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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】撮影窓の汚れ付着を防止する装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20230110BHJP
   G02B 27/00 20060101ALI20230110BHJP
   B08B 15/04 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
G01N21/84 Z
G02B27/00 A
B08B15/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018234449
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020094971
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】谷 奈緒美
(72)【発明者】
【氏名】小野田 繁
(72)【発明者】
【氏名】三宮 英士
(72)【発明者】
【氏名】本宮 翔平
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 翔太
【審査官】谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-133117(JP,U)
【文献】特開平11-231255(JP,A)
【文献】特開2011-002434(JP,A)
【文献】特公昭36-001539(JP,B1)
【文献】実開昭59-163845(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84ー21/958
G01J 1/00-1/60
F24F 9/00
G02B 27/00
B08B 15/00-04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されている鋼板の裏側の表面を撮影する、
前記鋼板の下側に位置した撮影装置の撮影窓の汚れ付着を防止する装置であって、
前記撮影装置の視野の部分は開口された開口部を備える、
前記撮影窓を覆うフードと、
前記フードと搬送される前記鋼板との間において、
前記開口部よりも前記鋼板の搬送方向の上流側に設置された、
前記搬送方向の上流側から下流側に向かってエアーを噴射するエアー噴射装置と、
前記開口部と前記エアー噴射装置との間に設置される遮蔽板と、
を備え、
前記エアーの噴射方向と前記搬送方向とがなす角度の範囲は5°以上35°以下であり、
前記遮蔽板は前記鋼板の幅方向に延伸しており、
前記遮蔽板の前記搬送方向の断面において、
前記遮蔽板の前記搬送方向の上流側の端部と前記搬送方向の下流側の端部とを結ぶ直線が、
前記搬送方向に対して上側に10°以上35°以下の角度で傾いている、
撮影窓の汚れ付着を防止する装置。
【請求項2】
前記遮蔽板の前記搬送方向の上流側の端部が前記フードに支持されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記遮蔽板が前記開口部の上方を覆うことがないように配置され、
前記遮蔽板の前記搬送方向の下流側の端部が、
前記フードの上方5mm以上50mm以下の位置に配置され、
かつ、
前記開口部から前記搬送方向の上流側に0mm以上50mm以下の位置に配置されている、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記撮影窓を覆う前記フードの内部において、
少なくとも1つの磁石が、
前記開口部よりも下側で、
前記開口部から前記搬送方向の上流側に設置されており、
少なくとも1つの磁石が、
前記開口部よりも下側で、
前記開口部から前記搬送方向の下流側に設置されている、
請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記開口部から前記搬送方向の上流側に設置された磁石の重心と、
前記開口部から前記搬送方向の下流側に設置された磁石の重心との距離が、
最も短い場合の磁石の組み合わせにおいて、
前記搬送方向の上流側に設置された磁石の前記搬送方向の下流側の面の極と、
前記搬送方向の下流側に設置された磁石の前記搬送方向の上流側の面の極とは、
互いに引き合う極の組み合わせであり、
前記開口部から前記搬送方向の上流側に設置された磁石の重心と、
前記開口部から前記搬送方向の下流側に設置された磁石の重心とを結ぶ直線が、
前記搬送方向に対して斜めになっている、
請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
噴射される前記エアーの圧力が3kgf/cm以上10kgf/cm以下であり、
噴射される前記エアーの風速が10m/秒以上30m/秒以下であり、
前記開口部の前記搬送方向の長さが10mm以上50mm以下である、
請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は撮影窓の汚れ付着を防止する装置を開示するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板の製造において、製品となる鋼板の品質を確保するために、撮影装置を用いて鋼板の表面を撮影し、取得した画像を解析する手法が多く用いられている。
【0003】
鋼板の撮影は製造工程の最終段階で行うことが一般的であり、撮影装置は鋼板の搬送路の上側及び下側に配置され、搬送される鋼板の表側及び裏側の表面を撮影する。
【0004】
鋼板の表面を撮影する際に重要な事項は、解析に適する鮮明な画像を取得することである。しかしながら、搬送される鋼板の下側に配置される撮影装置において、鋼板を搬送する際に生じる粉塵が撮影装置の撮影窓に堆積することにより、適切な画像が取得できない問題があった。
【0005】
粉塵は鋼板から粉末状の酸化鉄や鉄粉が剥がれ落ちたものであり、これらは一度空中に浮遊してから重力によって下側に舞い落ちる。そのため、粉塵は搬送される鋼板の下側に配置される撮影装置の撮影窓に堆積しやすい。撮影窓に粉塵が堆積すると、取得される画像の輝度が減少したり、取得される画像にノイズが生じたりするため、解析に適する鮮明な画像を取得することができない場合があった。
【0006】
このような問題に対し、特許文献1では、光学窓(撮影窓)の窓面に対して、所定の角度で上方に向かう、窓面のほぼ全領域にわたってカーテン状の空気流を噴射するエアーパージノズルが、窓面の前面に設けられている。このエアーパージノズルの噴射によって、窓面側から上方へ向かう空気流を発生させることができ、光学窓への汚れの付着を阻止できることが記載されている。また、特許文献2では、受光部を上に向けた光学機器を収納し、頂部に受光部へ光を導く透明体窓を有する容器に、透明体窓に磁力を及ぼす磁石を設けてなる光学機器の窓面汚れ除去装置が開示されており、これにより光学機器の窓面の汚れを除去することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-231255号公報
【文献】実開昭58-133117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
撮影装置の撮影窓が粉塵によって汚れた場合、解析に適する鮮明な画像を取得することが出来なくなる。また、撮影装置の撮影窓を清掃する必要があるが、清掃を行っている間は鋼板の製造ができなくなる。そのため、撮影窓の清掃回数の頻度を低くすることが生産活動上重要である。
特許文献1、2に記載の技術を用いることにより、搬送される鋼板の下側に配置される撮影装置の撮影窓に堆積する粉塵の量を低減することができるため、撮影窓の清掃回数を低減することができるが、鋼板の製造効率を向上させる観点からまだまだ改善の余地があった。
【0009】
そこで、本願では撮影装置の撮影窓の汚れ付着を防止する装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、撮影装置の視野の部分は開口された開口部を備える、撮影窓を覆うフードと、フードと搬送される鋼板との間に、鋼板の搬送方向の上流側に設置された、搬送方向の上流側から下流側に向かってエアーを噴射するエアー噴射装置と、開口部とエアー噴射装置との間に設置される遮蔽板と、を組み合わることにより、撮影窓の汚れ付着を抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本願は、上記課題を解決するための1つの手段として、
搬送されている鋼板の裏側の表面を撮影する、鋼板の下側に位置した撮影装置の撮影窓の汚れ付着を防止する装置であって、撮影装置の視野の部分は開口された開口部を備える、撮影窓を覆うフードと、フードと搬送される鋼板との間おいて、開口部よりも鋼板の搬送方向の上流側に設置された、搬送方向の上流側から下流側に向かってエアーを噴射するエアー噴射装置と、開口部とエアー噴射装置との間に設置される遮蔽板と、を備え、遮蔽板は鋼板の幅方向に延伸しており、遮蔽板の搬送方向の断面において、遮蔽板の搬送方向の上流側の端部と搬送方向の下流側の端部とを結ぶ直線が、搬送方向に対して上側に10°以上50°以下の角度で傾いている、撮影窓の汚れ付着を防止する装置、を開示する。
【0012】
上記装置は、遮蔽板の搬送方向の断面において、遮蔽板の搬送方向の上流側の端部と搬送方向の下流側の端部とを結ぶ直線が、搬送方向に対して上側に10°以上35°以下の角度で傾いていることが好ましい。また、遮蔽板の搬送方向の上流側の端部がフードに支持されていることが好ましい。さらに、遮蔽板が開口部の上方を覆うことがないように配置され、遮蔽板の搬送方向の下流側の端部が、フードの上方5mm以上50mm以下の位置に配置され、かつ、開口部から搬送方向の上流側に0mm以上50mm以下の位置に配置されていることが好ましい。
【0013】
また上記装置は、撮影窓を覆う前記フードの内部において、少なくとも1つの磁石が、開口部よりも下側で、開口部から搬送方向の上流側に設置されており、少なくとも1つの磁石が、開口部よりも下側で、開口部から搬送方向の下流側に設置されていることが好ましい。より好ましくは、開口部から搬送方向の上流側に設置された磁石の重心と、開口部から搬送方向の下流側に設置された磁石の重心との距離が、最も短い場合の磁石の組み合わせにおいて、搬送方向の上流側に設置された磁石の搬送方向の下流側の面の極と、搬送方向の下流側に設置された磁石の搬送方向の上流側の面の極とは、互いに引き合う極の組み合わせであり、開口部から搬送方向の上流側に設置された磁石の重心と、開口部から搬送方向の下流側に設置された磁石の重心とを結ぶ直線が、搬送方向に対して斜めになっていることである。
【0014】
さらに上記装置は、噴射されるエアーの圧力が3kgf/cm以上10kgf/cm以下であり、噴射されるエアーの風速が10m/秒以上30m/秒以下であり、開口部の前記搬送方向の長さが10mm以上50mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本開示の装置によれば、撮影窓の汚れ付着が抑制される。よって、鋼板の画像解析に適した画像を取得することができ、撮影窓の清掃の頻度も低減することができ、鋼板の生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】装置10を上方から観察した平面図である。
図2】装置10の搬送方向の断面図である。
図3】装置10の幅方向の断面図である。
図4】装置20の搬送方向の断面図である。
図5】装置20の幅方向の断面図である。
図6】磁石21、22の配列方式を説明する図である。
図7】搬送方向に対する磁石21、22の角度と磁界の強さとの関係を示す図である。
図8】実験1の結果を示すグラフである。
図9】実験2の結果を示すグラフである。
図10】実験3の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1図3は本開示の撮影窓の汚れ付着を防止する装置であって、第1実施形態である撮影窓の汚れ付着を防止する装置10(以下において「装置10」ということがある。)を説明するための図である。図1は撮影装置2及び装置10を上方から観察した平面図である。図2は撮影装置2及び装置10の搬送方向の断面図であり、詳しくは図1のII-IIに沿って切断したときの断面図である。図3は装置10の幅方向の断面図であり、詳しくは図2のIII-IIIに沿って切断したときの断面図である。なお、図2図3には、参考のため鋼板1、搬送方向及び幅方向を加えて示している。
図2図3に記載されているように、搬送されている鋼板1の下側に撮影装置2が配置されており、撮影装置2の上に装置10が配置されている。
【0018】
鋼板1は不図示の搬送ロールによって搬送されており、撮影装置2は搬送されている鋼板の裏側の表面を撮影する装置である。撮影装置2は撮影窓2a、撮影窓2aを上面に備えた筐体2b、筐体2bの内部に格納されたカメラである撮影装置本体2cを備えており、撮影装置本体2cは1次元又は2次元カメラなどを用いた光学的な方式が採用されている。そして、撮影装置本体2cによって撮影された鋼板1の裏側の表面が画像解析される。
【0019】
(装置10)
装置10はフード11、エアー噴射装置12、遮蔽板13を備え、これらによって撮影窓2aの汚れ付着を抑制している。
【0020】
ここで、以下において「搬送方向」とは搬送されている鋼板1の移動方向であり、「搬送方向の上流側」とは鋼板1の移動方向の上流側であり、「搬送方向の下流側」とは鋼板1の移動方向の下流側である。また、以下において「幅方向」とは鋼板1の幅方向である。なお、搬送方向と幅方向とは垂直である。
【0021】
図1においては、紙面上側から下側に向かう方向が搬送方向であり、紙面左右方向が幅方向である。図2においては、紙面右側から左側に向かう方向が搬送方法であり、紙面奥手前方向が幅方向である。図3においては、紙面奥側から手前側に向かう方向が搬送方向であり、紙面左右方向が幅方向である。
【0022】
(フード11)
フード11は、撮影装置2の視野の部分は開口された開口部11aを備え、撮影装置2の撮影窓2aを覆うフード状の構造物であり、撮影装置2の筐体2bの上面に配置される。図1図3では箱状のフード11を示したが、フード11の形状はこれに限定されない。また、フード11を構成する材料は特に限定されないが、金属材料からなることが好ましい。
【0023】
フード11は撮影窓2aを覆うことで撮影窓2aに汚れが付着することを抑制しつつ、撮影装置本体2cの視野となる範囲に開口部11aを設けることにより、撮影装置本体2cが鋼板1の裏側の表面を撮影することを可能としている。開口部11aから侵入する粉塵の汚れは、後述するようにエアー噴射装置12及び遮蔽板13によって抑制される。
【0024】
フード11の開口部11aの搬送方向の長さは10mm以上50mm以下であることが好ましい。開口部11aの搬送方向の長さが10mm未満であると、撮影装置2の視野を十分に確保することが難しく、開口部11aの搬送方向の長さが50mmを超えると、粉塵の汚れがフード11の内部に侵入し易くなり、撮影窓2aの汚れ付着抑制性能が低減する。開口部11aの幅方向の長さは撮影装置2の撮影窓2aの幅方向の長さに応じて、適宜設定することができる。
【0025】
(エアー噴射装置12)
エアー噴射装置12は、エアー噴射装置12を支える足12aを備えており、フード11と搬送される鋼板1との間において、開口部11aよりも搬送方向の上流側に設置される。エアー噴射装置12は搬送方向の上流側から下流側に向かってエアーを噴射する装置であり、これにより開口部11aから粉塵等の汚れ物質が侵入することを抑制している。すなわち、エアー噴射装置12を設置することにより撮影窓の汚れ付着抑制能力が向上する。
【0026】
ここで、「搬送方向の上流側から下流側に向かってエアーを噴射し」とは、搬送方向の上流側から下流側に向かう方向を成分として有するエアーを噴射することを意味する。具体的には、搬送方向に沿った方向だけでなく、搬送方向に対して斜め上方に向かう方向にエアーを噴射することも含み、さらに具体的には、エアーの噴射方向と搬送方向とがなす角度の範囲は0°以上90°未満である。
ただし、エアーの噴射角度の下限は、好ましくは5°以上であり、より好ましくは15°以上である。エアーの噴射角度の範囲の上限は、好ましくは45°以下であり、より好ましくは35°以下であり、更に好ましくは20°以下である。これにより、撮影窓の汚れ付着抑制能力がさらに向上する。
【0027】
エアー噴射装置から噴射されるエアーの圧力、風速は特に限定されないが、圧力は3kgf/cm以上10kgf/cm以下であることが好ましい。エアー圧力が上記の範囲にあることにより、より粉塵等の汚れ物質が開口部11aからフード11内部へ侵入し難くなる。
また、エアーの風速は10m/秒以上30m/秒以下であることが好ましい。エアーの風速が上記の範囲にあることにより、より粉塵等の汚れ物質が開口部11aからフード11内部へ侵入し難くなる。
【0028】
エアー噴射装置12は、図1図3に示しているように、開口部11aの上方を全て覆うエアーを噴射することができるように、幅方向に延伸した形状を有することが好ましい。また、開口部11aの上方を全て覆うエアーは、噴射位置によらず、風速や風量が一様で均一なエアー(カーテン状のエアー)であることが好ましい。これにより、噴射されるエアーにムラが無くなり、幅方向に均一なエアーが得られて、撮影窓の汚れ付着抑制能力がさらに向上する。
【0029】
(遮蔽板13)
遮蔽板13は、開口部11aとエアー噴射装置12との間に設置され、鋼板1の幅方向に延伸した形状を有している。また、遮蔽板13の搬送方向の断面形状は、図1図3に示した直線状であっても良いが、これに限定されず凹状又は凸状であっても良い。ただし、遮蔽板13の搬送方向の断面において、遮蔽板13の搬送方向の上流側の端部13aと搬送方向の下流側の端部13bとを結ぶ直線が、搬送方向に対して上側に10°以上50°以下の角度で傾いていることが必要である。好ましくは10°以上35°以下であり、より好ましくは15°以上35°以下であり、さらに好ましくは20°以上30°以下である。
【0030】
エアー噴射装置12が噴射するエアーに、エアー噴射装置12の後方の空気が巻き込まれる。巻き込まれる空気には撮影窓2aの汚れの元となる粉塵が含まれているため、巻き込まれる空気によって運ばれる粉塵が開口部11aへ侵入することを抑制することが重要である。巻き込まれる空気のうち、エアー噴射装置12の上方から巻き込まれる空気は、エアー噴射装置12から噴射されるエアーの上方を通るため、特に問題にはならない。一方で、エアー噴射装置12の下方から巻き込まれる空気は、エアー噴射装置12から噴射されるエアーの下方を通るため、下方から巻き込まれる空気に含まれる粉塵が開口部11aへ侵入する虞があった。
装置10ではこのような問題に対して、開口部11aとエアー噴射装置12との間に遮蔽板13を配置して、エアー噴射装置12の下方から巻き込まれる空気に含まれる粉塵が、開口部11aに侵入することを抑制している。
【0031】
遮蔽板13は搬送方向の上流側の端部13aがフード11に支持されていることが好ましい。これにより遮蔽板13とフード11との間に隙間が無くなるため、エアー噴射装置12の下方から巻き込まれる空気が遮蔽板13の下方を通ることを阻止し、下方から巻き込まれる空気に含まれる粉塵が開口部11aに侵入することを、さらに抑制することができる。遮蔽板13の端部13aをフード11に支持させる方法としては、特に限定されないが、接着剤や充填材又は釘や螺子等で遮蔽板13の端部13aとフード11とを固定することが挙げられる。
【0032】
また、遮蔽板13は開口部11aの上方を覆うことがないように配置されることが好ましい。撮影装置2の視野を妨げないためである。さらに、遮蔽板13の搬送方向の下流側の端部13bは、好ましくはフード11の上方5mm以上50mm以下の位置、より好ましくはフード11の上方5mm以上30mm以下の位置に配置される。また、端部13bは、開口部11aから搬送方向の上流側に、好ましくは0mm以上50mm以下の位置、より好ましくは0mm以上30mm以下に配置される。これにより、エアー噴射装置12の下方から巻き込まれる空気に含まれる粉塵が、開口部11aに侵入することをさらに抑制することができる。
【0033】
<第2実施形態>
図4図5は本開示の撮影窓の汚れ付着を防止する装置であって、第2実施形態である撮影窓の汚れ付着を防止する装置20(以下において「装置20」ということがある。)を説明するための図である。図4は装置20の鋼板1の搬送方向の断面図であり、図2に対応している。図5は装置20の鋼板1の幅方向の断面図であり、詳しくは図4のV-Vに沿って切断したときの断面図であり、図3に対応している。
【0034】
図4図5に記載されているとおり、装置20はフード11、エアー噴射装置12、遮蔽板13を備え、さらにフード11の内部に磁石21、22が配置されている。装置10と装置20との違いは、装置20にはフード11の内部に磁石21、22が配置されていることである。そこで、以下においては装置10から相違する構成のみ説明し、共通する構成については説明を省略する。
【0035】
(磁石21、22)
図4図5に記載されているように、撮影窓を覆うフード11の内部において、複数の磁石21が、開口部11aよりも下側で、開口部11aから搬送方向の上流側に設置されており、複数の磁石22が、開口部11aよりも下側で、開口部11aから搬送方向の下流側に設置されている。ただし、磁石21、22の数は複数に限定されず、少なくとも1つでよい。しかしながら、撮影窓の汚れ付着を抑制する観点から、図4図5に示したように磁石21、22は複数であることが好ましい。また、磁石21、22の強さも特に限定されないが0.4テスラ以上であるものを用いることが好ましい。
このように、磁石21、22をフードの内部に配置し、開口部11aからフード11内部に侵入する粉塵を磁石に吸着させることにより、撮影窓2aに付着する汚れを抑制することができる。
【0036】
磁石21、22はフード11内部に配置された金属板23を介して設置されており、幅方向に整列して配置されている。金属板に配置される磁石21、22の配列方式の例を図6(a)~図6(c)に示した。図6(a)~図6(c)は磁石21、22のみを抜き出して示した図であり、上方から観察した図である。図6(a)は磁石21、22が千鳥配置された図であり、図6(b)は磁石21、22が対向配置された図である。また、図6(c)は磁石21、22をそれぞれ1つ用いた場合の例である。
【0037】
ここで「千鳥配置」とは、開口部11aから搬送方向の上流側に設置された磁石21の重心と、開口部11aから搬送方向の下流側に設置された磁石22の重心との距離が、最も短い場合の磁石の組み合わせにおいて、搬送方向の上流側に設置された磁石21の搬送方向の下流側の面の極と、搬送方向の下流側に設置された磁石22の搬送方向の上流側の面の極とは、互いに引き合う極の組み合わせであり、開口部11aから搬送方向の上流側に設置された磁石21の重心と、開口部11aから搬送方向の下流側に設置された磁石22の重心とを結ぶ直線が、搬送方向に対して斜めになっている、ことを意味する。
一方で、「対向配置」とは、開口部11aから搬送方向の上流側に設置された磁石21の重心と、開口部11aから搬送方向の下流側に設置された磁石22の重心との距離が、最も短い場合の磁石の組み合わせにおいて、搬送方向の上流側に設置された磁石21の搬送方向の下流側の面の極と、搬送方向の下流側に設置された磁石22の搬送方向の上流側の面の極とは、互いに引き合う極の組み合わせであり、開口部11aから搬送方向の上流側に設置された磁石21の重心と、開口部11aから搬送方向の下流側に設置された磁石22の重心とを結ぶ直線が、搬送方向に平行になっている、ことを意味する。
また、以下において、「開口部11aから搬送方向の上流側に設置された磁石21の重心と、開口部11aから搬送方向の下流側に設置された磁石22の重心との距離が、最も短い場合の磁石の組み合わせ」をペアとなる磁石21、22ということがある。
【0038】
磁石21、22は配列方式によって、磁石21、22の間に生じる磁界に変化が生じる。図7に、磁石21の重心及び磁石22の重心を結ぶ直線と搬送方向とがなす角度と、磁石21、22間に発生する磁界の強さとの関係を示す。図7に示されているとおり、磁石21の重心及び磁石22の重心を結ぶ直線と搬送方向とがなす角度が0°のときが、磁石21、22間に生じる磁力が最も強くなり、角度が大きくなるにつれて磁力も減衰していくことが分かる。磁石21、22間に生じる磁界が強いほど、磁性を有する物質(粉塵等)を吸着する力も強い。
【0039】
よって、磁石21、22間に生じる磁界の強さのみを考慮すると、図6(b)、図6(c)はペアとなる磁石21、22がそれぞれ対向するように配置されているため、粉塵を吸着する力が強く、撮影窓2aの汚れ付着を抑制する観点から好ましいように考えられる。しかしながら、例えば、図6(b)に記載された対向配置では、対向する磁石21、22間においては強い磁力を有する磁界が発生するが、それ以外の部分では磁界が弱くなる虞があり、磁界の強さにムラが生じる。そのため、対向する磁石21、22間では粉塵を吸着する力が強いが、それ以外の箇所では粉塵を吸着する力が弱くなり、粉塵が撮影窓2aに堆積する虞がある。また、対向する磁石21、22間は粉塵を吸着する力が強いため、吸着された粉塵が磁石21、22間でつながり、対向する磁石21、22間を渡る粉塵の橋を形成してしまう虞がある。粉塵の橋が形成されると撮影装置2の視野を塞ぐため、撮影された画像において、視野がふさがれた部分の輝度が低下し、適切な画像取得が困難になる。図6(c)の場合は、磁石21、22はそれぞれ幅方向に延伸しているため、磁石21、22間に生じる磁界の強さは均一になる。しかしながら、幅方向に延伸した磁石を用いているため、対向する磁石21、22間を渡る粉塵の橋が搬送方向に形成するので、磁石21、22間に形成される粉塵の橋の長さは短くなり、少ない粉塵付着量で撮影装置2の視野を塞ぐ虞がある。よって、図6(b)や図6(c)の配列方式では、長期間の使用には適さない。
【0040】
一方で、図6(a)の配列方式は上記したように、磁石21の重心と磁石22の重心とを結ぶ直線が搬送方向に対して傾いているため、図6(b)、図6(c)に示した配列方式ほど磁石21、22間の磁界は強くないが、図6(b)の配列方式に比べて磁界にムラが少ない。また、図6(a)の配列方式では複数の磁石21、22を用いているため、図6(c)の配列方式よりも、磁石21、22間に形成される粉塵の橋の長さが長くなり、磁石が粉塵を吸着する量は多くなる。よって、図6(a)の配列方式は長期間使用したとしても、粉塵によって撮影装置2の視野を塞ぐ可能性が低い。従って、開口部11aから侵入する粉塵を吸着しつつ、撮影装置2の視野を十分に確保する観点から、図6(a)の千鳥配置が好ましい。
なお、図6(a)の千鳥配置のペアとなる磁石21、22において、搬送方向の上流側に設置された磁石21の重心と、搬送方向の下流側に設置された磁石22の重心とを結ぶ直線が、搬送方向に対して20°以上60°以下の角度で傾いていることが好ましく、25°以上40°以下がより好ましく、30°が特に好ましい。これにより、磁石21、磁石22間全体に生じる磁界のムラがさらに少なくなり、かつ、磁界の強さが粉塵を捕捉するのに十分な強さを確保することができる。
図6(a)に記載されている、幅方向に整列している磁石21の重心間のピッチの距離xは特に限定されないが、好ましくは10mm以上50mm以下である。同様に、幅方向に整列している磁石22の重心間のピッチの距離yは特に限定されないが、好ましくは10mm以上50mm以下である。また、ペアとなる磁石21、22の重心間の距離zも特に限定されないが、10mm以上50mm以下であることが好ましい。特に好ましい形態は、距離x、y、zが同じであることである。距離x、y、zが同じ距離であると、搬送方向の上流側に幅方向に整列して設置された複数の磁石21間、搬送方向の下流側に幅方向に整列して設置された複数の磁石22間、及びペアとなる磁石21、22間の距離が同じなので、磁界の強さが均一になり、磁界の強さのムラが全体的に最も低減される。
【0041】
なお、開口部11aから磁石21、22の重心までの搬送方向の距離は、10mm以上50mm以下の位置に配置することが好ましい。また、磁石21、22の幅方向の長さは特に限定されないが、磁石21、22を複数用いる場合は、10mm以上30mm以下の範囲であることが好ましい。
【実施例
【0042】
以下に実施例を用いて、本開示の撮影窓の汚れ付着を防止する装置についてさらに説明する。
【0043】
<実験1>
実験1ではエアー噴射装置のエアー噴射角度について検討した。
装置としては、図1図3に記載されている装置から遮蔽板を除いた構成を用いた。具体的には、撮影装置の上に、撮影装置の撮影窓を覆うフードを設置し、該フードに備えられる開口部の搬送方向の上流側に、エアー噴射装置を設置した。そして、エアー噴射装置が搬送方向の上流側から下流側に向かってエアーを噴射させた状態で、50gの粉塵を後述の方法で降下させた。粉塵の降下終了後、粉塵を降下させた部分のうち30mm×30mmの範囲において、撮影装置で撮影した画像の輝度を測定し、得られた測定結果から粉塵降下前後における輝度降下量(%)を算出した。結果を図8に示した。
ここで、図8の縦軸の輝度降下量(%)は、上記で説明した粉塵降下前後における輝度降下量(%)であり、横軸のエアー噴射角度は、エアー噴射装置のエアーの噴射方向と搬送方向とがなす角度である。
【0044】
ここで、実験1において、開口部の搬送方向の長さは10mmであり、エアー噴射装置から噴射されるエアーの圧力は6kgf/cmであり、エアーの風速は20m/秒である。
【0045】
粉塵の降下方法について説明する。直径3mmの穴を10mm間隔で縦横に整列するように空けられたふるいを作製し、ふるいに粉塵50gを乗せて、フードの開口部の上部に配置した。そして、エアー噴射装置がエアーを噴射させた状態で、ふるいを揺らすことで開口部に粉塵を降下させた。
【0046】
なお、エアー噴射装置でエアーを噴射させない状態で、上記と同様の方法で50gの粉塵を降下させた場合、粉塵降下させた部分の画像の輝度は零(0)となった。すなわち、粉塵降下前後における輝度降下量(%)は100%であった。
【0047】
図8の粉塵降下前後の輝度降下量とエアー噴射角度との関係から、エアー噴射角度により、輝度降下量が変化することが分かる。また、エアーの噴射角度は5°以上であると輝度降下量がより低減し、20°以下であるとさらに低減することが分かった。そして、エアーの噴射角度は15°であるときが最も輝度低下量が小さかった。よって、以降の実験ではエアーの噴射角度を15°に設定した。
【0048】
<実験2>
実験2では、実験1の装置構成に遮蔽板を加え、図1図3に示した装置構成として、遮蔽板の角度について検討した。実験方法は粉塵の量を150gに変更した以外は、実験1と同様の方法で行った。結果を図9に示した。
ここで、図9の縦軸の輝度降下量(%)は、粉塵降下前後における輝度降下量(%)であり、横軸の遮蔽板の角度は、遮蔽板の搬送方向の断面において、遮蔽板の搬送方向の上流側の端部と搬送方向の下流側の端部とを結ぶ直線と搬送方向とがなす角度である。
【0049】
ここで、実験2において、遮蔽板は開口部の上方を覆うことがないように配置され、かつ、遮蔽板は搬送方向の上流側の端部はフードに支持されるように配置されている。また、遮蔽板の搬送方向の下流側の端部は、フードの上方5mm以上30mm以下の位置に配置され、かつ、開口部から搬送方向の上流側に0mm以上30mm以下の位置に配置されているように設定した。
【0050】
遮蔽板の角度が0°である粉塵降下前後の輝度降下量を基準としたとき、該基準よりも粉塵降下前後の輝度降下量が小さい遮蔽板の角度の範囲は、10°以上35°以下の場合であった。また、遮蔽板の角度は30°であるときが最も輝度低下量が小さかった。よって、以降の実験では遮蔽板の角度を30°に設定した。
【0051】
<実験3>
実験3では、実験2の装置構成に磁石を加え、さらに、磁石の配置方式について検討した。磁石の配置方式としては、図6(a)に示した千鳥配置と、図6(b)に示した対向配置を用いた。
磁石を加えた場合の実験方法では、より過酷な条件とするため、降下させる粉塵の量を300gに変更し、その他条件は、実験2と同様の方法で行った。
磁石を図6(b)に示した対向配置とした場合と、磁石を設置しない場合で実験して比較したところ、磁石を対向配置とした場合には、輝度降下量は15%であったが、磁石を設置しない場合の輝度降下量は30%であった。すなわち、磁石を設置することで輝度降下量を低下させることができた。
さらに、磁石の配置方式について検討した。磁石を、図6(a)に示した千鳥配置と、図6(b)に示した対向配置として、粉塵の降下を複数回連続して行った結果を図10に示した。
ここで、図10の縦軸の輝度降下量(%)は、粉塵降下前後における輝度降下量(%)であり、横軸の粉塵降下回数は、粉塵を降下した回数である。
【0052】
ここで、実験3の千鳥配置におけるペアとなる磁石21、22は、搬送方向の上流側に設置された磁石21の重心と、搬送方向の下流側に設置された磁石22の重心とを結ぶ直線が、搬送方向に対して30°傾くように設定した。また、磁石21の重心間の距離、磁石22の重心間の距離、ペアとなる磁石21、22の重心間の距離はそれぞれ20mmになるように配置した。
一方で、実験3の対向配置におけるペアとなる磁石21、22は、搬送方向の上流側に設置された磁石21の重心と、搬送方向の下流側に設置された磁石22の重心とを結ぶ直線が、搬送方向に対して平行になるように設定した。また、磁石21の重心間の距離、磁石22の重心間の距離はそれぞれ20mmで、ペアとなる磁石21、22の重心間の距離は10mmになるように配置した。
【0053】
図10の粉塵降下前後の輝度降下量から、磁石の配置方式を千鳥配置にすると、粉塵を300g用いたとしても輝度降下量が小さいことが分かった。また、粉塵降下を16回行ったとしても輝度降下量が50%を超えなかった。よって、千鳥配置を用いることにより輝度の降下を大きく抑制できるため、千鳥配置は長期間の使用に適していることが分かった。
【符号の説明】
【0054】
1 鋼板
2 撮影装置
2a 撮影窓
2b 筐体
2c 撮影装置本体
10、20 撮影窓の汚れ付着を防止する装置
11 フード
11a 開口部
12 エアー噴射装置
13 遮蔽板
21、22 磁石
23 金属板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10