ユニット114の光出射側に配置すれば、第1の導光路114aにおいて自家蛍光が発生した場合であっても、これを適切に遮断することができ、ノイズ光の光測定への影響を抑制することができる。換言すると、第1のフィルタ部115を第1の導光ユニット114の光出射側に配置すれば、第1の導光路114aに充填する樹脂を、自家蛍光の抑制のための高純度透明シリコーンとする必要がなく、その分のコストを削減することができる。
【0061】
また、上記実施形態においては、第2のフィルタ部124を第2の導光ユニット123の光出射側に配置する場合について説明したが、図3に示すように、第2のフィルタ部124は、第2の導光ユニット123の光入射側に配置してもよい。
第2のフィルタ部124を第2の導光ユニット123の光入射側に配置することで、第2の導光ユニット123の光入射側でUV光を遮断することができる。したがって、第2のフィルタ部124以降の第2の導光路123aを含む受光センサ122までの光路において、UV光による自家蛍光の発生を抑制することができる。このように、ノイズ光の抑制効果が得られる。
【0062】
さらに、上記実施形態においては、第1の光軸116と第2の光軸125とのなす角度θは、理論上は180度とすることも可能である。
この場合、光源ユニット110から放出されるUV光は、試料ケース200を透過して直接受光ユニット120へ入射される。そのため、この場合には光ダンパー部135を設ける必要はない。ただし、UV光が受光センサ122に到達する前に、UV光を光測定結果に影響のない程度までカットする必要があり、そのためには、第2のフィルタ部124として高精度で高価なフィルタ部材が必要となる。また、干渉フィルタは入射角依存性を有するため、入射角が0度とならないUV光については適切に遮断することができず、ノイズ光として受光センサ122に入射してしまう。そのため、UV光を干渉フィルタへ入射角0度で垂直入射させるためのコリメート用光学系を別途設ける等の対策を講じる必要がある。
したがって、例えば数μWのUV光であっても光測定結果に影響を及ぼすような高感度測定を行う光学測定器の場合には、角度θは、上述した実施形態のように光源ユニット110から放出されるUV光が受光ユニット120に入射しない角度とすることが好ましい。
【0063】
また、上記実施形態においては、光学測定器として光誘起蛍光測定器について説明したが、測定試料の濁度を測定する濁度測定器にも適用可能である。この場合、濁度測定器は、UV-LED光源から放出されるUV光を測定試料に照射し、UV光が照射された測定試料から放出される散乱光(UV光)を測定する。つまり、観測光は、測定試料から放出される散乱光となる。なお、この場合、図1に示す第1のフィルタ部115および第2のフィルタ部124は不要である。
【符号の説明】
【0064】
100…光学測定器、110…光源ユニット、111…第1の筐体、112…LED光源、113…集光ユニット、114…導光ユニット、115…第1のフィルタ部、116…第1の光軸、120…受光ユニット、121…第2の筐体、122…受光センサ、123…導光ユニット、124…第2のフィルタ、125…第2の光軸、130…試料ケース保持筐体、135…光ダンパー部、200…試料ケース、210…測定試料
図1
図2
図3
図4