(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】加硫後ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20230110BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20230110BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230110BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230110BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L9/00
C08K3/36
C08K3/04
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2018518752
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2017046866
(87)【国際公開番号】W WO2018128141
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2017001174
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】吉安 勇人
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-263882(JP,A)
【文献】特開平10-087890(JP,A)
【文献】特開平09-118784(JP,A)
【文献】特表2010-518229(JP,A)
【文献】特表2011-502124(JP,A)
【文献】特表2007-514022(JP,A)
【文献】特開2003-238752(JP,A)
【文献】国際公開第2016/105909(WO,A1)
【文献】特開2001-279028(JP,A)
【文献】特開2016-065160(JP,A)
【文献】特表2005-533140(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0121316(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00- 21/02
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、カーボンブラックとを含み、
前記ゴム成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量が60~90質量%、前記ブタジエンゴムの含有量が10~40質量%であり、
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が30質量部以上、前記シリカ及び前記カーボンブラックの合計含有量が40~150質量部であり、
下記式(1)~(4)を満たす加硫後ゴム組成物。
(1)
3.3≦M300/M100≦
4.3(温度23±2℃)
(2)
63≦Hs≦70(温度23±2℃)
(3)9.3MPa≦M300≦11.5MPa(温度23±2℃)
(4)
3550MPa・%≦TB×EB/2≦
3960MPa・%(温度23±2℃)
【請求項2】
窒素吸着比表面積150m
2/g以上のシリカを含む請求項
1記載の加硫後ゴム組成物。
【請求項3】
硫黄を含み、
ゴム成分100質量部に対する硫黄の含有量が0.5~10質量部である請求項1
又は2に記載の加硫後ゴム組成物。
【請求項4】
加硫促進剤を含み、
ゴム成分100質量部に対する加硫促進剤の含有量が1~10質量部である請求項1~
3のいずれかに記載の加硫後ゴム組成物。
【請求項5】
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が1~10質量部である請求項1~
4のいずれかに記載の加硫後ゴム組成物。
【請求項6】
カーボンブラックとシリカの配合比(カーボンブラックの含有量/シリカの含有量(質量比))が3/97~20/80である請求項1~
5のいずれかに記載の加硫後ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載の加硫後ゴム組成物からなるトレッドを有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫後ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤトレッド等に用いられるゴム組成物には、耐摩耗性能が要求され、従来から様々な工夫がなされているが、近年、環境面の観点から、優れた耐摩耗性の付与が望まれている。
【0003】
特許文献1には、ゴム成分、酸、窒素化合物及びロジン誘導体を含むことで、耐摩耗性等を改善したタイヤが開示されているが、耐摩耗性等の更なる改善が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、耐摩耗性を改善できる加硫後ゴム組成物、及び空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記式(1)及び(2)を満たす加硫後ゴム組成物に関する。
(1)3.0≦M300/M100≦4.7(温度23±2℃)
(2)Hs≧55(温度23±2℃)
【0007】
前記加硫後ゴム組成物は、窒素吸着比表面積150m2/g以上のシリカを含むことが好ましい。
前記加硫後ゴム組成物は、下記式(3)を満たすことが好ましい。
(3)M300≦12.0MPa(温度23±2℃)
【0008】
前記加硫後ゴム組成物は、下記式(4)を満たすことが好ましい。
(4)TB×EB/2≧3300MPa・%(温度23±2℃)
本発明はまた、前述の加硫後ゴム組成物からなるトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、前記式(1)及び(2)を満たす加硫後ゴム組成物であるので、耐摩耗性を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の加硫後ゴム組成物(加硫済ゴム組成物)は、下記式(1)及び(2)を満たす。
(1)3.0≦M300/M100≦4.7(温度23±2℃)
(2)Hs≧55(温度23±2℃)
【0011】
従来からタイヤ用配合ゴムの耐摩耗性は、M300(300%伸張時応力)で評価されることが多いが、実車の耐摩耗性はM300と相関しないケースも多く、M300では充分な相関性が得られない。そこで、検討を進め、応力-歪み曲線(SSカーブ)の立ち上がり時の伸びに着目したところ、M300の大きさに関わらず、応力の立ち上がりが遅くなっている配合ゴムほど、耐摩耗性が優れているという知見を見出した。
【0012】
具体的には、配合ゴム中のフィラーの不均一な分散や、架橋の疎密により、補強の強さが不均一の場合、当該箇所が破壊の起点となり摩耗が進むと考えられる。ここで、補強の均一性は、引張試験におけるSSカーブにおける応力の立ち上がりで測定可能である。そして、不均一なゴムほど、伸びの早い段階で補強の密な部分が伸び切ることで応力が立ち上がり、均一なゴムほど、応力が立ち上がるのに多くの伸びを必要とする。従って、例えば、配合ゴムの補強が疎になる部分に硬い成分を配置し、補強を均一化することで、前記式(1)を確保し(応力の立ち上がりが遅くなり)、耐摩耗性が向上する。
【0013】
更に、前記式(2)のHs(硬度)を満たすことで所定の耐摩耗性が確保され、結果、式(1)、(2)を満たす加硫後ゴム組成物は、非常に優れた耐摩耗性を得ることが可能となる。
【0014】
前記加硫後ゴム組成物は、下記式(1)を満たす。
(1)3.0≦M300(300%伸張時応力(MPa))/M100(100%伸張時応力(MPa))≦4.7(温度23±2℃)
上記範囲内であると、応力の立ち上がりが遅く、優れた耐摩耗性が得られる。好ましくは3.5≦M300/M100≦4.4、より好ましくは3.8≦M300/M100≦4.2である。
【0015】
前記加硫後ゴム組成物は、下記式(3)を満たすことが好ましい。
(3)M300≦12.0MPa(温度23±2℃)
上記範囲内であると、優れた耐摩耗性が得られる。より好ましくはM300≦10.0MPa、更に好ましくはM300≦9.0MPaである。下限は特に限定されないが、良好な耐摩耗性が得られるという点から、好ましくはM300≧7.0MPa、より好ましくはM300≧8.0MPaである。
なお、M300、M100は、後述の実施例に記載の方法で測定可能である。
【0016】
前記加硫後ゴム組成物は、下記式(2)を満たす。
(2)Hs(硬度)≧55(温度23±2℃)
上記範囲内であると、優れた耐摩耗性が得られる。好ましくはHs≧57、より好ましくはHs≧60である。上限は特に限定されないが、良好なウェットグリップ性能が得られるという点から、好ましくはHs≦75、より好ましくはHs≦70である。
なお、Hsは、後述の実施例に記載の方法で測定可能である。
【0017】
前記加硫後ゴム組成物は、下記式(4)を満たすことが好ましい。
(4)TB×EB/2≧3300MPa・%(温度23±2℃)
上記範囲内であると、優れた耐摩耗性が得られる。より好ましくはTB×EB/2≧3400MPa・%、更に好ましくはTB×EB/2≧3500MPa・%である。上限は特に限定されないが、良好な耐摩耗性が得られるという点から、好ましくはTB×EB/2≦4200MPa・%、更に好ましくはTB×EB/2≦4000MPa・%である。
【0018】
式(1)、(2)、更には(3)、(4)の特性は、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム等の硬い成分の配合、等により付与できる。
【0019】
前記加硫後ゴム組成物に使用可能なゴム成分としては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチル系ゴムなどが挙げられる。なかでも、耐摩耗性や、これとウェットグリップ性能の性能バランスの観点から、BR、SBRが好ましい。
【0020】
BRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、例えば、ハイシス1,4-ポリブタジエンゴム(ハイシスBR)、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム(SPB含有BR)、変性ブタジエンゴム(変性BR)、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)などが挙げられる。なかでも、SPB含有BRが好ましい。
【0021】
SPB含有BRはタイヤ工業において汎用されているものを使用でき、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶がBRと化学結合し、分散しているものが好ましい。含まれる1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶により、耐摩耗性を向上できる。
【0022】
1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性が得られる傾向がある。また、該融点は、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下である。上限以下にすることで、ゴム組成物中での良好な分散性が得られる傾向がある。
【0023】
SPB含有BR中において、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量は、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性が得られる傾向がある。また、該含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下である。上限以下にすることで、BRがゴム組成物中に良好に分散する傾向がある。
【0024】
ゴム成分100質量%中のSPB含有BRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内に調整することで、優れた耐摩耗性が得られる。
【0025】
SPB含有BRを用いる場合、必要に応じて、更にハイシスBRを配合してもよい。
ハイシスBRは、シス含有量(ゴムのブタジエン部分に対するシス1,4-結合の含有率)が90質量%以上のBRであり、該シス含有量は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上である。
なお、シス含有量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0026】
ゴム成分100質量%中のSPB含有BR及びハイシスBRの合計含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。上記範囲内に調整することで、優れた耐摩耗性が得られる。
【0027】
ゴム組成物に含まれるBR100質量%(全BR量)中のSPB含有BRの含有率は、耐摩耗性の観点から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0028】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0029】
上記SBRとしては、特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。また、非変性SBR、変性SBRのいずれも使用可能である。
【0030】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。上記範囲内に調整することで、優れた耐摩耗性、前記性能バランスが得られる。上記範囲内に調整することで、優れた耐摩耗性、前記性能バランスが得られる。
【0031】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されている製品を使用できる。
【0032】
SPB含有BRとSBRの配合比(SPB含有BRの含有量/SBRの含有量(質量比))は、耐摩耗性、前記性バランスの点から、5/95~50/50が好ましく、10/90~40/60がより好ましい。
【0033】
前記加硫後ゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、5m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上が更に好ましく、110m2/g以上が特に好ましい。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性が得られる傾向がある。また、上記N2SAは、200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましく、130m2/g以下が更に好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0035】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0036】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。上記範囲内にすることで、補強性を確保し、良好な耐摩耗性が得られる傾向がある。
【0037】
前記加硫後ゴム組成物は、シリカを含有することが好ましい。シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0038】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは100m2/g以上、より好ましくは150m2/g以上、更に好ましくは180m2/g以上である。上記N2SAは、好ましくは500m2/g以下、より好ましくは300m2/g以下である。上記範囲内にすることで、良好な耐摩耗性が得られる傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0039】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0040】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。下限以上にすることで、本発明の効果が充分に得られる。また、上記含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは75質量部以下である。上限以下にすることで、ゴム組成物中において、シリカが均一に分散することが容易となり、良好な耐摩耗性が得られる。
【0041】
カーボンブラック及びシリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは40質量部以上、より好ましくは55質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な耐摩耗性が得られる傾向がある。
【0042】
カーボンブラックとシリカの配合比(カーボンブラックの含有量/シリカの含有量(質量比))は、耐摩耗性、前記性バランスの点から、3/97~20/80が好ましく、5/95~15/85がより好ましい。
【0043】
シリカを含む場合、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。なかでも、スルフィド系、メルカプト系が好ましい。
【0044】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0045】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。3質量部以上であると、シランカップリング剤を配合したことによる効果が充分に得られる傾向がある。また、上記含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。20質量部以下であると、配合量に見合った効果が充分に得られ、良好な混練時の加工性が得られる傾向がある。
【0046】
前記加硫後ゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0048】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0049】
前記加硫後ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。なかでも、本発明の効果の点から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0050】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0051】
前記加硫後ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、オイル等の軟化剤;有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;等を例示できる。
【0052】
前記加硫後ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0053】
本発明の空気入りタイヤは、前記各成分を含む未加硫ゴム組成物を用いて通常の方法で製造できる。上記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド等のタイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0054】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤに好適に使用可能である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:結合スチレン量25%、ビニル含量60%
ハイシスBR:シス含量97質量%
SPB含有BR1:1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム
SPB含有BR2:1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム
カーボンブラック1:N2SA111m2/g
カーボンブラック2:N2SA140m2/g
シリカ1:N2SA180m2/g
シリカ2:N2SA200m2/g
オイル:アロマ系プロセスオイル
シランカップリング剤:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
ワックス:大内新興化学(株)製のサンノックワックス
老化防止剤6C:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン
老化防止剤RD:ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
5%オイル含有粉末硫黄:細井化学工業(株)製のHK-200-5(加硫剤、オイル分5質量%)
加硫促進剤CZ:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド
加硫促進剤DPG:ジフェニルグアニジン
【0056】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合内容に従い、硫黄及び加硫促進剤を除く各種薬品を、バンバリーミキサーにて、150℃で5分間混練りした。得られた混練物に、硫黄及び加硫促進剤を添加して、オープンロールを用いて、80℃で5分間混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間プレス加硫し、加硫ゴムシートを得た。
また得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃の条件下で20分間プレス加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:11×7.10-5)を得た。
【0057】
得られた加硫ゴムシート及び試験用タイヤを使用して、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
(Hs)
JIS K6253の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に従って、タイプAデュロメーターにより、加硫ゴムシートからなる試験片のHs(硬度)を測定した(測定温度23℃±2℃)。
【0059】
(M100及びM300)
加硫ゴムシートからなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準拠し、引張り速度500mm/分で引張試験を実施した。23℃±2℃における100%伸張時の応力(M100(MPa))、300%伸張時の応力(M300(MPa))を測定し、M300/M100を算出した。
【0060】
(破壊特性)
加硫ゴムシートからなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準拠し、引張り速度500mm/分で引張試験を実施した。23℃±2℃における破断強度TB(MPa)、破断時伸びEB(%)を測定した。TB×EB/2(MPa・%)を算出した。
【0061】
(耐摩耗性)
試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行なった。その際におけるタイヤトレッドゴムの残溝量を計測し、耐摩耗性として評価した。残溝量が多いほど、耐摩耗性に優れる。比較例1の残溝量を100として指数表示した。数値が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
【0062】
(ウェットスキッド性能)
試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面において、速度100km/hのときにブレーキをかけた地点からの制動距離を求めた。比較例1を100とし、各制動距離を下記式に指数表示した。指数が大きいほど、ウェットスキッド性能(ウェットグリップ性能)が良好であることを示す。
(ウェットスキッド性能指数)=(比較例1の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
【0063】
【0064】
表1から、実施例の加硫後ゴム組成物は、比較例に比べ、耐摩耗性、更にはこれとウェットグリップ性能の性能バランスに優れていた。